(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079816
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】炭化木材薄板を用いた反応方法及び培養方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20220520BHJP
B27K 5/02 20060101ALI20220520BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20220520BHJP
【FI】
C12N1/00 B
B27K5/02 Z
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190623
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】397003079
【氏名又は名称】佐藤 正倫
(71)【出願人】
【識別番号】511275119
【氏名又は名称】北島 昌夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正倫
(72)【発明者】
【氏名】北島 昌夫
【テーマコード(参考)】
2B230
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
2B230EA14
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC01
4B029DG06
4B029GA03
4B029GB04
4B065AA93X
4B065BC23
4B065BC42
(57)【要約】
【課題】
仮道管或いは道管方向と略直角な表面の炭化薄板を細胞培養、その他の反応場に利用する系において、培養物或いは反応生成物が炭化薄板を介さずに直接観察或いは観測できる方法を提供することである。
【解決手段】
炭化薄板の下面に接して液体供給部を配置し、炭化薄板の上面は、マスク部材でグループ化された領域或いはウェルが設けられ、これらの領域或いはウェルに培養させる物質或いは反応させる物質を供給することにより達成される。液体供給部の液体は毛細管現象により瞬時に炭化薄板の上面に到達して反応或いは培養が行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
400℃以上の温度で炭化された樹木の幹方向に対して75~90度の角度の平面を有し厚さ1.9mm以下の炭化薄板の下面を液体と接触させ、外部から加圧或いは減圧をすることをせずに、液体を炭化薄板の上面へ移送させ、炭化薄板の上面側に液体移送の前から後の間の任意の時点で供給された物質と作用を起こさせることを特徴とする反応方法及び培養方法。
【請求項2】
炭化薄板の上面にグループ化のためのマスク部材或いはウェルが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の反応方法及び培養方法。
【請求項3】
液体が微粒子を含むことを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の反応方法及び培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な多孔質構造を有する針葉樹の仮道管あるいは広葉樹の道管と木部繊維の炭化物からなる薄板の毛細管現象を利用し、薄板の下面に接して配置された液体供給部の液体と薄板の上面に供給された物質との間で起こる反応方法及び培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は先に特願2020-36861(特許文献1)の出願を行った。特許文献1に記載された発明の概要は、仮道管或いは道管方向と略直角に1.9mm以下の厚さの炭化薄板を細胞培養、その他の反応場に利用するものである。この薄板は木材を炭化したものなので、仮道管の孔径、配列等が均一ではない。そこで複数個の仮道管を一つのグループとしてグループ単位で取り扱うことを実施している。グループ化の代表的な具体例として、薄板の表面に例えば厚い粘着シートに規則的な穴(窓)を設けたものを貼り付ける方法を実施した。その他に樹脂インクをマスクパターン状に印刷する方法、薄板を削ってマスクパターン状に凸部を残す方法(ヒル形成と呼んでいる)等が記載されている。
【0003】
本発明者等は更に先に特願2020-116631(特許文献2)の出願を行った。特許文献2に記載された発明の概要は、微細な多孔質構造を有する針葉樹の仮道管あるいは広葉樹の道管と木部繊維の炭化物からなる薄板にウェル(凹部)を設けたウェルを有する炭化薄板に関する。このウェル付き薄板の主要な用途としては、前記ウェルが形成する多数の微小な管状空間を溶液反応あるいは細胞培養のためのモジュールあるいはユニットに関するものがある。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明においては、炭化薄板の上面に供給された液体が炭化薄板の仮道管を通り抜けて炭化薄板の下面に到達し、炭化薄板の下に配置された受容部内の物質と反応させることを想定していた。一般に反応は炭化薄板の下部で起こるが炭化薄板を形成する仮道管束は黒色なので、仮道管の細孔を通して反応生成物などを観察・測定するのは困難であり、炭化薄板の下方から行なう必要があった。
【0005】
本発明者等は上記問題点に鑑み検討の結果、炭化薄板の下面に接して配置された液体供給部の液体は毛細管現象により瞬時に炭化薄板の上面に到達し、その後隣接仮道管同士の液体が連結して液面を形成することを発見した。炭化薄板の上面にマスク材によりグループを形成するか或いはウェルを形成しておき、一方マスク内或いはウェル内に反応形成物質を予め保持させておくか或いは別途供給することにより、特定の反応を生じさせたり或いは反応生成物を集積させたり培養したりできる。また、これらの炭化薄板の上方から観測することができるので測定が極めて容易になる。また、目的によっては必要量の生成物などを炭化薄板上に集積、採集して他の反応系に利用することも可能になる。さらに、薄板を形成する仮道管束と直行する方向への液体の拡散は全く生じないことを利用した個々の仮道管を独立要素とした溶液反応や分析用モジュールの構築が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2020-36861
【特許文献2】特願2020-116631
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】横田勝、本岡直樹、原章、三谷裕康:日本金属学会誌, 43(1979),804
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、仮道管或いは道管方向と略直角な表面の炭化薄板を反応や培養に利用する系において、反応生成物あるいは培養生成物などを、炭化薄板を介さずに直接観察或いは観測できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、400℃以上の温度で炭化された、樹木の幹方向に対して75~90度の角度の表面の炭化薄板の下面に接して液体供給部を配置し、炭化薄板の上面に培養物質或いは反応物質を供給することにより達成された。特に炭化薄板の上面にマスク部材でグループ化された領域或いはウェルを設けて、これらの領域或いはウェルに培養物質或いは反応物質を供給することが本発明の優れた解決手段である。炭化薄板の下面に接した液体供給部の液体は毛細管現象により瞬時に炭化薄板の上面に到達し、隣接仮道管同士の液体が連結して炭化薄板上面に供給或いは配置された液体受容部中の物質(培養したい細胞、反応させたい物質等)に作用する。液体供給部の物質と炭化薄板の上に配置された物質とが作用することにより反応或いは培養が行われるのである。その逆に炭化薄板下面から培養や反応させたい細胞、生理活性物質、その他を含む溶液あるいは分散物を供給し、炭化薄板の上面にこれと反応性あるいは相互作用性の物質を含む溶液、分散物を含む担持体や膜を配置した液体受容部を形成させる構造、手段であっても良い。
【発明の効果】
【0010】
細胞培養或いは反応が、炭化薄板の上面側で行われるので炭化薄板或いは容器の底を介さずに、細胞培養過程或いは反応生成過程を直接観察或いは観測することが可能になり、測定系が極めてシンプルになるので、反応や培養の結果の判定、或いは進行過程での測定や評価の信頼性・精度を大幅に向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】上面にウェルが設けられた炭化薄板の下面に接して液体供給部が配置された系の側面図である。
【
図2】上面にマスク部材で仕切られた領域が設けられた炭化薄板の下面に接して液体供給場が配置された系の側面図である。
【
図3】毛細管中の水の上昇距離と上昇速度の時間変化のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは炭化薄板の下面に接して液体供給部を配置することにより、液体供給部の液体は毛細管現象により瞬時に炭化薄板の上面に到達し、隣接仮道管同士の液体が連結して液面を形成することを発見して本発明に至った。水を媒体とする細胞培養などにおいて液体供給部は細胞、組織片、生理活性物質、あるいは各種反応の構築、促進、抑制を目的とする溶解物、微小懸濁粒子等を含んでいてもよい。またガーゼ、紙、不織布、スポンジ等の親水性で水を容易に吸蔵や放出が可能な水親和性部材であってもよい。
【0013】
本発明に用いられる炭化薄板は特許文献1及び2に記載されている炭化薄板と同じものである。炭化薄板は水や有機溶剤で洗浄するとエアブローや吸引で除去されない切子が除去されるので有効である。
【0014】
図1は、細胞培養、化学反応等の系の側面図である。
図1において、10は炭化薄板、11は炭化薄板の上面に形成されたウェル、14は炭化薄板10の下面に接して配置された液体供給部、15は炭化薄板10の上方に配置された顕微鏡その他の観察或いは測定用の測定系である。
【0015】
特許文献1及び2に記載された方法では、細胞培養或いは化学反応が炭化薄板の下面で起こるので、培養や反応の途中経過或いは最終結果等は、炭化薄板の下面(裏面)を観察或いは観測する必要があった。通常、培養系或いは反応系は、液体を扱うので容器内に配置される。従って、途中経過や最終結果を容器の底を通して観測しなければならなかった。このことは現実的には不便であり、また測定系も複雑にならざるを得なかった。
【0016】
炭化薄板の上面(表側)から観測する場合、黒色の炭化薄板を介して(通して)観測するので透過光量が小さくなり高感度の測定器が必要になる。また仮道管を通過する光は仮道管の管壁で繰り返し反射するのでハレーションが生じ、微細な粒子の形状や数を正確に測定するのが困難である。それに対して炭化薄板の表側から観測できればこれらの問題が無くなるので測定系はシンプルになり精度も格段に向上する。いずれかの段階において反応に関与する物質を蛍光色素、発光色素などで標識しておけば、観察や測定はより効果的にあるいはより高感度での実施が可能になる。
【0017】
図2は、
図1のウェルの代わりにマスク部材を用いる例を示す。
図2において16はマスク部材、17はマスク部材により囲まれた領域である。領域17が
図1のウェル11に相当する。
図1及び
図2において、炭化薄板10と液体供給部14との間に微小な空隙が存在するように描かれているが、実際には両者は接触しており空隙は存在しない。見やすいように空隙を設けたのである。
【0018】
本発明の特徴の一つは樹木の仮道管束が構成する毛細管束による毛細管現象に基づく毛細管の液体吸引力(以下毛細管力と略す)を利用するものであり、液体の導入に当たっては外部からの加圧、吸引などの調節操作は必要としない。
【0019】
毛細管現象により水が毛細管中を上昇する現象は公知である。非特許文献1には、内径63μmのガラス製毛細管に水が接触してから毛細管中を水が上昇する距離と時間の関係が示されている(非特許文献1のTable 1)。特に水が上昇する初期の短時間の間を精密に測定している。水が接触する瞬間(0秒)から2秒までの測定データを抜粋して表にしたのが次の表1である。
【0020】
【0021】
表1の時間と距離の関係をグラフにしたのが
図3である。この距離を時間で微分すると速度になりそれを
図3のグラフに示した。水が毛細管の下端に接触後0.01秒で7.6mmも上昇しているのである。本発明において用いられる炭化薄板の仮道管(毛細管)の径は20~35μmであるので、非特許文献1で用いられているガラス毛細管の半分程度の径なので、より一層上昇しやすい。また本発明において用いられる炭化薄板の厚さは1.9mm以下なので、毛細管の下端に接触した水は0.01秒以下で毛細管の上端に到達すると考えられる。一方、水の上昇速度は
図3のグラフから80cm/秒以上である。即ち、水は猛烈な速度で上昇して仮道管の上端に到達するのである。その結果、上端に到達した水は勢い余ってオーバーランし、仮道管の切り口に接触すると考えられる。隣接の仮道管でも同様の現象が起こるので隣接仮道管の上端同士で水がつながると考えられる。水が単純に仮道管の上端に到達するだけでなく、水が連結し合うという現象を利用しているのが本発明の最大の特徴なのである。
【0022】
仮道管の上端に到達した水が、隣接仮道管の上端に到達した水とつながると考えられる理由は以下の現象からも推測される。注射器の針を外した先端に、直径1.2mm、長さ10mmの炭化竹ヒゴを挿入し接着剤で固定したものを用意した。炭化竹ヒゴの先端を水滴に接触させた状態で注射器のピストンを少し引いて水を吸い上げて炭化竹ヒゴの道管の中に水を満たした後、ピストンを押して道管中の水を噴射させようとしても水は噴射せずに炭化竹ヒゴの先端面内で横に広がった。この現象は上記の仮道管同士の水が連結するのと同じである。
【0023】
本発明方法の特徴は、外部からの吸引や加熱なしに液体、溶液、あるいは分散溶液からなる試料溶液と炭化薄板の表面を接触させるだけで、試料溶液を毛細管中に取り込むことが出来る点にある。この特徴を利用することにより、各種の反応や調製操作の前、あるいは操作後に行う分離操作に当たって最上表面層部分のみを簡単な操作で取りだすことも出来る。たとえは遠心分離後に下層の分離構造には全く影響を与えることなく最上層のみを取り出すことが可能になる。あるいは生体組織片上に生成された分泌物を含む微量の液体層のみを本発明の炭化薄板の毛細管中に取りことも可能になる。これらの表面層の取り込み量はウェル中に貯留しそこから適切な吸引手段を用いて移行させることもできるし、炭化薄板の上に適切な液体吸蔵性シートを重ねて移行させることも可能である。炭化薄板中に貯留された液体や溶液は、その片面に適切な形状の弾性体やシート物を接触させて軽く加圧あるいは吸引することで取り出せる。
【0024】
液体、例えば水の移行は、炭化薄板の上に置かれる受容層の吸水特性に強く依存する。1例として、厚手のろ紙を受容層として炭化薄板の上に載置し、炭化薄板の下面を液体と接触させれば、炭化仮道管の下にある水はろ紙の吸水能力の限界までろ紙に移行する。ろ紙の表面の凹凸や柔軟性が、炭化薄板表面の凹凸との接触も加わって水の移行がスムーズに進行する。
【0025】
上記の受容層の吸水効果は主として材料表面の親水性と物理的形状(凹凸)や柔軟性(変形のしやすさ)に依存する。紙、不織布、織物や編み物などは適例である。水溶液系の試料を対象とする場合には本発明方法に適切な材料としては表面が親水化されており適度の凹凸がある疎水性高分子材料や無機微粒子が挙げられる。1例としては表面をプラズマ加工などにより親水化したポリエステル繊維や、非吸水性微粒子、例えば微量の結合剤用いてシート状あるいは薄層状にした酸化チタン薄膜やガラス微粒子などが挙げられる。
【0026】
上記とは逆に炭化薄板表面を親水化する手段もある。具体的にはオゾン存在下で紫外線照射する方法あるいは各種の親水性高分子で処理する方法が挙げられる。
【0027】
利用する反応系に影響しない界面活性剤や親水性の低分子あるいは高分子物質などが分かっていれば予め炭化薄板表面を処理しておくことも有効である。あるいは試料溶液に加えておくことも有効である。
【0028】
本発明方法において、水を媒体とした溶液あるいは分散液を用いる場合、バイオテクノロジー、ティッシュエンジニアリング、組織培養、細胞培養、ウイルスや生体活性物質など含む生物系の分野において微少量の試料を扱う操作に特に適している。例えば、細胞や生物組織片あるいは生体活性物質を分散液が挙げられる。分散溶液を試料とする場合は炭化薄板を形成する仮道管の管径が組織片をその大きさによって選別する篩の役割も果たす。
【0029】
本発明方法は微量の生物活性試料溶液と特定の相互作用を有する複数の物質を含む溶液とを同一条件で接触させ相互作用の様子を検討するような実験系の組み立てに適している。例えば血液や培養細胞、組織片、生体活性物質などを含む分散液あるいは試料溶液を、炭化薄板を介して他の生体活性種あるいは反応性物質を含む試料溶液受容層へ移行させその上で、受容層中の特定な活性種と試料溶液中の生理活性物質との反応の有無や変化の様子を観察する場合のような実験に利用出来る。複数のウェルを有する炭化薄板を用いれば、単一の試料溶液と複数反応性物質との相互作用の有無や変化を同時に観察、測定できる。またウェル中での反応生成物を系外に取り出して、適切な分析に供することも可能であるし、他の容器中に移し別の反応系と組みあわせて、多段的な反応系に利用することも可能になる。
【0030】
本発明の炭化仮道管は基本的に熱的、化学的、物理化学的に極めて安定なので、反応系の構築に当たって厳密な滅菌が必要な場合には、通常の加圧・加熱滅菌処理が利用できる。また微量溶出成分の懸念などがある場合には通常試料される濃度の酸、アルカリによる処理や有機溶媒と含む各種の洗浄処理の適用が可能である。これらの組み合わせ、すなわち加熱下、高温・高圧下での洗浄剤を用いた処理も可能である。
【0031】
以下に実施例を示すが、いずれの実施例においても炭化薄板の表側で反応が起こるか或いは目的の現象が起こるので、表側から観察、観測或いは測定が可能である。
【実施例0032】
特許文献1の実施例1に記載された方法と同様にしてヒノキ角材の炭化物を得た。得られた炭化物を仮道管とほぼ直角に市販のダイアモンドバンドソーマシンを用い、厚さ0.8mmにスライスし、10×10mmサイズに切断した。切断後エアブローして切子を除去し、さらにエタノールで洗浄した後、放置乾燥した。4%の重炭酸ソーダ水溶液に1滴のpH指示薬を加え濃青紫に発色させた試料溶液を作製した。顕微鏡用プレパラートの上に試料溶液0.1mLを滴下し直径約5mmの半球滴を形成させた。前記炭化薄板をその下面が試料溶液滴とわずかに接触する状態で載置し、さらにその上に受容部材として厚さ約100μmの平滑な高吸水性紙(商品名クリーニングペーパー:S.G Japan製)を載置した。試料溶液が炭化薄板を経由してクリーニングペーパーに滲みだした。はじめに炭化薄板と試料溶液の接触面とほぼ同じ面積の円形の濃青紫色の湿潤マークが観察された。試料溶液はその後さらにクリーンペーパーの全面に拡散した。炭化薄板の上面に載置した受容部材を複数枚重ねるかあるいは面積を大きくすることにより、プレパラート上の液滴はほぼ全量が吸引され消失した。受容部材中の拡散に伴う吸引力によって、試料溶液が炭化薄板を経由して受容部材に移行することが確認された。
実施例1と同様にして得た厚さ2.5mm、20×20mmサイズの炭化薄板を加工し、直径2mm、深さ約2.2mm、底壁の厚さが約0.3mmのウェル1個を有する炭化薄板を得た。実施例1と同じ試料溶液0.5mLを直径1.5mm、中央部の深さが0.5mm円形の凹部を有する顕微鏡用プレパラート上に貯留し、その上にウェルの開口部を有する面を上にして炭化薄板を載置した。瞬時に水溶液の吸い上げが開始され、数秒後には水溶液がウェルを満たすように溜まっていることが確認された。