(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007990
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031008
(22)【出願日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2020109154
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(71)【出願人】
【識別番号】392035189
【氏名又は名称】橋本電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀人
(72)【発明者】
【氏名】八神 寿徳
(72)【発明者】
【氏名】岡村 実奈
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌寛
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA09
4D037AA11
4D037AB03
4D037BA18
(57)【要約】
【課題】処理液を処理する処理室内に混入物が滞留することを抑制する。
【解決手段】処理装置は、処理液が流れる処理室を有する。処理装置は、処理室の一端に設けられ、処理室と外部とを連通する第1連通孔と、処理室の他端に設けられ、処理室と外部とを連通する第2連通孔と、を備える。処理室は、当該処理室の中心を通って一端から他端に向かって第1方向に伸びる処理室軸線を有している。第1連通孔と第2連通孔の少なくとも一方において、その軸線を延長した連通孔軸線は、第1方向に対して傾斜又は直交し、かつ、処理室軸線とは交差しない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液が流れる処理室を有する処理装置において、
前記処理室の一端に設けられ、前記処理室と外部とを連通する第1連通孔と、
前記処理室の他端に設けられ、前記処理室と外部とを連通する第2連通孔と、を備えており、
前記処理室は、当該処理室の中心を通って前記一端から前記他端に向かって第1方向に伸びる処理室軸線を有しており、
前記第1連通孔と前記第2連通孔の少なくとも一方において、その軸線を延長した連通孔軸線は、前記第1方向に対して傾斜又は直交し、かつ、前記処理室軸線とは交差しない、処理装置。
【請求項2】
前記処理室の一端と他端の少なくとも一方に設けられ、前記処理室内を流れる処理液に光を照射する光源をさらに備える、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記光源と前記処理室の間に配置される凸レンズをさらに備え、
前記光源からの光がレンズを通って前記処理室内の前記処理液に照射される、請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記処理室を保持するケーシングをさらに備え、
前記第1連通孔及び前記第2連通孔が、前記ケーシングを介して処理室と接続されている、請求項1~3のいずれかに記載の処理装置。
【請求項5】
処理液が流れる処理室を有する処理装置において、
前記処理室の一端に設けられ、前記処理室と外部とを連通する第1連通孔と、
前記処理室の他端に設けられ、前記処理室と外部とを連通する第2連通孔と、
(1)外部から前記第1連通孔を通って前記処理室の内部に処理液が供給され、その供給された処理液が前記処理室内を通って前記第2連通孔から外部に排出される第1処理状態と、(2)外部から前記第2連通孔を通って前記処理室の内部に処理液が供給され、その供給された処理液が前記処理室内を通って前記第1連通孔から外部に排出される第2処理状態と、に切り替え可能な切り替え手段と、を備える、処理装置。
【請求項6】
前記処理室の一端と他端の少なくとも一方に設けられ、前記処理室内を流れる処理液に光を照射する光源をさらに備える、請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記処理室は、当該処理室の中心を通って前記一端から前記他端に向かって第1方向に伸びる処理室軸線を有しており、
前記第1連通孔と前記第2連通孔の少なくとも一方において、その軸線を延長した連通孔軸線は、前記第1方向に対して傾斜又は直交し、かつ、前記処理室軸線とは交差しない、請求項5又は6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記第1処理状態と前記第2処理状態とに所定の周期で交互に切り替えられるように前記切り替え手段を制御する制御手段をさらに備える、請求項5~7のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項9】
前記第1連通孔と前記第2連通孔の少なくとも一方の軸線の重力に対する方向を切り替えるように駆動する駆動部をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項10】
前記処理室は、当該処理室の中心を通って前記一端から前記他端に向かって第1方向に伸びる処理室軸線を有しており、
前記処理室は、前記一端と前記他端とを接続し、当該処理室の内側と外側とを区画する側面を有しており、
前記処理室軸線を含む平面で前記処理室を切断した切断面において、前記側面は、前記処理室軸線に対して傾斜している、請求項1~9のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項11】
前記処理室の一端と他端の少なくとも一方に設けられ、前記処理室内を流れる処理液に光を照射する光源をさらに備え、
前記側面の前記処理室軸線に対する角度が、前記光源からの光の放射角度に対応する角度となっている、請求項10に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、液体を浄化処理する処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば紫外光源等を使って魚貝類などの養殖用水、液肥などを混入した農業用水や汚水等の液体を浄化、殺菌処理する処置装置が開発されている。紫外光の中でも殺菌効果の高い波長260~280nmの紫外線を細菌に照射すれば、細菌細胞内のDNAに作用して、水和現象、ダイマー形成、分解などの光化学反応を起こし細菌が不活化するとされている。深紫外による殺菌は次亜塩素酸などの薬剤に比べ残留性がなく安全である一方、細菌が時間と共に増えるのを防ぐためには、水を循環させて殺菌処理を繰り返し行う必要がある。例えば、特許文献1の処理装置は、処理対象である処理水を浄化処理するように構成される処理室を有している。処理装置は、処理室の一端から他端に向かって処理水が流れるように構成されている。処理水は、処理室内を通過する間に浄化処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような従来の処理装置では、処理される処理液(以下「処理液」と記す)が処理室内を通過する間に、処理液中の混入物(例えば、農業用水を処理する場合は肥料等)が処理室内に滞留する。処理室内に滞留する混入物が多くなると、深紫外光の反射を妨げ殺菌効果が低下することや、処理室内を清掃するためのメンテナンスを頻繁に行う必要があること等の課題がある。従来の処理装置では、処理室内に混入物が滞留しやすく、メンテナンスを頻繁に行わなければならなかった。
【0005】
本明細書は、処理液を処理する処理室内に混入物が滞留することを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する処理装置は、処理液が流れる処理室を有する。処理装置は、処理室の一端に設けられ、処理室と外部とを連通する第1連通孔と、処理室の他端に設けられ、処理室と外部とを連通する第2連通孔と、を備える。処理室は、当該処理室の中心を通って一端から他端に向かって第1方向に伸びる処理室軸線を有している。第1連通孔と第2連通孔の少なくとも一方において、その軸線を延長した連通孔軸線は、第1方向に対して傾斜又は直交し、かつ、処理室軸線とは交差しない。
【0007】
上記の処理装置では、連通孔軸線が、第1方向に対して傾斜又は直交し、かつ、処理室軸線とは交差しない。これにより、処理室内の処理液の流れの動態は、旋回的な流れが支配的となり流れの一方向性が強くなり、結果、よどみなく処理室内を処理液が流れる。これによって、処理室内に混入物が滞留、付着することを抑制することができる。
【0008】
本明細書に開示する他の処理装置は、処理液が流れる処理室を有する。処理装置は、処理室の一端に設けられ、処理室と外部とを連通する第1連通孔と、処理室の他端に設けられ、処理室と外部とを連通する第2連通孔と、(1)外部から第1連通孔を通って処理室の内部に処理液が供給され、その供給された処理液が処理室内を通って第2連通孔から外部に排出される第1処理状態と、(2)外部から第2連通孔を通って処理室の内部に処理液が供給され、その供給された処理液が処理室内を通って第1連通孔から外部に排出される第2処理状態と、に切り替え可能な切り替え手段と、を備える。
【0009】
上記の処理装置では、切り替え手段により、処理室内における処理液の流通方向が、順方向(例えば、第1処理状態)と逆方向(例えば、第2処理状態)に切り替えられる。このため、処理室内における処理液の流通方向は常に一定方向にはならず変更される。これにより、処理室内に混入物が滞留することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る処理装置の概略構成を示す図。
【
図2】実施例1に係る処理装置の制御系を示すブロック図。
【
図3】処理室内を通過する際の処理液の流れを説明するための図であり、(a)は実施例1に係る処理装置における処理室(第1連通孔及び第2連通孔の軸線が処理室軸線とは交差しない処理室)の模式図を示し、(b)は(a)の処理室内の処理液の流れのシミュレーション結果を示し、(c)は比較例の処理室(第1連通孔及び第2連通孔の軸線が処理室軸線と交差する処理室)の模式図を示し、(d)は(c)の処理室内の処理液の流れのシミュレーション結果を示す。
【
図4】処理装置の模型による実験において、処理室内の気泡の移動を示す画像であり、(a)は実施例1に係る処理装置の模型(本実験模型)による実験結果を示す画像であり、(b)は比較例の処理装置の模型(従来型模型)による実験結果を示す写真である。
【
図5】処理装置の模型による実験において、処理室内の残留物を示す画像であり、(a)は実施例1に係る処理装置の模型(本実験模型)による実験結果を示す画像であり、(b)は比較例の処理装置の模型(従来型模型)による実験結果を示す写真である。
【
図6】処理室内に照射される光を説明するための図であり、(a)は実施例1に係る処理装置において処理室内に照射される光(略平行光)の一例を示し、(b)は実施例1に係る処理装置において処理室内に照射される光の他の一例(収束光)を示し、(c)は比較例のレンズを有しない処理装置において処理室に照射される光(散乱光)を示す。
【
図7】処理室内に略平行光を照射するための他の一例を示す図。
【
図8】処理室内に照射される光の平均照度のシミュレーション結果であり、(a)は略平行光の場合の平均照度のシミュレーション結果を示し、(b)は拡散光の場合の平均照度のシミュレーション結果を示す。
【
図9】実施例2に係る処理装置の処理室及び2つの連通孔の概略構成の一例を示す図。
【
図10】実施例2に係る処理装置の処理室及び2つの連通孔の概略構成の他の一例を示す図。
【
図11】実施例3に係る処理装置の制御系を示すブロック図。
【
図12】実施例4に係る処理装置の処理室と2つの連通孔の概略構成を示す図。
【
図13】実施例4に係る処理装置における処理室内の処理液の流れのシミュレーション結果を示す図。
【
図14】処理装置の模型による実験において、処理装置による殺菌率を示す実験結果を示す表。
【
図15】実施例5に係る処理装置の処理室と2つの連通孔の概略構成の一例を示す図。
【
図16】実施例5に係る処理装置の処理室と2つの連通孔の概略構成の他の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0012】
(特徴1)本明細書に開示する処理装置は、処理室の一端と他端の少なくとも一方に設けられ、処理室内を流れる処理液に光を照射する光源をさらに備えていてもよい。このような構成によると、処理室内の処理液に光を照射することができ、処理液を好適に処理することができる。
【0013】
(特徴2)本明細書に開示する処理装置は、光源と処理室の間に配置される凸レンズをさらに備えていてもよい。光源からの光が、レンズを通って処理室内の処理液に照射され、処理室側の面が凸面となっていてもよい。このような構成によると、レンズにより、光源からの光が処理室の壁に照射されることを抑制することができ、損失を低減することができる。
【0014】
(特徴3)本明細書に開示する処理装置は、処理室を保持する保持部(以下、ケーシングともいう)をさらに備えていてもよい。第1連通孔及び第2連通孔が、ケーシングを介して処理室と接続されていてもよい。このような構成によると、ケーシングにより処理室を保持し易くできる。
【0015】
(特徴4)本明細書に開示する処理装置は、第1処理状態と第2処理状態とに所定の周期で交互に切り替えられるように切り替え手段を制御する制御手段をさらに備えていてもよい。このような構成によると、制御手段により、処理室内において処理液の流れる方向が定期的に切り替えられる。これにより、処理装置のメンテナンスの周期を延ばすことができる。
【0016】
(特徴5)本明細書に開示する処理装置は、第1連通孔と第2連通孔の少なくとも一方の軸線の重力に対する方向を切り替えるように駆動する駆動部をさらに備えていてもよい。このような構成によると、第1連通孔と第2連通孔の少なくとも一方の軸線の重力に対する方向を切り替えることで、処理室内の処理液の流れが変更される。このため、処理室内に混入物が沈殿又は滞留することを抑制することができる。
【0017】
(特徴6)本明細書に開示する処理装置では、処理室は、当該処理室の中心を通って一端から他端に向かって第1方向に伸びる処理室軸線を有していてもよい。処理室は、一端と他端とを接続し、当該処理室の内側と外側とを区画する側面を有していてもよい。処理室軸線を含む平面で処理室を切断した切断面において、側面は、処理室軸線に対して傾斜していてもよい。このような構成によると、処理室がその一端と他端とを接続する側面が傾斜面となることによって、処理室の流路断面積(処理室軸線に対して直交する断面の面積)が一端から他端に向かって変化することになる。このため、処理液が一端と他端の間を流れる間の処理液の流速を好適化することができる。このため、処理液が処理室内を淀みなく流れ、処理室内に混入物が滞留することを抑制することができる。
【0018】
(特徴7)本明細書に開示する処理装置は、処理室の一端と他端の少なくとも一方に設けられ、処理室内を流れる処理液に光を照射する光源をさらに備えていてもよい。側面の処理室軸線に対する角度は、光源からの光の放射角度に対応する角度となっていてもよい。このような構成によると、側面の処理室軸線に対する角度が光源からの光の放射角度と対応する角度となっていることによって、光源から照射される光が処理室内に効率よく照射される。このため、光源から照射される光の利用効率を向上させることができる。
【実施例0019】
(実施例1)
図面を参照して、本実施例に係る処理装置10について説明する。処理装置10は、飲料水、魚貝類の養殖用水や汚水等の液体を浄化処理するために用いられる。以下では、処理装置10で浄化処理される液体を「処理液」と称することがある。
図1及び
図2に示すように、処理装置10は、処理室12と、ケーシング14と、連通経路20と、2つの光源50、52と、2つのレンズ54、56と、2つの受光部58、60と、制御部62を備えている。
【0020】
図1に示すように、処理室12は、円筒状であり、処理室12内を一方の端部から反対側の端部に向かって処理液が流れるように構成されている。処理液は、処理室12内を通過する間に浄化処理される。以下では、処理室12内の一方の端部から他方の端部に向かう方向をX方向と称することがある、また、処理室12の中心を通ってX方向に伸びる線を「処理室軸線12a」と称することがある。
【0021】
ケーシング14は、処理室12と、光源50、52と、レンズ54、56と、受光部58、60とを一体に保持するように構成されている。ケーシング14によってこれらの部材12、50、52、54、56、58、60が保持されることで、処理室12に対して光源50、52とレンズ54、56と受光部58、60が所定の位置に配置される。ケーシング14には、処理室12と外部とを連通する2つの連通孔16、18(以下、「第1連通孔16」及び「第2連通孔18」ともいう)が設けられている。
【0022】
第1連通孔16は、一端が処理室12に接続しており、他端が第1接続経路38(後述)に接続している。第1連通孔16は、ケーシング14内を処理室12より上方に向かって伸び、ケーシング14を略鉛直方向に貫通している。第1連通孔16は、処理室12の一方の端部側(
図1では、-X側)に配置されている。また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第1連通孔16の軸線は、処理室軸線12a(すなわち、X方向)に沿ってみたときに、処理室12の中心からずれた位置(
図3(a)及び
図3(b)では、-Y側)に配置されている。別言すると、第1連通孔16の軸線は、X方向に対して直交し、かつ、処理室軸線12a(すなわち、処理室12の中心を通る軸線)とは交差しないように配置されている。より詳細には、円筒状の処理室12の外周面(-Y側の面)から、その接線方向に伸びるように、第1連通孔16が処理室12に接続されている。この場合第1連通孔16と処理室12、またはケーシング14との接点は極力段差無く滑らかな曲面で接続するために、第1連通孔16の直径により処理室12またはケーシング14への接続位置が変えられることが好ましい。すなわち第1連通孔16の-Y方向の端は、処理室12の半径方向であって-Y方向の端に接続されることで段差や窪みを生じさせない状態とすることが好ましい。言い換えると第1連通孔16の-Y方向の母線は処理室12の-Y方向接線が接続されることが好ましい。但し-Y方向に対する第1連通孔16の角度は直角に限定されるものではない。
【0023】
第2連通孔18は、一端が処理室12に接続しており、他端が第2接続経路40(後述)に接続している。第2連通孔18は、ケーシング14内を処理室12より上方に向かって伸び、ケーシング14を略鉛直方向に貫通している。第2連通孔18は、処理室12の第1連通孔16が配置されている端部とは反対の端部側(
図1では、+X側)に配置されている。また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第2連通孔18の軸線は、処理室軸線12a(すなわち、X方向)に沿ってみたときに、処理室12の中心からずれた位置(
図3(a)及び
図3(b)では、+Y側)に配置されている。別言すると、第2連通孔18の軸線は、X方向に対して直交し、かつ、処理室軸線12a(すなわち、処理室12の中心を通る軸線)とは交差しないように配置されている。より詳細には、円筒状の処理室12の外周面(+Y側の面)から、その接線方向に伸びるように、第2連通孔18が処理室12に接続されている。したがって、第2連通孔18は、処理室軸線12a(すなわち、X方向)に沿ってみたときに、第1連通孔16と一致しない位置に配置されている。この場合第2連通孔18と処理室12、またはケーシング14との接点は極力段差無く滑らかな曲面で接続するために、第2連通孔18の直径により処理室12またはケーシング14への接続位置が変えられることが好ましい。すなわち第2連通孔18の+Y方向の端は、処理室12の半径方向であって+Y方向の端に接続されることで段差や窪みを生じさせない状態とすることが好ましい。言い換えると第2連通孔18の+Y方向の母線は処理室12の+Y方向接線が接続されることが好ましい。但し+Y方向に対する第2連通孔18の角度は直角に限定されるものではない。
【0024】
連通経路20は、処理室12と外部とを連通させる経路である。処理液は、連通経路20を通って、外部から処理室12内に供給されたり、処理室12から外部に排出されたりする。連通経路20は、供給経路22と、第1供給経路24と、第2供給経路26と、排出経路28と、第1排出経路30と、第2排出経路32と、第1三方弁34と、第2三方弁36と、第1接続経路38と、第2接続経路40で構成されている。
【0025】
供給経路22は、外部の供給部(例えばポンプ装置を経由して貯水槽など、図示省略)に接続されており、浄化処理前の処理液を供給部から第1三方弁34まで供給する経路である。第1供給経路24は、第1三方弁34と第1接続経路38とを接続する経路であり、第2供給経路26は、第1三方弁34と第2接続経路40とを接続する経路である。第1三方弁34の開閉状態を調整することにより、供給経路22から供給された処理液の通過経路は、第1供給経路24を通過する経路と、第2供給経路26を通過する経路に切り替えられる。
【0026】
排出経路28は、外部の排出部(例えば貯水槽、図示省略)に接続されており、浄化処理された処理液を第2三方弁36から排出部に排出する経路である。第1排出経路30は、第2三方弁36と第2接続経路40とを接続する経路であり、第2排出経路32は、第2三方弁36と第1接続経路38とを接続する経路である。第2三方弁36の開閉状態を調整することにより、排出経路28に到達する処理液の通過経路は、第1排出経路30を通過する経路と、第2排出経路32を通過する経路に切り替えられる。第1三方弁34と第2三方弁36は、制御部62によって連動して制御されている。
【0027】
第1接続経路38は、一端が第1連通孔16に接続しており、他端が第1供給経路24及び第2排出経路32と接続している。第1接続経路38は、第1供給経路24から処理液が供給される場合には、供給された処理液を第1連通孔16に供給し、第1連通孔16から処理液が排出される場合には、処理室12から排出された処理液を第2排出経路32に排出する。第2接続経路40は、一端が第2連通孔18に接続しており、他端が第2供給経路26及び第1排出経路30と接続している。第2接続経路40は、第2供給経路26から処理液が供給される場合には、供給された処理液を第2連通孔18に供給し、第2連通孔18から処理液が排出される場合には、処理室12から排出された処理液を第1排出経路30に排出する。
【0028】
ここで、処理装置10内を通過する処理液の通過経路について説明する。処理装置10は、処理液が処理室12内を流れる経路を、-X方向から+X方向に流れる経路(以下、順方向に流れる経路ともいう)と、+X方向から-X方向に流れる経路(以下、逆方向に流れる経路ともいう)に切り替えることができる。処理液が順方向に流れる経路では、第1三方弁34は、供給経路22と第1供給経路24が連通するように制御されると共に、第2三方弁36は、排出経路28と第1排出経路30が連通するように制御される。この場合、供給経路22に供給された処理液は、第1三方弁34を介して第1供給経路24に供給される。そして、処理液は、第1供給経路24から第1接続経路38、第1連通孔16を介して処理室12に供給される。処理室12では、処理液は、順方向(すなわち、-X方向から+X方向)に流れ、浄化処理される。なお、処理室12での浄化処理については後述する。そして、浄化処理された処理液は、第2連通孔18、第2接続経路40を介して第1排出経路30に排出され、第2三方弁36を通過して排出経路28から排出される。
【0029】
処理液が逆方向に流れる経路では、第1三方弁34は、供給経路22と第2供給経路26が連通するように制御されると共に、第2三方弁36は、排出経路28と第2排出経路32が連通するように制御される。この場合、供給経路22に供給された処理液は、第1三方弁34を介して第2供給経路26に供給される。そして、処理液は、第2供給経路26から第2接続経路40、第2連通孔18を介して処理室12に供給される。処理室12では、処理液は、逆方向(すなわち、+X方向から-X方向)に流れ、浄化処理される(後述)。そして、浄化処理された処理液は、第1連通孔16、第1接続経路38を介して第2排出経路32に排出され、第2三方弁36を通過して排出経路28から排出される。
【0030】
本実施例では、第1連通孔16及び第2連通孔18がいずれも処理室12より上方(すなわち、処理室12に対して同一の方向)に設けられているため、第1連通孔16及び第2連通孔18と外部とを接続する連通経路20に用いる配管等を設置し易い。一方で、処理液が処理室12の上方に向かって排出されると、排出口側で混入物が滞留し易くなる。本実施例の処理装置10では、処理室12内の処理液の通過方向を切り替えることにより、処理室12内に処理液中の混入物が滞留することを抑制することができる。
【0031】
また、上述したように、第1連通孔16及び第2連通孔18は、その軸線が、X方向に対して直交し、かつ、処理室軸線12aとは交差しないように配置されている。詳細には、第1連通孔16及び第2連通孔18は、処理室12の外周面の接線方向に接続される。
図3(d)に示す比較例のように、第1連通孔及び第2連通孔の軸線が、処理室軸線12aと交差するように配置されていると、処理室12内の処理液の流れの一方向性が弱くなり、処理室12内に混入物が滞留し易い。すなわち、第1連通孔16又は第2連通孔18から供給された処理液は、処理室12の内壁面に衝突し、あらゆる方向に流れの向きを変える。このため、処理液の流速や流れの方向性が、処理室12内での場所によって異なり、不安定となり、処理液は処理室12内の一部分を流れて外部に排出される。したがって、処理室12内には処理液の流れの速度が弱い部分(すなわち、処理液が滞留する部分(淀んだ部分))が生じ、処理液中の混入物も処理室12内に滞留することとなる。一方、本実施例の処理装置10では、第1連通孔16及び第2連通孔18の軸線が、処理室軸線12aとは交差しないように配置されていることにより、
図3(b)に示すように、処理室12内の処理液が旋回的に流れ、流れの淀みが抑制される。すなわち、第1連通孔16及び第2連通孔18が処理室12の外周面の接線方向に接続されるため、連通孔16又は18から供給された処理液は、処理室12の内周面に案内されて処理室12内を回転し(旋回流(渦状の流れ)となり)、処理室12の全体を流れて外部に排出される。このため、処理室12内の全体を淀みなく処理液が流れ、処理液が滞留する部分が形成されることが抑制され、処理室12内に混入物が滞留することを抑制することができる。また、処理液は、処理室12内を旋回的に流れ、その結果、処理液が処理室12内を通過する時間が長くなる。その結果、後述する光源50、52から照射される光により、処理液が効果的に殺菌、浄化される。また、
図3(b)及び(d)に示したシミュレーション結果は、同一の流量の処理液を、第1連通孔16又は第2連通孔18を通じて処理室12へ供給した場合の、処理液の流線の瞬時分布の図である。図中の流線は、黒色に近いほど流速が速く、白色に近いほど流速が遅いことを表す。
図3(b)及び(d)の更なる相違点としては、本実施例の
図3(b)の流線のほうが比較例の
図3(d)の流線より、処理室12内での上流から下流まで速い流速が維持されていることである。これは、上述の通り、
図3(b)において流入側となる第1連通孔16の軸線を処理室軸線12aと交差しないように配置したことにより、処理液が処理室12内へ供給された後、処理室12内側の壁面に沿った流れを形成させられることにより、処理液の流速が失われにくく、結果、
図3(d)の場合に比べて下流まで流れの速さが維持されている。一方、
図3(d)の場合、処理室12内へ案内された処理液は、処理室12の内壁面に垂直に衝突し、処理液の流れの速度は
図3(b)の場合に比べて低くなる。
【0032】
また、本発明者らが行った実験では、第1連通孔16及び第2連通孔18の軸線が、X方向に対して直交し、かつ、処理室軸線12aとは交差しないように配置されることにより、処理室12内に混入物が滞留することを抑制することが確認されている。実験では、第1連通孔16及び第2連通孔18を有する処理室12の模型(以下、本実験模型ともいいう)を作成し、第1連通孔16及び第2連通孔18に相当する部分(以下、単に第1連通孔16及び第2連通孔18と称する)にそれぞれホースを連結した。一端が第1連通孔16に連結されたホースは、他端を水道水の蛇口に連結した。これにより、水道水は、蛇口からホース、第1連通孔16を介して処理室12の模型の一端に流入し、処理室12を通過してその他端から第2連通孔18、ホースを介して排出される。本実験では、水道水の流量は、毎分2Lとした。処理室12の模型及び2つのホース内に水道水を充填した状態で、第1連通孔16に連結されたホースから処理液サンプルを約30ml注入した。処理液サンプルには、水道水30mlに市販の一味唐辛子1gを混合したものを使用した。このように処理液サンプルに固形物を混合したのは、処理液に微生物や細菌の他に、フロック等の微小な固形物が混入することを想定したためである。処理液サンプル注入後、再び水道水を毎分2Lで流入させ、処理液サンプル動態を確認した。また、比較例として、第1連通孔及び第2連通孔の軸線が、処理室軸線12aと交差するように配置した模型(以下、従来型模型ともいう)を用いた。
【0033】
図4(a)に示すように、本実験模型では、気泡が軸線中心(本実施例の処理室軸線12aに相当)付近に集まりながら処理室を通過した。すなわち、気泡の移動の様子から、流入口から処理室へ流入した水は、処理室内部を旋回して移動することが確認された。一方、
図4(b)に示すように、従来型模型では、気泡が処理室へ入った直後、処理室内の流入口付近で上下に移動し、その後、処理室内の上部を通過して排出された。すなわち、気泡の移動の様子から、処理室内を下流側へ移動するにつれて水の流速が弱まり、さらに、処理室内の底部でも流れの速度が弱くなっていることが確認された。これらの水流の動態の結果は、
図3(b)及び
図3(d)のシミュレーション結果と整合するものであった。
【0034】
また、
図5(a)に示すように、本実験模型では、処理室内に残留物が目視で確認されなかった。これは、10回の再現実験の全てにおいて同様であった。一方、
図5(b)に示すように、従来型模型では、処理液サンプル注入から6分経過後も、処理室内に残留物が見られた。これも、10回の再現実験の全てにおいて同様であった。これらの結果から、第1連通孔16及び第2連通孔18の軸線が、X方向に対して直交し、かつ、処理室軸線12aとは交差しないように配置されることにより、処理室12内に混入物が滞留することを抑制することが確認できた。
【0035】
なお、本実施例では、連通経路20に2つの三方弁34、36を設置することで、処理室12内の処理液の通過方向を切り替えているが、このような構成に限定されない。処理液が順方向に流れる経路と逆方向に流れる経路に切り替え可能な構成であればよく、連通経路の構成は特に限定されない。また、本実施例では、第1連通孔16及び第2連通孔18の軸線は、X方向に対して直交しているが、このような構成に限定されない。例えば、第1連通孔16及び第2連通孔18の軸線は、X方向に対して傾斜していてもよい。
【0036】
図1に示すように、2つの光源50、52(以下、「第1光源50」及び「第2光源52」ともいう)は、ケーシング14内に配置されている。第1光源50及び第2光源52は、いずれも紫外光を照射するLED光源であるが、その種類は特に限定されない。第1光源50及び第2光源52は、例えば、255~300nm、より好ましくは255~285nmの波長の紫外光(すなわち、深紫外光)を照射するが、紫外光の波長は、除去する細菌等の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、第1光源50及び第2光源52は、黄色ブドウ球菌等を9.3mj/cm
2で99.9%殺菌でき、大腸菌を5.4mj/cm
2で99.9%殺菌できる。第1光源50は、処理室12の一方の端部(
図1では、-X側の端部)に配置されている。第1光源50は、処理室12の一方の端部から他方の端部に向かって(
図1では、-X方向から+X方向に向かって)光を照射する。第2光源52は、処理室12の第1光源50が配置されている端部とは反対の端部(
図1では、+X側の端部)に配置されている。第2光源52は、処理室12の他方の端部から一方の端部に向かって(
図1では、-X方向から+X方向に向かって)光を照射する。すなわち、第2光源52は、第1光源50とは逆向きに光を照射する。第1光源50及び第2光源52によって、処理室12内の処理液に紫外線が照射される。これにより、処理液中の細菌等が不活性化され、処理液が浄化される。また、処理室12の両端にそれぞれ光源50、52を配置することにより、処理液に照射される光量が増加し、処理液の浄化能力を向上させることができる。なお、処理室12内に設けられる光源は、第1光源50及び第2光源52のいずれか1つであってもよい。
【0037】
2つのレンズ54、56(以下、「第1レンズ54」及び「第2レンズ56」ともいう)は、ケーシング14内に配置されている。第1レンズ54及び第2レンズ56は、深紫外光の透過率が高く劣化が少ない材料で形成されている。本実施例では、第1レンズ54及び第2レンズ56は、石英ガラスであるが、レンズ材の種類は特に限定されない。第1レンズ54は、第1光源50と処理室12の間に配置されている。第1レンズ54は、凸レンズであり、処理室12側が凸面となるように配置されていることで、より水流を円滑にすることができる。第2レンズ56は、第2光源52と処理室12の間に配置されている。第2レンズ56も、凸レンズであり、処理室12側が凸面となるように配置されていることで、より水流を円滑にすることができる。第1レンズ54及び第2レンズ56を、処理室12側が凸面となるように配置することにより、処理室12内に照射される光は、略平行光(
図6(a)参照)又は収束光(
図6(b)参照)となる。
図6(c)に示す比較例のように、第1レンズ54及び第2レンズ56が配置されていないと、処理室12内に照射される光は散乱光となる。このため、処理室12内に照射された光は、処理室12の内壁に照射され、単位面積当たりの光強度が低減する。本実施例の処理装置10では、第1レンズ54及び第2レンズ56を配置して、処理室12内に照射される光を略平行光又は収束光にすることにより、損失を低減し、単位面積あたりの光強度を向上させることができる。
【0038】
なお、本実施例の処理装置10は、2つの凸レンズ54、56を設置することによって処理室12内に照射される光を略平行にしているが、このような構成に限定されない。例えば、略平行光とするために凸レンズを使わない例を
図7に示す。これは簡略化のため凹面鏡80のほぼ中心に光源50を配置した図としているが、凹面鏡80の焦点位置に光源50を凹面鏡に向けて配置する方が、平行光の光量は増やすことができる。または凹面鏡80の焦点位置に反射鏡を設置することでも平行光の光量を増やすことができる。ここでは図示しないが、光源50と処理室12の間には石英ガラスなどによる防水のための保護板を設けている。
【0039】
また
図6(a)に示す凸レンズを用いて略平行光とした場合の処理室12内の平均照度シミュレーション結果を
図8(a)に示し、
図6の(c)に示す拡散光による処理室内の平均照度のシミュレーション結果を
図8(b)に示す。このシミュレーションは光源(55mW、波長280nm)を処理室(直径25mm、長さ100mmの円筒)の両端に1個ずつ配置し、レンズまたは防水用の保護板である石英ガラスの透過率を89.2%で計算したものである。照射している空間の透過率は100%、処理室壁面の反射率は50%として計算している。凸レンズを用いた略平行光では、
図8(a)に示すように、処理室内全般にわたり均一で、平均照度が20.02mW/cm
2であった。実際には光源のガウス分布により、処理室壁面近くと中心軸付近では照射強度は若干の強度差が出るが、
図8(a)では簡略化している。処理室壁面と平行光の間に隙間を作らないためには、やや拡散気味の平行光にすることが望ましいが、その場合は平均照度が少し下がることになる。2光源で拡散気味の平行光の場合は、処理室の中央付近の壁面で反射する角度にすることが好ましい。次に拡散光では、
図8(b)に示すように、両端の光源近くにピークを持ち処理室の中央付近では照度が下がる分布を持ち、平均照度が7.92mW/cm
2であった。処理室壁面の材質をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)として精密表面加工した場合は、壁面の反射率を90%程度まで上げられる。その場合でも拡散光の場合の平均照度は11.09mW/cm
2というシミュレーション結果であり、平行光にすることで紫外光の利用効率を大きく改善することができる。
【0040】
また、第1レンズ54及び第2レンズ56は、処理室12側が凸面となるように配置されることが好ましい。これにより、処理室12内に供給された処理液は、第1レンズ54又は第2レンズ56の凸面に当たり、旋回し易くなる。上述したように、第1連通孔16及び第2連通孔18を、その軸線が処理室軸線12aと交差しないように配置することにより、処理液が処理室12内を旋回的な流れを形成するように構成されている。第1レンズ54及び第2レンズ56を処理室12側が凸面となるように配置することにより、処理液が処理室12内を旋回的な流れを形成することを助長することができる。
【0041】
2つの受光部58、60(
図2参照、以下、「第1受光部58」及び「第2受光部60」ともいう)は、ケーシング14内に配置されている。
図1では図示を省略するが、第1受光部58は、処理室12の第1光源50が配置されている端部とは反対の端部(すなわち、+X側の端部)に配置されている。第1受光部58は、第1光源50から照射された光を受光する。第2受光部60は、処理室12の第2光源52が配置されている端部とは反対の端部(すなわち、-X側の端部)に配置されていてもよい。第2受光部60は、第2光源52から照射された光を受光する。第1受光部58及び第2受光部60の検出信号は、制御部62に入力される。受光部58、60は光源50、52の劣化や処理室表面の汚れ、付着物の増加などの検出に使われたり、光源の強度をコントロールしたり、一定の光源電流供給量を超えたときにメンテナンスや光源の取り替えのサインを提供したりすることができる。例えば、受光量を初期値Aになるように光源であるLED1個あたりの電流量を制御する構成で、電流量が500mAを超えたときに、音や光、画像等で面テンスに関するサインを提供することができる。受光部58、60の出力を合成して光源50、52強度検出、処理室12の表面汚れ検出に用いても良い。
【0042】
図2に示すように、制御部62には、第1三方弁34及び第2三方弁36が接続されており、制御部62は、第1三方弁34及び第2三方弁36の開閉状態を制御している。具体的には、制御部62は、第1三方弁34及び第2三方弁36の開閉状態を、処理液が順方向に流れるように(すなわち、第1三方弁34を介して処理液が第1供給経路24を通過すると共に、第2三方弁36を介して処理液が第1排出経路30を通過するように)制御する。そして、制御部62は、所定の時間が経過すると、第1三方弁34及び第2三方弁36の開閉状態を、処理液が逆方向に流れるように(すなわち、第1三方弁34を介して処理液が第2供給経路26を通過すると共に、第2三方弁36を介して処理液が第2排出経路32を通過するように)制御する。所定の時間ごとに処理室12内の処理液の通過方向を切り替えることにより、処理室12内に処理液中の混入物が滞留することを抑制することができる。所定時間は特に限定されないが頻繁に切り替える必要は無く、切り替えの頻度は、例えば半日に一度から3ヶ月に一度程度の頻度で良い。
【0043】
また、制御部62には、第1光源50及び第2光源52が接続されており、制御部62は、第1光源50及び第2光源52を制御している。また、制御部62には、第1受光部58と、第2受光部60が接続されており、第1受光部58及び第2受光部60の検出信号が入力される。制御部62は、第1受光部58及び第2受光部60から入力される検出信号に基づいて、第1三方弁34及び第2三方弁36の開閉状態を制御してもよい。処理室12内に処理液中の混入物が滞留または付着してゆくと、光源50、52から照射される光が処理室12内を通過し難くなり、受光部58、60で受光される光による検出信号が小さくなる。混入物が少ない飲料用水や魚貝類養殖用水等でも、微生物やプランクトン、かびや藻類などのバイオフィルムの付着が発生することがある。光源50、52から照射される光が処理室12内を通過し難くなると、処理液の浄化能力が低下する。第1受光部58及び、または第2受光部60から入力される検出信号に基づいて処理室12内の処理液の通過方向を切り替えることにより、処理室12内に処理液中の混入物が滞留することを抑制することができ、処理液の浄化能力を回復し維持することができる。なお、制御部62による受光部58、60の検出信号の使用は上記に限定されず、光源50、52の劣化や処理室表面の付着物の増加などの検出に使われたり、光源の強度をコントロールしたり、一定の光源電流供給量を超えたときにメンテナンスや光源の取り替えのサインを提供したりすることができる。例えば光源であるLED1個あたりの電流量が500mAを超えたときに、音や光、画像等でサインを提供することができる。また、制御部62は、受光部58、60の検出信号を合成して光源50、52の強度を検出したり、処理室12の表面汚れを検出したりしても良い。
【0044】
上記で説明した処理装置10は、光源として波長280nm、発光量50mWのLEDを、片側に1個または、4個配置したものを準備した。処理装置10の寸法としては処理室12の内径25mm、長さ100mm、200mmの2種類、処理装置10内部の平均光量5~10mW/cm2である。殺菌能力としては、大腸菌の場合5.4mJ/cm2で99.9%不活化能力があるとされており、処理水の透明度にもよるが、水道水レベルの透明度の場合2L/minの水量で一度処理室12を通過させて実現できる。また、貯水槽との組み合わせで繰り返し浄水/殺菌処理を繰り返し行うことで、公的な水道が引かれていない場所においても、優良な飲料水や魚介類の養殖環境を得ることができる。
【0045】
なお、本実施例では、ケーシング14内に2つのレンズ54、56が配置されてるが、このような構成に限定されない。例えば、処理装置は、2つのレンズ54、56を備えていなくてもよく、光源50、52と処理液を遮断するための防水用の平坦な円板であっても良い。また、2つのレンズ54、56を備えていない場合には、光源が発散光となるため、最初に処理室に反射する近傍に受光用の透明窓を設けても良い。また、処理室12に流入する処理液の流量は2L/minに限定されない。
図4及び
図5において示した実験では、処理液の流量を2L/minとして行ったが、流量をさらに低くすれば処理室内の残留物は増加する。この点は、処理液の流量に応じて処理室の内径を変更することで、残留物の増加を抑制又は解消できる。
【0046】
(実施例2)
上記の実施例1では、第1連通孔16及び第2連通孔18がいずれも処理室12より上方に伸びるように設けられていたが、このような構成に限定されない。例えば、
図9に示すように、第1連通孔16は、処理室12より上方に設けられ、第2連通孔118は、処理室12の側方に設けられていてもよい。第2連通孔118が処理室12の側方に設けられていても、連通経路を処理室12内の処理液の通過方向を切り替え可能に設置することにより、処理室12内に処理液中の混入物が滞留することを抑制することができる。また、第1連通孔16の軸線が、処理室軸線12aとは交差しないように配置されているため、処理室12内の処理液が旋回的な流れを形成し、処理室12内に混入物が滞留することを抑制することができる。
【0047】
さらに、
図10に示すように、第2連通孔218は、処理室12より下方にあり、かつ、第2連通孔218の軸線が、処理室軸線12aとは交差しないように配置されていてもよい。この場合にも、連通経路を処理室12内の処理液の通過方向を切り替え可能に設置することにより、処理室12内に処理液中の混入物が滞留することを抑制することができる。また、第1連通孔16及び第2連通孔218の軸線が、処理室軸線12aとは交差しないように配置されているため、処理室12内の処理液が旋回的な流れを形成し、処理室12内に混入物が滞留することを抑制することができる。
【0048】
(実施例3)
上記の実施例1及び2では、第1連通孔16及び第2連通孔18、118、218は、その軸線の方向が固定されていたが、このような構成に限定されない。例えば、
図11に示すように、処理装置は、制御部162に制御される駆動部70をさらに備えており、駆動部70によって、第1連通孔16及び第2連通孔18、118、218の軸線の方向を切り替えるように構成されていてもよい。駆動部70は、例えば、モータであり、ケーシング14を処理室12の軸線周りに回転させるように構成されている。例えば、制御部162は、一定周期でケーシング14を90度又は180度回転させるように駆動部70を駆動する。混入物は、処理室12内において下方に溜まり易い。ケーシング14を回転させることにより、処理室12の重力に対する向きが変更され、処理室12内に混入物を滞留や付着を抑制することができる。対象の処理液の状態にも左右されるため、一定周期は特に限定されないが、頻繁に切り替える必要は無い。切り替えの頻度は、例えば半日に一度から3ヶ月に一度程度の頻度で良い。
【0049】
また、駆動部70は、ケーシングを部分的に回転させるように構成されていてもよい。例えば、ケーシングは、第2連通孔18、118、218が設けられる端部側が、第1連通孔16が設けられる端部側と分離可能に構成されており、駆動部70は、ケーシングの第2連通孔18、118、218が設けられる端部側のみを回転させるように駆動可能に構成されていてもよい。駆動部70によってケーシングの第2連通孔18、118、218が設けられる端部側を回転(例えば、90度又は180度回転)させると、第2連通孔18、118、218のみがその軸線方向を変更される。このような場合にも、処理液が処理室12内を通過する経路が変更され、処理室12内に混入物を滞留し難くすることができる。
【0050】
(実施例4)
上記の実施例1~3では、処理室12は円筒状であったが、このような構成に限定されない。例えば、
図12に示すように、処理室112は、円錐台状であってもよい。処理室112は、処理室112の一端に配置される端面102と、処理室112の他端に配置される端面104と、端面102と端面104の間に配置される側面106を備えている。端面102の大きさは、端面104の大きさより大きくされている。このため、処理室112の内側と外側とを区画する側面106は、処理室12の中心を通って、処理室112内の一方の端部から他方の端部に向かう方向(すなわち、X方向)に伸びる処理室軸線112aに対して傾斜している。具体的には、処理室軸線112aを含む平面で処理室112を切断した切断面において、端面102と端面104とを接続する側面106は、処理室軸線112aに対して直線状に傾斜している。したがって、処理室112の処理室軸線112aに直交する円形状の断面は、その半径が端面102から端面104に向かって1次関数的に小さくなっている。以下では、端面102が配置されている方向を「下」と称し、端面104が配置されている方向を「上」と称することがある。
【0051】
処理室112には、第1連通孔316と第2連通孔318が接続されている。具体的には、第1連通孔316は、処理室112の側方に設けられ、端面102に接続されている。第1連通孔316の軸線は、端面102と略平行であり、かつ、処理室軸線112aと交差しないように配置されている。より詳細には、第1連通孔316の軸線は、側面106の接線方向に伸びており、第1連通孔316の軸線と処理室軸線112aとは、ねじれの位置にある。第2連通孔318は、処理室112の上方に設けられ、端面104に接続されている。第2連通孔318の軸線は、処理室軸線112aと略一致するように配置されている。また、処理室112の端面102側には、光源150が配置されている。光源150は、その光軸が処理室軸線112aと略一致するように配置されている。なお、光源150の構成は、上記の実施例1の光源50、52の構成と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0052】
図13は、処理室112内の処理液の流れのシミュレーション結果を示している。
図13に示すように、本実施例においても、処理室112内の処理液は側面106に沿って旋回的に流れ、流れの淀みが抑制される。第1連通孔316から供給された処理液は、端面102に沿って処理室112内に案内され、傾斜する側面106に沿って処理室112内を旋回し、端面104から処理室112の外部に排出される。このため、処理室112内の全体を淀みなく処理液が流れ、処理液が滞留する部分が形成されることが抑制され、処理室112内に混入物が滞留することを抑制することができる。また、処理室112の内部(すなわち、処理室軸線112aに直交する断面の断面積)は、一端側(端面102側)のほうが他端(端面104側)より大きくされている。このため、他端側(端面104側)の流速は、一端側(端面102側)の流速より大きくなり易くなっている。したがって、第1連通孔316から供給された処理液の流速が大きくても、流路断面積の大きな一端側(端面102側)で処理液の流速を低下させることができ、一方、流速が低下し易い他端側(端面104側)では、流路断面積が小さくなることで処理液の流速を大きくすることができる。これにより、処理液が処理室112内を通過する時間を長くしながら、処理室112で淀むことなくスムーズに流出することができる。このため、上記の実施例1~4の処理室12と比較して、より効果的に処理液を殺菌することができる。なお、本実施例においても、処理液が順方向に流れる経路と逆方向に流れる経路に切り替え可能な構成を採用し、処理室112内に不可避的に滞留する混入物を排出するようにしてもよい。
【0053】
また、本発明者らが行った実験では、処理室112で処理液を処理することにより、処理水を効果的に殺菌できることが確認されている。実験では、処理室112の模型(以下、円錐台状模型と称する)を作成し、第1連通孔316に相当する部分(以下、単に第1連通孔316と称する)から処理液を2L/minで供給し、第2連通孔318に相当する部分(以下、単に第2連通孔318と称する)から処理液を排出した。処理液には、黄色ブドウ球菌を増殖させた100nMリン酸バッファーを用いた。処理液が処理室112を通過する際には、光源150に相当するLEDランプ(以下、単に光源150と称する)を点灯させた。光源150としては、278nmの波長の紫外光を照射するものを用いた。また、円錐台状模型と比較するために、実施例1の処理室12の模型(以下、円筒状模型と称する)を用いて同様の実験を行った。円筒状模型においても、処理室12の一端側に配置される光源50(波長278nm)のみを点灯した。ここでLEDの個数は、円筒状模型、円錐台状模型ともに、それぞれ4個で、LED1個当たり50mWの出力で実験を行った。上記の円錐台状模型と円筒状模型を用いた同様の実験を、別の日に2回行った。
【0054】
図14に示すように、円錐台状模型を用いた実験では、対数減少値は、-2.42と-1.97であり、殺菌率は、99.52%と98.93%であった。このように、円錐台状模型を用いた実験では、対数減少値及び殺菌率において、いずれも非常に高い殺菌効果を示した。また、円筒状模型を用いた実験においても、対数減少値は、-1.46と-1.16であり、殺菌率は、96.53%と93.08%であり、いずれも十分に高い殺菌効果を示した。これらの結果から、実施例1の処理室12を用いた場合であっても処理液を十分に殺菌できることが確認できたと共に、本実施例の処理室112を用いると、円筒状の処理室12よりも処理液の殺菌効果がさらに高いことが確認できた。ここで1回目と2回目の殺菌率の差は測定誤差と考えられる。
【0055】
(実施例5)
上記の実施例4では、第2連通孔318は、その軸線が処理室軸線112aと略一致するように配置されていたが、このような構成に限定されない。例えば、
図15に示すように、第1連通孔416と第2連通孔418はいずれも、その軸線が処理室軸線212aと略一致しないように配置されていてもよい。具体的には、第1連通孔416は、処理室212の側方に設けられ、端面202に接続されている。第1連通孔416の軸線は、端面202と略平行であり、かつ、処理室軸線212aと交差しないように配置されている。第2連通孔418は、処理室212の側方に設けられ、端面204に接続されている。第2連通孔418の軸線は、端面204と略平行であり、かつ、処理室軸線212aと交差しないように配置されている。本実施例では、第1連通孔416の軸線と第2連通孔418の軸線はいずれも、処理室軸線212aとはねじれの位置にある。なお、
図15では、第1連通孔416が端面202から伸びる方向(
図15の矢印Aの方向)は、第2連通孔418が端面204から伸びる方向(
図15の矢印Bの方向)と同一であるが、このような構成に限定されない。例えば、
図16に示すように、第1連通孔416が端面202から伸びる方向(
図16の矢印Cの方向)は、第2連通孔418が端面204から伸びる方向(
図16の矢印Dの方向)と反対であってもよいし、両者はその他の向き(例えば、90度ずれている等)で配置されていてもよい。ここでA~Dの矢印はそれぞれの連通孔が伸びる方向を示すものであり、処理液の流れる方向を示すものではない。
【0056】
また、処理室212には、2つの光源250、252が配置されている。具体的には、光源250は、端面202側に配置されており、光源252は、端面204側に配置されている。光源250、252は、その光軸が処理室軸線212aと略一致するように配置されている。第1連通孔416と第2連通孔418がいずれも、その軸線が処理室軸線212aと略一致しないように配置されていることによって、処理室212には、2つの光源250、252を配置することができる。2つの光源250、252を配置することにより、処理液の殺菌効果を向上させることができる。
【0057】
また、処理室212では、側面206は、処理室軸線212aに対する角度が、光源252からの光の放射角度に対応する角度となっている。例えば、本実施例では、光源252として、光の放射角度が光軸に対して約60度となる光源を用いている。このため、側面206は、処理室軸線212aに対する角度が約60度となっている。これにより、光源252から照射される光は、処理室212内の略全体に照射されると共に、処理室212の外部にはほとんど漏れることがない。このため、光源252から照射される紫外光の利用効率を向上させることができる。ここで側面206の処理室軸線212aに対する角度は約60度に限定されず、処理室軸線212aに対する角度については、角度0度の円筒型から角度120度まで用途に応じて選ぶことができる。また、側面206は、直線状に限定されず、一定の膨らみや、曲線、波線状の変化を持たせることや、側面206の処理室軸線212aに対する角度も、一方が40度、他方が20度など非対称であっても良い。さらに処理室212の設置方向は図示に限らず、横向き、逆向きに配置されること、また実施例1~3で説明したように定期的に処理液の方向や、処理室の重力に対する方向を変更することも、本発明の範囲である。
【0058】
実施例で説明した処理装置10に関する留意点を述べる。実施例の第1三方弁34及び第2三方弁36は、「切り替え手段」の一例であり、制御部62は、「制御手段」の一例である。光源や処理室の1方向端部のみあっても良いし、両端にあっても良い。レンズは平板の石英ガラスであっても良いし、処理室の1方向端部のみあっても良いし、両端にあっても良い。
【0059】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。