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特開2022-80197炉蓋洗浄装置、炉蓋洗浄装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080197
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】炉蓋洗浄装置、炉蓋洗浄装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 43/08 20060101AFI20220520BHJP
   C10B 43/04 20060101ALI20220520BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20220520BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
C10B43/08
C10B43/04
B08B1/04
B08B3/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191229
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】502369746
【氏名又は名称】住友重機械プロセス機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】岩朝 義典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】川端 純司
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
4H012
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB51
3B116BA03
3B116BA12
3B116BB22
3B116BB42
3B116BB43
3B116CD41
3B201AA46
3B201AB51
3B201BA03
3B201BA12
3B201BB22
3B201BB42
3B201BB43
3B201BB92
3B201CD41
4H012FA02
(57)【要約】
【課題】本開示は、停電したときにコークス炉の炉蓋を容易に移動可能な炉蓋洗浄装置の技術を提供することを目的の一つとしている。
【解決手段】本開示の炉蓋洗浄装置100は、コークス炉の炉蓋1を洗浄する洗浄部20と、電動機42の出力に基づいて洗浄部20を移動させる移動部40と、停電時に電動機42に電力を供給する電源部と、電源部を制御する制御部と、を備え、停電が発生したとき、制御部は、電源部から電動機42に電力を供給して洗浄部20を退避方向に移動させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炉蓋を洗浄する洗浄部と、
電動機の出力に基づいて前記洗浄部を移動させる移動部と、
停電時に前記電動機に電力を供給する電源部と、
前記電源部を制御する制御部と、
を備え、
停電が発生したとき、前記制御部は、前記電源部から前記電動機に電力を供給して前記洗浄部を退避方向に移動させることを特徴とする炉蓋洗浄装置。
【請求項2】
停電が発生したとき、前記移動部は、前記洗浄部を上下に移動させ、前記炉蓋との干渉を回避可能な退避位置に移動することを特徴とする請求項1に記載の炉蓋洗浄装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記洗浄部が前記退避位置に移動したことを示す情報を外部に提供することを特徴とする請求項2に記載の炉蓋洗浄装置。
【請求項4】
前記電源部は、停電が発生したときに発電を開始する発電機を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の炉蓋洗浄装置。
【請求項5】
停電が発生したとき、前記制御部は、前記発電機の発電電圧が所定の範囲に達した場合に、前記洗浄部の移動を開始させることを特徴とする請求項4に記載の炉蓋洗浄装置。
【請求項6】
コークス炉の炉蓋を洗浄する洗浄部と、電動機の出力に基づいて前記洗浄部を移動させる移動部と、を備える炉蓋洗浄装置の制御方法であって、
停電が発生したとき、電力を発生させて当該電力を前記電動機に供給して前記洗浄部を退避方向に移動させることを含むことを特徴とする炉蓋洗浄装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉蓋洗浄装置および炉蓋洗浄装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の炉蓋を洗浄する炉蓋洗浄装置が知られている。本出願人は、特許文献1において炉蓋掃除装置を開示している。この装置は、炉蓋のガス道の垂直部分及び炉蓋のナイフエッジ先端の垂直部分を掃除するための高圧水噴射回転ガンと、炉蓋の断熱材の垂直部分を掃除するための回転カッターとを有する側面クリーナーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-036838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コークス炉の炉開口を閉塞する炉蓋は、タールやピッチなどの付着物を適時に除去することが望ましい。このため、炉蓋を炉蓋洗浄装置の近傍に移動させ、洗浄部を炉蓋に近づけて洗浄することが考えられる。この洗浄中に停電が発生した場合は、炉蓋をコークス炉の炉開口に速やかに移動させることが望ましい。このため、停電したときに炉蓋の近傍から洗浄部を退避させ、炉蓋の移動を容易にすることが重要である。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の炉蓋洗浄装置には、停電したときに炉蓋を容易に移動可能にする観点からは十分な対策が講じられているとはいえない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、コークス炉の炉蓋洗浄装置に関して、停電したときに炉蓋を容易に移動可能な炉蓋洗浄装置の技術を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の炉蓋洗浄装置は、コークス炉の炉蓋を洗浄する洗浄部と、電動機の出力に基づいて洗浄部を移動させる移動部と、停電時に電動機に電力を供給する電源部と、電源部を制御する制御部と、を備える。停電が発生したとき、制御部は、電源部から電動機に電力を供給して洗浄部を退避方向に移動させる。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、停電したときに炉蓋を容易に移動可能な炉蓋洗浄装置の技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る炉蓋洗浄装置を概略的に示す模式図である。
図2図1の炉蓋洗浄装置と炉蓋を示す平面図である。
図3図1の炉蓋洗浄装置と炉蓋を示す側面図である。
図4図1の炉蓋洗浄装置の電源系統の一例を示すブロック図である。
図5図1の炉蓋洗浄装置の停電モード動作を説明するフローチャートである。
図6図1の炉蓋洗浄装置の洗浄部を下限位置に移動させた状態を示す図である。
図7】比較のために、洗浄部を下側に屈曲させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、炉蓋洗浄装置について研究し、以下の知見を得た。
図1は、炉蓋洗浄装置100を用いて炉蓋1を洗浄する状態を概略的に示す模式図である。炉蓋洗浄装置100は、コークス炉2の炭化室の炉開口3を閉塞する炉蓋1について、タールやピッチなどの付着物を除去(以下、「洗浄」という)する洗浄装置である。炉蓋洗浄装置100は、炉開口3から外された炉蓋1を洗浄部20の近傍に移動させて、炉蓋1を洗浄する。
【0012】
図1の状態で停電が発生した場合、油圧で駆動される機構は、アキュムレータ(蓄圧器)によって動作を継続できる。炉蓋1は、油圧機構により移送されるため、油圧機構により炉蓋1をコークス炉2の炉開口3に収めることができる。このとき、洗浄部20が、炉蓋1を炉開口3に戻すときの炉蓋1の旋回移動軌跡と干渉する(以下、「炉蓋1との干渉」という)ことを避けるために、洗浄部20を干渉しない位置に退避させることが考えられる。
【0013】
洗浄部20を退避させるために、油圧ピストンを用いて、洗浄部20を支持する腕機構を関節で屈曲させることが考えられる。図7は、比較のために、洗浄部20を下側に屈曲させた状態を示す図である。この図の場合、屈曲する際の洗浄部20の軌跡20eが、炉蓋洗浄装置の下部に配置された洗浄スラグ排出用のチェーンコンベア18と干渉し、屈曲の障害となり得ることが判明した。チェーンコンベア18とのクリアランスを大きくすることも考えられるが、この場合、炉蓋洗浄装置の小型化に不利である。また、タールやピッチなどの付着物が、腕機構の関節に溜まり、関節が固まって腕機構が屈曲不能になる可能性もある。また、油圧ピストンや油圧配管を設けることにより、構成が複雑化し、メンテナンス性が低下する。
【0014】
これらの知見を踏まえ、本発明者らは、停電時に洗浄部を退避位置に移動させるための動力源として電動機を採用し、停電が発生したら電源部から電動機に電力を供給して洗浄部を退避位置に移動させる構成を案出した。この構成によれば、チェーンコンベア等の周辺物体との干渉を容易に回避可能で、付着物の影響を受けにくく、構成の簡素化に有利である。
以下、本開示について例示的な実施形態を参照して説明する。
【0015】
以下、本開示を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0016】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0017】
[実施形態]
以下、図1を参照して、本開示の実施形態に係る炉蓋洗浄装置100を説明する。説明の便宜上、図示のように、炉蓋の幅方向をX方向と、X方向に直交する水平な方向をY方向と、両者に直交する鉛直方向をZ方向とする。X方向を左右方向と、Y方向を前後方向と、Z方向を上下方向ということがある。このような方向の表記は炉蓋洗浄装置100の姿勢を制限するものではなく、炉蓋洗浄装置100は、任意の姿勢で使用されうる。
【0018】
炉蓋洗浄装置100は、コークス炉2の炭化室の炉開口3を開閉する炉蓋1に付着した粉塵やタールなどの付着物を除去するための洗浄装置である。粉塵やピッチなどの付着物が堆積すると、炉蓋1を閉じた際の、気密性が低下して、外部へのガス漏れや外気の流入などを生じるおそれがある。このため、炉蓋1は適時に洗浄される。図1に示すように、洗浄対象の炉蓋1は、炉開口3から外されて炉蓋洗浄装置100と対面する位置に移送され、その状態で洗浄される。
【0019】
図1に示すように、炉蓋1は、煉瓦などで形成される断熱部5と、炉開口3の正面を覆う蓋本体4と、蓋本体4の外周をシールするナイフエッジ4nとを有する。蓋本体4は、左右及び上下に延在する壁状の部分である。断熱部5は、蓋本体4の左右中央領域から前後方向に突出する。蓋本体4の断熱部5の左右両側には鉛直部4bが設けられる。蓋本体4の鉛直部4bと断熱部5との連結部にガス道4gが設けられる。付着物は、主に、蓋本体4の鉛直部4b、ガス道4g、ナイフエッジ4nの先端および断熱部5に堆積する。
【0020】
図1に示すように、炉蓋洗浄装置100は、側面洗浄部20と、下面洗浄部62と、上面洗浄部64とを含む。側面洗浄部20は、炉蓋1の側面5a、5bに沿って上下に移動しながら側面5a、5bを洗浄する。下面洗浄部62は、炉蓋1の下面5cに沿って左右に移動しながら下面5cを洗浄する。上面洗浄部64は、炉蓋1の上面5dに沿って左右に移動しながら上面5dを洗浄する。側面5a、5bは、断熱部5の鉛直部分である。下面5cおよび上面5dは、断熱部5の水平部分である。
【0021】
側面洗浄部20、下面洗浄部62および上面洗浄部64は、水噴射ガン22と、回転カッター24とを有する。水噴射ガン22は、噴射ノズルを回転させて噴射方向を回転させながら高圧水を噴射する。各水噴射ガン22には、水タンクの洗浄水を高圧水ポンプによって加圧した高圧水が、バルブスタンドと高圧水配管22pとを通じて供給される。
【0022】
回転カッター24は、炉蓋1の断熱部5の側面5a、5b、下面5cおよび上面5dの付着物を除去する。回転カッター24は、スクリューカッターと称されることがある。
【0023】
図2図3を参照する。図2は、炉蓋洗浄装置100と炉蓋1を示す平面図である。図3は、炉蓋洗浄装置100と炉蓋1を示す側面図である。これらの図は、洗浄時の炉蓋1と炉蓋洗浄装置100の配置を示しており、炉蓋洗浄装置100を基準に前後方向で炉蓋1が置かれる方向を前側という(図2中左側)。以下、側面洗浄部20を単に「洗浄部20」という。
【0024】
図2図3に示すように、炉蓋洗浄装置100は、洗浄部20の他に、本体部10と、移動部40と、制御部50と、位置センサ51と、電源部54とをさらに備える。移動部40は、洗浄部20を上下に昇降移動させる機構であり、電動機42を含む。本体部10は、洗浄部20、移動部40、制御部50および電源部54を支持するフレームである。本体部10は、洗浄部20を昇降可能に支持する支柱12を有する。支柱12は、本体部10の前後方向中心より前側に寄った位置で、本体部10の左右方向中心位置において、上下方向に延びる角柱である。
【0025】
制御部50は、電源部54および電動機42の動作を制御する。位置センサ51は、洗浄部20の上下方向の位置を検知し検知結果を制御部50に送信する。電源部54は、停電時に電動機42に電力を供給する。
【0026】
位置センサ51に限定はないが、本実施形態の位置センサ51は、洗浄部20の水噴射ガン22および回転カッター24が、炉蓋1の断熱部5の上下範囲よりも上または下の所定位置に移動したことを検知できる。例えば、当該所定位置は、断熱部5の上下範囲に十分なマージンが加えられた位置に設定される。位置センサ51の構成に限定はないが、本実施形態の位置センサ51は、洗浄部20またはこれと一体に上下動する部分によってオンオフされるリミットスイッチを含む。本実施形態の位置センサ51は、図3に示すように、支柱12の下部に取り付けられる下センサ51aと、上部に取り付けられる上センサ51bとを含む。下センサ51aは、洗浄部20が所定の下限位置にあることを検知し、その検知結果を制御部50に送信する。上センサ51bは、洗浄部20が所定の上限位置にあることを検知し、その検知結果を制御部50に送信する。制御部50は、下センサ51aおよび上センサ51bの検知結果に基づいて洗浄部20が下限位置または上限位置に到達したか否かを判定できる。
【0027】
洗浄部20は、水噴射ガン22および回転カッター24の少なくとも一方と、昇降部28と、を含む。昇降部28は、支柱12に沿って上下に移動可能な台部である。昇降部28は、水噴射ガン22および回転カッター24を支持してこれらと一体的に上下移動する。昇降部28は、スムーズに移動するため、支柱12を走行可能な台車28dを有する。昇降部28は、左右に延びる基部28aと、基部28aの両端から前側に延びる一対のアーム部28bと、基部28aの左右中央から後側に延びる連結部28cとを含む。各アーム部28bの前側には、断熱部5を挟むように配置された一対の水噴射ガン22が装着されている。水噴射ガン22は、平面視で、ガス道4gの周辺に向かって傾斜している。連結部28cは、移動部40と連結される。
【0028】
基部28aは、一対のカッター保持部24jを介して、一対の回転カッター24を支持する。一対のカッター保持部24jおよび一対の回転カッター24は、断熱部5を挟むように配置されている。一対の回転カッター24の間の距離は、開閉装置(不図示)によって拡大および縮小される。一対の回転カッター24の間の距離を小さくすることによって、各回転カッター24を断熱部5の側面5a、5bに圧着できる。
【0029】
図3を参照して移動部40を説明する。移動部40は、電動機42の出力に基づいて洗浄部20を移動させる。例えば、移動部40は、減速機構等の動力伝達手段を介して、電動機42の回転を上下方向の直線運動に変換する構成を有してもよい。図3の例では、動力伝達および直線運動変換のためにスプロケットと動力伝達用チェーンを用いている。
【0030】
この例では、移動部40は、電動機42と、第1スプロケット43と、第2スプロケット44と、第1ローラチェーン45と、第3スプロケット46と、第4スプロケット47と、第2ローラチェーン48と、チェーン連結部49とを含む。電動機42に限定はないが、この例の電動機42は誘導電動機である。電動機42は、減速機を備えてもよい。
【0031】
第1スプロケット43は、電動機42に駆動される駆動スプロケットである。第2スプロケット44は、第1スプロケット43から斜め上に離れて配置される従動スプロケットである。第1ローラチェーン45は、第1スプロケット43および第2スプロケット44に噛み合い、これらの間で動力を伝達する。第3スプロケット46は、第2スプロケット44と同軸に固定され、第2スプロケット44と一体的に回転する駆動スプロケットである。第4スプロケット47は、第3スプロケット46の下方に離れて配置される従動スプロケットである。
【0032】
第2ローラチェーン48は、第3スプロケット46および第4スプロケット47に噛み合い、これらの間で動力を伝達する。第2ローラチェーン48は、支柱12の後側近傍において上下に延びる直線部48a、48bを有する。チェーン連結部49は、第2ローラチェーン48の所定位置に固定され、昇降部28の連結部28cと連結される。チェーン連結部49は、支柱12に近い側の直線部48aに固定される。したがって、チェーン連結部49は、第3スプロケット46と第4スプロケット47との間で、上下に移動できる。
【0033】
移動部40の動作を説明する。電動機42が回転すると、第1ローラチェーン45を介して第1スプロケット43および第2スプロケット44が回転する。第2スプロケット44が回転すると、第2ローラチェーン48を介して第3スプロケット46および第4スプロケット47が回転する。このとき、直線部48aに固定されたチェーン連結部49と連結部28cとを介して昇降部28が上下に移動する。昇降部28が上下に移動すると、昇降部28に支持された水噴射ガン22と回転カッター24を含む洗浄部20が上下に移動する。
【0034】
図4を参照して炉蓋洗浄装置100の電源系統を説明する。図4は、炉蓋洗浄装置100の電源系統の一例を示すブロック図である。電動機42は、制御部50の制御の下、外部電源80または電源部54から供給される電力に基づいて回転する。外部電源80は、通常時に利用可能な電源であって、例えば、商用電源、自家発電による電源等である。停電は、外部電源80の電力供給が停止した状態である。制御部50は、通常時(非停電時)、電源部54を停止した状態に維持し、外部電源80の電力を電動機42に供給するとともに後述する通常モード動作を実行する。制御部50は、停電検知部52が停電を検知したら、電源部54を起動し、電源部54の電力を電動機42に供給するとともに後述する停電モード動作を実行する。
【0035】
図4に示すように、本実施形態は、通常時に電動機42に電力を供給する第1電力系統と、停電時に電動機42に電力を供給する第2電力系統と、無停電電源装置53を介して制御部50に電力を供給する第3電力系統とを有する。
【0036】
第1電力系統は、整流器81と、第1コンバータ82と、第1DCリアクトル82dと、インバータ83とを備える。インバータ83は、第2電力系統と共用される。整流器81は、ダイオードを用いて外部電源80から供給される交流電圧V1を整流した直流電圧を第1コンバータ82に供給する。第1コンバータ82は、整流器81から供給される直流電圧を、インバータ駆動用の直流電圧に変換して出力し、インバータ83に供給する。第1コンバータ82は、第1DCリアクトル82dを用いて、入力電圧を昇圧するとともに出力電圧の脈動を低減する。
【0037】
インバータ83は、第1コンバータ82または第2コンバータ57から供給された直流電圧を基に3相交流電圧を生成して電動機42に供給する。インバータ83は複数のスイッチング素子からなる3相ブリッジ回路を含んで構成できる。インバータ83は、制御部50により制御される。制御部50は、電動機42に供給するインバータ83の出力電圧を変化させることにより、電動機42の速度および回転方向を制御する。
【0038】
第2電力系統は、発電機55と、整流器56と、第2コンバータ57と、第2DCリアクトル57dとを備える。発電機55、整流器56、第2コンバータ57および第2DCリアクトル57dは、電源部54を構成する。発電機55は、通常時には発電せず、停電時に発電する。つまり、電源部54は、停電が発生したときに発電を開始する発電機55を含む。
【0039】
発電機55の構成に制限はないが、例えば、駆動用のディーゼルエンジンと一体化された交流発電機である。したがって、発電機55を起動することはディーゼルエンジンを起動して発電機55を回転させることである。整流器56、第2コンバータ57および第2DCリアクトル57dは、整流器81、第1コンバータ82および第1DCリアクトル82dと同様に動作する。第2電力系統は、制御部50の制御の下、第2コンバータ57から発電機55の発電電圧に基づく直流電圧を出力し、インバータ83に供給する。
【0040】
第3電力系統は、無停電電源装置53と、停電検知部52とを備える。無停電電源装置53は、外部電源80の電圧V1に基づいて出力電圧を供給するとともに、外部電源80の停電時にも出力電圧を供給し続ける電源装置である。無停電電源装置53は、整流器、二次電池、インバータ等を含んで構成できる。無停電電源装置53の出力電圧は、停電検知部52および制御部50に供給される。したがって、制御部50は、通常時および停電時に継続して動作できる。無停電電源装置53の供給容量は、停電モード動作を実行するに十分な範囲に設定される。
【0041】
停電検知部52は、外部電源80の電圧をモニタして、外部電源80の停電を検知し、その検知結果を制御部50に送る。停電検知部52は、プログラマブルロジックコントローラやリレー回路などで構成できる。
【0042】
制御部50は、停電検知部52から取得した検知結果に基づいて、第1電力系統および第2電力系統を制御する。制御部50は、停電していない場合は、通常モード動作をするように第1電力系統および第2電力系統を制御し、停電している場合は、停電モード動作をするように第1電力系統および第2電力系統を制御する。
【0043】
通常モード動作の一例を説明する。通常モード動作では、下面洗浄部62および上面洗浄部64を同時または別々に動作させて断熱部5の下面5cおよび上面5dを洗浄する。下面洗浄部62を動作させるときは、洗浄部20を上限位置に移動させる。上面洗浄部64を動作させるときは、洗浄部20を下限位置に移動させる。
【0044】
次に、左右の洗浄部20を下限位置と上限位置との間で移動させながら、断熱部5の側面5a、5bを洗浄する。このとき、移動部40は、第1電力系統から供給される電力に基づいて洗浄部20を上下に移動させる。この場合の下限位置および上限位置は、位置センサ51によって検知できる。
【0045】
本実施形態の停電モード動作S110を説明する。図5は、停電モード動作S110を説明するフローチャートである。動作S110は、通常モード動作において、洗浄部20が下限位置と上限位置の間で下限位置および上限位置を含まない範囲にあるときに開始される。
【0046】
動作S110が開始されると、停電検知部52は、外部電源80の電圧V1を取得する(ステップS111)。停電検知部52は、取得した電圧V1に基づいて停電か否かを判定する(ステップS112)。電圧V1が所定の基準値以上で停電していない場合(ステップS112のN)、停電検知部52は、処理をステップS111の先頭に戻し、ステップS111~ステップS112を繰り返す。
【0047】
電圧V1が所定の基準値よりも低く停電している場合(ステップS112のY)、停電検知部52は、判定結果を制御部50に提供する。制御部50は、発電機55を起動する(ステップS113)。発電機55を起動した直後に移動部40を動作させてもよいが、この場合、不安定な初期電圧により移動部40が誤動作する可能性がある。そこで、本実施形態では、停電発生後に発電機55の発電電圧が所定の範囲に達した後、洗浄部20の移動を開始させる。換言すると、本実施形態では、発電機55が立ち上がり発電電圧が安定してから移動部40を動作させる。
【0048】
発電電圧を取得するポイントは、発電電圧を取得できればどこでもよい。本実施形態では、図4に示すように、制御部50は、電圧センサ57sを介して、第2コンバータ57の出力電圧V2を発電電圧として取得する(ステップS114)。
【0049】
制御部50は、取得した出力電圧V2(発電電圧)が所定の範囲内か否かを判定する(ステップS115)。このステップの所定範囲は、実験またはシミュレーションに基づいて、移動部40が誤動作しない範囲に設定できる。
【0050】
出力電圧V2が所定の範囲内にない場合(ステップS115のN)、制御部50は、処理をステップS114の先頭に戻し、ステップS114~ステップS115を繰り返す。出力電圧V2が所定の範囲内にある場合(ステップS115のY)、制御部50は、出力電圧V2に基づいて、電動機42を回転させて洗浄部20を移動させる(ステップS116)。
【0051】
このステップで、制御部50は、洗浄部20が上下方向の基準位置よりも上側にあるとき洗浄部20を上側に移動し、基準位置以下にあるとき洗浄部20を下側に移動させる。このステップの基準位置は、例えば、洗浄部20の上限位置と下限位置の中央位置である。
【0052】
洗浄部20を移動させたら、制御部50は、洗浄部20が所定の退避位置に達したか否かを判定する(ステップS117)。この例の退避位置は、洗浄部20の上限位置または下限位置である。図6は、洗浄部20を退避位置(下限位置)に移動させた状態を示す図である。図6に示すように、移動部40は、洗浄部20を上下に移動させ、炉蓋1との干渉を回避可能な退避位置に移動する。
【0053】
洗浄部20が退避位置に達していない場合(ステップS117のN)、制御部50は、処理をステップS116の先頭に戻し、ステップS116~ステップS117を繰り返す。
【0054】
洗浄部20が退避位置に達した場合(ステップS117のY)、制御部50は、洗浄部20の移動を停止させる(ステップS118)。移動を停止させたら、制御部50は、洗浄部20が退避位置に移動したことを示す情報を外部に提供する(ステップS119)。例えば、洗浄部20が退避したことを示す情報を、炉蓋1を炉開口3に移動する移動システムに提供することにより、移動システムは、炉蓋1の移動を開始することができる。また、洗浄部20が退避したことを、作業員に報知することにより、作業員は炉蓋1の移動を開始させる操作をすることができる。
【0055】
ステップS119を実行したら、制御部50は、動作S110を終了する。この動作は一例であって各種の変形が可能である。
【0056】
以上のように構成された炉蓋洗浄装置100の特徴を説明する。炉蓋洗浄装置100は、コークス炉2の炉蓋1を洗浄する洗浄部20と、電動機42の出力に基づいて洗浄部20を移動させる移動部40と、停電時に電動機42に電力を供給する電源部54とを備え、停電が発生したとき、電源部54から電動機42に電力を供給して洗浄部20を退避方向に移動させる。この構成によれば、洗浄部20を屈曲させる場合に比べて、コンパクトな空間で退避でき周囲物体との干渉を回避できる。また、関節部を有しないので付着物の影響を受けにくく、油圧に基づいて移動する場合よりも構成を簡素化できる。
【0057】
なお、本実施形態に係る技術は、炉蓋洗浄装置の制御方法に適用できる。この制御方法は、コークス炉2の炉蓋1を洗浄する洗浄部20と、電動機42の出力に基づいて洗浄部20を移動させる移動部40と、を備える炉蓋洗浄装置の制御方法であって、停電が発生したとき、電力を発生させて当該電力を電動機42に供給して洗浄部20を退避位方向に移動させることを含む。この方法によれば、本実施形態の炉蓋洗浄装置100と同様の作用と効果を奏する。
【0058】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容される。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0059】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0060】
(変形例)
実施形態では、電源部54が発電機55を含む例を説明したが、電源部54は、二次電池や燃料電池を含んでもよい。
【0061】
実施形態では、各洗浄部が回転カッターを備える例を説明したが、例えば、洗浄部は回転カッターの代わりにスクレーパを備えてもよい。
【0062】
実施形態では、位置センサ51がリミットスイッチである例を説明したが、例えば、位置センサは、洗浄部の位置を非接触で検知可能なリニアエンコーダを含んでもよい。
【0063】
実施形態では、電動機42が誘導電動機である例を説明したが、例えば、電動機はACサーボモータやステッピングモータ等であってもよい。
【0064】
実施形態では、側面洗浄部20、下面洗浄部62および上面洗浄部64を含む例を説明したが、例えば、側面洗浄部20が上面および下面の少なくとも一方を洗浄してもよい。
【0065】
上述の各変形例は実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0066】
上述した実施形態の構成要素と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0067】
1 炉蓋、 2 コークス炉、 12 支柱、 20 側面洗浄部、 40 移動部、 42 電動機、 50 制御部、 51 位置センサ、 54 電源部、 55 発電機、 80 外部電源、 100 炉蓋洗浄装置。
図1
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図7