(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080089
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】タイヤ駆動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 7/18 20060101AFI20220520BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220520BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B60L7/18
B60L50/60
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191061
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】518174732
【氏名又は名称】堤 香津雄
(74)【代理人】
【識別番号】100151046
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶌 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CB02
(57)【要約】
【課題】 従来よりも燃費を向上したタイヤで駆動される電動車両を提供する。
【解決手段】 この電動車両1は、モータ2と、バッテリ3と、インバータ4と、ECU5と、タイヤ6を備える。そして、この電動車両1は、力行時において、タイヤ6に駆動力をかける駆動状態と、バッテリ3に電力を充電する回生状態とを交互に繰り返す制御手段を備える。これにより、従来廃棄されていたタイヤの弾性変形による熱エネルギーの損失を抑えることで、従来の車両よりも燃費が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、バッテリと、タイヤを備えるタイヤ駆動車両であり、
前記モータに前記バッテリの電力を供給してタイヤを駆動する電力供給状態と、
前記電力供給状態において前記タイヤに生じた弾性変形により電力を回生して前記バッテリを充電する電力回生状態と、を交互に繰り返す制御手段を備えたタイヤ駆動車両。
【請求項2】
前記電力供給状態と前記電力回生状態が、前記タイヤが1回転する間に少なくとも1回切り替わる、請求項1に記載のタイヤ駆動車両。
【請求項3】
前記タイヤが30度以内の所定角回転する時間で、前記電力供給状態から前記電力回生状態に切り替わる請求項2に記載のタイヤ駆動車両。
【請求項4】
前記電力供給状態と前記電力回生状態が、前記タイヤがそれぞれ所定角回転する時間に応じて決定される請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ駆動車両。
【請求項5】
前記電力供給状態の時間が前記電力回生状態の時間よりも小さい請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ駆動車両。
【請求項6】
モータと、バッテリと、タイヤを備えるタイヤ駆動車両であり、
前記タイヤ駆動車両の減速時に、
前記モータに生じた回生電力により前記バッテリを充電する電力回生状態と、
前記電力回収状態において前記タイヤに生じた弾性変形を開放する歪み開放状態と、を交互に繰り返す制御手段を備えたタイヤ駆動車両。
【請求項7】
前記タイヤが30度以内の所定角回転する時間で、前記電力回生状態から前記歪開放状態に切り替わる請求項6に記載のタイヤ駆動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に関し、詳しくはバッテリとモータを備えるタイヤ駆動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車やバイクなどのタイヤを装備した車両は、常に燃費向上が求められている。また、ハイブリッド車両や電動車両は、バッテリの寿命や走行距離などの問題から、燃費向上が特に重要である。
【0003】
燃費向上の手段として、回生ブレーキを備える車両が提案されている。特許文献1には、アクセルペダルのOFF操作時に、駆動モータを回生ブレーキ状態に制御する回生ブレーキ制御手段を有する電動車両が開示されている。このように、回生ブレーキは、車両の減速時にモータを回生状態にして発電して、電力を回生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の減速時のみに回生ブレーキを用いて電力を回生しても、回生される電力量は多いとはいえない。それは、車両を減速するタイミングが限られるためである。
【0006】
一方、車両が走行する際、車両は駆動力に対して様々な抵抗を受けて走行する。例えば、車体が受ける空気抵抗、加速時の慣性力による加速抵抗、更にタイヤが受ける転がり抵抗などがある。タイヤの転がり抵抗には、タイヤが弾性変形することによるエネルギーロス、接地摩擦によるエネルギーロス、タイヤの回転に伴う空気抵抗によるエネルギーロスなどがある。この転がり抵抗の中でも、タイヤが弾性変形によって生じる熱エネルギーのロスが非常に大きい。
【0007】
そこで、本願の発明者は、走行時のエネルギーロスを抑え、より多くの電力を回生して燃費を向上すべく、タイヤの弾性変形に着目した。車両が走行する際、タイヤに駆動力がかかり、タイヤが地面を踏み込む時に圧縮され、タイヤが回転して解放された時に膨張して元に戻る。このように、タイヤは弾性変形を繰り返しながら車両は走行しており、タイヤに加えられた駆動力の多くが、この弾性変形に使用され熱エネルギーとして廃棄されている。
【0008】
本願の発明者は、従来無駄に廃棄されているこの熱エネルギーを抑えることで、従来よりも燃費を向上できると考え、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様にかかるタイヤ駆動車両モータは、モータと、バッテリと、タイヤを備えるタイヤ駆動車両であり、前記モータに前記バッテリの電力を供給してタイヤを駆動する電力供給状態と、前記電力供給状態において前記タイヤに生じた弾性変形により電力を回生して前記バッテリを充電する電力回生状態と、を交互に繰り返す制御手段を備えている。
【0010】
この構成によれば、力行時にタイヤに駆動力をかける電力供給状態と電力を回生する電力回生状態とを交互に繰り返す制御を行うことにより、従来走行時に廃棄され続けていたタイヤの弾性変形による熱エネルギーを抑えることが可能となり、燃費が向上する。言い換えれば、タイヤの弾性変形によって生じるタイヤの復元力を利用して電力回生することで、燃費向上を図る。ここで、力行とは、アクセルが踏まれて走行している状態をいう。ここに、電力回生状態は回生ブレーキが作動している状態である。
【0011】
また、前記制御手段は、前記タイヤに駆動力をかけて弾性変形させた直後に、前記電力供給状態から電力回生状態に切り替え、該電力回生状態が所定時間続いた後に該電力回生状態から該電力供給状態に切り替える手段を有することが望ましい。タイヤに駆動力をかける電力供給状態は短い時間とすることが、タイヤの弾性変形による熱エネルギーの廃棄を抑えるために効率がよいためである。
【0012】
本発明のタイヤ駆動車両は、前記電力供給状態と前記電力回生状態が、前記タイヤが1回転する間に少なくとも1回切り替わることが望ましい。タイヤに駆動力をかける電力供給状態は短い時間とすることが高効率であるからである。
【0013】
また、本発明のタイヤ駆動車両は、前記タイヤが30度以内の所定角回転する時間で、前記電力供給状態から前記電力回生状態に切り替わることがより望ましい。電力供給状態を30度以内で電力回生状態に切り替える理由は、タイヤが圧縮されて弾性変形するのは地面に接触する部分であるところ、その部分が30度以内であるので、タイヤが30度回転する時間内で回生状態に切り替わるのが適切である。
【0014】
また、本発明のタイヤ駆動車両は、前記電力供給状態と前記電力回生状態が、前記タイヤがそれぞれ所定角回転する時間に応じて決定される。この構成によれば、車両の速度に応じて、すなわちタイヤが所定角回転する時間に応じて電力供給状態と電力回生状態を制御することで、速度に応じて効率よく熱エネルギーの廃棄を抑えて燃費を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明のタイヤ駆動車両は、前記電力供給状態の時間が前記電力回生状態の時間よりも小さい。モータに電力を供給する電力供給状態を短い時間とし、電力回生してバッテリを充電する電力回生状態をそれよりも長い時間とすることで、タイヤに駆動力をかける時間を短くしてタイヤの弾性変形により生じる熱エネルギーの廃棄を抑えることができる。
【0016】
本発明のタイヤ駆動車両は、モータと、バッテリと、タイヤを備えるタイヤ駆動車両であり、前記タイヤ駆動車両の減速時に、前記モータに生じた回生電力により前記バッテリを充電する電力回生状態と、前記電力回収状態において前記タイヤに生じた弾性変形を開放する歪み開放状態と、を交互に繰り返す制御手段を備えている。
【0017】
本発明のタイヤ駆動車両は、前記タイヤが30度以内の所定角回転する時間で、前記電力回生状態から前記歪開放状態に切り替わる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明にかかる車両によれば、従来廃棄されていたタイヤの弾性変形等による熱エネルギーを抑えることで、従来の車両よりも燃費を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる車両の概略構成を示す図である。
【
図2】走行時の駆動状態と回生状態におけるタイヤの弾性変形の大きさと時間の関係を示す図である。
【
図3】車両走行時のタイヤの状態を示す説明図である。
【
図4】減速時の回生状態と歪開放状態におけるタイヤの弾性変形の大きさと時間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施形態を説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。なお、下記の実施形態は四輪の電動車両を例にとり説明するが、本発明は駆動モータを備える二輪車にも適用可能である。また、電動車両には、電気自動車や、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等が含まれ、駆動モータを備える車両であればよく、特定の電動車両に限るものでもない。なお、説明の都合上、以降、特に断らない限りタイヤ駆動車両を電動車両と称す。
【0021】
<1.電動車両の構成>
図1は、本発明の一実施形態にかかるタイヤ駆動車両の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の電動車両1は、駆動モータ2と、バッテリ3と、インバータ4と、ECU5と、タイヤ6と、速度センサ7とを主要な構成として備える。
【0022】
図1に示すように、駆動モータ2は、インバータ4を介して、バッテリ3と接続されている。また、駆動モータ2には、シャフトを介してタイヤ6が接続されている。駆動モータ2は、バッテリ3から駆動電力が供給されて駆動源として作動し、タイヤ6を回転させる。以下、駆動モータ2に電力供給される電力供給状態を駆動状態と称する場合がある。
【0023】
一方、電動モータ2を回生ブレーキとして作動させる場合、インバータ4をECU5により制御し、駆動モータ2を発電機として作動させ、発電された電力をバッテリ3に充電する。以下、バッテリ3が充電される電力回生状態を単に回生状態と称する場合がある。
【0024】
バッテリ3は、駆動電力をモータ2に供給する放電モードと、モータ2から回生電力を供給する充電モードがある。バッテリを構成する二次電池は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、燃料電池など、充放電可能な蓄電デバイスであればよい。
【0025】
インバータ4にはECU5が接続されていて、ECU5がインバータ4を制御する。ECU5は、インバータ4を駆動状態や回生状態に制御する制御手段を有する。
【0026】
本実施形態においてはタイヤ6の回転速度を検出して速度センサ7としているが、他のタイプの速度計であってもよい。例えば、回転角度を検出するエンコーダを用いて速度を検出してもよい。エンコーダであれば、タイヤの回転角度も検出することが可能である。
【0027】
ECU5は、その機能構成として、インバータ4を駆動状態や回生状態とするプログラムやデータ等が記憶される記憶部と、該プログラムやデータを用いて演算する演算部とを備える。そして、これらの機能は、プログラムを処理するCPU、プログラムやデータを記憶するROM、プログラムを実行する際にそのプログラムやデータを一時的に記憶するRAM、プログラムや多数のデータを格納するSSDなどにより実現される。
【0028】
なお、従来の回生ブレーキを備える電動車両では、走行中にアクセルペダルを離した際やブレーキペダルを踏み込んだ際などの操作信号が入力されたとき、すなわち電動車両の減速状態において駆動モータを回生ブレーキ状態に制御することが通常であるところ、本実施形態ではこのような従来の動作とは異なる制御を行う場合がある。以下、本実施形態の制御について説明する。
【0029】
<2.電動車両の制御>
本実施形態の電動車両1は、従来の車両の減速時のみに回生状態とする制御と異なり、力行中においても駆動状態と回生状態を交互に繰り返す制御を行う。
【0030】
まず、運転者がアクセルペダルを踏み込むと、バッテリ3からインバータ4を介して駆動モータ2に電力が送られてタイヤ6に駆動力がかかる。そして、タイヤ6に駆動力がかけられた直後に、ECU5がインバータ4を制御して、駆動状態から回生状態に切り替え、回生ブレーキにより回生電力を回収する。この動作を1セットとして、これを繰り返して走行する。
【0031】
この走行時の駆動状態と回生状態における電力と時間の関係を
図2に示す。
図2のグラフは、縦軸がタイヤの弾性変形による歪量(ε)で横軸が時間(t)である。タイヤの回転方向と同方向の歪を+側に、回転方向と反対側を-側にとってある。
【0032】
加速時には、バッテリ3から駆動モータ2に電力供給する電力供給状態であって、タイヤ6には駆動力に起因するタイヤの歪εがタイヤの回転方向と同方向に発生する。この歪は比較的鋭い立ち上がりを示す;図中(1)で示す過程である。タイヤに駆動力をかけて弾性変形させた直後に、電力供給状態から電力回生状態に切り替えると、弾性変形が元に戻る際に電力回生を行い、それにつれて歪量は緩やかに減少する;図中(2)で示す過程である。歪量が所定の値以下になると、初めの電力供給状態に戻り、電力供給状態と電力回生状態を繰り返す。すなわち、タイヤに駆動力をかけて弾性変形させた直後に、電力供給状態から電力回生状態に切り替え、電力回生状態が所定時間続いた後に電力回生状態から電力供給状態に切り替える。
【0033】
ここで、駆動状態の電力W1と時間T1、回生状態の電力W2と時間T2は、下記式を満たすような関係にある。
T1<T2 (式1)
W1>W2 (式2)
T1×W1>T2×W2 (式3)
【0034】
すなわち、タイヤに駆動力をかける際は、短い時間T1で非常に大きな電力W1をかけ、これをW1よりも小さい電力W2で、T1よりも長い時間T2をかけて回生する。なお、駆動状態において、タイヤが駆動され車両が前進するので、供給電力量W1×T1は、その一部が運動エネルギーに変換され、回生電力量W2×T2はこれよりも小さくなる。そして、この動作を繰り返すことで、タイヤの復元力を利用して電力回生を行うことができ、従来の車両では電力が供給され続け、タイヤに駆動力がかけ続けられ、廃棄され続けられていたタイヤの弾性変形による熱エネルギーを抑えることができる。
【0035】
例えば、100km/h走行時を例にとると、T1=0.01μsで、W1=1000kwの負荷をかけた直後に、駆動状態から回生状態に切り替え、T2=1μs、W2=9.98kwの回生電力を回収する。この動作を1セットとして、これを繰り返して走行する。
【0036】
なお、上記の100km/hでの走行時を燃費で換算すると、50km/kwhとなる計算である。通常のEV車の燃費が8km/kwhであるので、燃費は6倍以上となる。
【0037】
また、負荷をかける駆動状態が0.01μs、回生電力を回収する回生状態が1μsと、極めて微少な時間の繰り返し制御になるため、電動車両1の運転者は、回生ブレーキがかかっていることも気にならない。なお、運転者の操作は、通常の車両走行時と同様に、アクセルペダルを踏み続けるだけでよい。そして、裏では、ECU5により駆動状態と回生状態の繰り返し制御が行われる。なお、通常の車両で行われる減速時の回生ブレーキによる回生電力の回収も、本実施形態の電動車両において行われる。
【0038】
また、60km/h走行時の場合、例えばT1=0.02μsでW1=1000kwの負荷をかけた直後に、駆動状態から回生状態に切り替え、T2=1μsでW2=9.98kwの回生電力を回収するなどとしてもよい。この動作を1セットとして、これを繰り返して走行する。この場合、上記の100km/h走行時に比べて燃費は落ちることになるが、従来の車両と比較すると、十分な燃費向上の効果となる。
【0039】
次に、どのような動作によって燃費が向上するかその理由を説明する。まず、従来の車両では、走行時にアクセルを踏み続け、モータに電力を供給し続け、タイヤに駆動力をかけ続けた状態で走行される。
図3は、車両走行時のタイヤの状態を示す説明図である。右向きの矢印は車両の進行方向を示し、左下向きの矢印はタイヤの回転方向を示し、タイヤ下方の破線枠部分はタイヤが地面と接触して弾性変形される部分を示す。
【0040】
図3に示すように、走行時、タイヤに駆動力をかけた際に、タイヤの地面と接地する部分が圧縮され、タイヤが回転して解放された時に膨張して元に戻る。このように、タイヤが弾性変形を繰り返しながら車両は走行しており、このときタイヤは弾性変形により発熱する。すなわち、タイヤにかけられた駆動力がタイヤの弾性変形に使用され、タイヤにかけられた駆動エネルギーは、タイヤの弾性変形によって生じる熱エネルギーがそのまま廃棄されている。
【0041】
ここで、仮に摩擦抵抗や空気抵抗がないと仮定すると、力学的に言えば水平移動をする場合、エネルギーは消費しないはずである。しかし、従来の車両では、ある一定のスピードになった後も、駆動源であるモータはバッテリより電力を供給され続け、タイヤに駆動力を加え続ける。そして、駆動力が加えられたタイヤは、上記のように弾性変形が繰り返されて、熱エネルギーは廃棄され続けることとなり、多くのエネルギーが無駄に消費されている。
【0042】
そこで、本実施形態の電動車両では、従来廃棄されている熱エネルギーの廃棄を抑えることで、すなわち、タイヤの弾性変形を抑えることで、熱エネルギーの消費が抑えられ、燃費が向上することとなる。
【0043】
そして、上記した本実施形態の制御によれば、従来の車両で常時電力供給されて加え続けられていたタイヤへの駆動力を、短時間の大電力の供給によりタイヤに大きな駆動力を加え、タイヤに弾性変形が生じると同時又は直後に、電力供給を止めて駆動状態から回生状態に切り替えて回生電力を回収する制御を行う。この駆動状態と回生状態の切り替え制御を繰り返し行うことで、従来タイヤに駆動力をかけ続けられ、タイヤの弾性変形により廃棄され続けていた熱エネルギーの発生を抑えることで、従来よりも燃費を向上できる。
【0044】
なお、駆動状態において短時間で大電力の供給としているのは、タイヤの弾性変形の時間をできるだけ短時間にするため、及び、小電力を長時間かけて供給するよりも、大電力を短時間で供給する方が高効率であるためである。これは、自転車を想像すればわかりやすいが、軽く小さな力で長時間こぎ続けて進むよりも、重く大きな力で短時間こぎ、その力を利用して進む方が、疲れず長距離を進むことができることと同様である。
【0045】
次に、電動車両の減速時の制御について
図4を用いて説明する。運転者がブレーキペダルを踏み込むと、ECU5がインバータ4を制御して電力回生状態になり、駆動モータ2は前進方向と逆方向に制動力が発生する。このとき、タイヤ6には制動力に起因するタイヤの歪εがタイヤの回転方向と逆方向に発生する。この歪は比較的鋭い立ち下がりを示す;図中(3)で示す過程である。タイヤを弾性変形させた直後に歪開放制御に切り替えると、歪は緩やかに小さくなる(歪量εは増加する);図中(4)で示す過程である。歪量が所定の値以上になると、初めの電力回生状態に戻り、電力回生状態と歪開放状態を繰り返す。
【0046】
図2,4において、タイヤの回転方向とタイヤの弾性変形の復元時に生じるトルクの発生方向が逆であるときに回生が発生する。逆にその方向が同じであるときに電動車両は加速される。
【0047】
<3.その他の実施形態>
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。
【0048】
(1)上記の実施形態では、駆動状態と回生状態が所定時間及び所定電力で切り替わる制御の例で説明しているが、これらの時間及び電力は適宜変更してもよい。すなわち、駆動状態の電力供給時間T1<回生状態の電力回生時間T2、駆動状態の単位時間供給電力W1>回生状態の単位時間回生電力W2、T1×W1>T2×W2を満たす時間と電力の関係にあれば、従来よりも燃費を向上することができる。
【0049】
(2)また、駆動状態と回生状態の時間は、電動車両におけるタイヤの角速度に応じて変動する制御とすることもできる。この場合、
図1の電動車両1が備える速度センサ7が速度を検知して、その情報がECU5に入力され、ECU5がタイヤ6の角速度を算出する。そして、その角速度に応じて、例えば駆動状態がタイヤ6が5度回転する時間、回生状態が300度回転する時間などとして、駆動状態と回生状態を繰り返す制御とする。したがって、この場合は、電動車両1の速度に応じて、駆動状態と回生状態の時間が変動する構成となる。
【0050】
(3)また、上記の実施形態の電動車両は、電気自動車の例であるが、これに限られず、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車など、駆動モータを備える電動車両であれば本発明を適用可能である。また、四輪にも限られず、電動バイクなど、駆動モータを備える二輪車にも本発明を適用可能である。
【0051】
(4)電力供給状態を電力供給手段により実現し、電力回生状態を電力回生手段により実現してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 電動車両
2 駆動モータ
3 バッテリ
4 インバータ
5 ECU
6 タイヤ
7 速度センサ