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特開2022-80083樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法
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  • 特開-樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080083
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20220520BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20220520BHJP
   B29C 31/04 20060101ALI20220520BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/18
B29C31/04
H01L21/56 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191055
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(72)【発明者】
【氏名】川口 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】村松 吉和
(72)【発明者】
【氏名】花里 実
【テーマコード(参考)】
4F201
4F204
5F061
【Fターム(参考)】
4F201AH37
4F201BA06
4F201BD02
4F201BQ09
4F201BQ57
4F201BQ60
4F204AC05
4F204AD19
4F204AH37
4F204AM32
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FF23
4F204FN11
4F204FN17
4F204FQ38
5F061AA01
5F061CA22
5F061DA01
5F061DB00
(57)【要約】
【課題】欠陥の発生を抑制できる樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂供給装置(100)は、樹脂封止金型(200)のキャビティ(201)の形状に基づいて樹脂供給パターンを算出する算出部(130)と、樹脂供給パターンに沿って被塗布物に樹脂を供給する供給部(120)と、を備え、樹脂供給パターンは、複数の線状経路(14)を有し、互いに隣接する線状経路のうち一方の線状経路はキャビティ(201)を線対称に分割する対称軸(SM)に対して傾斜し、互いに隣接する線状経路のうち他方の線状経路は、一方の線状経路に対して傾斜し、互いに隣接する線状経路の間の領域(19)は、少なくとも一方の線状経路から他方の線状経路が離間する側において、被塗布物の外側に開放されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂封止金型の下型に配置される被塗布物上に樹脂を供給する樹脂供給装置であって、
前記樹脂封止金型のキャビティの形状に基づいて樹脂供給パターンを算出する算出部と、
前記樹脂供給パターンに沿って前記被塗布物に樹脂を供給する供給部と、
を備え、
前記樹脂供給パターンは、複数の線状経路を有し、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路のうち一方の線状経路は前記キャビティを線対称に分割する対称軸に対して傾斜し、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路のうち他方の線状経路は、前記一方の線状経路に対して傾斜し、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、少なくとも前記一方の線状経路から前記他方の線状経路が離間する側において、前記被塗布物の外側に開放されている、樹脂供給装置。
【請求項2】
前記複数の線状経路は、第1線状経路と、前記第1線状経路に隣接する第2線状経路と、前記第2線状経路に隣接する第3線状経路とを有し、
前記第2線状経路は、前記第1線状経路に接近する側の端部で前記第1線状経路に接続し、前記第3線状経路に接近する側の端部で前記第3線状経路に接続されている、
請求項1に記載の樹脂供給装置。
【請求項3】
前記樹脂供給パターンは、連続した1本の線状である、
請求項1又は2に記載の樹脂供給装置。
【請求項4】
前記樹脂供給パターンの角部は、R形状を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項5】
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、前記一方の線状経路に前記他方の線状経路が接近する側において、前記被塗布物の外側に開放されている、
請求項1に記載の樹脂供給装置。
【請求項6】
前記被塗布物は、供給された樹脂を用いて封止されるワークである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項7】
前記被塗布物は、供給された樹脂をワークに引き渡すリリースフィルムである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項8】
前記樹脂封止金型のキャビティの形状を取得し、前記算出部に提供する取得部をさらに備えている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記被塗布物に供給された樹脂によって封止されるワークの形状を加味して前記樹脂供給パターンを算出する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項10】
前記算出部は、供給された樹脂を用いて封止されるワーク上の素子の配置情報を加味して前記樹脂供給パターンを算出する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項11】
前記対称軸は、前記素子が整列する方向に延在する、
請求項10に記載の樹脂供給装置。
【請求項12】
前記樹脂供給パターンは、前記ワークにおける前記素子の面積率が小さい領域における樹脂の供給量が、前記素子の面積率が大きい領域における樹脂の供給量よりも多くなるように算出される、
請求項10又は11に記載の樹脂供給装置。
【請求項13】
前記複数の線状経路は、前記ワークの中央部において互いに隣接する一組の線状経路と、前記ワークの端部において互いに隣接する他の一組の線状経路とを含み、
前記一組の線状経路の成す角度は、前記他の一組の線状経路の成す角度よりも大きい、
請求項9から11のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項14】
前記複数の線状経路は、前記ワークの中央部において互いに隣接する一組の線状経路と、前記ワークの端部において互いに隣接する他の一組の線状経路とを含み、
前記一組の線状経路の成す角度は、前記他の一組の線状経路の成す角度よりも小さい、
請求項9から11のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の樹脂供給装置と、
ワーク上の素子を樹脂封止する樹脂封止金型と、
を備え、
前記樹脂封止金型は、樹脂が充填されるキャビティと、前記キャビティからエアを排出する複数のエアベントとを有し、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域の延長線上に、前記複数のエアベントのうち少なくとも1つが位置するように、前記樹脂封止金型に前記被塗布物が設置される、樹脂封止装置。
【請求項16】
樹脂封止金型の下型に配置される被塗布物上に樹脂を供給することを含む樹脂封止品の製造方法であって、
前記樹脂封止金型のキャビティの形状に基づいて樹脂供給パターンを算出することと、
前記樹脂供給パターンに沿って前記被塗布物に樹脂を供給することと、
を含み、
前記樹脂供給パターンは、複数の線状経路を有し、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路のうち一方の線状経路は前記キャビティを線対称に分割する対称軸に対して傾斜し、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路のうち他方の線状経路は、前記一方の線状経路に対して傾斜し、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、少なくとも前記一方の線状経路から前記他方の線状経路が離間する側において、前記被塗布物の外側に開放されている、樹脂封止品の製造方法。
【請求項17】
前記被塗布物は、供給された樹脂を用いて封止されるワークである、
請求項16に記載の樹脂封止品の製造方法。
【請求項18】
前記被塗布物は、供給された樹脂をワークに引き渡すリリースフィルムである、
請求項16に記載の樹脂封止品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮成形によってワークを樹脂封止することが知られている。このような圧縮成形による樹脂封止装置は、一般的に、ワーク上又はリリースフィルム上に樹脂を供給する樹脂供給装置と、樹脂をワーク上に押し広げて加熱加圧する樹脂封止金型とを備えている。
【0003】
ここで、特許文献1には、樹脂供給装置が供給する樹脂供給パターンについて、真空状態としたチャンバ内で、渦巻き状や格子状の樹脂供給パターンを形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-134846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された樹脂供給装置のように真空チャンバ内で樹脂を供給しても、成形を行う金型内においてエアや樹脂から発生するガスが存在している場合にはこれが樹脂に巻き込まれてしまい、充填不良によるエアトラップやボイドのような欠陥を発生させる場合がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、欠陥の発生を抑制できる樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る樹脂供給装置は、樹脂封止金型の下型に配置される被塗布物上に樹脂を供給する樹脂供給装置であって、樹脂封止金型のキャビティの形状に基づいて樹脂供給パターンを算出する算出部と、樹脂供給パターンに沿って被塗布物に樹脂を供給する供給部と、を備え、樹脂供給パターンは、複数の線状経路を有し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路のうち一方の線状経路はキャビティを線対称に分割する対称軸に対して傾斜し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路のうち他方の線状経路は、一方の線状経路に対して傾斜し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、少なくとも一方の線状経路から他方の線状経路が離間する側において、被塗布物の外側に開放されている。
【0008】
この態様によれば、隣接する線状経路の間の領域が排気のための流路として機能する。また、樹脂が被塗布物上に押し広げられる際、互いに隣接する線状経路の間の領域は、一方の線状経路に他方の線状経路が接近する側から、一方の線状経路から他方の線状経路が離間する側に向かって徐々に樹脂が充填される。このため、被塗布物上に樹脂が広がる途中で、全方位を樹脂に囲まれた領域が発生せず、隣接する線状経路の間の領域が排気のための流路として機能する。したがって、隣接する線状経路の間の領域に残存するエアや樹脂から発生したガスが樹脂に巻き込まれるのを抑制でき、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0009】
上記態様において、複数の線状経路は、第1線状経路と、第1線状経路に隣接する第2線状経路と、第2線状経路に隣接する第3線状経路とを有し、第2線状経路は、第1線状経路に接近する側の端部で第1線状経路に接続し、第3線状経路に接近する側の端部で第3線状経路に接続されていてもよい。
【0010】
上記態様において、樹脂供給パターンは、連続した1本の線状でもよい。
【0011】
上記態様において、樹脂供給パターンの角部は、R形状を有してもよい。
【0012】
上記態様において、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、一方の線状経路に他方の線状経路が接近する側において、被塗布物の外側に開放されていてもよい。
【0013】
上記態様において、被塗布物は、供給された樹脂を用いて封止されるワークでもよい。
【0014】
上記態様において、被塗布物は、供給された樹脂をワークに引き渡すリリースフィルムでもよい。
【0015】
上記態様において、樹脂封止金型のキャビティの形状を取得し、算出部に提供する取得部をさらに備えてもよい。
【0016】
上記態様において、算出部は、被塗布物に供給された樹脂によって封止されるワークの形状を加味して樹脂供給パターンを算出してもよい。
【0017】
上記態様において、算出部は、供給された樹脂を用いて封止されるワーク上の素子の配置情報を加味して樹脂供給パターンを算出してもよい。
【0018】
上記態様において、対称軸は、素子が整列する方向に延在してもよい。
【0019】
上記態様において、樹脂供給パターンは、ワークにおける素子の面積率が小さい領域における樹脂の供給量が、素子の面積率が大きい領域における樹脂の供給量よりも多くなるように算出されてもよい。
【0020】
上記態様において、複数の線状経路は、ワークの中央部において互いに隣接する一組の線状経路と、ワークの端部において互いに隣接する他の一組の線状経路とを含み、一組の線状経路の成す角度は、他の一組の線状経路の成す角度よりも大きくてもよい。
【0021】
上記態様において、複数の線状経路は、ワークの中央部において互いに隣接する一組の線状経路と、ワークの端部において互いに隣接する他の一組の線状経路とを含み、一組の線状経路の成す角度は、他の一組の線状経路の成す角度よりも小さくてもよい。
【0022】
本発明の一態様に係る樹脂封止装置は、上記態様のいずれかの樹脂供給装置と、ワーク上の素子を樹脂封止する樹脂封止金型と、を備え、樹脂封止金型は、樹脂が充填されるキャビティと、キャビティからエアを排出する複数のエアベントとを有し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域の延長線上に、複数のエアベントのうち少なくとも1つが位置するように、樹脂封止金型に被塗布物が設置される。
【0023】
この態様によれば、型締めして樹脂を加熱加圧する際に、線状経路の間の領域の延長線上に設けられたエアベントは、互いに隣接する線状経路の間の領域が樹脂で埋まりきるまで閉塞しない。したがって、隣接する線状経路の間の領域に残存するエアや樹脂から発生したガスが、樹脂封止金型の内部で樹脂に巻き込まれるのを抑制でき、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0024】
本発明の一態様に係る樹脂封止品の製造方法は、樹脂封止金型の下型に配置される被塗布物上に樹脂を供給することを含む樹脂封止品の製造方法であって、樹脂封止金型のキャビティの形状に基づいて樹脂供給パターンを算出することと、樹脂供給パターンに沿って被塗布物に樹脂を供給することと、を含み、樹脂供給パターンは、複数の線状経路を有し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路のうち一方の線状経路はキャビティを線対称に分割する対称軸に対して傾斜し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路のうち他方の線状経路は、一方の線状経路に対して傾斜し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、少なくとも一方の線状経路から他方の線状経路が離間する側において、被塗布物の外側に開放されている。
【0025】
この態様によれば、隣接する線状経路の間の領域が排気のための流路として機能する。また、樹脂が被塗布物上に押し広げられる際、互いに隣接する線状経路の間の領域は、一方の線状経路に他方の線状経路が接近する側から、一方の線状経路から他方の線状経路が離間する側に向かって徐々に樹脂が充填される。このため、被塗布物上に樹脂が広がる途中で、全方位を樹脂に囲まれた領域が発生せず、隣接する線状経路の間の領域が排気のための流路として機能する。したがって、隣接する線状経路の間の領域に残存するエアや樹脂から発生したガスが樹脂に巻き込まれるのを抑制でき、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0026】
上記態様において、被塗布物は、供給された樹脂を用いて封止されるワークでもよい。
【0027】
上記態様において、被塗布物は、供給された樹脂をワークに引き渡すリリースフィルムでもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、欠陥の発生を抑制できる樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
図2】樹脂封止金型内のワーク及び樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
図3】第1実施形態に係る樹脂封止装置を用いた樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。
図4】樹脂封止金型の内部にセットされた直後のワーク上の樹脂を概略的に示す断面図である。
図5】樹脂封止金型によって押し広げられている途中の樹脂を概略的に示す断面図である。
図6】加熱加圧によってキャビティ内に充填した樹脂を概略的に示す断面図である。
図7】変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
図8】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
図9】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
図10】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
図11】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
図12】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
図13】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
図14】第2実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
図15】第2実施形態に係る樹脂封止装置を用いた樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0031】
<第1実施形態>
図1及び図2を参照しつつ、本発明の実施形態に係る樹脂封止装置1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。図2は、樹脂封止金型内のワーク及び樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
【0032】
各々の図面には、各々の図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜的にX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系を付すことがある。Z軸の矢印の向く方向を上方向、Z軸の矢印の向きとは反対方向を下方向とする。
【0033】
樹脂封止装置1は、ワーク10を樹脂13で樹脂封止(モールド成形)するために用いられる装置である。樹脂封止装置1は、樹脂封止用の樹脂13を被塗布物(例えば、ワーク10やリリースフィルムRF)上に塗布(供給)する樹脂供給装置100と、樹脂を加熱加圧して硬化させる樹脂封止金型200とを備えている。ワーク10は、例えば、基板11と基板11上に配置された素子12とを備え、素子12は第1方向X及び第2方向Yにそれぞれ配列している。以下の説明において、第3方向Zの正方向(以下、上方向という)側からワーク10を平面視したときの、基板11の縁から最外縁の素子12までの領域を「ワーク10の外部領域」とする。ワーク10の外部領域のうち、樹脂封止金型200によって挟まれる領域を「外部領域10A」とし、外部領域10Aよりも素子12側の領域を「外部領域10B」とする。
【0034】
基板11及び素子12の構成は限定されるものではないが、一例として、基板11は半導体ウェハであり、素子12は基板11にフリップチップ実装された半導体チップとすることができる。この場合には、樹脂13を供給する時点で、基板11と素子12との間には間隙が存在するが、加熱加圧により樹脂がこの隙間に充填される。本発明はこの態様に限られるものではなく、例えば、基板11と素子12との間に隙間がなく、単に基板11に素子12が搭載されたものでもよく、基板11と素子12との間にアンダーフィル樹脂が充填されているものに適用してもよい。また、素子12は、複数の半導体チップが第3方向Zに間隔を空けて積層された多層体でもよく、半導体素子以外の素子(MEMSデバイスや電子デバイスなど)でもよい。素子12の基板11への配置態様は限定されるものではなく、例えば、素子12が基板11にワイヤボンディング実装されていてもよく、あるいは素子12が基板11に着脱可能に固定されていてもよい。基板11は樹脂基板やガラス基板でもよく、インタポーザ基板、リードフレーム、粘着シート付きキャリアプレートなどでもよい。上側からワーク10を平面視したとき、例えば、基板11の平面形状は円形状であり素子12の平面形状は矩形状であるが、基板11及び素子12の平面形状はこれらに限定されるものではない。例えば、基板の平面形状は矩形状でもよく、素子の平面形状は多角形状や円形状でもよい。ワークには形状の異なる2種類以上の素子が配置されてもよい。
【0035】
樹脂供給装置100は、取得部110と、供給部120と、算出部130と、駆動部140と、ステージ150とを備えている。
【0036】
取得部110は、樹脂封止金型200の樹脂13が充填される内部空間を構成するキャビティ201の構造情報(例えば、キャビティ201の形状や大きさなどに関する情報)を取得する。取得部110は、例えば、外部端末などから入力されることによって構造情報を取得する。キャビティ201の構造情報の取得方法は上記に限定されるものではなく、例えば、取得部110は、樹脂封止金型200に付与されたコードなどを読み取ることにより、予め記録されたデータベースから当該コードなどに対応する構造情報を取得してもよい。
【0037】
取得部110は、キャビティ201の構造情報だけではなく、ワーク10(より具体的には基板11)上の素子12の配置情報(例えば、素子12の形状や大きさ、配列の方向や数や間隔、などに関する情報)を取得する。取得部110は、例えば、ワーク10を撮像して画像解析によって素子12の配置情報を取得する。取得部110は、ワーク毎に配置情報を取得してもよく、複数のワークを有するロット毎に配置情報を取得してもよい。なお、素子12の配置情報の取得方法は上記に限定されるものではなく、例えば、取得部110は、ワーク10に付与されたコードなどを読み取ることにより、予め記録されたデータベースから当該コードなどに対応する配置情報を取得してもよい。また、取得部110は、外部端末などから入力されることによって配置情報を取得してもよい。また、取得部110は、ウェハのようなワーク10においてVノッチなどの位置を検出しワーク10の向きを取得してもよい。樹脂供給装置100は、取得部110が取得したワーク10の向きに基づいてワーク10の向きを合わせた後に、後述する樹脂13を供給することもできる。
【0038】
供給部120は、被塗布物(ワーク10又はリリースフィルムRF)上に樹脂13を供給する。供給部120は、例えば、液状の樹脂13を吐出するディスペンサである。供給部120は、樹脂13が貯留されるシリンジ121と、シリンジ121の内部に挿入されて樹脂13を押し出し可能なプッシャ(ピストン)122と、シリンジ121の先端のノズルの開閉を行うピンチバルブ123とを備えている。供給部120には、シリンジ121内に貯留された樹脂13を使い終わったときに、使用済みシリンジ121を新しいシリンジ121に交換可能な構成が設けられている。なお、供給部120は上記に限定されるものではなく、ピンチバルブ123の代わりに開閉弁を備えてもよい。また、供給部120は2液を別に準備しその場で混合して供給する構成であってもよい。例えば、供給部120は粉粒体の樹脂を吐出するフィーダでもよい。
【0039】
算出部130は、取得部110からもたらされた樹脂封止金型200のキャビティ201の形状に基づいて、樹脂供給パターン(被塗布物上に塗布される樹脂13の形状)を算出する。算出部130において算出される樹脂供給パターンは、第1方向Xに沿って延在し、第2方向Yに並ぶ複数の線状経路14を有している。
【0040】
図2に示すように上側からワーク10を平面視したとき(以下、単に「平面視したとき」とする。)、複数の線状経路14は、キャビティ201を線対称に分割する対称軸SMに対して傾斜している。キャビティ201の対称軸SMは第1方向Xに対して平行であるため、複数の線状経路14は、第1方向Xから第2方向Yに向かって傾斜しており、線状経路14の第1方向Xからの傾斜角は鋭角である。互いに隣接する線状経路14はそれぞれ第1方向Xに対して逆方向に傾斜し、互いに隣接する線状経路14のうち一方の線状経路は、他方の線状経路に対して傾斜している。つまり、互いに隣接する線状経路14のうち一方の線状経路は、第1方向Xの正方向側又は負方向側に向かうにつれて、他方の線状経路に接近している。
【0041】
例えば、互いに隣接する線状経路14のうち一方の線状経路が他方の線状経路に接近する側において、互いに隣接する線状経路14の端部は重なっている。つまり、互いに隣接する線状経路14は、ワーク10の最外縁の素子12上で互いに接続されており、連続した1本の線状である。樹脂供給パターンは全体を通して連続した1本の線状であり、樹脂供給パターンの全体において、樹脂13を一筆書きで供給できる。言い換えると、樹脂供給パターンは、傾斜した線状経路が端部で繋がるように繰り返し折り返されることで1本の線状のパターンとして形成される。また、互いに隣接する線状経路14の成す角度は、ワーク10の位置に依らず一定である。また、互いに隣接する線状経路14は、ワーク10の最外縁の素子12に至るまで延在している。このため、ワーク10に対し全体的に樹脂13を供給することができる。
【0042】
ワーク10を平面視したとき、複数の線状経路14における互いに隣接する線状経路14の間の領域19は、互いに隣接する線状経路14のうち一方の線状経路が他方の線状経路から離間する側において、ワーク10の外側に開放されている。互いに隣接する線状経路14の間の領域19は、ワーク10の外側に開放されている側とは反対側において、互いに接続された線状経路14によって塞がれている。
【0043】
樹脂供給パターンの角部は、尖鋭形状を有していてもよいし、あるいはR形状を有していてもよい。
【0044】
第1線状経路14A、第1線状経路14Aに隣接する第2線状経路14B、及び第2線状経路14Bに隣接する第3線状経路14Cを例に挙げ、樹脂供給パターンについてより具体的に説明する。ワーク10を平面視したとき、第1線状経路14A及び第3線状経路14Cは第1方向Xから時計回り方向に鋭角に傾斜し、第2線状経路14Bは第1方向Xから反時計回りに傾斜している。第2線状経路14Bは、第1方向の負方向側で第1線状経路14Aに接近し、第1方向Xの正方向側で第3線状経路14Cに接近している。第1線状経路14A及び第2線状経路14Bのそれぞれの第1方向Xの負方向側における端部は最外縁の素子12上で重なっており、第2線状経路14B及び第3線状経路14Cのそれぞれの第1方向Xの正方向側における端部は最外縁の素子12上で重なっている。言い換えると、第2線状経路14Bは、第1線状経路14Aに接近する側(第1方向Xの負方向側)の端部で第1線状経路14Aに接続し、第3線状経路14Cに接近する側(第1方向Xの正方向側)の端部で第3線状経路14Cに接続している。第1線状経路14A、第2線状経路14B及び第3線状経路14Cに沿って、樹脂13は一筆書きで供給できる。第1線状経路14Aと第2線状経路14Bとが成す角度は、第2線状経路14Bと第3線状経路14Cとが成す角度と略同じである。
【0045】
ワーク10を平面視したとき、第1線状経路14Aと第2線状経路14Bとの間の領域19Aは、第1方向Xの負方向側(第1線状経路14Aが第2線状経路14Bに接近する側)で塞がれ、第1方向Xの正方向側(第1線状経路14Aが第2線状経路14Bから離間する側)でワーク10の外側に開放されている。反対に、第2線状経路14Bと第3線状経路14Cとの間の領域19Bは、第1方向Xの正方向側(第3線状経路14Cが第2線状経路14Bに接近する側)で塞がれ、第1方向Xの負方向側(第3線状経路14Cが第2線状経路14Bから離間する側)でワーク10の外側に開放されている。第1線状経路14Aと第2線状経路14Bとの間の領域19Aは、樹脂供給パターンの他の部分によって区画されず、第1方向Xで連続している。第2線状経路14Bと第3線状経路14Cとの間の領域19Bも同様に、第1方向Xで連続している。
【0046】
駆動部140は、樹脂供給パターンに沿って、固定されたワーク10に対して供給部120を移動させる。具体的には、駆動部140は、上ベース部141と、第1モータ142Mと、第1移動部142と、第2モータ143Mと、第2移動部143と、第3モータ144Mと、第3移動部144と、第4モータ122Mとを備えている。
【0047】
第1移動部142は上ベース部141に対して第1方向Xに移動可能に構成され、第2移動部143は第1移動部142に対して第2方向Yに移動可能に構成され、第3移動部144は第2移動部143に対して第3方向Zに移動可能に構成されている。具体的には、上ベース部141はレールを有し、第1移動部142は、上ベース部141のレール上を第1モータ142Mの駆動によってスライドするスライダを有している。第1移動部142はレールを有し、第2移動部143は、第1移動部142のレール上を第2モータ143Mの駆動によってスライドするスライダを有している。第2移動部143はレールを有し、第3移動部144は、第2移動部143のレール上を第3モータ144Mの駆動によってスライドするスライダを有している。第3移動部144には、供給部120のシリンジ121が固定されている。第3移動部144はレールを有し、供給部120のプッシャ122は、第3移動部144のレール上を第4モータ122Mの駆動によってスライドするスライダを有している。すなわち、第1モータ142Mが供給部120の第1方向Xの移動量及び移動速度を制御し、第2モータ143Mが供給部120の第2方向Yの移動量及び移動速度を制御し、第3モータ144Mが供給部120の第3方向Zの移動量及び移動速度を制御する。そして、第4モータ122Mが、プッシャ122の移動量及び移動速度を制御することにより、供給部120からの樹脂13の吐出量及び吐出速度を制御する。
【0048】
なお、駆動部140は上記に限定されるものではなく、樹脂供給パターンに沿って、ワーク10及び供給部120の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させればよい。例えば、駆動部140は、供給部120を固定し、ワーク10が載置されたステージ150を供給部120に対して移動させてもよく、ワーク10及び供給部120の両方を移動させてもよい。
【0049】
ステージ150は、ワーク10が載置される。ステージ150は、例えば、重量計を備えている。樹脂供給装置100は、ステージ150の重量計によってワーク10上に供給された樹脂13の重量を計測しながら、樹脂13の供給量を調整する。具体的には、重量計の計量結果に基づき、駆動部140の第1モータ142M~第4モータ122Mの駆動を変化させる。このような構成により、任意の吐出速度で樹脂13を供給しながら任意の移動速度でシリンジ121を移動させることでワーク10に任意の形状で任意の量の樹脂13を供給することができる。例えば、第1方向X及び第2方向Yにおける移動速度を早くすると同じ吐出速度でも所定の長さにおける供給量を少なくすることもでき、第1方向X及び第2方向Yにおける移動速度を遅くすると同じ吐出速度でも所定の長さにおける供給量を多くすることもできる。
【0050】
樹脂封止金型200は、圧縮成形技術を用いてワーク10を樹脂封止するための一対の金型(下型210及び上型220)である。本実施形態において、樹脂封止金型200は、上型220にキャビティ201を有する上型キャビティ構造である。また、樹脂封止金型200は、樹脂封止金型200の内部(下型210と上型220との間の空間)をシールするシールリング203(例えばOリング)を備えている。なお、図示しないが、樹脂封止装置1は、樹脂封止金型200の内部圧力を調節する圧調節部(例えば真空ポンプ)や、内部温度(成形温度)を調節する温度調節部(例えばヒータ)を備えている。
【0051】
上型220は、チェイス221と、キャビティ駒223と、キャビティ駒223を囲むクランパ225と、間隔を空けてクランパ225を囲むチャンバブロック227とを備えている。キャビティ駒223はチェイス221に固定されている。クランパ225は、キャビティ駒223よりも下型210に向かって突出し、キャビティ駒223とともにキャビティ201を構成している。クランパ225は、スプリングを介してチェイス221に接続され、キャビティ駒223に対して摺動可能に構成されている。型締めしたとき、クランパ225と下型210との間に、ワーク10の外部領域10Aが挟まれる。クランパ225の下面(下型210に対向する面)には、チャンバブロック227側の空間とキャビティ201とを繋ぐ複数の凹部のエアベント226が設けられている。複数のエアベント226は、キャビティ201を中心とした放射状に延在している。型締めされた上型220と下型210との間において、エアベント226を介しキャビティ201内のエアを排出する。なお、各図面においてエアベント226は、理解の用意のために深く図示しているが、実際には金型内のエアやガスは排出されるが、樹脂13は流出しないような深さ(例えば数μm程度)に形成されている。チャンバブロック227の一部には、ポンプに接続されてキャビティ201内のエアを排出するための排気孔228が設けられている。チャンバブロック227の排気孔228は、キャビティ201を中心とした放射状に延在している。シールリング203は、チャンバブロック227と下型210とによって挟まれる。
【0052】
型締めされた樹脂封止金型200において、複数のエアベント226のうち少なくとも1つは、複数の線状経路14における互いに隣接する線状経路14の間の領域19の延長線上に設けられていてもよい。例えば図2に示すように、第1線状経路14Aと第2線状経路14Bとの間の領域19Aの延長線上には、エアベント226が設けられている。
【0053】
次に、図3乃至図6を参照しつつ、本実施形態に係る樹脂封止装置1を用いた樹脂封止品の製造方法について説明する。図3は、第1実施形態に係る樹脂封止装置を用いた樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。図4は、樹脂封止金型の内部にセットされた直後のワーク上の樹脂を概略的に示す断面図である。図5は、樹脂封止金型によって押し広げられている途中の樹脂を概略的に示す断面図である。図6は、加熱加圧によってキャビティ内に充填した樹脂を概略的に示す断面図である。なお、説明の簡略化のため、図4乃至図6においてチャンバブロック227の図示を省略している。
【0054】
まず、キャビティ201の構造情報を取得する(S11)。例えば、使用する樹脂封止金型200の型番を外部端末から取得部110に入力し、当該型番に対応するキャビティ201の構造情報をデータベースから取得させる。このとき、取得部110には、ワーク10上の素子12の配置情報も取得させる。例えば、取得部110によってワーク10を撮像し、ワーク10の画像を解析して、第1方向X及び第2方向Yに配列する素子12の配置情報を取得する。
【0055】
次に、キャビティ201の構造情報に基づいて樹脂供給パターンを算出する(S12)。例えば、算出部130は、取得部110によって登録されたキャビティ201の構造情報をもとに、事前に登録されたルール(例えば、キャビティ201の対称軸SMに対する線状経路14の傾斜角、線状経路14の太さや長さ、など)に則って、樹脂供給パターンを算出し、供給部120の望ましい移動経路、移動速度などを決定する。なお、キャビティ201の構造情報としては、キャビティの内周寸法や最終成形時のキャビティの深さなどが挙げられる。
【0056】
次に、樹脂供給パターンに沿ってワーク10上に樹脂13を供給する(S13)。ここでは、ワーク10が第1方向X、第2方向Y、及び、Z軸を中心とした回転方向における位置決めがされた状態で樹脂供給パターンに基づき駆動部140を駆動させ、供給部120をワーク10に対して移動させる。供給部120が供給開始位置(樹脂供給パターンの一端)に移動したら、シリンジ121に対してプッシャ122を押し込みつつピンチバルブ123を開き、樹脂13の供給を開始させる。樹脂13の供給を続ける供給部120を樹脂供給パターンに沿って移動させ、供給部120が供給終了位置(樹脂供給パターンの他端)に移動したら、シリンジ121に対してプッシャ122を停止させつつピンチバルブ123を閉じ、樹脂13の供給を終了させる。
【0057】
次に、リリースフィルムRFを上型220にセットし、ワーク10を下型210にセットする。キャビティ201を覆うようにリリースフィルムRFを型開きした樹脂封止金型200の内部に搬入する。リリースフィルムRFは、例えば、金型の前方に設けた未使用フィルムのロールから送り出し、金型の後方に設けた使用後フィルムのロールで巻き取ることで供給されてもよい。キャビティ駒223とクランパ225との間の隙間や、図示を省略した上型220中の吸気孔からエアを抜き、リリースフィルムRFを上型220に吸着させる。また、樹脂13が供給されたワーク10を型開きした樹脂封止金型200の内部に搬入する。図示を省略した上型220中の吸気孔からエアを抜き、ワーク10を下型210に吸着させる。
【0058】
次に、型締めにより樹脂13を押し広げる(S15)。
【0059】
まず、図4に示すように、例えばフリップチップ実装された素子12と基板11を有するワーク10の外部領域10Aをクランパ225と下型210とで挟む。このとき、図示を省略しているが、チャンバブロック227と下型210とでシールリング203を挟んでいる。クランパ225の下面に設けられた浅い掘り込みは、下型210とクランパ225との間(ワーク10とクランパ225との間)にエアベント226を形成し、当該エアベント226を通してクランパ225の内側の空間(キャビティ201)とクランパ225の外側の空間とが繋がっている。これにより、図4に示す金型におけるエアはチャンバブロック227の外側に排出される。
【0060】
次に、図5に示すように、減圧状態となった金型において樹脂13がキャビティ駒223によって押し広げられる。このとき、素子12とリリースフィルムRFとの間の隙間だけでなく、ワーク10とフリップチップ実装された素子12との間の隙間にも樹脂13を侵入させアンダーフィルさせることができる。樹脂13が押し広げられる過程で、互いに隣接する線状経路14の間の領域19は、一方の線状経路が他方の線状経路に接近する側から樹脂13によって充填される。ワーク10上では互いに隣接する経路の線状経路14の間の領域19は、樹脂13による充填が完了するまで、樹脂13によって分断されないため、エアベント226からエアを排出することができる。
【0061】
さらに型締めすることでキャビティ駒223を相対的に下降させ、図6に示すように、キャビティ201全体に樹脂13が広がり、素子12と基板11との間隙などの微細な空間も樹脂13によって充填される。これにより、エアベント226の手前まで樹脂13が充填される。ここでは、図示しないヒータにより加熱しながら樹脂13を軟化させキャビティ駒223によって加圧することで、樹脂13をキャビティ内で充填(モールド)させながら、ワーク10とフリップチップ実装された素子12との間の隙間に樹脂13をアンダーフィルさせる。
【0062】
最後に、所定時間だけ加熱加圧(キュア)を継続させて樹脂13を硬化させる(S16)。こうしてワーク10の樹脂封止を完了させる。
【0063】
上記実施形態で説明した構成によれば、キャビティ201の形状に基づいて算出部130が算出する樹脂供給パターンは、複数の線状経路14を有し、互いに隣接する線状経路14のうち一方の線状経路はキャビティ201の対称軸SMに対して傾斜し、他方の線状経路は一方の線状経路に対して傾斜し、互いに隣接する線状経路14の間の領域19は、少なくとも隣接する線状経路14のうち一方の線状経路が他方の線状経路から離間する側においてワーク10の外側に開放されている。これによれば、樹脂封止金型200で樹脂13を押し広げてワーク10を樹脂封止するとき、樹脂封止金型200の内部に残存するエアや、樹脂13から発生したガスを、領域19を通して排出できる。このため、樹脂13によるエアなどの抱え込みによる欠陥(例えばエアトラップや未充填)の発生を抑制できる。これによれば、ワーク10の細部への樹脂13の侵入がエアなどによって阻害され難い場合、例えばフリップチップ実装された素子12と基板11との間に間隙への樹脂13の充填を促進して充填不良の発生を抑制できる。
【0064】
第1線状経路14Aと第3線状経路14Cの間に位置する第2線状経路14Bは、一端部で第1線状経路14Aの端部に接続し、他端部で第3線状経路14Cの端部に接続されている。また、樹脂供給パターンは連続した1本の線状である。これによれば、隣接する線状経路同士が少なくともいずれかの端部側では接続されていない形状としてエアの排気を行いながら、樹脂13を一筆書きで供給できる。このため、供給の途中で樹脂13の吐出を止める必要がなく、樹脂13を連続して吐出することで効率的にワーク10上に樹脂13を供給できる。
【0065】
樹脂供給装置100は、ワーク10の形状や素子12の配置情報を取得する取得部110を備えてもよい。算出部130は、ワーク10の形状や素子12の配置情報を加味して樹脂供給パターンを算出してもよい。これによれば、基板11と素子12との間隙などの微細な空間に効率よく樹脂13を侵入させることができ、封止不良の発生を抑制できる。
【0066】
素子12の配置情報を加味することで、樹脂13の供給量を調整してもよい。例えば、ワーク10上における素子12の単位面積当たりの占有面積の割合(以下、「面積率」とする。)が小さい領域における樹脂13の供給量が、素子12の面積率が大きい領域における樹脂13の供給量よりも大きくなるように、樹脂供給パターンを算出してもよい。これによれば、樹脂13の加熱加圧時に樹脂13が不足することによる欠陥の発生を抑制できる。
【0067】
互いに隣接する線状経路14は、ワーク10上の最外縁の素子12に至るまで延在し、最外縁の素子12上で互いに接続している。これによれば、最外縁の素子12の内側の素子12上で互いに隣接する線状経路14が互いに接続する樹脂供給パターンに比べて、素子12が存在しない分だけ樹脂13の必要量が多いワーク10の外部領域10B上の空間において樹脂13が不足することによる欠陥の発生を抑制できる。
【0068】
エアベント226は、互いに隣接する線状経路14の間の領域19の延長線上に設けられている。これによれば、互いに隣接する線状経路14の間の領域19が樹脂13で埋まるまでエアベントは閉塞せず、樹脂封止金型200の内部から排気できる。
【0069】
本実施形態では、取得部110が素子12の配置情報とキャビティ201の構造情報とを取得しているが、取得部110は、キャビティ201の構造情報のみを取得し、素子12の配置情報の取得は実施しなくてもよい。また、素子12の配置情報を取得する取得部と、キャビティ201の構造情報を取得する取得部とは、別個に設けられてもよい。
【0070】
また、樹脂供給パターンは上記に限定されるものではない。互いに隣接する線状経路14のうち少なくとも1つがキャビティ201の対称軸SMに対して傾斜していればよく、互いに隣接する線状経路14のうち一方の線状経路が他方の線状経路に対して傾斜していればよい。互いに隣接する線状経路14は、ワーク10の外部領域10B上で互いに接続されてもよい。互いに隣接する線状経路14は、ワーク10上の最外縁の素子12を除いて最外縁の素子12よりも内側の素子12に至るまで延在し、互いに隣接する線状経路14が最外縁の素子12よりも内側の素子12上で互いに接続されてもよい。互いに隣接する線状経路14が離間し、互いに隣接する線状経路14の間の領域19が第1方向Xの正方向側と負方向側の両方でワーク10の外側に開放されてもよい。第2方向Yにおけるワーク10の中央部で互いに隣接する線状経路14が成す角度は、第2方向Yにおけるワーク10の端部で互いに隣接する線状経路14が成す角度と異なってもよい。
【0071】
以下に、樹脂供給パターンの変形例及び本発明の他の実施形態に係る樹脂封止装置の構成について説明する。なお、上記第1実施形態と共通の事柄については以下の各態様においても同様に適用できるものとしその記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成には同様の符号を付し、同様の構成とそれによる同様の作用効果については逐次言及しない。
【0072】
図7から図12はそれぞれ異なる変形例に係る樹脂供給パターンの平面概略図を示したものである。
【0073】
図7に示すように、ワーク20を平面視したとき、複数の線状経路24のうち互いに隣接する線状経路24のうち一方の線状経路は、キャビティの対称軸SMに対して傾斜し、他方の線状経路は、一方の線状経路に対して傾斜し且つキャビティの対称軸SMに対して平行である。
【0074】
図8に示すように、ワーク30を平面視したとき、互いに隣接する線状経路34は、第2方向Yに延在する中継経路35によって接続されている。中継経路35は例えば円弧状である。互いに隣接する線状経路34が中継経路35を介して接続されることで、互いに隣接する線状経路34の間隔や、互いに隣接する線状経路34の成す角度についての設計自由度が向上する。なお、中継経路35は、互いに隣接する線状経路34の間の領域39にくびれを形成せず且つ領域39を区画しないものであれば、上記に限定されるものではない。例えば、中継経路35は、直線状であり、線状経路34との接続部分で尖鋭形状を形成してもよい。
【0075】
図9に示すように、ワーク40を平面視したとき、互いに隣接する線状経路44は、離間している。互いに隣接する線状経路44の間の領域49は、互いに隣接する線状経路44のうち一方の線状経路に他方の線状経路が接近する側において、ワーク40の外側に開放されている。すなわち、互いに隣接する線状経路44の間の領域49は、キャビティの対称軸SMに対して平行な第1方向Xの正方向側及び負方向側の両方で、ワーク40の外側に開放されている。
【0076】
図10に示すように、ワーク50には、素子52Aと、素子52Aよりも大きい素子52Bとが配置されている。素子52Aは素子52Bよりも低背であり、素子52Aの面積率が素子52Bの面積率よりも小さい。このため、素子52Aが配置された領域は、素子52Bが配置された領域よりも多くの樹脂53が必要となる。したがって、素子52Bが配置された領域上を延在する線状経路54に比べて、素子52Aが配置された領域上を延在する線状経路54を太くすることで、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0077】
図11に示すように、ワーク60を平面視したとき、第2方向Yにおけるワーク60の中央部で互いに隣接する線状経路64が成す角度は、第2方向Yにおけるワーク60の端部で互いに隣接する線状経路64の成す角度よりも大きい。これによれば、外部領域60Bが大きいワーク60の端部における樹脂63の供給量を、外部領域60Bが小さいワーク60の中央部における樹脂63の供給量よりも多くすることで、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0078】
図12に示すように、ワーク70を平面視したとき、第2方向Yにおけるワーク70の中央部で互いに隣接する線状経路74が成す角度は、第2方向Yにおけるワーク70の端部で互いに隣接する線状経路74の成す角度よりも小さい。これによれば、ワーク70の中央部において互いに隣接する線状経路74の間の領域79の開放端の幅を、ワーク70の端部において互いに隣接する線状経路74の間の領域79の開放端の幅と略同じ大きさにできる。このように、互いに隣接する線状経路74の間の領域79の幅を適宜調整することで、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0079】
図7から図12に示された第1実施形態の変形例であっても、図2に示された第1実施形態と同様に充填不良による欠陥の発生を抑制できる。なお、上記説明した図2及び図7から図12のそれぞれの樹脂供給パターンは、一つのワークに対して適宜組み合わせて適用することができる。
【0080】
図13はワークの変形例で、パネルレベルパッケージ(PLP:PanelLevelPackaging)で用いられる矩形状のワーク10の場合を示したものである。図13に示すように、ワーク80を平面視したとき、基板81(ワーク80)は、一対の短辺と一対の長辺とを有する矩形状である。線状経路84は、基板81の短辺に沿って延在しており、より具体的には、基板81の短辺に対して傾斜し、基板81の長辺に沿って並んでいる。これによれば、線状経路84が基板81の長辺に沿って延在する構成に比べて、互いに隣接する線状経路84の間の領域89の長さを短くして、この領域89に樹脂83を押し広げられる工程の途中で線状経路84の樹脂13同士が接触することで閉塞し、エアが樹脂83に巻き込まれるのを抑制できる。なお、図13に示す変形例は、上記の各樹脂供給パターンに適宜適用することができる。
【0081】
<第2実施形態>
図14を参照しつつ、第2実施形態に係る樹脂供給パターンの構成について説明する。図14は、第2実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
【0082】
本実施形態にいて、被塗布物は、供給された樹脂13をワーク10に引き渡すリリースフィルムRFである。ステージ150の上にはリリースフィルムRFが載置され、取得部110が取得したキャビティ901の形状に関する情報に基づいて駆動部140が供給部120を移動させ、リリースフィルムRF上に樹脂13が供給される。樹脂封止金型900は、キャビティ901を有する下型910と、上型920とを備えた下型キャビティ構造である。下型910にはリリースフィルムRFがセットされ、上型920にはワーク10がセットされる。下型910は、キャビティ901を構成するキャビティ駒913及びクランパ915を有し、クランパ915の上面(上型920に対向する面)には、型締めされたときにエアベント916が設けられている。
【0083】
次に、図14を参照しつつ、本実施形態に係る樹脂封止装置9を用いた樹脂封止品の製造方法について説明する。図15は、第2実施形態に係る樹脂封止装置を用いた樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。
【0084】
まず、キャビティ901の構造情報を取得する(S91)。次に、キャビティ901の構造情報に基づいて樹脂供給パターンを算出する(S92)。素子12の配置情報を加味して樹脂供給パターンを算出する場合、リリースフィルムRF上の樹脂供給パターンは、ワーク10上では反転することを考慮する。次に、樹脂供給パターンに沿ってリリースフィルムRF上に樹脂13を供給する(S93)。次に、リリースフィルムRFを下型910にセットし、ワーク10を上型920にセットする(S94)。このとき、リリースフィルムRFとワーク10とは第1方向X、第2方向Y、及び、Z軸を中心とした回転方向における位置決めがされることで、リリースフィルムRF上に塗布された樹脂13がワーク10における素子12に対応する位置に供給されたのと同様の効果を得ることができる。次に、型閉じすることで金型のチャンバからはエアが排出していきながら樹脂13を素子12や基板11に接触させ、型締めにより樹脂13を押し広げる(S95)。下型910にセットされたリリースフィルムRF上の樹脂13を上型920にセットされたワーク10に押し当てて、樹脂13をワーク10とリリースフィルムRFとで挟み込んで押し広げる。ここで、樹脂13を素子12や基板11に接触させる前にエアを排出させることで、リリースフィルムRF上の樹脂13同士が接触することで閉空間が形成されても、エアトラップを防止できるようにも思われる。しかしながら、樹脂13が押し広げられる際に樹脂13が加熱されることで生成されるガスが残存してしまい充填不良の発生するおそれがある。これに対し、本実施形態のようにガスを排出する経路を設けていることで、ガスによるエアトラップのような不具合の発生を抑制することができる。続いて、加熱加圧により樹脂13を硬化させる(S96)。このように、下型キャビティ構造の金型であっても上述した発明と同様の効果を得ることができる。
【0085】
なお、本実施形態で説明した態様は、第1実施形態において説明したいずれか一つ又は複数の樹脂供給パターンを適宜組み合わせて適用することができる。
【0086】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、欠陥の発生を抑制できる樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法が提供できる。
【0087】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…樹脂封止装置、10…ワーク、11…基板、12…素子、13…樹脂、14…線状経路、19…線状経路の間の領域、100…樹脂供給装置、110…取得部、120…供給部、130…算出部、140…駆動部、150…ステージ、200…樹脂封止金型、201…キャビティ、210…下型、220…上型。
図1
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図15