(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079852
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 5/00 20060101AFI20220520BHJP
A47C 7/00 20060101ALI20220520BHJP
A47C 3/025 20060101ALI20220520BHJP
A47C 1/032 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
A47C5/00 C
A47C7/00 B
A47C3/025
A47C1/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190689
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】506407615
【氏名又は名称】株式会社山▲崎▼木工所
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 勝郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 年庸
【テーマコード(参考)】
3B091
3B099
【Fターム(参考)】
3B091AA03
3B091AB03
3B091AC06
3B099AA03
(57)【要約】
【課題】 座板及び背もたれ自身がしなることにより、クッション性を実現するとともに、クッション性を従来よりも高めた椅子を提供する。
【解決手段】 本開示による椅子101は、座板と背もたれとが一体化された一体部材20を有している。一体部材20は、湾曲した複数の長尺の竹部材21と、それらの竹部材21を、互いに間隔を置いて横に並ぶように束ねる束ね部材23,25,27と、を有している。複数の竹部材21は、適度な可撓性を有する。湾曲した一体部材20は、前幕板9と後幕板13とに支持されている。後幕板13は、前幕板9よりも高い位置に設けられている。一体部材20は、前幕板9に対しては摺動可能であり、後幕板13に対しては摺動が制止されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座板と背もたれとが、湾曲した可撓性の一体の部材で構成され、
前記一体の部材は、前幕板と、それよりも高い位置にある後幕板と、により支持され、かつ、前記前幕板と前記後幕板とのうちの一方に対しては摺動可能であり、他方に対しては摺動が制止される椅子。
【請求項2】
前記一体の部材は、前記前幕板と前記後幕板とのうちの前記一方に対しては、摺動可能に、かつ分離不能に係止され、前記他方に対しては分離不能に支持される、請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記一体の部材は、湾曲した複数の長尺の竹部材と、それらの竹部材を、互いに横に並ぶように束ねる束ね部材と、を有し、前記複数の竹部材において前記前幕板と前記後幕板とに支持されている、請求項1又は2に記載の椅子。
【請求項4】
前記前幕板と前記後幕板とのうちの前記一方は、摺動する前記複数の竹部材に当接する部位に、竹材を有する、請求項3に記載の椅子。
【請求項5】
前記複数の竹部材のうち、背もたれに相当する部分の一部に、別の竹部材が貼り合わされている、請求項3又は4に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座板及び背もたれ自身がしなる椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の椅子において、座り心地を良くするように、座板あるいは背もたれに柔軟なマット材を配置したものが、広く知られている。これに対して、座板及び背もたれ自身に、竹材のような適度なしなり(可撓性)を有する部材を用いることにより、マット材を用いない構造でありながら、クッション性を実現しようとする椅子が知られている。特許文献1に開示される椅子は、その一例である。
【0003】
しかし、特許文献1に開示される椅子は、座板及び背もたれを一体的に構成する部材が、背もたれの頂部を支える笠木と、座板の前部を支える前幕板とに、固定されていることから、その変形が限られており、しなりを十分に生かし得ていない、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、座板及び背もたれ自身がしなることにより、クッション性を実現するとともに、クッション性を従来よりも高めた椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、椅子であって、座板と背もたれとが、湾曲した可撓性の一体の部材で構成されている。そして、前記一体の部材は、前幕板と、それよりも高い位置にある後幕板と、により支持され、かつ、前記前幕板と前記後幕板とのうちの一方に対しては摺動可能であり、他方に対しては摺動が制止される。
【0007】
この構成によれば、椅子の使用者が一体の部材に座したときに、その重量により、可撓性の一体の部材が前幕板と後幕板との一方に対して摺動することにより撓(たわ)む。このため、座した使用者に、深くかつ格別のクッション感がもたらされる。
【0008】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による椅子であって、前記一体の部材は、前記前幕板と前記後幕板とのうちの前記一方に対しては、摺動可能に、かつ分離不能に係止され、前記他方に対しては分離不能に支持される。
【0009】
この構成によれば、一体の部材の撓みによるクッション性を保ちつつ、一体の部材が椅子の他の部分から分離することを防ぐことができる。
【0010】
本発明のうち第3の態様によるものは、第1又は第2の態様による椅子であって、前記一体の部材は、湾曲した複数の長尺の竹部材と、それらの竹部材を、互いに横に並ぶように束ねる束ね部材と、を有し、前記複数の竹部材において前記前幕板と前記後幕板とに支持されている。
【0011】
この構成によれば、湾曲した一体の部材が、互いに横に並ぶ複数の長尺の竹部材を有するので、一体の部材がしなやかに撓み易い。このため、優れたクッション感が容易に得られる。
【0012】
本発明のうち第4の態様によるものは、第3の態様による椅子であって、前記前幕板と前記後幕板とのうちの前記一方は、摺動する前記複数の竹部材に当接する部位に、竹材を有する。
この構成によれば、一方の幕板に対して複数の竹部材が摺動するときには、幕板の竹材に当接しつつ摺動するので、摺動にともなう異音の発生が抑えられる。
【0013】
本発明のうち第5の態様によるものは、第3又は第4の態様による椅子であって、前記複数の竹部材のうち、背もたれに相当する部分の一部に、別の竹部材が貼り合わされている。
この構成によれば、竹部材の背もたれに相当する部分の撓みが、適度な大きさに抑えられる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、座板及び背もたれ自身がしなることにより、クッション性を実現するとともに、クッション性を従来よりも高めた椅子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態による椅子の外観を例示する斜視図である。
【
図2】
図1の椅子の部分を例示する図であり、(a)は椅子の一部を背面から見た斜視図、(b)は椅子の一部を側面から見た断面図である。
【
図3】本発明の別の実施の形態による椅子の一部を例示する図であり、(a)は椅子の一部を背面から見た斜視図、(b)は椅子の一部を側面から見た断面図である。
【
図4】本発明のさらに別の実施の形態による椅子の一部を例示する図であり、(a)は椅子の一部を正面から見た斜視図、(b),(c)は椅子の一部を側面から見た断面図である。
【
図5】本発明のさらに別の実施の形態による椅子の一部を例示する側面断面図である。
【
図6】本発明のさらに別の実施の形態による椅子の一部を例示する正面斜視図である。
【
図7】本発明のさらに別の実施の形態による椅子の一部を例示する側面断面図である。
【
図8】本発明のさらに別の実施の形態による椅子の部分を例示する図であり、(a)は椅子の一部を背面から見た斜視図、(b)は椅子の一部を側面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態による椅子の外観を例示する斜視図である。この椅子101は、左右一対の前脚1、左右一対の後脚3、前脚1と後脚3とを連結する左右一対の脚貫(ぬき)5、左右一対の後脚3を互いに連結する脚貫7、左右一対の前脚1を上部において互いに連結する前幕板9、左右一対の後脚3から斜め後方に反りながら上方に延びる一対の背柱11、左右一対の後脚3の上端部を互いに連結する後幕板13、左右一対の背柱11の上端部を互いに連結する笠木15、左右一対の前脚1の頂部と左右一対の背柱11との間に掛け渡された左右一対の肘掛17、及び、座板と背もたれとが一体化された一体部材20を有している。一体部材20は、湾曲しかつ、適度にしなる可撓性の板状部材であり、前幕板9と後幕板13とに支持されている。後幕板13は、前幕板9よりも高い位置に設けられている。
【0017】
図示例では、一体部材20は、湾曲した複数の長尺の竹部材21と、それらの竹部材21を、互いに間隔を置いて横に並ぶように束ねる束ね部材23,25,27と、を有している。一体部材20は、前幕板9に対しては摺動可能であり、後幕板13に対しては摺動が制止されている。束ね部材23,25,27は、一例として木製である。また、椅子101の本体部を構成する部材1~17は、一例として木製である。
【0018】
図2は、椅子101の部分を例示する図であり、(a)は椅子101の一部を背面から見た斜視図、(b)は椅子101の一部を側面から見た断面図である。図示例では、一体部材20を構成する複数の竹部材21の一部の背面には、制止部材29が設けられている。制止部材29は、例えば、複数の竹部材21のうち、左端、中央、右端の3本の竹部材21の背面に設けられている。制止部材29は、図示例では木製の略直方体の小ブロックであり、接着剤によって竹部材21に接着されている。制止部材29は、その底面が後幕板13の上面に当接することにより、竹部材21が後幕板13に対して下方に摺動するのを制止する。一方、竹部材21の前端部には、前幕板9に対して摺動を妨げる制止部材は、設けられていない。このため、竹部材21は、前幕板9の上面に対して摺動可能である。
【0019】
椅子101の使用者が一体部材20に座すると、その荷重を受けることにより、竹部材21の前端部分は前幕板9の上面を滑って後方にずれる。その結果、点線30により例示するように、湾曲する一体部材20は、より急に湾曲するように撓む。このため、座した使用者には、深くかつ格別のクッション感がもたらされる。この独特のクッション感をともなう高いクッション性は、一体部材の前端部と後端部とが椅子本体に固定されている特許文献1に記載の椅子では得られないものである。
【0020】
図3は、本発明の別の実施の形態による椅子の一部を例示する図であり、(a)は椅子の一部を背面から見た斜視図、(b)は椅子の一部を側面から見た断面図である。この椅子102では、後幕板13には、制止部材29が当接する上面の部位に開口する穴31が設けられている。制止部材29には、穴31に挿入される挿入部33が設けられている。このように、挿入部33が穴31に挿入されることにより、一体部材20は、後幕板13に対する下方向への摺動が制止されるだけでなく、左右方向への摺動も制止される。また、一体部材20は、手により前方に押されたときに、後幕板13から離れることのないように、前方方向への動きも制止される。すなわち、椅子101の取り扱いがし易くなる。
【0021】
図示例では、制止部材29は2枚の木製の板状部材35,37が互いに接着されることにより構成されている。板状部材35は、一体部材20に接着される。板状部材37は、板状部材35よりも下方に延在しており、この延在部分が挿入部33を形成している。一体部材20は、椅子101の使用者が座したときには、点線39により例示するように、後幕板13よりも上方の部分が前方へ向かうように撓む。一方、使用者が座した状態で、背伸びをするなどにより後に反ると、一体部材20は、点線41により例示するように、後幕板13よりも上方の部分が後方へ向かうように撓む。このような一体部材20の動きにともなって、挿入部33は前後に傾動する。挿入部33のかかる動きを拘束しないように、穴31は、奥に向かうほど前後に広くなるように形成されている。図示例では、穴31としてアリ溝が形成されている。
【0022】
図4は、本発明のさらに別の実施の形態による椅子の一部を例示する図であり、(a)は椅子の一部を正面から見た斜視図、(b),(c)は椅子の一部を側面から見た断面図である。この椅子103では、一体部材20は、前幕板9に対して摺動可能であると同時に、前幕板9から分離できないように係止されている。図示例では、前幕板9には、前後に貫通する貫通孔43が設けられている。貫通孔43は、例えば、一体部材20を構成する複数の竹部材21のうち、左端、中央、右端の3本の竹部材21の直下の部位に設けられている。
一方、貫通孔43に対応する竹部材21の底面(既に述べた背面と同じ面)には、貫通孔43を前後に挿通する挿通部45を有する係止部材47が設けられている。係止部材47は、竹部材21の底面のうち、束ね部材23に近い部位に設けられる。係止部材47は、図示例では木製の小構造体であり、接着剤によって竹部材21に接着されている。図示例では、係止部材47は2枚の木製の板状部材49,51が互いに接着されることにより構成されている。板状部材49は、竹部材21に接着される。板状部材51は、板状部材49よりも前方に延在しており、この延在部分が挿通部45を形成している。
係止部材47の竹部材21に対するずれを防ぐために、図示例のように、係止部材47と竹部材21との間にはダボ48が差し込まれるのが望ましい。図示例のダボ48は、断面が竹部材21の長手方向に長い長円形である。ダボ48の材料は、例えば、木材、竹材、あるいは鋼などの金属である。
【0023】
貫通孔43に挿通部45が挿通されることにより、一体部材20の前端部分は、一体部材20を上方に持ち上げて前幕板9から分離しようとしてもできないように、前幕板9に係止される。一方、挿通部45は貫通孔43に対して前進及び後退が可能であるので、一体部材20の前端部分が前幕板9の上面に対して前後に摺動する動きを妨げない。
図3(b)に点線39、41により例示したように、一体部材20は、使用者の姿勢によって湾曲が急になったり、緩くなったりするように撓む。このような一体部材20の撓みを妨げないように、貫通孔43は、挿通部45に対して十分な空隙を有するように設けられる。すなわち、挿通部45は貫通孔43に遊びをもって挿通されている。
【0024】
椅子103では、制止部材29も、後幕板13から分離できないように、後幕板13に係止される。図示例では、後幕板13に設けられた穴31に挿入される挿入部33には、前後に貫通する貫通孔53が設けられている。この貫通孔53を貫通するピン55により、制止部材29は後幕板13に係止される。ピン55は、後幕板13のうち穴31の前後の壁をなす部分に嵌め込まれる。ピン55は、例えば木製、竹製、あるいは金属製であり、着脱可能なようにネジの形態であってもよい。
図3(b)に点線39、41により例示したような一体部材20の撓みを妨げないように、貫通孔53はピン55に対して十分な空隙を有するように設けられる。すなわち、ピン55は貫通孔53に遊びをもって挿通されている。
制止部材29の竹部材21に対するずれを防ぐために、図示例のように、制止部材29と竹部材21との間にもダボ28が差し込まれるのが望ましい。図示例のダボ28も、ダボ48と同様に、断面が竹部材21の長手方向に長い長円形である。ダボ28の材料は、ダボ48と同様に、例えば、木材、竹材、あるいは鋼などの金属である。図示を略するが、
図2に例示した椅子101,
図3に例示した椅子102においても、制止部材29と竹部材21との間に、ダボ28が差し込まれるのが望ましい。
【0025】
椅子103では、以上のように、一体部材20が前幕板9及び後幕板13から分離できないように、前幕板9及び後幕板13に係止されているので、一体部材20を含む椅子103全体の一体性が保持される。それにより、例えば、一体部材20を持って椅子103を持ち運びすることも可能である。
【0026】
図5は、本発明のさらに別の実施の形態による椅子の一部を例示する側面断面図である。この椅子104においても、一体部材20は、前幕板9に対して摺動可能であると同時に、前幕板9から分離できないように係止されている。椅子104では、前幕板9の貫通孔43に挿通される挿通部57が、一体部材20の前端にある束ね部材23に連結されている。すなわち、挿通される挿通部57を有する係止部材59が、束ね部材23に固定されている。図示例では、係止部材59は、木製の板状体であり、束ね部材23の底面に接着剤により接着されている。係止部材59のうち、束ね部材23から突出した部分が挿通部57に相当する。挿通部57も、挿通部45(
図4)と同様に、貫通孔43に遊びをもって挿通される。
【0027】
図示例のように、前幕板9の貫通孔43に対応する竹部材21の底面のうち、前幕板9の後方に位置する部位に、挿通部57を前進後退可能に受け入れることにより、挿通部57を支持する挿通部支持部材61を設けても良い。挿通部支持部材61は、空隙63に遊びを持って挿通部57を受け入れる。図示例では、挿通部支持部材61は、木製の板状部材65、木製のスペーサ67、木製の板状部材69を有している。これらの部材65,67,69は互いに接着剤により接着されている。板状部材65は竹部材21の底面に、接着剤により接着されている。これらの部材65,67,69に挟まれた領域が、空隙63に相当する。束ね部材23に一端部が支持され、片持ち梁の形態をなす係止部材59が、その自由端を挿通部支持部材61により支持されるので、係止部材59が損傷を受け難くなる。
【0028】
なお、図示を略するが、椅子104においても、制止部材29と竹部材21との間に、ダボ28(
図4)が差し込まれるのが望ましい。また、係止部材59と束ね部材23との間、及び板状部材65と竹部材21との間にも、ダボ28と同様にダボが差し込まれるのが望ましい。
【0029】
図6は、本発明のさらに別の実施の形態による椅子の一部を例示する正面斜視図である。この椅子105では、竹部材21と擦り合う前幕板9の上面部に、竹材71が配置されている。図示例では、前幕板9は、左右に延びる断面矩形の板状体である木製の前幕板本体部73と、その上面に接着された板状の竹材71を有している。竹部材21は、木製の本体部73ではなく、竹材71に当接し、擦れ合うので、擦れ合いにともなう異音の発生が抑えられる。
【0030】
図7は、本発明のさらに別の実施の形態による椅子の一部を例示する側面断面図である。この椅子106では、一体部材20は、前幕板9に対しては摺動が制止され、後幕板13に対しては摺動可能である。すなわち、前幕板9と後幕板13との間で、摺動と制止の役割が、椅子101~105とは逆になっている。図示例では、竹部材21の底面のうち、前幕板9の前方及び後方の部位に、それぞれ制止部材75,77が設けられている。制止部材75,77は、例えば、一体部材20を構成する複数の竹部材21のうち、左端、中央、右端の3本の竹部材21に設けられる。制止部材75,77は、例えば、木製の板状部材であり、竹部材21の底面に接着剤により接着されている。制止部材75,77は、互いに前幕板9を挟むように設けられる。図示例のように、制止部材75,77と前幕板9との間には、多少の遊びがあっても良い。一体部材20は、制止部材75、77が前幕板9に当接することにより、前幕板9に対する摺動が制止される。図示を略するが、制止部材75、77と竹部材21との間に、ダボ28(
図4)と同様にダボが差し込まれるのが望ましい。
【0031】
これに対して、一体部材20のうち、後幕板13よりも上方に位置する部分には、一体部材20の後幕板13に対する摺動を制止する制止部材29(
図2等参照)は設けられない。図示例では、一体部材20のうち、後幕板13よりも上方に離れた部位に、摺動を制限する制限部材79が設けられている。制限部材79は、例えば、一体部材20を構成する複数の竹部材21のうち、左端、中央、右端の3本の竹部材21に設けられる。制限部材79は、図示例では木製の略直方体の小ブロックであり、接着剤によって竹部材21に接着されている。制限部材79は、後幕板13から上方に離れた部位に設けられるので、一体部材20の後幕板13に対する摺動を妨げない。制限部材79は、一体部材20に過度の荷重が付加されたときに、一体部材20が過度に撓んで沈み込むことを防止する制限機能を果たす。既に例示した椅子101~105では、一体部材20の前端にあって、竹部材21の底面よりも下方に突出する束ね部材23が、かかる制限機能を果たす。図示を略するが、制限部材79と竹部材21との間にも、ダボ28(
図4)と同様にダボが差し込まれるのが望ましい。
【0032】
椅子106では、一体部材20は、前幕板9に対しては摺動が制止され、後幕板13に対しては摺動可能であるので、椅子106の使用者が一体部材20に座すると、一体部材20は、点線80により例示するように、より急に湾曲するように撓む。このため、座した使用者には、深くかつ格別のクッション感がもたらされる。
【0033】
椅子106の一体部材20が前幕板9から離れないように、一体部材20を前幕板9に係止させることも可能である。それには、例えば、前幕板9に椅子103(
図4)の前幕板9のように貫通孔43を設け、制止部材75、77の一方を、椅子103(
図4)の係止部材47の形状にし、係止部材47の挿通部45を貫通孔43に挿通させると良い。また、椅子106の一体部材20を、後幕板13に対して摺動可能、かつ分離不能に係止することも可能である。それには、例えば、後幕板13に上面から下面に貫通する貫通孔を設け、椅子103(
図4)の係止部材47の挿通部45が、この貫通孔に遊びを持って挿通されるように、係止部材47を竹部材21の背面に設けると良い。また、椅子106の一体部材20が摺動する後幕板13の前面に、椅子105(
図6)の竹材71を配置することも可能である。
【0034】
図8は、本発明のさらに別の実施の形態による椅子の部分を例示する図であり、(a)は椅子の一部を背面から見た斜視図、(b)は椅子の一部を側面から見た断面図である。この椅子107では、一体部材20を構成する竹部材21のうち、背もたれに相当する部分の一部に、補強部材81が設けられている。補強部材81は、一例として、竹部材21と同様に竹製であり、竹部材21に接着剤により貼り合わされている。すなわち、補強部材81が貼り合わされている部分において、あたかも竹部材21を厚くしたものと同様の構成となっている。これにより、背もたれ部において、竹部材21の過剰な撓み量を抑えることができる。補強部材81は、例えば、複数の竹部材21のうち、左端付近、中央、右端付近の3本の竹部材21の背面に設けられる。補強部材81の個数、長さ、厚さを変えることにより、一体部材20の背もたれ部における撓み量を調整することができる。図示を略するが、制止部材29と竹部材21との間、補強部材81と竹部材21との間にも、ダボ28(
図4)と同様にダボが差し込まれるのが望ましい。
【0035】
(その他の実施の形態)
竹部材21は、適度にしなる(撓む)性質を有しており、一体部材20の材料として好ましい。また、竹部材21は、見た目の美観、高級感にも優れ、自然の材料であるため見る者に安らぎをも与えるという利点がある。しかし、使用者の体重を支えるのに十分な剛性と、使用者が座したときに、クッション感が得られるほどの可撓性とを併せ持つ材料であれば、竹部材21に代えて、例えば木製の板材、竹を模擬した人工の板材など、他の部材を用いることも可能である。また、
図1に例示したように、複数の竹部材21が互いに間隙を持って配置された形態だけでなく、例えば木製の一枚板で構成することも可能であり、竹部材21を互いに隙間無く配置することも可能である。さらに、竹部材21は、節や皮のない裏面だけでなく、節や皮のある表面も、屈曲する内側(
図1において正面及び上面)とすることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 前脚、 3 後脚、 5,7 脚貫、 9 前幕板、 11 背柱、 13 後幕板、 15 笠木、 17 肘掛、 20 一体部材、 21 竹部材、 23,25,27 束ね部材、 28 ダボ、 29 制止部材、 30 点線、 31 穴、 33 挿入部、 35,37 板状部材、 39 点線、 41 点線、 43 貫通孔、 45 挿通部、 47 係止部材、 48 ダボ、 49,51 板状部材、 53 貫通孔、 55 ピン、 57 挿通部、 59 係止部材、 61 挿通部支持部材、 63 空隙、 65 板状部材、 67 スペーサ、 69 板状部材、 71 竹材、 73 前幕板本体部、 75,77 制止部材、 79 制限部材、 80 点線、 81 補強部材、 101,102,103,104,105,106,107 椅子。