(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079986
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】生分解性ヒートシール用樹脂組成物、及びそれを用いた生分解性包装用フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20220520BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20220520BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
C08L67/02 ZBP
C08L101/16
C08K3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190902
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山谷 幸平
(72)【発明者】
【氏名】田中 一作
(72)【発明者】
【氏名】松田 博行
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002CF051
4J002CF182
4J002DE136
4J002FD096
4J200AA04
4J200BA14
4J200BA19
4J200CA01
4J200EA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フィルム化してヒートシールした場合に、高いシール強度を発揮し、高温環境下においても経時変化が少なく、好適なシール条件が変化し難い樹脂組成物であって、比較的低温でシールした場合であっても、高いシール強度と優れたシール伸びを示す樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸(A)と、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)と、必要に応じ配合された酸化チタン(C)とからなる生分解性ヒートシール用樹脂組成物であって、当該樹脂組成物中に、ポリ乳酸(A)と脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)が、ポリ乳酸(A):脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)=1.0~20.0重量%:99.0~80.0重量%の割合で配合されていることを特徴とする生分解性ヒートシール用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(A)と、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)と、必要に応じ配合された酸化チタン(C)とからなる生分解性ヒートシール用樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物中に、ポリ乳酸(A)と脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)が、ポリ乳酸(A):脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)=1.0~20.0重量%:99.0~80.0重量%の割合で配合されていることを特徴とする生分解性ヒートシール用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリ乳酸(A)と前記脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)の合計100.0重量部に対して、前記酸化チタン(C)を30.0重量部以下配合してなる請求項1記載の生分解性ヒートシール用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の樹脂組成物から成ることを特徴とする生分解性包装用フィルム。
【請求項4】
少なくとも最内層が請求項1又は2記載の樹脂組成物から成ることを特徴とする生分解性包装用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたヒートシール特性を有する生分解性ヒートシール用樹脂組成物に関する。詳しくは微生物等の働きにより分解する樹脂組成物であって、フィルム化してヒートシールした場合に、高いシール強度を発揮し、更にシール部分の耐衝撃性も良好である樹脂組成物に関する。また該樹脂組成物を用いた生分解性包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック製品が自然環境中に廃棄された場合に生態系へ悪影響を与えることが懸念されている。そして微生物等により、自然環境に悪影響を与えない低分子量化合物や自然的副産物(炭酸ガス、メタン、水、バイオマス等)に分解される生分解性樹脂が注目されている。特に、使い捨てを前提とした包装用フィルムにおいては、生分解性樹脂への置き換えが進んでいる。
【0003】
特許文献1は包装シートに関する発明で、生分解性樹脂フィルムと、この生分解性樹脂フィルムの片面に形成されたケイ素酸化物層とを具備することを特徴とする。該発明において生分解性樹脂フィルムは、脂肪酸ポリエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリエステルアミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシブチレート・バリレート共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体、アセチルセルロース、酢酸セルロース、変性芳香族ポリエステル及びアセチルセルロースからなる群から選ばれる樹脂あるいは樹脂同士を混合した樹脂組成物からなることが開示されている。しかしながら実施例において、具体的に開示されているのは、ポリ乳酸樹脂フィルム、変性芳香族ポリエステルフィルム、ポリブチレンサクシネート樹脂フィルム、ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体のみであり、生分解性樹脂のブレンドについては詳説されていない。
【0004】
特許文献2は、室温での生分解速度が高く、成形性、耐衝撃性などの機械的特性や耐熱性などの特性に優れ、シートや容器とした際の水蒸気/酸素バリア性を併せ持つ成形体を提供することを目的とする発明である。特許文献2では、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂組成物であって、該ポリヒドロキシアルカノエート(B)が3-ヒドロキシブチレート単位及び3-ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含有する共重合体であって、該脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と該ポリヒドロキシアルカノエート(B)の質量比が40/60~10/90であり、該脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と該ポリヒドロキシアルカノエート(B)と該無機フィラー(C)の合計量に対する該無機フィラー(C)の存在割合が15~50質量%である脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を成形してなるシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-36422号公報
【特許文献2】特開2019-178206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
包装用フィルムの多くは、包装に際してヒートシールされるが、生分解性樹脂の多くはヒートシール適性に乏しいという問題があった。例えば特許文献2に開示されているシートは、3-ヒドロキシブチレート単位及び3-ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含有する共重合体を主成分とするが、該樹脂組成物からなるシートは経時により剛性が高まる。その為、製膜後、長期間保管したものを重ね合わせてヒートシールする際には、製膜直後のフィルムをヒートシールする場合よりも、ヒートシール温度を高温側にシフトする必要があった。また長期間保管後のフィルムをヒートシールすると、ヒートシール強度が低下する、ヒートシール部分が硬くなり伸びにくくなる等の問題があった。ヒートシール部分が硬く伸びにくいと、衝撃が加わった際に、シール部分が裂けたり、開いたりしやすい。
本発明は、優れたヒートシール特性を有する生分解性ヒートシール用樹脂組成物の提供を課題とする。詳しくは、高温環境下においても経時変化が少なく、好適なシール条件が変化し難い樹脂組成物であって、比較的低温でシールした場合であっても、高いシール強度と優れたシール伸びを示す樹脂組成物の提供を課題とする。また該樹脂組成物を用いた生分解性包装用フィルムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、比較的柔軟な生分解性樹脂(脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂)を主成分とし、これにポリ乳酸を副成分として特定量配合することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明によると上記課題を解決するための手段として以下の[1]~[4]が提供される。
[1]ポリ乳酸(A)と、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)と、必要に応じ配合された酸化チタン(C)とからなる生分解性ヒートシール用樹脂組成物であって、当該樹脂組成物中に、ポリ乳酸(A)と脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)が、ポリ乳酸(A):脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)=1.0~20.0重量%:99.0~80.0重量%の割合で配合されていることを特徴とする生分解性ヒートシール用樹脂組成物。
[2]前記ポリ乳酸(A)と前記脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)の合計100.0重量部に対して、前記酸化チタン(C)を30.0重量部以下配合してなる[1]記載の生分解性ヒートシール用樹脂組成物。
【0009】
[3][1]又は[2]記載の樹脂組成物から成ることを特徴とする生分解性包装用フィルム。
[4]少なくとも最内層が[1]又は[2]記載の樹脂組成物から成ることを特徴とする生分解性包装用フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生分解性ヒートシール用樹脂組成物は、生分解性樹脂から成るにもかかわらず優れたヒートシール性を備える。即ち、高温環境下においても経時変化が少なく、フィルム状に製膜した直後であっても、長期間保存した後であっても、好適なシール条件が大きく変化しない。その為、物品を包装する現場において、フィルムの保管状態に合わせてシール条件を見直す必要がない。また長期間保管した後のフィルムを比較的低温でヒートシールした場合であっても、高いシール強度と優れたシール伸びを示し、シール部分の耐衝撃性が低下し難い。特に、酸化チタンが配合されていると、ヒートシール特性を低下させることなく、樹脂組成物を着色することができる。
本発明の樹脂組成物からなる生分解性包装用フィルムは、優れたヒートシール性と生分解性を兼備する。尚、包装用フィルムを多層化し、本発明の樹脂組成物を少なくとも最内層に用いることにより、包装用フィルムに新たな機能を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1のフィルムのシール強度を示すグラフである。
【
図2】実施例1のフィルムのシール伸びを示すグラフである。
【
図3】比較例1のフィルムのシール強度を示すグラフである。
【
図4】比較例1のフィルムのシール伸びを示すグラフである。
【
図5】比較例2のフィルムのシール強度を示すグラフである。
【
図6】比較例2のフィルムのシール伸びを示すグラフである。
【
図7】実施例2のフィルムのシール強度を示すグラフである。
【
図8】実施例2のフィルムのシール伸びを示すグラフである。
【
図9】実施例3のフィルムのシール強度を示すグラフである。
【
図10】実施例3のフィルムのシール伸びを示すグラフである。
【
図11】実施例4のフィルムのシール強度を示すグラフである。
【
図12】実施例4のフィルムのシール伸びを示すグラフである。
【
図13】実施例5のフィルムのシール強度を示すグラフである。
【
図14】実施例5のフィルムのシール伸びを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではなく、同様の効果を奏する範囲において種々の実施形態をとることができる。
本発明の生分解性ヒートシール用樹脂組成物(以下、必要に応じ「樹脂組成物」と略称する)は、ポリ乳酸(A)と、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)と、必要に応じ配合された酸化チタン(C)とからなる。
【0013】
[ポリ乳酸(A)]
ポリ乳酸(以下、必要に応じ「PLA」と略称する)は、乳酸がエステル結合によって重合した樹脂で、環境中の水分により加水分解され低分子化し、微生物などにより最終的には二酸化炭素と水にまで分解される。PLAは、例えばトウモロコシやジャガイモ等に含まれるでんぷんを発酵することにより乳酸を製造し、これを重合することにより得られる。PLAは100%バイオマス原料からなる樹脂がすでに上市されており、該樹脂を用いることでバイオマス度の高い樹脂組成物を得ることができる。
【0014】
本発明に用いられるPLAは、樹脂の性質を損なわない範囲で、他のヒドロキシカルボン酸を共重合してもよく、また少量の鎖延長剤残基を含んでいてもよい。他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L-乳酸に対してはD-乳酸、D-乳酸に対してはL-乳酸)、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-メチル乳酸、2-ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸類、およびカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。このような他のヒドロキシカルボン酸単位は、PLA中15モル%未満で使用するのがよい。
【0015】
[脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)]
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(以下、必要に応じ「PBAT」と略称する)は、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とジオールとを縮合重合して得られるポリエステルである。微生物と酵素の働きによって最終的に水と二酸化炭素にまで分解される。
【0016】
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。中でも、生分解性を考慮すると、コハク酸またはアジピン酸が好ましい。また芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でも、重合性の面から、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。また、芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されている芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジオール成分としては脂肪族ジオールが好適に用いられ、特にエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。中でも、生分解性を考慮すると、炭素数2以上4以下のジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールがより好ましく、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。なお、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分および芳香族ジカルボン酸成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
PBATとして、アジピン酸とテレフタル酸と1,4-ブタンジオールの縮合重合物を主成分とするBASF社製「エコフレックス」(登録商標)などを利用することができる。
【0017】
本発明の樹脂組成物におけるPLA(A)とPBAT(B)の配合割合は、PLA(A):PBAT(B)=1.0~20.0重量%:99.0~80.0重量%であることが好ましく、特に2.5~17.5重量%:97.5~82.5重量%であることが好ましい。該樹脂組成物におけるPLAの配合割合が1.0重量%を下回ると、剛性がなく、フィルムが伸びすぎるという問題がある。またシートシール時に、樹脂がシール刃から剥がれ難くなり、ショット数(単位時間当たりのシール回数)が上がらないという問題がある。また20.0重量%を超えると、シール部分が硬くなり、シール部分の耐衝撃性が低下する。
尚、BASF社製「エコバイオ」(登録商標)は、PLAとPBATを含むため、当該樹脂を利用し、更にPLAとPBATの配合割合が上記範囲となるように、PLA及び/又はPBATを追加して使用することもできる。
【0018】
[酸化チタン(C)]
本発明の樹脂組成物を着色する場合は、酸化チタン(C)を用いることが望ましい。酸化チタン(C)は、本発明の樹脂組成物が持つヒートシール特性を低下させることなく、樹脂組成物を着色することができる。
酸化チタン(C)の配合量は、ポリ乳酸(A)と脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)の合計100.0重量部に対して、30.0重量部以下であることが望ましく、特に0.1重量部以上30.0重量部以下であることが望ましく、中でも2重量部以上25重量部以下であることが好ましい。酸化チタン(C)の配合量が、0.1重量部未満では着色の効果に乏しく、30.0重量部を超えると、フィルムが伸びにくくなる、シール部分が切れやすい、コストアップする等の問題がある。
【0019】
[添加剤]
本発明の樹脂組成物には、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、界面活性剤、ブロッキング防止剤、改質用樹脂などを、本発明の効果を妨げない範囲において、使用することができる。また本発明の目的を損なわない範囲で、ポリカプロラクトン系樹脂やポリヒドロキシブチレート等の生分解性樹脂や、5重量%以下の非生分解性樹脂等を添加することができる。
【0020】
また、PLAとPBATとの相溶性を改善する目的で、相溶化剤を添加することが望ましい。相溶化剤としてはカルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸及び特に、スチレン、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをベースとするエポキシ基含有コポリマーである。そのエポキシ基を有する単位は、好ましくはグリシジル(メタ)アクリラートである。前記のタイプのエポキシ基含有コポリマーは、例えばBASF ResinsB.V.から銘柄Joncryl(登録商標) ADRで販売されている。相溶化剤として特に適しているのは、例えばJoncryl(登録商標) ADR 4368である。相溶化剤の添加量は特に限定されるものではないが、例えば、PLAとPBATの合計100重量部に対し0.01~2.00重量部添加するとよい。
【0021】
[生分解性包装用フィルム]
本発明の生分解性包装用フィルム(以下、必要に応じ「包装用フィルム」と略称する。)は、上述した樹脂組成物を、例えばインフレーション製膜法やTダイ製膜法などを用いてフィルム状に製膜することにより製造することができる。また、インフレーション共押出製膜法やTダイ共押出製膜法等を用い、多層フィルムとすることもできる。この場合、フィルムのヒートシール性を担保するために、少なくともフィルムの最内層は本発明の樹脂組成物から成形する必要がある。好ましくはすべての層が本発明の樹脂組成物から成る。PBATとPLAの配合割合が層によって若干異なったり、適宜配合される着色顔料などの添加剤の種類や量が層によって若干異なったりしてもよいが、PLAとPBATの配合割合は、すべての層において本発明の樹脂組成物の範囲内であることが望ましい。
【0022】
本発明の包装用フィルムに、少量のカーボンブラックを配合することにより、包装用フィルムの遮光性・隠蔽性を高めることができる。カーボンブラックの配合量は、ポリ乳酸(A)と脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)の合計100.0重量部に対して、0.1重量部以上1.0重量部以下であることが望ましい。カーボンブラックの配合量が、0.1重量部未満では遮光性・隠蔽性の効果に乏しく、1.0重量部を超えると、コストアップする等の問題がある。
本発明の包装用フィルムにカーボンブラックを添加する場合は、フィルムを多層化し、最外層以外の層に配合することが望ましい。最外層に配合すると、フィルムの外観が灰色もしくは黒色になる為、その上に印刷を施しても所望の色合いを発色させることが難しくなる。
【実施例0023】
以下、実施例、比較例に基づき、本発明の樹脂組成物からなる包装用フィルムの性能を確認する。尚、実施例、比較例で得られた包装用フィルムの性能は以下の方法により評価する。
【0024】
<シール強度>
包装用フィルムを二枚用意し、これらを重ね合わせて、上下からアルミ製のシールバーを当てて、二枚の包装用フィルムをヒートシールする。尚、シールバーの温度は上のシールバーのみ110℃に加熱し、下のシールバーは加熱しない。シール圧力は面圧98KPa、シール時間は0.7秒、シールバー幅は10mmとする。次いで、シールされたフィルムをシール部分の長さが15mmになるようにカットし、試験片を作製する。該試験片を用い、JIS Z1711-1994に準拠して、T型剥離試験を行い、シール強度を測定する。T型剥離試験は、引張試験機にてチャック間距離40mm、クロスヘッドスピードは500mm/minにて行う。
次いで、シール温度を120℃、130℃、140℃、150℃、160℃に変化させ、T型剥離試験にてシール強度を測定する。またフィルムを60℃環境下(以下、加温促進条件)で14日間保管後、上述した条件でヒートシールを行い、シール強度を測定する。
シール強度は、14日保管した後においても、8N/15mmを超えることが好ましく、10N/15mmを超えることが特に好ましい。シール強度が8N/15mmを超えたものは〇、10N/15mmを超えたものは◎、8N/15mm未満のものは×と評価する。
【0025】
<シール伸び>
上述したシール強度の測定の際の測定開始時のチャック間距離をA、シール部分が剥離した時のチャック間距離をBとし、下記式1によりシール伸びを求める。
式1:(B-A)/A ×100
シール伸びは、14日保管した後においても、100%を超えることが、シール部分の耐衝撃性の面から望ましい。シール伸びが100%を超えたものは〇、100%未満のものは×と評価する。
【0026】
シール強度、シール伸びのグラフを
図1~
図14に示すが、各データにおいて、破線は製膜直後のフィルム、実線は14日保管後のフィルムの値である。
【0027】
<低温シール性>
シール強度が8N/15mmを超え、更にシール伸びが100%を超える包装用フィルムについて、シール温度を確認し、最も低いシール温度を低温シール性の値とする。低温でシールした場合においても、シール強度が8N/15mmを超え、更にシール伸びが100%を超える包装用フィルムは、低温シール性に優れる。よって、包装速度を上げることができ、また包装に要する消費電力を削減することができる。また低温シール性が、製膜直後と14日間保管後において大きく変化しないものは、シール条件が経時変化し難いため、現場でシール条件を調製する工程を簡略化することができる。
【0028】
[実施例1]
PBAT87.5重量%と、PLA12.5重量%とをブレンドし、本発明の樹脂組成物を得た。これをインフレーション押出製膜法を用いて、厚さ65μmの単層の包装用フィルムを得た。該フィルムのシール強度を
図1に、シール伸びを
図2に示す。また該包装用フィルムの最大シール強度、最大シール伸び、低温シール性を表1に記す。
[比較例1、2]
PBAT、PLAの配合割合を表1に記すように変化させた以外は、実施例1と同様にして比較の為の樹脂組成物を作成し、該樹脂組成物を用いて単層のフィルムを製造した。各フィルムの最大シール強度、最大シール伸び、低温シール性を表1に記す。また比較例1のフィルムのシール強度を
図3に、シール伸びを
図4に記す。更に比較例2のフィルムのシール強度を
図5に、シール伸びを
図6に記す。
【0029】
【0030】
実施例1の包装用フィルムは、製膜直後でも、加温促進条件で14日間保管後でも、130℃でシールした部分が、シール強度10.0N/15mmを超え(
図1参照)、シール伸び100%を超えた(
図2参照)。一方、比較例1のフィルムは、製膜直後はシール温度130℃でもシール強度、シール伸び共に良好であったが、フィルムの経時変化が大きく、14日経過後のフィルムは、シール温度を140℃まで上げなければ、シール強度が満足できるものとはならなかった(
図3参照)。またシール伸びはシール温度に関わらず100%を超えることはなかった(
図4参照)。比較例2のフィルムは、加温促進条件で14日保管すると、シール温度を160℃まで上げてもシール強度が8N/15mmを超えることはなかった(
図5参照)。またシール伸びは、製膜直後でも、加温促進条件で14日間保管後でも、シール温度に関わらず100%を超えることがなかった(
図6参照)。
【0031】
[実施例2~4]
PBAT、PLAの配合割合を表2に記すように変化させ、白色に着色する為に酸化チタン又は炭酸カルシウムを入れた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を作成し、該樹脂組成物を用いて単層のフィルムを製造した。尚、表2における白色顔料の配合量(重量部)はPBATとPLAの合計量100重量部に対する割合である。
各包装用フィルムの最大シール強度、最大シール伸び、低温シール性を表2に併せて記す。また実施例2のフィルムのシール強度を
図7に、シール伸びを
図8に記す。更に実施例3の包装用フィルムのシール強度を
図9に、シール伸びを
図10に、実施例4の包装用フィルムのシール強度を
図11に、シール伸びを
図12に記す。
【0032】
【0033】
白色顔料として酸化チタンを用いた実施例2、実施例3のフィルムは、低温シール性に優れていた。特に酸化チタンを25.0重量部配合した実施例2のフィルムは、低温シール性が非常に良好であった。一方、炭酸カルシウムを用いた実施例4のフィルムは、促進条件にて14日間保管することにより、好適なシール条件が130℃から150℃に変化した。よって、フィルムの保管期間が長くなると、包装する際にシール条件を見直す必要が生じる。
【0034】
[実施例5]
インフレーション共押出法を用いて、内層と外層の二層の包装用フィルムを得た。各層の樹脂組成物は以下のとおりである。得られたフィルムの厚さは65μm、厚さ割合は、外層:内層=8:2であった。
(外層)PBAT82.7重量%、PLA17.3重量%に、酸化チタン5.76重量部(PBAT+PLA100重量部に対する割合)を加えた樹脂組成物。
(内層)PBAT82.8重量%、PLA17.7重量%に、酸化チタン5.74重量部、カーボンブラック0.34重量部(重量部はいずれも、PBAT+PLA100重量部に対する割合)を加えた樹脂組成物。
該包装用フィルムの最大シール強度、最大シール伸び、低温シール性を表2に併せて記す。該フィルムのシール強度を
図13に、シール伸びを
図14に示す。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、包装用フィルムの最内層に用いることにより、多層フィルムの場合でも良好なシール適性を奏することが確認できた。また実施例5のフィルムは内層にカーボンブラックが配合されており、外観は白色であるにもかかわらず、遮光性・隠蔽性に優れていた。