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  • 特開-診断装置 図1
  • 特開-診断装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079836
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20220520BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190659
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA11
2G024CA13
2G024CA17
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】測定対象物の性能の診断が終了したことを適切に把握する。
【解決手段】蒸気トラップ又は配管を含む測定対象物の性能を診断する携帯可能な診断装置に、先端が前記測定対象物に押し当てられる棒状の測定用プローブと、前記測定用プローブに伝達される前記測定対象物の振動及び温度を測定する測定部と、前記測定部による測定の結果に基づいて前記測定対象物の性能を診断し、前記診断が終了した場合に前記診断が終了したことを示す音声信号を生成する診断部と、前記音声信号を音声に変換する音声変換部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気トラップ又は配管を含む測定対象物の性能を診断する携帯可能な診断装置であって、
先端が前記測定対象物に押し当てられる棒状の測定用プローブと、
前記測定用プローブに伝達される前記測定対象物の振動及び温度を測定する測定部と、
前記測定部による測定の結果に基づいて前記測定対象物の性能を診断し、前記診断が終了した場合に前記診断が終了したことを示す音声信号を生成する診断部と、
前記音声信号を音声に変換する音声変換部と、
を備える診断装置。
【請求項2】
前記測定用プローブが突出する第1面と前記第1面に対向する第2面とを含む筐体と、
前記第2面に着脱可能に接続された把持棒と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記診断の結果に応じて異なる波形又は周波数の前記音声信号を生成する、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記音声変換部は、
前記音声信号の出力端子と、
前記出力端子に着脱可能に接続され、前記出力端子から出力された前記音声信号を音声に変換するイヤホンと、
を備える請求項1から3の何れか一項に記載の診断装置。
【請求項5】
前記音声変換部は、スピーカーである請求項1から3の何れか一項に記載の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気トラップ又は配管を含む測定対象物の性能を診断する診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蒸気等の流体が流れる配管又は配管に設置された蒸気トラップ等の測定対象物に本体部を押し当てて測定対象物の振動及び温度を測定し、測定結果に基づいて測定対象物の性能を診断し、診断結果を本体部に設けられた表示部に表示する診断装置が知られている。
【0003】
しかし、配管が複雑に入り組んでいる環境下では、測定対象物が作業者から見え難い位置や手の届き難い位置に存在するために、作業者は、無理な姿勢で本体部を測定対象物に押し当てなければならない場合がある。このような場合、本体部が測定対象物に正確に押し当てられていないために、測定対象物の振動及び温度が正確に測定されず、測定対象物の性能が正確に診断されない虞があった。また、作業者は、表示部を目視できない姿勢であるために、測定対象物の性能の診断がいつ終了したのかを把握できず、当該姿勢を長時間継続しなければならない虞があった。
【0004】
これらの問題を回避するため、特許文献1では、装置本体の底面に伸縮自在棒を取り付け可能なスチームトラップ診断装置が提案されている。この診断装置では、装置本体に伸縮自在棒を取り付けて、作業者の手の届き難い位置にあるスチームトラップに装置本体を正確に押し当てることができる。また、特許文献1では、診断の終了時に、診断装置に内蔵されたバイブレータを一定時間振動させることが提案されている。これにより、作業者は、無理な姿勢であっても手に伝わる振動で診断の終了を把握できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6427705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、作業者が高温の蒸気が流れる配管に接触して火傷等の怪我を負うことを回避する又は就業規則で定められている等の理由で、作業者が手袋を装着した状態で測定対象物の性能を診断する場合がある。この場合、作業者は、特許文献1の診断装置を用いて測定対象物の性能の診断を終了したとしても、当該診断の終了時のバイブレーターの振動に気づかない虞がある。また、作業者が、診断装置に伸縮自在棒を取り付けて測定対象物の性能を診断した場合には、伸縮自在棒の一部が配管等に接触し、診断の終了を示す振動が伸縮自在棒を介して作業者の手まで伝達されない虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、測定対象物の性能の診断が終了したことを適切に把握できる診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る診断装置は、蒸気トラップ又は配管を含む測定対象物の性能を診断する携帯可能な診断装置であって、先端が前記測定対象物に押し当てられる棒状の測定用プローブと、前記測定用プローブに伝達される前記測定対象物の振動及び温度を測定する測定部と、前記測定部による測定の結果に基づいて前記測定対象物の性能を診断し、前記診断が終了した場合に前記診断が終了したことを示す音声信号を生成する診断部と、前記音声信号を音声に変換する音声変換部と、を備える。
【0009】
本構成によれば、診断装置を携帯する作業者が、測定用プローブの先端を測定対象物に押し当てた場合に、測定用プローブに伝達された測定対象物の振動及び温度が測定され、当該測定の結果に基づいて測定対象物の性能が診断される。そして、当該診断が終了した場合に当該診断が終了したことを示す音声信号が生成され、当該音声信号が音声に変換される。
【0010】
このため、作業者は、診断装置を視認できない姿勢で測定用プローブの先端を測定対象物に押し当てている場合や手袋をしている場合であっても、診断の終了を示す音声を聞くことによって、測定対象物の性能の診断が終了したことを適切に把握できる。
【0011】
また、上記構成において、前記測定用プローブが突出する第1面と前記第1面に対向する第2面とを含む筐体と、前記第2面に着脱可能に接続された把持棒と、を更に備えてもよい。
【0012】
本構成によれば、作業者は、把持棒を第2面に装着することで、把持棒を第2面に装着していない場合よりも遠くに存在する測定対象物に測定用プローブの先端を適切に押し当てることができる。これにより、測定対象物の振動及び温度を正確に測定し、当該測定結果に基づいて、測定対象物の性能を正確に診断できる。また、当該診断の終了時に把持棒が配管等に接触していたとしても、作業者は、診断の終了を示す音声を聞くことによって、測定対象物の性能の診断が終了したことを適切に把握できる。
【0013】
また、上記構成において、前記診断部は、前記診断の結果に応じて異なる波形又は周波数の前記音声信号を生成してもよい。
【0014】
本構成によれば、作業者は、測定対象物の診断が終了した場合に聞こえる音声の相違によって、当該診断の結果を識別できる。
【0015】
また、上記構成において、前記音声変換部は、前記音声信号の出力端子と、前記出力端子に着脱可能に接続され、前記出力端子から出力された前記音声信号を音声に変換するイヤホンと、を備えてもよい。
【0016】
本構成によれば、作業者は、イヤホンを前記出力端子に接続して耳に装着することで、測定対象物の周囲の騒音が大きい場合であっても、当該測定対象物の性能の診断が終了したことを適切に把握できる。
【0017】
また、上記構成において、前記音声変換部は、スピーカーであってもよい。
【0018】
本構成によれば、作業者は、測定対象物の性能の診断が終了した場合にスピーカーから聞こえる音声によって、測定対象物の性能の診断が終了したことを適切に把握できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定対象物の性能の診断が終了したことを適切に把握できる診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】診断装置の外観図である。
図2】診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】診断の結果に対応付けられた音声信号の波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係る診断装置1について説明する。診断装置1は、蒸気や復水が流れる配管又は配管に設けられた蒸気トラップを含む測定対象物の振動及び温度に基づき、測定対象物の性能を診断する携帯可能な装置である。図1は、診断装置1の外観図である。図2は、診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
具体的には、図1に示すように、診断装置1は、耐熱性プラスチック等からなる直方体状の筐体9と、筐体9の上面(第1面)91から突出する棒状の測定用プローブ2と、筐体9の上面91に対向する底面(第2面)92に着脱可能に接続された把持棒93と、を備えている。
【0023】
筐体9は、測定対象物の性能の診断時に作業者によって把持される。測定用プローブ2は、筒状の探針21と、探針21の内周面に非接触の状態で配置された熱電対22と、を備えている。熱電対22を構成する二本の熱電対素線の一端は、探針21の先端において内側から外側に出没可能に付勢された接触板(不図示)に溶接されている。
【0024】
つまり、診断装置1は、作業者によって、筐体9が把持された状態で、探針21の先端が測定対象物の表面に押し当てられた場合に、探針21に伝達された測定対象物の振動及び前記接触板に伝達された測定対象物の温度を測定する。測定対象物が作業者の手の届かない位置に存在する場合であっても、作業者は、筐体9の代わりに把持棒93を把持することによって、前記接触板及び探針21の先端を測定対象物の表面に押し当てて、測定対象物の振動及び温度を測定することができる。
【0025】
筐体9の外面には、表示部6と、操作部7と、音声変換部8と、が設けられている。
【0026】
表示部6は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)で構成されている。表示部6には、測定対象物の振動及び温度の測定結果や、当該測定結果に基づく測定対処物の性能の診断結果等の各種情報が表示される。
【0027】
操作部7は、診断装置1に対する各種指示を作業者に入力させるためのメンブレンスイッチやメカニカルスイッチ等の複数のスイッチを備えている。作業者によって操作部7が備えている各スイッチが操作されると、当該各スイッチの操作に対応付けられた指示を示す信号が後述の制御部5(図2)に出力される。
【0028】
音声変換部8は、後述の制御部5(図2)等によって生成された音声信号を音声に変換する。当該音声信号には、測定対象物の振動の可聴周波数成分を示す音声信号や、測定対象物の性能の診断が終了したことを示す音声信号等が含まれる。
【0029】
具体的には、音声変換部8は、音声信号を出力するイヤホンジャック81(出力端子)と、イヤホンジャック81に着脱可能に接続されたイヤホン82と、音声信号を音声に変換するスピーカー83と、を備えている。イヤホン82は、イヤホンジャック81から出力された音声信号を音声に変換する。
【0030】
更に、診断装置1は、図2に示すように、筐体9の内部に、測定対象物の振動及び温度を測定する測定部3と、制御部5と、を備えている。
【0031】
具体的には、測定部3は、振動測定回路31と、温度測定回路32と、可聴周波数変換回路33と、を備えている。
【0032】
振動測定回路31は、探針21の先端が測定対象物に押し当てられた場合に、所定時間間隔(例えば0.5秒間隔)で所定期間(例えば10秒間)、探針21に伝達された測定対象物の振動を測定し、当該振動を示す振動データを制御部5へ出力する。
【0033】
具体的には、振動測定回路31は、圧電素子311、アンプ312、フィルタ313、積分器314及びA/D変換器315を備えている。圧電素子311は、探針21に伝達された測定対象物の振動レベルを示す信号を出力する。アンプ312は、圧電素子311の出力信号を増幅する。フィルタ313は、アンプ312の出力信号に含まれるノイズを除去し、所定の周波数帯域成分の信号を通過させる。積分器314は、フィルタ313を通過した信号を前記所定時間積分する。A/D変換器315は、積分器314によって積分された信号をA/D(アナログ/デジタル)変換する。これにより、A/D変換器315の出力データを、測定対象物の振動を示す振動データとして制御部5へ出力する。
【0034】
温度測定回路32は、前記接触板に伝達された測定対象物の温度を熱電対22を用いて測定し、当該測定した測定対象物の温度を示す温度データを制御部5へ出力する。可聴周波数変換回路33は、フィルタ313及び積分器314から出力される信号を用いて、測定対象物の振動の可聴周波数成分を示す音声信号を抽出し、当該抽出した音声信号を制御部5へ出力する。
【0035】
制御部5は、例えば、所定の演算処理を実行する不図示のCPU(Central Processing Unit)と、所定の制御プログラムが記憶されたEEPROM等の不図示の不揮発性メモリーと、データを一時的に記憶するための不図示のRAM(Random Access Memory)と、こららの周辺回路と、を備えている。
【0036】
制御部5は、不揮発性メモリー等に記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、診断装置1の各部を統括制御する。
【0037】
例えば、制御部5は、可聴周波数変換回路33から受信した、測定対象物の振動の可聴周波数成分を示す音声信号を音声変換部8に出力する。これにより、作業者は、イヤホン82又はスピーカー83によって変換された、測定対象物の振動に対応する音声を聞くことができる。例えば、診断装置1を用いて測定対象物の性能の診断を行うことに熟練した作業者は、当該音声を聞くだけで、測定対象物の性能を診断することができる。
【0038】
また、制御部5は、所定時間間隔(例えば0.5秒間隔)で所定期間(例えば10秒間)、振動測定回路31から振動データを受信する度に、当該振動データが示す振動レベルを表示部6に表示する。また、制御部5は、温度測定回路32から温度データを受信すると、当該受信した温度データが示す測定対象物の温度を表示部6に表示する。
【0039】
また、制御部5は、不揮発性メモリー等に記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、診断部51として動作する。
【0040】
診断部51は、測定部3から受信した振動データ及び温度データが示す、測定対象物の振動及び温度に基づいて測定対象物の性能を診断する。診断部51は、当該診断を終了した場合に、当該診断を終了したことを示す音声信号を生成し、当該生成した音声信号を音声変換部8に出力する。
【0041】
例えば、診断部51は、測定部3から受信した振動データ及び温度データが示す、測定対象物の振動及び温度と、不揮発性メモリー等に記憶されている所定の閾値と、を比較した結果に基づき、測定対象物が正常状態であるか、蒸気漏出状態であるか、ドレン(復水)排出不良状態であるか、閉塞状態であるかを診断する。そして、診断部51は、当該診断の結果に応じて異なる波形の音声信号を生成する。
【0042】
図3は、診断の結果に対応付けられた音声信号の波形の一例を示す図である。例えば、診断部51は、測定対象物が正常状態であると診断した場合、図3の波形W1に示すように、時間t1が経過するまでの間、レベルがL1であり、その後、時間teが経過するまでの間、レベルが0である音声信号を生成する。診断部51は、測定対象物が蒸気漏出状態であると診断した場合、図3の波形W2に示すように、時間teが経過するまでの間、間欠的に、時間t2の間レベルがL2である音声信号を生成する。診断部51は、測定対象物がドレン排出不良状態であると診断した場合、図3の波形W3に示すように、時間teが経過するまでの間、間欠的に、時間t2よりも短い時間t3の間レベルがL3である音声信号を生成する。診断部51は、測定対象物が閉塞状態であると診断した場合、図3の波形W4に示すように、時間t1よりも長い時間t4が経過するまでの間、レベルがL4であり、その後、時間teが経過するまでの間、レベルが0である音声信号を生成する。
【0043】
尚、診断部51は、これに限らず、診断の結果に応じて、図3に示した例とは異なる波形の音声信号を生成するようにしてもよい。又は、診断部51は、診断の結果に応じて異なる周波数の音声信号を生成するようにしてもよい。
【0044】
このため、作業者は、音声変換部8によって変換された音声を聞くことで、測定対象物の性能の診断が終了したことを適切に把握することができる。また、作業者は、聞こえた音声の相違によって、測定対象物が正常状態であるか、蒸気漏出状態であるか、ドレン(復水)排出不良状態であるか、閉塞状態であるかを識別することができる。
【0045】
尚、上記実施形態は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を上記実施形態に限定する趣旨ではない。
【0046】
(1)診断装置1に、スピーカー83又はイヤホンジャック81を備えないようにしてもよい。
【0047】
(2)診断部51は、測定対象物の診断の結果によらずに、同一の音声信号を生成するようにしてもよい。
【0048】
(3)診断装置1は、筐体9の底面92に把持棒93を取り付けできない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 :診断装置
2 :測定用プローブ
3 :測定部
8 :音声変換部
9 :筐体
51 :診断部
81 :イヤホンジャック(出力端子)
82 :イヤホン
83 :スピーカー
91 :上面(第1面)
92 :底面(第2面)
93 :把持棒
図1
図2
図3