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特開2022-79953推定システム、学習装置、推定装置、推定方法、学習方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079953
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】推定システム、学習装置、推定装置、推定方法、学習方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/188 20060101AFI20220520BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220520BHJP
【FI】
B65H23/188
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190854
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】平井 佑一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正樹
【テーマコード(参考)】
3F105
【Fターム(参考)】
3F105AA04
3F105AB00
3F105BA01
3F105BA07
3F105CC01
3F105CC02
3F105DA02
3F105DA12
3F105DC00
(57)【要約】
【課題】ラミネート加工された加工物における不良の発生を抑制することが可能な推定システム、学習装置、推定装置、推定方法、学習方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反にて、原反のいずれか一方の端面の中心位置が原反の外側にずれる現象が生じる際の中心位置のずれ量を推定する推定システムであり、原反が加工された際の材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、ずれ量の実測値を目的変数とし、加工条件とずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させて生成された予測モデルであり、複数の材料を貼り合わせて原反にする加工工程の加工条件に基づき、ずれ量を出力する予測モデルを記憶する記憶部と、加工条件を取得する取得部と、取得部に取得された加工条件に基づき予測モデルを用いてずれ量を推定する推定部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定する推定システムであって、
前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された予測モデルであって、前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における前記加工条件に基づき、前記ずれ量を出力する前記予測モデルを記憶する記憶部と、
前記加工条件を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、前記予測モデルを用いて前記ずれ量を推定する推定部と、
を備える、推定システム。
【請求項2】
前記予測モデルを生成する学習部、
をさらに備え、
前記推定部は、前記学習部によって機械学習させられた前記予測モデルを用いて前記ずれ量を推定する、
請求項1に記載の推定システム。
【請求項3】
前記加工条件の実測値に対して、前記原反のロット単位で前処理を行う前処理部、
をさらに備え、
前記学習部は、前記前処理が行われた前記加工条件の実測値を前記説明変数として用いる、
請求項2に記載の推定システム。
【請求項4】
前記前処理部は、前記加工条件の実測値に含まれる前記加工工程において前記材料にかかる張力の実測値に対して、任意の区間単位で前記張力の変化率を算出する前記前処理を行い、
前記学習部は、前記変化率を前記説明変数として用いる、
請求項3に記載の推定システム。
【請求項5】
複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象であって、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記中心位置のずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって、予測モデルを生成する学習部、
を備える、学習装置。
【請求項6】
複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定する推定装置であって、
前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における加工条件を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、予測モデルを用いて前記ずれ量を推定する推定部と、
を備え、
前記予測モデルは、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む前記加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された、前記加工条件に基づき前記ずれ量を出力するモデルである、
推定装置。
【請求項7】
複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定する推定方法であって、
記憶部が、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された予測モデルであって、前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における前記加工条件に基づき、前記ずれ量を出力する前記予測モデルを記憶することと、
取得部が、前記加工条件を取得することと、
推定部が、前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、前記予測モデルを用いて前記ずれ量を推定することと、
を含む、推定方法。
【請求項8】
学習部が、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象であって、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記中心位置のずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって、予測モデルを生成すること、
を含む、学習方法。
【請求項9】
複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定する推定方法であって、
取得部が、前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における加工条件を取得することと、
推定部が、前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、予測モデルを用いて前記ずれ量を推定することと、
を含み、
前記予測モデルは、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む前記加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された、前記加工条件に基づき前記ずれ量を出力するモデルである、
推定方法。
【請求項10】
コンピュータを、
複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象であって、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記中心位置のずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって、予測モデルを生成する学習部、
として機能させる、プログラム。
【請求項11】
複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定するためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における加工条件を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、予測モデルを用いて前記ずれ量を推定する推定部と、
として機能させ、
前記予測モデルは、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む前記加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された、前記加工条件に基づき前記ずれ量を出力するモデルである、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定システム、学習装置、推定装置、推定方法、学習方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラミネート加工によって複数のシート状の材料が貼り合わせられた加工物に生じる欠陥を検出するための技術が各種提案されている。例えば、下記特許文献1には、ラミネート加工物の搬送中に、加工物に対して検査光を照射し、検査光の照射された加工物が撮影された撮像画像に基づき、欠陥を検出する技術が開示されている。これにより、ラミネート加工中に生じた欠陥を検出することができる。
【0003】
ところで、ラミネート加工された加工物には、加工後に所定の時間が経過してから欠陥(不良)が生じる場合がある。例えば、加工物には、トンネリングが生じ得る。トンネリングは、ラミネート加工された加工物が部分的に剥がれ、剥がれた部分がトンネル状に浮き上がる現象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-034345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラミネート加工による加工物の生産品質の向上のために、特許文献1の技術のようにラミネート加工中に加工物に生じる不良を検出することは重要である。加えて、生産品質の向上のためには、そもそも不良を生じさせないことも重要である。そこで、加工物に不良が生じないように複数の材料にラミネート加工を行えることが望まれる。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的はラミネート加工された加工物における不良の発生を抑制することが可能な推定システム、学習装置、推定装置、推定方法、学習方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定システムは、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定する推定システムであって、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された予測モデルであって、前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における前記加工条件に基づき、前記ずれ量を出力する前記予測モデルを記憶する記憶部と、前記加工条件を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、前記予測モデルを用いて前記ずれ量を推定する推定部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る学習装置は、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象であって、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記中心位置のずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって、予測モデルを生成する学習部、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る推定装置は、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定する推定装置であって、前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における加工条件を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、予測モデルを用いて前記ずれ量を推定する推定部と、を備え、前記予測モデルは、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む前記加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された、前記加工条件に基づき前記ずれ量を出力するモデルである、推定装置。
【0010】
本発明の一態様に係る推定方法は、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定する推定方法であって、記憶部が、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された予測モデルであって、前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における前記加工条件に基づき、前記ずれ量を出力する前記予測モデルを記憶することと、取得部が、前記加工条件を取得することと、推定部が、前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、前記予測モデルを用いて前記ずれ量を推定することと、を含む。
【0011】
本発明の一態様に係る学習方法は、学習部が、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象であって、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記中心位置のずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって、予測モデルを生成すること、を含む。
【0012】
本発明の一態様に係る推定方法は、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定する推定方法であって、取得部が、前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における加工条件を取得することと、推定部が、前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、予測モデルを用いて前記ずれ量を推定することと、を含み、前記予測モデルは、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む前記加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された、前記加工条件に基づき前記ずれ量を出力するモデルである。
【0013】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象であって、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記中心位置のずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって、予測モデルを生成する学習部、として機能させる。
【0014】
本発明の一態様に係るプログラムは、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、前記原反のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い前記原反の外側にずれる現象が生じる場合の前記中心位置のずれ量を推定するためのプログラムであって、コンピュータを、前記複数の材料を貼り合わせて前記原反に加工する加工工程における加工条件を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記加工条件に基づき、予測モデルを用いて前記ずれ量を推定する推定部と、として機能させ、前記予測モデルは、前記現象が生じた原反が加工された際の前記材料にかかる張力の変化を少なくとも含む前記加工条件の実測値を説明変数、前記現象が生じた原反における前記ずれ量の実測値を目的変数として用い、前記加工条件と前記ずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させることによって生成された、前記加工条件に基づき前記ずれ量を出力するモデルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ラミネート加工された加工物における不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るラミネート装置の構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係るトンネリングの一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る横ずれの一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る推定システムの構成の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る学習装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6】本実施形態に係る前処理の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る推定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図8】本実施形態に係る学習装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】本実施形態に係る推定装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図面には、必要に応じて相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。各軸において、矢印が延びる方向を「正方向」、正方向と逆の方向を「負方向」と称する。
【0018】
<1.ラミネート装置の構成>
ラミネート装置は、複数の材料を貼り合わせて積層させる加工を行う装置である。
図1を参照して、本実施形態に係るラミネート装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るラミネート装置の構成の一例を示す図である。図1に示すように、ラミネート装置10は、基材原反11、ロール12a~12h、接着剤塗工部13、乾燥装置14、貼合材原反15、ラミネート部16、及び加工物原反17を備える。
【0019】
基材原反11は、巻き芯に対して、シート状の基材110(材料の一例)がロール状に巻かれた状態のものである。基材110は、例えば、紙、ポリプロピレンやポリエチレンやポリエステルのような樹脂フィルム、アルミ箔や銅箔のような金属箔、あるいは、これらの樹脂フィルムに金属箔を蒸着させた積層フィルム等である。基材原反11から巻き出された基材110は、ロール12aを介して、接着剤塗工部13へ供給される。
【0020】
接着剤塗工部13は、基材110に接着剤130を塗布する。例えば、接着剤塗工部13は、基材110がロール12b及びロール12cの間を通過する際に、ロール12bを介して基材110に接着剤130を塗布する。接着剤130を塗布された基材110は、ロール12dを介して、乾燥装置14へ供給される。
【0021】
乾燥装置14は、内部を通過する基材110を乾燥する装置である。乾燥装置14は、ロール12dを介して接着剤塗工部13から供給される基材110を乾燥する。乾燥装置14は、ロール12e及びロール12fを介して、乾燥した基材110をラミネート部16へ供給する。
【0022】
貼合材原反15は、巻き芯に対して、シート状の貼合材150(材料の一例)がロール状に巻かれた状態のものである。貼合材150は、例えば、紙、ポリプロピレンやポリエチレンやポリエステルのような樹脂フィルム、アルミ箔や銅箔のような金属箔、あるいは、これらの樹脂フィルムに金属箔を蒸着させた積層フィルム等である。貼合材原反15から巻き出された貼合材150は、ラミネート部16へ供給される。
【0023】
ラミネート部16は、ロール12g及びロール12hで構成され、ロール12g及びロール12hの間を通過する複数の材料同士を貼り合わせる。例えば、ラミネート部16は、乾燥装置14から供給される基材110と、貼合材原反15から供給される貼合材150とを貼り合わせる。基材110と貼合材150とが貼り合わせられたものは、加工物170とも称される。
【0024】
加工物170は、ロール12i(冷却ロール)を介して、巻き芯171に巻き取られる。巻き芯171に対して、シート状の加工物170がロール状に巻かれた状態のものが、加工物原反17である。中心位置CPは、加工物原反17の端面における端面の中心位置を示す。
【0025】
以上のように、ラミネート装置10が、基材110と貼合材150(複数の材料)を貼り合わせて積層させることによって加工物170に加工(ラミネート加工)し、加工物170を巻き取って加工物原反17に加工する加工工程は、ラミネート工程と称される。なお、ラミネート装置10が貼り合わせる材料の数は、基材110と貼合材150の2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0026】
ラミネート加工された加工物170や加工物原反17には、加工後に所定の時間が経過してから欠陥(不良)が生じる場合がある。例えば、加工物170にはトンネリングという不良が生じ、加工物原反17には横ずれ(タケノコ現象)という不良が生じ得る。
トンネリングは、ラミネート加工された加工物170が部分的に剥がれ、剥がれた部分がトンネル状に浮き上がる現象である。トンネリングは、ラミネート加工された複数の材料のそれぞれの収縮率が異なる為にそれぞれの材料の戻りに差が生じ、その歪みによって生じ得る。
横ずれは、加工物原反17のいずれか一方の端面の中心位置が、時間経過に伴い加工物原反17の外側にずれ、タケノコ状に変形する現象である。具体的に、加工物原反17のいずれか一方の端面の中心位置CPが、時間経過に伴い当該加工物原反17の外側にずれる。横ずれは、例えば、所定の温度に保たれた倉庫等の空間内に加工物原反17を所定の時間置くことで接着剤130の硬化を促進するエージングによって生じ得る。また、横ずれは、加工物原反17を常温の空間に置いておくことでも生じ得る。
【0027】
ここで、図2を参照して、トンネリングの一例について説明する。図2は、本実施形態に係るトンネリングの一例を示す図である。図2の左図は、トンネリング発生前の加工物170の状態を示す。図2の右図は、トンネリング発生後の加工物170の状態を示す。
トンネリング発生前では、図2の左図に示すように、基材110と貼合材150とが接着している。しかしながら、トンネリング発生後では、図2の右図の領域A1に示すように、基材110と貼合材150とが部分的に剥がれ、剥がれた部分がトンネル状に浮き上がっている。
【0028】
ここで、図3を参照して、横ずれの一例について説明する。図3は、本実施形態に係る横ずれの一例を示す図である。図3の左図は、横ずれ発生前の加工物原反17の状態を示す。図3の右図は、横ずれ発生後の加工物原反17の状態を示す。
横ずれの発生前では、図3の左図に示すように、加工物原反17の端面の中心位置CPは、端面の位置と同じP1である。
横ずれの発生後では、図3の右図に示すように、横ずれによって巻き芯171が加工物原反17の外側(Z軸の正方向)に移動したことにより、加工物原反17の端面の中心位置CPは、P1からP2へ移動している。なお、中心位置CPの移動後の位置P2と移動前の位置P1との差分が、ずれ量である。
【0029】
加工物原反17に横ずれが生じた場合には、加工物170にトンネリングが生じ得る。そのため、加工物原反17における横ずれの発生を抑制することができれば、加工物170におけるトンネリングの発生も抑制することができる。加工物原反17における横ずれの発生には、加工物170が加工された際の加工条件が影響している。そのため、ユーザは、加工条件と横ずれの対応関係が分かれば、横ずれ発生の要因を特定することができる。横ずれ発生の要因を特定することで、ユーザは、横ずれが発生しないようにラミネート加工における加工条件を調整することができる。これにより、横ずれが発生しなければトンネリングの発生を抑制することができ得る。
そこで、本実施形態の推定システムは、加工物原反17において横ずれが生じる場合の中心位置CPのずれ量を、ラミネート加工する際の加工条件に基づき推定する。ユーザは、推定システムの推定によって加工条件とずれ量の対応関係が分かり、横ずれ発生の要因を特定することができ、加工物原反17に横ずれが発生しないようにラミネート加工の加工条件を調整することができる。これにより、加工物原反17における横ずれの発生が抑制され、加工物170におけるトンネリングの発生も抑制される。
【0030】
<2.推定システムの構成>
図4を参照して、本実施形態に係る推定システムの構成の一例について説明する。図4は、本実施形態に係る推定システムの構成の一例を示す図である。図4に示すように推定システム1は、ラミネート装置10、学習装置20、及び推定装置30を備える。
【0031】
ラミネート装置10は、複数の材料を貼り合わせて積層させる加工を行う装置である。ラミネート装置10は、学習装置20と通信可能に接続されている。ラミネート装置10に設けられたセンサ装置が測定した加工条件の実測値は、学習装置20へ送信される。
【0032】
ラミネート装置10には、複数の材料がラミネート加工されて原反に加工されるまでの加工条件の実測値を測定するためのセンサ装置が設けられている。ラミネート装置10には、複数種類のセンサ装置が設けられてよい。また、ラミネート装置10には、種類ごとに複数個のセンサ装置が設けられ。複数個所におけるそれぞれの加工条件の実測値が測定されてよい。
【0033】
加工条件は、例えば、加工工程において各材料や加工物170にかかる張力(巻き取りテンション)、乾燥装置14にて基材110を乾燥させる温度、各材料や加工物170の表面温度、各材料や加工物170がラミネート装置10内を移動する速度、基材110に塗布される接着剤130の量等である。
【0034】
張力は、例えば、張力センサによって測定される。張力センサは、例えば、ロール12a~12iの各々に設けられ、各ロールを通過する各材料や加工物170にかかる張力を測定する。張力センサによって測定される張力は、例えば、距離の離れたロール間における張力である。距離の離れたロール間は、具体的に、ロール12aとロール12b間、ロール12cとロール12d間、ロール12fとロール12g間、ロール12g(又はロール12h)とロール12i間等である。
温度は、例えば、温度センサによって測定される。温度センサは、例えば、乾燥装置14の入口付近、内部、出口付近等に設けられ、各々の箇所における温度を測定する。なお、温度センサは、各材料や加工物170等の表面温度を測定可能に、ラミネート装置10の任意の箇所に設けられてよい。
速度は、例えば、速度センサによって測定される。速度センサは、各材料や加工物170がラミネート装置10内を移動する速度を測定可能に、ラミネート装置10の任意の箇所に設けられてよい。
基材110に塗布される接着剤130の量は、例えば、重量センサや撮像センサ等によって測定される。重量センサは、例えば、接着剤塗工部13の接着剤130の重量変化を測定可能に設けられ、接着剤130の塗布前後における接着剤130の重量の変化量を塗布量として測定する。撮像センサは、例えば、容器内の接着剤130の表面位置を撮像可能に設けられ、接着剤130の塗布前後における表面位置を撮像する。撮像センサが撮像した撮像画像より、接着剤130の表面位置の変化量から塗布量を算出可能である。
【0035】
学習装置20は、学習モデルに教師あり学習を行わせることにより、予測モデルを生成する。学習装置20は、例えば、クラウド装置、サーバ装置、PC(パーソナルコンピュータ)等のコンピュータ装置である。ここでの予測モデルは、加工条件から加工物原反17に横ずれが生じる際のずれ量を予測するモデルである。学習装置20は、例えば、加工工程において各材料や加工物170にかかる張力の変化を少なくとも含む加工条件の実測値を説明変数、横ずれが生じた加工物原反17におけるずれ量の実測値を目的変数として、学習モデルに教師あり学習を行わせる。加工条件の実測値は、例えば、ラミネート装置10に設けられたセンサ装置が測定する値であり、ラミネート装置10から入力される。ずれ量の実測値は、例えば、ユーザが測定する値であり、ユーザによって入力される。学習装置20は、推定装置30と通信可能に接続されている。
【0036】
推定装置30は、学習装置20により生成された予測モデルを用いて、加工物原反17に横ずれが生じる際のずれ量を予測する。推定装置30は、例えば、クラウド装置、サーバ装置、PC等のコンピュータ装置である。推定装置30は、学習装置20と通信可能に接続されている。
【0037】
<3.学習装置の機能構成>
続いて、図5を参照して、本実施形態に係る学習装置20の機能構成の一例について説明する。図5は、本実施形態に係る学習装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、学習装置20は、通信部21、入力部22、制御部23、及び記憶部24を備える。
【0038】
通信部21は、各種情報の送受信を行う機能を有する。例えば、通信部21は、ラミネート装置10から送信される加工条件を受信する。通信部21は、受信した情報を制御部23へ出力する。また、通信部21は、予測モデルを推定装置30へ送信する。
【0039】
入力部22は、入力を受け付ける機能を有する。入力部22は、受け付けた入力を制御部23へ出力する。入力部22は、例えば、学習装置20がハードウェアとして備えるタッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置等によって実現され得る。入力部22は、例えば、ユーザによるずれ量の実測値の入力を受け付け、制御部23へ出力する。
【0040】
制御部23は、学習装置20の動作全般を制御する機能を有する。制御部23は、例えば、学習装置20がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphic Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図5に示すように、制御部23は、学習情報取得部230、前処理部231、学習部232、及び出力処理部233を備える。
【0041】
学習情報取得部230は、学習情報を取得する。学習情報は、教師あり学習を行う場合において学習に用いられる情報である。学習情報は、例えば、加工条件の実測値、ずれ量の実測値である。学習情報取得部230は、通信部21から入力される加工条件の実測値と入力部22から入力されるずれ量の実測値を学習情報として取得し、取得した学習情報を前処理部231へ出力する。
【0042】
前処理部231は、教師あり学習を行うための事前の処理(前処理)を行う。具体的に、前処理部231は、学習用のデータセットを生成する。学習用のデータセットは、説明変数と目的変数の組合せである。前処理部231は、加工条件の実測値を説明変数とする。前処理部231は、説明変数に対応するずれ量の実測値を目的変数とする。前処理部231は、説明変数と目的変数とを組み合わせることにより学習用のデータセットを生成する。なお、前処理部231は、加工物原反17のロット単位に前処理を行う。
【0043】
また、前処理部231は、加工条件の実測値を加工し、加工後の情報を説明変数とする。前処理におけるデータ集約の一般的な方法では、平均、最大値、最小値、分散値等を算出する。一般的な方法では、集約したデータにデータの特徴(データの価値)を反映することができず、要因分析に必要な機械学習モデルの性能を得ることができない場合がある。そこで、本実施形態の前処理では、データの任意の区間の変化率(傾き)を算出することにより、データを集約してもデータの特徴が失われないようにする。これにより、要因分析に必要な機械学習モデルの性能を得ることができる。また、ユーザは、当該前処理によって算出される変化率が何を示しているかを理解することが容易である。そのため、ユーザは、分析結果をもとにアクションを取る際の判断を迅速に行うことができる。
【0044】
具体的に、前処理部231は、ラミネート装置10に設けられたすべてのセンサ装置が測定する実測値の平均値を、センサ装置の種類ごとかつロット単位で算出する。前処理部231は、算出した平均値を実測値の代わりとして説明変数に含める。
【0045】
なお、前処理部231は、特定の実測値に対して、平均値の算出以外の前処理を行う場合もある。
例えば、前処理部231は、加工条件の実測値に含まれる加工工程において各材料や加工物170にかかる張力の実測値に対して、分散値をロット単位で算出する前処理を行う。そして、前処理部231は、算出した分散値を張力の実測値の代わりとして説明変数に含める。
また、前処理部231は、加工条件の実測値に含まれる加工工程において各材料や加工物170にかかる張力の実測値に対して、任意の区間単位で張力の変化率をロット単位で算出する前処理を行う。本実施形態における任意の区間は、例えば、所定の巻き取り長さ単位で区切られる区間である。巻き取り長さは、例えば、加工物原反17が巻き取る長さである。巻き取り長さの単位は、例えば、メートル(m)である。なお、任意の区間は、所定の巻き出し長さ単位で区切られる区間であってもよいし、所定の時間単位で区切られる区間であってもよい。
具体的に、前処理部231は、張力の実測値の時系列変化に基づき、張力の変化率を算出する。そして、前処理部231は、算出した張力の変化率を張力の実測値の代わりとして説明変数に含める。
また、前処理部231は、乾燥装置14にて基材110を乾燥させる温度の実測値に対して、最大値及び最小値をロット単位で算出する前処理を行う。そして、前処理部231は、算出した温度の最大値及び最大値を温度の実測値の代わりとして説明変数に含める。
【0046】
また、前処理部231は、加工条件の実測値に含まれる加工工程において各材料や加工物170にかかる張力の実測値と、加工物原反17の半径の実測値とに対して、各実測値の相関関係を示す相関係数を算出する前処理を行ってもよい。前処理部231は、算出した相関係数を説明変数に含めてもよい。
加工物を巻き取る際に加工物にかかる張力は、一般的に、巻き取り半径(即ち加工物原反17の半径)の増加に伴い弱まるように設定される。加工物原反17の半径は、時間経過と共に大きくなる。そのため、各材料や加工物170にかかる張力の実測値と、加工物原反17の半径の実測値との間には、逆相関の関係がある。なお、加工物原反17の半径は、中心位置CPを基準とする。
【0047】
ここで、図6を参照して、前処理部231が行う前処理の一例について説明する。図6は、本実施形態に係る前処理の一例を示す図である。図6に示すグラフは、加工工程において各材料や加工物170にかかる張力の実測値の時系列変化を示している。図6に示すグラフの横軸は時刻t、縦軸は張力xを示している。
前処理部231は、例えば、時刻tから時刻tの区間(所定の巻き取り長さ単位で区切られた区間)における傾きを変化率として算出する。具体的に、前処理部は、下記の式(1)によって傾きを算出する。
傾き=(x-x)/(t-t) (1)
【0048】
なお、図6には、前処理部231が1つの区間における傾きを算出する例を示したが、かかる例に限定されない。例えば、前処理部231は、グラフを所定の巻き取り長さ単位で複数の区間に分割し、分割した各区間の傾きを算出してもよい。
【0049】
学習部232は、学習用のデータセットを用いて学習モデルに教師あり学習を行うことにより、予測モデルを生成する。例えば、学習部232は、横ずれが生じた加工物原反17が加工された際の加工条件の実測値を説明変数、横ずれが生じた加工物原反17におけるずれ量の実測値を目的変数とするデータセットを用い、加工条件とずれ量との対応関係を学習モデルに機械学習させる。これにより、学習部232は、予測モデルを生成する。ここでの学習モデルは、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)等による深層学習(ディープラーニング)のモデルである。以下では、学習モデルがCNNである場合を例に説明するが、これに限定されることはない。学習モデルは、DCNN(Deep CNN)、決定木、階層ベイズ、SVM(Support Vector Machine)など、既存の機械学習に適用されるモデルが用いられてよい。
【0050】
学習用のデータセットにおける説明変数を、学習モデルに入力させる。学習部232は、説明変数を入力することにより得られる学習モデルの出力(ずれ量の予測値)が、説明変数に対応する目的変数(ずれ量の実測値)に近づくように、誤差逆伝搬法などの手法を用いて、学習モデルのパラメータを調整する。学習部232は、用意した学習用のデータセットのそれぞれについて、説明変数を入力することにより得られる学習モデルの出力が、目的変数に近づくように、学習モデルのパラメータを調整することによって、学習モデルに教師あり学習を行う。学習部232は、所定の終了条件を満たしたと判定される場合に、学習モデルの学習を終了させる。所定の終了条件は、例えば、学習回数が所定回数に達した、或いは予測値の誤差が所定の閾値以下となった等の条件である。学習部232は、学習を終了させた際の学習モデルを、予測モデルとする。学習部232は、学習を終了させた際の学習モデル(予測モデル)に設定されていたパラメータを、予測モデル情報240に記憶させる。ここでのパラメータは、予測モデルを生成するための変数であって、例えば、CNNの入力層、中間層、出力層の各層のユニット数、隠れ層の層数、活性化関数などを示す情報や、各階層のノードを結合する結合係数や重みを示す情報である。
【0051】
出力処理部233は、学習装置20における出力を制御する。出力処理部233は、例えば、学習部232により生成された予測モデルに関する情報を、通信部21を介して推定装置30へ送信する。
【0052】
記憶部24は、学習装置20がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
記憶部24は、例えば、予測モデル情報240を記憶する。予測モデル情報240は、学習装置20により生成された予測モデルを示す情報である。
【0053】
<4.推定装置の機能構成>
図7は、本実施形態に係る推定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、推定装置30は、通信部31、入力部32、制御部33、記憶部34、及び出力部35を備える。
【0054】
通信部31は、各種情報の送受信を行う機能を有する。例えば、通信部31は、学習装置20から送信される予測モデル情報を受信する。通信部31は、受信した情報を制御部33へ出力する。
【0055】
入力部32は、入力を受け付ける機能を有する。入力部32は、受け付けた入力を制御部33へ出力する。入力部32は、例えば、推定装置30がハードウェアとして備えるタッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置等によって実現され得る。入力部32は、例えば、ユーザによる加工条件の入力を受け付け、制御部33へ出力する。
【0056】
制御部33は、推定装置30の動作全般を制御する機能を有する。制御部33は、例えば、推定装置30がハードウェアとして備えるCPUにプログラムを実行させることによって実現される。
図7に示すように、制御部33は、入力情報取得部330(取得部)、前処理部331、推定部332、及び出力処理部333を備える。
【0057】
入力情報取得部330は、予測モデルに入力する情報を取得する。例えば、入力情報取得部330は、入力部32に入力された加工条件を取得する。入力情報取得部330は、取得した加工条件を前処理部331に出力する。
【0058】
前処理部331は、予測モデルを用いた予測を行うための事前の処理(前処理)を行う。具体的に、前処理部331は、入力情報取得部330から入力される加工条件に対して、前処理を行い、入力データを生成する。入力データは、予測を行う場合に予測モデルに入力させるデータである。前処理部331が行う前処理は、上述した学習装置20の前処理部231が実行する前処理と同様のため、その具体的な説明を省略する。
【0059】
推定部332は、予測モデルを用いて、ずれ量を推定する。推定部332は、入力情報取得部に330によって取得された加工条件に基づき、予測モデルを用いてずれ量を推定する。推定部332は、記憶部34を参照して予測モデル情報340を取得し、取得した情報に基づいて予測モデルを構築する。推定部332は、構築した予測モデルに、前処理部331により生成された入力データを入力させる。推定部332は、予測モデルに入力データを入力させることにより、予測モデルから得られる出力を取得する。ここで予測モデルから出力される情報は、入力データが示す加工条件で加工された加工物原反17に生じ得るずれ量である。推定部332は、予測モデルから出力されるずれ量を、入力データが示す加工条件で加工された加工物原反17に生じ得るずれ量と推定する。
【0060】
出力処理部333は、推定装置30における出力を制御する。出力処理部333は、例えば、推定部332により推定されたずれ量を出力部35に出力する。また、出力処理部333は、推定部332によって推定されたずれ量と関連性の高いデータを出力部35に出力してもよい。関連性の高いデータとして出力(算出)されるデータは、例えば、説明変数として用いられたデータの内の少なくともいずれかである。本実施形態では、説明変数として加工条件が用いられる。そのため、関連性の高いデータとして出力される具体的なデータは、各材料や加工物170にかかる張力、基材110を乾燥させる温度、各材料や加工物170の表面温度、各材料や加工物170がラミネート装置10内を移動する速度、基材110に塗布される接着剤130の量等の内の少なくともいずれかのデータである。
【0061】
記憶部34は、推定装置30がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、RAM、ROM、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
記憶部34は、例えば、予測モデル情報340を記憶する。予測モデル情報340は、学習装置20により生成された予測モデルを示す情報であり、予測モデル情報240と同様の情報である。
【0062】
出力部35は、各種情報を表示する機能を有する。例えば、出力部35は、出力処理部333から入力されるずれ量を出力する。出力部35は、例えば、推定装置30がハードウェアとして備えるディスプレイによって実現される。
【0063】
<5.処理の流れ>
(学習装置が行う処理の流れ)
図8を参照して、本実施形態に係る学習装置20が行う処理の流れの一例について説明する。図8は、本実施形態に係る学習装置20が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0064】
図8に示すように、まず、学習装置20は、説明変数と、目的変数とを取得する(S100)。具体的には、学習装置20は、加工条件の実測値を説明変数として取得する。また、学習装置20は、ずれ量の実測値を目的変数として取得する。
学習装置20は、取得した説明変数に対して前処理を行う(S101)。
学習装置20は、前処理後の説明変数と、目的変数とを組み合わせることにより、学習用のデータセットを生成する(S102)。
【0065】
学習装置20は、学習モデルに、学習用のデータセットのうちの説明変数を入力する(S103)。
学習装置20は、学習モデルから得られた出力と、データセットのうちの目的変数との差分が小さくなるように、学習モデルのパラメータを調整する(S104)。
学習装置20は、予め定められた学習の終了条件を満たしているか否かを判定する(S105)。学習の終了条件を満たす場合(S105/YES)、学習装置20は、その時点における学習モデルを予測モデルとして確定させ、モデルに設定されたパラメータ値などを予測モデル情報240として、記憶させる(S106)。一方、学習の終了条件を満足していない場合(S105/NO)、学習装置20は、S103に戻り、学習を繰り返す。
【0066】
(推定装置が行う処理の流れ)
図9を参照して、本実施形態に係る推定装置30が行う処理の流れの一例について説明する。図9は、本実施形態に係る推定装置30が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
図9に示すように、まず、推定装置30は、入力情報を取得する(S200)。具体的に、推定装置30は、加工条件を説明変数として取得する。
推定装置30は、取得した入力情報に対して前処理を行う(S201)。
【0068】
推定装置30は、予測モデルに、入力情報が前処理された入力データを予測モデルに入力する(S202)。
推定装置30は、予測モデルから出力されるずれ量を、横ずれが生じる加工物原反17におけるずれ量と推定する(S203)。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る推定システム1は、複数の材料が貼り合わせられたシート状の加工物がロール状に巻かれた原反において、横ずれが生じる場合の中心位置のずれ量を推定するシステムである。推定システム1は、複数の材料を貼り合わせて原反に加工する加工工程における加工条件に基づき、ずれ量を出力する予測モデルを記憶する。また、推定システム1は、加工条件を取得し、取得した加工条件に基づき、予測モデルを用いてずれ量を推定する。
【0070】
かかる構成により、ユーザは、横ずれが生じる場合(ずれ量≠0の場合)の加工条件や、横ずれが生じない場合(ずれ量=0の場合)の加工条件を容易に把握することができる。ユーザは、把握した各加工条件に基づき、横ずれが生じない場合の加工条件をラミネート装置に設定する。これにより、ラミネート装置は、横ずれが生じず、横ずれによるトンネリングも生じない加工物を加工することができる。
【0071】
よって、本実施形態に係る推定システム1は、ラミネート加工された加工物における不良の発生を抑制することを可能とする。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、上述の実施形態では、予測モデルを生成する機能を有する学習装置20と、予測モデルを用いた推定を行う機能を有する推定装置30とがそれぞれ独立している例について説明したが、係る例に限定されない。例えば、学習装置20の機能と推定装置30の機能は、両機能を有する1つの装置によって実現されてもよい。また、学習装置20が推定装置30の機能を有してもよいし、推定装置30が学習装置20の機能を有してもよい。
【0073】
なお、上述した実施形態における学習装置20及び推定装置30の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0074】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 推定システム
10 ラミネート装置
11 基材原反
12a~12i ロール
13 接着剤塗工部
14 乾燥装置
15 貼合材原反
16 ラミネート部
17 加工物原反
20 学習装置
21 通信部
22 入力部
23 制御部
24 記憶部
30 推定装置
31 通信部
32 入力部
33 制御部
34 記憶部
35 出力部
110 基材
130 接着剤
150 貼合材
170 加工物
171 巻き芯
230 学習情報取得部
231 前処理部
232 学習部
240 予測モデル情報
330 入力情報取得部
331 前処理部
332 推定部
333 出力処理部
340 予測モデル情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9