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特開2022-79877作業走行経路における行程間隔の算出方法、及び行程間隔の決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079877
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】作業走行経路における行程間隔の算出方法、及び行程間隔の決定方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190733
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌範
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太郎
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA32
2B043EB05
2B043EB08
2B043EB10
2B043EB14
2B043EC02
2B043EC15
2B043ED12
2B043EE01
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】作業車両に衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業走行経路を作成する経路生成手段と、作業車両の位置と作業走行経路を表示する表示手段を備えるナビゲーションシステム、或いは作業車両の位置と作業走行経路に基づいて作業車両を作業走行経路に沿うように導く自動操向手段を備える自動操向システムを設け、これらのシステムを利用して作業走行を行う際に、作業走行経路における行程間隔を簡単に適正な値に設定することができる方法を提供する。
【解決手段】経路生成手段は、作業機の作業幅と、走行装置の全幅と、測位手段の測位誤差に基づいて隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出し、また、この算出した行程間隔を推奨する間隔として報知し、又は人為的に設定しようとする行程間隔と比較してその良否を報知し、そして、これに基づき人為的に設定した行程間隔を最終的な行程間隔に決定するか、或いは、この算出した行程間隔を最終的な行程間隔に決定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路を表示する表示手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、測位手段の測位誤差に基づいて隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出することを特徴とする作業走行経路における行程間隔の算出方法。
【請求項2】
衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路に基づいて作業車両を作業走行経路に沿うように導く自動操向手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差、或いは人為的に定めた許容誤差に基づいて、隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出することを特徴とする作業走行経路における行程間隔の算出方法。
【請求項3】
衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路を表示する表示手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、測位手段の測位誤差に基づいて隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出し、この算出した行程間隔を推奨する間隔として報知し、又は人為的に設定しようとする行程間隔と比較してその良否を報知し、そして、これに基づき人為的に設定した行程間隔を最終的な行程間隔に決定するか、或いは、この算出した行程間隔を最終的な行程間隔に決定することを特徴とする作業走行経路における行程間隔の決定方法。
【請求項4】
衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路に基づいて作業車両を作業走行経路に沿うように導く自動操向手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差、或いは人為的に定めた許容誤差に基づいて、隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出し、この算出した行程間隔を推奨する間隔として報知し、又は人為的に設定しようとする行程間隔と比較してその良否を報知し、そして、これに基づき人為的に設定した行程間隔を最終的な行程間隔に決定するか、或いは、この算出した行程間隔を最終的な行程間隔に決定することを特徴とする作業走行経路における行程間隔の決定方法。
【請求項5】
前記経路生成手段は、前記行程間隔Gを作業機の作業幅Lから走行装置の全幅Wを減算した2分の1の値が測位手段の測位誤差α以上であれば((L-W)/2≧α)、作業機の作業幅(G=L)となして算出し、また、作業機の作業幅Lから走行装置の全幅Wを減算した2分の1の値が測位手段の測位誤差αより小さければ((L-W)/2<α)、作業機の作業幅Lに走行装置の全幅Wを加算した2分の1の値に測位手段の測位誤差αを加算した値(G=(L+W)/2+α)となして算出することを特徴する請求項1に記載した作業走行経路における行程間隔の算出方法、或いは請求項3に記載した作業走行経路における行程間隔の決定方法。
【請求項6】
前記経路生成手段は、前記行程間隔Gを作業機の作業幅Lから走行装置の全幅Wを減算した2分の1の値が作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差α、或いは人為的に定めた許容誤差α以上であれば((L-W)/2≧α)、作業機の作業幅(G=L)となして算出し、また、作業機の作業幅Lから走行装置の全幅Wを減算した2分の1の値が作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差α、或いは人為的に定めた許容誤差αより小さければ((L-W)/2<α)、作業機の作業幅Lに走行装置の全幅Wを加算した2分の1の値に作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差α、或いは人為的に定めた許容誤差αを加算した値(G=(L+W)/2+α)となして算出することを特徴する請求項2に記載した作業走行経路における行程間隔の算出方法、或いは請求項4に記載した作業走行経路における行程間隔の決定方法。
【請求項7】
前記経路生成手段は、前記測位手段の測位誤差を人為的な入力によって取得するか、又は記憶媒体に予め書き込んだ値を読み込んで取得することを特徴とする請求項1又は請求項5に記載した作業走行経路における行程間隔の算出方法、或いは請求項3又は請求項5に記載した作業走行経路における行程間隔の決定方法。
【請求項8】
前記経路生成手段は、前記作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差、或いは人為的に定めた許容誤差を人為的な入力によって取得するか、又は記憶媒体に予め書き込んだ値を読み込んで取得することを特徴とする請求項2又は請求項6に記載した作業走行経路における行程間隔の算出方法、或いは請求項4又は請求項6に記載した作業走行経路における行程間隔の決定方法。
【請求項9】
前記経路生成手段は、作業機の作業幅を人為的な入力によって取得するか、又は作業機の型式の選択によって取得し、また、走行装置の全幅を人為的な入力によって取得するか、又は走行装置のトレッドとタイヤ或いはクローラ幅の選択によって取得することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項5、請求項6、請求項7、並びに請求項8の何れか1つに記載した作業走行経路における行程間隔の算出方法、或いは請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、並びに請求項8の何れか1つに記載した作業走行経路における行程間隔の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクタ等の作業車両に用いる作業走行経路における行程間隔の算出方法、及び行程間隔の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用トラクタ等の作業車両にあっては、圃場内で耕起作業や畝立作業等を行う。また、作業車両はその作業走行を行う場合、走行機体をできるだけ真っすぐに且つ一定の作業間隔で走行させることが未作業領域や重複作業領域を減らして作業能率を向上させるうえで重要である。そこで、衛星測位システムを利用して作業車両の現在位置及び直線状の作業走行経路等を表示して、作業者はその情報に基づいて作業車両を運転することで無駄のない高精度な作業の実践を支援するナビゲーションシステムが提供されている。
【0003】
また、このナビゲーションシステムの考え方を発展させて、作業車両を直線状の作業走行経路に沿って自動的に走行するように制御して、作業精度の向上や作業者の操縦負担の軽減を図ることが、特許文献1乃至特許文献3に例示するように研究されている。そして、現在、このような自動操舵システムが前述のナビゲーションシステムと共に提供され、さらには、直線状の作業走行経路のみならず、作業を伴わない旋回走行経路や移動走行経路を含めて自動操舵する無人操舵(無人運転)システムが開発されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-66405号公報
【特許文献2】特開2016-95658号公報
【特許文献3】特開2020-149472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようにナビゲーションシステムを作業車両に設け、作業車両の現在位置及び作業走行経路等を見ながら作業車両を作業走行させると、無駄のない高精度な作業を行うことができる。また、ナビゲーションシステムと共に、自動操舵システム、或いは無人運転システムを採用して、作業車両を作業走行経路に沿って自動的に走行するようになすと、作業者は操向(操舵)操作から解放されて長時間にわたる作業走行にあっても疲労を軽減でき、また、不慣れな作業者でも熟練者並みの高精度な作業走行を行うことができる。
【0006】
しかし、このように作業走行経路に沿って作業車両を走行させるためには、適切な作業走行経路を作成する必要がある。そこで、この作業走行経路の作成方法について考察すると、例えば特許文献1にあっては、トラクタによる圃場の作業を、往復直進作業と回り作業とに区分し、それぞれの作業経路を、トラクタの諸元(作業車両の作業装置を含む全長Aと作業幅Wと任意の作業重複幅w)に基づく折り返し行程数、周回数等の各種条件を勘案して定めた制御プログラムに基づいて行うことが記載されている。
【0007】
また、特許文献2にあっては、作業経路を設定するには、予め、作業車両の長さ、作業幅、作業重複幅を設定しておかなければならず、この設定は、操作端末のキーボードやテンキー等を用いて各長さの数字を入力していた代わりに、走行経路の設定に必要な情報となる寸法を、表示装置の画面をタッチする操作で設定できるようにすることが記載されている。
【0008】
さらに、特許文献3にあっては、目標走行経路Pとして、第1基準点A及び第2基準点Bに基づく第1基準線P1に平行な複数の平行経路P2を含む経路を生成し、第1基準線P1と平行経路P2との間の間隔及び平行経路P2同士の間の間隔を第2基準点Bと第3基準点Cとの間の距離に基づいて設定すること、及び手動運転によりトラクタを走行させることで、地点A(第1基準点に相当する)、地点B(第2基準点に相当する)、地点C(第3基準点に相当する)の夫々を登録することが記載されている。
【0009】
従って、作業走行経路(直線状の作業走行経路)を作成するためには、一般的にナビゲーションシステムで用いられているように、手動運転による走行(ティーチング走行)等を行って基準線(直進方向の方位)を取得し、この基準線に平行な経路を互いの経路の間の距離(行程間隔)が等しくなるように作成する。また、その際の行程間隔は、例えばトラクタでロータリ耕耘装置によって耕起作業を行う場合等においては、耕耘残しが確実に発生しないように隣り合う作業領域を一部重複させるべく、耕耘幅(作業幅)から数cm乃至は数10cmの作業重複幅を減算した値を行程間隔として用いる。
【0010】
そして、この行程間隔を算出するための作業幅や作業重複幅は、汎用性を考慮してナビゲーションシステムのグラフィカルユーザーインターフェイス等で人為的に入力するようになす。なお、田植機等では30cm等の条間に植付け条数を乗じた値を作業幅として入力し、既に植え付けた苗を走行に伴う水流等によって押し倒して無駄にすることがないようにするために作業重複幅は零とするか、作業重複幅をもともと持たないインターフェイスとする。
【0011】
ところで、田畑で野菜等を栽培する場合には、水はけをよくして根腐れ等を防止したり、野菜を育てる領域と除草や防除や収穫のための30cm程度の作業通路を分けることで限られた圃場内で効率の良い野菜作りを行うことを目的に畝を作ることがある。そして、この畝作りとしてトラクタに畝立機を連結して畝立作業を行うことで、畝を手作りするより迅速に精度のよい真っすぐな畝を作る作業形態が慣行として行われている。
【0012】
そこで、トラクタで畝立作業を行う場合にも、ナビゲーションシステム、或いはナビゲーションシステムと共に自動操舵システムを用いて畝をより一層高精度で真っすぐに作ろうとする。そして、その際に前述のグラフィカルユーザーインターフェイスにおいて、作業走行経路の行程間隔を入力すべく、例えば出来るだけ畝列を多くして限られた圃場の効率化を図りながら作業通路もある程度確保するために、作業幅を畝立機の作業幅として、また、作業重複幅を零として入力することが往々にしてある。
【0013】
しかし、このように設定して作成した作業走行経路に沿って畝立を手動又は自動で行うと、それまでに作った畝の端部に形成される溝に片側の車輪が滑り落ちて作業走行経路から外れたり、また、溝から車輪を引き上げて作業走行経路に戻すべく操舵輪を大きく操舵した場合に、ジグザクに畝が曲がってしまい滑らかで真っすぐな畝を作ることが出来ない虞がある。そのため、畝立作業等においては車輪を溝に落とすことがない操舵技術が作業者に求められ、また、自動操舵システムにおいては、車輪を溝に落とすことがない作業走行経路に対する高い追従性が求められる。
【0014】
然し乍ら、ナビゲーションシステムを用いたり、或いは自動操舵システムを合わせて用いる場合の何れであっても、衛星測位システムを利用して作業車両の位置を取得するものであるから、その測位誤差が少ないといわれているRTK-GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite System)を採用しても、衛星から発せられる電波を取得可能な衛星数や配置が衛星の移動によって刻々と変化し、また、森林や建物等による反射波(マルチパス)等の影響を受けて測位値が変動し、およそ±3cm程度の誤差が発生する。
【0015】
また、自動操舵システムを用いる場合にはこのような測位誤差が発生するなか、作業車両を作業走行経路に精度よく追従させるために操舵輪の操舵角度を短時間に大きく変化させて制御すると、前述のようにジグザクに畝が曲がってしまい滑らかで真っすぐな畝を作ることが出来ない虞があるから、操舵輪の操舵量を少なく抑えて制御を行うことになる。そのため、通常の平坦な圃場では測位誤差と制御上の遅れ等の誤差を含めて最大±5cm程度の誤差が生じ、また、逆にこのような最大誤差を許容範囲の誤差として必ず収まるように自動操舵システムを開発する。
【0016】
従って、前述の測位誤差、或いは許容範囲の誤差をもってしても車輪が溝に落ちる場合が頻繁に発生する際には、元に戻って作業走行経路の行程間隔の入力において、その作業幅を畝立機の作業幅より大きくして行程間隔を広く取ることによって、車輪が溝に落ちるという問題を解決することができる。しかし、この場合、ユーザーインターフェイス等に広くする行程間隔の値は示されていないから、作業幅を実際の畝立機の作業幅より少しずつ増やしたり、作業重複幅にマイナスの値を入力して、作業走行を実際に行って確認したり、一気にこれらの値を増やしてこの問題は解決するが、圃場に作る畝列の数が少なくなるといった問題を受け入れるかを選択するしかない。
【0017】
そこで、本発明は係る問題点に鑑み、作業車両に衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業走行経路を作成する経路生成手段と、作業車両の位置と作業走行経路を表示する表示手段を備えるナビゲーションシステム、或いは作業車両の位置と作業走行経路に基づいて作業車両を作業走行経路に沿うように導く自動操向手段を備える自動操向システムを設け、これらのシステムを利用して作業走行を行う際に、作業走行経路における行程間隔を簡単に適正な値に設定することができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は前述の課題を解決するため第1に、衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路を表示する表示手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、測位手段の測位誤差に基づいて隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出することを特徴とする。
【0019】
本発明は第2に、衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路に基づいて作業車両を作業走行経路に沿うように導く自動操向手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差、或いは人為的に定めた許容誤差に基づいて、隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出することを特徴とする。
【0020】
本発明は第3に、衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路を表示する表示手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、測位手段の測位誤差に基づいて隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出し、この算出した行程間隔を推奨する間隔として報知し、又は人為的に設定しようとする行程間隔と比較してその良否を報知し、そして、これに基づき人為的に設定した行程間隔を最終的な行程間隔に決定するか、或いは、この算出した行程間隔を最終的な行程間隔に決定することを特徴とする。
【0021】
本発明は第4に、衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路に基づいて作業車両を作業走行経路に沿うように導く自動操向手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差、或いは人為的に定めた許容誤差に基づいて、隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出し、この算出した行程間隔を推奨する間隔として報知し、又は人為的に設定しようとする行程間隔と比較してその良否を報知し、そして、これに基づき人為的に設定した行程間隔を最終的な行程間隔に決定するか、或いは、この算出した行程間隔を最終的な行程間隔に決定することを特徴とする。
【0022】
本発明は第5に、前記経路生成手段は、前記行程間隔Gを作業機の作業幅Lから走行装置の全幅Wを減算した2分の1の値が測位手段の測位誤差α以上であれば((L-W)/2≧α)、作業機の作業幅(G=L)となして算出し、また、作業機の作業幅Lから走行装置の全幅Wを減算した2分の1の値が測位手段の測位誤差αより小さければ((L-W)/2<α)、作業機の作業幅Lに走行装置の全幅Wを加算した2分の1の値に測位手段の測位誤差αを加算した値(G=(L+W)/2+α)となして算出することを特徴する。
【0023】
本発明は第6に、前記経路生成手段は、前記行程間隔Gを作業機の作業幅Lから走行装置の全幅Wを減算した2分の1の値が作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差α、或いは人為的に定めた許容誤差α以上であれば((L-W)/2≧α)、作業機の作業幅(G=L)となして算出し、また、作業機の作業幅Lから走行装置の全幅Wを減算した2分の1の値が作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差α、或いは人為的に定めた許容誤差αより小さければ((L-W)/2<α)、作業機の作業幅Lに走行装置の全幅Wを加算した2分の1の値に作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差α、或いは人為的に定めた許容誤差αを加算した値(G=(L+W)/2+α)となして算出することを特徴する。
【0024】
本発明は第7に、前記経路生成手段は、前記測位手段の測位誤差を人為的な入力によって取得するか、又は記憶媒体に予め書き込んだ値を読み込んで取得することを特徴とする。また、本発明は第8に、前記経路生成手段は、前記作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差、或いは人為的に定めた許容誤差を人為的な入力によって取得するか、又は記憶媒体に予め書き込んだ値を読み込んで取得することを特徴とする。さらに、本発明は第9に、前記経路生成手段は、作業機の作業幅を人為的な入力によって取得するか、又は作業機の型式の選択によって取得し、また、走行装置の全幅を人為的な入力によって取得するか、又は走行装置のトレッドとタイヤ或いはクローラ幅の選択によって取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、ナビゲーションシステム、或いは自動操向システムを作業車両に設け、これらのシステムを利用して作業走行を行う際に、その作業走行経路における適正な行程間隔を算出し、また、算出した適正な行程間隔をもとに最終的な行程間隔を簡単に決定することができる。そのため、作業走行経路を迅速に作成して作業走行を速やかに開始することができ、しかも、その場合に作業車両の走行装置が作業に伴って作成される溝等に横滑りして落ち込むこと等を防止して、真っすぐな畝等を精度よく作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明を適用する畝立機を連結したトラクタの側面図である。
図2】ナビゲーションシステム及び自動操向システムのブロック図である。
図3】畝立てにおける行程間隔の算出方法の説明図である。
図4】ナビゲーションシステムの基本画面である。
図5】ナビゲーションシステムの設定画面である。
図6】作業走行経路の作成画面である。
図7】作業走行経路(特殊)の作成画面である。
図8】第2実施形態の作業走行経路(特殊)の作成画面である。
図9】ナビゲーションシステムのガイダンス画面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように作業車両としての農業用のトラクタ1は、前方からエンジン2、クラッチハウジング3、トランスミッションケース4等を一体的に連結して車体(走行機体)を構成する。また、車体の前部寄りには、エンジン2とエンジン2の補器類を覆うヘッドランプ5を備えるボンネット6を設け、ボンネット6は後上部に設けるヒンジを介して前部側を開閉自在に構成する。
【0028】
さらに、エンジン2に固定して前方に延びるフロントブラケット7は、フロントアクスルケースを左右揺動自在に軸支する。このフロントアクスルケースの左右端には、前車軸ケース(キングピンケース及びファイナルケース)を取付ける。また、前車軸ケースは前輪8を取付ける前車軸9を軸支し、操縦部に設けるステアリングホイール10は左右の前輪8を全油圧式パワーステアリングユニットを介して操舵する。
【0029】
一方、車体の後部寄りにはトランスミッションケース4の左右に連結するリアアクスルケースを設け、リアアクスルケースに軸支する後車軸11に左右の後輪12を取付ける。また、車体の後部には、トップリンク13と左右のロワリンク14からなる周知の三点リンク機構やドローバ等の連結装置を設け、これらの連結装置にはロータリ耕耘装置、畝立機、或いは播種機や移植機等の作業機を連結し、トランスミッションケース4の後部に軸支するPTO軸(動力取出軸)から作業機にエンジン動力を伝達する。
【0030】
さらに、エンジン2より後方の車体には防振ゴムを介して操縦フレーム15を設ける。この操縦フレーム15は、下部に設けるフロア16と、フロア16から後方に立ち上げる運転席17を取付けるシート支持部と、シート支持部の後方から立ち上げる後部壁と、左右のフェンダ部18等を一体的に結合して構成し、また、運転席17の後部寄り上方には逆U字状のロールバー19によって構成する安全フレームを折り畳み自在に取付け、このロールバー19には左右のリヤコンビネーションランプ20を設ける。
【0031】
また、フロア16の前部には門型の支持フレームを立設して、メーターパネルやエンジン2の始動及び停止スイッチや各種の自動制御用の操作スイッチ類を備えるパネルカバー21とその下方側を覆うリヤパネルカバー22を取付ける。また、支持フレームの上部寄りには後方に向かうブラケットを一体に設け、このブラケットにはステアリングホイール10をその上端部に連結するステアリングシャフトをコラムで覆ってチルト自在に取付ける。
【0032】
なお、ステアリングホイール10の左右には前後進切換レバー23、エンジンコントロールレバー24を設け、ステアリングホイール10の下方となるフロア16上には走行クラッチペダル25や左右のブレーキペダル等を設ける。また、運転席17の左右側方には走行主変速レバー26、副変速レバー、PTO変速レバー、作業機昇降レバー27を設ける他、トラクタ1の各部を制御する設定器等を設ける。
【0033】
以上、トラクタ1の概要について説明したが、トラクタ1に設ける左右の前輪8や後輪12によって構成する車輪式の走行装置は、ゴムクローラを用いて走行装置を構成するセミクローラ式(半履帯式)やフルクローラ式(全履帯式)の走行装置を採用する場合がある。また、車輪式やセミクローラ式の走行装置は前輪等を操舵して車両の向きを変更するが、フルクローラ式の走行装置は、左右のクローラをクラッチやブレーキ等を用いて左右の回転数に差を生じさせて車両の向きを変更する。
【0034】
さらに、作業車両はトラクタ1に限らず例えば、コンバインではフルクローラ式の走行装置が主に採用されており、一方、ナビゲーションシステム等は、その走行装置の形態の相違に関らず大半の作業車両に共通して採用することができる。従って、これ以降の説明に用いる走行装置は、上述の何れのタイプの走行装置でもよく、また、操舵といった用語は何れのタイプの走行装置を採用する車両であっても、その向きを変更することを意味する操向といった同義語を用いて説明することがある。
【0035】
次に、実施形態に戻って説明すると、トラクタ1にオプションとして提供するナビゲーションシステム及び自動操向(自動操舵)システムについて、図2に示すブロック図に基づいて説明する。なお、このナビゲーションシステム及び自動操向システムは、既に提供するトラクタ1であっても簡単に後付けすることができ、また、システムの機能を必要に応じて後から追加することができるアドオンタイプのソフトウェアを備える。
【0036】
そして、ナビゲーションシステムは、トラクタ1の現在位置及び作業走行経路等を表示し、作業者はその表示情報に基づいてトラクタ1を作業走行経路に沿うように左右の前輪8をステアリングホイール10を手動操作してトラクタ1を操向させることができる。また、ナビゲーションシステムと合わせて設ける自動操向システムは、左右の前輪8を手動操舵に代えて自動操舵してトラクタ1を作業走行経路に沿うように導くことができ、危急時には自動操舵に優先して左右の前輪8を手動操舵することができる。
【0037】
また、ナビゲーションシステムは、人工衛星から出される電波を用いて位置を測定する衛星測位システム等を利用してトラクタ1の位置と方位を取得する。そして、この衛星測位システムの方法と種類としては多々知られているが、農作業はその作業精度を高く求められるためにここでは、最も計測誤差が少ないといわれているリアルタイムキネマティック(RTK:Real Time Kinematic)による全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)によってトラクタ1の位置や方位を測定する。
【0038】
そのため、ナビゲーションシステム及び自動操向システムは、RTK-GNSS受信装置28とRTK基準局29とタブレット端末30と自動操舵装置31を備える。そして、RTK-GNSS受信装置28は、GPS、GLONASS等のGNSS衛星から出される電波を捉える位置用と方位用の2つのGNSSアンテナ32、33、これら2つのGNSSアンテナ32、33が捉えた衛星から出された電波を受取る2つのGNSS受信機34、35、RTK基準局29から出された電波を捉える無線アンテナ36、この無線アンテナ36が捉えた電波を受取る特定小電力無線機37を備える。
【0039】
また、RTK-GNSS受信装置28は、トラクタ1の姿勢を検出する3軸のジャイロと3方向の加速度計からなる慣性計測装置38、タブレット端末30との間で情報を交換するアンテナ内蔵型の近距離無線機39、これらの機器を制御する電子制御ユニット(ECU)によって構成するGNSSコントローラ40、慣性計測装置38の計測値や通信エラー情報等を表示する7セグメントLEDで構成するディスプレイ41等を備える。なお、RTK-GNSS受信装置28は、GNSSアンテナ32、33と無線アンテナ36を除いた各機器を単一のボードに纏めてGNSSユニット42に構成する。
【0040】
一方、RTK基準局29は、設置高さを確保する三脚とこの三脚の上に設けるGNSS衛星から出される電波を捉えるGNSSアンテナ43、GNSSアンテナ43が捉えた衛星から出された電波を受取るGNSS受信機44、GNSS受信機44からRTK-GNSS受信装置28の無線アンテナ36に向けて電波を出す特定小電力無線機45とその無線アンテナ46、乾電池で構成する電源バッテリー47等から構成し、例えば、移動局となるトラクタ1が作業走行を行う圃場から300メートル以内で周囲に山や木、高い建物などの障害物がない見通しの良い安定した場所に設置する。
【0041】
また、タッチパネル(入力手段)付きの液晶ディスプレイ(表示手段)48を備える薄型軽量のコンピュータであるタブレット端末30は、インターネットを利用してソフトウエアをアップデートする際に用いる無線LANに対応すると共に、その通信距離を約10メートルとする内臓アンテナ式の近距離無線機49を搭載する。そして、このタブレット端末30は、トラクタ1の操縦部に据え置き、また、必要に応じて取り外して持ち歩いたり、家庭等で内臓バッテリの充電を行うことができる。
【0042】
なお、各機器を制御するプロセッサ50、ROM/RAM51等を備えるタブレット端末30は、作業を行う際の作業走行経路の作成機能、GNSSユニット42からの情報に基づくトラクタの位置と方位の計算機能、作業走行経路とトラクタの位置・方位に基づいて目標操舵角を計算し、GNSSユニッ42へこの目標操舵角を送信する機能、作業走行経路情報、作業を行った圃場情報等の不揮発性のUSBメモリ52に書込及び読出機能等を備えるナビゲーションソフトウェアを予めインストールしてある。また、タブレット端末30の近距離無線機49とGNSSユニット42の近距離無線機39は予めペアリングを行って、次回以降は自動的に接続できるようにしておく。
【0043】
また、自動操舵装置31は、電子制御ユニットによって構成する操舵ECU53、操作スイッチ群54、LEDランプ群55、前輪8の操舵角センサ56、ステッピングモータ57、伝動部58等によって構成し、この内、操舵角センサ56を除いて全体を樹脂製のカバーや底板で覆って操舵ユニット59となし、この操舵ユニット59をステアリングホイール10下方のステアリングコラムの上部に取付け、ステアリングコラムに内包するステアリングシャフトをステアリングホイール10と共に回動させて前輪8を操舵する。
【0044】
なお、操舵ECU53とGNSSコントローラ40とはコントローラエリアネットワーク(CAN)によって相互に通信可能に設け、このネットワークにはトラクタ1の各部を制御する電子制御ユニットから構成する機体側制御部も繋ぎ、必要に応じて相互に情報のやり取りを行うこともできる。また、RTK-GNSS受信装置28は、逆U字状のロールバー19によって構成する安全フレームの上部にブラケット60を介して取り付け、タブレット端末30は例えば、パネルカバー21の上方にホルダを設け、このホルダに着脱自在に設けることができ、操舵角センサ56はフロントアクスルケースに後付けして設ける。
【0045】
以上、トラクタ1にオプションとして提供するナビゲーションシステム及び自動操向システムについてその機器構成を中心に説明したが、次に、これらのシステムを用いて休耕田や畑で畝立作業を行う場合の作業走行経路の設定の仕方について説明する。先ず、トラクタ1を用いて畝立作業を行う場合、田畑の除草や平坦な作付圃場を得るためにトラクタ1に例えば、ロータリ耕耘装置を三点リンク機構を用いてトラクタ1の後方に連結し、圃場の凹凸を平らに均らす普通耕耘作業を行う。なお、この普通耕耘作業を行う場合もナビゲーションシステムや自動操向システムを用いて作業走行を行ってもよい。
【0046】
また、このように圃場を耕耘して数日経過すると除草されてやや土壌が引き締まった作付圃場が得られるので、次に、トラクタ1に連結したロータリ耕耘装置の後部左右に畝立用の畝盛器を取り付けたり、ロータリ耕耘装置の後方にアタッチメントタイプの畝立成型器を取り付けて畝立機として用いる。或いは、ロータリ耕耘装置に代えて畝立ロータリ耕耘装置と畝立成型器とを一体に構成した専用の畝立機を用いて畝立作業を行う場合がある。なお、畝立作業と同時に野菜等の生育を促進させるために作成した畝をポリエチレンフィルムなどで覆う場合は、マルチ仕様の畝立機や畝立成型器を用いる。
【0047】
そして、ここで専用の畝立機、或いはマルチ畝立機61を連結して作業を行う場合、図1に示すように畝立機61は畝立ロータリ耕耘装置62によって圃場を再び耕耘して中央寄りに耕耘した土を寄せる。また、中央寄りに寄せられた土は、その後部に連結した畝成形板63の内面で押し均され、圃場に畝Uを作る。なお、畝成形板63の後部寄り左右には耕耘深さを調節する接地輪64を設ける。また、マルチ装置は畝成形板63の上方にフィルムロール65を保持するホルダを備え、フィルムロール65の下方に設ける押えロール66はフィルムロール65から繰り出されたフィルムを畝Uの表面に押し付けながら畝Uの表面を整形する。そして、畝Uを被覆したフィルムは左右の踏圧輪67により両端部が踏圧されるとともに覆土輪68による覆土が行われ、これによりマルチフィルムの敷設が行われる。
【0048】
なお、畝Uの種類は成形する畝Uの高さによって平畝と高畝、或いはその中間となる短冊畝等があり、また、畝Uの形状によって台形や山形等があり、さらに、一度に1畝や多数の畝を作ることができるものがある。そのため、これに対応してメーカーは複数の畝立機の型式を用意しており、ユーザーはトラクタ1の能力を考慮しながら適合する型式の畝立機を用いて畝立作業を行うことになる。
【0049】
そして、トラクタ1に畝立機61を連結して設け、また、圃場において畝立作業を行う場合に作業者は、ナビゲーションシステム、或いはナビゲーションシステムと共に自動操向システムを用いて畝Uをより一層高精度で真っすぐに作ろうとし、さらには出来るだけ畝列を多くして限られた圃場の効率化を図りながら作業通路(溝M)もある程度確保しようとする。そのため、タブレット端末30のディスプレイ48に表示されるナビゲーションシステムの設定画面において、例えば、普通耕耘作業を行う場合と同様に、作業走行経路における行程間隔として作業機の作業幅を畝立機61の作業幅Lとし、また、作業重複幅をこの場合はゼロとして入力し、最終的にその行程間隔Gを畝立機61の作業幅Lに設定する(図6参照)。
【0050】
また、畝立作業走行を開始する前に作業者は予め手動操舵による走行(ティーチング走行)を行ったり、過去の圃場におけるデータを不揮発性のUSBメモリ52から呼び出して作業走行における基準線を得て、前述の行程間隔Gのもとに作業走行経路を自動的に作成させる。そして、作業者は畝立作業開始点にトラクタ1を移動させて、ナビゲーションシステムのガイダンス画面(図9参照)に表示されるトラクタ1の位置P及び作業走行経路R、並びに両者間の経路誤差Eの表示のもとに手動操舵、又は自動操向システムによる自動操向によって作業走行を開始する。
【0051】
しかし、このように設定して作成した作業走行経路Rに沿って畝立を手動又は自動で行うと(図3参照)、それまでの前行程で作った畝Uの端部に形成される溝Mに片側の車輪8、12が滑り落ちて作業走行経路Rから外れたり、また、溝Mから車輪8、12を地表面Hに引き上げて作業走行経路Rに戻すべく前輪8を大きく操舵した場合に、ジグザクに畝Uが曲がってしまい滑らかで真っすぐな畝Uを作ることが出来ない虞がある。そのため、畝立作業等においては車輪8、12を溝に落とすことがない操舵技術が作業者に求められ、また、自動操向システムにおいては、車輪8、12を溝Mに落とすことがない作業走行経路Rに対する高い追従性が求められる。
【0052】
そこで、車輪8、12が横滑りして溝Mに落ちる要因を解析すると、畝立機61の特に畝成形板63によって例えば、上底(畝肩幅)と下底(畝裾幅)と高さ(畝高さ)を備える台形状の3つの畝Uを一度に作り、各畝U間に2つの溝幅(溝Mの底面幅)を備える作業通路と左右の畝Uの外側に夫々溝幅の半分の溝を作り、これにより畝立機61は畝裾幅と溝幅を加算して3倍した作業幅Lを備えることになる。
【0053】
一方、往復又は1行程飛ばして作業走行を行い、この3つの畝Uに隣り合う3つの畝Uを作る際に、トラクタ1の前輪8と後輪12がトラクタ1の自重により地表面Hから多少沈下して通る左右の前輪8と後輪12の最大外幅(走行装置の全幅)Wは、この場合、左右の前輪8の幅より後輪12の幅が広いため左右の後輪12のタイヤの外幅となる。なお、左右の前輪8及び左右の後輪12の外幅は、左右の前輪8のトレッドに前輪8のタイヤ幅を加算した値、及び左右の後輪12のトレッドに後輪12のタイヤ幅を加算した値を算出し、何れか大きい値を走行装置の全幅Wと見做してもよい。
【0054】
そして、ここで隣り合う作業走行経路R間の距離(行程間隔)をG、また、隣り合う溝Mとこの場合は後輪12のタイヤの接地部における外側面との間の距離をαとするとこのαは、
α=G-(L+W)/2
によって求めることが出来る。また、これを等式変形すると行程間隔Gは、
G=α+(L+W)/2
となる。
【0055】
そこで、この行程間隔Gを求めるにあたり、隣り合う畝Uや溝Mを畝立機61が新たな畝Uや溝Mを作成するために壊さず、マルチフィルムにしても引っ掛けて剥がさないようにする必要があるから、行程間隔Gは作業幅以上(G≧L)でなければならないという条件が発生し、このことから前述のαを求める式は行程間隔Gを作業幅Lに置き換えて、
α≧(L-W)/2
とすることができる。
【0056】
また、トラクタ1の片側の車輪8、12が隣り合う溝Mに滑り落ちて作業走行経路Rから外れるという問題は、片側の車輪8、12が隣り合う溝Mに近づき過ぎてそれまで通っていた地表面Hと溝Mとの間の境界線を越えること、乃至はそれ以前に溝M側に接する地表面Hの路端がトラクタ1の自重によって溝M側に崩れて片側の車輪8、12が溝M内に横滑りすること、或いは最大に余裕をもって片側の車輪8、12の特にタイヤの接地部における外側面が溝Mとの境界線を越えなければ、トラクタ1の片側の車輪8、12が隣り合う溝Mに滑り落ちて作業走行経路Rから外れることを防止することができる。
【0057】
そのため、前述の値αが常にゼロ以上(α≧0)であれば、トラクタ1の片側の車輪8、12が隣り合う溝Mに滑り落ちて作業走行経路Rから外れることを防止することができるという結論に至る。そして、直線的な1つの作業走行経路に亘って作業走行する間にαを常にゼロ以上に保つためには、トラクタ1が作業走行経路に対して左右に位置ズレする要因を見つければよいことになる。
【0058】
そこで、この要因を分析すると、ナビゲーションシステムにおいてトラクタ1の位置は、例えば左右の後車軸11の中心に設定している。また、この中心位置はGNSSアンテナ32のトラクタ1に設置する位置から、係る中心位置に至る上下、前後左右方向の距離の入力によって設定し、トラクタ1が仮に傾斜した際には、慣性計測装置38によって後車軸11の中心位置を傾斜角度に応じて補正している。
【0059】
さらに、畝立作業にあっては、圃場を予めロータリ耕耘装置等によって耕して略平坦に均しているから、トラクタ1が耕耘された地表面H上を走行する限り、トラクタ1の中心位置は、前述の設定ミスやGNSSアンテナ32の取付誤差が無ければ地表の水平面の鉛直線上にあって、トラクタ1の位置の測位上の検出誤差は殆ど無視することができ、トラクタ1の位置ズレの要因とはならない。
【0060】
しかし、ナビゲーションシステムは、衛星測位システムや前述の慣性計測装置38等を利用してトラクタ1の位置や方位を計測するものであるから、その測位誤差が発生すればトラクタ1の位置が誤って測定され、この誤ったトラクタ1の位置表示に基づいて作業者が手動操舵を行うと、実際には正しい作業走行経路上を走行しているにも拘わらず、自ら作業走行経路からトラクタ1を左右に位置ズレを生じさせるように操舵してしまい、結局、この測位誤差が位置ズレの大きな要因と考えられる。
【0061】
また、自動操向システムを用いている際に上述の測位誤差が発生すると、自動操向システムは誤って測位されたトラクタ1の位置からトラクタ1を作業走行経路に導くように自動操舵してしまい、手動操舵と同様な位置ズレを生じさせる。しかも、自動操向制御においては、その操舵量を少なく抑えて制御を行うことによって滑らかで真っすぐな畝を高精度で作ろうとするから、操舵量の不足や、操舵角センサ56の検出精度、ステッピングモータ57からステアリングシャフフトに至る機械的な遊び、或いは全油圧式パワーステアリングユニットにおける油圧上の応答遅れも重なって測位誤差以上の誤差が生じてしまう。
【0062】
そして、係る衛星測位システム等を用いてトラクタ1の位置を測位している限り、これ等の測位誤差等の発生を防ぐことは現状に鑑みれば極めて困難であるから、仮にそのような誤差が発生したとしても頭書のトラクタ1の片側の車輪8、12が隣り合う溝Mに滑り落ちて作業走行経路Rから外れることを防止することを第一義に考察すると、前述の隣り合う溝Mと後輪12の特にタイヤの接地部における外側面との間の距離αが常にゼロ以上(α≧0)であればよいことからして、このα値をそのまま測位誤差等と置き換えて考えればよいことになる。
【0063】
従って、係る解析からしてαを、ナビゲーションシステムを用いて手動操舵する際には、測位誤差をして、また、自動操向システムを用いて自動操舵させる際には、トラクタ1を作業走行させた際に生ずる誤差、或いはこのシステムを開発するうえで人為的に定めた自動操舵させる際の許容誤差をして、これらの誤差がαである(α:誤差)と定義し直すと、作業走行経路における行程間隔Gは、(L-W)/2≧αの場合は、
G=L
となり、また、(L-W)/2<αの場合は、
G=α+(L+W)/2
として行程間隔Gを算出することができる。
【0064】
さらに、誤差αの値を夫々のシステムにおいて例えば、最大の誤差(最大の測位誤差等)を与えたり、算出した行程間隔G以上の間隔を行程間隔Gに設定すると、間違いなく車輪8、12が溝Mに滑り落ちることを防止しながら、滑らかで真っすぐな畝を高精度で作ることができる。但し、行程間隔Gをあまり広くとると、限られた圃場に作ることができる畝列の数が少なくなるといった不利益を生じさせる虞があるから、算出した値を参考にして作業者が自らの意向に沿って最終的な行程間隔Gを決定することが好ましい。
【0065】
なお、係る行程間隔Gの算出に当たって、ナビゲーションシステムを用いて手動操舵する際に、その測位誤差が作業走行経路Rの左右方向に最大±30mmの誤差が発生するとすれば、α値をこの生ずる誤差の絶対値として30mmとするか、プラスマイナスを考慮して60mmとするか検討の余地がある。そして、この場合、α値を60mmとして算出した行程間隔Gを用いて作業走行すると、隣り合う畝Uが測位誤差によって最大の30mmずつ合わせて60mm互いに近づいた場合であっても間違いなく車輪8、12が溝Mに滑り落ちることを防止することができる。
【0066】
しかし、このようなケースは長い畝Uを作成する場合であっても、実際の作業走行においては稀なケースと考えられ、また、実際の作業走行において片側の車輪8、12が隣り合う溝Mに滑り落ちることを、それらの車輪8、12のタイヤの半分の幅でその横滑りしようとする力に抗って踏み止まるのであれば、車輪8、12の最大外幅Wを車輪8、12のトレッドに置き換えて用いるといった判断もあながち間違いであるとはいえない所、これと同様に誤差αを絶対値としての30mmを用いても実用上は支障がない。
【0067】
以上、ナビゲーションシステムや自動操向システムを用いて作業走行を行う際の作業走行経路Rにおける行程間隔Gの基本的な算出方法について説明したが、次に係る行程間隔Gの算出方法に基づいて最終的な行程間隔Gを決定する方法について説明すると、タブレット端末30のディスプレイ48に表示されるナビゲーションシステムの基本画面(ガイダンス画面)には図4に示すように、現画面であるガイダンス画面に移動するガイダンスボタン69、圃場・作業記録画面に移動するドキュメントボタン70、作業走行経路作成等の設定画面に移動する設定ボタン71、ティーチング走行を行う際に用いる基準線の開始点を決定するA点ボタン72と基準線の終了点を決定するB点ボタン73等が用意されている。
【0068】
そこで、設定ボタン71をタップすると図5に示すように設定画面が表示され、種々の項目から作業走行経路作成ボタン74をタップする。すると図6に示すように作業走行経路作成画面が表示され、この画面では普通耕耘作業等を行う際に用いる画面であるので、畝立作業等を行う場合は特殊走行経路作成ボタン75をタップする。なお、普通耕耘作業等を行う際にはこの画面でロータリ耕耘装置の耕耘幅を「作業幅」に、また、重複させる耕耘幅を「重複幅」に夫々入力し、その後、自動計算ボタン76をタップすると「行程間隔」に作業幅から重複幅を減算した値が示されるので、この行程間隔で良ければ経路作成ボタン77をタップすれば作業走行経路が作成される。
【0069】
また、この場合、作業幅や重複幅に入力することなく「行程間隔」に直接に入力して経路作成ボタン77をタップして作業走行経路を作成してもよい。但し、何れの場合も基準線が未だ設定されていなければ、経路作成ボタン77をタップするとその旨、警告表示が出されるのでガイダンス画面等に戻って、基準線を作成するティーチング走行等を行うことになる。また、前述の特殊走行経路作成ボタン75をタップすると、図7に示すように作業走行経路(特殊)作成画面が表示される。
【0070】
そこで、前述の畝立における行程間隔の算出で説明した畝立機61の作業幅、トラクタ1の走行幅、自動操舵システムを用いる際の誤差、ナビゲーションシステムのみを用いる際の誤差を、夫々「作業幅L」「走行幅W」「自動」「手動」の欄に入力する。なお、この際、作業幅や走行幅が分からない場合は、メジャーによって実機の値を測ってみることが手っ取り早い。また、自動や手動の誤差は、ナビゲーションシステムや自動操向システムの取扱い説明書に記載された衛星測位システム使用上の測位誤差や自動操向システム使用上の許容誤差を参照したり、或いは、ドキュメントボタン70をタップして、作業記録画面に表示される過去の作業記録中の標準偏差(誤差)、最大誤差を参照して作業者が決定する。
【0071】
なお、ナビゲーションシステムは、別途設けるガイダンス設定画面からGNSSアンテナ32等の機器の取付け位置と向き等を設定・記憶する画面を備え、この画面等に前述の誤差情報等を予め記憶させてあれば、係る情報に基づいて作業走行経路(特殊)作成画面を表示する際に該当情報を入力欄にデフォルトで入力しておくようにしてもよい。また、以上の入力を終えると推奨間隔算出ボタン78をタップする。
【0072】
また、推奨間隔算出ボタン78がタップされると前述の作業走行経路における算出方法に示した計算式に基づいて手動と自動の算出を行い夫々の出力欄に算出結果を自動的に出力して表示する。なお、精度(誤差)αの自動又は手動の一方の入力欄のみ入力されていれば、対応する自動又は手動の欄に推奨する行程間隔を表示し、作業幅Lと走行幅Wがそもそも入力されていなければその旨を警告表示したり、合わせて音声によって報知する。
【0073】
さらに、推奨間隔算出ボタン78がタップされて上述の出力表示を行った際に、自動又は手動の欄の一方のみに行程間隔を表示する場合には、同時に行程間隔Gの入力欄にその一方の値をデフォルトで入力しておく。また、自動と手動欄共に行程間隔を表示する場合には、自動と手動欄の値を比較してより大きい値を同時に行程間隔Gの入力欄に入力しておく。
【0074】
そして、行程間隔Gの入力欄に値がデフォルトで入力され、又はデフォルトで入力された値を自らの意思で修正し、或いは値が入力されていない状態から自ら値を入力した後、経路作成ボタン79をタップすれば作業走行経路が作成される。但し、作業走行経路作成画面における経路作成と同様に、基準線が未だ設定されていなければ、経路作成ボタン79をタップするとその旨、警告表示が出されたり、合わせて音声によって報知されたりするのでガイダンス画面等に戻って、基準線を作成するティーチング走行等を行うことになる。
【0075】
また、作業走行経路(特殊)作成画面に図8に示すように、作業機参照ボタン80、自車機参照ボタン81、精度参照ボタン82、或いは推奨間隔使用ボタン83を追加して設けてもよい。そして、作業機参照ボタン80をタップすると、例えばUSBメモリに予め記憶した自車機に連結する作業機情報をもとに作業機一覧を表示させ、また、その中から畝立機61が選択されれば、その畝立機61の作業幅データを作業幅Lの入力欄に入力して表示させる。
【0076】
さらに、自車機参照ボタン81をタップすると、例えばコントローラエリアネットワークによって繋いだトラクタ1の機体側制御部に記憶された機体情報から車輪8、12のトレッドと装着するタイヤの幅を得て、トレッドにタイヤ幅を加算した値を走行幅として走行幅Wの入力欄に入力して表示させる。また、精度参照ボタン82をタップすると、例えばUSBメモリに予め記憶したナビゲーションシステム情報をもとにこれを表示させ、また、その中から精度(誤差)が選択されれば、その誤差データを精度(誤差)αの自動及び手動の入力欄に入力して表示させる。
【0077】
そして、推奨間隔使用ボタン83をタップすると、推奨間隔算出ボタン78をタップすることによって行う自動或いは手動及び行程間隔Gの入力欄への行程間隔の表示と、この行程間隔に基づく作業走行経路を一時に行う。従って、作業走行経路の作成のための直接入力する手間や入力間違いのない正確な作業走行経路を作成することができる。
【0078】
以上、行程間隔Gの算出方法に基づいて行程間隔Gを決定する方法、並びに決定した行程間隔Gに基づいて作業走行経路を作成する方法について説明したが、これらの方法に基づいて作成した作業走行経路Rは、図9に示すようにガイダンス画面に自車位置Pを示すマークと共に表示し、また、作業走行経路Rと自車位置Pとの間の左右方向となる誤差Eがインジケータ形式で表示される。そこで、作業者は作業走行を開始する地点にトラクタ1を移動させて、表示される自車位置Pが作業走行経路Rに沿って走行するように手動操舵を行い、或いは自動操向システムの自動操舵を開始させて作業走行を行う。
【0079】
なお、前述のように畝立作業を行う前にトラクタ1は普通耕耘作業をロータリ耕耘装置を用いて行うが、このロータリ耕耘装置を用いて例えば、田圃の荒起こし作業を行うことが行われている。そして、この荒起こし耕耘作業を行う際に、普通耕耘作業を行う際と同様にロータリ耕耘装置の耕耘幅を「作業幅」に、また、重複させる耕耘幅を「重複幅」に夫々入力して(図6参照)、このように設定して作成した作業走行経路Rに沿って荒起こしを手動又は自動で行うと、それまでに耕した耕耘跡は膨軟となって、この耕耘跡の端部を片側の車輪8、12が通ると相当深く沈下してしまい、荒起こし前のしっかりした硬い地表面に戻すことが困難となって作業走行経路Rに戻せない虞がある。
【0080】
しかし、荒起こし耕耘作業を行う場合に、前述の畝立てにおける行程間隔の算出方法の手法を用いて、車輪8、12が耕した耕耘跡に沈下することがない行程間隔の算出方法が同様に考えられる。即ち、耕した耕耘跡の端部が溝Mであるとみなすと、圃場に耕耘しない箇所が残らない行程間隔を得るために、行程間隔Gは逆に作業幅L以下でなければならないという条件(G≦L)に変更する。
【0081】
そのため、作業走行経路Rにおける行程間隔Gは、(L-W)/2≧αの場合は、
G=α+(L+W)/2
となり、また、(L-W)/2<αの場合は、
G=L
として、行程間隔Gを算出することができる。なお、作業幅Lは勿論、ロータリ耕耘装置の耕耘幅である。
【0082】
また、ロータリ耕耘装置を用いて田圃の荒起こし作業を行う場合に限らず、片側の車輪8、12が既に通った車輪跡(轍)を再び通ることによって深く沈下して作業車両が傾くことを嫌ったり、車輪8、12が轍を踏まないように操向して作業走行経路Rに戻すことが困難となる作業形態においては、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅Lと、作業車両に設ける走行装置の全幅Wと、測位手段の測位誤差αや許容誤差α等を用いて、隣り合う作業走行経路R間の行程間隔Gを適切に導く数式を前述の算出方法を応用して得ることができ、本発明を適用できる作業形態は広がる。
【0083】
従って、以上説明した作業走行経路における行程間隔の算出方法を纏めると、衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路を表示する表示手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、測位手段の測位誤差に基づいて隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出する。
【0084】
また、衛星測位システム等を用いて作業車両の位置を取得する測位手段と、作業車両の作業走行経路を作成する経路生成手段と、測位手段によって取得した作業車両の位置と経路生成手段によって作成した作業走行経路に基づいて作業車両を作業走行経路に沿うように導く自動操向手段を備え、前記経路生成手段は、少なくとも作業車両に設ける作業機の作業幅と、作業車両に設ける走行装置の全幅と、作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差、或いは人為的に定めた許容誤差に基づいて、隣り合う作業走行経路間の行程間隔を算出する。
【0085】
なお、この場合に実施形態に当てはめると、測位手段はRTK-GNSS受信装置28とRTK基準局29とタブレット端末30によって構成し、経路生成手段はタブレット端末30にインストールするナビゲションソフトウェア、表示手段はタブレット端末30に設けるディスプレイ48、自動操向手段は主に自動操舵装置31によって構成する。また、作業走行経路間の行程間隔を算出する手段は経路生成手段が受け持つ。
【0086】
さらに、前述のタブレット端末30が受け持つ測位手段と経路生成手段の機能はRTK-GNSS受信装置28のGNSSコントローラ40に受け持たせてもよく、また、ナビゲーションシステムを用いて手動操舵する場合の誤差αは測位誤差を与えるものとしたが、作業者が熟練者でない場合は、誤差αが測位誤差だけでは不足するので係る誤差αに作業者が自ら入力する手動操舵の習熟度等を加算した値を与えるようにしてもよい。さらに、自動操向システムを用いて自動操舵させる場合の誤差αにしても、作業車両を作業走行させた際に生ずる誤差αは作業走行速度によって変化する可能性が多分にあるので、作業走行速度の入力欄を設けてそれに基づき誤差αの値を変更したり修正してもよい。
【0087】
また、作業走行経路における行程間隔の決定方法にあって、算出した行程間隔を報知する手段として、タブレット端末30のディスプレイ48を用いたりスピーカを用いて視覚と聴覚によって報知してもよく、また、経路生成手段は、その際に算出した行程間隔と人為的に設定しようとする行程間隔Gとを比較してその良否を報知し、これに基づいて作業者に最終的な行程間隔を決定させるようにしてもよい。さらに、作業車両の位置を取得する測位手段は、慣性計測装置38で検出した測定情報を用いて衛星測位システムで測位した位置や方位を補正してもよい。
【0088】
その上、作業走行経路Rは必ずしも直線でなくともよく、基準線が曲線であればこの基準線を左右方向に行程間隔だけ変位(平行移動)させた作業走行経路Rを作成してもよい。また、基準線はティーチング走行を行ってその開始点と終了点の2つの測位情報によって取得するが、開始点から終了点に向かう走行を行った際の作業車両の多数の位置情報に基づいて、この位置情報を最小2乗法によって回帰直線として捉えて基準線となしてもよく、本発明の作業走行経路における行程間隔の算出方法、及び行程間隔の決定方法の趣旨を大きく逸脱しない限り、種々の変更を加えても差し支えない。
【符号の説明】
【0089】
1 トラクタ(作業車両)
28 RTK-GNSS受信装置
29 RTK基準局
30 タブレット端末
31 自動操舵装置
48 ディスプレイ(表示手段、報知手段)
52 USBメモリ(記憶媒体)
61 畝立機(作業機)
α 測位誤差
G 行程間隔
L 作業機の作業幅
R 作業走行経路
W 走行装置の全幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9