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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080125
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】液体口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20220520BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220520BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220520BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220520BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/31
A61K8/39
A61K8/34
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191121
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高木 真由美
(72)【発明者】
【氏名】洲嵜 真一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB282
4C083AC031
4C083AC032
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC691
4C083AC692
4C083AD532
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE31
(57)【要約】
【課題】
殺菌作用を有しながら、洗口後の刺激や苦味がなく、味が良好で嗜好性が高く、さらに、外観の透明性に優れる液体口腔用組成物を提供すること。
【解決手段】
エタノールを含有しない液体口腔用組成物に、次の成分(A)~(E);
(A)塩化セチルピリジニウム 0.01~0.1重量%
(B)リモネン 0.01~0.1重量%
(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1~1重量%
(D)プロピレングリコール 2重量%以下
(E)キシリトール 1~5重量%
を含有することを特徴とする液体口腔用組成物。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールを含有しない液体口腔用組成物に、次の成分(A)~(E);
(A)塩化セチルピリジニウム 0.01~0.1重量%
(B)リモネン 0.01~0.1重量%
(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1~1重量%
(D)プロピレングリコール 2重量%以下
(E)キシリトール 1~5重量%
を含有することを特徴とする液体口腔用組成物。
【請求項2】
ジュンサイの抽出物を含有することを特徴とする請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
洗口液である請求項1又は2記載の液体口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液体口腔用組成物に関し、さらに詳細には殺菌作用を有しながら、洗口後の刺激や苦味がなく、味が良好で嗜好性が高く、さらに、外観の透明性に優れる液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔用組成物には、歯周疾患の予防又は治療のために、殺菌剤が配合されている。殺菌剤としては、例えば第四級アンモニウム塩型カチオン殺菌剤である塩化セチルピリジニウム等が知られている。しかし、塩化セチルピリジニウムには特有の苦味があり、また刺激性も有しているため、口腔に適用するためには、これらをできるだけ低減させることが求められる。
【0003】
リモネンは、柑橘類に含まれており、甘酸っぱい爽やかな香りにより、嗜好性の高い洗口液を作る上で欠かせない香料成分である。しかし、リモネンは極性がかなり低いため、他の香料成分と比較して、洗口液への配合は非常に難しい。
リモネンを可溶化させるために、界面活性剤の配合量を増やすと、組成物の殺菌力が低減したり、界面活性剤特有の異味が生じることがある。
【0004】
液体口腔用組成物には、香料を可溶化させるための可溶化剤としてエタノールが配合されているが、それにより、使用する際にぴりぴりとした刺激感を引き起こすため、近年では、エタノールを配合しないノンアルコールの洗口液等の液体口腔用組成物の普及が進んでいる。ところが、エタノールを配合しない液体口腔用組成物(特許文献1)では、エタノールを配合した場合より界面活性剤による可溶化力が必要となり、組成物の殺菌力と外観の透明性を両立することはより困難であった。
【0005】
塩化セチルピリジニウム由来の苦味の問題を解決するために、ステビアの併用によって苦味や刺激を改善し、嗜好性を向上する技術が提案され(特許文献2)、植物抽出物によって後味の違和感を改善する技術が提案されている(特許文献3)。しかし、これらの方法は、ステビアがもつ独特の苦味、また植物抽出物自身の苦味によって製剤の味が損なわれてしまう場合がある。
また、塩化ナトリウム及び塩化マグネシウム、水溶性のカルシウム塩を配合して、塩化セチルピリジニウムの苦味をマスキングする技術が提案されている(特許文献4及び5)が、それ自身の塩味や苦味が生じたり、使用感が悪くなる場合がある。
【0006】
このように、塩化セチルピリジニウムを配合しているにも関わらず、洗口後の苦味や刺激が低減され、かつ嗜好性が高く使用感においても満足できるもので、しかも外観の透明性に優れる口腔用組成物はいまだ達成できていない。従って、これらのすべてを満たした口腔用組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-255771号公報
【特許文献2】特開平05-000931号公報
【特許文献3】特開2015-086164号公報
【特許文献4】特開平09-095457号公報
【特許文献5】特開2005-104911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明における課題は、殺菌作用を有しながら、洗口後の刺激や苦味がなく、味が良好で嗜好性が高く、さらに、外観の透明性に優れる液体口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる事情に鑑み、本願発明者らは鋭意研究の結果、エタノールを含有しない液体口腔用組成物に(A)塩化セチルピリジニウムを0.01~0.1重量%、(B)リモネンを0.01~0.1重量%、(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を0.1~1重量%、(D)プロピレングリコールを2重量%以下、(E)キシリトールを1~5重量%含有すると、殺菌作用を有しながら、洗口後の刺激や苦味がなく、味が良好で嗜好性が高く、さらに、外観の透明性に優れることを見出し、本願発明を完成させた。
【0010】
また、本願発明は、ジュンサイの抽出物を含有することを特徴とする液体口腔用組成物を提供する。
【0011】
また、本願発明は、洗口液であることを特徴とする液体口腔用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の液体口腔用組成物は、殺菌作用を有しながら、洗口後の刺激や苦味がなく、味が良好で嗜好性が高く、さらに、外観の透明性に優れたものであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本願発明に用いる成分(A)塩化セチルピリジニウムは、第四級アンモニウム化合物に含まれるカチオン性殺菌剤であり、口腔用組成物において口腔内細菌を殺菌する目的で広く使用されている物質である。
【0014】
成分(A)の含有量は、液体口腔用組成物全体に対して0.01~0.1重量%であり、好ましくは0.03~0.08重量%である。0.01重量%より少ないと、口腔内における殺菌効果を十分に発揮できず、また0.1重量%を超えると苦味等使用感が悪くなるおそれがある。
【0015】
本願発明に用いる成分(B)リモネンは、レモンやオレンジなど、柑橘類の皮に豊富に含まれている精油成分であり、香料として使用できる。リモネンを含有することで、製剤の嗜好性を高め、使用者の満足度を向上することができる。
【0016】
成分(B)の含有量は、液体口腔用組成物全体に対して0.01~0.1重量%であり、好ましくは0.03~0.1重量%である。0.01重量%より少ないと、十分な香味が得られず、また0.1重量%を超えると外観の透明性が悪くなるおそれがある。
【0017】
本願発明に用いる成分(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、特に限定されるものではないが、そのエチレンオキサイドの付加モル数が10~100モルが好ましく、特に40~60モルが好ましい。
【0018】
成分(C)の含有量は、液体口腔用組成物全体に対して0.1~1重量%であり、好ましくは0.3~1重量%である。0.1重量%より少ないと、十分な可溶化力が得られず外観の透明性が悪くなる場合があり、1重量%を超えると、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油由来の異味が生じ、さらに、ミセル中への塩化セチルピリジニウムの取り込みによる殺菌活性の低下が生じるおそれがある。
【0019】
本願発明に用いる成分(D)プロピレングリコールは、市販のものを使用でき、その含有量は、液体口腔用組成物全体に対して2重量%以下であり、好ましくは1~2重量%である。2重量%を超えると、苦味等使用感が悪くなるおそれがある。
【0020】
本願発明に用いる成分(E)キシリトールは、安全性が高い糖アルコールであり、市販のものを使用できる。
【0021】
成分(E)の含有量は、液体口腔用組成物全体に対して1~5重量%であり、好ましくは2~5重量%である。1重量%より少ないと、苦味のマスキングが不十分な場合があり、5重量%を超えると、甘味が強くなり、べたついた使用感となるおそれがある。
【0022】
本願発明の液体口腔用組成物には、ジュンサイの抽出物を含有するのが好ましい。ジュンサイ(Brasenia schreberi)は、スイレン科ジュンサイ属に属し、世界に広く分布しており、澄んだ淡水の池に自生する多年生の水生植物である。ジュンサイは葉、茎、根等の何れの部位も使用できるが、特に粘質物で覆われた芽あるいは若葉を用いることが好ましい。ジュンサイの抽出物は、抽出溶媒を用いた常法によって取得することができる。抽出溶媒としては、水、アルコール類等が用いられ、溶媒抽出液または濃縮物として上市されている。例えば、ジュンサイエキス-LC(オリザ油化株式会社製:ジュンサイ葉エキス1重量%、プロパンジオール70重量%、水29重量%)が挙げられる。
この抽出物の含有量は、その効果の観点から0.001~0.1重量%が好ましい。上記範囲の量であると、液体口腔用組成物の刺激を抑制し、マイルドな使用感を付与することができるとともに、ジュンサイの抽出物自体が有する特有のにおいなどを抑制することができる。
【0023】
本願発明の液体口腔用組成物は、エタノールを含有しない。実質的には、液体口腔用組成物中10ppm以下の検出量である。これにより、刺激を抑制し、マイルドな使用感にすることができる。
【0024】
本願発明の液体口腔用組成物は、含有成分が可溶化した液体製剤として調製されるもので、例えば原液のまま使用するタイプの洗口液、口中清涼剤、濃縮タイプで使用時に希釈して用いる洗口液、液体歯磨剤等に調製できる。その中でも特に好ましいのは洗口液である。なお、特に洗口液では、歯磨剤のようなペースト状の製剤よりも苦味や刺激等が強く発現するが、本願発明では、このような液体製剤において苦味や刺激を低減し、味が良好で嗜好性の高い使用感を付与することができる。
【0025】
本願発明の液体口腔用組成物には、目的の効果が損なわれない範囲で上記成分以外に、通常の口腔用組成物に用いられる任意の成分を含有することができる。例えば、湿潤剤、界面活性剤、溶剤、甘味剤、着色剤、香料、防腐剤、増粘剤、有効成分等が挙げられる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【実施例0026】
次に、実施例を挙げて、本願発明をより詳細に説明する。ただし、本願発明はこれらにより限定されるものではない。なお、含有量は重量%である。
【0027】
表1~3に示した組成に従い、実施例1~14及び比較例1~8の各液体口腔用組成物(洗口液)を常法により調製し、得られた液体口腔用組成物について下記方法に従って評価した。
【0028】
(評価方法)
専門パネラー10名が表に示したサンプルの液体口腔用組成物を約10mL口に含み、30秒間すすいだ後、洗口後の使用感(1)刺激のなさ、(2)苦味のなさ、(3)後味の良さについて以下の基準に従って評価した。
【0029】
(1)刺激のなさ
(評価基準)
4点:刺激をまったく感じない
3点:刺激をほとんど感じない
2点:刺激を感じる
1点:刺激を強く感じる
(判定基準)
◎:平均点が3.5点以上4.0点以下
○:平均点が3.0点以上3.5点未満
△:平均点が2.0点以上3.0点未満
×:平均点が2.0点未満
【0030】
(2)苦味のなさ
(評価基準)
4点:苦味をまったく感じない
3点:苦味をほとんど感じない
2点:苦味を感じる
1点:苦味を強く感じる
(判定基準)
◎:平均点が3.5点以上4.0点以下
○:平均点が3.0点以上3.5点未満
△:平均点が2.0点以上3.0点未満
×:平均点が2.0点未満
【0031】
(3)後味の良さ
(評価基準)
4点:後味が非常に良い
3点:後味が良い
2点:後味がやや悪い
1点:後味が悪い
(判定基準)
◎:平均点が3.5点以上4.0点以下
○:平均点が3.0点以上3.5点未満
△:平均点が2.0点以上3.0点未満
×:平均点が2.0点未満
【0032】
(4)外観透明性
表に示した各サンプルの透過率を測定し、外観透明性を以下の基準に従って評価した。各サンプルを光路長10mmのセルに充填した際における吸収波長550nmの光の透過率を測定した。なお、セルとしては石英セルを用いた。
(判定基準)
◎:透過率が90%以上
○:透過率が80%以上90%未満
×:透過率が80%未満
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
上記表1において、実施例1~10の本願発明の液体口腔用組成物を使用した場合、殺菌作用を有しながら、洗口後の刺激や苦味がなく、味が良好で嗜好性が高く、外観の透明性に優れていた。
【0036】
上記表2において、成分(A)の含有量が0.1重量%より多い場合(比較例1)、刺激や苦味を抑制することができなかった。成分(B)の含有量が0.1重量%より多い場合(比較例2)、外観が透明にならなかった。成分(C)の含有量が1重量%より多い場合(比較例3)、あるいは成分(D)の含有量が2重量%より多い場合(比較例4)、原料由来の異味や苦みにより、後味が悪くなった。成分(E)の含有量が1重量%より少ない場合(比較例5)、苦味を抑制することができず、後味も悪くなった。成分(E)の含有量が5重量%より多い場合(比較例6)、甘みが強くなりすぎて後味が悪くなった。エタノールを含有した場合(比較例7及び8)、エタノールによる刺激が出て、後味も悪くなった。
【0037】
【表3】
【0038】
上記表3において、ジュンサイ葉エキスを含有しない場合(実施例11)及び他の植物エキスを含有する場合(実施例14)も刺激が抑制されたが、ジュンサイ葉エキスを含有すると、さらに刺激が抑制された(実施例12及び13)。
【0039】
(実施例15)
(成分) (重量%)
1.塩化セチルピリジニウム 0.04
2.リモネン 0.03
3.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60EO) 0.5
4.プロピレングリコール 1.0
5.キシリトール 4.0
6.ジュンサイ葉エキス 0.01
7.ソルビトール 3.0
8.リン酸一水素ナトリウム 0.05
9.リン酸二水素ナトリウム 0.25
10.ペパーミント油 0.01
11.メチルパラベン 0.1
12.精製水 残余
(調製方法)
実施例1~14と同様の方法で調製した。
【0040】
(実施例16)
(成分) (重量%)
1.塩化セチルピリジニウム 0.06
2.リモネン 0.08
3.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO) 1.0
4.プロピレングリコール 1.6
5.キシリトール 3.5
6.ジュンサイ葉エキス 0.005
7.グリセリン 5.0
8.リン酸一水素ナトリウム 0.05
9.リン酸二水素ナトリウム 0.25
10.メントール 0.001
11.メチルパラベン 0.1
12.精製水 残余
(調製方法)
実施例1~14と同様の方法で調製した。
【0041】
実施例15及び16に示す液体口腔用組成物を評価したところ、殺菌作用を有しながら、洗口後の刺激や苦味がなく、味が良好で嗜好性が高く、さらに、外観の透明性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願発明によれば、殺菌作用を有しながら、洗口後の刺激や苦味がなく、味が良好で嗜好性が高く、さらに、外観の透明性に優れる液体口腔用組成物を提供できる。