(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079928
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】パージ装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
H01L21/68 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190805
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 拓生
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BB01
5F131CA01
5F131CA12
5F131CA53
5F131DA05
5F131DA22
5F131DA37
5F131DA42
5F131DB52
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB76
5F131DC06
5F131FA02
5F131FA14
5F131FA32
5F131FA33
5F131GA14
5F131GA19
5F131GA22
5F131GA24
5F131GA76
5F131GA92
5F131GB02
5F131GB13
5F131JA16
5F131JA24
5F131JA33
5F131JA35
(57)【要約】
【課題】注入口または排出口に安全弁を備えた容器に対しても、ガスのパージを確実に行うことのできるパージ装置を提供する。
【解決手段】パージ装置30は、注入口52Aまたは排出口52Bに安全弁55,56が設けられた格納容器50にパージガスを供給する。パージ装置30は、注入口52Aまたは排出口52Bに対してパージガスをそれぞれ流通させる注入ノズル本体42および排出ノズル本体44と、載置面7bへの容器の接近に伴い安全弁55,56の弁体62を押し上げる押し上げ部材46と、押し上げ部材46を包囲し、安全弁55,56に当接する筒状の連通部材48とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入口または排出口に安全弁が設けられた容器にパージガスを供給するパージ装置であって、
前記容器が載置される載置面に設けられ、前記注入口または前記排出口に対してパージガスを流通させるノズル本体と、
前記ノズル本体の先端よりも前記載置面から突出した位置に配置された当接部を有し、前記載置面への前記容器の接近に伴い前記安全弁の弁体を押し上げる押し上げ部材と、
前記ノズル本体および前記押し上げ部材を包囲すると共に前記安全弁または前記容器の端面に当接する筒状の連通部材と、を備えるパージ装置。
【請求項2】
前記連通部材は弾性体からなる、請求項1に記載のパージ装置。
【請求項3】
前記押し上げ部材は弾性体からなり、
前記連通部材は前記押し上げ部材よりも柔らかい、請求項2に記載のパージ装置。
【請求項4】
前記押し上げ部材は筒状であり、前記ノズル本体を包囲している、請求項1~3のいずれか一項に記載のパージ装置。
【請求項5】
前記容器は前記注入口および前記排出口を備えており、
前記連通部材は、
前記注入口用の前記ノズル本体を包囲すると共に弾性体からなる第1連通部材と、
前記排出口用の前記ノズル本体を包囲すると共に弾性体からなる第2連通部材と、を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のパージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロードポートに設けられ、ロードポート上に載置される容器内にガス導入孔を通じてパージガスを供給するパージ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。容器内のパージガスは、ガス排出孔から排出される。ガス導入孔およびガス排出孔は、容器の底面に設けられたノズル受け入れ部に形成されている。パージ装置は、ロードポートの基準面(載置面)に設けられたパージガス注入用のノズルおよびパージガス排出用のノズルを備え、これらのノズルが、ノズル受け入れ部に挿入される。ガス導入孔とガス排出孔がそれぞれノズルに接続されることで、パージガスの供給および排出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器の底面に形成されたガス導入孔(注入口)またはガス排出孔(排出口)に、安全弁が設けられる場合がある。安全弁は、容器の底面に形成された貫通孔に配置されて上下動するピストンを備えており、ピストンが下に位置するときに、ガスの流入および流出を防止する。このような注入口または排出口に安全弁を備えた容器に対しても、ガスのパージを確実に行うことのできるパージ装置が望まれている。
【0005】
本開示は、注入口または排出口に安全弁を備えた容器に対しても、パージを確実に行うことのできるパージ装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、注入口または排出口に安全弁が設けられた容器にパージガスを供給するパージ装置であって、容器が載置される載置面に設けられ、注入口または排出口に対してパージガスを流通させるノズル本体と、ノズル本体の先端よりも載置面から突出した位置に配置された当接部を有し、載置面への容器の接近に伴い安全弁の弁体を押し上げる押し上げ部材と、ノズル本体および押し上げ部材を包囲すると共に安全弁または容器の端面に当接する筒状の連通部材と、を備える。
【0007】
このパージ装置によれば、載置面への容器の接近に伴って、押し上げ部材が安全弁の弁体を押し上げる。筒状の連通部材は安全弁または容器の端面に当接し、その内部に配置されたノズル本体と容器の注入口または排出口との間で、パージガスが流通する。容器が載置面上にある間、弁体を押し上げた状態は維持され、また連通部材がノズル本体と注入口または排出口とを連通させる。よって、容器の安全弁を確実に開き、パージを確実に行うことができる。
【0008】
連通部材は弾性体からなってもよい。この場合、連通部材がシール性を発揮しやすい。
【0009】
押し上げ部材は弾性体からなり、連通部材は押し上げ部材よりも柔らかくてもよい。この場合、連通部材によるシール性がより高められる。
【0010】
押し上げ部材は筒状であり、ノズル本体を包囲していてもよい。この場合、押し上げ部材によっても、ある程度、シール性が発揮される。よって、パージガスの漏れをより確実に防止することができる。
【0011】
容器は注入口および排出口を備えており、パージ装置の連通部材は、注入口用のノズル本体を包囲すると共に弾性体からなる第1連通部材と、排出口用のノズル本体を包囲すると共に弾性体からなる第2連通部材と、を有してもよい。この場合、容器の姿勢を調整しやすい。
【発明の効果】
【0012】
本開示のパージ装置によれば、容器の安全弁を確実に開き、パージを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るパージ装置が適用されるパージストッカを示す側面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るパージ装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、未接続状態におけるパージ装置の注入ノズルおよび排出ノズルと容器の注入口および排出口を示す断面図である。
【
図4】
図4は、接続状態におけるパージ装置の注入ノズルおよび排出ノズルと容器の注入口および排出口を示す断面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係るパージ装置の注入ノズル(または排出ノズル)を示す断面図である。
【
図6】
図6は、別の変形例に係るパージ装置の注入ノズル(または排出ノズル)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、パージストッカ1は、格納容器(容器)50の内部をパージガスによってパージ処理すると共に、複数の格納容器50を保管する保管庫としての機能を有する。格納容器50は、半導体ウェハ又はガラス基板等の被格納物が格納されたSMIFポッド、レチクルポッド、FOUP等の容器である。パージガスとしては、例えば、窒素ガス又は空気が用いられる。パージストッカ1は、例えばクリーンルームに設けられる。パージストッカ1は、パーティション3、ラック7、クレーン9、OHT(Overhead Hoist Transfer)ポート21、及びマニュアルポート23を主に備えている。
【0016】
パーティション3は、パージストッカ1のカバー板である。パーティション3の内側には、格納容器50を保管する保管領域が形成されている。ラック7は、格納容器50を保管する部分であり、当該保管領域内に1又は複数列(ここでは、2列)設けられている。各ラック7は、所定方向xに延在しており、隣り合う2つのラック7,7がy方向に対向するように平行に配置されている。各ラック7には、所定方向x及び鉛直方向zに沿って、格納容器50を載置して保管するパージ棚7Aが複数形成されている。パージ棚7Aは、鉛直方向zに沿って複数並んで配置され、且つ、所定方向xに沿って複数並んで配置されている。
【0017】
クレーン9は、格納容器50をパージ棚7Aに対して出し入れをすると共に、格納容器50をパージ棚7AとOHTポート21及びマニュアルポート23との間で移動させる搬送装置である。クレーン9は、対向するラック7,7に挟まれた領域に配置されている。クレーン9は、ラック7が延在する所定方向xに沿って、床面に配置された走行レール(図示せず)上を移動する。クレーン9は、鉛直方向zに延びるガイドレール9Aと、ガイドレール9Aに沿って昇降可能な荷台9Bと、を有する。クレーン9による格納容器50の搬送は、クレーンコントローラ60によって制御される。クレーンコントローラ60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。
【0018】
パージストッカ1への格納容器50の入庫及び出庫は、OHTポート21及びマニュアルポート23から行われる。OHTポート21は、天井に敷設された走行レール25を走行する天井走行車(OHT)27とパージストッカ1との間で格納容器50を受け渡しする部分である。OHTポート21は、格納容器50を搬送するコンベヤ21Aを有する。マニュアルポート23は、作業者とパージストッカ1との間で格納容器50を受け渡しする部分である。マニュアルポート23は、格納容器50を搬送するコンベヤ23Aを有する。
【0019】
図2に示されるように、パージストッカ1は、パージ棚7Aに載置された格納容器50に窒素ガス又は空気等のパージガスを供給するパージ装置30を備える。パージ棚7Aには、例えば、格納容器50の位置合わせ用のピン(図示せず)が設けられており、格納容器50の底蓋53には、例えばピンを受け入れる凹部または開口等が設けられている。格納容器50は、そのような位置合わせ機構によって、パージ棚7Aの載置面7b上の所定位置に載置される。所定位置に格納容器50が到来することで、パージ装置30は、格納容器50との間でパージガスを流通可能なように、格納容器50に接続される。パージ装置30は、供給管31、注入ノズル32、MFC(Mass Flow Controller)35、パージガス源37、排出管33、排出ノズル34、流量計39及びパージコントローラ40を備える。
【0020】
なお、載置面7b上に格納容器50が載置されることは、格納容器50の底面53aが載置面7bに当接することを必ずしも意味しない。格納容器50の底面53aが、載置面7bから隙間をもって離間して、載置面7bに対面する場合もある。この場合、格納容器50の底面53aは注入ノズル32および排出ノズル34に当接し、一方で載置面7bには当接しない。この状態も含め、格納容器50は、全体として、載置面7b上に載置されているといえる。
【0021】
図2および
図3に示されるように、供給管31は、パージガスを供給するための管であり、パージ棚7Aの所定位置に形成された貫通孔36において、注入ノズル32に接続される。注入ノズル32は、格納容器50に接続されて、格納容器50内にパージガスを供給する。MFC35は、供給管31を流れるパージガスの質量流量を計測し、流量制御を行う機器である。パージガス源37は、パージガスを貯蔵するタンクである。排出管33は、パージガスを排出するための管であり、パージ棚7Aの所定位置に形成された貫通孔38において、排出ノズル34に接続される。排出ノズル34は、格納容器50から排出されるパージガスを受け入れ、排出管33へと流す。流量計39は、排出管33を流れるパージガスの流量を計測する機器である。パージコントローラ40は、パージ装置30における各種パージ処理を制御する。パージコントローラ40は、例えば、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットである。
【0022】
ここで、本実施形態のパージ装置30が適用される格納容器50の概略構成について説明する。格納容器50は、例えば、容器本体51及び底蓋53を備える。格納容器50では、容器本体51の底側に対して底蓋53が着脱可能である。容器本体51は、矩形箱状を呈する。底蓋53は、例えば、矩形板状を呈する。格納容器50では、容器本体51と底蓋53とによって密閉空間54が形成される。密閉空間54内には、複数の半導体ウェハ(図示せず)が収納される。例えば、底蓋53の四隅のうちの1つ又は数箇所に、パージガスを受け入れるための注入口52Aが設けられている。注入口52Aは、パージ装置30の供給管31の先端に設けられた注入ノズル32に接続可能に構成されている。例えば、底蓋53の四隅のうちの1つ又は数箇所であって注入口52Aとは異なる位置に、パージガスを排出するための排出口52Bが設けられている。排出口52Bは、パージ装置30の排出管33の先端に設けられた排出ノズル34に接続可能に構成されている。
【0023】
格納容器50では、注入口52Aに安全弁55が設けられており、排出口52Bに安全弁56が設けられている。安全弁55および安全弁56は、格納容器50がパージ棚7Aに載置されてパージ装置30に接続されているときには注入口52Aおよび排出口52Bにおけるパージガスの流通を許容する。一方、格納容器50がパージ装置30に接続されていないときには、安全弁55および安全弁56は、注入口52Aおよび排出口52Bにおける流路を遮断してパージガスの流通を不可能とする。安全弁55および安全弁56は、同様の構成を備える。以下、安全弁55に関してのみ説明し、安全弁56に関する説明は省略する。
【0024】
図3に示されるように、安全弁55は、注入口52Aに取り付けられている。安全弁55は、注入口52Aに固定されたホルダ61と、ホルダ61に取り付けられた円筒状の弁体62と、弁体62の周面に取り付けられたOリング63とを有する。ホルダ61は、注入口52Aの開口を遮蔽しており、格納容器50の内外を連通する流路は、弁体62にのみ形成されている。弁体62は、ホルダ61内において上下動可能な(鉛直方向zに移動可能な)ピストンである。弁体62には、パージガスを流通させるための流路62bが形成されている。弁体62は、安全弁55に外力が加わっていないときには、自重で落下して下端位置に位置しており、流路62bを遮断することでパージガスの流通を不可能とする(
図3参照)。弁体62は、外力によって押し上げられて上端位置に位置しているときには、流路62bが格納容器50の内外に連通しており、パージガスの流通を許容する(
図4参照)。
【0025】
安全弁55および安全弁56は、パージガスの流入を防止する流入防止弁であり、かつ、パージガスの流出を防止する流出防止弁である。安全弁55,56は、同様の構成を備えるため、注入口52A用にも排出口52Bにも適用可能である。なお、安全弁55,56のそれぞれが、ガス注入用またはガス排出用の異なる構成を備えてもよい。
【0026】
図3に示されるように、注入ノズル32は、格納容器50が載置される載置面7bに設けられた注入ノズル本体42と、注入ノズル本体42の先端よりも、載置面7bから突出するように設けられた押し上げ部材46と、注入ノズル本体42および押し上げ部材46を包囲するように設けられた連通部材(第1連通部材)48とを備える。注入ノズル本体42は、供給管31の先端に接続された配管部材であり、注入口52Aにパージガスを供給する。すなわち、注入ノズル本体42は、注入口52Aに対してパージガスを流通させる注入口52A用のノズル本体である。注入ノズル本体42は、例えば、円筒形の貫通孔36内に配置されている。貫通孔36は、注入口52Aに対応する位置、より詳細には、格納容器50が位置合わせされた状態で、鉛直方向zから見て注入口52Aに重複する位置に形成されている。注入ノズル本体42の先端は、例えば、パージ棚7Aの載置面7bから突出している。
【0027】
注入ノズル32では、パージガス源37から送られるパージガスが所定の圧力をもって供給されるが、その供給圧力は、適宜に調整または決定されてよい。パージガスの供給圧力は、格納容器50内にパージガスを送り込むのに適切な値に設定される。
【0028】
排出ノズル34は、格納容器50が載置される載置面7bに設けられた排出ノズル本体44と、排出ノズル本体44の先端よりも、載置面7bから突出するように設けられた押し上げ部材46と、排出ノズル本体44および押し上げ部材46を包囲するように設けられた連通部材(第2連通部材)48とを備える。排出ノズル本体44は、排出管33の先端に接続された配管部材であり、排出口52Bから排出されるパージガスを受け入れる。すなわち、排出ノズル本体44は、排出口52Bに対してパージガスを流通させる排出口52B用のノズル本体である。排出ノズル本体44は、例えば、円筒形の貫通孔38内に配置されている。貫通孔38は、排出口52Bに対応する位置、より詳細には、格納容器50が位置合わせされた状態で、鉛直方向zから見て排出口52Bに重複する位置に形成されている。排出ノズル本体44の先端は、例えば、パージ棚7Aの載置面7bから突出している。
【0029】
格納容器50から排出ノズル34へと排出されるパージガスの圧力は、上記の供給圧力、または供給流量等に影響され得る。パージガスが格納容器50内で所定の内圧を有する場合は、排出ノズル34を排出口52Bに接続するのみでパージガスを排出させることができるが、内圧が不足する場合等には、排出管33に別途の吸引装置(または吸引機構)が設けられ、パージガスが排出口52Bおよび排出ノズル34を介して吸引される。
【0030】
注入ノズル32および排出ノズル34は、いずれも、安全弁55および安全弁56に対して適合された構造を備える。注入ノズル32および排出ノズル34は、例えば、同様の構成を備える。以下、注入ノズル32の構成に関してのみ詳細に説明し、排出ノズル34の構成に関する詳細な説明は省略する。
【0031】
図3に示されるように、押し上げ部材46および連通部材48は、例えば、二重管構造をなしている。より詳細には、押し上げ部材46および連通部材48は、例えば、二重の蛇腹構造をなしている。
【0032】
押し上げ部材46は、例えば、円筒状を呈しており、注入ノズル本体42を包囲している。押し上げ部材46は、注入ノズル本体42上に立設されている。押し上げ部材46は、注入ノズル本体42に嵌合等により取り付けられた基部46bと、円筒状かつ蛇腹状の筒状部46cと、例えば円形の先端面(当接部)46aとを有する。押し上げ部材46は、例えば、フッ素ゴムまたはシリコーンゴム等の弾性体からなる。押し上げ部材46の基部46bに、注入ノズル本体42の先端部が挿入されている。
【0033】
なお、押し上げ部材46は、弾性を有する材料から構成されることで弾性体とされてもよいし、弾性材料以外の材料が蛇腹状に成形されることで弾性体とされてもよい。すなわち、押し上げ部材46は、材料に基づく弾性体であってもよく、形状に基づく弾性体であってもよい。本実施形態の場合は、押し上げ部材46は、例えば、材料および形状の両方に基づく弾性体である。また、押し上げ部材46は、弾性体のみで構成する場合のほか、弾性を有しない本体部分とスプリング等といった複数の部材を組み合わせて構成するようにしてもよい。
【0034】
押し上げ部材46は、弁体62の中心軸線に略一致する(または完全に一致する)中心軸線を有する。すなわち、格納容器50が位置合わせされた状態で、押し上げ部材46は、弁体62と同心状に配置される。先端面46aは、例えば水平面に沿って延びており、注入ノズル本体42の先端よりも、載置面7bから突出した位置に配置されている。先端面46aは、弁体62の円環状の下端面62aに当接可能な大きさ(直径)を有する。押し上げ部材46は、格納容器50が載置される際、載置面7bへの格納容器50の接近に伴って弁体62に当接し、弁体62を押し上げる。より詳細には、載置面7bへの格納容器50の接近に伴って、押し上げ部材46の先端面46aが弁体62の下端面62aに当接し、弁体62を押し上げる。ここで、「弁体62を押し上げる」とは、弁体62の絶対位置を必ずしも意味するのではなく、下降する注入口52Aすなわち安全弁55(ホルダ61)の位置に対して上昇することを意味する。
【0035】
連通部材48は、例えば、円筒状を呈しており、注入ノズル本体42および押し上げ部材46を包囲している。連通部材48は、押し上げ部材46よりも大きな直径を有しており、連通部材48内に、押し上げ部材46が配置されている。連通部材48は、注入ノズル本体42上に立設されている。押し上げ部材46は、注入ノズル本体42の根元部分に嵌合等により取り付けられた基端部48bと、円筒状かつ蛇腹状の筒状部48cと、例えば円形の先端面48aとを有する。連通部材48は、例えば、フッ素ゴムまたはシリコーンゴム等の弾性体からなる。
【0036】
なお、連通部材48は、弾性を有する材料から構成されることで弾性体とされてもよいし、弾性材料以外の材料が蛇腹状に成形されることで弾性体とされてもよい。すなわち、連通部材48は、材料に基づく弾性体であってもよく、形状に基づく弾性体であってもよい。本実施形態の場合は、連通部材48は、例えば、材料および形状の両方に基づく弾性体である。また、連通部材48は、弾性体のみで構成する場合のほか、弾性を有しない本体部分とスプリング等といった複数の部材を組み合わせて構成するようにしてもよい。
【0037】
連通部材48は、例えば、押し上げ部材46と同心状に配置される。先端面48aは、例えば水平面に沿って延びている。先端面48aは、例えば、押し上げ部材46の先端面46aと揃った位置(高さ)に配置される。先端面48aは、ホルダ61の円環状の下端面61aに当接可能な大きさ(直径)を有する。連通部材48は、先端面48aが下端面61aに当接することで、注入ノズル本体42と注入口52Aとを連通させると共に、シール性を発揮してパージガスが漏れることを抑制する。
【0038】
押し上げ部材46と連通部材48の弾性の違いについて説明する。連通部材48は、例えば、押し上げ部材46よりも柔らかくなっている。言い換えれば、連通部材48の弾性係数(またはヤング率)は、押し上げ部材46の弾性係数(またはヤング率)よりも小さい。
【0039】
以上説明した注入ノズル32および排出ノズル34を備えるパージ装置30において、格納容器50が載置される際の作用・効果について
図4を参照して説明する。
図4に示されるように、格納容器50が載置面7bに接近すると、注入ノズル32の押し上げ部材46が安全弁55の弁体62に当接し、弁体62を押し上げる。筒状の連通部材48は安全弁55のホルダ61に当接し、注入ノズル32の内部に配置された注入ノズル本体42と格納容器50の注入口52Aとの間で、パージガスが流通する。すなわち安全弁55が開通する。これと同時に、排出ノズル34の押し上げ部材46が安全弁56の弁体62に当接し、弁体62を押し上げる。筒状の連通部材48は安全弁56のホルダ61に当接し、排出ノズル34の内部に配置された排出ノズル本体44と格納容器50の排出口52Bとの間で、パージガスが流通する。すなわち安全弁56が開通する。格納容器50が載置面7b上にある間、弁体62を押し上げた状態は維持され、また連通部材48が、注入ノズル本体42と注入口52A、および、排出ノズル本体44と排出口52Bとを気密な状態で連通させる。よって、格納容器50の安全弁55,56を確実に開き、パージガスの注入および排出を確実に行うことができる。また、外側において連通部材48が接続部を覆っているので、仮にパージガスが安全弁55,56の隙間などから漏れたとしても、連通部材48がシール性を発揮し、パージガスの漏れを抑制できる。
【0040】
連通部材48が弾性体からなっているので、連通部材48は、シール性を発揮しやすい。また、連通部材が剛体からなる場合に比して、複数の連通部材48が隙間なく格納容器50の一部に当接する。平面度がゼロである部品は、一般に、作製が困難である。弾性体からなる連通部材48によれば、隙間なく格納容器50を支持することができ、また格納容器50の傾きやがたつき等を抑制することができる。
【0041】
押し上げ部材46が弾性体からなり、連通部材48は押し上げ部材46よりも柔らかい。よって、連通部材48によるシール性がより高められている。パージガスを密閉させるためには、注入ノズル32および排出ノズル34に、柔らかさと自由度が求められる。特に、パージストッカ1は多くのパージ棚7Aを有するため、パージ棚7A同士の距離も小さくなっており、装置の小型化が求められる。二重の弾性体構造を採用することにより、小型化が容易である。
【0042】
押し上げ部材46は筒状であり、注入ノズル本体42および排出ノズル本体44を包囲している。これにより、押し上げ部材46によっても、ある程度のシール性が発揮される。よって、パージガスの漏れをより確実に防止することができる。
【0043】
格納容器50は注入口52Aおよび排出口52Bを備えており、パージ装置30は、注入ノズル本体42を包囲すると共に弾性体からなる注入ノズル32の連通部材48と、排出ノズル本体44を包囲すると共に弾性体からなる排出ノズル34の連通部材48と、を有する。これにより、格納容器50の姿勢を調整しやすい。特に、注入ノズル32と排出ノズル34に弾性体からなる連通部材48が設けられていることで、ノズル全体としての平面度を実現しやすい。ノズルに載置される格納容器50に対して、隙間を生じにくく、密閉度が高められる。
【0044】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、パージ装置30が、
図5に示される変形例のような、押し上げ部材としての中蓋47を用いた注入ノズル32A(または排出ノズル)を備えてもよい。注入ノズル32Aが注入ノズル32と違う点は、弾性体からなる蛇腹状の押し上げ部材46に代えて、筒状の中蓋47を注入ノズル本体42上に設けた点である。中蓋47の上端面(当接部)47aは、注入ノズル本体42の先端よりも、載置面7bから突出した位置に配置される。上端面47aは、弁体62の円環状の下端面62aに当接可能な大きさ(直径)を有する。中蓋47は、円筒部の下端に形成されたフランジ部47bを含む。このような注入ノズル32Aを備えたパージ装置30よっても、上記実施形態と同様、格納容器50の安全弁55,56を確実に開き、パージを確実に行うことができる。同様の排出ノズルをも備えたパージ装置30によれば、ノズル全体としての平面度を実現しやすい。ノズルに載置される格納容器50に対して、隙間を生じにくく、密閉度が高められる。
【0045】
また、例えば、パージ装置30が、
図6に示される別の変形例のような、押し上げ部材49が連通部材48に一体化された注入ノズル32B(または排出ノズル)を備えてもよい。注入ノズル32Bが注入ノズル32と違う点は、注入ノズル本体42に取り付けられた押し上げ部材46に代えて、連通部材48の先端面48aよりやや下がった位置から水平に延びる押し上げ部材49を設けた点である。押し上げ部材49は、ゴム等の弾性体からなり、例えば、連通部材48の内面側に接合されて4本の十字状に延びる(複数の放射状に延びる)支持部49bと、支持部49bの中央側に連続する中央部(当接部)49aとを含む。中央部49aは、注入ノズル本体42の先端よりも、載置面7bから突出した位置に配置される。中央部49aは、弁体62の円環状の下端面62aに当接可能な大きさ(直径)を有する。このような注入ノズル32Bを備えたパージ装置30よっても、上記実施形態と同様、格納容器50の安全弁55,56を確実に開き、パージを確実に行うことができる。同様の排出ノズルをも備えたパージ装置30によれば、ノズル全体としての平面度を実現しやすい。ノズルに載置される格納容器50に対して、隙間を生じにくく、密閉度が高められる。
【0046】
これらの実施形態および変形例以外にも、種々の変形態様が採られ得る。例えば、押し上げ部材は、蛇腹状でなくてもよい。押し上げ部材が、ゴム等の弾性体からなるが、蛇腹を有しない管状であってもよい。押し上げ部材は、弾性を有していなくてもよい。連通部材は、蛇腹状でなくてもよい。連通部材が、ゴム等の弾性体からなるが、蛇腹を有しない管状であってもよい。連通部材は、弾性を有してなくてもよい。
【0047】
押し上げ部材46が弾性体である場合に、押し上げ部材46の弾性係数(またはヤング率)が、連通部材48の弾性係数(またはヤング率)と等しくてもよい。あるいは、上記実施形態とは反対に、押し上げ部材46の弾性係数(またはヤング率)が、連通部材48の弾性係数(またはヤング率)より小さくてもよい。
【0048】
筒状の連通部材は、円筒状である場合に限らない。筒状の連通部材が、角筒状であってもよいし、内径が一定ではなく変化する形状であってもよい。例えば、連通部材が、基端部48bから先端面48aに向けて内径が小さくなる円錐台形状またはドーム形状をなしてもよいし、反対に、基端部48bから先端面48aに向けて内径が大きくなる逆円錐台形状またはドームを逆さにした形状(らっぱ形状)をなしてもよい。
【0049】
連通部材48の先端面48aが、ホルダ61の下端面61aに当接する場合に限られず、下端面61a以外の格納容器50の下端面等に当接するように構成されてもよい。例えば、下端面61aの直径が上記実施形態よりも大きい場合には、連通部材48の先端面48aが、格納容器50の底面53a等に当接する。
【0050】
格納容器50には、排出口52Bが設けられなくてもよい。すなわち、格納容器50は、1つ又は複数の注入口52Aのみを備えていてもよい。その場合、パージ装置30は、排出ノズル34(排出ノズル本体44)を備えていない。パージ装置30は、格納容器50に接続される部分として、1つ又は複数の注入ノズル32(注入ノズル本体42)のみを備えていてもよい。
【0051】
格納容器50に、注入口52Aおよび排出口52Bの両方が設けられ、その場合に、パージ装置30が、上記実施形態に係る注入ノズル32または上記変形例に係る注入ノズル32A,32B等を備えていなくてもよい。ただし、その場合でも、パージ装置30は、上記実施形態に係る排出ノズル34または上記変形例に係る注入ノズル32A,32Bと同様の構成の排出ノズル等を備える。注入口52Aには、注入ノズル本体42が接続され、ガスの供給圧力によって弁体62が押し上げられてもよい。あるいは、注入ノズルが、注入ノズル本体42と筒状の押し上げ部材46とを備え、連通部材48が省略されてもよい。注入ノズルが、注入ノズル本体42と筒状の連通部材48とを備え、押し上げ部材46が省略されてもよい。筒状の押し上げ部材46または筒状の連通部材48のいずれかが、シール性を発揮し得る。
【0052】
パージ装置30において、流量計39が省略されてもよい。パージガスの排出流量の確認が必要な場合には流量計39が設置されるが、パージガスの排出流量の確認が特に不要な場合には、流量計39は省略される。格納容器50に排出口52Bが設けられず、パージ装置30に排出ノズル34が設けられない場合には、排出管33および流量計39は省略される。
【0053】
格納容器50の構成は上記実施形態に限られない。注入口52Aおよび排出口52Bの位置、構造、個数等は適宜に変更可能である。注入口52Aまたは排出口52Bに、弁体によって流路を開閉可能な安全弁が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0054】
1…パージストッカ、7A…パージ棚、30…パージ装置、32…注入ノズル、34…排出ノズル、42…注入ノズル本体(注入口用のノズル本体)、44…排出ノズル本体(排出口用のノズル本体)、46…押し上げ部材、46a…先端面(当接部)、48…連通部材、47…中蓋(押し上げ部材)、47a…上端面(当接部)、49…押し上げ部材、49a…中央部(当接部)、50…格納容器(容器)、52A…注入口、52B…排出口、53…底蓋、55…安全弁、56…安全弁、61…ホルダ、62…弁体。