(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080097
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】野菜を多量に含む揚げ製品
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20220520BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20220520BHJP
【FI】
A23L17/00 101C
A23L19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191080
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000132172
【氏名又は名称】株式会社スギヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 實
(72)【発明者】
【氏名】富山 一樹
(72)【発明者】
【氏名】島 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小金井 翼
(72)【発明者】
【氏名】杉野 浩也
(72)【発明者】
【氏名】杉野 哲也
【テーマコード(参考)】
4B016
4B034
【Fターム(参考)】
4B016LG05
4B016LG08
4B016LK12
4B016LK15
4B016LK16
4B016LP01
4B016LP03
4B016LP05
4B016LP07
4B034LB05
4B034LK26X
4B034LP01
4B034LP11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】野菜由来の栄養を多く含み、又、風味、味、食感などにも優れるさつま揚げ、その製造方法、及び野菜を含むバッター液を提供する。
【解決手段】さつま揚げ及びバッター液の製造において使用される水の全部若しくは大部分又は一部を野菜に置き換える。具体的には、野菜を含むさつま揚げであって、さつま揚げ中の野菜の量が50重量%以上である、さつま揚げとする。薄力粉、野菜、及び卵を含むバッター液であって、野菜の含量が50重量%以上である、バッター液とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜を50重量%以上含む、魚肉練製品。
【請求項2】
野菜を含むさつま揚げであって、ここで、前記さつま揚げ中の前記野菜の量が50重量%以上である、さつま揚げ。
【請求項3】
前記さつま揚げ中の前記野菜の量が60重量%以上である、請求項2に記載のさつま揚げ。
【請求項4】
前記さつま揚げ中の前記野菜の量が60~80重量%である、請求項2に記載のさつま揚げ。
【請求項5】
前記野菜が、カット処理した野菜または擂り潰した野菜であり、そして、前記野菜が、野菜混合物、もやし、大根、タマネギ、および、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載のさつま揚げ。
【請求項6】
さつま揚げの製造方法であって、以下:
(a)魚肉すり身、食塩、調味料、でんぷんおよび野菜を含む混合物を提供する工程であって、ここで、混合物中の野菜の量が50重量%以上である、工程;
(b)工程(a)の混合物を一定の形に成型する工程;および
(c)工程(b)において成型した混合物を油ちょうする工程
を包含する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法であって、上記工程(a)において混合物に水が添加されない、製造方法。
【請求項8】
前記工程(a)の混合物中の前記野菜の量が60重量%以上である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程(a)の混合物中の前記野菜の量が60~80重量%である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記野菜が、カット処理した野菜または擂り潰した野菜であり、そして、前記野菜が、野菜混合物、もやし、大根、タマネギ、および、これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか一項に記載の製造方法で製造された、さつま揚げ。
【請求項12】
薄力粉、野菜、および、卵を含むバッター液であって、野菜の含量が50重量%以上である、バッター液。
【請求項13】
水を含まない、請求項12に記載のバッター液。
【請求項14】
薄力粉、野菜、および、卵からなる、請求項12に記載のバッター液。
【請求項15】
バッター液の製造方法であって、薄力粉、野菜、および、卵を含む混合物を調製する工程を包含し、ここで、前記混合物に水が添加されないことを特徴とする、製造方法。
【請求項16】
請求項12~14のいずれか一項に記載のバッター液、または、請求項15に記載の製造方法で製造されたバッター液を用いて作製した揚げ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜を多量に含む揚げ製品およびその製造方法に関する。例えば、本発明は、野菜を多量に含むさつま揚げ製品およびその製造方法に関する。また、本発明は、野菜を含むバッター液に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にさつま揚げの製造法は、魚肉又はすり身を原料として、食塩等の調味料を加え、擂潰したものを成型し油ちょうして製品とする。野菜具材入りさつま揚げは、擂潰した魚肉又はすり身に、ある一定の形にカットした野菜を混合し、成型し油ちょうして作られている。
【0003】
近年、野菜に含まれる機能性成分が注目され、出来るだけ野菜を多く使用した美味な製品の開発が望まれているが、加工の容易さ、食感、およびおいしさを考え合わせると、従来法では、野菜の使用割合は50%を超えることはできなかった。例えば、特許文献1では、「すり身と具材の比率は成型性をよくするためにすり身を多く混ぜる。例えばすり身が多いほど成型が容易であるが、具材とすり身の比率は5:5までは容易に機械成型することができた。これより具材の割合が多くなると成型しにくくなる。中でも野菜は特に成型しにくい。」として、野菜含量を50%以上増やすことが困難であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、さつま揚げなどの揚げ製品について、野菜含量を増やした製品を提供することを課題とする。また、本発明は、野菜を含むバッター液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)
野菜を50重量%以上含む、魚肉練製品。
(項目2)
野菜を含むさつま揚げであって、ここで、前記さつま揚げ中の前記野菜の量が50重量%以上である、さつま揚げ。
(項目3)
前記さつま揚げ中の前記野菜の量が60重量%以上である、項目2に記載のさつま揚げ。
(項目4)
前記さつま揚げ中の前記野菜の量が60~80重量%である、項目2に記載のさつま揚げ。
(項目5)
前記野菜が、カット処理した野菜または擂り潰した野菜であり、そして、前記野菜が、野菜混合物、もやし、大根、タマネギ、および、これらの組み合わせからなる群から選択される、項目2~4のいずれか一項に記載のさつま揚げ。
(項目6)
さつま揚げの製造方法であって、以下:
(a)魚肉すり身、食塩、調味料、でんぷんおよび野菜を含む混合物を提供する工程であって、ここで、混合物中の野菜の量が50重量%以上である、工程;
(b)工程(a)の混合物を一定の形に成型する工程;および
(c)工程(b)において成型した混合物を油ちょうする工程
を包含する方法。
(項目7)
項目6に記載の製造方法であって、上記工程(a)において混合物に水が添加されない、製造方法。
(項目8)
前記工程(a)の混合物中の前記野菜の量が60重量%以上である、項目6に記載の製造方法。
(項目9)
前記工程(a)の混合物中の前記野菜の量が60~80重量%である、項目6に記載の製造方法。
(項目10)
前記野菜が、カット処理した野菜または擂り潰した野菜であり、そして、前記野菜が、野菜混合物、もやし、大根、タマネギ、および、これらの組み合わせからなる群から選択される、項目6~9のいずれか一項に記載の製造方法。
(項目11)
項目6~10のいずれか一項に記載の製造方法で製造された、さつま揚げ。
(項目12)
薄力粉、野菜、および、卵を含むバッター液であって、野菜の含量が50重量%以上である、バッター液。
(項目13)
水を含まない、項目12に記載のバッター液。
(項目14)
薄力粉、野菜、および、卵からなる、項目12に記載のバッター液。
(項目15)
バッター液の製造方法であって、薄力粉、野菜、および、卵を含む混合物を調製する工程を包含し、ここで、前記混合物に水が添加されないことを特徴とする、製造方法。
(項目16)
項目12~14のいずれか一項に記載のバッター液、または、項目15に記載の製造方法で製造されたバッター液を用いて作製した揚げ物。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、さつま揚げなどの揚げ製品について、野菜含量を増やした製品を提供することを可能とする。また、本発明は、野菜を含むバッター液を提供する。本発明によって提供される食品は、野菜由来の栄養を多く含み、また、風味、味、食感などに優れている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。また、本明細書において「wt%」は、「重量%」または「質量パーセント濃度」と互換可能に使用される。「%」は、特に明記されない場合、「wt%」または「w/w%」または「質量パーセント濃度」を意味する。
【0009】
本発明は、野菜を多量に含む揚げ製品、例えば、さつま揚げを提供する。
【0010】
(さつま揚げ)
本明細書において使用する場合、「さつま揚げ」とは、魚肉のすり身を成型し、油で揚げた食品をいう。魚肉練り製品の一種であり、また、揚げかまぼこにも分類される。
【0011】
(野菜)
本発明における魚肉練製品(例えば、さつま揚げ)の製造において、水に代えて(あるいは、水の添加量を減らすために水の一部に代えて)使用する野菜は、特に限定されることはなく、例えば、もやし、大根、タマネギ、キャベツ、ピーマン、ニンジン、レタス、長ネギ、白菜、トマト、キュウリおよび、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
本明細書で使用する場合、「野菜混合物」とは、2種類以上の野菜の混合物をいう。本発明において使用する野菜は、好ましくは、カットした野菜、擂り潰した野菜、ミキサーで粉砕した野菜、ホモジナイズした野菜、酵素処理した野菜、発酵処理した野菜、が挙げられるがこれらに限定されない。また、タマネギのように比較的活性の強いプロテアーゼ活性を有する野菜の場合は、最終製品の食感を考えた場合、加熱処理をするほうが好ましい。
【0013】
本発明において使用する野菜は、好ましくはカットされた野菜である。本発明において使用する野菜のカットサイズは、好ましくは例えばキャベツは2cm角、ニンジン、ゴボウなら3cm千切り、タマネギならみじん切りであるがこれらに限定されない。なお、必要に応じて野菜以外の具材、例えば魚介原料(イカ、タコ、エビ、ヒジキ等)も使用できる。
【0014】
(魚肉すり身)
本発明で使用する魚肉すり身は、水産練製品の原料に広く使用されている魚肉すり身が
適している。例えば、魚肉すり身は市販のすり身を用いることができ、グチ、スケソウダラ、エソ、アジ、サバ、イワシ、ひらめ、イトヨリ、キンメダイ、ホッケ、タラ、メルルーサ等を常法により製造されたものを1種又は2種以上用いることができる。好ましくは、スケソウダラ由来のすり身を50%以上用いることが好ましい。なお、魚肉すり身とは、魚体より肉質部分を取り分け、その肉質部分を粗砕して水中に分散させて水溶性蛋白質を取り除いた荒ずりすり身、これに食塩を加えて更に擂り潰した塩ずりすり身、これらを冷凍した冷凍すり身等を含む。
【0015】
(食塩)
本発明において食塩を使用する場合、その添加量は、目的とする塩味に応じて、適宜選択される。
【0016】
(調味料)
本発明において使用する調味料としては、特に限定されることはなく、例えば、コショウ、砂糖、グルタミン酸ソーダ、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
(水を含まない)
本発明において使用する場合、用語「水を含まない」とは、さつま揚げを製造する場合において、魚肉すり身、食塩、調味料、でんぷんおよび野菜を含む混合物を調製する時に、水あるいは水溶液(例えば、食塩の水溶液)を添加しないことをいう。あるいは、バッター液を製造する場合において、薄力粉、野菜、および、卵の混合物をを調製する時に、水あるいは水溶液(例えば、食塩の水溶液)を添加しないことをいう。
【0018】
(さつま揚げの製造)
本明細書において、用語「さつま揚げ」は、用語「揚げかま」と互換可能に使用される。
【0019】
本発明のさつま揚げは、
(a)魚肉すり身、食塩、調味料、でんぷんおよび野菜を含む混合物を提供する工程であって、ここで、混合物中の野菜の量が50重量%以上である、工程;
(b)工程(a)の混合物を一定の形に成型する工程;および
(c)工程(b)において成型した混合物を油ちょうする工程
を包含する方法によって製造することができる。好ましくは、工程(a)では、水または水溶液が添加されることはない。従来技術においては、魚肉すり身に、食塩、調味料およでんぷんなどの副原料と水とを添加し、混合して成型した後に油ちょうして、さつま揚げ製造していた。本発明では、この水を使用することなく(あるいは、添加量する水の量を本来の添加量の30%以下、20%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、2%以下、1%以下、もしくは0.5%以下に低減させ、)それにかわって野菜を添加することによって、従来法と比較してより多量の野菜を含むさつま揚げを製造することが可能となった。理論に拘束されることは望まないが、水として添加する水分の代わりに、野菜の水分で代用することによって、本発明の優れた効果が奏されると考えられる。
【0020】
従来法では、水を比較的多量に使用していたため、野菜を50重量%以上添加すると、食感の低下、美味しさの低下、および/または、加工の困難化という問題が生じた。そのため、従来法におけるさつま揚げの製造においては、野菜の添加量は50重量%を超えることは実際には困難であった。
【0021】
上記の工程(a)における混合物中の野菜の含量は、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、または、75重量%以上であり、そして、80重量%以下、75重量%以下、または、70重量%以下である。
【0022】
あるいは、上記の工程(a)における混合物を製造する際に従来法において添加されていた水(水溶液)の、100%、95%、90%、80%、または70%(全て重量ベース)を野菜に置換することが好ましい。
【0023】
上記工程(b)における成型および工程(c)における油ちょうは、さつま揚げを製造する際に慣用的に使用される条件を使用することができる。
【0024】
本発明においては、上記のように水を使用しない(あるいは、添加量する水の量を本来の添加量の30%以下、20%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、2%以下、1%以下、もしくは0.5%以下に低減させる)ことによって、予想以上に、食感、風味が優れたさつま揚げを製造することが可能となった。野菜に含まれる食物繊維、カルシウム、鉄分、およびカリウムなどのミネラル成分、ならびにビタミンの含量も増加するという優れた効果も奏する。
【0025】
(バッター液)
本発明者らは、さつま揚げを製造する際の、魚肉すり身、食塩、調味料、およびでんぷんの混合物を調製する際に、水(または、水溶液)を添加する代わりに野菜を多量に添加することによって、優れたさつま揚げを製造した。この思想に基づき、本発明者らは、さつま揚げ以外の揚げ物の製造において、すなわち、バッター液において、水を使用しないか、あるいは、水の添加量を低減させることによっても、食感や風味に優れた揚げ物を製造することが可能であると予想し、本発明のバッター液を完成させた。
【0026】
本発明においては、上記のように水を使用しないか、あるいは、水の添加量を低減させることによって、予想以上に、食感、風味が優れたバッター液を製造することが可能となった。野菜に含まれる食物繊維、カルシウム、鉄分、およびカリウムなどのミネラル成分、ならびにビタミンの含量も増加するという優れた効果も奏する。理論に拘束されることは望まないが、水として添加する水分の代わりに、野菜の水分で代用することによって、本発明の優れた効果が奏されると考えられる。
【0027】
本発明のバッター液における野菜の含量は最も好ましくは水の含量と同じ、すなわち、水を総量をバッター液に置き換えることが最も好ましい。あるいは、通常のバッター液を製造する際に添加される水(水溶液)の、70%~100%(全て重量ベース)を野菜に置換することが好ましい。
【実施例0028】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。本発明は本実施例により限定されるものではない。
【0029】
(一般的な魚肉練製品の製造方法)
ちくわ、笹かまぼこ、なると巻き、蒸し板かまぼこ等の魚肉練り製品は、魚肉すり身に食塩を加え擂潰した後、いろいろな副原料と共に一定量の水を加えて調製される。以下それぞれの製造方法を例示する。
【0030】
(1.ちくわ)
ちくわの一般的な製造工程は、以下のとおりである:
すり身粉砕→擂潰(塩ずり→澱粉・調味料などの副原料を混合→加水)→成型(串巻き)→焙焼→串抜き→冷却→包装。
【0031】
(2.笹かまぼこ)
笹かまぼこの一般的な製造工程は、以下のとおりである:
すり身粉砕→擂潰(塩ずり→澱粉・調味料などの副原料を混合→加水)→成型(串付け)→焙焼→串抜き→冷却→包装。
【0032】
(3.なると巻き)
なると巻きの一般的な製造工程は、以下のとおりである:
すり身粉砕→擂潰(塩ずり→澱粉・調味料などの副原料を混合→加水)→渦巻成型・切断→予備加熱→波状成型・蒸煮→浸漬→放冷→真空包装→2次殺菌→冷却。
【0033】
(4.蒸し板かまぼこ)
蒸し板かまぼこの一般的な製造工程は、以下のとおりである:
すり身粉砕→擂潰(塩ずり→澱粉・調味料などの副原料を混合→加水)→成型(板つけ)→坐り→加熱→冷却→包装。
【0034】
本発明の製造法では、上記に例示した一般的な練り製品(例えばちくわ、笹かま、なると巻、蒸し板かまぼこ等)において、水の代わり(例えば、水全体の代わり、もしくは、水の70%以上の代わり)に生野菜を用いることを特徴の一つとする。以下、さつま揚げを例として本発明を説明するが、本発明は、さつま揚げに限定される発明ではなく、上記に記載した一般的な魚肉練製品、ならびに、当業者に明らかであるそれ以外の魚肉練製品にも適用することができる。
【0035】
(1)さつま揚げ(揚げかま)の製造
(実施例1:従来技術)
スケソウタラ冷凍すり身36%に対して1.2%の食塩、調味料、澱粉等の副原料及び45.3%の水を添加し、常法により揚げかま用練り肉を作成した。次にこれらの練り肉54%に対して、カット処理した野菜混合物を46%添加して混合し、一定の形に成型後、常法にて油ちょうして、野菜入り揚げかまを製造した。
【0036】
(実施例2)
実施例1の45.3%の水の代わりに、同量の擂り潰した大根を添加し、その他は実施例1と同様の方法にて、野菜入り揚げかまを製造した。
【0037】
(実施例3)
実施例1の水の代わりに、もやしを使用し、その他は実施例1と同様にて野菜入り揚げかまを製造した。
【0038】
(実施例4)
実施例1の水の代わりに、タマネギを使用し、その他は実施例1と同様にて野菜入り揚げかまを製造した。
【0039】
(実施例5)
実施例1の水の代わりに、大根ともやしの同量混合物を使用し、その他は実施例1と同様にて野菜入り揚げかまを製造した。
【0040】
(実施例6)
次に、実施例1で作られた製品を対照として、実施例2(大根使用)、3(もやし使用)、4(タマネギ使用)、5(大根ともやし等量混合物を使用)で製品の食感、風味等について15名にて官能評価を行った。その結果を、以下の表1に示す。
【0041】
【0042】
(実施例7)
さらに実施例1(従来技術)において加水率を45.3%から54.3%にして調製した練り肉及び、加水率を63.8%にして調整した練り肉をそれぞれ54%使用して、カット処理した野菜混合物を46%添加混合し、常法にて野菜入り揚げかまを製造した。そして、加水率45.3%の練り肉にて調整した野菜揚げかまを対照(実施例1、野菜比率70%)、加水率54.3%練り肉使用品(野菜比率75%)及び、加水率63.8%練り肉使用品(野菜比率80%)にて、食感、風味について15名にて、食感、風味について官能評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0043】
【0044】
以上の結果より、野菜の使用比率としては80%前後になると食感や風味が悪くなる傾向がみられ、野菜の使用比率は75%前後が最適と考えられた。
【0045】
(2)バッター液の調製法
(実施例8;生野菜(大根)を水の代わりに用いて調製したバッター液で作った揚げ物の評価)
(バッター液の調製)
冷蔵庫で冷やしておいた薄力粉、水、卵を使用し、表3に示した比率で混ぜ合わせたものをバッター液として使用した(対照区)。試験区は冷蔵庫で冷やしておいた大根をホモジナイズしたものを水代わりに使い,他は対照区と同様に調製したものを使用した。その調製を以下の表3に示す。
【0046】
【0047】
(揚げ具材の調製)
揚げ具材としては縦半分に切り長さ5cmとした焼ちくわを使用した。また、洗って輪切りにして水に入れた後に水気を切ったサツマイモ,および、殻や背わたを取り曲がらないように処理したエビ(ブラックタイガー)を使用し、天ぷら油で常法にて揚げた。そして,各々の揚げたものを15名にて風味,味について,官能評価を行った。結果を以下の表4に示す。
【0048】
【0049】
以上に示されるように、本発明のバッター液は、風味および味において優れていた。
【0050】
チクワ、エビ,野菜等の揚げものを作る場合,水の代わりに生野菜(大根)を使用して調製したバッター液で作ったものは,水で調製したバッター液のものより美味であった。
【0051】
このようなことから,本製造法は、揚げものをつくる時使用するバッター液の調製においても,水の代わりに代用することも可能である。本製造法では一般の練り製品やバッター液の調製において水の代わりに生野菜で代用することが可能である。
【0052】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみ、その範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明は、さつま揚げなどの揚げ製品について、野菜含量を増やした製品を提供することを可能とする。また、本発明は、野菜を含むバッター液を提供する。本発明によって提供される食品は、野菜由来の栄養を多く含み、また、風味、味、食感などに優れている。