(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079900
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20220520BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20220520BHJP
A63B 102/38 20150101ALN20220520BHJP
【FI】
A63B53/04 J
A63B102:32
A63B102:38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190766
(22)【出願日】2020-11-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売開始日:2020年10月20日 販売場所:羽立工業株式会社(静岡県湖西市新所3番地) 公開者:羽立工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593171570
【氏名又は名称】羽立工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 早苗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 周作
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA04
2C002CH01
2C002MM01
2C002MM02
2C002MM06
2C002MM07
(57)【要約】
【課題】少なくとも3つの層からなるフェイスの耐久性の低下を抑制することができるグラウンドゴルフまたはパークゴルフに用いられるゴルフクラブを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブ100は、ゴルフボールを打つヘッド101を備えている。ヘッド101は、シャフト130が接続されるヘッド本体102にフェイス103が設けられている。フェイス103は、第1層104、第2層110および第3層115が積層されて構成されている。第1層104は、第2層110および第3層115の各外周部を覆う環状のカバー部106を備えている。第2層110は、第3層115に対して第1層104の一部を露出させるために切り欠かれた露出部111a,111b,111cが形成されている。第3層115は、ゴルフボールを打つ叩打面115aの反対側の面に密着部117a,117b,117cおよび嵌合部118a,118b,118cが形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを打つヘッドに棒状に延びるシャフトが設けられたグラウンドゴルフまたはパークゴルフに用いられるゴルフクラブであって、
前記ヘッドは、
前記シャフトが取り付けられるヘッド本体と、
前記ヘッド本体に対して第1層、第2層および第3層の順で少なくとも3つの層が積層されて前記ボールを打つ部分となるフェイスとを備え、
前記第1層は、
前記ヘッド本体に取り付けられて前記第2層および前記第3層の各外周部を覆うカバー部を有していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
請求項1に記載したゴルフクラブにおいて、
前記第2層は、
前記第3層に面して凹状または凸状に形成された第3層用凹凸部を有することを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項3】
ボールを打つヘッドに棒状に延びるシャフトが設けられたグラウンドゴルフまたはパークゴルフに用いられるゴルフクラブであって、
前記ヘッドは、
前記シャフトが取り付けられるヘッド本体と、
前記ヘッド本体に対して第1層、第2層および第3層の順で少なくとも3つの層が積層されて前記ボールを打つ部分となるフェイスとを備え、
前記第2層は、
前記ヘッド本体に取り付けられた前記第1層の一部を前記第3層に対して露出させる露出部を有しており、
前記第3層は、
前記第2層における前記露出部を介して前記第1層に接合していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項4】
請求項3に記載にしたゴルフクラブにおいて、
前記露出部は、少なくとも2つ以上形成されていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載したゴルフクラブにおいて、
前記第1層は、
前記ヘッド本体に取り付けられて前記第2層および前記第3層の各外周部を覆うカバー部を有していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載したゴルフクラブにおいて、
前記第1層は、
前記露出部に連通した状態で凹状に凹んで形成された露出部連通部を有しており、
前記第3層は、
前記露出部を介して前記第1層内に嵌合していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載したゴルフクラブにおいて、
前記第2層は、
前記第1層および前記第3層よりも厚さが薄く形成されていることを特徴とするゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンドゴルフまたはパークゴルフに用いられるゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、グラウンドゴルフまたはパークゴルフに用いるゴルフクラブが各種提案されている。例えば、下記特許文献1には、第1の樹脂層が第2の樹脂層よりも弾性率の大きな樹脂材料で構成された2層構造のフェイスを備えたゴルフクラブが開示されている。この場合、下記特許文献1には、フェイスを3層構造に構成することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、このような上記特許文献1に記載されたゴルフクラブにおいては、フェイスを3層構造とする場合、打撃による衝撃を頻繁に受ける3つの層からなるフェイスの耐久性が低下するという問題がある。この場合、3つの層からなるフェイスは、特に、第1層と第3層との間に配置される第2層の厚さが薄くなればなる程、第2層の第1層への接合力および第3層の第2層に対する接合力の確保および維持が困難になって耐久性も低下し易いという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、少なくとも3つの層からなるフェイスの耐久性の低下を抑制することができるグラウンドゴルフまたはパークゴルフに用いられるゴルフクラブを提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、ボールを打つヘッドに棒状に延びるシャフトが設けられたグラウンドゴルフまたはパークゴルフに用いられるゴルフクラブであって、ヘッドは、シャフトが取り付けられるヘッド本体と、ヘッド本体に対して第1層、第2層および第3層の順で少なくとも3つの層が積層されてボールを打つ部分となるフェイスとを備え、第1層は、ヘッド本体に取り付けられて第2層および第3層の各外周部を覆うカバー部を有していることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、ゴルフクラブは、第1層、第2層および第3層の少なくとも3つの層が積層されてボールを打つ部分となるフェイスにおける第1層が第2層および第3層の各外周部を覆うカバー部を有しているため、第1層に対する第2層および第3層の位置ずれを効果的に抑制してフェイスの耐久性の低下を抑制することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフクラブにおいて、第2層は、第3層に面して凹状または凸状に形成された第3層用凹凸部を有することにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフクラブは、第2層が第3層に面して凹状または凸状に形成された第3層用凹凸部を有しているため、第2層と第3層との接合力を向上させてフェイスの耐久性の低下を抑制することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明の特徴は、ボールを打つヘッドに棒状に延びるシャフトが設けられたグラウンドゴルフまたはパークゴルフに用いられるゴルフクラブであって、ヘッドは、シャフトが取り付けられるヘッド本体と、ヘッド本体に対して第1層、第2層および第3層の順で少なくとも3つの層が積層されてボールを打つ部分となるフェイスとを備え、第2層は、ヘッド本体に取り付けられた第1層の一部を第3層に対して露出させる露出部を有しており、第3層は、第2層における露出部を介して第1層に接合していることにある。
【0011】
このように構成した本発明の特徴によれば、ゴルフクラブは、第3層が第2層に形成された露出部を介して第1層に接合されているため、第2層を第1層と第3層とで挟んで保持することで第1層に対する第2層および第3層の位置ずれを効果的に抑制してフェイスの耐久性の低下を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフクラブにおいて、露出部は、少なくとも2つ以上形成されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフクラブは、露出部が少なくとも2つ以上形成されているため、第1層と第3層とをより強力に接合することで第1層に対する第2層および第3層の位置ずれを効果的に抑制してフェイスの耐久性の低下を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフクラブにおいて、第1層は、ヘッド本体に取り付けられて第2層および第3層の各外周部を覆うカバー部を有していることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフクラブは、第1層がヘッド本体に取り付けられて第2層および第3層の各外周部を覆うカバー部を有しているため、第1層に対する第2層および第3層の位置ずれをより効果的に抑制してフェイスの耐久性の低下を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフクラブにおいて、第1層は、露出部に連通した状態で凹状に凹んで形成された露出部連通部を有しており、第3層は、露出部を介して第1層内に嵌合していることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフクラブは、第1層が第2層の露出部に連通した状態で凹状に凹んで形成された露出部連通部を有して第3層が露出部を介して嵌合しているため、第1層に対する第2層および第3層の位置ずれをより効果的に抑制してフェイスの耐久性の低下を抑制することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記ゴルフクラブにおいて、第2層は、第1層および第3層よりも厚さが薄く形成されていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ゴルフクラブは、第2層が第1層および第3層よりも厚さが薄く形成されているため、第1層に対する第2層および第3層の位置ずれの抑制効果およびフェイスの耐久性の向上効果を効果的に享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフクラブの全体構成の概略を示す正面図である。
【
図2】
図1に示したゴルフクラブのヘッドの外観構成を斜め下方から見た部分拡大斜視図である。
【
図3】
図1に示した3-3から見たヘッドの内部構造を示す断面図である。
【
図4】
図3に示したヘッドにおけるフェイスを構成する第1層および第2層を分解した分解斜視図である。
【
図5】
図4に示した第1層内に第2層を嵌合させた状態を示す平面図である。
【
図6】
図1に示したフェイスを構成する第3層を第2層側から見た外観構成を示す斜視図である。
【
図7】本発明の変形例に係る第3層を第2層側から見た外観構成を示す斜視図である。
【
図8】本発明の他の変形例に係る第3層を第2層側から見た外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るゴルフクラブの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るゴルフクラブ100の全体構成の概略を示す正面図である。また、
図2は、
図1に示すゴルフクラブ100のヘッド101の外観構成を斜め下方から見た部分拡大斜視図である。また、
図3は、
図1示した3-3から見たヘッド101の内部構造を示す断面図である。また、
図4は、
図3に示したヘッド101におけるフェイス103を構成する第1層104および第2層110を分解した分解斜視図である。このゴルフクラブ100は、グラウンドゴルフまたはパークゴルフにおいてゴルフボール(図示せず)を打つための棒状の用具である。
【0022】
(ゴルフクラブ100の構成)
ゴルフクラブ100は、主として、ヘッド101およびシャフト130をそれぞれ備えて構成されている。ヘッド101は、ゴルフクラブ100においてグラウンドゴルフまたはパークゴルフで用いる樹脂製のゴルフボールを打つための部分であり、主として、ヘッド本体102およびフェイス103をそれぞれ備えて構成されている。
【0023】
ヘッド本体102は、ヘッド101全体の剛性を確保する部品であり、剛体(例えば、木材)をブロック状に形成して構成されている。この場合、ヘッド本体102は、高さ方向(「垂直方向」ともいう)に対して水平方向に長く延びる略直方体状(厳密には多面体状)に形成されている。このヘッド本体102は、外表面の一部に垂直方向に延びる平坦面状のフェイス取付部102aが形成されておりこのフェイス取付部102aにフェイス103が取り付けられている。この場合、フェイス取付部102aには、後述する嵌合部118b,118cが嵌合する有底筒状の2つの取付穴102b,102cがそれぞれ形成されている。また、ヘッド本体102の下面部には、ソール120が取り付けられている。
【0024】
フェイス103は、ゴルフボールに衝突させてゴルフボールを打つ部品であり、平坦な板状に形成して構成されている。より具体的には、フェイス103は、主として、第1層104、第2層110および第3層115が一体化して構成されている。
【0025】
第1層104は、第2層110および第3層115をそれぞれ支持した状態でヘッド本体102に取り付けられる部品であり、エラストマ材を板状に形成して構成されている。ここで、エラストマ材は、ゴルフボールを打った際に弾性変形する弾力性を有するゴム材または樹脂材であり、より具体的には、熱硬化性エラストマ材(例えば、加硫ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなど)、熱可塑性エラストマ材(例えば、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系またはアミド系の各樹脂など)がある。本実施形態においては、第1層104は、デュロメータ硬さ(温度23℃±2℃、湿度50%±5%)が74D±10Dの範囲内の硬度値の熱可塑性ポリウレタン樹脂で構成されている。
【0026】
この第1層104は、主として、取付部105およびカバー部106をそれぞれ備えて構成されている。取付部105は、平板状に形成されて一方の面がヘッド本体102に取り付けられるとともに他方の面に第2層110が取り付けられる部分であり、これら2つの面がそれぞれ平面状に形成されている。本実施形態においては、取付部105は、厚さが3mmの平板状に形成さている。この取付部105には、導入孔105aおよび2つの露出部連通部105b,105cがそれぞれ形成されている。
【0027】
導入孔105aは、第3層115を射出成形する際に材料の流通部分となる貫通孔であり、取付部105における長手方向中央部(図において左右方向中央部)の上部側に形成されている。この導入孔105aは、後述する露出部111aに連通しているとともに後述する嵌合部118aが嵌合する部分でもある。露出部連通部105b,105cは、後述する露出部111b,111cにそれぞれ連通するとともに嵌合部118b,118bが嵌合する貫通孔であり、取付部105における長手方向の中央部に対して両側方で上下方向の中央部分にそれぞれ形成されている。
【0028】
カバー部106は、第2層110および第3層115の各外周部を覆う部分であり、取付部105の外縁部に起立した壁状に形成されている。本実施形態においては、カバー部106は、取付部105の外縁部に沿って連続する環状に形成されている。このカバー部106は、第3層115の表面と面一となる高さに形成されている。そして、この第1層104は、図示しない射出成型機を用いた射出成形または切削加工などの各種加工方法を用いて成形される。
【0029】
第2層110は、第1層104と第3層115との間に設けられる部品であり、板状に形成されている。この第2層110は、フェイス103の美観またはフェイス103の打撃性能の要求に応じて種々の材料で構成される。例えば、第2層110は、紙材、木材、樹脂材、ゴム材、セラミック材、炭素繊維材、ガラス繊維材または金属材などの材料を単体でまたは組み合わせて構成することができる。本実施形態においては、第2層110は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を厚さ0.3mmの板状に形成して構成されている。
【0030】
この第2層110は、
図5に示すように、外周部が第1層104のカバー部106内に嵌合する形状に形成されているとともに、この外周部の一部に3つの露出部111a,111b,111cがそれぞれ形成されている。露出部111a,111b,111cは、第1層104の表面を第3層115に対して露出させて第3層115を第1層104に接合させるための部分であり、第2層110の一部を切り欠いて形成されている。本実施形態においては、露出部111a,111b,111cは、導入孔105aおよび2つの露出部連通部105b,105cに連通した状態で形成されている。
【0031】
露出部111aは、第2層110の導入孔105aに繋がった状態で長手方向に延びて形成されている。露出部111b,111cは、露出部連通部105b,105cに繋がった状態で第2層110の外側に向かった半楕円形状に形成されている。すなわち、露出部111a,111b,111cは、第2層110の内側から外側に向かって広がって形成されている。
【0032】
第3層115は、ヘッド本体102上で露出してゴルフボールを打つ叩打面115aを構成する部品であり、第1層104と同様の各種エラストマ材を板状に形成して構成されている。本実施形態においては、第3層115は、デュロメータ硬さ(温度23℃±2℃、湿度50%±5%)が95A±10Aの硬度値の熱硬化性ポリウレタン樹脂を3.7mmの厚さの板状体に形成して構成されている。
【0033】
また、第3層115は、半透明の樹脂材で構成されており、外部から第2層110および第1層104の存在を視認できるように構成されている。なお、
図1においては、第2層110が第3層115を介して薄く透けて見える状態を第2層110を薄いハッチングで示すことで表現している。また、第3層115は、透明な材料または不透明な材料で構成してもよいことは当然である。
【0034】
この第3層115は、主として、本体部116、密着部117a,117b,117cおよび嵌合部118a,118b,118cをそれぞれ備えて構成されている。本体部116は、平板状に形成されて一方の面が第2層110を覆うとともに他方の面がゴルフボールを打つ叩打面115aを構成しており、これら2つの面がそれぞれ平面状に形成されている。この本体部116における第2層110に対向する面には、
図6に示すように、密着部117a,117b,117cおよび嵌合部118a,118b,118cがそれぞれ形成されている。
【0035】
密着部117a,117b,117cは、露出部111a,111b,111c内を介して第1層104に接合する部分であり、本体部116から凸状に突出して露出部111a,111b,111cにそれぞれ嵌合する形状に形成されている。この場合、密着部117aは、露出部111a内を介して第1層104に接合する。また、密着部117bは、露出部111b内を介して第1層104に接合する。また、密着部117cは、露出部111c内を介して第1層104に接合する。
【0036】
嵌合部118a,118b,118cは、導入孔105aおよび露出部連通部105b,105c内にそれぞれ嵌合する部分であり、本体部116から凸状に突出して導入孔105aおよび露出部連通部105b,105cにそれぞれ嵌合する柱状に形成されている。この場合、嵌合部118aは、導入孔105aに嵌合する円柱状に形成されている。また、嵌合部118bは、露出部連通部105bに嵌合するとともにヘッド本体102に形成された取付穴102bに嵌合する長さの円柱状に形成されている。また、嵌合部118cは、露出部連通部105cに嵌合するとともにヘッド本体102に形成された取付穴102cに嵌合する長さの円柱状に形成されている。そして、この第3層115は、図示しない射出成型機を用いた射出成形または切削加工などの各種加工方法を用いて成形される。
【0037】
ソール120は、ヘッド本体102の下面を保護するための部品であり、真鍮またはアルミニウム材をヘッド本体102の底面に沿って湾曲する形状に形成して構成されている。この場合、ソール120は、ヘッド本体102の底面とともにフェイス103の底面も覆う大きさに形成されている。このソール120は、ビスによってヘッド本体102の底面に取り付けられている。なお、ソール120は、ヘッド本体102の底面のみを覆ってフェイス103の底面は覆わない形状に形成することもできる。また、ソール120は、省略することもできる。
【0038】
シャフト130は、ヘッド101をスイング可能に支持する部品であり、木材またはカーボン材を棒状に形成して構成されている。このシャフト130は、一方(図示下側)の端部にヘッド本体102が取り付けられているとともに、他方(図示上側)の端部にグリップ131が取り付けられている。この場合、シャフト130は、フェイス103が起立した姿勢で垂直方向に対して下方側に傾斜しながら上方に延びた姿勢でヘッド本体102に取り付けられている。より具体的には、シャフト130は、垂直方向に対してフェイス103が水平方向に延びる方向(
図1において右方向)に傾斜した姿勢でヘッド本体102に取り付けられている。
【0039】
グリップ131は、ゴルフをプレーする使用者が手で握る部分であり、ゴム材を筒状に形成して構成されている。このグリップ131は、シャフト130における前記他方の端部に挿し込まれている。
【0040】
(ゴルフクラブ100の製造)
ここで、ゴルフクラブ100の製造工程について簡単に説明しておく。まず、作業者は、第1工程として、第1層104を製造する。具体的には、作業者は、射出成形機(図示せず)を用いて第1層104を射出成形加工によって成形する。すなわち、第1層104は、公知の手法によって成形することができる。
【0041】
次に、作業者は、第2工程として、第2層110を製造する。具体的には、作業者は、炭素繊維のプリプレグ材を金型内に積層して樹脂材を含侵および硬化させることでCFRP製の第2層110を成形することができる。すなわち、第2層110は、公知の手法によって成形することができる。
【0042】
次に、作業者は、第3工程として、第3層115を成形してフェイス103を製造する。具体的には、作業者は、フェイス103を成形する金型(図示せず)内に第1層104を配置するとともにこの第1層104内に第2層110を嵌合させた状態で配置する(
図5参照)。そして、作業者は、射出成形機(図示せず)を用いて第1層104および第2層110が配置された金型に樹脂材を流し込んで第3層115を射出成形する。すなわち、フェイス103は、金型内に第1層104および第2層110を配置したインサート成形加工により、第1層104および第2層110に対して第3層115が一体的に成形される。
【0043】
この場合、射出成形機から供給された樹脂材は、第1層104の導入孔105aを介して第1層104におけるカバー部106によって囲まれた領域に流れ込んで同領域に充満する。この場合、第1層104および第2層110をセットした金型には、露出部連通部105b,105cに連通した状態で嵌合部118b,118cを成形するための凹部が形成されている。したがって、金型内に流入した樹脂材は、露出部111a,111b,111c内に流入するとともに、露出部111b,111cに流入した樹脂材が露出部連通部105b,105cを介して前記凹部内に流入する。
【0044】
これらにより、金型内においては、本体部116のほかに、密着部117a,117b,117cおよび嵌合部118a,118b,118cがそれぞれ形成された状態で第3層115が成形される。この場合、第3層115は、樹脂材が固化することで第1層104に接する部分(本体部116の外周部、密着部117a,117b,117c、嵌合部118a,118b,118c)が第1層104に接合するとともに、第2層110に接する部分(本体部116、密着部117a,117b,117cの外周部、嵌合部118a,118b,118cの外周部)が第2層110に接合する。
【0045】
すなわち、フェイス103は、第3層115が第1層104および第2層110にそれぞれ接合することでこれらが一体的に形成される。なお、フェイス103は、第3層115をインサート成形することなく、第3層115を単体で成形した後に第1層104に嵌め込んで接着することで製作することもできる。
【0046】
次に、作業者は、第3工程として、ヘッド本体102を用意する。具体的には、作業者は、木材に対して切削加工を行うことによってヘッド本体102を成形する。
【0047】
次に、作業者は、第4工程として、ヘッド本体102にフェイス103を取り付ける。具体的には、作業者は、フェイス103の裏面(第3層115とは反対側の面)に接着剤を塗布してヘッド本体102に貼り付ける。この場合、フェイス103の裏面から突出する2つの嵌合部118b,118bは、ヘッド本体102のフェイス取付部102aに形成された取付穴102b,102cにそれぞれ嵌合する。
【0048】
次に、作業者は、第5工程として、ソール120を用意してヘッド本体102に取り付ける。具体的には、作業者は、プレス加工または鋳造加工などの加工法を用いて別途製作したソール120をヘッド本体102の下面にビス(図示せず)を用いて取り付ける。
【0049】
次に、作業者は、第6工程として、シャフト130を用意してヘッド本体102に取り付ける。具体的には、作業者は、木材に対して切削加工および塗装加工を別途製作したシャフト130をヘッド本体102の上面に挿し込んで取り付ける。次いで、作業者は、別工程で製作したグリップ131をシャフト130の上端部に挿し込んで取り付ける。なお、グリップ131は、ヘッド本体102に挿し込まれる前のシャフト130に予め取り付けられていてもよいことは当然である。この後、作業者は、外観および使用感を試す検査工程などを経てゴルフクラブ100を完成させる。
【0050】
(ゴルフクラブ100の作動)
次に、このように構成したゴルフクラブ100の作動について説明する。グラウンドゴルフ(またはパークゴルフ)をプレーするプレーヤは、グリップ131を握ってヘッド101をスイングすることによりフェイス103でゴルフボールを打つ。この場合、ゴルフクラブ100は、第2層110および第3層115が第1層104のカバー部106によって外周部が覆われているとともに第2層110を第1層104と第3層115とで挟んで保持しているため、ゴルフボールを打つ衝撃による位置ずれおよび剥離を抑えることができる。
【0051】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ゴルフクラブ100は、第1層104、第2層110および第3層115の3つの層が積層されてゴルフボールを打つ部分となるフェイス103における第1層104が第2層110および第3層115の各外周部を覆うカバー部106を有しているため、第1層104に対する第2層110および第3層115の位置ずれを効果的に抑制してフェイス103の耐久性の低下を抑制することができる。
【0052】
また、ゴルフクラブ100は、第3層115が第2層110に形成された露出部111a,111b,111cを介して第1層104に接合されているため、第2層110を第1層104と第3層115とで挟んで保持することで第1層104に対する第2層110および第3層115の位置ずれを効果的に抑制してフェイス103の耐久性の低下を抑制することができる。
【0053】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明で参照図においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付している。
【0054】
例えば、上記実施形態においては、フェイス103は、第1層104のデュロメータ硬さを74Dの硬度値で構成するとともに、第3層115のデュロメータ硬さを95Aの硬度値で構成した。すなわち、フェイス103は、第1層104を第3層115よりも硬質(弾性変形し難い)な材料で構成した。この場合、フェイス103は、第1層104を第3層115よりも硬質な材料で構成することで、第3層115および第2層110の変形および位置ずれを効果的に抑えることができる。しかし、第1層104および第3層115の各硬度値は、上記実施形態に限定されるものではなく、ゴルフクラブ100の使用に応じて自由に設定すればよい。
【0055】
また、上記実施形態においては、フェイス103は、第1層104の厚さを3mmとし、第2層110の厚さを0.3mmとし、第3層115の厚さを3.7mmとして全体として7mmの厚さに形成した。しかし、フェイス103は、第1層104、第2層110および第3層115の各厚さは自由に設定すればよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、フェイス103は、第2層110の厚さが第1層104および第3層115の各厚さよりも薄く形成されている。この場合、本発明に係るゴルフクラブ100においては、第1層104に形成されたカバー部106および/または第3層115が第2層110を貫通して第1層104に接合されていることで厚さの薄い第2層110の変形または損傷を抑えて保持することができる。しかし、第2層110の厚さは、自由に設定できるものであり、第1層104および第3層115に対して同一の厚さまたは第1層104および第3層115よりも厚さに形成してもよいことは当然である。
【0057】
また、上記実施形態においては、第2層110は、第1層104のカバー部106の内壁部に嵌合する形状に形成した(
図5参照)。しかし、第2層110は、第1層104と第3層115との間に配置されていればよい。したがって、第2層110は、第1層104の取付部105に凹部を設けてこの凹部内に第2層110の一部または全部が嵌合するように構成してもよいし、第3層115の本体部116に凹部を設けてこの凹部内に第2層110の一部または全部が嵌合するように構成してもよいし、さらに第1層104および第3層115のいずれにも嵌合しない状態で設けられてもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、第2層110に形成された露出部111a,111b,111cは、第2層110の外周部に切り欠いた状態で形成した。これにより、第3層115は、密着部117a,117b,117cが第1層104のカバー部106の内周面に密着して接合することになるため、第1層104と第3層115との接合力および第2層110の固定力を向上させることができる。しかし、露出部111a,111b,111cは、第2層110の内部に貫通孔状に形成することもできる。これによれば、第2層110は、外周部が切り欠かれることなく連続的に繋がって形成されることで第2層110の剛性を向上させることができる。
【0059】
また、上記実施形態においては、露出部111a,111b,111cは、第2層110の内側から外側に向かって切欠き幅が広くなるように形成した。これにより、第2層110は、第2層110の形成部分の減少を抑えながら密着部117a,117b,117cのカバー部106の内周面への接触面積を増加させて同内周面への押圧力の集中を抑えることができる。しかし、露出部111a,111b,111cは、第2層110の内側と外側とで切欠き幅を同じ、または内側から外側に向かって切欠き幅が狭くなるように形成することもできる。
【0060】
また、上記実施形態においては、フェイス103は、第2層110に露出部111a,111b,111cを設けて構成した。これにより、フェイス103は、第3層115が露出部111a,111b,111cを介して第1層104に接合するため、第2層110を第1層104と第3層115とで挟んで保持することで第1層104に対する第2層110および第3層115の位置ずれを効果的に抑制してフェイス103の耐久性の低下を抑制することができる。
【0061】
また、フェイス103は、第2層110に形成された露出部111a,111b,111cによって第3層115が露出部111a,111b,111cを介して第2層110に接合しているため、第2層110と第3層115との接合力を向上させてフェイス103の耐久性の低下を抑制することができる。この場合、露出部111a,111b,111cは、第2層110と第3層115との接合力に着目すれば、必ずしも切り欠いた形状または貫通孔で構成される必要はない。
【0062】
すなわち、露出部111a,111b,111cは、
図7および
図8にそれぞれ示すように、第2層110の盤面から凹状に窪んだ形状または第2層110の盤面から凸状に張り出した形状の第3層用凹凸部112a,112b,112c,113a,113b,113cとして形成することができる。これによっても、フェイス103は、第2層110に形成された第3層用凹凸部112a,112b,112c,113a,113b,113cによって第3層115が第3層用凹凸部112a,112b,112c,113a,113b,113cを介して第2層110に接合しているため、第2層110と第3層115との接合力を向上させてフェイス103の耐久性の低下を抑制することができる。
【0063】
なお、第3層用凹凸部112a,112b,112c,113a,113b,113cは、第3層115を構成する樹脂材料の流通路を構成するとともに嵌合部118aを形成する貫通孔114aおよび嵌合部118b,118cをそれぞれ形成する貫通孔114b,114cがそれぞれ形成されている。
【0064】
したがって、露出部111a,111b,111cは、本発明に係る第3層用凹凸部に相当する構成とみることもできる。なお、この第3層用凹凸部に相当する露出部111a,111b,111c、凹状の第3層用凹凸部112a,112b,112cまたは凸状の第3層用凹凸部113a,113b,113cは、第1層104がカバー部106を備えて構成されている場合には、第2層110に対して省略することもできる。
【0065】
また、フェイス103は、露出部111a,111b,111cまたは第3層用凹凸部112a,112b,112c,113a,113b,113cを設ける場合においては、3つに限られず、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ以上備えていればよい。この場合、2つ以上の露出部111a,111b,111cまたは第3層用凹凸部112a,112b,112c,113a,113b,113cを設ける場合には、フェイス103の重心位置を通る直線に対して対称位置に設けるとよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、フェイス103は、第1層104がカバー部106を備えて構成した。しかし、フェイス103は、第2層110が少なくとも1つの露出部111a,111b,111cを有して構成されている場合には、省略して構成することもできる。これによっても、フェイス103は、第2層110に形成された少なくとも1つの露出部111a,111b,111cによって第3層115が少なくとも1つの露出部111a,111b,111cを介して第2層110に接合しているため、第2層110と第3層115との接合力を向上させてフェイス103の耐久性の低下を抑制することができる。また、カバー部106は、第2層110および第3層115の各外周部を断続的に覆うように構成することもできる。
【0067】
また、上記実施形態においては、第3層115は、3つの嵌合部118a,118b、118bを有して構成した。しかし、第3層115は、嵌合部118a,118b、118bを省略して構成することもできる。また、第3層115は、嵌合部118a,118b、118bを備える場合には、少なくとも1つ備えるようにすればよい。また、嵌合部118b、118bは、ヘッド本体102の取付穴102b,102cに嵌合しない長さに形成することもできる。
【0068】
また、上記実施形態においては、フェイス103は、第1層104、第2層110および第3層115の3つの層で構成した。しかい、フェイス103は、少なくとも3つの層を備えて構成されていればよいため、4層以上に構成することもできる。この場合、第1層104は、4層目以降の各層の外周部についてはカバー部106で覆うように構成してもよいし、覆うことなく露出させるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0069】
100…ゴルフクラブ、101…ヘッド、102…ヘッド本体、102a…フェイス取付部、102b,102c…取付穴、103…フェイス、104…第1層、105…取付部、105a…導入孔、105b,105c…露出部連通部、106…カバー部、
110…第2層、111a,111b,111c…露出部、112a,112b,112c…第3層用凹凸部、113a,113b,113c…第3層用凹凸部、114a,114b,114c…貫通孔、
115…第3層、115a…叩打面、116…本体部、117a,117b,117c…密着部、118a,118b,118c…嵌合部、
120…ソール、
130…シャフト、131…グリップ。