(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080129
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】スタッキング椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 3/04 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
A47C3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191126
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】391014114
【氏名又は名称】三惠工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】阿萬 芳和
(72)【発明者】
【氏名】北岡 秀典
(72)【発明者】
【氏名】池谷 晃一
【テーマコード(参考)】
3B091
【Fターム(参考)】
3B091BA02
(57)【要約】
【課題】スタッキング椅子において、上下方向にスムーズに積み重ねでき、かつ、積層状態でのズレ防止できるようにしたスタッキング椅子を提供する。
【解決手段】前脚7、後脚4を有する椅子の座部の後脚側の側面には、張り出し部17がある。張り出し部には、後脚方向に向けて次第に側方に傾斜する傾斜面20があり、傾斜面の後端には、上方の椅子の後脚が入り込む受溝23がある。受溝の後方には、後脚4の前方に位置する支持突起25があり、支持突起の後方には、後脚の内側面を隠すようカバー突起30が形成されている。積み重ねの際、上方の椅子は、後脚が傾斜面20に案内されて降下し、該後脚が受溝23に入り込み、上下の椅子の後脚が前後方向に並列した状態で下方の椅子に重ね合わされ、前後方向、左右方向のズレが防止される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部フレームの後端を起立して形成した後脚と、該後脚より内側に位置するよう下部フレームの前端を起立して形成した前脚と、前脚の上部を後方に屈曲させて形成した座枠フレームを具備し、該座枠フレーム上に座部を設け、後脚の上方に背部を設けたスタッキング椅子において、上記座部の後脚側の側面には、側方に広がる傾斜面を有する張り出し部が設けられ、該傾斜面に続いて弧状に凹陥する受溝が形成され、該受溝の後部には後脚の前方に突出する支持突起が形成されていることを特徴とするスタッキング椅子。
【請求項2】
上記受溝は、該受溝に入り込んだ上方の椅子の後脚と下方の椅子の後脚の前後方向の中心線が一致するように後脚の前方に位置していること特徴とする請求項1に記載のスタッキング椅子。
【請求項3】
上記支持突起の後方には、後脚の内側面を覆うようカバー突起が設けられていること特徴とする請求項1又は2に記載のスタッキング椅子。
【請求項4】
上記脚フレームは、前脚間を連結する前側ステーと、後脚間を連結する後側ステーを有し、上記座枠フレームの後端は該後側ステーに連結され、座部の上記カバー突起は上記後側ステーと後脚の連結部分を覆っている請求項3に記載のスタッキング椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スムーズに安定状態に積み重ねることができるスタッキング椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタッキング椅子として、パイプ材料を屈曲して下部フレームの前後に、上方に立ち上がる前脚と後脚を形成し、前脚の上端を後方に屈曲させて座枠フレームを形成し、両側の前脚と後脚間をステーで連結した脚フレームを具備し、座枠フレーム上に座部を設け、後脚の上方に背部を設けて上下方向に積み重ねできるようにしたスタッキング椅子が広く用いられている。このようなスタッキング椅子は、下部フレームの後端から起立する後脚よりも内方で前脚が起立するよう下部フレームの前端から内側に湾曲するオフセット部を介して前脚を配置しており、この構成により、上方の椅子の脚フレームを、下方の椅子の座枠フレームの外側に位置させて積層することができる。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のようなスタッキング椅子の場合、パイプ材料が比較的細く、前脚をオフセットして設けたことにより座枠フレーム間の間隔が下部フレーム間の間隔よりもオフセットに基づく分だけ狭くなっているので、椅子を積層するとき、上方の椅子の脚フレームの内側と下方の椅子の座枠フレームの外側間に大きな遊びが存在する。そのため、簡単に組み合わせることができなかったり、上下に組み合わせた状態が不安定でガタついたり、崩れ易かったりしてスムーズに安定状態に積層できないことがあった。また、スタッキング椅子は、複数の椅子を上下方向に積層した状態で傾けて台車に載置して運ぶことが多い(例えば特許文献2参照)。このとき、傾斜している上方の椅子は、背部が下方の椅子の背部にあたる部分で支持されているだけなので、不安定であり、積層状態が崩れたり、後脚どうしがぶつかって傷ついたり、台車から落下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4094287号公報(
図1~
図4、
図7)
【特許文献2】特開2010-100240号公報(段落0002、
図4、
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決課題は、積み重ねできるようにしたスタッキング椅子において、上方に積み重ねる際、スムーズに安定状態に積層でき、積層状態で前後、左右にズレにくくしたスタッキング椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、下部フレームの後端を起立して形成した後脚と、該後脚より内側に位置するよう下部フレームの前端を起立して形成した前脚と、前脚の上部を後方に屈曲させて形成した座枠フレームを具備し、該座枠フレーム上に座部を設け、後脚の上方に背部を設けたスタッキング椅子において、上記座部の後脚側の側面には、側方(座部の横方向)に広がる傾斜面を有する張り出し部が設けられ、該傾斜面に続いて弧状に凹陥する受溝が形成され、該受溝の後部には後脚の前方に突出する支持突起が形成されていることを特徴とするスタッキング椅子が提供され、上記課題が解決される。
【0007】
上記受溝は、該受溝に入り込んだ上方の椅子の後脚と下方の椅子の後脚の前後方向の中心線がほぼ一致するように後脚の前方に位置しており、上記支持突起の後方には、後脚の内側面を覆うようカバー突起が設けられていること特徴とするスタッキング椅子が提供され、上記課題が解決される。
【0008】
また、本発明によれば、上記脚フレームは、前脚間を連結する前側ステーと、後脚間を連結する後側ステーを有し、座枠フレームの後端は該後側ステーに連結され、座部の上記カバー突起は上記後側ステーと後脚の連結部分を覆っている上記スタッキング椅子が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように構成され、下部フレームの後端を起立して形成した後脚と、該後脚より内側に位置するよう下部フレームの前端を起立して形成した前脚と、前脚の上部を後方に屈曲させて形成した座枠フレームを具備し、該座枠フレーム上に座部を設け、後脚の上方に背部を設けたので、通常のスタッキング椅子と同様に、下方の椅子の座枠フレームの外側に上方の椅子の脚フレームを位置させて上下方向に積層することができる。その際、上記座部の後脚側の側面に、側方に、すなわち座部の横方向に広がる傾斜面を有する張り出し部を設けたので、上方の椅子の脚フレームの内面を下方に椅子の脚フレームの外面に沿って落とし込むとき、座枠フレームと下部フレームのオフセット分に基づく隙間は、張り出し部により解消され、上方の椅子の後脚は、張り出し部の傾斜面に案内されてスムーズに降下し、上記傾斜面に続いて設けた弧状に凹陥する受溝にパチンと入り込む。この受溝は、受溝に入り込んだ上方の椅子の後脚と、下方の椅子の後脚の前後方向の中心線がほぼ一致するように後脚の前方に位置しているので、上下の椅子の後脚は前後方向に並列し、積層状態の椅子の前後方向と横方向のズレが防止され、安定状態に積み重ねることができる。
【0010】
そして、上記受溝の後部には後脚の前方に突出する支持突起が設けられているので、積層状態で斜めに台車上に載置したとき、上方の椅子の背部の後面が下方の椅子の背部の前面に接触するとともに下方の椅子の上記支持突起に上方の椅子の後脚が接触するから、傾斜状態で上方の椅子は複数の箇所で支持され、積層した椅子の隙間寸法を確保することができ、積み重ね状態が一層安定することになり、台車で走行中に振動しても崩れるおそれがない。また、支持突起の後方に、後脚の内側面を覆うようカバー突起を設けたので、後脚と後側ステーを連結する溶接部等の連結部が外面に表れないようにでき、上方から見たときに溶接部等が見えにくくなって、体裁がよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】座部の一部を拡大して示し、(A)は平面図、(B)はB-B線断面図、(C)はC-C線断面図、(D)はD-D線断面図。
【
図5】座部を脚フレームに取り付ける状態を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、
図2を参照し、本発明のスタッキング椅子1は、断面円形のパイプ材料を屈曲して脚フレーム2を形成してあり、該脚フレーム2は、床面に沿って延びる下部フレーム3と、その後端から上方に少し前傾して起立する後脚4及びその上方から少し後傾して延びる背フレーム5と、該下部フレーム3の前端から内方に湾曲するオフセット部6を介して上方に起立する前脚7を有している。該前脚7の上部には、上端屈曲部8を介して後方に延出する座枠フレーム9が形成されている。左右の前脚7及び後脚4は、前側ステー10と後側ステー11の両端をそれぞれ溶接することにより連結してあり、上記座枠フレーム9の後端は、上記後側ステー11に溶接して連結されている。上記背フレーム5には背部12が設けられ、座枠フレーム9及び前側ステー10、後側ステー11で構成される上面フレーム部分には、図示を省いた適宜の取付金具等を用いて座部13が取り付けられている。
【0013】
上記背部12及び座部13の支承面を構成する支持体は、図においては、一実施例として、中心孔を有する背枠や座枠14にメッシュ材料や布材料等の弾性シート部材15を一体的に張設した弾性的な支持体を示しているが、所望により背枠、座枠等と弾性シート部材の全体を外装材で被覆した弾性的な支持体や、木材料製、金属材料製、プラスチック材料製等の板状の支持体、基板にクッション材を載置して外装材で全体を被覆した支持体、プラスチック板、金属板等に多数の孔を設けた孔明き板状体で構成した支持体、その他適宜の構造の支持体で構成することができる(図示略)。
【0014】
図3~
図5を参照し、上記座部13は、周囲を取り囲む外周面16を有し、該座部13の両側、すなわち左右方向の外周面16の後脚側の側面には、張り出し部17が設けられている。図に示す実施例のように座枠14にメッシュ材料等の弾性シート部材15を張設するようにした座部13では、外周面16を構成する外周壁16aと、その内方の裏面に外周壁16aとの間で座枠フレーム6や後側ステー11を受け入れできるよう下方に突出する隔壁18を有し、側方の外周壁16aに上記張り出し部17が形成され、その後方には後側ステー11の端部を受け入れる切欠き孔19が形成されている。なお、該張り出し部17は、図に示す実施例では座枠14の外周壁と一体的に形成してあるが、張り出し部自体を別体に形成して外周壁に取り付けるようにしてもよい。
【0015】
上記張り出し部17には、上方に積み重ねるとき上方の椅子1aの後脚4aをスライドしながらガイドできるよう傾斜面20が設けられている。該傾斜面20は、座枠14の前方側の前端21が外周壁16aの表面にあり、その位置から後方に向かって次第に側方に、すなわち座枠の横方向に突出しながら徐々に傾斜して広がる幅(高さ)に形成されている。
図3を参照し、該傾斜面20の後脚4側の後端22には、傾斜面20に続いて、弧状に凹陥する受溝23が形成されている。該受溝23は、上方の椅子1aの後脚4aを受け入れできるよう後脚の前傾角度に対応する傾斜状態で凹陥しており、受溝23に入り込んだ上方の椅子1aの後脚4aと下方の椅子1の後脚4の前後方向の中心線24がほぼ一致するように形成され、椅子を積層するとき、該傾斜面20に案内されてスライドしてきた上方の椅子1aの後脚1aがパチンと安定状態に入り込む大きさに形成されている。
【0016】
上記受溝23の後方には、上記傾斜面20の後端22に対向して後脚4の前方に位置するように支持突起25が形成されている。該支持突起25は、平面から見て、上記傾斜面20の後端22よりも側方に突出する受溝側先端26と、受溝側先端26よりも突出量が後退する後脚側先端27を有する平面視略台形状であり、かつ側面から見て、後脚の前傾角度に応じた角度で傾斜する受溝23に沿って傾斜している。また、上記後脚側先端27から座枠14の外周壁16aに向かって延びる後脚対向面28も、前傾して設けられた後脚にほぼ対応する傾斜面に形成されている。
【0017】
上記支持突起25の後方の外周壁16aには、後脚4と後側ステー11の連結部29を隠すように突出するカバー突起30が設けられている。該カバー突起30は、背部12の下方に位置し、座部13を上方から見たとき、後脚4と後側ステー11の連結部29の溶接等がカバーして、体裁よくすることができる。
【0018】
上記の構成により、下方の椅子1の上方から上方の椅子1aを重ね合わせると、上方の椅子1aの脚フレームの内側に、下方の椅子1が入り込み、上方の椅子1aの脚フレームの後脚4aは、下方の椅子1の張り出し部17の側面に当り、傾斜面20に案内されてスライドしつつ降下し、受溝23に対応したとき、パチンと嵌合する。このようにして、前後方向及び横方向の遊びが少なくなる状態に組み合わせできるので、スムーズに積層することができる。
【0019】
重ね合わされた椅子は、上方の椅子1aの後脚4aの後面が、下方の椅子1の後脚4の前方に突出する支持突起25にあたるので、上下の椅子の隙間寸法を確保することができる。また、台車(図示略)で移送するとき、例えば
図6に示すように、積層した椅子は、通常傾斜状態で台車に載置されるが、このとき上方の椅子1aの背部12の背面が、下方の椅子1の背部12の前面に接触するから、積層状態で上方の椅子1aは2か所で支えられることになり、一層安定し、移送中に崩れるようなおそれが少ない。。
【符号の説明】
【0020】
1 スタッキング椅子
2 脚フレーム
3 下部フレーム
4 後脚
7 前脚
9 座フレーム
11 後側ステー
12 背部
13 座部
14 座枠
17 張り出し部
20 傾斜面
23 受溝
25 支持突起
30 カバー突起