(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079914
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20220520BHJP
C08K 5/541 20060101ALI20220520BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20220520BHJP
C08K 5/57 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/541
C08K5/544
C08K5/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190787
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 和久
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP032
4J002CP051
4J002DJ010
4J002EX016
4J002EX027
4J002EX036
4J002EX077
4J002EZ048
4J002FD148
4J002GJ01
4J002GJ02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬化物表面における、波打ちやしわ等の発生を抑制し、平滑な硬化物表面が得られる室温硬化性ポリオルガノシロキサンを提供する。
【解決手段】(A)所定の両末端アルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサン100質量部と、(B)(B1)所定の構造の3又は4官能のアルコキシ基を有するシラン化合物、および(B2)所定の構造の2官能のアルコキシ基を有するシラン化合物、を含有するシラン混合物0.01~30質量部と、(C)硬化触媒0.01~10質量部と、(D)窒素原子が1個またはそれ以上の炭素原子を介してケイ素原子に結合し、かつその窒素原子が直接該ケイ素原子または別のケイ素原子と結合している窒素含有ケイ素化合物0.5~10質量部と、(E)所定の構造を有するアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン0.05~50質量部と、を含有する室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)次の一般式(1)で表される、両末端アルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサン
R1
a(R2O)3-aSiO[R3
2SiO]nSi(OR2)3-aR1
a …(1)
(ただし、式中、R1およびR3はそれぞれ独立して一価の置換または非置換の炭化水素基、R2は炭素数1~4のアルキル基および炭素数合計1~6のアルコキシアルキル基からなる群より選ばれた一価の基、aは0または1であり、nは23℃における粘度が100~500,000mPa・sになる数を示す) 100質量部、
(B)(B1)次の一般式(2)で表されるシラン化合物
R4
bSi(OR5)4-b …(2)
(ただし、式中、R4は一価の置換または非置換の炭化水素基、R5は炭素数1~4のアルキル基および炭素数合計1~6のアルコキシアルキル基から成る群より選ばれた一価の基、bは0または1の数を示す)またはその部分加水分解縮合物、および(B2)次の一般式(3)で表されるシラン化合物
R6
2Si(OR7)2 …(3)
(ただし、式中、R6は一価の置換または非置換の炭化水素基、R7は炭素数1~4のアルキル基および炭素数合計1~6のアルコキシアルキル基から成る群より選ばれた一価の基を示す)またはその部分加水分解縮合物、を含有するシラン混合物 0.01~30質量部(ただし、前記(B)成分中において、前記(B1)が1~80質量%、前記(B2)が20~99質量%である)
(C)硬化触媒 0.01~10質量部、
(D)窒素原子が1個またはそれ以上の炭素原子を介してケイ素原子に結合し、かつその窒素原子が直接該ケイ素原子または別のケイ素原子と結合している窒素含有ケイ素化合物 0.5~10質量部、および
(E)次の一般式(4)で表されるアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン
[R8
2NR9SiR10
dO(3-d)/2]p[R11
eSiO(4-e)/2]q …(4)
(ただし、式中、R8は水素原子および置換または非置換の炭化水素基から成る群より選ばれた一価の基、R9は2価の炭化水素基、R10およびR11はそれぞれ独立に置換または非置換の一価の炭化水素基、dは0、1または2の数、eは0または1~3の数、pおよびqは23℃における(E)成分の粘度が5~10,000mPa・sとなるそれぞれ1以上の数で、p/(p+q)は0.33以下である) 0.05~50質量部、
を含有することを特徴とする室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の23℃における粘度が500~200,000mPa・sである請求項1に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される両末端アルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサンが、メチルジメトキシシリルオキシ基で両末端が封鎖されたポリオルガノシロキサンである請求項1または2に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
前記(B1)成分のR4が一価の脂肪族炭化水素基である請求項1~3のいずれか1項に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
前記(B1)成分が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シランおよびビニルトリス(メトキシエトキシ)シランから選ばれる少なくとも一つを含む請求項4に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項6】
前記(B2)成分のR6が一価の脂肪族炭化水素基である請求項1~5のいずれか1項に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項7】
前記(B2)成分が、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランおよびメチルビニルジメトキシシランから選ばれる少なくとも一つを含む、請求項6に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項8】
前記(B1)成分と前記(B2)成分との配合量は、その質量比が、10:90~60:40の範囲であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項9】
前記(C)成分が、有機スズ化合物である請求項1~8のいずれか1項に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に係わり、特に、空気中の水分と接触することによって室温で硬化し、硬化物の表面にしわ等の発生を抑制できる室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
室温で硬化してゴム状弾性体を生成するポリオルガノシロキサン組成物の中で、1包装型で空気中の水分と接触することによって硬化反応が生起するタイプのものは、使用直前に本体や架橋剤、或いは触媒を秤量したり、これらを混合したりする煩雑さがなく、配合上のミスを生じることがない上、接着性にすぐれているので、電気電子工業などにおける弾性接着剤やコーティング材として、また建築用シーリング材等として広く用いられている。
【0003】
このような組成物は、分子末端が水酸基で閉塞されたシラノール基末端ポリジオルガノシロキサンに、分子中に平均2個を超える加水分解性基を有する架橋剤等を配合したものであり、架橋剤の種類に応じて硬化の際に、酢酸、長鎖カルボン酸、有機アミン、アミド、有機ヒドロキシルアミン、オキシム化合物、アルコール、アセトンなどを放出する。
【0004】
このうち、アルコールを放出するものは、架橋剤であるアルコキシシランが安価に入手できるばかりでなく、放出物質がメタノール、エタノールのようなアルコールなので揮散しやすく、臭気や腐食性の問題がないという利点がある。しかしその反面、硬化が遅いこと及び保存中に系中に存在する微量の水により架橋剤が加水分解して発生するアルコールがベースポリマーを切断するために保存性が悪いという難点があり、その克服が要望されていた。特に電気・電子工業においては、接着剤、コーティング材などの目的で室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を銅系金属に接触した状態で硬化せしめてゴム状弾性体とすることが多い。
【0005】
このような用途のポリオルガノシロキサン組成物としては、種々検討されており、例えば、銅系金属に対する腐食性がなく、室温において比較的短時間に硬化し、且つ表面の樹脂化がみられず、硬化後の表面にゴム弾性を保持する室温硬化性ポリオルガノシロキサンが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2-54860号公報
【特許文献2】特公平6-27267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような室温硬化性ポリオルガノシロキサンは、特に溶剤を使用しない場合、粘度が低くなりやすく、硬化させる際に、その硬化物の表面と内部との硬化速度の差が大きくなり、硬化物の表面に波打ちやしわ等が発生するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、この種の室温硬化性ポリオルガノシロキサンにおいて、その硬化物表面における、波打ちやしわ等の発生を抑制し、平滑な硬化物表面が得られる室温硬化性ポリオルガノシロキサンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、架橋剤として用いるシラン化合物を、特定の組み合わせとすることで、その硬化物表面の波打ちやしわ等の発生を抑制し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)次の一般式(1)で表される、両末端アルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサン
R1
a(R2O)3-aSiO[R3
2SiO]nSi(OR2)3-aR1
a …(1)
(ただし、式中、R1およびR3はそれぞれ独立して一価の置換または非置換の炭化水素基、R2は炭素数1~4のアルキル基および炭素数合計1~6のアルコキシアルキル基からなる群より選ばれた一価の基、aは0または1であり、nは23℃における粘度が100~10,000mPa・sになる数を示す) 100質量部、(B)(B1)次の一般式(2)で表されるシラン化合物
R4
bSi(OR5)4-b …(2)
(ただし、式中、R4は一価の置換または非置換の炭化水素基、R5は炭素数1~4のアルキル基および炭素数合計1~6のアルコキシアルキル基から成る群より選ばれた一価の基、bは0または1の数を示す)またはその部分加水分解縮合物、および(B2)次の一般式(3)で表されるシラン化合物
R6
2Si(OR7)2 …(3)
(ただし、式中、R6は一価の置換または非置換の炭化水素基、R7は炭素数1~4のアルキル基および炭素数合計1~6のアルコキシアルキル基から成る群より選ばれた一価の基を示す)またはその部分加水分解縮合物、を含有するシラン混合物 0.01~30質量部(ただし、前記(B)成分中において、前記(B1)が1~80質量%、前記(B2)が20~99質量%である)、(C)硬化触媒 0.01~10質量部、(D)窒素原子が1個またはそれ以上の炭素原子を介してケイ素原子に結合し、かつその窒素原子が直接該ケイ素原子または別のケイ素原子と結合している窒素含有ケイ素化合物 0.5~10質量部、および(E)次の一般式(4)で表されるアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン
[R8
2NR9SiR10
dO(3-d)/2]p[R11
eSiO(4-e)/2]q …(4)
(ただし、式中、R8は水素原子および置換または非置換の炭化水素基から成る群より選ばれた一価の基、R9は2価の炭化水素基、R10およびR11はそれぞれ独立に置換または非置換の一価の炭化水素基、dは0、1または2の数、eは0または1~3の数、pおよびqは23℃における(E)の粘度が5~10,000mPa・sとなるそれぞれ1以上の数で、p/(p+q)は0.33以下である) 0.05~50質量部、を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物によれば、室温において比較的短時間に硬化し、表面の樹脂化がみられず、硬化後の表面にゴム弾性を保持でき、かつ、硬化表面を平滑なものとできる。
【0012】
また、本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物のシラン化合物を特定のものとすることで、被接着物に対する接着性を良好に保持できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態である、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物について説明する。
【0014】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、上記した(A)次の一般式(1)で表される、両末端アルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサン
R1
a(R2O)3-aSiO[R3
2SiO]nSi(OR2)3-aR1
a …(1)
(ただし、式中、R1~R3、a、nは上記と同じである) 100質量部、(B)(B1)次の一般式(2)で表されるシラン化合物
R4
bSi(OR5)4-b …(2)
(ただし、式中、R4~R5、bは上記と同じである)またはその部分加水分解縮合物、および(B2)次の一般式(3)で表されるシラン化合物
R6
2Si(OR7)2 …(3)
(ただし、式中、R6~R7は上記と同じである)またはその部分加水分解縮合物、を含有するシラン混合物 0.01~30質量部、(C)硬化触媒 0.01~10質量部、(D)窒素原子が1個またはそれ以上の炭素原子を介してケイ素原子に結合し、かつその窒素原子が直接該ケイ素原子または別のケイ素原子と結合している窒素含有ケイ素化合物 0.5~10質量部、および(E)次の一般式(4)で表されるアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン
[R8
2NR9SiR10
dO(3-d)/2]p[R11
eSiO(4-e)/2]q …(4)
(ただし、式中、R8~R11、d、e、p、qは上記と同じである) 0.05~50質量部、を含有することを特徴とする。以下、各成分について説明する。
【0015】
本実施形態において、(A)成分であるポリオルガノシロキサンは、本組成物のベースポリマーとなるものであり、所定の両末端アルコキシシリル基封鎖ポリオリガノシロキサンである。
【0016】
この(A)成分である両末端アルコキシシリル基封鎖ポリオリガノシロキサンは、例えば、次の一般式(1)で表される両末端アルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサン
R1
a(R2O)3-aSiO[R3
2SiO]nSi(OR2)3-aR1
a …(1)
式(1)中、R1およびR3はそれぞれ独立して置換または非置換の一価の炭化水素基、R2は炭素数1~4のアルキル基および炭素数合計1~6のアルコキシアルキル基からなる群より選ばれた一価の炭化水素基である。また、aは0または1であり、nは23℃における粘度が100~10,000mPa・sになる数を示す)である。
【0017】
R1およびR3の一価の炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基、およびこれらの炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子やニトリル基などで置換されたものが挙げられる。この基としては、合成の容易さからメチル基、ビニル基またはフェニル基等であることが好ましく、その他の有機基は、硬化後のゴム状弾性体に耐油性や塗装適性のような特殊な性質を与えるとき等に選択して使用できる。
【0018】
なかでもメチル基は原料中間体が最も容易に得られるばかりでなく、シロキサンの重合度に対応する粘度が最も低く、硬化前の組成物の押出し作業性と硬化後のゴム状弾性体の物性のバランスを有利にするので、全有機基の85%以上がメチル基であることが好ましく、実質的にすべての有機基がメチル基であることがさらに好ましい。ただし、硬化後のゴム状弾性体に耐寒性を必要とする場合には、有機基の一部にフェニル基等のアリール基を用いることが好ましい。
【0019】
また、R1としては、合成のしやすさや、架橋反応速度が大きいことから、メチル基またはビニル基が好ましい。
【0020】
R2の1価の炭化水素基として具体的には、炭素数1~4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のようなアルキル基、炭素数合計1~6のメトキシエチル基、エトキシエチル基のようなアルコキシアルキル基が例示されるが、合成のしやすさ、架橋反応速度が大きいこと等からメチル基がもっとも好ましい。
【0021】
また、本実施形態においては、硬化前の組成物に適度の押出性を賦与するとともに、硬化後のゴム状弾性体に優れた機械特性を与えるために、両末端アルコキシシリル基封鎖ポリジオルガノシロキサンは、23℃における粘度が100~500,000mPa・sの範囲にあることが望ましい。両末端アルコキシシリル基封鎖ポリジオルガノシロキサンの粘度が100mPa・s未満では硬化後のゴム状弾性体の伸びが十分でなく、一方、500,000mPa・sを越えると均一な組成物が得にくく、押出し作業性も低下するようになる。特に好ましい粘度の範囲は、硬化前および硬化後の組成物の性質を調和させる点で500~200,000mPa・sの範囲である。
【0022】
この(A)成分に対し、作業性、流動性を鑑みて低粘度の非反応性シロキサン、例えば、末端トリアルキルシリル基ポリシロキサン、等を、必要に応じて配合しても構わない。
【0023】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、(B)成分は、(A)成分のポリオルガノシロキサンを架橋する作用を有する架橋剤成分である。この(B)成分としては、後述する(B1)成分と(B2)成分を併用するシラン混合物である点に特徴を有する。
【0024】
本実施形態において、(B1)成分は、次の一般式(2)で表されるシラン化合物、またはその部分加水分解縮合物である。
R4
bSi(OR5)4-b ……(2)
式(2)中、R4は非置換の一価の炭化水素基、または水素原子の一部がハロゲン原子もしくはシアノアルキル基で置換された一価の炭化水素基であり、上記した(A)成分のR2と同様の基が例示され、メチル基であることが好ましい。また、R5は、アルキル基またはアルコキシ置換アルキル基であり、上記した(A)成分のR1と同様の基が例示され、メチル基であることが好ましい。
【0025】
さらに、bは0または1であり、bの平均値は0~1.0である。bの平均値は、好ましくは0.5~1.0である。
【0026】
なお、bの値は、式(2)で表されるシラン化合物において、ケイ素原子に結合したR4の数(整数)を表す。そして、この数bの平均値が0~1.0であるとは、R4の結合数であるbの値が0または1である1種または2種以上のシラン化合物が、各シラン化合物のモル比が調整されることで、bの値の平均値が0~1.0となるように配合されていることを意味する。
【0027】
例えば、bの平均値が0.8~1.0の範囲では、式(2)におけるbが0である化合物:Si(OR5)4と、bが1である化合物:R4Si(OR5)3とが配合されており、この2種のシラン化合物の混合物における、bが1である化合物:R4Si(OR5)3の配合割合(モル比)が、bの平均値に相当する。
【0028】
このように、(B1)成分であるシラン化合物は、一般式(2)におけるbの値が0であるテトラアルコキシシラン、およびbの値が1であるオルガノトリアルコキシシランの1種または2種以上を含み、これらの含有割合(モル比)を調整することで、上記したbの平均値を0.8~1.0の範囲としたものである。
【0029】
このような(B1)成分のうちで、シラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等が例示される。これらのシラン化合物またはその部分加水分解縮合物は、1種を単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
合成が容易で、組成物の保存安定性を損なうことがなく、金属類に対する腐食性が少ないこと、かつ大きな架橋反応速度すなわち硬化速度が得られることから、架橋剤である(B1)成分としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランを用いることが好ましく、特にメチルトリメトキシシランの使用が好ましい。
【0031】
(B1)成分がシラン化合物の部分加水分解縮合物である場合、例えば、メチルトリメトキシシラン等を水の存在化、酸性触媒またはアルカリ性触媒によって部分加水分解することにより得られる。また、部分加水分解で生じたシラノール基を、メチルトリメトキシシラン等でエンキャップすることにより得られる。
【0032】
(B1)成分のシラン化合物またはその部分加水分解縮合物の1分子中のSi数は、1以上10未満が好ましい。すなわち、(B1)成分であるシラン化合物は、1分子中に1個のSi原子を有し、その部分加水分解縮合物は、1分子中に2~9個のSi原子を有することが好ましい。
【0033】
(B1)成分であるシラン化合物またはその部分加水分解縮合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
本実施形態において、(B2)成分は、次の一般式(3)で表されるシラン化合物、またはその部分加水分解縮合物である。
R6
2Si(OR7)2 ……(3)
式(3)中、R6は非置換の一価の炭化水素基、または水素原子の一部がハロゲン原子もしくはシアノアルキル基で置換された一価の炭化水素基であり、上記した(B1)成分のR4および(A)成分のR2と同様の基が例示され、メチル基、ビニル基等が好ましい。また、R7は、アルキル基またはアルコキシ置換アルキル基であり、上記した(B1)成分のR5および(A)成分のR1と同様の基が例示され、メチル基、エチル基等が好ましい。
【0035】
(B2)成分のシラン化合物またはその部分加水分解縮合物の1分子中のSi数は、1以上10未満が好ましい。すなわち、(B2)成分であるシラン化合物は、1分子中に1個のSi原子を有し、その部分加水分解縮合物は、1分子中に2~9個のSi原子を有することが好ましい。
【0036】
このような(B2)成分のうちで、シラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が例示される。これらのシラン化合物またはその部分加水分解縮合物は、1種を単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
合成が容易で、組成物の保存安定性を損なうことがなく、金属類に対する腐食性が少ないこと、大きな架橋反応速度すなわち硬化速度が得られること、かつ被接着物への接着性が良好なこと、から、架橋剤である(B2)成分としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシランを用いることが好ましく、特にジメチルジメトキシシランの使用が好ましい。
【0038】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物のベースポリマーは(A)両末端アルコキシシリル基封鎖ポリオリガノシロキサンを含有し、この(A)成分を(B1)および(B2)のシラン化合物またはその部分加水分解縮合物である(B)成分で架橋する。(A)成分100質量部に対して、(B1)成分と(B2)成分の合計は0.01~30質量部が好ましく、より好ましくは0.1~25質量部であり、さらに好ましくは0.5~15質量部である。(B1)成分と(B2)成分の合計量が0.01質量部以上とすることで、架橋を十分に行うことができ、十分な強度の硬化物(硬化被膜)が得られるうえ、組成物の保存安定性が良好となる。反対に、(B1)成分と(B2)成分の合計が30質量部以下であると、硬化の際の収縮率が大きくなりすぎることなく、硬化後の物性を維持できる。また、硬化速度が遅くなりすぎることも抑制し、経済的な不利も生じにくい。
【0039】
なお、(B)成分中において、(B1)成分と(B2)成分との配合割合は、質量比で、1:99~80:20が好ましく、10:90~60:40がより好ましく、15:85~50:50がさらに好ましい。このような配合割合とすることで、後述する(D)成分の含有量を高めることができる。
【0040】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において(C)成分である硬化触媒は、(A)成分のアルコキシ基と(B)成分である架橋剤のアルコキシ基とを、水分の存在下に反応せしめてゴム状弾性体を得るための硬化触媒である。
この(C)硬化触媒としては、鉄オクトエート、コバルトオクトエート、マンガンオクトエート、亜鉛オクトエート、スズナフテネート、スズカプリレート、スズオレエート等のカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物が例示されるが、微量の存在で大きな触媒能をもつことから、有機スズ化合物であることが好ましい。
【0041】
(C)成分である硬化触媒の配合量は、(A)100質量部に対して0.01~10質量部であり、0.1~1質量部の範囲が好ましい。配合量を0.01質量部以上とすることで、硬化触媒として十分に作用でき、硬化に無用に長い時間がかかることを抑制し、特に空気との接触面から遠いゴム層の深部における硬化も十分に行うことができ、また10質量部以下とすることで、保存安定性も良好に維持できる。
【0042】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、(D)成分の窒素原子が1個またはそれ以上の炭素原子を介してケイ素原子に結合し、かつその窒素原子が直接該ケイ素原子または別のケイ素原子と結合している窒素含有ケイ素化合物は、上記(A)~(C)の混合組成物を製造する際あるいは密閉保存中に、発生するアルコールを捕捉し、組成物の保存安定性を向上させるための成分である。
【0043】
この(D)成分としては、N-トリメチルシリル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-トリメチルシリル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(N’-トリメチルシリル-2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、1,1-ジメトキシ-2-メチル-1-シラ-2-アザシクロペンタン、1,1-ジメトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン、ポリ(1,1-ジメトキシ-5-トリメチルシリル-1-シラ-5-アザペンタン)などが例示される。これらは単独で用いてもよく、また混合して用いることもできる。これらのうちでも、合成のしやすさとアルコール捕捉効果とから、N-トリメチルシリル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、1,1-ジメトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン、およびその開環重合物であるポリ(1,1-ジメトキシ-5-トリメチルシリル-1-シラ-5-アザペンタン)が好ましい。
この(D)成分の配合量は、(A)100質量部に対して0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部が好ましい。配合量が0.5質量部以上とすることで、組成物の保存安定性を良好に維持でき、また10質量部以下とすることで、硬化して得られたゴム状弾性体の物性や耐熱性を維持でき、また加熱による黄変を抑制することもできる。
【0044】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、(E)成分の置換または非置換アミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサンは、(A)~(D)から成る組成物を硬化させて得られるゴム状弾性体の表面が樹脂化するのを防止し、物性や耐久性を向上させるのに有効である。しかも特開昭60-18544号公報(特願昭58-125649号)に記載されたポリオキシアルキレン鎖含有化合物と異なり、特定のプラスチックに対する組成物の接着性を低下させることがない。
【0045】
この(E)成分は、次の一般式(4)で表されるアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン
[R8
2NR9SiR10
dO(3-d)/2]p[R11
eSiO(4-e)/2]q …(4)
(ただし、式中、R8は水素原子および置換または非置換の炭化水素基から成る群より選ばれた一価の基、R9は2価の炭化水素基、R10およびR11はそれぞれ独立に置換または非置換の一価の炭化水素基、dは0、1または2の数、eは0または1~3の数、pおよびqは23℃における(E)成分の粘度が5~10,000mPa・sとなるそれぞれ1以上の数で、p/(p+q)は0.33以下である)である。
【0046】
この(E)成分は、ケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を若干含有していてもよい液状のアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサンである。
【0047】
ここで、R8としては水素原子および(A)成分のR3と同様のもののほか、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、4-アミノブチル基、メチルアミノエチル基、2-ヒドロキシ-3-(3-トリメトキシシリルプロピルオキシ)プロピル基などが例示される。R9としてはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などが例示され、化学的に安定で加水分解を受けにくいこと、原料中間体の入手が容易なこと、取扱いやすいことから、プロピレン基が好ましい。
【0048】
このようなケイ素原子に結合した置換または非置換のアミノアルキル基R8
2NR9としては、3-アミノプロピル基、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基、N-フェニル-3-アミノプロピル基などが、合成のしやすさ、接着性を保持しつつ硬化後の組成物表面の樹脂化を防ぐ効果から好ましい。
【0049】
R10、R11はそれぞれ独立に置換または非置換の一価の炭化水素基、炭素数1~4のアルコキシ基もしくは水酸基であり、(A)成分のR3と同様のものが例示されるが、合成が容易で、比較的低粘度のポリシロキサンを与えることからメチル基が好ましく、(A)成分との相溶性を考慮して、(A)成分にR3としてメチル基以外の一価の置換または非置換の炭化水素基を多量に含むときは、同様の有機基がR10および/またはR11の一部として存在してもよい。
【0050】
この(E)成分の粘度は、23℃において5~10,000mPa・s、好ましくは10~2,000mPa・sである。5mPa・s未満のものは揮発性があり、実用上、組成物中で効果を発揮する信頼性に乏しい。10,000mPa・sを越えると制御よく合成することがむずかしいばかりでなく、(A)成分中に十分に分散せず、硬化後のゴム状弾性体の表面の樹脂化を防ぐ効果が低くなる。
【0051】
(E)成分において、置換または非置換アミノアルキル基を含有するシロキサン単位のケイ素官能性基の数は1~3のいずれであってもよい。換言すればdは2~0のいずれでもよい。また、上記の基を含有しないシロキサン単位のケイ素官能性基の数は1~4のいずれでもよく、すなわちeは0~3のいずれでもよく、またそれらのシロキサン単位が適宜混合していてもよいが、上記の粘度範囲の(E)成分を制御よく合成するには、eが2、または2と3の混成であることが好ましい。また合成法によっては分子末端にケイ素原子に結合した水酸基、メトキシ基またはエトキシ基が若干残存することがある。(E)成分の粘度が上記の範囲内であれば、シロキサン骨格は、鎖状、分岐状、環状、網状のいずれであってもよい。
【0052】
(E)成分を構成するシロキサン単位のうち、置換または非置換アミノアルキル基を含有するシロキサン単位は、分子中に少なくとも1個必要であり、かつ、全シロキサン単位の33%以下であること(即ち、p/(p+q)が0.33以下であること)が必要である。これがpの比率が33%を越えると(A)との相溶性が低くなり、分離しがちになって、硬化後のゴム状弾性体の表面の樹脂化を防ぐ効果が低下する。また、このようなシロキサン単位の割合が極端に多いと、逆に表面の樹脂化を助長する。該シロキサン単位の好ましい量は、樹脂化を防止する効果から0.05~20%の範囲である。
【0053】
(1)このような(E)成分は、次のいずれかの方法で合成することができる。
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンのSi-H結合に、炭素-炭素二重結合をもったアミン類を白金系触媒の存在下に反応させる。
(2)置換または非置換アミノアルキル基アルコキシシランとポリオルガノシロキサンの平衡化反応を行う。
(3)上記シランとその他の加水分解性シランとを共加水分解、重縮合を行う。
本実施形態において、(E)成分の置換または非置換アミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサンの添加量は、(A)100質量部に対して0.05~50質量部、好ましくは0.1~10質量部である。この添加量が0.05質量部以上であると、表面樹脂化防止効果を発現でき、また50質量部以下であると、硬化物が軟らかくなりすぎることなく、またオイルブリードが生じることを抑制できる。
【0054】
本実施形態においては、硬化前の組成物に適度の流動性を付与し、硬化後のゴム状弾性体にシーリング材等として要求される高い機械的強度を付与するために、上述の成分の他に微粉末状の無機質充填剤を添加することが好ましい。このような補強性の無機質充填剤の例としては、煙霧質シリカ、焼成シリカ、沈澱シリカ、煙霧質チタンおよびこれらの表面をオルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン類、およびヘキサメチルジシラザンなどで疎水化したもの等があり、またその他の充填剤としては、炭酸カルシウム、有機酸表面処理炭酸カルシウム、けいそう土、粉砕シリカ、アルミノケイ酸、マグネシア、アルミナなどがある。なお、建築用シーリング材として、特に低いモジュラスを有することが要求される場合には、これらのうち非補強性の充填剤を用いることが好ましい。
また、接着性向上のため、本願所望の特性を損なわない限り、上記(B)成分である架橋剤として供せられるアルキルアルコキシシランとは別に、従来公知のカップリング剤である有機官能性基を有するシランカップリング剤を配合することが可能である。
【0055】
上記補強性無機質充填剤の添加量が少なすぎると、機械的特性向上の効果が殆どあらわれず、逆に多すぎる場合には、モジュラスが大きくなり、破断の際の伸びが小さくなる。従って、これらの充填剤の添加量は、(A)100質量部当たり1~500質量部が好ましく、5~150質量部の範囲から適宜選択するのがより好ましい。
【0056】
さらに、本実施形態の組成物には、顔料、チクソトロピー性付与剤、押出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線防止剤、防カビ剤、耐熱性向上剤、接着性向上剤、難燃化剤などの各種添加剤を加えることも可能である。
【0057】
本実施形態の組成物は、以上のすべての成分および必要に応じて各種添加剤を、湿気を遮断した状態で混合することにより得られる。
【0058】
得られた組成物は、密閉容器中でそのまま保存し、使用時に空気中の水分にさらすことによってはじめて硬化される、いわゆる1包装型室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物として用いることができる。
【0059】
また、本実施形態の組成物においては、(A)、(B)、(D)および(E)成分と(C)成分とを別々の容器に分けて保存し、使用時にこれらを混合する、いわゆる2包装型室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物として用いることもできる。
【実施例0060】
以下に実施例によって本発明をさらに説明する。本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例中、部はすべて質量部を表し、粘度などの物性値はすべて23℃における値である。
(実施例1)
(A1)分子鎖両末端がメチルジメトキシシリルオキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度 980mPa・s) 70.2部、(A’1)分子鎖両末端がトリメチルシリルオキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度 100mPa・s) 15部に、(B1)トリメチルトリメトキシシラン 0.7部、3-アミノプロピルトリメトキシシラン 0.3部、1,3,5-トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート 0.3部、(E1)3-アミノプロピルトリメトキシシランとジメチルジクロロシランの部分加水分解縮合物(粘度 31mPa・s;式(4)中、R8が水素原子、R9が-(CH2)3-、R11がCH3、dが0、eが2、pが1、qが24、p/(p+q)が0.04である) 0.3部、(C1)ジブチル錫ジラウレート 0.2部、(D1)N-トリメチルシリル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン 1.5部、(B2-1)ジメチルジメトキシシラン 1.5部、煙霧質シリカ(比表面積 140m2/g) 10部、をそれぞれ配合し、湿気遮断下で均一に混合してポリオルガノシロキサン組成物1を得た。
【0061】
(実施例2)
(B2-1)ジメチルジメトキシシランの代わりに、(B2-2)ジメチルジエトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様の操作で、ポリオルガノシロキサン組成物2を得た。
【0062】
(実施例3)
(B2-1)ジメチルジメトキシシランの代わりに、(B2-3)メチルビニルジメトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様の操作で、ポリオルガノシロキサン組成物3を得た。
【0063】
(実施例4)
(B2-1)ジメチルジメトキシシランの代わりに、(B2-4)ジフェニルジメトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様の操作で、ポリオルガノシロキサン組成物4を得た。
【0064】
(実施例5)
(B2-1)ジメチルジメトキシシランの代わりに、(B2-5)メチルフェニルジメトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様の操作で、ポリオルガノシロキサン組成物5を得た。
【0065】
(比較例1)
(B2-1)ジメチルジメトキシシランを用いなかった以外は、実施例1と同様の操作により、ポリオルガノシロキサン組成物C1を得た。
【0066】
(比較例2)
(B1)メチルトリメトキシシランの配合量を2.2部とした以外は、比較例1と同様の操作により、ポリオルガノシロキサン組成物C2を得た。
【0067】
(比較例3)
3-アミノプロピルトリメトキシシラン部分加水分解縮合物を配合しなかった以外は、比較例1と同様の操作により、ポリオルガノシロキサン組成物C3を得た。
【0068】
実施例1~5および比較例1~3で得られたポリオルガノシロキサン組成物について、下記に示す方法で各種特性を測定し評価した。これら組成物の組成を表1に、その特性の結果を表2に、それぞれ示す。
[粘度]
上記ポリオルガノシロキサン組成物の粘度を、JIS K6249に拠って次のように測定した。回転粘度計(芝浦セムテック株式会社製、製品名:ビスメトロンVDA-2)を使用し、回転速度60rpm、回転子No.4で粘度の測定を行った。
【0069】
[外観]
ポリオルガノシロキサン組成物を厚さ2mmのシート状に成形した後、23℃、50%RHで3日間放置して硬化させ、その硬化表面を目視で観察し、以下に示す基準により評価した。
<評価基準>
平滑:硬化表面の全体が平滑であった。
しわ状:硬化表面にしわが確認できた。
波状:硬化表面の全体に規則的な波状のしわが確認できた。
【0070】
[タックフリータイム]
上記ポリオルガノシロキサン組成物のタックフリータイムを、JIS K6249に拠って次のように測定した。試料を、泡が入らないようにアルミシャーレに平らに入れた(試料の厚みは3mm)後、エチルアルコールで洗浄した指先で表面に軽く触れ、試料が指先に付着しなくなる時間を測定し、タックフリータイムとした。
【0071】
[硬度]
上記ポリオルガノシロキサン組成物の硬度を、JIS K6249に拠り、以下に示すようにして測定した。ポリオルガノシロキサン組成物を厚さ2mmのシート状に成形した後、23℃、50%RHで3日間放置して硬化させた。次いで、得られた硬化シートを3枚重ね、デュロメータ(Type A)により硬度を測定した。
【0072】
[伸び]
上記ポリオルガノシロキサン組成物の伸びを、JIS K 6249に拠り、以下に示すようにして測定した。ポリオルガノシロキサン組成物を厚さ2mmのシート状に成形した後、23℃、50%RHで3日間放置して硬化させた。次いで、得られた硬化シートを2号ダンベル型に打ち抜き、オートグラフ(島津製作所製、商品名:AG-IS)により伸びを測定した。
【0073】
[接着性]
ポリオルガノシロキサン組成物を被接着物上に、厚さ1mmのシート状に塗布、成形した後、室温で168時間放置して硬化させた。次いで、得られた硬化物を引きはがすことにより、その被着体表面への密着性をその凝集破壊率で評価した。凝集破壊率(CF%)は、接着層の端面に切り込みを入れて、手で引きはがすことにより接着界面におけるその硬化組成物の部材との破断状況を確認し、その面積比率により算出した。
【0074】
なお、このとき、被接着物としては、PC1:ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリング社製、商品名:ユーピロン)、PC2:ポリカーボネート樹脂(サビック(SABIC)社製、商品名:レキサン)、PPS:ポリフェニレンサルファイド樹脂(東ソーサスティール社製、商品名:GS40%)、PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂(デュポン社製、商品名:ライナイト530)、ポリアミド1:ポリアミド樹脂(東レプラスチック精工社製、商品名:SHT-N6 NC;ナイロン6)、ポリアミド2:ポリアミド樹脂(東レプラスチック精工社製、商品名:SHT-N66 NC;ナイロン66)、PBT:ポリブチレンテレフタレート樹脂(ジュラネックス社製、商品名:2002)、ガラス(フロート板ガラス、JIS R 3202)、FR-4(日立化成社製、商品名:KEL-GEF)、アルミニウム(JIS品社製、商品名:A1050P)を用い、それぞれに対する接着性を表2に示した。
【0075】
【0076】
【0077】
上記結果から、両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ポリジメチルシロキサンをベースポリマーとするポロルガノシロキサン組成物において、特定の構造のシラン化合物を併用した実施例1~5では、硬化物表面のしわの発生を抑制し、平滑な表面として得られることがわかった。
また、ジアルコキシタイプのシラン化合物としては、置換基としてフェニル等の芳香族環を有さないと、被接着物への接着性が良好であることもわかった。
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサンは、電気電子工業などにおける弾性接着剤やコーティング材として、また建築用シーリング材等の用途に有用であり、特に、外観に影響する、製品の最表面のコーティング材として好適である。