IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図1
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図2
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図3
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図4
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図5
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図6
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図7
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図8
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図9
  • 特開-情報取得システムおよび情報取得方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079873
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】情報取得システムおよび情報取得方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20220520BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
G01C15/00 104C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190726
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚登
(72)【発明者】
【氏名】後藤 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】坪井 啓介
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003BA02
2D003BB04
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】作業機械に関する情報を、簡便な作業でより正確に取得する。
【解決手段】情報取得システムは、油圧ショベル100と、ターゲット部40と、位置計測部50と、情報取得部60とを備えている。油圧ショベル100は、旋回体3と、旋回体3に対して相対移動可能な作業機2とを有している。ターゲット部40は、作業機2に取り付けられている。位置計測部50は、作業機2の旋回体3に対する相対移動に伴って移動するターゲット部40の位置を連続して計測する。情報取得部60は、計測から得られるターゲット部40の軌跡から、油圧ショベル100に関する三次元情報を取得する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、前記ベース部に対して相対移動可能な可動部とを有する、作業機械と、
前記可動部に取り付けられたターゲット部と、
前記可動部の前記ベース部に対する相対移動に伴って移動する前記ターゲット部の位置を連続して計測する位置計測部と、
前記計測から得られる前記ターゲット部の軌跡から、前記作業機械に関する三次元情報を取得する情報取得部と、を備える、情報取得システム。
【請求項2】
前記可動部は、前記ベース部に対して相対回転可能である、請求項1に記載の情報取得システム。
【請求項3】
前記ターゲット部の軌跡は円弧である、請求項2に記載の情報取得システム。
【請求項4】
前記三次元情報は、前記ベース部に対する前記可動部の相対回転の中心位置の情報である、請求項2または請求項3に記載の情報取得システム。
【請求項5】
前記三次元情報は、前記中心位置と前記ターゲット部との距離の情報である、請求項4に記載の情報取得システム。
【請求項6】
前記可動部は、複数のリンク部材が関節を介して接続されたリンク機構を有し、
前記三次元情報は、前記中心位置と前記関節との距離の情報である、請求項4または請求項5に記載の情報取得システム。
【請求項7】
前記三次元情報は、複数の前記関節間の距離の情報である、請求項6に記載の情報取得システム。
【請求項8】
前記三次元情報は、前記ベース部に対する前記可動部の相対回転により形成される平面の情報である、請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の情報取得システム。
【請求項9】
前記三次元情報は、前記平面の水平面に対する傾斜角度の情報である、請求項8に記載の情報取得システム。
【請求項10】
前記作業機械は、前記作業機械が位置する地面の傾斜角度を検出する傾斜センサをさらに有し、
前記三次元情報は、前記平面の傾斜角度に対する前記地面の傾斜角度の差分の情報である、請求項9に記載の情報取得システム。
【請求項11】
前記情報取得部は、前記差分から、前記傾斜センサにより検出される前記地面の傾斜角度に対する較正値を取得する、請求項10に記載の情報取得システム。
【請求項12】
前記ターゲット部は、前記可動部の一箇所に取り付けられている、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の情報取得システム。
【請求項13】
ベース部と、前記ベース部に対して相対移動可能な可動部とを有し、前記可動部にターゲット部が取り付けられる作業機械に関する三次元情報を取得する情報取得方法であって、
前記可動部を前記ベース部に対して相対移動させることと、
前記可動部の前記ベース部に対する相対移動に伴って移動する前記ターゲット部の位置を連続して計測することと、
前記計測により得られる前記ターゲット部の軌跡から、前記三次元情報を取得することと、を備える、情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械に関する情報を取得するための情報取得システムおよび情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化施工とは、建設土木事業における施工において、情報通信技術(ICT)の活用により、高効率かつ高精度な施工を実現するものである。情報化施工技術の一例として、トータルステーションまたはGNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)などの位置計測装置を用いて作業機械の位置を取得し、施工箇所の設計データと現況地形データとの差分に関する情報を作業機械の運転席モニタへ提供する、マシンガイダンス技術が提案されている。
【0003】
作業機械の一つに油圧ショベルがある。油圧ショベルは、ブーム、アーム、及びバケットから構成される作業機を備えてよい。ブーム、アーム、及びバケットは、順にピンにより回動可能に支持されてよい。マシンガイダンス技術を用いた施工に関し、非特許文献1には、ICT油圧ショベルのアーム寸法など各可動部のピン間の寸法およびバケット寸法を測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】国土交通省近畿地方整備局近畿技術事務所「マシンガイダンス技術(バックホウ編)の手引書」、2014年3月、p.29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トータルステーションなどを用いて作業機械における作業機の各ピンの位置をそれぞれ測定した結果からピン間の寸法を算出するには、各ピンの位置に測量ターゲットを取り付ける必要がある。この測量ターゲットの取付作業が煩雑な上、各ピンに手作業で測量ターゲットを取り付けるため取付精度が担保されていない。
【0006】
本開示では、情報化施工のための作業機械に関する情報を、簡便な作業でより正確に取得できる、情報取得システムおよび情報取得方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従うと、情報取得システムが提案される。情報取得システムは、作業機械と、ターゲット部と、位置計測部と、情報取得部とを備えている。作業機械は、ベース部と、ベース部に対して相対移動可能な可動部とを有している。ターゲット部は、可動部に取り付けられている。位置計測部は、可動部のベース部に対する相対移動に伴って移動するターゲット部の位置を連続して計測する。情報取得部は、計測から得られるターゲット部の軌跡から、作業機械に関する三次元情報を取得する。
【0008】
本開示に従うと、作業機械に関する三次元情報を取得する情報取得方法が提案される。作業機械は、ベース部と、ベース部に対して相対移動可能な可動部とを有している。作業機械の可動部に、ターゲット部が取り付けられる。情報取得方法は、以下の処理を備えている。第1の処理は、可動部をベース部に対して相対移動させることである。第2の処理は、可動部のベース部に対する相対移動に伴って移動するターゲット部の位置を連続して計測することである。第3の処理は、計測から得られるターゲット部の軌跡から、作業機械に関する三次元情報を取得することである。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る情報取得システムおよび情報取得方法によれば、作業機械に関する情報を、簡便な作業でより正確に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】油圧ショベルの外観図である。
図2】実施形態に基づく情報取得システムの概略構成を示す模式図である。
図3】情報取得システムの機能的構成を示すブロック図である。
図4】油圧ショベルに関する三次元情報を取得する処理の流れを示すフロー図である。
図5】旋回体の旋回を示す平面模式図である。
図6】旋回平面の傾斜角および慣性計測装置の取付誤差を示す側面模式図である。
図7】作業機動作平面の導出時のブームの動作を示す側面模式図である。
図8】バケット寸法の導出時のバケットの動作を示す側面模式図である。
図9】アーム寸法の導出時のアームの動作を示す側面模式図である。
図10】ブーム寸法の導出時のブームの動作を示す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、実施形態に基づく情報取得システムおよび情報取得方法によって情報が取得される作業機械の一例としての、油圧ショベル100の外観図である。実施形態においては、作業機械として、油圧ショベル100を例に挙げて説明する。
【0013】
図1に示されるように、油圧ショベル100は、本体1と、油圧により作動する作業機2とを有している。本体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。走行モータ5Mは、油圧により作動する油圧モータである。
【0014】
油圧ショベル100の動作時には、走行体5、より具体的には履帯5Crが、地面に接触している。走行体5は、履帯5Crの回転により地面を走行可能である。なお、走行体5が履帯5Crの代わりに車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0015】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、走行体5に対して相対移動可能である。旋回体3は、旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能に、走行体5に搭載されている。旋回体3は、走行体5上に、旋回サークル部を介して取り付けられている。旋回サークル部は、平面視した本体1の略中央部に配置されている。旋回サークル部は、円環状の概略形状を有しており、内周面に旋回用の内歯を有している。この内歯と噛み合うピニオンが、図示しない旋回モータに装着されている。旋回モータから駆動力が伝達されて旋回サークル部が回転することにより、旋回体3が走行体5に対して相対回転可能とされている。
【0016】
旋回体3は、キャブ4を有している。油圧ショベル100の乗員(オペレータ)は、このキャブ4に搭乗して、油圧ショベル100を操縦する。キャブ4には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられている。オペレータは、キャブ4内において油圧ショベル100を操作可能である。オペレータは、キャブ4内において、作業機2の操作が可能であり、走行体5に対する旋回体3の旋回操作が可能であり、また走行体5による油圧ショベル100の走行操作が可能である。本開示では油圧ショベル100はキャブ4内から操作されるが、油圧ショベル100から離れた場所から無線により遠隔操作されてもよい。
【0017】
実施形態においては、キャブ4内の運転席4Sに着座したオペレータを基準として、油圧ショベル100の旋回体3における各部の位置関係について説明する。前後方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの前後方向をいう。運転席4Sに着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、運転席4Sに着座したオペレータの背後方向が後方向である。左右方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの左右方向をいう。運転席4Sに着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。上下方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの上下方向をいう。運転席4Sに着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0018】
前後方向において、旋回体3から作業機2が突き出している側が前方向であり、前方向と反対方向が後方向である。前方向を視て左右方向の右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0019】
旋回体3は、エンジンが収容されるエンジンルーム9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有している。エンジンルーム9には、駆動力を発生するエンジン、エンジンの発生する駆動力を受けて油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプなどが配置されている。
【0020】
旋回体3において、エンジンルーム9の前方に手すり19が設けられている。手すり19には、アンテナ21が設けられている。アンテナ21は、たとえばGNSS用のアンテナである。アンテナ21は、左右方向に互いに離れるように旋回体3に設けられた第1アンテナ21Aおよび第2アンテナ21Bを有している。
【0021】
作業機2は、旋回体3に搭載されており、旋回体3によって支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。ブーム6は、旋回体3に回転可能に連結されている。アーム7は、ブーム6に回転可能に連結されている。バケット8は、アーム7に回転可能に連結されている。バケット8は、複数の刃を有している。バケット8の先端部を、刃先8aと称する。
【0022】
なお、バケット8は、刃を有していなくてもよい。バケット8の先端部は、ストレート形状の鋼板で形成されていてもよい。
【0023】
ブーム6の基端部は、ブームフートピン13(以下、ブームピンという)を介して旋回体3に連結されている。アーム7の基端部は、アーム連結ピン14(以下、アームピンという)を介してブーム6の先端部に連結されている。バケット8は、バケット連結ピン15(以下、バケットピンという)を介してアーム7の先端部に連結されている。ブームピン13、アームピン14およびバケットピン15は、略左右方向に延びている。
【0024】
ブーム6は、旋回体3に対して相対移動可能である。ブーム6は、ブームピン13を中心に、旋回体3に対して相対回転可能である。アーム7は、ブーム6に対して相対移動可能である。アーム7は、アームピン14を中心に、ブーム6に対して相対回転可能である。バケット8は、アーム7に対して相対移動可能である。バケット8は、バケットピン15を中心に、アーム7に対して相対回転可能である。
【0025】
アーム7およびバケット8は、バケット8がアーム7に対して相対回転しない状態で、一体的にブーム6に対して相対移動可能、具体的には相対回転可能である。ブーム6、アーム7およびバケット8は、バケット8がアーム7に対して相対回転せず、かつアーム7がブーム6に対して相対回転しない状態で、一体的に旋回体3に対して相対移動可能、具体的には相対回転可能である。作業機2および旋回体3は、作業機2が旋回体3に対して相対回転しない状態で、一体的に走行体5に対して相対移動可能、具体的には相対回転可能である。
【0026】
作業機2は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とを有している。ブームシリンダ10は、ブーム6を駆動する。アームシリンダ11は、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動する。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、およびバケットシリンダ12のそれぞれは、作動油によって駆動される油圧シリンダである。
【0027】
バケットシリンダ12は、アーム7に取り付けられている。バケットシリンダ12が伸縮することにより、アーム7に対してバケット8が回転する。作業機2は、バケットリンクを有している。バケットリンクは、バケットシリンダ12とバケット8とを連結している。
【0028】
油圧ショベル100には、コントローラ26が搭載されている。コントローラ26は、油圧ショベル100の動作を制御する。
【0029】
図2は、実施形態に基づく情報取得システムの概略構成を示す模式図である。油圧ショベル100には、ターゲット部40が取り付けられている。ターゲット部40は、油圧ショベル100の一箇所に取り付けられている。図2に示される例では、バケット8の刃先8aに、ターゲット部40が取り付けられている。
【0030】
情報取得システムは、位置計測部50を備えている。位置計測部50は、ターゲット部40の位置を計測する。位置計測部50は、たとえばレーザトラッカであり、この場合、ターゲット部40は、ターゲットリフレクタである。
【0031】
レーザトラッカは、ターゲットリフレクタに向かってレーザ光Lを照射する。ターゲットリフレクタは、レーザ光Lが照射されると、照射された方向と同じ方向に光を反射する。その反射光は、レーザトラッカに戻ることになる。レーザトラッカは、ターゲットリフレクタからレーザ光Lが戻ってきた時間より、レーザトラッカとターゲットリフレクタとの距離を求めることができる。またレーザトラッカは、レーザ光Lを照射した方向を自身で把握している。レーザトラッカは、レーザ光Lを照射した方向と、ターゲットリフレクタまでの距離とから、ターゲットリフレクタの三次元位置を求めることができる。
【0032】
レーザトラッカは、移動するターゲットリフレクタの三次元位置を、高サンプリングレートで連続的に計測できる。レーザトラッカは、ターゲットリフレクタの移動を自動的に追尾して、三次元位置を連続的に取得できる。これによりレーザトラッカは、移動中のターゲットリフレクタの軌跡を取得することができる。高サンプリングレートで連続的に計測されたターゲットリフレクタの三次元位置は、ターゲットリフレクタの軌跡として処理することができる。
【0033】
位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置を取得できるものであればよく、レーザトラッカに限られない。たとえば位置計測部50は、ターゲット部40の追尾機能を備えたトータルステーションであってもよい。またたとえば位置計測部50は、ステレオカメラに代表される撮像装置であってもよく、この場合、ターゲット部40は、撮像画像中におけるターゲット部40の位置の認識を容易にするためのマーカであってもよい。またたとえば位置計測部50は、任意の角度計と距離計との組み合わせによって実現されてもよい。
【0034】
情報取得システムは、情報取得部60を備えている。情報取得部60は、たとえば油圧ショベル100の外部に設けられている。情報取得部60は、無線または有線の通信手段を介して、位置計測部50と通信可能とされている。情報取得部60は、CPU(Central Processing Unit)、不揮発性メモリ、タイマなどを含んで構成されるコンピュータである。
【0035】
情報取得部60は、移動するターゲット部40の軌跡から、油圧ショベル100に関する三次元情報を取得する。情報取得部60により取得される油圧ショベル100に関する三次元情報は、たとえば、油圧ショベル100の作業機2の寸法、旋回体3に対して相対回転する作業機2の軌跡が描く平面、走行体5に対して相対回転する旋回体3の軌跡が描く平面などを含む。油圧ショベル100に関する三次元情報は、三次元空間における油圧ショベル100の所定部位の位置座標情報、2つの所定部位間の距離情報、油圧ショベル100の形状・姿勢等により規定される平面の情報などであってよい。三次元空間の座標系は、ITRF(International Terrestrial Reference Frame)座標系であってよい。
【0036】
図3は、情報取得システムの機能的構成を示すブロック図である。油圧ショベル100は、図1を参照して説明した旋回体3、ブーム6、アーム7、バケット8およびコントローラ26に加えて、慣性計測装置(IMU)30を備えている。慣性計測装置30は、油圧ショベル100の傾きを検出する。慣性計測装置30は、前後方向、左右方向および上下方向に対する、油圧ショベル100の傾斜角度を検出する。慣性計測装置30は、油圧ショベル100が位置する地面の傾斜角度を検出する、実施形態の傾斜センサに相当する。慣性計測装置30は、図2に示すように旋回体3の前部左右方向中央の位置に取り付けられている。
【0037】
ターゲット部40は、油圧ショベル100のうち、旋回体3または作業機2(ブーム6、アーム7、バケット8)のいずれかの一箇所に取り付けられる。位置計測部50は、旋回体3、ブーム6、アーム7またはバケット8に取り付けられたターゲット部40の、三次元位置を計測する。
【0038】
情報取得部60は、入力部61と、旋回平面導出部62と、車載IMUアライメント誤差演算部63と、作業機動作平面導出部64と、回転半径演算部65と、ベクトル処理部66と、出力部67とを備えている。
【0039】
図4は、油圧ショベル100に関する三次元情報を取得する処理の流れを示すフロー図である。図3に示される情報取得部60の各機能ブロックの機能と、各機能ブロックによって実現される、油圧ショベル100に関する三次元情報を取得する処理との詳細について、以下に説明する。以下の処理によって取得される油圧ショベル100に関する三次元情報は、情報化施工を実施するに当たり、バケット8の刃先8aの位置を正確に導出して、作業機2の位置の演算の精度を向上するために必要なパラメータである。
【0040】
まず、ステップS1~S6の処理において、油圧ショベル100の旋回体3に搭載された慣性計測装置30の取付誤差に対する較正値を求め、水平面に対する旋回体3の傾きを正確に認識できるようにする。ステップS1において、旋回体3の旋回時の、車体の任意の位置の軌跡TRを測量する。
【0041】
図5は、旋回体3の旋回を示す平面模式図である。上述した通り、旋回モータの発生する駆動力を受けて、旋回体3は走行体5に対して旋回する。なお、油圧ショベル100は、ブーム6を上げながら旋回体3が旋回するホイスト旋回、ブーム6を下げながら旋回体3が旋回するダウン旋回が可能であるが、図5に示される旋回中は、旋回体3に対する作業機2の相対位置は一定のままとされる。静止部位である走行体5をベース部、ベース部に対して相対的に回転動作する旋回体3及び作業機2を可動部とする。
【0042】
ターゲット部40は、作業機2または旋回体3の任意の位置に取り付けられる。ターゲット部40はたとえば、ブーム6の先端、典型的にはアームピン14の位置に取り付けられる。この状態で、走行体5に対して旋回体3が旋回する。走行体5を静止するベース部とし、旋回体3を可動部として旋回させる。典型的には、走行体5に対して、旋回体3が180°回転する。作業機2および旋回体3の走行体5に対する相対回転に伴って移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が計測する。位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置を連続的に取得し、取得したターゲット部40の三次元位置情報(位置信号)を情報取得部60の入力部61に出力する。
【0043】
旋回平面導出部62は、連続的に取得されたターゲット部40の三次元位置から、ターゲット部40の軌跡を取得し、これを軌跡TRとする。
【0044】
ステップS2において、旋回平面導出部62は、ステップS1で得られた軌跡TRから、最小自乗法により、旋回平面PRの方程式を導出する。平面を傾けていって、ターゲット部40の軌跡TR上の点群との誤差が最も小さくなる平面を求め、求められた平面を旋回平面PRとする。
【0045】
連続的に取得されたターゲット部40の三次元位置から最小自乗法によって平面の方程式を導出する方法については、たとえば、下記のWebサイトで解説されている。
”エスオーエル株式会社メールマガジン「知って得する干渉計測定技術!」2009年2月10日号VOL.001”、[令和2年10月27日検索]、インターネット<URL:https://www.sol-j.co.jp/mailmag/d-0001.html>
ステップS3において、車載IMUアライメント誤差演算部63は、ステップS2で得られた旋回平面PRの方程式から、旋回平面PRの水平面からの傾斜角AIDを演算する。
【0046】
図6は、旋回平面PRの水平面Hからの傾斜角AIDおよび慣性計測装置30の取付誤差βを示す側面模式図である。ターゲット部40は、ブーム6の先端のアームピン14の位置に取り付けられている。慣性計測装置30は、内蔵されるセンサの座標系の原点OPを基準として油圧ショベル100の本体1の姿勢情報(角度信号)を出力する。車載IMUアライメント誤差演算部63は、旋回体3が走行体5に対して旋回するときのターゲット部40の軌跡TRから、最小自乗法によって、旋回平面PRを導出する。車載IMUアライメント誤差演算部63は、水平面Hに対する旋回平面PRの傾斜角AIDを演算する。
【0047】
ステップS4において、油圧ショベル100に搭載された慣性計測装置30の計測結果情報(IMU出力信号)が、情報取得部60の入力部61に入力される。車載IMUアライメント誤差演算部63は、慣性計測装置30の出力から、車体姿勢、すなわち水平面Hに対する油圧ショベル100の本体1の傾斜角AIを取得する。
【0048】
ステップS5において、車載IMUアライメント誤差演算部63は、ステップS3で演算された旋回平面PRの傾斜角AIDと、ステップS4で取得された油圧ショベル100の本体1の傾斜角AIとを比較する。車載IMUアライメント誤差演算部63は、傾斜角AIDと傾斜角AIとが等しくないか否か、すなわち、傾斜角AIDに対する傾斜角AIの誤差が存在するか否かを判断する。
【0049】
傾斜角AIDと傾斜角AIとが等しくないと判断されると(ステップS5においてYES)、ステップS6に進み、車載IMUアライメント誤差演算部63は、傾斜角AIDと傾斜角AIとの差分により、慣性計測装置30のアライメント誤差(取付誤差)を較正する。図6に示されるように、車載IMUアライメント誤差演算部63は、旋回平面PRの傾斜角AIDと、慣性計測装置30の認識した角度である傾斜角AIとの差分として、IMU取付誤差βを演算する。より詳細には、車載IMUアライメント誤差演算部63は、以下のようにIMU取付誤差βを算出する。
【0050】
ステップS2において、旋回平面PRの方程式が、高さをz、面の縦横方向をx,yとしたとき、z=a+bx+cyのように求められたとする。この場合、旋回平面PRの傾きを示す旋回平面PRの法線ベクトルは、(b,c,1)となる。また、慣性計測装置30により計測される車体の傾斜角AIの角度ベクトルを(A,B,C)とすると、旋回平面PRの傾斜角AIDと車体の傾斜角AIとの差分ベクトルは(A-b,B-c,C-1)となる。この差分ベクトルが、IMU取付誤差βとなる。
【0051】
車載IMUアライメント誤差演算部63は、旋回平面PRの傾斜角AIDに対する、慣性計測装置30の認識した角度である傾斜角AIの差分を取得する。車載IMUアライメント誤差演算部63は、この差分から、慣性計測装置30により検出される傾斜角AIに対する較正値を取得する。出力部67は、この較正値情報(較正値信号)を、油圧ショベル100に搭載されたコントローラ26に出力する。
【0052】
ステップS5の判断において傾斜角AIDと傾斜角AIとが等しいと判断されると(ステップS5においてNO)、慣性計測装置30により検出される傾斜角AIに対する較正の必要がないため、ステップS6の処理は行われずに、直接ステップS7に進む。
【0053】
次に、ステップS7~S8の処理において、作業機2の移動する平面を求め、左右方向における刃先8aの位置のずれを正確に認識できるようにする。ステップS7において、作業機動作平面導出部64は、作業機2のブーム6のみを動作させるときの、ブーム6の先端のアームピン14の軌跡TBを測量する。
【0054】
図7は、作業機動作平面PI(図5参照)の導出時のブーム6の動作を示す側面模式図である。ターゲット部40は、ブーム6の先端の、アームピン14の位置に取り付けられる。この状態で、旋回体3に対してブーム6が回転する。油圧ショベル100の本体1をベース部とし、ブーム6を可動部として回動させる。典型的には、ブームシリンダ10が縮み側のストロークエンドにあるブーム6が最も振り上げられた位置から、作業機2が地面に接触する直前の位置まで、ブーム6が振り下ろされる。このとき、ブーム6に対するアーム7およびバケット8の相対位置は一定のままとされる。
【0055】
このとき、アームシリンダ11が伸び側のストロークエンドにあって、アーム7が掘削方向(アーム7がブーム6に近づく方向。図7においてはアームピン14まわりの時計回り方向)に移動可能な極限の位置にあってもよい。バケットシリンダ12が伸び側のストロークエンドにあって、バケット8が掘削方向(バケット8がアーム7に近づく方向。図7においてはバケットピン15まわりの時計回り方向)に移動可能な極限の位置にあってもよい。このようにアーム7およびバケット8の位置を定めることで、図7に示されるように作業機2が最も折り畳まれた姿勢になるため、ブーム6を振り下ろせる距離がより大きくなる。
【0056】
ブーム6の旋回体3に対する相対回転に伴って移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が計測する。位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置を連続的に取得し、取得したターゲット部40の三次元位置情報(位置信号)を情報取得部60の入力部61に出力する。
【0057】
作業機動作平面導出部64は、連続的に取得されたターゲット部40の三次元位置から、ターゲット部40の軌跡を取得し、これを軌跡TBとする。
【0058】
ステップS8において、作業機動作平面導出部64は、ステップS7で得られた軌跡TBから、最小自乗法により、作業機動作平面PIの方程式を導出する。作業機動作平面PIの方程式の導出は、ステップS2における旋回平面PRの方程式の導出と同様に、行うことができる。
【0059】
出力部67は、求められた作業機動作平面PIの方程式の情報(方程式信号)を、油圧ショベル100に搭載されたコントローラ26に出力する。
【0060】
次に、ステップS9~S18の処理において、ブーム6、アーム7、およびバケット8の正確な寸法を求める。ステップS9において、回転半径演算部65は、作業機2のバケット8のみを動作させるときの、バケット8の刃先8aの軌跡TBkを測量する。
【0061】
図8は、バケット8の寸法を導出するときのバケット8の動作を示す側面模式図である。ターゲット部40は、バケット8の刃先8aの位置に取り付けられる。この状態で、バケットピン15を中心として、アーム7に対してバケット8が回転する。本体1とブーム6とアーム7とをベース部とし、バケット8を可動部として回動させる。図8に示されるように、バケット8はダンプ方向(バケット8が車体から離れる方向。図8においてはバケットピン15まわりの反時計回り方向)に移動してもよい。このとき、ブーム6およびアーム7は静止したままとされる。
【0062】
バケット8のアーム7に対する相対回転に伴って移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が計測する。位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置を連続的に取得し、取得したターゲット部40の三次元位置情報(位置信号)を情報取得部60の入力部61に出力する。
【0063】
回転半径演算部65は、連続的に取得されたターゲット部40の三次元位置から、ターゲット部40の軌跡を取得し、これを軌跡TBkとする。
【0064】
ステップS10において、回転半径演算部65は、ステップS9で得られた軌跡TBkから、最小自乗法により、バケットピン15の座標と、バケットピン15とターゲット部40の取り付けられたバケット8の刃先8aとの間の距離とを演算する。バケットピン15を中心として回転するターゲット部40の軌跡TBk上の点群から、仮決めした円弧の中心までの半径誤差を最小化するように計算し、計算された中心をバケットピン15の座標とする。
【0065】
バケットピン15を中心として回転移動するターゲット部40の三次元位置から最小自乗法によって回転中心の座標と回転半径とを導出する方法については、たとえば、下記のWebサイトで解説されている。
”最小二乗法による球の推定”、[令和2年10月27日検索]、インターネット<URL:https://qiita.com/yujikaneko/items/955b4474772802b055bc>
ステップS11において、ベクトル処理部66は、バケットピン15と、バケット8の刃先8aとの間のベクトルVbを生成する。図8に示されるように、ベクトルVbは、作業機2を側方から見た場合に、バケットピン15を始点としバケット8の刃先8aを終点とするベクトルである。
【0066】
ステップS12において、回転半径演算部65は、作業機2のアーム7を動作させるときの、バケット8の刃先8aの軌跡TAを測量する。
【0067】
図9は、アーム7の寸法を導出するときのアーム7の動作を示す側面模式図である。ターゲット部40は、バケット8の刃先8aの位置に取り付けられる。この状態で、アームピン14を中心として、ブーム6に対してアーム7およびバケット8が回転する。本体1とブーム6とをベース部とし、アーム7を可動部として回動させる。図9に示されるように、アーム7はダンプ方向(アーム7が車体から離れる方向。図9においてはアームピン14まわりの反時計回り方向)に移動してもよい。このとき、アーム7に対するバケット8の相対位置は一定のままとされる。バケットシリンダ12が、伸び側または縮み側のいずれか一方のストロークエンドに位置していてもよい。また、ブーム6は静止したままとされる。
【0068】
ブーム6に対するアーム7およびバケット8の相対回転に伴って移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が計測する。位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置を連続的に取得し、取得したターゲット部40の三次元位置情報(位置信号)を情報取得部60の入力部61に出力する。
【0069】
回転半径演算部65は、連続的に取得されたターゲット部40の三次元位置から、ターゲット部40の軌跡を取得し、これを軌跡TAとする。
【0070】
ステップS13において、回転半径演算部65は、ステップS12で得られた軌跡TAから、最小自乗法により、アームピン14の座標と、アームピン14とバケット8の刃先8aとの間の距離とを演算する。この演算は、ステップS10における回転中心の座標と回転半径との導出と同様に、行うことができる。
【0071】
ステップS14において、ベクトル処理部66は、アームピン14と、バケット8の刃先8aとの間のベクトルVa’を生成する。図9に示されるように、ベクトルVa’は、作業機2を側方から見た場合に、アームピン14を始点としバケット8の刃先8aを終点とするベクトルである。
【0072】
ステップS15において、回転半径演算部65は、作業機2のブーム6を動作させるときの、バケット8の刃先8aの軌跡VBを測量する。
【0073】
図10は、ブーム6の寸法を導出するときのブーム6の動作を示す側面模式図である。ターゲット部40は、バケット8の刃先8aの位置に取り付けられる。この状態で、ブームピン13を中心として、旋回体3に対してブーム6、アーム7およびバケット8が回転する。本体1をベース部とし、ブーム6を可動部として回動させる。図10に示されるように、ブーム6はブーム上げ方向(図10においてはブームピン13まわりの反時計回り方向)に移動してもよい。このとき、アーム7に対するバケット8の相対位置は一定のままとされる。バケットシリンダ12が、伸び側または縮み側のいずれか一方のストロークエンドに位置していてもよい。かつ、ブーム6に対するアーム7の相対位置は一定のままとされる。アームシリンダ11が、伸び側または縮み側のいずれか一方のストロークエンドに位置していてもよい。
【0074】
旋回体3に対するブーム6、アーム7およびバケット8の相対回転に伴って移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が計測する。位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置を連続的に取得し、取得したターゲット部40の三次元位置情報(位置信号)を情報取得部60の入力部61に出力する。
【0075】
回転半径演算部65は、連続的に取得されたターゲット部40の三次元位置から、ターゲット部40の軌跡を取得し、これを軌跡VBとする。
【0076】
ステップS16において、回転半径演算部65は、ステップS15で得られた軌跡VBから、最小自乗法により、ブームピン13の座標と、ブームピン13とバケット8の刃先8aとの間の距離とを演算する。この演算は、ステップS10における回転中心の座標と回転半径との導出と同様に、行うことができる。
【0077】
ステップS17において、ベクトル処理部66は、ブームピン13と、バケット8の刃先8aとの間のベクトルVs’を生成する。図10に示されるように、ベクトルVs’は、作業機2を側方から見た場合に、ブームピン13を始点としバケット8の刃先8aを終点とするベクトルである。
【0078】
ステップS18において、ベクトル処理部66は、ベクトルVbの大きさを求め、これをバケット8の刃先8aとバケットピン15との間の距離、すなわちバケット8の寸法とする。ベクトル処理部66は、ベクトルVa’からベクトルVbを引いた差であるベクトルVa(図9)の大きさを求め、これをアームピン14とバケットピン15との間の距離、すなわちアーム7の寸法とする。ベクトル処理部66は、ベクトルVs’からベクトルVaとベクトルVbとの和を引いた差であるベクトルVs(図10)の大きさを求め、これをブームピン13とアームピン14との間の距離、すなわちブーム6の寸法とする。
【0079】
出力部67は、求められたブーム6、アーム7、およびバケット8の寸法の情報(寸法信号)を、油圧ショベル100に搭載されたコントローラ26に出力する。
【0080】
このようにして、油圧ショベル100に関する三次元情報を取得する一連の処理を終了する(図4のEND)。
【0081】
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0082】
図2に示されるように、位置計測部50は、ターゲット部40の位置を計測する。ターゲット部40はたとえば、図6,7に示されるようにブーム6の先端に取り付けられており、旋回体3の走行体5に対する相対移動に伴って移動したり、ブーム6の旋回体3に対する相対移動に伴って移動したりする。またはターゲット部40はたとえば、図8~10に示されるようにバケット8の刃先8aに取り付けられており、バケット8のアーム7に対する相対移動に伴って移動したり(図8)、アーム7のブーム6に対する相対移動に伴って移動したり(図9)、ブーム6の旋回体3に対する相対移動に伴って移動したりする(図10)。
【0083】
位置計測部50は、移動するターゲット部40の位置を連続して計測する。図3,4に示されるように、情報取得部60は、計測から得られるターゲット部40の軌跡から、油圧ショベル100の作業機2の寸法、旋回体3に対して相対回転する作業機2の軌跡が描く平面、走行体5に対して相対回転する旋回体3の軌跡が描く平面などの、油圧ショベル100に関する三次元情報を取得する。作業機2の寸法を算出するために各ピンの位置に測量ターゲットを取り付けて各ピンの位置を直接計測しなくてもよいため、短時間の簡便な作業で、情報をより正確に得ることができる。これらの情報に基づいて、バケット8の刃先8aの位置を正確に導出することができるので、情報化施工における作業機2の位置の演算の精度を向上することができる。
【0084】
図5に示されるように、旋回体3は、走行体5に対して相対回転可能である。図7,10に示されるように、ブーム6は、旋回体3に対して相対回転可能である。図9に示されるように、アーム7は、ブーム6に対して相対回転可能である。図8に示されるように、バケット8は、アーム7に対して相対回転可能である。回転する機械部品にターゲット部40を取り付けて、円弧状に移動するターゲット部40の位置を計測することで、ターゲット部40の円弧状の軌跡を測量できる。このターゲット部40の円弧の軌跡から、油圧ショベル100に関する三次元情報を取得することができる。
【0085】
図4および図8~10に示されるように、情報取得部60は、回転する機械部品の回転の中心位置を取得する。情報取得部60は、取得された回転の中心位置の情報から、機械部品の寸法を求めることができる。
【0086】
図4,8に示されるように、バケット8はアーム7に対して相対回転し、バケット8の回転の中心位置がバケットピン15の位置である。情報取得部60は、バケットピン15とターゲット部40との距離を取得する。情報取得部60は、取得された距離の情報から、バケット8の寸法を求めることができる。
【0087】
図1に示されるように、アーム7は、アームピン14を介してブーム6に接続されている。作業機2は、ブーム6とアーム7とがアームピン14を介して接続され、アーム7とバケット8とがバケットピン15を介して接続された、リンク機構を有している。図4,10に示されるように、情報取得部60は、旋回体3に対して回転するブーム6の回転の中心位置であるブームピン13と、ブーム6とアーム7とを接続するアームピン14との距離を取得する。情報取得部60は、取得された距離の情報から、ブーム6の寸法を求めることができる。
【0088】
図4,9に示されるように、情報取得部60は、ブーム6とアーム7とを接続するアームピン14と、アーム7とバケット8とを接続するバケットピン15との距離を取得する。情報取得部60は、取得された距離の情報から、アーム7の寸法を求めることができる。
【0089】
図4,7に示されるように、情報取得部60は、旋回体3に対するブーム6の相対回転により形成される作業機動作平面PIの情報を取得する。取得された作業機動作平面PIの情報に基づいて、左右方向における刃先8aの位置のずれを正確に認識できるので、情報化施工におけるバケット8の刃先8aの位置の演算の精度を向上することができる。
【0090】
図4,6に示されるように、情報取得部60は、走行体5に対する旋回体3の相対回転により形成される旋回平面PRの情報を取得する。取得された旋回平面PRの情報から、油圧ショベル100が位置する地面の傾斜角度を正確に取得することができる。
【0091】
図4,6に示されるように、情報取得部60は、旋回平面PRの水平面Hに対する傾斜角AIDを取得する。取得された傾斜角AIDの情報から、油圧ショベル100が位置する地面の傾斜角度を正確に取得することができる。
【0092】
図3に示されるように、油圧ショベル100は、慣性計測装置30を有している。慣性計測装置30は、油圧ショベル100が位置する地面の傾斜角度を示す傾斜角AIを検出する。図4,6に示されるように、情報取得部60は、傾斜角AIDに対する傾斜角AIの差分であるIMU取付誤差βを取得する。取得されたIMU取付誤差βの情報から、慣性計測装置30による検出結果が、油圧ショベル100が位置する地面の傾斜角AIDに対してどの程度のずれを有しているかを認識することができる。
【0093】
図4,6に示されるように、情報取得部60は、IMU取付誤差βから、慣性計測装置30により検出される傾斜角AIに対する較正値を取得する。取得された較正値に従って慣性計測装置30による検出結果を較正することで、施工時に、油圧ショベル100が位置する地面の傾斜角度を、慣性計測装置30の検出結果に基づいて正確に認識することができる。これにより、情報化施工におけるバケット8の刃先8aの位置の演算の精度を向上することができる。
【0094】
図2,6~10に示されるように、ターゲット部40は、作業機2の一箇所に取り付けられている。油圧ショベル100に関する三次元情報を取得するために複数の測定ターゲットを取り付けなくてもよいので、作業を簡略化でき、かつ、取得する情報の精度を向上することができる。
【0095】
図4に示されるように、油圧ショベル100に関する三次元情報を取得する情報取得方法は、たとえば、バケット8をアーム7に対して相対移動させ、このバケット8の移動に伴って移動するターゲット部40の位置を連続して計測するステップS9と、計測により得られるターゲット部40の軌跡TBkから、バケットピン15の座標と、バケットピン15とバケット8の刃先8aとの間の距離とを取得するステップS10とを備えている。
【0096】
短時間の簡便な作業で、油圧ショベル100に関する三次元情報をより正確に得ることができ、これらの情報に基づいて、バケット8の刃先8aの位置を正確に導出することができるので、情報化施工における作業機2の位置の演算の精度を向上することができる。
【0097】
上記の実施形態では、作業機械の一例として油圧ショベル100を挙げているが、油圧ショベル100に限らず、ローディングショベル、機械式のロープショベル、電動ショベル、バケットクレーンなどの他の種類の作業機械にも適用可能である。
【0098】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
1 本体、2 作業機、3 旋回体、5 走行体、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、8a 刃先、10 ブームシリンダ、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、13 ブームフートピン、14 アーム連結ピン、15 バケット連結ピン、26 コントローラ、30 慣性計測装置、40 ターゲット部、50 位置計測部、60 情報取得部、61 入力部、62 旋回平面導出部、63 車載IMUアライメント誤差演算部、64 作業機動作平面導出部、65 回転半径演算部、66 ベクトル処理部、67 出力部、100 油圧ショベル、AI,AID 傾斜角、H 水平面、L レーザ光、OP 原点、PI 作業機動作平面、PR 旋回平面、RX 旋回軸、TA,TBk,TR,VB 軌跡、Va,Vb,Vs ベクトル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10