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特開2022-80098エッチング装置、エッチング方法及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080098
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】エッチング装置、エッチング方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
H01L21/306 J
H01L21/306 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191082
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】平川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】秋本 紗希
(72)【発明者】
【氏名】濱田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】笹平 幸之介
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA35
5F043BB23
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE21
5F043EE22
5F043EE27
5F043EE28
5F043EE40
(57)【要約】
【課題】適切なエッチングを継続的に行うことを可能とする。
【解決手段】実施形態に係るエッチング装置1は、貯留容器2と反応容器71と供給配管61と捕集装置10と濃度計115とを備えている。貯留容器2は、エッチング液L1を収容する。反応容器71は、エッチング液L1によってエッチングされる被処理体Wを収容する。供給配管61は、貯留容器2から反応容器71内の被処理体Wへエッチング液L1を供給する。捕集装置10は、溶媒を収容し、貯留容器2から排出されるガスが供給され、ガスに含まれる1以上の成分を溶媒に溶解させる。濃度計115は、溶媒と1以上の成分とを含んだ溶液における1以上の成分の少なくとも1つの濃度を計測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング液を収容する貯留容器と、
前記エッチング液によってエッチングされる被処理体を収容する反応容器と、
前記貯留容器から前記反応容器内の前記被処理体へ前記エッチング液を供給する供給配管と、
溶媒を収容し、前記貯留容器から排出されるガスが供給され、前記ガスに含まれる1以上の成分を前記溶媒に溶解させる捕集装置と、
前記溶媒と前記1以上の成分とを含んだ溶液における前記1以上の成分の少なくとも1つの濃度を計測する濃度計と
を備えたエッチング装置。
【請求項2】
前記貯留容器は排気口を有し、
前記捕集装置は、
給気口と排気口とを有し、前記溶媒又は前記溶液で内部が満たされるトラップと、
一端が前記貯留容器の前記排気口に接続され、他端が前記トラップの前記給気口に接続された第1排気管と、
一端が前記貯留容器の前記排気口に接続され、他端が外部空間と連絡した第2排気管と
を含んだ請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
循環配管とポンプとを更に備え、
前記トラップは、前記循環配管の一端が接続された供給口と、前記循環配管の他端が接続された排出口とを有し、
前記ポンプは、前記トラップと前記循環配管とからなる循環経路内で前記溶媒又は前記溶液を循環させる請求項2に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記溶媒又は前記溶液を加熱するヒータを更に備えた請求項2又は3に記載のエッチング装置。
【請求項5】
前記被処理体のエッチングに使用された前記エッチング液の少なくとも一部を前記貯留容器へ戻す回収配管を更に備えた請求項1乃至4の何れか1項に記載のエッチング装置。
【請求項6】
前記貯留容器内の前記エッチング液を加熱するヒータを更に備えた請求項1乃至5の何れか1項に記載のエッチング装置。
【請求項7】
前記貯留容器内の前記エッチング液へ補充液を供給する補充装置を更に備えた請求項1乃至6の何れか1項に記載のエッチング装置。
【請求項8】
前記濃度計が計測した前記濃度に基づいて前記補充装置による前記補充液の供給動作を制御する制御部を更に備えた請求項7に記載のエッチング装置。
【請求項9】
前記被処理体は、窒化珪素膜と酸化珪素膜とを備えた半導体基板であり、
前記エッチング液は、リン酸とテトラフルオロホウ酸とコロイダルシリカとを含んだ水溶液であり、
前記補充液はコロイダルシリカを含み、
前記濃度計は、フッ化水素及びケイフッ化水素酸の少なくとも一方の濃度を計測し、
前記制御部は、前記濃度計が計測したフッ化水素及びケイフッ化水素酸の少なくとも一方の前記濃度に基づいて前記補充装置による前記補充液の供給動作を制御する請求項8に記載のエッチング装置。
【請求項10】
前記被処理体は、窒化珪素膜と酸化珪素膜とを備えた半導体基板であり、
前記エッチング液は、リン酸とテトラフルオロホウ酸とコロイダルシリカとを含んだ水溶液であり、
前記補充液はコロイダルシリカを含み、
前記濃度計は、ケイフッ化水素酸の濃度を計測し、
前記制御部は、前記濃度計が計測したケイフッ化水素酸の前記濃度に基づいて前記補充装置による前記補充液の供給動作を制御する請求項8に記載のエッチング装置。
【請求項11】
被処理体にエッチング液を接触させて、前記被処理体の一部を除去することと、
前記エッチング液から発生したガスに含まれる1以上の成分を溶媒に溶解させることと、
前記溶媒と前記1以上の成分とを含んだ溶液における前記1以上の成分の少なくとも1つの濃度を計測することと
を含んだエッチング方法。
【請求項12】
前記濃度の計測は、前記溶媒又は前記溶液を循環経路内で循環させながら行う請求項11に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記濃度の計測は、前記溶媒又は前記溶液を加熱しながら行う請求項11又は12に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記被処理体のエッチングに使用された前記エッチング液の少なくとも一部を再利用する請求項11乃至13の何れか1項に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記エッチング液を加熱することを更に含んだ請求項11乃至14の何れか1項に記載のエッチング方法。
【請求項16】
前記濃度に基づいて前記エッチング液への補充液の供給を制御することを更に含んだ請求項11乃至15の何れか1項に記載のエッチング方法。
【請求項17】
前記被処理体は、窒化珪素膜と酸化珪素膜とを備えた半導体基板であり、
前記エッチング液は、リン酸とテトラフルオロホウ酸とコロイダルシリカとを含んだ水溶液であり、
前記補充液はコロイダルシリカを含み、
前記濃度は、フッ化水素及びケイフッ化水素酸の少なくとも一方の濃度である請求項16に記載のエッチング方法。
【請求項18】
前記濃度はケイフッ化水素酸の濃度である請求項17に記載のエッチング方法。
【請求項19】
請求項11乃至18の何れか1項に記載のエッチング方法により、前記被処理体の一部をエッチングすることを含んだ構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エッチングに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化珪素膜及び窒化珪素膜のうち、窒化珪素膜を選択的に除去するためのエッチングとして、高温リン酸を使用するウェットエッチングがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-21538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、適切なエッチングを継続的に行うことを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一側面によれば、エッチング液を収容する貯留容器と、前記エッチング液によってエッチングされる被処理体を収容する反応容器と、前記貯留容器から前記反応容器内の前記被処理体へ前記エッチング液を供給する供給配管と、溶媒を収容し、前記貯留容器から排出されるガスが供給され、前記ガスに含まれる1以上の成分を前記溶媒に溶解させる捕集装置と、前記溶媒と前記1以上の成分とを含んだ溶液における前記1以上の成分の少なくとも1つの濃度を計測する濃度計とを備えたエッチング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係るエッチング装置の構成を概略的に示す図。
図2図2は、図1に示すエッチング装置によるエッチング方法の一例を示すフローチャート。
図3図3は、図1のエッチング装置を使用したエッチングにおいてコロイダルシリカを補充しなかった場合に得られたエッチング選択比の時間変化の一例を示すグラフ。
図4図4は、図1のエッチング装置を使用したエッチングにおいてコロイダルシリカを補充しなかった場合に得られた窒化珪素及び酸化珪素のエッチングレートの時間変化の一例を示すグラフ。
図5図5は、比較例に係るエッチング装置の構成を概略的に示す図。
図6図6は、図1のエッチング装置を使用したエッチングの代わりにビーカ内でのエッチングを行い、コロイダルシリカを補充しなかった場合に、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)によって得られたトラップ液中の珪素濃度の時間変化の一例を示すグラフ。
図7図7は、図1のエッチング装置を使用したエッチングの代わりにビーカ内でのエッチングを行い、コロイダルシリカを補充しなかった場合に得られた窒化珪素及び酸化珪素のエッチングレートの時間変化の一例を示すグラフ。
図8図8は、図6及び図7のデータから得られた、トラップ液中の珪素濃度と窒化珪素及び酸化珪素のエッチングレートとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態に係るエッチング装置は、貯留容器と反応容器と供給配管と捕集装置と濃度計とを備えている。貯留容器は、エッチング液を収容する。反応容器は、エッチング液によってエッチングされる被処理体を収容する。供給配管は、貯留容器から反応容器内の被処理体へエッチング液を供給する。捕集装置は、溶媒を収容し、貯留容器から排出されるガスが供給され、ガスに含まれる1以上の成分を溶媒に溶解させる。濃度計は、溶媒と1以上の成分とを含んだ溶液における1以上の成分の少なくとも1つの濃度を計測する。
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1に示すエッチング装置1は、貯留容器2と補充装置3と補充装置4と循環系5と供給系6と反応装置7と回収系8と排出系9と捕集装置10と計測系11と制御部12と外部出力装置13とを含んでいる。なお、図1において、実線矢印は液体の流れの向きを表し、破線矢印は気体の流れの向きを表している。
【0010】
貯留容器2は、エッチング液L1を貯留する。ここでは、一例として、エッチング液L1は、リン酸とテトラフルオロホウ酸とコロイダルシリカとを含んだ水溶液であるとする。
【0011】
貯留容器2は、上部に排気口と複数の供給口とを有し、底部又はその近傍に排出口を有する密閉容器である。貯留容器2の内面は、例えば、フッ素樹脂などの材料により形成されている。
【0012】
補充装置3は、エッチング液L1の成分の少なくとも一部の貯留容器2への供給及び補充を行う。補充装置3は、タンク31と補充配管32とバルブ33と含んでいる。
【0013】
タンク31は、エッチング液L1の成分の少なくとも一部を収容している。ここでは、一例として、エッチング液L1は、リン酸とテトラフルオロホウ酸とコロイダルシリカとを含んだ水溶液であり、タンク31はエッチング液L1を収容しているとする。エッチング液L1がリン酸とテトラフルオロホウ酸とコロイダルシリカとを含んだ水溶液である場合、タンク31は、コロイダルシリカを含まずに、リン酸とテトラフルオロホウ酸とを含んだ水溶液であってもよい。
【0014】
タンク31は、底部又はその近傍に排出口を有している。補充配管32は、一端がタンク31の排出口に接続され、他端が貯留容器2の供給口の1つに接続されている。バルブ33は、補充配管32に取り付けられている。バルブ33は、例えば、空気圧供給の有無によって開閉動作が制御され得る開閉バルブである。バルブ33は、開度調整が可能なものであってもよい。補充装置3は、補充配管32に取り付けられたポンプを更に含んでいてもよい。この場合、タンク31の排出口は、底部又はその近傍に設けなくてもよい。
【0015】
補充装置4は、エッチング液L1の成分の一部の貯留容器2への供給及び補充を行う。補充装置4は、タンク41と補充配管42とバルブ43と含んでいる。タンク41は、補充液として、エッチング液L1の成分の一部を収容している。ここでは、一例として、タンク41は、コロイダルシリカを収容しているとする。
【0016】
タンク41は、底部又はその近傍に排出口を有している。補充配管42は、一端がタンク41の排出口に接続され、他端が貯留容器2の供給口の他の1つに接続されている。バルブ33は、補充配管32に取り付けられている。バルブ43は、例えば、空気圧供給の有無によって開閉動作が制御され得る開閉バルブである。バルブ43は、開度調整が可能なものであってもよい。補充装置4は、補充配管42に取り付けられたポンプを更に含んでいてもよい。この場合、タンク41の排出口は、底部又はその近傍に設けなくてもよい。
【0017】
循環系5は、循環配管51とポンプ52と温度センサ53とヒータ54とバルブ55とを含んでいる。循環配管51は、一端が貯留容器2の排出口に接続され、他端が貯留容器の供給口の更に他の1つに接続されている。ポンプ52、温度センサ53、ヒータ54及びバルブ55は、貯留容器2の排出口側からこの順序で循環配管51に設けられている。
【0018】
ポンプ52は、貯留容器2内のエッチング液L1を、循環配管51と貯留容器2とからなる循環経路内で循環させる。
【0019】
温度センサ53は、循環配管51又はその中を流れるエッチング液L1の温度を計測する。温度センサ53は、循環配管51のうちヒータ54よりも下流側の部分に設置して、ヒータ54によって加熱された直後のエッチング液L1の温度を計測してもよい。或いは、温度センサ53は、貯留容器2内に設置して、貯留容器2内のエッチング液L1の温度を計測してもよい。或いは、1つの温度センサ53を設置する代わりに、複数の温度センサを設置して、それら温度センサからの信号に基づいて、制御部12によるヒータ54の出力の制御を行ってもよい。
【0020】
ヒータ54は、循環配管51内のエッチング液L1を加熱する。ヒータ54は、例えば、インラインヒータである。
【0021】
バルブ55は、例えば、空気圧供給の有無によって開閉動作が制御され得る開閉バルブである。バルブ55は、後述するバルブ62と協働して、上記の循環動作を行う待機モードと、上記の循環動作とエッチング液L1の反応装置7への供給動作との双方を行う供給モードとの切り替えを行う。バルブ55は、開度調整が可能なものであってもよい。
【0022】
供給系6は、供給配管61とバルブ62とを含んでいる。供給配管61の一端は、ヒータ54とバルブ55との間の位置で循環配管51に接続されている。供給配管61の他端には、図示しないノズルが取り付けられている。供給配管61の上記他端にノズルを取り付ける代わりに、供給配管61の上記他端をノズルとして利用してもよい。バルブ62は、供給配管61に取り付けられている。バルブ62は、例えば、空気圧供給の有無によって開閉動作が制御され得る開閉バルブである。バルブ62は、開度調整が可能なものであってもよい。
【0023】
反応装置7は、反応容器71と回転機構72とを含んでいる。反応容器71は、上部に供給口を有し、底部又はその近傍に排出口を有している。反応容器71の供給口には、供給配管61の他端が挿入されている。供給口の位置は、反応容器71の上部でなくてもよい。また、ここでは、反応装置7は枚葉式の装置であるが、反応装置7はバッチ式であってもよい。この場合、回転機構72は省略することができる。
【0024】
反応容器71は、エッチング液L1によってエッチングされる被処理体Wを収容する。被処理体Wは、例えば、半導体ウェハである。ここでは、一例として、被処理体Wは、窒化珪素(SiN)膜と酸化珪素(SiO)膜とを含んだ半導体ウェハであるとする。そのような半導体ウェハでは、例えば、窒化珪素膜は、エッチングによって少なくとも部分的に除去すべき膜であり、酸化珪素膜はエッチングストップ膜である。なお、「SiN」という表記は、窒化珪素膜の組成がSiで示される化学量論組成から逸脱し得ることを表し、「SiO」という表記は、酸化珪素膜の組成がSiOで示される化学量論組成から逸脱し得ることを表している。
【0025】
回転機構72は、反応容器71内であって、供給配管61の上記他端の下方の位置で、被処理体Wを回転可能に支持する。回転機構72は、例えば、被処理体Wを保持するホルダと、このホルダを回転させるモータとを含む。
【0026】
なお、反応装置7は、被処理体Wを反応容器71内であって回転機構72のホルダの位置まで搬送するとともに、この被処理体Wを反応容器71外へ搬出する搬送装置(図示せず)を更に含んでいる。
【0027】
回収系8は、回収配管81とバルブ82とポンプ83とを含んでいる。回収配管81は、一端が反応容器71の排出口に接続され、他端が貯留容器2の供給口の残りの1つに接続されている。バルブ82及びポンプ83は、反応容器71側からこの順序で回収配管81に設けられている。ポンプ83は、エッチングに使用したエッチング液L1を、回収配管81を介して反応容器71から貯留容器2へ送液する。反応容器71を貯留容器2よりも高い位置に設置した場合、ポンプ83は省略することができる。バルブ82は、例えば、空気圧供給の有無によって開閉動作が制御され得る開閉バルブである。バルブ82は、後述するバルブ92と協働して、上記の送液動作と、エッチング液L1の装置外部への廃液動作とを切り替える。バルブ82は、開度調整が可能なものであってもよい。
【0028】
排出系9は、排出配管91とバルブ92とを含んでいる。排出配管91の一端は、反応容器71の排出口とバルブ82との間で回収配管81に接続されている。排出配管91の他端は、装置の外部、例えば廃液タンク(図示せず)に接続されている。バルブ92は、排出配管91に取り付けられている。バルブ82は、例えば、空気圧供給の有無によって開閉動作が制御され得る開閉バルブである。バルブ92は、開度調整が可能なものであってもよい。
【0029】
捕集装置10は、第1排気管101と第2排気管102とトラップ103とを含んでいる。
第1排気管101は、一端が貯留容器2の排気口に接続されている。
【0030】
トラップ103は、給気口と排気口とを有している。トラップ103の給気口には、第1排気管101の他端が接続されている。トラップ103の排気口には、第2排気管102の一端が接続されている。
【0031】
トラップ103は、トラップ本体103Aと給気部103Bと排気部103Cとを含んでいる。
【0032】
トラップ本体103Aは、例えば、天板部と底部と側壁部とを有している中空体である。トラップ本体103Aの天板部には、供給口103Dが設けられている。トラップ本体103Aの底部又はその近傍には、排出口103Eが設けられている。排出口103Eの位置は、トラップ本体103Aの底部又はその近傍でなくてもよい。
【0033】
トラップ本体103Aの内部空間は、一例によれば、直方体形状を有している。トラップ本体103Aの内部空間は、他の形状を有していてもよい。
【0034】
トラップ本体103Aの内部空間は、高さ方向における寸法が、例えば、10乃至20cmの範囲内にある。トラップ本体103Aの内部空間は、上記の高さ方向に対して垂直な長さ方向における寸法が、例えば、15乃至20cmの範囲内にある。トラップ本体103Aの内部空間は、上記の高さ方向及び長さ方向に対して垂直な幅方向における寸法が、例えば、10乃至20cmの範囲内にある。トラップ本体103Aの容積は、例えば、1.5乃至8.0Lの範囲内にある。
【0035】
給気部103B及び排気部103Cは、トラップ本体103Aの天板部から上方へ突き出ている。給気部103B及び排気部103Cは、上記の長さ方向に配列している。給気部103Bは、トラップ本体103Aの内部空間をトラップ103の外部空間へと連絡する給気口を有している。排気部103Cは、トラップ本体103Aの内部空間をトラップ103の外部空間へと連絡する排気口を有している。給気部103Bには、第1排気管101の他端が接続されている。
【0036】
トラップ103内は、トラップ液L2で満たされている。具体的には、トラップ液L2の液面は、トラップ本体103Aの天板下面よりも高い位置にある。トラップ液L2の量は、トラップ本体103Aの天板下面に対するトラップ液L2の液面の高さが、例えば、2乃至5cmの範囲内になるように調整する。
【0037】
トラップ液L2は、貯留容器2が排出するガスに含まれる成分の1以上を溶解し得る溶媒、又は、上記1以上の成分が溶媒に溶解してなる溶液である。ここでは、一例として、溶媒は純水であるとする。
【0038】
第2排気管102は、一端が排気部103Cに接続されている。第2排気管102の他端は、外部空間と連絡している。第2排気管102の他端は、ガス中の残留成分を除去するための他の捕集装置に更に接続され得る。
【0039】
計測系11は、循環配管111とポンプ112と温度センサ113とヒータ114と濃度計115とを含んでいる。
【0040】
循環配管111は、一端がトラップ103の排出口に接続され、他端がトラップ103の供給口に接続されている。ポンプ112、温度センサ113、ヒータ114及び濃度計115は、トラップ103の排出口側からこの順序で循環配管111に設けられている。
【0041】
ポンプ112は、トラップ103と循環配管111とからなる循環経路内で、トラップ液L2を循環させる。ポンプ112は、トラップ液L2における上記1以上の成分の少なくとも1つの濃度を計測するべく、濃度計115へトラップ液L2を供給する。また、後述するように、トラップ液L2にはガス中のSiFが溶解して、HSiFが生成する。ポンプ112は、トラップ液L2の流動を生じさせることにより、HSiFに由来したシリカの析出を生じ難くする。
【0042】
温度センサ113は、循環配管111又はその中を流れるトラップ液L2の温度を計測する。温度センサ113は、循環配管111のうちヒータ114よりも下流側の部分に設置して、ヒータ114によって加熱された直後のトラップ液L2の温度を計測してもよい。或いは、温度センサ113は、トラップ103内に設置して、トラップ103内のトラップ液L2の温度を計測してもよい。或いは、1つの温度センサ113を設置する代わりに、複数の温度センサを設置して、それら温度センサからの信号に基づいて、制御部12によるヒータ114の出力の制御を行ってもよい。
【0043】
ヒータ114は、循環配管111内のトラップ液L2を加熱する。具体的には、ヒータ114は、上記の析出を生じない温度、例えば、70℃にトラップ液L2を加熱する。これにより、HSiFの飽和濃度が高まり、シリカの析出が生じ難くなる。ヒータ114は、例えば、インラインヒータである。ヒータ114は、ジャケットヒータなどの他のヒータであってもよい。
【0044】
濃度計115は、トラップ液L2における上記1以上の成分の少なくとも1つの濃度を計測する。濃度計115が利用する計測原理は、超音波伝播速度、導電率及び近赤外光など何れであってもよい。
【0045】
濃度計115は、複数の計測原理を利用して濃度の計測を行うものであることが好ましい。複数の成分を含んだ溶液について特定の成分の濃度を計測するには、それに使用する濃度計が利用する計測原理の数は、上記複数の成分の数以上であることが必要である。上記の例では、トラップ液L2は2種類の溶質を含み得る。このような場合、超音波伝播速度、導電率及び近赤外光などの各種手法の2以上を組み合わせることにより、各溶質の濃度を計測することができる。ここでは、一例として、濃度計115は、超音波伝播速度と導電率とを利用して2成分系の溶液における各成分の濃度を計測可能なものであるとする。
【0046】
なお、図示していないが、計測系11は、トラップ103をリフレッシュできるように構成されている。即ち、計測系11は、トラップ103と循環配管111とからなる循環経路を、貯留容器2が排出するガスに含まれる成分を含んでいない溶媒で満たすこと、及び、この循環経路内の液を装置の外部へ排出することが可能である。
【0047】
制御部12は、処理部121と記憶部122とを含んでいる。処理部121は、中央処理装置(CPU)を含んでいる。記憶部122は、処理部121に電気的に接続されている。記憶部122は、処理部121が読み込むプログラムや、処理部121から供給されたデータを記憶する揮発性メモリ及び不揮発性メモリ等を含んでいる。
【0048】
制御部12は、バルブ33、43、55、62、82及び92と、ポンプ52、83及び112と、温度センサ53及び113と、ヒータ54及び114と、回転機構72と、濃度計115とに電気的に接続されている。制御部12は、濃度計115が計測した濃度に基づいて、バルブ43の開閉動作を制御し、これにより、補充装置4による補充液の供給動作を制御する。また、制御部12は、温度センサ53及び113からの信号に基づいて、それぞれ、ヒータ54及び114の出力を制御する。そして、制御部12は、バルブ33、55、62、82及び92の開閉動作と、ポンプ52、83及び112の送液動作と、回転機構72の回転動作とを制御する。更に、制御部12は、外部出力装置13の動作を制御する。
【0049】
外部出力装置13は、制御部12に電気的に接続されている。外部出力装置は、例えば、表示装置、ランプ、ブザー、又はそれらの2以上の組み合わせである。外部出力装置は、エッチング装置1に異常を生じた場合に、例えば、光、音又はそれらの組み合わせにより、オペレータに対してアラートを発し得る。
【0050】
実施形態に係るエッチング方法は、被処理体にエッチング液を接触させて、前記被処理体の一部を除去することと、前記エッチング液から発生したガスに含まれる1以上の成分を溶媒に溶解させることと、前記溶媒と前記1以上の成分とを含んだ溶液における前記1以上の成分の少なくとも1つの濃度を計測することとを含む。
【0051】
上記のエッチング装置1では、制御部12による制御のもと、例えば、以下に図1及び図2を参照しながら説明する方法によりウェットエッチングを行う。
【0052】
先ず、制御部12は、バルブ43は閉じたまま、バルブ33が開くように、それらの動作を制御する。これにより、タンク31から貯留容器2へのエッチング液L1の供給を開始する。制御部12は、予め定められた量のエッチング液L1が貯留容器2へ供給された後、バルブ33が閉じるように、その動作を制御する。
【0053】
次に、制御部12は、トラップ103をリフレッシュする(ステップS1)ように、計測系11の動作を制御する。即ち、トラップ103と循環配管111とからなる循環経路を純水で満たすか、又は、この循環経路内の液を純水で置換する。この循環経路を満たしている純水は、初期のトラップ液L2である。そして、制御部12は、ポンプ112が送液を開始するようにその動作を制御するとともに、温度センサ113からの信号に基づいてヒータ114の出力を制御して、トラップ液L2の温度を一定に保つ。トラップ液L2の温度は、ヒータ54によって加熱されたエッチング液L1の温度よりも低いことが好ましい。ここでは、一例として、制御部12は、トラップ液L2の温度が70℃に保たれるように、温度センサ113からの信号に基づいてヒータ114の出力を制御することとする。
【0054】
次に、制御部12は、バルブ62及び92が閉じ、バルブ55が開くように、それらの動作を制御する。そして、制御部12は、ポンプ52が送液を開始するようにその動作を制御するとともに、温度センサ53からの信号に基づいてヒータ54の出力を制御する。即ち、貯留容器2と循環配管51とからなる循環経路においてエッチング液L1を循環させつつ、エッチング液L1を加熱する。これにより、エッチング液L1の温度を、予め定められた温度、例えば、160乃至170℃の範囲内の温度まで高めるとともに、この温度に維持する。
【0055】
次いで、トラップ103と循環配管111とからなる循環経路においてトラップ液L2を循環させるとともに、トラップ液L2を加熱しながら、濃度の計測を行う。具体的には、制御部12は、濃度計115からの出力から、トラップ液L2における溶質の初期濃度を取得する。ここでは、一例として、この計測では、フッ化水素(HF)の初期濃度(以下、濃度A0という)とケイフッ化水素酸(HSiF)の初期濃度(以下、濃度B0という)とを計測することとする(ステップS2)。記憶部122は、濃度A0及びB0を記憶する。
【0056】
次に、制御部12は、搬送装置が被処理体Wを反応容器71内であって回転機構72のホルダの位置まで搬送するように、その動作を制御する。続いて、制御部12は、ホルダが被処理体Wを保持し、モータがホルダを回転させるように、回転機構72の動作を制御する。その後、制御部12は、ポンプ83が送液を開始するとともに、バルブ92が閉じ、バルブ55が開いたまま、バルブ62及び82が開くように、それらの動作を制御する。即ち、循環配管51と貯留容器2とからなる循環経路においてエッチング液L1を循環させつつ、供給配管61の先端に取り付けられたノズル(図示せず)から、回転している被処理体Wにエッチング液L1を吹きかける。これにより、被処理体Wの窒化珪素膜をエッチングする(ステップS3)。そして、被処理体Wの表面から反応容器71の底部へと移動したエッチング液L1を、回収配管81を介して貯留容器2へ回収する。
【0057】
制御部12は、被処理体Wへのエッチング液L1の供給を開始してから予め定められた時間を経過した後に、例えば、1乃至5分の範囲内の予め定められた時間を経過した後に、バルブ62が閉じるようにその動作を制御する。次いで、制御部12は、モータによるホルダの回転が停止し、ホルダが被処理体Wを開放するように、回転機構72の動作を制御するとともに、被処理体Wが反応容器71外へ搬出されるように搬送装置の動作を制御する。また、制御部12は、ポンプ83が送液を停止するとともに、バルブ82が閉じるように、それらの動作を制御する。
【0058】
次いで、制御部12は、エッチングの回数nが予め定められた回数Nに達したか否かを判断する(ステップS4)。
【0059】
制御部12は、エッチングの回数nが予め定められた回数Nに達したと判断した場合、例えば、ヒータ114が加熱動作を停止し、トラップ103と循環配管111とからなる循環経路からトラップ液L2が装置の外部へと排出され、ポンプ112が送液動作を停止するように、計測系11の動作を制御する。そして、制御部12は、ヒータ54が加熱動作を停止し、貯留容器2、循環配管51及び供給配管61内のエッチング液L1が、図示しない廃液タンクへと排出され、ポンプ52が送液動作を停止するように、循環系5、供給系6及び排出系9の動作を制御する。エッチング液L1の廃液タンクへの排出は、例えば、ポンプ52が送液動作を継続し、バルブ55が閉じ、バルブ62及び92が開くように、それらの動作を制御することにより行う。
【0060】
制御部12が、エッチングの回数nが予め定められた回数Nに未だ達していないと判断した場合、トラップ103と循環配管111とからなる循環経路においてトラップ液L2を循環させるとともに、トラップ液L2を加熱しながら、濃度の計測を行う。具体的には、この場合、制御部12は、濃度計115からの出力から、トラップ液L2における溶質の濃度を取得する。ここでは、一例として、この計測では、HFの濃度(以下、濃度Aという)とHSiFの濃度(以下、濃度Bという)とを計測することとする(ステップS5)。
【0061】
制御部12は、濃度Aと濃度A0との差ΔAを算出し、差ΔAが予め定められている閾値ΔC1を超えたか否かを判断する(ステップS6)。制御部12は、差ΔAが閾値ΔC1を超えたと判断した場合、外部出力装置13がオペレータに対してアラートを発するように、その動作を制御する(ステップS7)。
【0062】
このアラートは、貯留容器2内のエッチング液L1から大量のHFが揮発した場合に発せられ得る。従って、オペレータは、このアラートが発せられた場合、エッチング装置1に異常を生じた可能性があること、例えば、温度センサ53などの故障によりヒータ54の熱暴走を生じた可能性があることを認識し得る。
【0063】
制御部12は、差ΔAが閾値ΔC1を超えていないと判断した場合、濃度Bと濃度B0との差ΔBを算出し、差ΔBが予め定められている閾値ΔC2を超えたか否かを判断する(ステップS8)。制御部12は、差ΔBが閾値ΔC2を超えていないと判断した場合、上述した搬送装置による被処理体Wの反応容器71内への搬送動作及びそれに続く上記動作が行われるように、エッチング装置1が含む各構成要素の動作を制御する。
【0064】
制御部12は、差ΔBが閾値ΔC2を超えたと判断した場合、予め定められた量の補充液を補充装置4が貯留容器2内のエッチング液L1へ供給するように、その動作を制御する(ステップS9)。次いで、制御部12は、上述した計測系11によるトラップ103のリフレッシュ動作及びそれに続く上記動作が行われるように、エッチング装置1が含む各構成要素の動作を制御する。
【0065】
このようにして、エッチング装置1は、複数の被処理体Wに対するエッチング処理を順次行う。
【0066】
上記のエッチング装置1によると、適切なエッチングを継続的に行うことを可能である。これについて、以下に説明する。
【0067】
高温に加熱したエッチング液L1において、リン酸は、水素イオンと水酸化物イオンとを高濃度に生じさせて、以下の式(1)に示す反応を促進する。
Si+12H+12OH→3Si(OH)+NH↑ …(1)
なお、Si(OH)は、水溶性化合物である。この反応では、アンモニアガスが発生するため、逆反応は生じ難い。
【0068】
また、高温に加熱したエッチング液L1では、上記の反応と並行して、以下の式(2)に示す反応を生じる。
SiO+2H+2OH→Si(OH) …(2)
この反応ではガスは生じないので、逆反応を生じる。
【0069】
それ故、高温に加熱したエッチング液L1を使用すると、窒化珪素膜を酸化珪素膜よりも高いエッチングレートでエッチングできる。
【0070】
また、HFの存在下では、以下の式(3)に示す反応も生じ得る。
Si+12HF→3SiF↑+4NH↑ …(3)
従って、リン酸とHFとを含んだエッチング液を使用すると、より高いエッチングレートを達成できる。
【0071】
しかしながら、高温のエッチング液において、HFは揮発し易い。それ故、エッチングを継続的に行うと、窒化珪素膜のエッチングレートが低下する。
【0072】
テトラフルオロホウ酸のように一般式XBFで表される化合物は、下記式(4)に示す加水分解反応によってフッ化水素を発生するフッ化水素源である。
XBF+3HO→HF+XBFOH …(4)
一般式XBFで表される化合物の加水分解速度は遅いため、新しいエッチング液L1の使用を開始してから、そのエッチング液L1の使用を終了するまでの期間に亘り、一般式XBFで表される化合物によるHFの供給は継続する。従って、一般式XBFで表される化合物を使用することにより、エッチング液中のHFの濃度を、常に高い値に維持できる。
【0073】
但し、HFは、下記式(5)に示すように、酸化珪素とも反応する。
SiO+6HF→HSiF+4HO …(5)
従って、HFによって、窒化珪素膜のエッチングレートを高めることができる一方、酸化珪素膜のエッチングレートも高まる可能性がある。
【0074】
そこで、エッチング液中にコロイダルシリカを含有させる。コロイダルシリカは、比表面積が極めて大きなシリカ粒子の分散体であると言える。そのため、半導体ウェハ上の酸化珪素膜と比較して、遥かに反応性に富んでいる。コロイダルシリカとHFとの反応によって生じるHSiFのエッチング液中での濃度が高くなると、SiOとHFとの反応を生じ難くなる。それ故、酸化珪素膜のエッチングレートを低くすることができ、高いエッチング選択比を達成できる。
【0075】
なお、コロイダルシリカは、エッチング液中でHFと反応させることにより、その全量をHSiFへ転化させる。
【0076】
但し、以下の式(6)に示すように、HSiFは熱分解し、それによって生じるSiFは揮発し得る。
SiF→SiF↑+2HF …(6)
それ故、この熱分解の逆反応は生じ難く、エッチング液中にHSiFを高い濃度で存在させることが難しい可能性がある。エッチング液中におけるHSiFの濃度が低下すると、例えば図4に示すように、窒化珪素膜のエッチングレートは殆ど変化しないのに対し、酸化珪素膜のエッチングレートが高まる。その結果、例えば図3に示すように、エッチング選択比が低下する。
【0077】
そこで、エッチング液L1に、コロイダルシリカを補充する。これにより、上記式(5)の反応を促進し、エッチング液中にHSiFを常に高い濃度で存在させるようにする。このようにして、酸化珪素膜のエッチングレートが高まるのを抑制し、高いエッチング選択比を維持可能とする。
【0078】
但し、コロイダルシリカの補充量が過剰であると、被処理体Wや反応容器71の内壁へのシリカの析出を生じる可能性がある。従って、コロイダルシリカの補充は、適切なタイミングで行うことが望ましい。
【0079】
コロイダルシリカを補充するタイミングは、エッチング液L1中のHSiFに基づいて判断すればよいと考えられる。しかしながら、上記の通り、エッチング液L1は、例えば、160乃至170℃の範囲内の温度に加熱している。一般的な濃度計は、そのような高い温度に耐えられない。
【0080】
また、エッチング液L1は、それが本来含んでいる成分、その分解生成物、及びそれらと被処理体Wとの反応生成物などの様々な成分を含んでいる。それ故、エッチング液L1が含む特定の成分の濃度を高い精度で且つリアルタイムに計測することは難しい。
【0081】
例えば、図5に示すように、計測系11を省略し、循環配管51に濃度計56を設置しても、エッチング液L1は様々な成分を含んでいるため、特定の成分の濃度を高い精度で計測することは難しい。エッチング液L1が含む特定の成分の濃度を高い精度で計測するには、例えば、化学的手法を利用した定量を行う必要がある。この場合、エッチング液L1が含む特定の成分の濃度をリアルタイムに計測することはできない。
【0082】
そこで、本実施形態では、エッチング液L1から発生したガスに含まれる1以上の成分について濃度の計測を行う。即ち、エッチング液L1から揮発した成分について濃度の計測を行う。エッチング液L1から揮発する成分の数は、エッチング液L1が含んでいる成分の数と比較してより少ない。
【0083】
また、本実施形態では、ガスにおける上記成分の濃度を測定するのではなく、上記成分を溶媒に溶解させ、この溶液における上記成分の濃度を計測する。ここでは、HFの濃度と、SiFが水に溶解することによって生成するHSiFの濃度とを計測する。
【0084】
ガス中における上記成分の濃度は低く、しかも、ガス中の水蒸気は、上記成分の濃度計測の妨げになる。
【0085】
上記成分を溶媒であるトラップ液L2に溶解させる構成を採用した場合、コロイダルシリカの補充開始前の期間においては、エッチング液L1中のHSiFの濃度は、上記の通り、加熱時間の経過とともに低下する。そして、これに応じて、トラップ液L2中の珪素含有化合物の濃度は、例えば図6に示すように、加熱時間の経過とともに上昇する。なお、トラップ液L2が含み得る珪素含有化合物は、SiFが水に溶解することによって生成するHSiFである。
【0086】
また、コロイダルシリカの補充開始前の期間においては、例えば図7に示すように、窒化珪素膜のエッチングレートはほぼ一定である。これに対し、酸化珪素膜のエッチングレートは、エッチング液L1中のHSiFの濃度が低下するのに応じて、例えば図7に示すように、加熱時間の経過とともに上昇する。
【0087】
そして、図6のデータと図7のデータとから導かれる図8から明らかなように、酸化珪素膜のエッチングレートはトラップ液L2中のHSiFの濃度(ここでは珪素濃度)と高い相関を示し、酸化珪素膜のエッチングレートの変化に対する珪素濃度の変化は大きい。
【0088】
それ故、本実施形態によると、適切なタイミングでコロイダルシリカを補充することができる。即ち、上記の通り、トラップ液L2中のHSiFの濃度Bとトラップ液L2中のHSiFの初期濃度B0との差ΔBが閾値ΔC2を超えた場合にコロイダルシリカを補充することにより、コロイダルシリカの補充量が過剰になることに起因した被処理体Wや反応容器71の内壁へのシリカの析出を生じることなしに、酸化珪素膜のエッチングレートが過剰に高くなるのを防止することができる。従って、適切なエッチング、例えば、エッチング選択比が100以上のエッチングを継続的に行うことができる。
【0089】
また、本実施形態では、濃度の計測は、エッチング液L1について行うのではなく、トラップ液L2について行う。トラップ液L2は、エッチング液L1と比較して温度が低い。従って、本実施形態によると、濃度計115の温度耐久性が低い場合であっても、高い精度で濃度を計測することができる。
【0090】
上記のエッチング方法は、被処理体の一部をエッチングすることを含んだ構造体の製造方法に利用することができる。この構造体は、例えば、半導体装置である。この構造体は、機械部品などの他の物品であってもよい。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0092】
例えば、濃度A0及びB0の計測を省略し、それらを定数としてもよい。例えば、濃度A0及びB0をゼロとした場合、差ΔA及びΔBとして、それぞれ、濃度A及びBを使用することができる。但し、濃度A0及びB0の計測を行うと、トラップ103のリフレッシュの際に循環経路内に残留したトラップ液L2中の成分が、コロイダルシリカを補充するタイミングに及ぼす影響を小さくすることができる。これは、以下の理由による。
【0093】
即ち、濃度A0及びB0の計測を省略した場合、差ΔA及びΔBは、トラップ103のリフレッシュの際に循環経路内に残留したトラップ液L2の量に応じて変化する。それ故、例えば、トラップ103のリフレッシュの際に循環経路内に残留したトラップ液L2の量が多い場合、トラップ103のリフレッシュの際に循環経路内に残留したトラップ液L2の量が少ない場合と比較して、コロイダルシリカを補充するタイミングが早くなる。
【0094】
濃度A0及びB0の計測を行うと、トラップ103のリフレッシュの際に循環経路内に残留したトラップ液L2の量が差ΔA及びΔBへ及ぼす影響を小さくすることができる。それ故、トラップ103のリフレッシュの際に、ガス中の1以上の成分が溶解したトラップ液L2の一部がトラップ103と循環配管111とからなる循環経路内に残留した場合に、それら成分が、コロイダルシリカを補充するタイミングに及ぼす影響を小さくすることができる。
【0095】
コロイダルシリカの補充量は、一定でなくてもよい。例えば、濃度Aの上昇速度が高い場合にはコロイダルシリカの補充量を増やし、濃度Aの上昇速度が低い場合にはコロイダルシリカの補充量を減らしてもよい。
【0096】
コロイダルシリカを補充するタイミングの判断に、トラップ液L2におけるHSiF濃度に関する計測結果を利用する代わりに、トラップ液L2におけるHF濃度に関する計測結果を利用してもよい。或いは、コロイダルシリカを補充するタイミングの判断に、トラップ液L2におけるHSiF濃度に関する計測結果と、トラップ液L2におけるHF濃度に関する計測結果との双方を利用してもよい。但し、HSiF濃度に関する計測結果を利用した場合、HF濃度に関する計測結果を利用した場合と比較して、コロイダルシリカを補充すべきタイミングをより正確に判断することができる。
【0097】
被処理体Wへのエッチング処理に使用したエッチング液L1は、貯留容器2内へ回収しなくてもよい。この場合、回収系8は省略することができる。
【0098】
また、エッチングすべき膜の材質は、窒化珪素でなくてもよい。そして、エッチング液L1の組成も、上述したものとは異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…エッチング装置、2…貯留容器、3…補充装置、4…補充装置、5…循環系、6…供給系、7…反応装置、8…回収系、9…排出系、10…捕集装置、11…計測系、12…制御部、13…外部出力装置、31…タンク、32…補充配管、33…バルブ、41…タンク、42…補充配管、43…バルブ、51…循環配管、52…ポンプ、53…温度センサ、54…ヒータ、55…バルブ、56…濃度計、61…供給配管、62…バルブ、71…反応容器、72…回転機構、81…回収配管、82…バルブ、83…ポンプ、91…排出配管、92…バルブ、101…第1排気管、102…第2排気管、103…トラップ、111…循環配管、112…ポンプ、113…温度センサ、114…ヒータ、115…濃度計、121…処理部、122…記憶部、L1…エッチング液、L2…トラップ液、W…被処理体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8