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特開2022-80042カレンダー成形用樹脂組成物及び該樹脂組成物からなるフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080042
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】カレンダー成形用樹脂組成物及び該樹脂組成物からなるフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 35/04 20060101AFI20220520BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20220520BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20220520BHJP
   C08L 27/22 20060101ALI20220520BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220520BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
C08L35/04
C08L71/02
C08L51/04
C08L27/22
C08J5/18 CEY
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190986
(22)【出願日】2020-11-17
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
(71)【出願人】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】川口 祐二
(72)【発明者】
【氏名】広沢 栄人
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA33X
4F071AA51
4F071AA77X
4F071AA81
4F071AF15
4F071AF20Y
4F071AF21
4F071AH03
4F071AH11
4F071BB04
4F071BC01
4F071BC12
4F100AK04B
4F100AK18A
4F100AK25A
4F100AK29A
4F100AK54A
4F100AL01A
4F100AL06A
4F100AR00C
4F100AT00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100CA04B
4F100CA05B
4F100CA19B
4F100GB07
4F100HB31D
4F100JA05B
4F100JA06A
4F100JA07B
4F100JK07
4F100JK07A
4F100JL02
4F100JL13C
4F100YY00
4F100YY00A
4J002BD175
4J002BG06W
4J002BG06X
4J002BN143
4J002CH024
4J002FD163
4J002FD164
4J002FD173
4J002FD174
4J002FD203
4J002FD204
4J002FD205
4J002GF00
4J002GL00
4J002GL01
(57)【要約】
【課題】
カレンダー成形における圧延ロールからのフィルムの剥離性に優れ、剥離時のフィルムの裂けやすさを抑制したカレンダー成形用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
ベース樹脂、粘度平均分子量が2,500,000~5,900,000の範囲内にあるポリエチレンオキサイド及びコアシェル型改質剤を含有するカレンダー成形用樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂、粘度平均分子量が2,500,000~5,900,000の範囲内にあるポリエチレンオキサイド及びコアシェル型改質剤を含有するカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項2】
コアシェル型改質剤が、ブタジエン系コアシェル重合体および/又はブタジエン-アクリル複合コアシェル重合体である請求項1に記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項3】
ベース樹脂100質量部に対し、さらにアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを含有する請求項1又は2に記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ベース樹脂として、引張弾性率が1000MPa以下のアクリル系樹脂および引張弾性率が1000MPa以上のアクリル系樹脂を併用して用いる請求項1~3のいずれか1項に記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のカレンダー成形用樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルムの少なくとも片面に粘着層を積層してなる粘着フィルム。
【請求項7】
請求項5に記載のフィルムの少なくとも片面に印刷層を積層してなる化粧フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の化粧フィルムの印刷層側にさらに粘着層を積層してなる化粧用粘着フィルム。
【請求項9】
請求項7に記載の化粧フィルム又は請求項8に記載の化粧用粘着フィルムを表層に有する化粧成形体。
【請求項10】
被着体、及び当該被着体の上に請求項5に記載のフィルム又は請求項7に記載の化粧フィルムを備える、化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレンダー成形用樹脂組成物、その樹脂組成物からなるフィルム、当該フィルムから得られる粘着フィルム、化粧フィルム、化粧用粘着フィルム、化粧成形体、及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内外装材および建具、または家具の表面化粧などに用いられる化粧材としては、木質合板や鋼板といった下地材の上に印刷や着色を施した化粧シートを貼り合わせたものがよく知られており、該化粧シートの基材としては紙やプラスチック製フィルムが一般的に用いられる。また、自動車内外装の加飾に用いられる成形品に用いられる成形用加飾シートのバッキングシートとしてもプラスチック製フィルムが用いられている。
【0003】
この建築内外装材用のプラスチック製基材フィルムの素材としては、意匠性や接着性に優れる塩化ビニル系樹脂が使用される例も多いが、焼却時の排ガス処理が必要であるとの理由から、近年はポリオレフィン系樹脂が広く用いられている。また、自動車内外装の加飾用のバッキングシートとしては、アクリル系樹脂やABS樹脂が用いられることが多い。
【0004】
しかしながら、特にポリオレフィン系樹脂を用いる場合、フィルムに印刷層を積層する際にコロナ処理等の表面処理を施したり、プライマー層を設ける等の前処理を必要とすることから、製造に際して工程数が増加し、コスト高になる、歩留まりが悪いといった問題があった。
【0005】
一方、焼却時の排ガスの問題がなく、前処理も必要としない樹脂の一つとして前述したアクリル系樹脂が知られており、その樹脂組成物からなるフィルムおよびシートが提案されている。(特許文献1~3)
【0006】
しかしながら、特許文献1および2には、カレンダー成形に適したアクリル系樹脂組成物に関する記載はあるものの、カレンダー成形時の圧延ロールからのフィルムの剥離に関しては改善の余地があった。
【0007】
また、特許文献3には、カレンダー法により製膜された熱可塑性樹脂シートの一例としてアクリルシートが記載されているが、カレンダー成形時の圧延ロールからのフィルムの剥離に関する課題の記載はなく、かつカレンダー成形に適した樹脂組成物の記載もない。
特許文献4には、フィルムの剥離に対する課題の解決策が施されてはいるものの、アクリル系樹脂に起因するフィルムの脆さや裂けやすさといった課題が残っており、加工性に改善の余地があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09-31287号公報
【特許文献2】特開2007-56226号公報
【特許文献3】特開平08-48014号公報
【特許文献4】特開2020-117676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みて成されたものであり、カレンダー成形時の圧延ロールからのフィルムの剥離および剥離時のフィルムの裂けを防止でき、工程通過性に優れたフィルムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ベース樹脂、粘度平均分子量が2,500,000~5,900,000の範囲内にあるポリエチレンオキサイド、及びコアシェル型改質剤を含有させることにより、フィルムの圧延ロールからの優れた剥離性と剥離時のフィルムの裂けやすさを抑制したカレンダー成形用樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]ベース樹脂、粘度平均分子量が2,500,000~5,900,000の範囲内にあるポリエチレンオキサイド及びコアシェル型改質剤を含有するカレンダー成形用樹脂組成物。
[2]コアシェル型改質剤が、ブタジエン系コアシェル重合体および/又はブタジエン-アクリル複合コアシェル重合体である[1]に記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
[3]前記ベース樹脂100質量部に対し、さらにアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを含有する[1]又は[2]に記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
[4]前記ベース樹脂として、引張弾性率が1000MPa以下のアクリル系樹脂および引張弾性率が1000MPa以上のアクリル系樹脂を併用して用いる[1]~[3]のいずれか1項に記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
[5][1]~[4]のいずれか1項に記載のカレンダー成形用樹脂組成物からなるフィルム。
[6][5]に記載のフィルムの少なくとも片面に粘着層を積層してなる粘着フィルム。
[7][5]に記載のフィルムの少なくとも片面に印刷層を積層してなる化粧フィルム。
[8][7]に記載の化粧フィルムの印刷層側にさらに粘着層を積層してなる化粧用粘着フィルム。
[9][7]に記載の化粧フィルムまたは[8]に記載の化粧用粘着フィルムを表層に有する化粧成形体。
[10]被着体、及び当該被着体の上に[5]に記載のフィルム又は[7]に記載の化粧フィルムを備える、化粧材。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物は、カレンダーによるフィルム成形時に圧延ロールからの優れた剥離性と剥離時のフィルムの裂けやすさを抑制したカレンダー成形用樹脂組成物を提供できる。
さらに、当該樹脂組成物から得られるフィルムは建築内外装用途、自動車内外装用途といった各種用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物は、ベース樹脂、粘度平均分子量が2,500,000~5,900,000の範囲内にあるポリエチレンオキサイド、コアシェル型改質剤を含有する。
【0015】
<ベース樹脂>
本発明に用いられるベース樹脂としては、樹脂をフィルム状に加工する際の加工性の観点から熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。そのような熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルエーテルイミド系樹脂が挙げられる。
これらの中でも、透明性やインキ等との密着性、後述する三次元形状にフィルムを加工する際の加工性の観点から、アクリル系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0016】
アクリル系樹脂としては、メタクリル酸アルキルエステル単位を主成分とするアクリル重合体(α)、ゴム含有重合体(β)又はこれらを併用してなるアクリル系樹脂である。
アクリル重合体(α)としては、耐熱性の点で、メタクリル酸アルキルエステル50~100質量%、アクリル酸アルキルエステル0~50質量%およびこれらと共重合可能な二重結合を有する他の単官能単量体0~49質量%を含有する単量体成分を重合して得られる重合体が好ましい。
【0017】
メタクリル酸アルキルエステルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸i-ブチル等を挙げることができ、得られるアクリル重合体への耐熱性付与の観点からメタクリル酸メチルを用いることが好ましい。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
また、アクリル酸アルキルエステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピルおよびアクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル等を挙げることができ、得られるアクリル重合体の耐熱性の調整のしやすさの観点からアクリル酸n-ブチルを用いることが好ましい。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
他の単官能単量体としては、(メタ)アクリル酸低級アルコキシ、(メタ)アクリル酸シアノエチル、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;およびアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
アクリル重合体(α)の重合方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法等の公知の重合方法が挙げられる。また、得られるアクリル重合体の取扱いのしやすさの観点から、懸濁重合法または塊状重合法を用いることが好ましい。
【0021】
ゴム含有重合体(β)は、アクリル酸アルキルエステルおよび多官能単量体を必須成分として含む単量体成分を重合して得られるゴム重合体(g)の存在下に、メタクリル酸アルキルエステルを必須成分として含む単量体成分を重合して得られたゴム含有重合体である。
【0022】
ゴム重合体(g)を構成する単量体成分としてのアクリル酸アルキルエステルの例としては、アクリル重合体(α)の製造に用いたものと同様のものを挙げることができる。また、多官能単量体の例としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール等のジ(メタ)アクリル酸アルキレングリコール;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート系単量体;メタクリル酸アリル等のα,β-不飽和カルボン酸;ジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステル等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
ゴム重合体(g)を構成する単量体成分中のアクリル酸アルキルエステルおよび多官能性単量体以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル、又はこれら(アクリル酸アルキルエステル、多官能性単量体)と共重合可能な二重結合を有する他の単官能単量体が挙げられる。かかる他の単官能単量体の例としてはアクリル重合体(α)の製造に用いたものと同様のものを挙げることができる。
【0023】
ゴム含有重合体(β)の製造方法としては、乳化重合法、逐次多段乳化重合法と同様の方法で行うことが好ましい。
【0024】
本発明で用いられるアクリル系樹脂は、アクリル重合体(α)とゴム含有重合体(β)とをそれぞれ単独で用いてもよいし、それらを併用することもできる。得られるフィルムの柔軟性とカレンダー成形性の観点から、ゴム含有重合体(β)を単独で用いることが好ましい。また、ゴム含有重合体(β)は、1種類のものを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明で用いるアクリル系樹脂は、アクリル系樹脂のみからなるフィルムを評価した際の引張弾性率が100MPa以上2000MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が100MPa以上であれば得られるフィルムに十分な柔軟性を付与することが可能となり、2000MPa以下であれば柔軟性を損なうことなくカレンダー成形も可能となる。好ましくは150MPa以上1900MPa以下、より好ましくは200MPa以上1800MPa以下である。
【0026】
また、本発明では、引張弾性率が1000MPa以下のアクリル系樹脂と、引張弾性率が1000MPa以上のアクリル系樹脂を併用して用いることが好ましい。1000MPa以下のアクリル系樹脂のみでは、引張弾性率が低く強度に劣ることから、フィルム剥離時に裂けやすくなる傾向にある。1000MPa以上のアクリル系樹脂のみでは、樹脂が硬く加工性に劣り、樹脂組成物に含まれる成分を十分に分散させることが困難になる傾向にある。これらの点から、本発明では、アクリル系樹脂として、引張弾性率が1000MPa以下のアクリル系樹脂と引張弾性率が1000MPa以上のアクリル系樹脂の組み合わせが好適に用いられる。
【0027】
引張弾性率が1000MPa以下のアクリル系樹脂と、引張弾性率が1000MPa以上のアクリル系樹脂のそれぞれの含有量は、これらのアクリル系樹脂の合計を100質量部とした場合、引張弾性率が1000MPa以下のアクリル系樹脂を10~90質量部、引張弾性率が1000MPa以上のアクリル系樹脂を90~10質量部とすることが好ましい。より好ましくは、引張弾性率が1000MPa以下のアクリル系樹脂を15~85質量部、引張弾性率が1000MPa以上のアクリル系樹脂を85~15質量部、さらに好ましくは、引張弾性率が1000MPa以下のアクリル系樹脂を20~80質量部、引張弾性率が1000MPa以上のアクリル系樹脂を80~20質量部である。
【0028】
なお、引張弾性率は、JIS K6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して採取したフィルム状の試験片を用い、JIS K7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:50mm/分で測定した際に得られる値である。
【0029】
本発明で用いるアクリル系樹脂のガラス転移温度としては、アクリル系樹脂のみからなるフィルムを評価した際のガラス転移温度が70℃以上110℃以下であることが好ましい。70℃以上であれば後述する三次元形状への加工の際に金型への貼り付きを抑制することが可能となり、110℃以下であれば三次元形状を有する金型への追従性を十分に付与することが可能となる。好ましくは75℃以上105℃以下、より好ましくは80℃以上100℃以下である。
【0030】
「ガラス転移温度」は、JIS K7121、3.(2)に記載の方法に準拠して昇温スピード10℃/分の条件で昇温を行ない、「ガラス転移開始温度」として測定される温度である。本発明においてガラス転移温度は、DSC(示査走査熱量計)によって測定することができる。
【0031】
<ポリエチレンオキサイド>
本発明に用いられるカレンダー成形用樹脂組成物には、粘度平均分子量が2,500,000~5,900,000の範囲内にあるポリエチレンオキサイドが必須成分として含まれる。上記ポリエチレンオキサイドを含有させることで、カレンダー成形の際のフィルムの加工性を改善することが可能となり、得られるフィルムを圧延ロールから剥離する際のフィルムの裂けを抑制することが可能となる。
【0032】
粘度平均分子量が2,500,000以上であれば、カレンダー加工時の樹脂組成物の粘度を適正に保つことができ、加工性を損なうことがなく、粘度平均分子量が5,900,000以下であれば、アクリル系樹脂との相溶性を損なうことがなく強度を向上させることが可能となり、圧延ロールからの剥離時にもフィルムの破断が抑制される傾向にある。
【0033】
ポリエチレンオキサイドの粘度平均分子量のより好ましい範囲としては、3,000,000~5,500,000、さらに好ましい範囲としては、3,5000,000~5,000,000である。
ポリエチレンオキサイドの添加量は特に制限はないが、カレンダー加工時の剥離や裂けといった加工性の観点から、ベース樹脂100質量部に対し、3~30質量部とすることが好ましい。3質量部以上とすることで良好な加工性を付与することが可能となり、30質量部以下とすることで経済性の観点からも好ましく、圧延ロールからの剥離や裂けとのバランスを保つことが可能となる。より好ましくは5~25質量部、さらに好ましくは7~20質量部の範囲内である。
【0034】
また、粘度平均分子量は、純水を用い、オストワルド粘度計を使用した極限粘度(η)の値から、以下のStaudinger式を用いて算出することができる。

(η)=6.4×10-5×M0.82

粘度平均分子量が2,500,000~5,900,000の範囲内にあるポリエチレンオキサイドの具体例としては、例えば、住友精化社製、製品名「PEO-15」(粘度平均分子量:3,300,000~3,800,000、水溶液粘度(0.5%水溶液、25℃):130~250mPa・s)、製品名「PEO-18」(粘度平均分子量:4,300,000~4,800,000、水溶液粘度(0.5%水溶液、25℃):250~430mPa・s)が挙げられる。
【0035】
<コアシェル型改質剤>
本発明に用いられるカレンダー成形用樹脂組成物には、コアシェル型改質剤が必須成分として含まれる。コアシェル型改質剤を含有させることで、カレンダー成形の際のフィルムの裂けを改善することが可能となる。
【0036】
コアシェル型改質剤としては、コアとして柔軟性や加工性、耐衝撃性に優れるブタジエン系ゴムを含有するブタジエン系コアシェル重合体、ブタジエンと前述したアクリル系の単量体とを重合して得られる複合ゴムを含有するブタジエン-アクリル複合コアシェル重合体、シリコーン系ゴムを含有するシリコーン系コアシェル重合体等を用いることが好ましく、それらを用いることでカレンダー成形の際の、フィルムの裂けを改善できる傾向にある。中でも入手のしやすさや経済性、アクリル系樹脂への分散性の観点から、ブタジエン系コアシェル重合体および/又はブタジエン-アクリル複合コアシェル重合体を用いることがより好ましい。
【0037】
アクリル系樹脂の項で記述したゴム含有重合体(β)も、ゴム重合体(g)の存在下に、メタクリル酸アルキルエステルを必須成分として含む単量体成分を重合して得られるコアシェル型の重合体ではあるものの、コアであるゴム重合体(g)およびシェル部分がいずれもアクリル系樹脂であり、フィルムの裂けや加工性の改善できる改質剤には当たらない。
【0038】
コアシェル型改質剤の添加量は特に制限はないが、カレンダー加工時の加工性改善の観点から、ベース樹脂100質量部に対し、3~30質量部とすることが好ましい。3質量部以上とすることで良好な加工性を付与することが可能となり、30質量部以下とすることで経済性の観点からも好ましく、圧延ロールからの剥離や裂けとのバランスを保つことが可能となる。より好ましくは5~25質量部、さらに好ましくは7~20質量部の範囲内である。
コアシェル型改質剤の具体例としては、例えば、三菱ケミカル社製、製品名「MUX-IR」(ブタジエン-アクリル複合コアシェル重合体)、「メタブレン C-223A」、「メタブレン C-323A」(いずれもブタジエン系コアシェル重合体)、「メタブレン SX-005」(シリコーン系コアシェル重合体)等を挙げることができる。
【0039】
<可塑剤>
本発明に用いられるカレンダー成形用樹脂組成物には、可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤を含有させることで、カレンダー成形の際のフィルムの加工性を改善することが可能となり、得られるフィルムの厚みの精度等を向上させることができる。
【0040】
可塑剤の種類としては、特に制限はなく公知のものを使用することができる。例えば、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジウンデシルなどのフタル酸系可塑剤、アジピン酸ビス-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジ-2-デシル、アジピン酸ジイソノニル、セバチン酸ジブチル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシルなどの脂肪酸エステル可塑剤、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸-2-エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸系ポリエステル可塑剤、フタル酸系ポリエステル可塑剤などのポリエステル系可塑剤、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)などのテレフタル酸系可塑剤、アクリル系可塑剤を使用することができ、入手のしやすさや可塑剤の取扱いの容易さの観点からフタル酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤、およびポリエステル系可塑剤が好適に用いられる。また、ベース樹脂がアクリル系樹脂の場合には、アクリル系樹脂との相溶性や透明性の観点から、アクリル系可塑剤を用いることもできる。
【0041】
可塑剤の添加量は特に制限はなく、得られるフィルムの取扱い性および強度を著しく低下させない範囲で任意に添加することができる。
【0042】
<滑剤>
本発明に用いられるカレンダー成形用樹脂組成物には、フィルムの圧延ロールからの剥離性を向上させるために、滑剤を含有することが好ましい。
【0043】
滑剤を用いることで、圧延ロールからの剥離性を向上させることができる。滑剤の種類としては、剥離性の改善が見込めるものであれば特に制限はないが、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸エステル、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸塩、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、それら低分子量ポリオレフィン系樹脂の変性体等のポリオレフィン系ワックス、高級アルコール、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系高分子滑剤等が挙げられる。
【0044】
シリコーン系樹脂としては、ベース樹脂がアクリル系樹脂の場合には、アクリル系樹脂との相溶性の観点から、シリコーン-アクリル共重合体であることが好ましい。シリコーン-アクリル共重合体は、シリコーン系樹脂からなるブロックとアクリル系樹脂からなるブロックを有するブロック重合体であることが好ましい。また、いずれかのブロックが側鎖にグラフトしているグラフト共重合体であってもよい。具体例としては、例えば、日信化学工業社製、製品名「シャリーヌR-170」、「シャリーヌR-170S」、「シャリーヌR-773S」(シリコーン-アクリル共重合体)等を挙げることができる。
【0045】
アクリル系高分子滑剤としては、ベース樹脂がアクリル系樹脂の場合には、アクリル系樹脂との相溶性や得られるフィルムの透明性を良好に保つことが可能なため好ましい。アクリル系高分子滑剤の具体例としては、例えば、三菱ケミカル社製、製品名「メタブレンL-1000」を挙げることができる。
滑剤の添加量は特に制限はないが、カレンダー加工時の圧延ロールからの剥離性付与の観点から、ベース樹脂100質量部に対し、0.1~5.0質量部とすることが好ましい。0.1質量部以上とすることで圧延ロールからの剥離性を向上させることが可能となり、5.0質量部以下とすることで圧延ロールへの滑剤の噴出しや堆積を抑制することが可能となる。より好ましくは0.1~4.0質量部の範囲内、さらに好ましくは0.1~3.0質量部の範囲内である。
【0046】
<加工助剤>
本発明に用いられるカレンダー成形用樹脂組成物には、フィルムのカレンダー成形時の加工性を向上させるために、加工助剤を添加することができる。
加工助剤としては、カレンダー成形時のフィルム加工性を良好なものとするために、樹脂の溶融張力をより向上させることができるものが好ましく、例えば、線状超高分子量アクリル系樹脂、樹脂中にフィブリル状に分散しやすくするよう変性されたアクリル変性ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
線状超高分子量アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱ケミカル社製、製品名「メタブレン P-530A」、「メタブレン P-531A」が挙げられる。アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンの具体例としては、例えば、三菱ケミカル社製、製品名「メタブレン A-3000」、「メタブレン A-3750」等が挙げられる。これらは、それぞれを単独で用いてもよいし、併用して用いてもよい。
【0047】
線状超高分子量アクリル系樹脂の添加量は、ベース樹脂100質量部に対し、0.3~7.0質量部とすることが好ましい。0.3質量部以上とすることで樹脂組成物をフィルム状に加工する際に、加工に十分な粘度を付与することが可能となる。7.0質量部以下とすることで、樹脂組成物をフィルム状に加工する際の粘度を最適な範囲内とすることができ、加工性を維持することが可能となる。より好ましくは0.4~6.0質量部、さらに好ましくは0.5~5.0質量部である。
アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンの添加量は、ベース樹脂100質量部に対し、0.05~3.0質量部とすることが好ましい。0.05質量部以上とすることで樹脂組成物をフィルム状に加工する際に、樹脂の破断が起こりにくくなる傾向にある。3.0質量部以下とすることで、ポリテトラフルオロエチレンに起因する透明性の阻害や、異物の発生を抑制することが可能となる。より好ましくは0.07~2.5質量部、さらに好ましくは0.1~2.0質量部である。
【0048】
<その他の添加剤>
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において必要に応じて、成型用の合成樹脂に通常配合される公知の樹脂添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐候助剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防菌防黴剤、および着色剤等の各種添加剤を配合することができる
これらの添加剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物は、前記の各成分を所定量添加して攪拌機でブレンドし、バンバリーミキサー、単軸押出機、ロール、ニーダー等の公知の混練機を用いて加熱溶融状態で混練りすることによって得ることができる。このようにして得られるカレンダー成形用樹脂組成物は、ペレット状、粒子状、フレーク状、粉末状等の形状で得ることができる。
【0050】
<カレンダー成形用樹脂組成物からなるフィルム>
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物からなるフィルムは、前述したカレンダー成形用樹脂組成物をカレンダー成形し、得られるフィルムである(以下「本発明のフィルム」とも言う)。
本発明のフィルムの1つの好ましい態様は、ベース樹脂がアクリル系樹脂であるカレンダー成形用樹脂組成物からなるアクリル系樹脂フィルムである。
【0051】
本発明のフィルムの厚みは特に制限されるものではないが、30~400μmであることが好ましい。上記範囲内とすることで、フィルムの取扱い性およびその後の加工性を良好に維持することができる。
【0052】
本発明のフィルムの弾性率は、JIS K6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して採取した試験片を用い、JIS K7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:50mm/分で測定した際の引張弾性率が、200~1200MPaの範囲内であることが好ましい。フィルムの引張弾性率が200MPa以上であれば、フィルムが柔らかすぎることがなく取扱い性に優れるフィルムとなり、1200MPa以下であれば柔軟性を損なうことがなく取扱いが可能なフィルムとなる。より好ましくは250~1100MPaの範囲内、さらに好ましくは300~1000MPaの範囲内である。
【0053】
本発明のフィルムの強度は、JIS K6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して採取した試験片を用い、JIS K7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:300mm/分で測定した際の引張破断強度が、12MPa以上であることが好ましい。得られるフィルムの引張破断強度が12MPa以上であれば、十分な強度を有しており、フィルムを成形する際のフィルムの破断を抑制でき、且つ取扱い性にも優れたものとなる。より好ましくは13MPa以上、さらに好ましくは14MPa以上である。
【0054】
本発明のフィルムの破断伸度としては、上記の引張破断強度と同様の条件にて測定した際の引張破断伸度が、150%以上であることが好ましい。引張破断伸度が150%以上であれば、フィルムを剥離した際の破断による不具合や、該フィルム上に印刷層や粘着剤層を積層する工程においても同様の不具合を抑制させることができるため好ましい。より好ましくは160%以上、さらに好ましくは170%以上である。
【0055】
<粘着フィルム>
本発明のフィルムには、少なくとも片方の面に粘着層を積層することで、粘着フィルムとすることができる。
粘着層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、本発明のフィルムと粘着層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
【0056】
<化粧フィルム>
本発明のフィルムは、当該フィルムの中に顔料、染料等の着色剤を練りこみ着色する、あるいは、当該フィルムの少なくとも片方の面に印刷層を積層することにより、化粧フィルムとすることができる(以下「本発明の化粧フィルム」とも言う)。
【0057】
着色に用いる顔料としては、特に制限はなく、無機顔料、有機顔料の中から、用途や色に応じて適宜選択して用いることができる。
染料としては、特に制限はなく、水溶性染料、分散染料、油溶性染料の中から用途や色に応じて適宜選択して用いることができる。
【0058】
印刷層は、公知の方法で形成できる。例えば、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法、フレキソグラフ印刷法等の公知の印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法等が挙げられる。また、蒸着法を用いることもできる。
【0059】
印刷の柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、メタリック等からなる絵柄が挙げられる。
【0060】
上記印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
また、デザイン性やフィルムの取扱い性の向上のために、本発明のフィルムや印刷層にエンボス等の凹凸を付与し化粧フィルムとすることも可能である。
【0061】
<化粧用粘着フィルム>
本発明の化粧フィルムには、その印刷層側にさらに粘着層を積層して化粧用粘着フィルムとすることができる。この場合、粘着層を印刷層の上に設けてもよいし、印刷層の上に他の層(例えば、帯電防止層やプライマー層等)を設けて、当該他の層の上に粘着層を設けてもよい。
該化粧用粘着フィルムを被着体に貼着させることで、被着体の美麗な外観を付与することが可能となり、建築内外装用途の成形体や積層体、自動車加飾用途の成形体や積層体を得ることができる。
【0062】
<化粧材>
本発明のフィルム又は化粧フィルムを被着体に貼着させることで、化粧材を得ることができる。
即ち、本発明のもう1つの実施態様は、被着体、及び当該被着体の上に本発明のフィルム又は化粧フィルムを備える、化粧材である。
また、本発明の化粧材の一方の面は、本発明のフィルム又は化粧フィルムを被着体に貼着させてなる化粧材である。
本発明の化粧フィルムを被着体に貼着させることで、被着体に良好な耐候性を付与することが可能となる。
また、本発明のフィルム又は化粧フィルムを、被着体の支持体として用いて化粧材とすることにより、後述する成形方法により化粧が施された成形体を得ることが可能となる。
【0063】
建築内外装用途に用いられる被着体としては、木製板材、金属製板材、樹脂製板材等が挙げられる。
また、ここでいう被着体の支持体とは、例えば、後述する射出成形により射出される樹脂と直接接触する面側に設けられ、当該樹脂と一体化されるものであり、化粧材に剛性を与えて形状を保持する機能と、射出される樹脂との密着性、成形時やその前工程に設けられる予備成形時の熱により軟化しやすい性質を付与するものである。また、後述する3次元オーバーレイラミネート成形法に用いられる化粧材の支持体としても用いることができる。
さらに、本発明のフィルム又は化粧フィルムを、支持体として用いる場合の被着体としては、フィルム状の材料を挙げることができ、該フィルム状の材料は透明もしくは着色されていてもよいし、片側もしくは両側の面に印刷層が積層されていてもよい。
【0064】
フィルム状の材料としては公知のものを用いることができ、特に制限はないが、例えば、本発明のフィルムと同種のベース樹脂を用いたフィルムのほか、異種の樹脂フィルムとしてポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート樹脂フィルム等が挙げられる。
【0065】
さらにフィルム状の材料の表面保護を目的とした表面保護層を設けることもできる。表面保護層としては、特に制限はないが、公知のコーティング法によるハードコート層等と積層する方法が挙げられる。
【0066】
本発明のフィルム又は化粧フィルムを支持体として用いた場合、取扱い性(ハンドリング性)と三次元形状への加工性の観点で優れている。
【0067】
本発明のフィルム又は化粧フィルムで支持体を構成する場合、支持体は、本発明のフィルム又は化粧フィルムからなる単層シートで形成されていてもよいし、本発明のフィルム又は化粧フィルムを1以上の異種の樹脂シートと積層した複層シートで形成されていてもよい。異種の樹脂シートとしては、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等からなる樹脂シートが挙げられる。
【0068】
フィルム状の材料やその表面に積層された印刷層または異種の樹脂層との密着性を付与するために、支持体の片面もしくは両面に表面処理を施すことも可能である。表面処理としては公知の方法であれば特に制限はないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、コーティングによるプライマー層の付与等といった表面処理法が挙げられる。
【0069】
支持体として用いる際の厚みは特に制限はないが、化粧材への剛性付与及び三次元形状への加工性の観点から100~500μmの範囲とすることが好ましい。より好ましくは、125~500μm、さらに好ましくは150~500μmである。
【0070】
<化粧材の成形方法>
化粧材の成形方法としては、特に制限はなく、公知の成形方法を用いることができる。成形方法としては、例えば、インサート成形法、インモールド成形法、3次元オーバーレイラミネート成形法等が挙げられる。
【0071】
インサート成形法とは、あらかじめ真空成形等により化粧材を三次元の形状に成形し、不要なシート部分をトリミング加工により除去し、その後射出成形金型内に移し、基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させて成形体を得る方法である。
【0072】
インモールド成形法とは、射出成形金型内に化粧材を設置し、真空成形を施し、その後同じ金型内で基材となる樹脂を射出成形することにより一体化させて成形体を得る方法である。
【0073】
また、3次元オーバーレイラミネート成形法とは以下の方法をいう。
まず、化粧材で仕切られた2つの密閉空間を形成して一方の空間側に、予め成型した成形体を配置し、両方の空間又は成形体を配置している空間のみを減圧する。
次いで、化粧材を加熱軟化し、一方の空間側から他方の空間側に向かって化粧材表面に成形体を押し当てた状態で、成形体を配置していない他方の空間のみを常圧に戻し、差圧を利用して化粧材を成形体に貼り付ける。
3次元オーバーレイラミネート成形法では、加熱された化粧材が全体的に均一に圧力を受けて成形体の表面に貼り付けられるため、成形体の表面が曲面であっても良好に化粧材を成形体に貼り付けることができる。
3次元オーバーレイラミネート成形を行うための装置としては、例えば、布施真空(株)製の「TOM(商品名)」が挙げられる。
【0074】
<成形体>
本発明の成形体は、前述した化粧材および成形方法を用いて得られる成形体である。
また、本発明のフィルムは、上述のとおり3次元形状への加工性に優れることから、当該フィルムを用いることにより、より複雑な3次元形状を有する物品に化粧を施すことが可能となる。
用いられる3次元形状を有する物品としては、特に制限はなく、例えば、プラスチック部品、金属部品、それら以外の物品が挙げられる。
成形体の成形方法は、特に制限はなく、前述した成形方法を用いることができる。
また、本発明のもう1つの態様は、本発明の化粧フィルム又は化粧用粘着フィルムを表層に有する化粧成形体である。
【実施例0075】
以下、本発明の実施例および比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例および比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0076】
[使用材料]
<アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂(β-1):三菱ケミカル社製、ゴム含有重合体(引張弾性率:560MPa、ガラス転移温度:87℃)
アクリル系樹脂(β―2):三菱ケミカル社製、ゴム含有重合体(引張弾性率:1300MPa)、ガラス転移温度:94℃)
【0077】
<ポリエチレンオキサイド>
ポリエチレンオキサイド(W-1):住友精化社製、製品名「PEO-8」(粘度平均分子量:1,700,000~2,200,000、水溶液粘度(0.5%水溶液):20~70mPa・s)
ポリエチレンオキサイド(W-2):住友精化社製、製品名「PEO-18」(粘度平均分子量:4,300,000~4,800,000、水溶液粘度(0.5%水溶液):250~430mPa・s)
ポリエチレンオキサイド(W-3):住友精化社製、製品名「PEO-27」(粘度平均分子量:6,000,000~8,000,000、水溶液粘度(0.5%水溶液):600~800mPa・s)
【0078】
<コアシェル型改質剤>
ブタジエン-アクリル複合コアシェル重合体(X-1):三菱ケミカル社製、製品名「MUX-IR」
ブタジエン系コアシェル重合体(X-2):三菱ケミカル社製、製品名「C-223A」
【0079】
<可塑剤>
アクリル系可塑剤:東亞合成社製、製品名「ARUFON UP-1020」(無溶剤型低分子量アクリルポリマー、重量平均分子量:2000)
【0080】
<滑剤>
[ポリエチレンワックス]
ポリエチレンワックス:三井化学社製、製品名「ハイワックス 220MP」、酸化ポリエチレンワックス、140℃の溶融粘度80mPa・s
[アクリル系高分子]
アクリル系高分子滑剤:三菱ケミカル社製、製品名「メタブレン L-1000」
[シリコーン-アクリル共重合体]
シリコーン-アクリル共重合体:日信化学工業社製、製品名「シャリーヌ R-773S」
【0081】
<安定剤>
リン系安定剤:ADEKA社製、製品名「アデカスタブ SP-2011」
【0082】
<加工助剤>
加工助剤(Y-1):三菱ケミカル社製、製品名「メタブレン A-3000」(アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン)
加工助剤(Y-2):三菱ケミカル社製、製品名「メタブレンP-530A」(線状超高分子量アクリル系樹脂)
【0083】
<製膜性>
[カレンダー加工性]
カレンダー成形用樹脂組成物を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、次いで160℃で3分間、バンバリーミキサーで混練した。得られた混練物を180℃で7分間、2本の圧延ロールを用いてカレンダー成形にて混練し、混錬時の樹脂の溶融状態およびフィルムへの成形性を以下の基準により判断した。
◎:十分に混錬されており、フィルム化が可能であり外観も良好
○:混錬が可能であり、フィルム化が可能。
×:樹脂の混錬が不十分であり、フィルム化が困難。
【0084】
[圧延ロールからの剥離性]
前述した混錬物を180℃で7分間、2本の圧延ロールを用いてカレンダー成形にて混練し、アクリル系樹脂フィルムを得る際の圧延ロールからの剥離性を以下の基準により評価した。
◎:圧延ロールにフィルムが貼り付くことなく、剥離が容易
○:圧延ロールにフィルムが僅かに貼り付いているものの、剥離は可能
×:圧延ロールにフィルムが顕著に貼り付き、剥離が困難
【0085】
[圧延ロール剥離時の破断評価]
前述した混錬物を180℃で7分間、2本の圧延ロールを用いてカレンダー成形にて混練し、アクリル系樹脂フィルムを得る際に圧延ロールからフィルムを剥離した際に、フィルムの破断の有無を以下の基準により評価した。
◎:剥離時にフィルムに破断や裂けの発生は無い
○:剥離時に僅かにフィルムに裂けは見られるがフィルムは採取可能
×:剥離時に破断が発生
【0086】
<アクリル系樹脂フィルムの評価>
[引張弾性率]
得られた複層フィルムから、JISK6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、JISK7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0087】
[引張破断強度]
得られたフィルムから、JISK6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ-L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断強度(MPa)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0088】
[引張破断伸度]
得られたフィルムから、JISK6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ-L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0089】
[実施例1]
アクリル系樹脂として、ゴム含有重合体(β-1)を50質量部、ゴム含有重合体(β-2)を50質量部用いた。このアクリル系樹脂100質量部に対して、粘度平均分子量4,300,000~4,800,000のポリエチレンオキサイド(W-2)を10質量部、コアシェル型改質剤(X-1)を10質量部、アクリル系可塑剤を10質量部、滑剤として、ポリエチレンワックスを0.4質量部、アクリル系高分子滑剤を1.0質量部、シリコーン-アクリル共重合体を5.0質量部、安定剤としてリン系化合物を0.6質量部、アクリル系加工助剤を3.0質量部の添加量で配合し、カレンダー成形用樹脂組成物を調製した。
このカレンダー成形用樹脂組成物を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、次いで160℃で3分間、バンバリーミキサーで混合した。得られた混合物を180℃で7分間、2本の圧延ロールを用いてカレンダー成形にて混錬を行った。
カレンダー成形により樹脂組成物は十分に混錬されており、外観は良好でフィルム状に加工可能であった
圧延ロールからの剥離も容易であり、わずかにフィルムの端部に裂けは見られるもののフィルムとして採取可能であった。得られたフィルムの厚みは125μmであった。
得られたフィルムの引張弾性率は570MPaで柔軟性を有し、取扱性にも優れるものであり、引張破断強度は17.5MPa、引張破断伸度は190%を示し、フィルムを取扱いの際にも容易に破断することのないフィルムであることが確認された。
【0090】
[実施例2]
コアシェル型改質剤(X-1)をコアシェル型改質剤(X-2)に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
カレンダー成形により樹脂組成物は十分に混錬されており、外観は良好でフィルム状に加工可能であった。
圧延ロールからの剥離も容易であり、わずかにフィルムの端部に裂けは見られるもののフィルムとして採取可能であった。得られたフィルムの厚みは125μmであった。
得られたフィルムの引張弾性率は520MPaで柔軟性を有し、取扱性にも優れるものであり、引張破断強度は17.4MPa、引張破断伸度は200%を示し、フィルムを取扱いの際にも容易に破断することのないフィルムであることが確認された。
【0091】
[実施例3]
アクリル系樹脂として、ゴム含有重合体(β-1)を30質量部、ゴム含有重合体(β-2)を70質量部に変更した以外は、実施例2と同様に行った。
カレンダー成形により樹脂組成物は十分に混錬されており、外観は良好でフィルム状に加工可能であった
圧延ロールからの剥離も容易であり、わずかにフィルムの端部に裂けは見られるもののフィルムとして採取可能であった。得られたフィルムの厚みは125μmであった。
得られたフィルムの引張弾性率は640MPaで柔軟性を有し、取扱性にも優れるものであり、引張破断強度は15.0MPa、引張破断伸度は175%を示し、フィルムを取扱いの際にも容易に破断することのないフィルムであることが確認された。
【0092】
[実施例4]
加工助剤として、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを0.2質量部添加した以外は実施例3と同様に行った。
カレンダー成形により樹脂組成物は十分に混錬されており、外観は良好でフィルム状に加工可能であった
圧延ロールからの剥離も容易であり、フィルムの端部に裂けは見られずフィルムとして採取も容易であった。得られたフィルムの厚みは125μmであった。
得られたフィルムの引張弾性率は640MPaで柔軟性を有し、取扱性にも優れるものであり、引張破断強度は16.0MPa、引張破断伸度は180%を示し、フィルムを取扱いの際にも容易に破断することのないフィルムであることが確認された。
【0093】
[実施例5]
コアシェル型改質剤を、ブタジエン-アクリル複合コアシェル重合体10質量部、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを0.3質量部に変更した以外は実施例4と同様に行った。
カレンダー成形により樹脂組成物は十分に混錬されており、外観は良好でフィルム状に加工可能であった。
圧延ロールからの剥離も容易であり、フィルムの端部に裂けは見られずフィルムとして採取も容易であった。得られたフィルムの厚みは125μmであった。
得られたフィルムの引張弾性率は680MPaで柔軟性を有し、取扱性にも優れるものであり、引張破断強度は19.2MPa、引張破断伸度は200%を示し、フィルムを取扱いの際にも容易に破断することのないフィルムであることが確認された。
【0094】
[実施例6]
アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを0.5質量部に変更した以外は実施例5と同様に行った。
カレンダー成形により樹脂組成物は十分に混錬されており、外観は良好でフィルム状に加工可能であった
圧延ロールからの剥離も容易であり、フィルムの端部に裂けは見られずフィルムとして採取も容易であった。得られたフィルムの厚みは125μmであった。
得られたフィルムの引張弾性率は670MPaで柔軟性を有し、取扱性にも優れるものであり、引張破断強度は18.8MPa、引張破断伸度は190%を示し、フィルムを取扱いの際にも容易に破断することのないフィルムであることが確認された。
【0095】
[比較例1]
アクリル系樹脂として、ゴム含有重合体(β-1)を50質量部、ゴム含有重合体(β-2)を50質量部用いた。このアクリル系樹脂100質量部に対して、アクリル系可塑剤を10質量部、滑剤としてアクリル系高分子滑剤を1.0質量部、アクリル系加工助剤を3.0質量部の添加量で配合し、カレンダー成形用樹脂組成物を調製した。
このカレンダー成形用樹脂組成物を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、次いで160℃で3分間、バンバリーミキサーで混合した。得られた混合物を180℃で7分間、2本の圧延ロールを用いてカレンダー成形にて混錬を行った。
カレンダー成形により混錬は可能であったものの、滑剤の添加量および種類も少ないことから、圧延ロールからの剥離は困難であった。また、ポリエチレンオキサイド、コアシェル型改質剤を含んでいないことから、剥離したフィルムも強度に劣り、且つ容易に破断するものであり、評価用のフィルムを採取することは困難であった。
【0096】
[比較例2]
ポリエチレンワックスを0.4質量部、シリコーン-アクリル共重合体を5.0質量部、安定剤であるリン系加工助剤を0.6質量部、添加した以外は、比較例1と同様に行った。
カレンダー成形により混錬は可能であり、滑剤は十分に添加されていたことから、圧延ロールからの剥離は容易であった。
ただし、ポリエチレンオキサイド、コアシェル型改質剤を含んでいないことから、剥離したフィルムも強度に劣り、且つ容易に破断するものであり、評価用のフィルムを採取することは困難であった。
【0097】
[比較例3]
粘度平均分子量1,700,000~2,200,000のポリエチレンオキサイド(W-1)を10質量部添加した以外は、比較例2と同様に行った。
ポリエチレンオキサイドの分子量が低かったことから、樹脂組成物の粘度が低下し、カレンダー成形による混錬が不十分なものであった。また、滑剤は十分に添加されていたことから、圧延ロールからの剥離は可能であったものの、コアシェル型改質剤を含んでいないことと、混錬が不十分でありフィルムの厚みも不安定であったことから、剥離したフィルムは強度に劣り、且つ容易に破断するものであり、評価用のフィルムを採取することは困難であった。
【0098】
[比較例4]
粘度平均分子量6,000,000~8,000,000のポリエチレンオキサイド(W-3)を10質量部添加した以外は、比較例2と同様に行った。
ポリエチレンオキサイドの分子量が高かったことから、樹脂組成物の粘度が増加し、カレンダー成形による混錬が不十分なものであった。また、滑剤は十分に添加されていたことから、圧延ロールからの剥離は可能であったものの、コアシェル型改質剤を含んでいないことと、混錬が不十分でありフィルムの厚みも不安定であったことから、剥離したフィルムは強度に劣り、且つ容易に破断するものであり、評価用のフィルムを採取することは困難であった。
【0099】
[比較例5]
コアシェル型改質剤を含まなかったこと以外は、実施例2と同様に行った。
カレンダー成形により樹脂組成物は混錬可能であり、フィルム状に加工可能であった。
圧延ロールからの剥離は容易であったものの、コアシェル型改質剤を含んでいないことから、剥離したフィルムは強度に劣り、且つ容易に破断するものであり、評価用のフィルムを採取することは困難であった。
【0100】
[比較例6]
ポリエチレンオキサイドを含まなかったこと以外は、実施例6と同様に行った。
カレンダー成形により樹脂組成物は十分に混錬されており、外観は良好でフィルム状に加工可能であった。
圧延ロールからの剥離も容易であったものの、ポリエチレンオキサイドを含んでいないことから、剥離したフィルムは強度に劣り、且つ容易に破断するものであり、評価用のフィルムを採取することは困難であった。
【0101】
上記した実施例1~6、比較例1~6の評価結果を以下の表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
[実施例7]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成し、実施例4で作成したフィルムの片方の面に貼り合わせることで、アクリル系樹脂フィルム/粘着層/セパレータからなる粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムのセパレータを除去し、粘着層にセロテープを貼り、そのセロテープを剥離することで密着性を確認したところ、アクリル系樹脂フィルムから粘着層の剥離は見られず、良好な密着性を示す粘着フィルムが得られることを確認した。
【0104】
[実施例8]
実施例4で得られたフィルムに、以下に記載のDICグラフィックス(株)製のインキを倉敷紡績(株)製、グラビア印刷試験機「GP-2」、印刷プレート「54L6階調」を用い、塗布を行った。塗布後のフィルムを40℃で5日間エージングし、インキによる印刷層が積層された化粧フィルムを得た。
得られた化粧フィルムの化粧層にセロテープを貼り、そのセロテープを剥離することで密着性を確認したところ、化粧層の剥離は見られず、化粧層との良好な密着性を示す化粧フィルムが得られることを確認した。
さらに、本化粧フィルムの化粧層側の面に、実施例7と同様の方法で粘着層を積層し、化粧用粘着フィルムを得ることが可能であることを確認した。
<DICグラフィックス(株)製インキ>
「VTP-NT40黄(A)」を95質量部、「AT-NT溶剤」5質量部を混合・撹拌しインキを調製した。
「VTP-NT40黄(A)」:塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体およびアクリル系樹脂の混合物と溶剤としてメチルイソブチルケトンからなる塗料
「AT-NT溶剤」:酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合物
【0105】
[実施例9]
真空引き機能を有し、キャビティー側の金型の底、かつ中央のゲートから横方向に3cmの位置に、1cm2、深さ1mmの凹みがある金型を用い、J85ELII型射出成型機((株)日本製鋼所製、商品名)およびホットパックシステム(日本写真印刷(株)製、商品名)を組み合わせたインモールド成形装置を用い、成形体の表層に実施例8に記載の化粧フィルムが積層されるように本フィルムを配置した。また、化粧層側が後述するABS樹脂側になるよう配置した。
化粧フィルムの真空成形は、ヒーター温度約330℃、加熱時間12秒、ヒーターとフィルムとの距離15mmの条件で行い、実施した。
また、引き続き同一金型内で実施する射出成形は、シリンダー温度250℃、射出速度30%、射出圧力43%、金型温度60℃の条件で行った。射出成形には、ABS樹脂(テクノUMG社製、商品名「バルクサムTM25B」)を用い、射出成型後、化粧フィルムが表面に配置された化粧成形体を得た。
得られた化粧成形体の化粧フィルムとABS樹脂との剥離は見られず、化粧層を有する外観の良好な成形体が得られることを確認した。
【0106】
この様に、本発明の構成のカレンダー成形用樹脂組成物、その樹脂組成物を成形してなるアクリル系樹脂フィルムは、カレンダー成形時の圧延ロールからの優れた剥離性と剥離時のフィルムの裂けやすさを抑制したものである。さらに、得られたフィルムは建築内外装用途、自動車内外装用途といった各種用途に好適に用いることができる。
また本発明のフィルムを支持体として用いることで、加工性に優れた化粧材を得ることができ、さらにそれを成形することで当該フィルムを支持体として用いた成形体を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の構成のカレンダー成形用樹脂組成物、その樹脂組成物を成形してなるフィルムは、カレンダー成形時の圧延ロールからの優れた剥離性と剥離時のフィルムの裂けやすさを抑制したものである。さらに、得られたフィルムは建築内外装用途、自動車内外装用途といった各種用途に好適に用いることができる。
また本発明のフィルムを支持体として用いることで、加工性に優れた化粧材を得ることができ、さらにそれを成形することで当該フィルムを支持体として用いた成形体を提供することができる。