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特開2022-79889含フッ素シラン化合物、その製造方法及びそれを含んでなる表面改質組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079889
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】含フッ素シラン化合物、その製造方法及びそれを含んでなる表面改質組成物
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/12 20060101AFI20220520BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20220520BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220520BHJP
   B01J 27/13 20060101ALI20220520BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220520BHJP
【FI】
C07F7/12 W CSP
C07F7/18 W
C07F7/18 Y
C09K3/00 R
B01J27/13 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190751
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 陵二
(72)【発明者】
【氏名】布川 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
(72)【発明者】
【氏名】曽我 真一
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BB08B
4G169BC75B
4G169BD12B
4G169CB25
4G169CB80
4G169DA02
4H039CA92
4H039CF10
4H049VN01
4H049VP02
4H049VP05
4H049VQ09
4H049VQ12
4H049VQ16
4H049VR21
4H049VR24
4H049VR33
4H049VR43
4H049VS09
4H049VT17
4H049VU21
4H049VW02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面改質時の静的・動的な撥水撥油性に極めて優れ、汎用有機溶剤に易溶であり、かつ炭素数6までのパーフルオロアルキル基で分子構造が構成される表面改質剤を提供する。
【解決手段】複数のパーフルオロアルキル基を有し、末端に結合性シリル基を有する含フッ素シラン化合物を製造する。これを含んでなる表面改質組成物を用い基材表面を表面改質する。含フッ素シラン化合物は、具体的には、例えば下式によって製造される。



【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
[式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。Aは炭素数2から6のアルキレン基、又は一般式(2)
【化2】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。)
で示されるシロキサニレン基を表す。Xはハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表し、複数のXは同一又は相異なってもよい。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。ただし、nが6でmが3の時、Aは1,2-エチレン基にはなり得ない。]
で示される含フッ素シラン化合物。
【請求項2】
nが4又は6であり、mが2である、請求項1に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項3】
Aが1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基又はR及びRがメチル基であるシロキサニレン基である、請求項1又は2に記載の含フッ素シラン化合物。
【請求項4】
一般式(3)
【化3】
(式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。qは2から6の整数である。)
で示されるオレフィン化合物と、一般式(4)
【化4】
(式中、Xはハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表し、複数のXは同一又は相異なってもよい。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。)
で示されるヒドロシラン化合物とを、ヒドロシリル化触媒存在下で反応させることを特徴とする、一般式(1a)
【化5】
(式中、n、m、R、q、X、R及びrは前記と同義である。ただし、nが6でmが3の時、Aは1,2-エチレン基にはなり得ない。)
で示される含フッ素シラン化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(6)
【化6】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。)
で示されるシロキサンジオール化合物に、一般式(5)
【化7】
(式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
で示される含フッ素ハロゲン化シラン化合物と、一般式(8)
【化8】
(式中、Xはハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表し、複数のXは同一又は相異なってもよい。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。Xはハロゲン原子を表す。)
で示されるハロゲン化シラン化合物とを反応させることを特徴とする、一般式(1b)
【化9】
(式中、n、m、R、X、R、R、p、R及びrは前記と同義である。)
で示される含フッ素シラン化合物の製造方法。
【請求項6】
一般式(1c)
【化10】
[式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは、炭素数1から4のアルキル基を表す。Aは、炭素数2から6のアルキレン基、又は、一般式(2)
【化11】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。)
で示されるシロキサニレン基を表す。Xはハロゲン原子を表す。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。]
で示される含フッ素シラン化合物を、アルコキシ化剤又はアミノ化剤と反応させることを特徴とする、一般式(1d)
【化12】
(式中、n、m、R、A、R及びrは前記と同義である。Xは炭素数1から4のアルコキシ基又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表す。)で示される含フッ素シラン化合物の製造方法。
【請求項7】
アルコキシ化剤がアルコール化合物である、請求項6に記載の含フッ素シラン化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載の含フッ素シラン化合物及び有機溶剤を含んでなる表面改質組成物。
【請求項9】
請求項1から3のいずれかに記載の含フッ素シラン化合物、有機溶剤及び重合促進触媒を含んでなる請求項8に記載の表面改質組成物。
【請求項10】
重合促進触媒が酸触媒である請求項9に記載の表面改質組成物。
【請求項11】
請求項8、9又は10のいずれかに記載の表面改質組成物を塗工することを特徴とするガラス基材、金属酸化物基材又は金属基材の表面改質方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質剤として有用な新規含フッ素シラン化合物、その製造方法及びそれを含んでなる表面改質組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロアルキル系材料は耐熱性、耐薬品性、撥水撥油性、低摩擦性、低屈折率などの性質が発現し、これを利用した機能性材料として産業応用されている。特に、固体表面に撥水性や撥油性を付与する表面改質機能製品においては、固体表面上にパーフルオロアルキル基を強固に導入するために、パーフルオロアルキル基及び固体表面への共有結合性基を併せ持つ表面改質剤が用いられる。このような剤の表面改質機能は、表面改質剤分子中のパーフルオロアルキル鎖長が長いほどその効果が顕著になるが、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する表面改質剤は、環境及び生体内の残留・蓄積に基づく有害性に問題を有し、その産業的使用は強く制限される。そのため、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を分子内に有する化合物を用い表面改質に関し良機能を発現させる検討が行われている。
【0003】
炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を分子内に有する材料を用い撥水性・撥油性を向上させる方法として、長鎖パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部を水素原子に置き換えることで、生体蓄積性が低いといわれている炭素数6以下のパーフルオロアルキル基ユニットの複数構成体とし、改質剤に使用する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献3では、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルキレン基を分子内に有するジエン化合物とヒドロシラン化合物との反応により、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基複数構成体で構成されつつも良好な特性を有するフルオロアルキル置換シラン化合物についての合成が開示されている。
【0004】
撥液性は固体表面のフルオロアルキル基の存在密度に強く依存するため、分子内に複数のパーフルオロアルキル基を有する表面改質剤の使用は、分子内に単数のパーフルオロアルキル基を有する表面改質剤に比べ、より高速に高撥液性の表面処理を達成できる可能性が高い。
【0005】
特許文献4では、テトラビニルシランを原料とし、複数のパーフルオロアルキル基を有するシラン系表面処理剤を製造しているが、原料として高価なテトラビニルシランを用い、かつ原料の都合上、リンカー構造はエチレン基に限られていた。
【0006】
また、液滴の基板に対する接触角で評価可能な静的な撥液性とは別に、基材表面に付着した液滴のすべりやすさ、すなわち動的な撥液性も、固体の表面改質上で重要である。これは、固体表面における液滴や固体粉末の自己清浄能や汚染の脱落しやすさと相関があり、水滴の滑落臨界角で評価できる。ところが、パーフルオロアルキル基で表面改質された固体表面の場合、水滴が滑落しづらいことが問題になることがある。これは、フッ素原子と水分子の水素との静電相互作用と考えられている。そこで、易滑落性の固体表面改質剤が求められているが、安価な汎用溶剤に可溶で、かつ耐摩耗性等の耐久性に富む、動的撥液性に優れた表面状態を付与可能なパーフルオロアルキル系表面改質剤は、現行材料には乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5146455号
【特許文献2】特開2014-040373号公報
【特許文献3】国際公開第2017/119371号
【特許文献4】国際公開第2007/135315号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、炭素数6までのパーフルオロアルキル基により撥液性部分分子構造が構成され、従来よりも優れた高い静的及び動的な撥液効果を固体表面に付与可能な新規含フッ素シラン化合物、その製造方法、及びこれを含んでなる表面改質組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、炭素数6以下のパーフルオロアルキル鎖を複数有し、かつ固体表面に化学結合可能な官能性シリル基を末端に有し、両基をリンカーで結合した含フッ素シラン化合物を製造し、これを含んでなる表面改質組成物を用いて固体表面を改質することにより、高い撥水および撥油性能を固体表面に付与可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の構成よりなる。
[1]
一般式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。Aは炭素数2から6のアルキレン基、又は一般式(2)
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。)
で示されるシロキサニレン基を表す。Xはハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表し、複数のXは同一又は相異なってもよい。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。ただし、nが6でmが3の時、Aは1,2-エチレン基にはなり得ない。]
で示される含フッ素シラン化合物。
[2]
nが4又は6であり、mが2である、[1]に記載の含フッ素シラン化合物。
[3]
Aが1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基又はR及びRがメチル基であるシロキサニレン基である、[1]又は[2]に記載の含フッ素シラン化合物。
[4]
一般式(3)
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。qは2から6の整数である。)
で示されるオレフィン化合物と、一般式(4)
【0017】
【化4】
【0018】
(式中、Xはハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表し、複数のXは同一又は相異なってもよい。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。)
で示されるヒドロシラン化合物とを、ヒドロシリル化触媒存在下で反応させることを特徴とする、一般式(1a)
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、n、m、R、q、X、R及びrは前記と同義である。ただし、nが6でmが3の時、Aは1,2-エチレン基にはなり得ない。)
で示される含フッ素シラン化合物の製造方法。
[5]
一般式(6)
【0021】
【化6】
【0022】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。)
で示されるシロキサンジオール化合物に、一般式(5)
【0023】
【化7】
【0024】
(式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
で示される含フッ素ハロゲン化シラン化合物と、一般式(8)
【0025】
【化8】
【0026】
(式中、Xはハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表し、複数のXは同一又は相異なってもよい。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。Xはハロゲン原子を表す。)
で示されるハロゲン化シラン化合物とを反応させることを特徴とする、一般式(1b)
【0027】
【化9】
【0028】
(式中、n、m、R、X、R、R、p、R及びrは前記と同義である。)
で示される含フッ素シラン化合物の製造方法。
[6]
一般式(1c)
【0029】
【化10】
【0030】
[式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは、炭素数1から4のアルキル基を表す。Aは、炭素数2から6のアルキレン基、又は、一般式(2)
【0031】
【化11】
【0032】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。)
で示されるシロキサニレン基を表す。Xはハロゲン原子を表す。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。]
で示される含フッ素シラン化合物を、アルコキシ化剤又はアミノ化剤と反応させることを特徴とする、一般式(1d)
【0033】
【化12】
【0034】
(式中、n、m、R、A、R及びrは前記と同義である。Xは炭素数1から4のアルコキシ基又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表す。)で示される含フッ素シラン化合物の製造方法。
[7]
アルコキシ化剤がアルコール化合物である、[6]に記載の含フッ素シラン化合物の製造方法。
[8]
[1]から[3]のいずれかに記載の含フッ素シラン化合物及び有機溶剤を含んでなる表面改質組成物。
[9]
[1]から[3]のいずれかに記載の含フッ素シラン化合物、有機溶剤及び重合促進触媒を含んでなる[8]に記載の表面改質組成物。
[10]
重合促進触媒が酸触媒である[9]に記載の表面改質組成物。
[11]
[8]、[9]又は[10]のいずれかに記載の表面改質組成物を塗工することを特徴とするガラス基材、金属酸化物基材又は金属基材の表面改質方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明の含フッ素シラン化合物(1)、又はそれを含んでなる表面改質組成物を表面改質剤として用いることにより、基材表面に極めて高い撥液性を付与することが出来る。特に、無機ガラス基材の撥水、撥油及び防汚表面改質に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、一般式(1)、(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)及び(8)式中のR、R、R、R、A、X、X、X、X及びXについて説明する。
は炭素数1から4のアルキル基である。該アルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等が例示できる。これらのうち、経済性及び表面改質能の点から、メチル基が好ましい。
は炭素数1から4のアルキル基である。該アルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等が例示できる。これらのうち、経済性及び表面改質能の点から、メチル基が好ましい。
はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基である。該アルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基等が例示できる。これらのうち、経済性、精製の容易さ及び表面改質能の点から、メチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。
はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基である。該アルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基等が例示できる。これらのうち、経済性、精製の容易さ及び表面改質能の点から、メチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。
はハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示できる。これらのうち、経済性、表面改質能及び保存安定性の点から、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子が更に好ましい。また、該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、1-プロピルオキシ基又は2-プロピルオキシ基が例示できる。これらのうち、経済性及び表面改質能の点から、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基が更に好ましい。該ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、1-ピロリジノ基、1-ピペリジノ基等が例示できる。
で表される基はハロゲン原子であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示できる。これらのうち、経済性、表面改質能及び保存安定性の点から、塩素原子又は臭素原子が好ましく、臭素原子が更に好ましい。
で表される基はハロゲン原子であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示できる。これらのうち、経済性、表面改質能及び保存安定性の点から、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子が更に好ましい。
で表される基はハロゲン原子であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示できる。これらのうち、経済性、表面改質能及び保存安定性の点から、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子が更に好ましい。
で表される基は炭素数1から4のアルコキシ基、炭素数2から6のジアルキルアミノ基である。該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、1-プロピルオキシ基又は2-プロピルオキシ基が例示できる。これらのうち、経済性及び表面改質能の点から、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基が更に好ましい。該ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、1-ピロリジノ基、1-ピペリジノ基等が例示できる。
Aで表される基は、炭素数1から6の二価のアルキレン基、又は、一般式(2)
【0037】
【化13】
【0038】
(式中、R及びRは、それぞれ独立にフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。)
で示される二価のシロキサニレン基である。
該アルキレン基としては、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、イソプロピレン基、1,4-ブチレン基、イソブチレン基、1,5-ペンチレン基、1-メチル-1,4-ブチレン基、2-メチル-1,4-ブチレン基、3-メチル-1,4-ブチレン基、1,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、1-エチル-1,3-プロピレン基、1,6-ヘキシレン基、1-メチル-1,5-ペンチレン基、2-メチル-1,5-ペンチレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基、4-メチル-1,5-ペンチレン基、1,2-ジメチル-1,4-ブチレン基、1,3-ジメチル-1,4-ブチレン基、2,2-ジメチル-1,4-ブチレン基、2,3-ジメチル-1,4-ブチレン基、3,3-ジメチル-1,4-ブチレン基、1-エチル-1,4-ブチレン基、2-エチル-1,4-ブチレン基等が挙げられる。これらのうち、撥液性能の点から、1,3-プロピレン基が好ましい。
該シロキサニレン基としては、以下の部分構造が例示できる。
【0039】
【化14】
【0040】
これらのシロキサニレン基(2)のうち、経済性及び表面改質能の点から、(2-7)、(2-12)、(2-13)、又は(2-18)が好ましく、(2-13)又は(2-18)が更に好ましい。
【0041】

次に、本発明の含フッ素シラン化合物(1)について説明する。本発明の含フッ素シラン化合物は、下記一般式(1)
【0042】
【化15】
【0043】
で示される。ここで一般式(1)におけるパーフルオロアルキル基の炭素数nは1から6までの整数であり、パーフルオロアルキル基の個数mは2、又は3である。C2n+1基はパーフルオロアルキル基である。その構造としては、分岐構造を有していてもよいが、直鎖のパーフルオロアルキル基は自己会合構造をとりやすく、基材表面に単分子層を形成しやすくなると考えられるため、直鎖のパーフルオロアルキル基が好ましい。nは、パーフルオロアルキル基の鎖長が大きいほど表面改質能が高い点から、nは4又は6であることが好ましく、6であることが更に好ましい。mは、撥液性能の点から、2又は3であることが好ましく、2が更に好ましい。rは末端結合性シリル基に置換したアルキル基の数であり、0又は1である。表面改質能の点から、0が好ましい。
本発明の含フッ素シラン化合物(1)としては、以下の化合物が例示出来る。なお、本明細書中では、Me、Et、Pr及びPrは、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基を表す。
【0044】
【化16】
【0045】
【化17】
【0046】
【化18】
【0047】
【化19】
【0048】
【化20】
【0049】
【化21】
【0050】
【化22】
【0051】
【化23】
【0052】
【化24】
【0053】
【化25】
【0054】
【化26】
【0055】
これらのうち、経済性、表面撥液性及び保存安定性の点から、(1-2-1)、(1-2-3)、(1-4-1)、(1-4-3)、(1-9-1)、(1-9-3)、(1-15-1)、(1-15-3)又は(1-25-3)が好ましく、(1-4-1)、(1-4-3)、(1-9-1)、(1-9-3)又は(1-25-3)が更に好ましく、(1-4-3)、(1-9-3)又は(1-25-3)が殊更好ましい。
【0056】

次に本発明の含フッ素シラン化合物(1)の製造方法について説明する。本発明の含フッ素シラン化合物(1)の製造方法は、リンカー部位であるAの構造、及び末端結合性基の構造によって異なり、下式に示される3種の製造方法で製造出来る。以後、本明細書中では、これらをそれぞれ本発明の製造方法1、本発明の製造方法2、本発明の製造方法3と呼ぶ。
【0057】
【化27】
【0058】
(式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは、炭素数1から4のアルキル基を表す。qは2から6の整数である。Xはハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表し、複数のXはそれぞれ同一又は相異なってもよい。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。pは1から9の整数である。R及びRは、それぞれ独立にフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。X、X及びXはハロゲン原子を表す。Xは炭素数1から4のアルコキシ基、炭素数2から6のジアルキルアミノ基、又はハロゲン原子を表す。)

まず、本発明の製造方法1について説明する。本発明の製造方法1はリンカー部位Aがアルキレン基である含フッ素シラン化合物(1a)
【0059】
【化28】
【0060】
(式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは、炭素数1から4のアルキル基を表す。qは2から6の整数である。Xはハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表し、複数のXはそれぞれ同一又は相異なってもよい。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。)
の製造方法であって、一般式(3)
【0061】
【化29】
【0062】
(式中、n、m、R及びqは上記と同義である。)
で示されるオレフィン化合物(3)と、一般式(4)
【0063】
【化30】
【0064】
(式中、X、R及びrは上記と同義である。)
で示されるヒドロシラン化合物(4)とを、ヒドロシリル化触媒存在下で反応させることを特徴とする。
使用できるオレフィン化合物(3)としては、以下が例示できる。
【0065】
【化31】
【0066】
【化32】
【0067】
これらのうち、製造収率及び精製が容易な点から、(3-7)、(3-12)、(3-22)又は(3-27)が好ましく、(3-12)又は(3-27)が更に好ましい。
これらのオレフィン化合物(3)は、文献公知の方法を参考に(例えば、Tetrahedron Letters誌、47巻、239-243頁、2006年。)合成することができる。
本発明の製造方法1において使用可能なヒドロシラン化合物(4)としては、以下が例示できる。
【0068】
【化33】
【0069】
これらのうち、コスト及び製造収率の点から、(4-1)又は(4-2)が好ましく、(4-1)が更に好ましい。これらは、公知の製造法に従い合成して用いてもよく、また、市販品を用いてもよい。
本発明の製造方法1は、ヒドロシリル化触媒存在下で実施することを特徴とする。該ヒドロシリル化触媒としては、アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、過酸化ジ-tert-ブチル(DTBP)、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)等のラジカル発生型ヒドロシリル化触媒;塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、三フッ化ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等のルイス酸ヒドロシリル化触媒;金属パラジウム、金属白金、パラジウム活性炭、白金活性炭、塩化白金酸、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロリド、(1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン)白金錯体、2,4,6,8-テトラビニル-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン)白金錯体等の白金族遷移金属触媒が例示できる。経済性、製造収率及び触媒活性が高い点で、塩化白金酸等の白金族遷移金属触媒が好ましい。
本発明の製造方法1において、ヒドロシリル化触媒の使用量には制限はなく、当業者がヒドロシリル化反応を実施する際の一般的なモル当量を用いて実施することが出来る。具体例としては、オレフィン化合物(3)のモル当量に対し、ヒドロシリル化触媒のモル当量が0.00001モル当量から0.5モル当量の範囲から適宜選択した当量において実施することが出来る。製造収率及び経済性の点で、0.0001モル当量から0.2モル当量の範囲内から適宜選ばれるモル当量であることが好ましく、0.001モル当量から0.1モル当量の範囲内から適宜選ばれるモル当量であることが更に好ましい。
本発明の製造方法1は、無溶媒条件下で実施してもよいが、必要に応じ有機溶媒中にて実施してもよい。使用可能な有機溶媒は、反応を阻害しなければ特に制限はないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒、ベンゾトリフルオリド(α,α,α-トリフルオロトルエン)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のフルオロアルキル置換芳香族炭化水素溶媒;ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン等のフルオロ芳香族炭化水素溶媒;2H,3H-デカフルオロペンタン(バートレル)、テトラデカフルオロヘキサン、オクタデカフルオロオクタン、ドデカフルオロシクロヘキサン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)デカフルオロシクロヘキサン、パーフルオロケロセン等のフルオロ脂肪族炭化水素溶媒が例示できる。経済性及び収率が良い点で、トルエン、キシレン、2H,3H-デカフルオロペンタン、ベンゾトリフルオリド、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン又はヘキサフルオロベンゼンが好ましい。これら有機溶媒は、一種類を単独で用いても、複数の有機溶媒を任意の比率で混合して用いても良い。有機溶媒の使用量は、収率の点からオレフィン化合物(3)の重量に対し1から1000重量%の範囲内から適宜選ばれる重量%であることが好ましく、5から200重量%の範囲内から適宜選ばれる重量%であることが更に好ましい。
本発明の製造方法1を実施する際のオレフィン化合物(3)とヒドロシラン化合物(4)の当量比には特に制限は無いが、例えばオレフィン化合物(3)1モル当量に対しヒドロシラン化合物(4)を0.8から100モル当量の範囲から適宜選ばれた当量で行うことが、収率が良い点で好ましい。
本発明の製造方法1を実施する際のオレフィン化合物(3)、ヒドロシラン化合物(4)及びヒドロシリル化触媒の混合順序には特に制限はないが、例えばヒドロシリル化触媒にオレフィン化合物(3)を混合し、ここにヒドロシラン化合物(4)を添加する方法が、安全性の点から好ましい。
本発明の製造方法1を実施する際は、収率が良い点で、不活性ガス雰囲気下にて実施することが好ましい。該不活性ガスとしては、具体的には、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等を例示することが出来る。安価な点で窒素又はアルゴンが好ましい。
本発明の製造方法1では、反応温度及び反応時間には制限はなく、当業者がオレフィンのヒドロシリル化反応を実施するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、-10℃から300℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、1分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによって含フッ素シラン化合物(1a)を収率良く製造することが出来る。
本発明の製造方法1において、n、m、R、R、A及びXを適宜選択することにより、含フッ素シラン化合物(1a)を好適に製造することが出来る。本発明の製造方法1で製造可能な含フッ素シラン化合物(1a)としては、以下の化合物が例示出来る。
【0070】
【化34】
【0071】
【化35】
【0072】
【化36】
【0073】
【化37】
【0074】
【化38】
【0075】
これらのうち、製造収率及び精製が容易な点において(1-2-1)、(1-4-1)、(1-9-1)又は(1-15-1)が好ましく、(1-4-1)又は(1-9-1)が更に好ましい。
本発明の製造方法1で製造した含フッ素シラン化合物(1a)は、当業者が有機シラン化合物を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、濃縮、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、減圧蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0076】

次に本発明の製造方法2について説明する。本発明の製造方法2は、リンカー部分Aがシロキサニレン基である含フッ素シラン化合物(1b)
【0077】
【化39】
【0078】
(式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは、炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。Xはハロゲン原子、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数2から6のジアルキルアミノ基を表し、複数のXはそれぞれ同一又は相異なってもよい。R及びRは、それぞれ独立にフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。)
の製造方法であって、一般式(6)
【0079】
【化40】
【0080】
(式中、R、R及びpは、上記と同義である。)
で示されるシロキサンジオール化合物に、一般式(5)
【0081】
【化41】
【0082】
(式中、n、m、Rは、上記と同義である。Xはハロゲン原子を表す。)
で示される含フッ素ハロゲン化シラン化合物と、一般式(8)
【0083】
【化42】
【0084】
(式中、X、R及びrは、上記と同義である。Xはハロゲン原子を表す。)
で示されるハロゲン化シラン化合物とを反応させることを特徴とする。
一般式(1b)及び(5)中のnで表されるフルオロアルキル基の炭素鎖数は2から6の整数であり、原料コストが低く製造収率が良い点で4又は6であることが好ましく、6であることが更に好ましい。又、一般式(1b)及び(5)中のmで表される分子中のフルオロアルキル基の数は2又は3であり、精製が容易になる点から2であることが好ましい。
本発明の製造方法2で原料として用いることが出来るシロキサンジオール化合物(6)としては、以下が例示できる。
【0085】
【化43】
【0086】
これらのシロキサンジオール化合物(6)のうち、経済性又は精製の容易さの点から(6-7)、又は(6-9)が好ましく、(6-7)が更に好ましい。これらのシロキサンジオール化合物(6)は、公知の合成法(例えば、特開2016-150906号公報)に従い、適宜合成し用いることが出来る。また、市販品を入手し用いてもよい。
【0087】

製造方法2で原料として用いることが出来る含フッ素ハロゲン化シラン化合物(5)としては、以下が例示できる。
【0088】
【化44】
【0089】
これらのうち、経済性及び調製が容易という点で、(5-4)、(5-6)、(5-10)又は(5-12)が好ましく、(5-6)又は(5-12)が更に好ましく、(5-6)が殊更好ましい。これらは、公知の合成法(例えば、Applied Surface Science誌、371巻、453-467頁、2016年。
)に従い、適宜合成し用いることが出来る。
製造方法2で用いることのできるハロゲン化シラン化合物(8)としては、以下が例示できる。
【0090】
【化45】
【0091】
これらのうち、経済性及び調製が容易という点で、(8-1)、又は(8-6)が好ましく、(8-6)が更に好ましい。これらは、公知の合成法(例えば、Angewandte Chemie、International、Edition、50巻, 10708-10711頁 (2011年))に従い、適宜合成し用いることが出来る。又、市販品を入手し用いてもよい。
本発明の製造方法2は、シロキサンジオール化合物(6)を有機溶剤に溶解し、ここに含フッ素ハロゲン化シラン化合物(5)を加え、中間体(7)を調製する工程1と、中間体(7)に、ハロゲン化シラン化合物(8)を加え、含フッ素シラン化合物(1b)を調製する工程2とよりなる。工程1及び工程2は、連続して同一容器内で実施してもよく、一度中間体(7)を精製して工程2に用いても良い。
本発明の製造方法2での工程1及び工程2における有機溶剤は、反応を阻害しないものでなければ制約は無く、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が例示できる。経済性及び製造収率の点から、ジエチルエーテル又はテトラヒドロフランが好ましい。
本発明の製造方法2は、反応を加速させ、又はシロキサンジオール化合物(6)や中間体(7)の自己縮合を回避するために、有機塩基を同伴させて実施することが好ましい。該有機塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、キノリン、アニリン等の有機アミンが例示できる。製造収率、経済性及び取り扱いやすさから、トリエチルアミン又はピリジンが好ましい。これらの使用量には特に制限は無いが、例えばシロキサンジオール化合物(6)1モル当量に対し、1.5~100モル当量の範囲から適宜選ばれた当量の有機塩基を同伴させて実施することが、製造収率が良い点で好ましい。
本発明の製造方法2における、3種の原料の当量比には特に制限は無いが、例えばシロキサンジオール化合物(6)1モル当量に対し含フッ素ハロゲン化シラン化合物(5)を0.8から1.5モル当量の範囲から適宜選ばれた当量で、ハロゲン化シラン化合物(8)を0.8から10モル当量の範囲から適宜選ばれた当量で行うことが、収率が良い点で好ましい。
本発明の製造方法2で製造した含フッ素シラン化合物(1b)は、当業者が有機シラン化合物を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、濃縮、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、減圧蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィー等を挙げることができる。
本発明の製造方法2において、n、m、R、R、A及びXを適宜選択することにより、含フッ素シラン化合物(1b)を好適に製造することが出来る。製造方法2で製造可能な含フッ素シラン化合物(1b)としては、以下の化合物が例示出来る。
【0092】
【化46】
【0093】
【化47】
【0094】
【化48】
【0095】
【化49】
【0096】
【化50】
【0097】
これらのうち、製造収率及び精製が容易な点において(1-9-1)、(1-9-3)又は(1-25-3)が好ましく、(1-9-3)又は(1-25-3)が更に好ましい。
【0098】

次に本発明の製造方法3について説明する。本発明の製造方法3では、一般式(1c)
【0099】
【化51】
【0100】
[式中、nは2から6の整数である。mは2又は3である。Rは、炭素数1から4のアルキル基を表す。Aは、炭素数2から6のアルキレン基、又は、一般式(2)
【0101】
【化52】
【0102】
(式中、R及びRは、それぞれ独立にフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を表す。pは1から9の整数である。)
で示されるシロキサニレン基を表す。Xはハロゲン原子を表す。Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。rは0又は1である。]
で示される含フッ素シラン化合物(1c)から、一般式(1d)
【0103】
【化53】
【0104】
(式中、n、m、R、A、R及びrは上記と同義である。Xは炭素数1から4のアルコキシ基、炭素数2から6のジアルキルアミノ基、又はハロゲン原子を表す。)
で示される含フッ素シラン化合物を製造する方法である。これは、含フッ素シラン化合物(1c)とアルコキシ化剤又はアミノ化剤との反応によって行うことができる。該アルコキシ化剤としては、アルコール化合物ROH(式中、Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。)、金属アルコキシドROM(式中、Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属である。sは1又は0.5である。)、又は、オルトギ酸トリアルキルHC(OR(式中、Rは炭素数1から4のアルキル基を表す。)が使用できる。当該製造方法におけるハロゲン原子Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が例示でき、製造収率の点から塩素又は臭素であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。アルコール化合物ROHは、炭素数1から4のアルキルアルコールであり、該アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等が例示できる。これらのうち、経済性及び製造収率の点から、メタノール又はエタノールが好ましく、メタノールが更に好ましい。金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等が例示できる。該オルトギ酸トリアルキルとしては、オルトギ酸トリメチル又はオルトギ酸トリエチルが例示できる。
本発明の製造法3において、アルコキシ化剤としてアルコール化合物を用いる場合、反応を加速させ製造収率を高めるために、有機塩基を同伴させて実施してもよい。該有機塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、キノリン、アニリン等の有機アミンが例示できる。製造収率、経済性及び取り扱いやすさから、トリエチルアミン又はピリジンが好ましい。これらの使用量には特に制限は無いが、例えば含フッ素シラン化合物(1c)上のハロゲン原子X1モル当量に対し、0.8~20モル当量の範囲から選ばれる量の有機塩基を同伴させて実施することが好ましい。
また、本発明の製造方法3では、一般式(1c)で示される含フッ素シラン化合物と、アミノ化剤との反応により、アミノ末端の含フッ素シラン化合物(1d)を製造することができる。
該アミノ化剤としては、第二級アミンであり、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等が例示できる。本発明の製造法3において、アミノ化剤として第二級アミンを用いる場合、反応を加速させ製造収率を高めるために、さらに有機塩基を同伴させて実施してもよい。該有機塩基としては、トリメチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キノリン、アニリン等の有機アミンが例示できる。製造収率、経済性及び取り扱いやすさから、トリエチルアミン又はピリジンが好ましい。これらの使用量には特に制限は無いが、例えば含フッ素シラン化合物(1c)中のハロゲン原子X1モル当量に対し、0.8~20モル当量の範囲から適宜選ばれる量の有機塩基を同伴させて実施することが好ましい。
本発明の製造方法3において、原料として用いることができる含フッ素シラン化合物(1c)としては、以下の化合物が例示できる。
【0105】
【化54】
【0106】
【化55】
【0107】
これらのうち、経済性及び製造収率の点において、(1-2-1)、(1-4-1)、(1-15-1)又は(1-19-1)が好ましく、(1-4-1)又は(1-15-1)が更に好ましい。
【0108】

製造方法3によって製造することができる含フッ素シラン化合物(1d)としては、以下が例示できる。
【0109】
【化56】
【0110】
【化57】
【0111】
【化58】
【0112】
【化59】
【0113】
【化60】
【0114】
【化61】
【0115】
【化62】
【0116】
これらのうち、製造収率及び単離精製が容易である点において、(1-2-3)、(1-4-3)、(1-9-3)、(1-13-3)、(1-15-3)、(1-17-3)、(1-21-3)又は(1-25-3)が好ましく、(1-4-3)、(1-9-3)、(1-15-3)又は(1-17-3)が更に好ましい。
本発明の製造方法3で製造した含フッ素シラン化合物(1d)は、当業者が有機シラン化合物を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、濃縮、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、減圧蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0117】

次に、本発明の含フッ素シラン化合物(1)を含んでなる表面改質組成物(以下、本発明の表面改質組成物と呼ぶ。)について説明する。本発明の表面改質組成物は、本発明の含フッ素シラン化合物(1)及び有機溶剤を含んでなる。さらに、表面改質作用を円滑に進行させる酸触媒、水、シラン添加剤、その他助剤等を含んでもよい。本発明の表面改質組成物中の含フッ素シラン化合物(1)は、一般式(1)で示されるものであり、以下の化合物が例示できる。

【0118】
【化63】
【0119】
【化64】
【0120】
【化65】
【0121】
【化66】
【0122】
【化67】
【0123】
【化68】
【0124】
【化69】
【0125】
【化70】
【0126】
【化71】
【0127】
【化72】
【0128】
【化73】
【0129】
これらのうち、表面改質特性、組成物の安定性及び経済性に優れる点で、(1-2-1)、(1-2-3)、(1-4-1)、(1-4-3)、(1-9-1)、(1-9-3)、(1-15-1)又は(1-15-3)が好ましく、(1-4-1)、(1-4-3)、(1-9-1)又は(1-9-3)が更に好ましい。これらの本発明の表面改質組成物中の含フッ素シラン化合物(1)は、一種類を単独で用いても、複数種の含フッ素シラン化合物(1)を任意の比率で混合して用いても良い。
本発明の表面改質組成物中の含フッ素シラン化合物(1)の濃度は、経済性及び膜の均質性の点から、本発明の表面改質組成物の総量に対し、0.0001重量%から50重量%の範囲から適宜選ばれる濃度であることが好ましく、0.01%から20重量%の範囲から適宜選ばれる濃度であることがより好ましい。
本発明の表面改質組成物を構成する成分としては、含フッ素シラン化合物(1)を一部又は全部溶解させる有機溶剤を用いることが特徴である。該有機溶剤としては、含フッ素シラン化合物(1)を溶解させるものであれば特に制限はなく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶剤類;1,2-ジメトキシエタン、ジグリム、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶剤類を例示できる。また、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、パーフルオロエーテル類又はハイドロフルオロアルキルエーテル類のフッ素系有機溶剤も使用できる。具体例として、ベンゾトリフルオリド(α,α,α-トリフルオロトルエン)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、2H,3H-デカフルオロペンタン(バートレル)、テトラデカフルオロヘキサン、オクタデカフルオロオクタン、ドデカフルオロシクロヘキサン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)デカフルオロシクロヘキサン、メチルノナフルオロブチルエーテル(異性体混合物)、エチルノナフルオロブチルエーテル(異性体混合物)等が例示できる。これらのうち、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール溶剤、ヘプタン、オクタン、トルエン等の炭化水素溶媒、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、エチルノナフルオロブチルエーテル(異性体混合物)等のフッ素系有機溶剤は、含フッ素シラン化合物(1)及び酸触媒の溶解性が高く、さらに、撥水液の塗工性(塗り伸ばしやすさ)や乾燥時間(作業時間)が適度になるので好ましい。これらの有機溶剤は、一種類を単独で用いても、複数の有機溶剤を任意の比率で混合して用いても良い。
該有機溶剤の添加量は、本発明の表面改質組成物の総量に対し、50から99.999重量%の範囲から選ばれることが好ましく、80から99.99重量%の範囲から選ばれることがより好ましい。80重量%未満では、基材への含フッ素シラン化合物(1)の付着量が多くなりすぎることで、組成物の塗工性(塗り伸ばし易さ)が低下する。また、99.999重量%を超えると基材への含フッ素シラン化合物(1)の付着量が少なくなり、撥水性を十分に発現させづらくなる。
本発明の表面改質組成物中には、水を含んでもよい。本発明の表面改質組成物に用いる水は、該含フッ素シラン化合物(1)を部分的に加水分解し、円滑に固体表面に化学結合させるための成分である。前記水の添加量は、前記含フッ素シラン化合物(1)のモル数の0.1から200倍の範囲から適宜選ばれるモル数とすることが好ましく、1から50倍の範囲から適宜選ばれるモル数がより好ましい。また、本発明の表面改質組成物中の含有水分量を調整するために、撥水液に脱水剤を添加し、所定時間脱水処理を行ってもよい。脱水剤としては、シリカゲル、合成ゼオライト、活性アルミナ等を用いることが出来る。
本発明の表面改質組成物中には、表面処理を円滑に進める酸触媒を添加してもよい。該酸触媒は、無機酸、有機酸のいずれも用いることができる。該無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸;硫酸、硝酸、過塩素酸等の無機オキソ酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸等の有機カルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、2-プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、2-ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタン-1-スルホン酸(イセチオン酸)、アリルスルホン酸、1,3-プロパンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、p-キシレン-2-スルホン酸、2-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、p-フェノールスルホン酸等の有機スルホン酸が例示できる。これらのうち、経済性、安全性、取り扱い性及び良質な表面改質が可能である点から酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸が好ましく、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸が更に好ましい。
本発明の表面改質組成物中の酸触媒の濃度は、経済性、組成物の安定性(ポットライフ)及び膜の均質性の点から、表面改質組成物の総量に対し0.0001重量%から50重量%の範囲から選ばれる濃度であることが好ましく、0.01%から20重量%の範囲から選ばれる濃度であることがより好ましい。
本発明の表面改質組成物中には、別の表面改質作用を及ぼすシラン添加剤を含んでもよい。該シラン添加剤としては、固体表面及び本発明の含フッ素シラン化合物(1)に結合作用のある官能性シランである。該シラン添加剤としては、具体的には、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリエトキシオクチルシラン等のアルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等のジシラザン類、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロオクチルシラン、クロロジメチルオクチルシラン、クロロジメチルオクタデシルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、四塩化ケイ素等のハロゲン化シラン類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン等のパーアルコキシオリゴシロキサン類が例示できる。これらは、本発明の表面改質組成物中の含フッ素シラン化合物(1)の重量に対し、約0.001から1000重量%の範囲から適宜選ばれる割合で用いることができる。
【0130】
本発明の表面改質組成物中には、必要に応じてトリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン、モルホリンなどのアミン系中和剤、組成物の濡れ性を改善するイオン系、非イオン系などの各種界面活性剤、潤滑性を更に改善するシリコーンオイル、シリコーンワニスなどを添加することもできる。これらは、本発明の表面改質組成物中の含フッ素シラン化合物(1)の重量に対し、約0.001~300重量%の割合で用いることができる。
組成物の調合方法は、適宜決められた量の各成分及び有機溶剤を混合することによって行う。これは、混合後に保存し、適宜使用してもよく、塗工直前に混合し塗工に用いてもよい。
本発明の表面改質組成物の基材への塗工は、浸漬法、ディップコーティング法、吹き付け法、かけ流し法、スピンコーティング法、エアロゾル噴射法、刷毛塗り法、含浸布による塗工法など、フルオロアルキル系表面改質剤の表面改質に通常用いられる任意の方法によって行うことができる。表面改質の均一さ、撥液性の高さ及び経済性の点から、浸漬法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、刷毛塗り法又は含浸布による塗工法が好ましく、ディップコーティング法又は含浸布による塗工法が更に好ましい。又、塗工後に必要に応じて加熱又は非加熱条件下での膜養生(アニーリング)及び洗浄の工程を加えてもよい。
本発明の表面改質組成物による表面改質可能な基材としては、固体表面に含フッ素シラン化合物(1)が結合可能な水酸基を有するものである。その形状としては、平面であっても立体物であってもよい。又、粉体や成型体であってもよい。基材の材質としては、無機基材であっても、有機高分子基材であってもよい。該無機基材としては、石英ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、リン酸塩ガラス等の無機ガラス材料基材;単結晶石英、多結晶石英、シリカゲル等の二酸化ケイ素材料基材;ゼオライト、ムライト、雲母、粘土鉱物等のアルミノケイ酸塩材料基材;アルミナ(酸化アルミニウム)、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)等の金属酸化物材料基材;スピネル、鉄フェライト等の複酸化物材料基材を例示することが出来る。該有機高分子基材としては、セルロース等が例示できる。
又、金属表面は水酸基構造を有しているため、金属表面の表面改質処理にも用いることが出来る。該金属材料としては、アルミニウム、チタン、鉄、マンガン、バナジウム、ニッケル、クロム、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウム及びそれらの合金が例示できる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の含フッ素シラン化合物(1)は、透明で高い撥水撥油性を固体表面に付与可能な表面改質剤として、ガラス、金属又は金属酸化物系材料への表面改質に有用である。このような表面改質した材料は、タッチパネルのような接触式デバイス、光学窓材、撥水・防汚性付与材料、又は離型モールドとして利用可能である。特に、航空機用、自動車用の窓ガラスやミラー、車体の撥水・防汚処理に好適に用いることができる。
また、含フッ素シラン化合物(1)は反応活性な官能基を片末端に持つことから、両親媒性分子として、フルオラス相界面活性剤としての利用が可能になる。さらに、反応活性な官能基を変換させ、別の基に転換することにより、完全縮合型、もしくは不完全縮合型シルセスキオキサン等、新たな分子構造を有する表面改質剤の原料物質としての利用が期待出来る。
【実施例0132】
以下、実施例、評価例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
実施例に記載の製造は全てアルゴン雰囲気下で実施した。機器分析は、H-NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)、13C-NMR(炭素13核磁気共鳴スペクトル)、19F-NMR(フッ素核磁気共鳴スペクトル)及び29Si-NMR(ケイ素29核磁気共鳴スペクトル)測定はBruker-Avance社のAscend400核磁気共鳴分光計を用いて測定を行った。核磁気共鳴スペクトル測定溶媒には重クロロホルムを用い、H-NMR及び29Si-NMRではテトラメチルシランを内部標準物質とし、19F-NMRではヘキサフルオロベンゼンを二次外部標準物質として化学シフトを求めた。IR(赤外吸収)スペクトルは(株)堀場製作所のFT-720分光光度計を用い、SensIRtechnologies社のDuraSamplIRII(反射型)測定セルを用いて測定を行った。
【0133】

製造で用いた、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルブロミド及び1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルブロミドは、対応するヨージド(東京化成株式会社製)をアセトン中、過剰量のテトラエチルアンモニウムブロミドと加熱することにより合成して用いた。1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(東京化成工業株式会社製試薬)、トリクロロシラン(東京化成工業株式会社製試薬)、p-トルエンスルホン酸(東京化成工業株式会社製試薬)、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シラン(東京化成工業株式会社製試薬)、臭素(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、マグネシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、トリエチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、脱水テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、脱水メタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、脱水ジクロロメタン(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、イソプロピルアルコール(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、脱水ジエチルエーテル(関東化学株式会社製試薬)、クロロホルム(関東化学株式会社製試薬)、アリルマグネシウムクロリドテトラヒドロフラン溶液(シグマアルドリッチジャパン株式会社製試薬)及びジクロロメチルシラン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製試薬)は市販品を購入しそのまま用いた。塩化白金酸六水和物は田中貴金属株式会社の製品を購入し、使用直前に減圧下で乾燥して使用した。エチルノナフルオロブチルエチルエーテルは、東京化成工業株式会社製試薬の異性体混合物品をそのまま用いた。
表面改質試験は、十分洗浄し清浄にしたソーダガラス板(短辺26mm、長辺76mm)を基材とし、表面改質後に洗浄し、これを目視で確認し、表面の汚濁等を観察した。撥液性試験における接触角は、水およびn-ヘキサデカンについて、マイクロシリンジより分注した10μLの液滴を表面改質基材上に5ヶ所に乗せ、この液滴をxyzφステージを備えた水平光軸10倍マクロ撮影装置(対物レンズ:カールツァイスイエナ社製ミクロタール30mm、フランジバック220mm)にて表面改質基材の真横から撮影し、液滴の縦横比からθ/2法にて接触角を求め、5ヶ所の測定値から平均値と標準偏差を算出した。水滑落角は、マイクロシリンジより分注した50μLの水滴を表面改質基材に乗せ、傾斜ステージをゆっくりと傾斜させて水滴が動き出す臨界角を5ヶ所で5回求め、その平均値及び標準偏差を算出した。
【0134】

(合成例1)ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)メチルシランの合成
【0135】
【化74】
【0136】
磁気撹拌子、100mL滴下ロート及びジムロートを備えた300mLの3口フラスコをアルゴンで置換し、金属マグネシウム2.95g(121mmol)を収めた。このフラスコに脱水ジエチルエーテル10mLを加え、少量のジブロモエタンでマグネシウムを活性化した。滴下ロートから1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルブロミド32.7g(100mmol)の脱水ジエチルエーテル80mLを60分かけて滴下した。滴下後、50℃に加熱し、60分撹拌した。この溶液を25℃に戻し、注射器からジクロロメチルシラン5.17g(44.9mmol)をゆっくり加え、60℃で1時間撹拌した。反応混合物に希塩酸を加え、セライトを用いて溶液をろ過した。有機層を分液抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度65℃/40Pa)することにより、ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)メチルシランを無色透明の液体として22.98g(収率95.0%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.19~0.20(m,3H),0.87~0.94(m,4H),2.03~2.17(m,4H),3.93(s,1H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.0,-124.3,-116.2,-81.0.
29Si-NMR(80MHz,CDCl):δ4.37.
IR(neat,cm-1):1442,1354,1207,1130,918,877,845,744.

(合成例2)トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シランの合成
【0137】
【化75】
【0138】
磁気撹拌子、100mL滴下ロート及びジムロートを備えた300mLの3口フラスコをアルゴンで置換し、金属マグネシウム2.95g(121mmol)を収めた。このフラスコに脱水ジエチルエーテル10mLを加え、少量のジブロモエタンでマグネシウムを活性化した。滴下ロートから1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルブロミド32.7g(100mmol)の脱水ジエチルエーテル80mLを60分かけて滴下した。滴下後、50℃に加熱し、60分撹拌した。この溶液を25℃に戻し、注射器からトリクロロシラン4.04g(29.8mmol)をゆっくり加え、50℃で1時間撹拌した。反応混合物に希塩酸を加え、セライトを用いて溶液をろ過した。有機層を分液抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度100℃/40Pa)することにより、トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シランを無色透明の液体として22.81g(収率99.2%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.95-1.00(m,6H),2.06-2.19(m,6H),3.95(s,1H).
29Si-NMR(79MHz,CDCl):δ2.52.
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126,-124,-116,-81.1.
IR(neat,cm-1):1442,1354,1207,1130,918,877,847,744.

(合成例3)ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)メチルシランの合成
【0139】
【化76】
【0140】
磁気撹拌子、200mL滴下ロート及びジムロートを備えた300mLの3口フラスコをアルゴンで置換し、金属マグネシウム3.10g(123mmol)を収めた。このフラスコに脱水ジエチルエーテル10mLを加え、少量のジブロモエタンでマグネシウムを活性化した。滴下ロートから1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルブロミド50.8g(119mmol)の脱水ジエチルエーテル100mL溶液を45分かけて滴下した。滴下後、50℃に加熱し、1時間撹拌した。この溶液を25℃に戻し、注射器からジクロロメチルシラン6.41g(55.7mmol)をゆっくり加え、50℃で1時間撹拌した。反応混合物に飽和食塩水及びジエチルエーテルを加え、セライトを用いて溶液をろ過した。有機層を分液抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、得られた粗生成物を減圧下で減圧蒸留(沸点81℃/13Pa)することにより、ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)メチルシランを無色透明の液体として34.9g(収率85.0%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.19~0.20(m,3H),0.83~0.98(m,4H),2.03~2.16(m,4H),3.93(s,1H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.2,-123.4,-122.9,-122.0,-116.0,-80.9.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ6.78.
IR(neat,cm-1):2940,2130,1442,1234,1188,1142,1120,1066,914,705.

(合成例4)トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シランの合成
【0141】
【化77】
【0142】
磁気撹拌子、200mL滴下ロート及びジムロートを備えた300mLの3口フラスコをアルゴンで置換し、金属マグネシウム3.09g(123mmol)を収めた。このフラスコに脱水ジエチルエーテル10mLを加え、少量のジブロモエタンでマグネシウムを活性化した。滴下ロートから1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルブロミド51.5g(121mmol)の脱水ジエチルエーテル100mLを60分かけて滴下した。滴下後、60℃に加熱し、30分撹拌した。この溶液を25℃に戻し、注射器からトリクロロシラン5.29g(39.1mmol)をゆっくり加え、50℃で1時間撹拌した。反応混合物に希塩酸を加え、セライトを用いて溶液をろ過した。有機層を分液抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度165℃/130Pa)することにより、トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シランを無色透明の液体として23.7g(収率56.6%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.95~1.00(m,6H),2.06~2.19(m,6H),3.94(s,1H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.3,-123.4,-123.0,-122.0,-116.0,-80.9.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ2.70.
IR(neat,cm-1):1442,1362,1234,1186,1142,1120,916,705.

(合成例5)アリル(ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル))メチルシランの合成
【0143】
【化78】
【0144】
磁気撹拌子、30mL滴下ロート及びジムロートを備えた50mLの2口ナスフラスコをアルゴンで置換し、ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)メチルシラン11.18g(20.8mmol)及び脱水ジクロロメタン10mlを収め、滴下ロートから臭素3.62g(22.7mmol)の脱水ジクロロメタン10mL溶液を2時間かけて滴下した。減圧下で溶媒を留去し、ここにアリルマグネシウムクロリドのTHF溶液(2.0M)を20.0ml(40.0mmol)加え、25℃で36時間撹拌した。ここにクロロホルムと飽和食塩水を加え、セライトを用いてろ過し、その後分液した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。得られた粗生成物をクーゲルロール蒸留(蒸留温度95℃/40Pa)することによりアリルビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)メチルシランを無色透明の液体として11.6g(収率96.3%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.11(s,3H),0.81~0.86(m,2H),1.62~1.64(m,2H),1.98~2.14(m,4H),4.90~4.92(m,1H),4.94~4.96(m,1H),5.69~5.80(m,1H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.1,-124.3,-116.4,-81.1.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ4.00.
IR(neat,cm-1):2964,2910,1633,1442,1354,1209,1130,877,844,690.

(合成例6)アリル(トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル))シランの合成
【0145】
【化79】
【0146】
磁気撹拌子、30mL滴下ロート及びジムロートを備えた100mLの2口ナスフラスコをアルゴンで置換し、トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シラン22.6g(29.3mmol)及び脱水ジクロロメタン20mLを収め、滴下ロートから臭素4.67g(30.4mmol)の脱水ジクロロメタン20mL溶液を90分かけて滴下した。滴下後、25℃で4時間撹拌した。減圧下で低沸点留分を除き、ブロモトリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シランを淡黄色液体として23.6g(収率94.8%)を得た。
別に、ジムロート冷却管及び磁気撹拌子を備えた50mLの2口ナスフラスコをアルゴンで置換し、先に調製したブロモトリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シラン10.0g(11.8mmol)を収め、ここにアリルマグネシウムクロリドのTHF溶液(2.0M)を2.0ml(0.403g,4.0mmol)加え、25℃で3時間撹拌した。ここにジエチルエーテルと飽和食塩水を加え、セライトを用いてろ過し、その後分液した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。得られた粗生成物をクーゲルロール蒸留(蒸留温度115℃/40Pa)することによりアリルトリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シランを無色透明の液体として8.37g(収率84.7%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.89~0.93(m,6H),1.69~1.71(m,2H),1.99~2.12(m,6H),4.97~4.99(m,1H),5.01(s,1H),5.67~5.79(m,1H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.0,-124.2,-116.4,-81.0.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ4.71.
IR(neat,cm-1):1633,1442,1353,1209,1130,877,843,741,690.

(合成例7)アリル(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル))メチルシランの合成
【0147】
【化80】
【0148】
磁気撹拌子、50mL滴下ロート及びジムロートを備えた100mLの2口ナスフラスコをアルゴンで置換し、ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)メチルシラン39.8g(54.4mmol)を収め、滴下ロートから臭素9.43g(57.1mmol)を40分かけて滴下した。滴下後、50℃で15分撹拌した。減圧下で揮発成分を除去し、ブロモ(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル))メチルシランを淡黄色液体として得た。
別に、ジムロート冷却管及び三方コックを備えた50mLの2口フラスコをアルゴンで置換し、アリルマグネシウムクロリド2.0MのTHF溶液を24.0mL(50.0mmоl,2当量)を収め、24mLの脱水THFを加えた。ここに、先に調製したブロモ(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル))メチルシラン21.3g(26.1mmоl)を30分かけて滴下した。これを90分加熱還流し、14時間室温で撹拌した。溶液に希塩酸及びクロロホルムを加え、ろ過後に静置し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。これをロータリーエバポレーターを用いて濃縮後、減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度130℃/60Pa)することにより、アリル(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル))メチルシランを17.9g(収率88.0%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.11(s,3H),0.82~0.86(m,4H),1.62~1.64(m,2H),1.98~2.11(m,4H),4.92(s,1H),4.95(s,1H),5.69~5.80(m,1H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.2,-123.3,-122.9,-122.0,-116.1,-80.8.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ4.03.
IR(neat,cm-1):1633,1442,1362,1234,1188,1141,706.

(合成例8)アリル(トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル))シランの合成
【0149】
【化81】
【0150】
磁気撹拌子、50mL滴下ロート及びジムロートを備えた50mLの2口ナスフラスコをアルゴンで置換し、トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シラン23.6g(22.0mmol)及び脱水ジクロロメタン44mlを収め、滴下ロートから臭素3.53g(22.1mmol)を5分かけて滴下し、滴下後80分撹拌した。減圧下で溶媒を留去し、トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シリルブロミドを得た。
【0151】

上記の操作で得たトリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シリルブロミドを10.6g(9.25mmоl)とり、これを別のフラスコ中でアリルマグネシウムクロリドのTHF溶液(2.0MTHF溶液)を8.7mL(17.4mmol)を加え、25℃で2時間、加熱還流下で70分撹拌した。ここにクロロホルムと飽和食塩水を加え、セライトを用いてろ過し、その後分液した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。得られた粗生成物を減圧蒸留(沸点155℃/12Pa)することによりアリルトリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シランを無色透明の液体として9.46g(収率92.1%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.89~0.94(m,6H),1.69~1.72(m,2H),2.00~2.13(m,6H),4.97~4.99(m,1H),5.01(s,1H),5.68~5.79(m,1H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.2,-123.3,-122.9,-116.1,-80.8.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ4.67.
IR(neat,cm-1):1633,1442,1362,1234,1186,1142,706.

(実施例1)トリクロロ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)メチルシリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-2-1))の合成
【0152】
【化82】
【0153】
磁気撹拌子を備えたキャップ付きねじ口試験管をアルゴンで置換し、アリル(ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル))メチルシラン11.4g(19.7mmol)を収めた。これに、ヘキサクロロ白金(IV)酸水和物270mg(2.6mol%)及びトリクロロシラン8.06g(59.5mmol)を加え、40℃で14時間加熱撹拌した。減圧下で低沸点成分を留去し、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度110℃/40Pa)することにより、トリクロロ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)メチルシリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-2-1))を無色透明の液体として10.3g(収率73.2%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.12(s,3H),0.76~0.80(m,2H),0.81~0.86(m,4H),1.48~1.50(m,2H),1.59~1.66(m,2H),1.96~2.09(m,4H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.1,-124.3,-116.3,-81.1.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ-5.35,6.50.
IR(neat,cm-1):1354,1209,1130,1070,877,736,692.

(実施例2)トリメトキシ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)メチルシリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-2-3))の合成
【0154】
【化83】
【0155】
磁気撹拌子及びジムロートを備えた100mLの2口ナスフラスコをアルゴンで置換し、ここに脱水ジエチルエーテル50mL、脱水メタノール1.00g(31.2mmol)及びトリエチルアミン2.09g(20.6mmol)を収めた。注射器でトリクロロ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)メチルシリル)プロピル)シラン3.03g(4.24mmol)をゆっくり加え、室温で3時間撹拌した。焼結ガラスフィルターを備えたシュレンク管で沈澱をろ過して除いた。ろ液を減圧下で溶媒留去した後、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度135℃/40Pa)することにより、トリメトキシ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)メチルシリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-2-3))を無色液体として2.23g(収率75.3%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.67~0.75(m,4H),0.78~0.82(m,4H),1.42~1.50(m,2H),1.95~2.08(m,4H),3.56(s,9H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.1,-124.3,-116.3,-81.1.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ-42.6,5.05.
IR(neat,cm-1):2947,2844,1209,1130,1086,877,808,739.

(実施例3)トリクロロ(3-(トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-15-1))の合成
【0156】
【化84】
【0157】
磁気撹拌子及び三方コックを備えたストップコック付き試験管をアルゴンで置換し、アリル(トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル))シラン1.98g(2.45mmol)を収めた。これに、ヘキサクロロ白金(IV)酸水和物0.032g(2.5mol%)及びトリクロロシラン0.700g(5.17mmol)を加え、40℃で3時間加熱撹拌した。減圧下で低沸点成分を留去し、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度135℃/50Pa)することにより、トリクロロ(3-(トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル))プロピル)シラン(例示化合物番号(1-15-1))を無色透明の液体として2.05g(収率88.3%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.83~0.88(m,2H),0.88~0.93(m,6H),1.50~1.52(m,2H),1.61~1.69(m,2H),1.98~2.11(m,6H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.0,-124.2,-116.3,-81.0.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ-6.38,5.25.
IR(neat,cm-1):1442,1353,1209,1130,877,744,690.

(実施例4)トリメトキシ(3-(トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-15-3))の合成
【0158】
【化85】
【0159】
磁気撹拌子及びジムロートを備えた50mLの2口ナスフラスコをアルゴンで置換し、ここに脱水ジエチルエーテル9.0mL、脱水メタノール0.480g(15.0mmol)及びトリエチルアミン0.936g(9.24mmol)を収めた。注射器でトリクロロ(3-トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シリル)プロピル)シラン1.66g(1.75mmol)及び脱水ジエチルエーテル18.0mLをゆっくり加え、室温で15時間撹拌した。混合物にヘキサン10mLを加え、焼結ガラスフィルターを備えたシュレンク管で沈澱をろ過して除いた。ろ液を減圧下で溶媒留去した後、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度135℃/40Pa)することにより、トリメトキシ(3-トリス(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-15-3))を無色液体として1.04g(収率63.4%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.73~0.78(m,4H),0.85~0.89(m,6H),1.43~1.51(m,2H),1.97~2.10(m,6H),3.56(s,9H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.1,-124.2,-116.3,-81.1.
IR(neat,cm-1):2949,2846,1442,1209,1130,1088,1074,877,746.

(実施例5)トリクロロ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)メチルシリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-4-1))の合成
【0160】
【化86】
【0161】
磁気撹拌子を備えたキャップ付きねじ口試験管をアルゴンで置換し、アリル(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル))メチルシラン14.5g(18.6mmol)を収めた。これに、ヘキサクロロ白金(IV)酸水和物48mg(1mol%)及びトリクロロシラン7.88g(57.8mmol)を加え、密閉後に50℃で1時間加熱撹拌し、その後室温で14時間撹拌した。混合物から減圧下で低沸点成分を留去し、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度150℃/18Pa)することにより、トリクロロ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)メチルシリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-4-1))を無色透明の液体として15.8g(収率92.7%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.12(s,3H),0.76~0.90(m,2H),1.48~1.52(m,2H),1.60~1.68(m,2H),1.96~2.09(m,4H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.1,-123.3,-122.9,-121.9,-116.0,-80.8.
IR(neat,cm-1):1234,1190,1142,1068,906,706.

(実施例6)トリメトキシ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)メチルシリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-4-3))の合成
【0162】
【化87】
【0163】
磁気撹拌子及びジムロートを備えた50mLの2口ナスフラスコをアルゴンで置換し、ここに脱水THF10mL、脱水メタノール0.831g(25.9mmol)及びトリエチルアミン1.55g(15.3mmol)を収めた。注射器でトリクロロ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)メチルシリル)プロピル)シラン3.99g(4.37mmol)をゆっくり加え、室温で18時間撹拌した。混合物にヘキサン10mLを加え、焼結ガラスフィルターを備えたシュレンク管で沈澱をろ過して除いた。ろ液を減圧下で溶媒留去した後、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度115℃/25Pa)することにより、トリメトキシ(3-(ビス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)メチルシリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-4-3))を無色液体として3.03g(収率76.9%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.08(s,3H),0.68~0.78(m,4H),0.80~0.83(m,4H),1.43~1.51(m,2H),1.96~2.09(m,4H),3.57(s,9H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.5,-123.6,-123.2,-122.2,-116.4,-81.2.
29Si-NMR(80MHz,CDCl):δ-42.58,5.07.
IR(neat,cm-1)2946,2844,1234,1188,1142,1090,906,810,706.

(実施例7)トリクロロ(3-(トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-16-1))の合成
【0164】
【化88】
【0165】
磁気撹拌子及び三方コックを備えたストップコック付き試験管をアルゴンで置換し、アリル(トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル))シラン3.00g(2.70mmol)を収めた。これに、イソプロピルアルコールに溶解させたヘキサクロロ白金(IV)酸水和物(7.3重量%溶液)20mg(0.1mol%)及びトリクロロシラン1.11g(8.20mmol)を加え、60℃で15時間加熱撹拌した。減圧下で低沸点成分を留去し、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度175℃/50Pa)することにより、トリクロロ(3-(トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-16-1))を無色透明の液体として3.14g(収率93.2%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.83~0.93(m,8H),1.50~1.52(m,2H),1.63~1.65(m,2H),1.98~2.11(m,6H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.2,-123.3,-122.9,-116.1,-80.8.
29Si-NMR(79.5MHz,CDCl):δ-6.40,5.23
IR(neat,cm-1):1442,1360,1186,1142,1072,706.

(実施例8)トリメトキシ(3-(トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-16-3))の合成
【0166】
【化89】
【0167】
磁気撹拌子及びジムロートを備えた50mLの2口ナスフラスコをアルゴンで置換し、ここに脱水ジエチルエーテル13mL、脱水メタノール0.331g(10.3mmol)及びトリエチルアミン0.650g(6.42mmol)を収めた。注射器でトリクロロ(3-(トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シリル)プロピル)シラン1.35g(1.08mmol)及び脱水ジエチルエーテル20mLを加え、室温で18時間撹拌した。焼結ガラスフィルターを備えたシュレンク管で沈澱をろ過して除いた。ろ液を減圧下で溶媒留去した後、得られた粗生成物を減圧下でクーゲルロール蒸留(蒸留温度135℃/40Pa)することにより、トリメトキシ(3-(トリス(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シリル)プロピル)シラン(例示化合物番号(1-16-3))を無色液体として923mg(収率69.4%)得た。
【0168】

H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.73~0.79(m,4H),0.85~0.90(m,6H),1.43~1.49(m,2H),1.97~2.10(m,6H),3.56(s,9H).
19F-NMR(376MHz,CDCl):δ-126.1,-123.3,-122.9,-122.0,-116.1,-80.8.

(実施例9)9,9,9-トリス((1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)-3,3,5,5,7,7-ヘキサメチル-1,1,1-トリメトキシペンタシロキサン(例示化合物番号(1-21-3))の合成。
【0169】
【化90】
【0170】
磁気撹拌機、滴下ロ-ト、ジムロ-ト冷却管及び三方コックを備えた50mLの三口フラスコをアルゴンで置換した。フラスコ内にジエチルエ-テル20mL及びヘキサメチルトリシロキサン-1,5-ジオ-ル1.68g(6.98mmol)を収めた。滴下ロ-トからトリス((1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)ブロモシラン7.64g(6.65mmol)及びピリジン1.93g(24.5mmol)の脱水ジエチルエ-テル10mL溶液を0℃で7時間かけて滴下し、その後1時間撹拌した。反応容器にクロロトリメトキシシラン1.92g(12.3mmol)を注射器より3分かけて加え、その後18時間撹拌した。減圧下で低沸点成分を除去し、ヘキサンを加えてガラスフィルター付シュレンク管を用いてアルゴン雰囲気下でろ過した。得られた反応混合物をクーゲルロール蒸留装置で減圧蒸留(蒸留温度140℃/20Pa)することにより、9,9,9-トリス((1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)-3,3,5,5,7,7-ヘキサメチル-1,1,1-トリメトキシペンタシロキサン(例示化合物番号(1-21-3))を無色液体として4.95g(収率:52.0%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.09(s,6H),0.12(s,6H),0.14(s,6H),0.88-0.93(m,6H),2.03-2.18(m,6H),3.55(s,9H)
19F-NMR(376MHz,CDCl) δ(ppm):-126.42,-123.50,-123.11,-122.14,-116.26,-81.16
29Si-NMR(79MHz,CDCl)δ(ppm):-85.42,-20.17,-19.40,-18.46,5.389
IR(neat,cm-1):2964,2914,848,1442,1423,1362,1317,1236,1192,1144,1093,1072,1032,949,904,843,802,773,737,706,644,621.

(実施例10)9,9,9-トリス((1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)-3,5,7-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3,5,7-トリメチル-1,1,1-トリメトキシペンタシロキサン(例示化合物番号(1-25-3))の合成
【0171】
【化91】
【0172】
磁気撹拌機、滴下ロ-ト、ジムロ-ト冷却管及び三方コックを備えた50mLの三口フラスコをアルゴンで置換し、ジエチルエ-テル15mLおよび1,3,5-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,3,5-トリメチルシロキサン-1,5-ジオ-ル1.11g(2.50mmol)を収めた。滴下ロ-トからトリス((1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)ブロモシラン2.11g(1.84mmol)及びピリジン0.810g(10.2mmol)の脱水ジエチルエ-テル5mL溶液を0℃で2時間かけて滴下し、その後室温で1.5時間撹拌した。この溶液中に、0℃でクロロトリメトキシシラン0.823g(5.25mmol)を3分かけて注射器で加え、室温で18時間撹拌した。減圧下で低沸点成分を除去し、ヘキサンを加えガラスフィルター付シュレンク管を用いてアルゴン雰囲気下でろ過した。減圧下で溶媒を除去し、得られた反応混合物をクーゲルロール蒸留装置で減圧蒸留(蒸留温度170℃/20Pa)することにより、9,9,9-トリス9,9,9-トリス((1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)-3,5,7-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3,5,7-トリメチル-1,1,1-トリメトキシペンタシロキサン(例示化合物番号(1-25-3))を無色液体として1.38g(収率:46.0%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.17-0.18(m,9H),0.77-0.80(m,6H),0.91-0.96(m,6H),2.03-2.15(m,12H),3.55(s,9H)
19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-126.54,-123.67,-123.22,-122.23,-116.49,-81.30,-69.33
29Si-NMR(79MHz,CDCl)δ(ppm):-85.60,-21.59,-20.98~-20.86(m),7.237
IR(neat,cm-1):2951,2910,2852,1444,1423,1367,1315,1265,1236,1205,1140,1092,1068,1020,949,899,839,810,773,746,706,644.

(評価例1)
例示化合物番号(1-4-1)50mgをとり、これをエチルエチルノナフルオロブチルエーテル(異性体混合物)24.8gに溶解させ(濃度:0.2重量%)、この溶液に清浄にしたソーダガラス基板を2時間浸漬した。ソーダガラス基板を溶液から引き上げ、エチルノナフルオロブチルエーテル、蒸留水の順に十分に流し洗いし、クロロホルムに浸漬させて超音波洗浄を10分間行った。これを70℃の乾燥機で30分間乾燥させ、その後デシケータで乾燥させた。
処理基板に水およびヘキサデカン1μLをマイクロシリンジで乗せ、その接触角をθ/2法で求め、5回測定分を平均したところ、水接触角は106(2)度、ヘキサデカン接触角は68(1)度であった。また、蒸留水50μLをガラス基板上に乗せ、ガラス基板を徐々に傾け、水滴が動き始めたときの臨界角を5ヶ所で測定し平均を求めたところ、10.7(7)度であった。
【0173】

(評価例2)
例示化合物番号(1-4-3)50mg(濃度:0.2重量%)をとり、これをエチルノナフルオロブチルエーテル(異性体混合物)24.8gに溶解させ、この溶液に清浄にしたソーダガラス基板を10秒間浸漬した。ソーダガラス基板を溶液から引き上げ、室温で一日放置した。このソーダガラス基板を、エチルノナフルオロブチルエーテル、蒸留水の順に十分に流し洗いし、クロロホルムに浸漬させて超音波洗浄を10分間行った。これを70℃の乾燥機で30分間乾燥させ、その後デシケータで乾燥させた。
処理基板に水およびヘキサデカン1μLをマイクロシリンジで乗せ、その接触角をθ/2法で求め、5回測定分を平均したところ、水接触角は107(1)度、ヘキサデカン接触角は68(1)度であった。また、蒸留水50μLをガラス基板上に乗せ、ガラス基板を徐々に傾け、水滴が動き始めたときの臨界角を5ヶ所で測定し平均を求めたところ、10.5(7)度であった。
【0174】

(評価例3)
例示化合物番号(1-4-3)の5重量%イソプロピルアルコール溶液1gとp-トルエンスルホン酸一水和物の10重量%イソプロピルアルコール溶液60mgを混合後、直ちに0.5mL取り、セルロースティシュー紙で清浄なソーダガラス基板表面へ拭き付け塗工を行った。これを16時間室温で静置した。クロロホルムでかけ流し、次いで蒸留水でかけ流し洗浄した。これを100mLのクロロホルムに浸漬し、超音波照射(28kHz+38kHz、340W)しながら10分間洗浄したところ、均質かつ透明に表面改質されたガラス基板を得た。この処理ガラス基板の水及びヘキサデカンとの接触角をθ/2法にて求めた。水との接触角は112.0(7)度、ヘキサデカンとの接触角は71(2)度、水滑落角は9.4(6)度であった。
【0175】

(評価例4)
例示化合物番号(1-21-3)50mg(濃度:0.2重量%)をとり、これをエチルノナフルオロブチルエーテル24.8gに溶解させ、この溶液に清浄にしたソーダガラス基板を10秒間浸漬した。ソーダガラス基板を溶液から引き上げ、室温で一日放置した。このソーダガラス基板を、エチルノナフルオロブチルエーテル、蒸留水の順に十分に流し洗いし、クロロホルムに浸漬させて超音波洗浄を10分間行った。これを70℃の乾燥機で30分乾燥させ、その後デシケータで乾燥させた。
処理基板に水およびヘキサデカン1μLをマイクロシリンジで乗せ、その接触角をθ/2法で求め、5回測定分を平均したところ、水接触角は105(1)度、ヘキサデカン接触角は59(2)度であった。また、蒸留水50μLをガラス基板上に乗せ、ガラス基板を徐々に傾け、水滴が動き始めたときの臨界角を5ヶ所で測定し平均を求めたところ、8.2(8)度であった。
【0176】

(評価例5)
例示化合物番号(1-25-3)50mg(濃度:0.2重量%)をとり、これをエチルノナフルオロブチルエーテル24.8gに溶解させ、この溶液に清浄にしたソーダガラス基板を10秒浸漬した。ソーダガラス基板を溶液から引き上げ、室温で一日放置した。このソーダガラス基板を、エチルノナフルオロブチルエーテル、蒸留水の順に十分に流し洗いし、クロロホルムに浸漬させて超音波洗浄を10分間行った。これを70℃の乾燥機で30分間乾燥させ、その後デシケータで乾燥させた。
処理基板に水およびヘキサデカン1μLをマイクロシリンジで乗せ、その接触角をθ/2法で求め、5回測定分を平均したところ、水接触角は104.7(9)度、ヘキサデカン接触角は52(4)度であった。また、蒸留水50μLをガラス基板上に乗せ、ガラス基板を徐々に傾け、水滴が動き始めたときの臨界角を5ヶ所で測定し平均を求めたところ、9.8(5)度であった。
【0177】

(比較例1)
トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シラン(C13CHCHSi(OMe))(比較化合物(1))50mg(濃度:0.2重量%)をとり、これをエチルノナフルオロブチルエーテル24.8gに溶解させ、この溶液に清浄にしたソーダガラス基板を10秒間浸漬した。ソーダガラス基板を溶液から引き上げ、室温で一日放置した。このソーダガラス基板を、エチルノナフルオロブチルエーテル、蒸留水の順に十分に流し洗いし、クロロホルムに浸漬させて超音波洗浄を10分間行った。これを70℃の乾燥機で30分間乾燥させ、その後デシケータで乾燥させた。
処理基板に水およびヘキサデカン1μLをマイクロシリンジで乗せ、その接触角をθ/2法で求め、5回測定分を平均したところ、水接触角は105(2)度、ヘキサデカン接触角は62(4)度であった。また、蒸留水50μLをガラス基板上に乗せ、ガラス基板を徐々に傾け、水滴が動き始めたときの臨界角を5ヶ所で測定し平均を求めたところ、15.5(8)度と大きい値を示し、動的撥液性がやや劣る結果が得られた。
【0178】

(比較例2)
比較化合物(トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シラン(C13CHCHSi(OEt)))(比較化合物(2))の5重量%イソプロピルアルコール溶液10gとp-トルエンスルホン酸一水和物の10重量%イソプロピルアルコール溶液600mgを混合後、直ちに0.5mL取り、セルロースティシュー紙で清浄なソーダガラス基板表面へ拭き付け塗工を行った。これを16時間室温で静置した。ヘキサフルオロベンゼン・クロロホルム1:3溶液でかけ流し、次いで蒸留水でかけ流し洗浄した。これを100mLのクロロホルムに浸漬し、超音波照射(28kHz+38kHz、340W)しながら10分間洗浄したところ、ヘイズが大きく白濁した表面改質されたガラス基板を得た。この処理ガラス基板の水及びヘキサデカンとの接触角をθ/2法にて求めた。水との接触角は106(2)度、ヘキサデカンとの接触角は65(2)度であった。水滑落角は19(4)度と大きい値を示し、動的撥液性が劣る結果が得られた。
【0179】

(比較例3)
比較化合物(トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)シラン(C13CHCHSi(OMe)))(比較化合物(1))の5重量%イソプロピルアルコール溶液1gとp-トルエンスルホン酸一水和物の10重量%イソプロピルアルコール溶液60mgを混合後、直ちに0.5mL取り、セルロースティシュー紙で清浄なソーダガラス基板表面へ拭き付け塗工を行った。これを16時間室温で静置した。ヘキサフルオロベンゼン・クロロホルム1:3溶液でかけ流し、次いで蒸留水でかけ流し洗浄した。これを100mLのクロロホルムに浸漬し、超音波照射(28kHz+38kHz、340W)しながら10分間洗浄したところ、ヘイズが大きく白濁した表面改質されたガラス基板を得た。この処理ガラス基板の水及びヘキサデカンとの接触角をθ/2法にて求めた。水との接触角は109(5)度、ヘキサデカンとの接触角は71(3)度であった。水滑落角は19(2)度と大きい値を示し、動的撥液性が劣る結果が得られた。