(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080218
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】ラバーストリップおよびローラ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/22 20180101AFI20220520BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220520BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20220520BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220520BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220520BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220520BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220520BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/38
C09J7/35
C09J175/04
C09J201/00
B32B7/12
B32B27/00 M
F16C13/00 B
F16C13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191269
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】591005006
【氏名又は名称】マクセルクレハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】岡田 裕介
【テーマコード(参考)】
3J103
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
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4J040NA22
(57)【要約】
【課題】早期剥離を防止して、長期間安定してローラ基材に巻き付け可能であり、交換時の作業性にも優れるラバーストリップ、および該ラバーストリップが適用されたローラを提供する。
【解決手段】ラバーストリップ10は、搬送物を搬送するローラに適用され、該ローラの円柱状のローラ基材の外周面に螺旋状に隙間なく巻き付けられ、複数の層からなり、搬送物と接触し、可塑剤を含有するゴム組成物からなる弾性層11aを含む表面層11と、ローラ基材の外周面に粘着する粘着剤層14と、表面層11と粘着剤層14の間に設けられる樹脂フィルム層13と、表面層11と樹脂フィルム層13を接着する熱硬化性樹脂系接着剤からなる接着剤層12とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送するローラに適用され、該ローラの円柱状のローラ基材の外周面に螺旋状に隙間なく巻き付けられ、複数の層からなるラバーストリップであって、
前記搬送物と接触し、可塑剤を含有するゴム組成物からなる弾性層を含む表面層と、前記ローラ基材の外周面に粘着する粘着剤層と、前記表面層と前記粘着剤層の間に設けられる樹脂フィルム層と、前記表面層と前記樹脂フィルム層を接着する熱硬化性樹脂系接着剤からなる接着剤層とを有することを特徴とするラバーストリップ。
【請求項2】
前記表面層は、前記弾性層と前記接着剤層の間に介在する補強層を有することを特徴とする請求項1記載のラバーストリップ。
【請求項3】
前記樹脂フィルム層の厚さが15μm~50μmであり、かつ、前記接着剤層の厚さよりも薄く構成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のラバーストリップ。
【請求項4】
前記樹脂フィルム層がポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、前記熱硬化性樹脂系接着剤がポリウレタン系接着剤であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載のラバーストリップ。
【請求項5】
前記搬送物は織布であり、前記ローラは織機で使用されるローラであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のラバーストリップ。
【請求項6】
搬送物を搬送するローラであって、
円柱状のローラ基材と、複数の層からなり、前記ローラ基材の外周面に螺旋状に隙間なく巻き付けられたラバーストリップとを備え、前記ラバーストリップは、前記搬送物と接触し、可塑剤を含有するゴム組成物からなる弾性層を含む表面層と、前記ローラ基材の外周面に粘着する粘着剤層と、前記表面層と前記粘着剤層の間に設けられる樹脂フィルム層と、前記表面層と前記樹脂フィルム層を接着する熱硬化性樹脂系接着剤からなる接着剤層とを有することを特徴とするローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラバーストリップおよびラバーストリップが適用されたローラに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、織機には、製織された織布を搬送するための織機用ローラとして、サーフェスローラおよびプレスローラが設けられている。これらローラが協働して回転することで、織布の搬送や巻き掛けが行われる。これらのローラには、基材の外周面にラバーストリップが巻き付けられており、ラバーストリップを介して織布と接触することで、ローラに適度なグリップ力が付与され、織布が滑ることなどが抑制される(特許文献1、特許文献2参照)。また、ラバーストリップは、織布巻き取り装置などの織機以外の装置にも適用されており、該装置において搬送物を搬送するローラに巻き付けられている。
【0003】
従来、ラバーストリップを巻き付ける方法としては、例えば、ローラ基材の表面を有機溶剤で養生した後、該表面にニトリル系やクロロプレン系などのゴム系接着剤を塗布して、その上からラバーストリップをスパイラル状(螺旋状)に接着させる方法が知られている。この場合、ローラの両端部では、ラバーストリップを釘で止めて固定している。
【0004】
しかしながら、上記接着方法では、接着剤の塗布にムラが生じるなどして、ローラ基材とラバーストリップとの初期接着強度が安定しないことが考えられる。また、海外などの高温多湿な環境下では、接着剤が変質することでラバーストリップが早期に剥離することが懸念される。さらに、接着剤にはトルエンやメチルエチルケトンなどの有機溶剤が含まれており、作業者の人体への影響および作業周辺地域への影響も懸念される。また、ラバーストリップは、搬送物と接触する面が少しずつ摩耗するため、定期的(例えば1年半毎)に交換される。従来のように接着剤を使用してラバーストリップを接着させた場合には、ラバーストリップを取り外した際にローラ基材に接着剤が残存するため、ローラ基材の外周面の洗浄が必要となる。そのため、上記接着方法では、ラバーストリップの着脱の際において作業性の観点からも改善の余地があると考えられる。
【0005】
一方で、接着剤を塗布することなくラバーストリップを巻き付ける方法として、例えば、(1)ラバーストリップの裏面に転写法でアクリル系粘着剤を転写させ、ローラ基材へ貼り付ける方法や、(2)ローラ基材の表面にアクリル系粘着剤を使用した両面テープを貼り付け、その後、ラバーストリップを貼り付ける方法などが知られている。(2)の接着方法では、両面テープの基材として不織布やポリエチレンテレフタレートなどが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭33-189号公報
【特許文献2】特開昭43-30132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記(1)の接着方法では、ゴムに配合されている可塑剤が粘着剤へ移行することで粘着力が低下するおそれがある。その結果、粘着剤とラバーストリップとの間において早期剥離が生じることが懸念される。また、粘着剤層へ可塑剤が移行することで粘着剤の糊残性が低下し、交換作業時に拭き取りが必要になるなど作業性が低下することが懸念される。
【0008】
また、上記(2)の接着方法でも、ゴムに配合されている可塑剤が粘着剤層へ移行することで粘着力が低下するおそれがある。この場合は、両面テープとラバーストリップとの間において早期剥離が生じることが懸念される。
【0009】
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、早期剥離を防止して、長期間安定してローラ基材に巻き付け可能であり、交換時の作業性にも優れるラバーストリップ、および該ラバーストリップが適用されたローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のラバーストリップは、搬送物を搬送するローラに適用され、該ローラの円柱状のローラ基材の外周面に螺旋状に隙間なく巻き付けられ、複数の層からなるラバーストリップであって、上記搬送物と接触し、可塑剤を含有するゴム組成物からなる弾性層を含む表面層と、上記ローラ基材の外周面に粘着する粘着剤層と、上記表面層と上記粘着剤層の間に設けられる樹脂フィルム層と、上記表面層と上記樹脂フィルム層を接着する熱硬化性樹脂系接着剤からなる接着剤層とを有することを特徴とする。なお、本発明のラバーストリップは、一般にロールカバリングとして使用される。
【0011】
上記表面層は、上記弾性層と上記接着剤層の間に介在する補強層を有することを特徴とする。
【0012】
上記樹脂フィルム層の厚さが15μm~50μmであり、かつ、上記接着剤層の厚さよりも薄く構成されることを特徴とする。
【0013】
上記樹脂フィルム層がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなり、上記熱硬化性樹脂系接着剤がポリウレタン系接着剤であることを特徴とする。
【0014】
上記搬送物は織布であり、上記ローラは織機で使用されるローラであることを特徴とする。
【0015】
本発明のローラは、搬送物を搬送するローラであって、円柱状のローラ基材と、複数の層からなり、上記ローラ基材の外周面に螺旋状に隙間なく巻き付けられたラバーストリップとを備え、上記ラバーストリップは、上記搬送物と接触し、可塑剤を含有するゴム組成物からなる弾性層を含む表面層と、上記ローラ基材の外周面に粘着する粘着剤層と、上記表面層と上記粘着剤層の間に設けられる樹脂フィルム層と、上記表面層と上記樹脂フィルム層を接着する熱硬化性樹脂系接着剤からなる接着剤層とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のラバーストリップは、弾性層を含む表面層と粘着剤層の間に樹脂フィルム層を設けることで、可塑剤が弾性層から粘着剤層へ移行することを防止できる。また、樹脂フィルム層を層間に介在させることで、ラバーストリップをローラ基材に巻き付けた後の収縮などによる寸法変化を防止できる。さらに、樹脂フィルム層を熱硬化性樹脂系接着剤によって表面層に接着させることで、高温環境下などでも表面層が樹脂フィルム層から剥がれることを防止できる。これにより、粘着剤層の粘着力の低下や層間剥離を防止でき、長期間安定してラバーストリップを巻き付けておくことができる。また、樹脂フィルム層によって可塑剤の移行を防止することで、糊残りの発生も防止でき、作業性の向上にも寄与する。
【0017】
また、表面層は補強層を有するので、搬送物と接触する表面層を補強できる。さらに、該補強層が弾性層と接着剤層の間に介在することで、弾性層に含まれる可塑剤が接着剤層に及ぼす影響を小さくでき、接着剤層の接着力を維持しやすくなる。
【0018】
樹脂フィルム層の厚さが15μm~50μmであり、接着剤層の厚さよりも薄く構成されるので、可塑剤の移行を防止しつつ、ラバーストリップの巻き付け性を確保することができる。
【0019】
樹脂フィルム層がPETフィルムからなり、熱硬化性樹脂系接着剤がポリウレタン系接着剤であるので、接着剤の劣化を招きやすい高温多湿な環境下でも、表面層が樹脂フィルム層から剥がれることを防止できる。
【0020】
本発明のローラは、円柱状のローラ基材と、複数の層からなり、ローラ基材の外周面に螺旋状に隙間なく巻き付けられた本発明のラバーストリップとを備えているので、ラバーストリップが長期間安定して巻き付けられたローラになる。また、該ローラは、ラバーストリップの糊残りもないことから、ラバーストリップの交換時の作業性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のローラが適用された織機の概略構成図である。
【
図3】ラバーストリップを巻き付ける態様を示した図である。
【
図4】比較例1および比較例2のラバーストリップの断面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、本発明のローラとして織機用ローラを備える織機の概略構成図を示す。織機6は、経糸および緯糸を織り込んで織布Aを製織する製織装置1と、一対のプレスローラ2、3と、一対のプレスローラと協働して織布を搬送するサーフェスローラ4と、巻き取りローラ5とを備えている。サーフェスローラ4には、サーフェスローラ4を矢印方向に回転駆動させる駆動モータ(図示は省略する)が接続されている。
【0023】
プレスローラ2、3は、織布Aを介して、サーフェスローラ4の周面に押し付け付勢されており、サーフェスローラ4の回転に伴ってプレスローラ2、3は従回転する。この場合、サーフェスローラ4が矢印方向に回転することで、製織装置1から送り出された織布Aは、プレスローラ2、サーフェスローラ4、プレスローラ3の順に巻き掛けられるとともにこれらのローラ間で挟持され、巻き取りローラ5へ送り出される。巻き取りローラ5では、製織された織布が巻き取られる。
【0024】
プレスローラ2、3はそれぞれ、金属部材からなるローラ基材2a、3aと、各ローラ基材2a、3aの外周面に取り付けられた本発明のラバーストリップ10とを有している。また、サーフェスローラ4も同様に、金属部材からなるローラ基材4aと、ローラ基材4aの外周面に取り付けられた本発明のラバーストリップ10とを有している。
【0025】
各ローラ基材2a、3a、4aの金属部材としては、例えば、機械構造用炭素鋼鋼管(いわゆるSTKM材)などの一般的な鋼材が用いられる。なお、各ローラ基材2a、3a、4aとして、樹脂製の部材を用いてもよい。各ローラ基材2a、3a、4aには、ラバーストリップ10がそれぞれ巻き付けられており、これにより各ローラ2、3、4のグリップ力(把持性)が向上し、搬送の際に織布Aが滑ることが抑制される。この場合、ラバーストリップ10は、滑り止め部材として機能する。
【0026】
図2には、ラバーストリップ10の断面図を示す。ラバーストリップ10は、織布と接触する表面層11と、ローラ基材の外周面に粘着する粘着剤層14と、表面層11と粘着剤層14との間に設けられる樹脂フィルム層13と、表面層11と樹脂フィルム層13を接着する接着剤層12と、離型層15とを有する積層体である。
図2のラバーストリップ10において、表面層11は弾性層11aと補強層11bを有する。弾性層11aの織布と接触する表面は、粗い凹凸が形成されていてもよい。これにより、織布を損傷することなくローラに適度なグリップ力を付与することが可能となる。
【0027】
ラバーストリップ10において、粘着剤層14の粘着面14aには離型層15が貼り付けられている。ラバーストリップ10の使用時には、離型層15を剥がして、粘着面14aを露出させローラ基材に貼り付ける。ラバーストリップ10がローラ基材に貼り付けられた状態では、外周面側から順に、弾性層11a、補強層11b、接着剤層12、樹脂フィルム層13、粘着剤層14、ローラ基材となる。
【0028】
ここで、粘着剤層14に用いる粘着剤には、粘着性を有する公知の粘着剤を用いることができる。粘着剤には、例えばアクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを用いることができる。汎用性やコスト面、糊残性などから、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。粘着剤層14の厚さは、例えば10μm~300μmであり、好ましくは10μm~100μmである。本発明のラバーストリップは、粘着剤層を介してローラ基材に貼り付ける態様であるため、ローラ基材に接着剤を塗布しなくても貼り付けることができ、そのような接着方法に比べて、着脱の作業が簡便になり、接着の安定化にも繋がる。しかし、粘着剤層を用いる場合、ゴム組成物に含まれる可塑剤が粘着剤層に移行することによって、粘着剤が劣化し、粘着力が低下するおそれがある。
【0029】
そこで、
図2のラバーストリップ10では、可塑剤を含有するゴム組成物からなる弾性層11aと粘着剤層14との間に、可塑剤移行防止層として樹脂フィルム層13を介在させている。これにより、可塑剤の粘着剤層14への移行を防止して、長期にわたり安定して粘着力を発揮させることができる。また、寸法安定性の高い樹脂フィルムを設けることで、ローラ基材に巻き付けた後の収縮などによる寸法変化を防止できる。
【0030】
樹脂フィルム層13に用いられる樹脂フィルムは、特に限定されず、PETフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。寸法安定性に優れ、かつ、隣接して設けられる接着剤層12や粘着剤層14に対して優れた接着性を発揮できることから、PETフィルムが好ましい。
【0031】
樹脂フィルム層13の厚さは、特に限定されず、例えば9μm~100μmに設定される。厚さが厚くなるほどフィルムの剛性が高くなり、ラバーストリップが巻きにくくなるおそれがある。一方、厚さが薄くなるほど、巻き付け後の収縮などによる寸法変化を防止する効果が低下するおそれがある。これらを考慮して、樹脂フィルム層13の厚さは15μm~75μmが好ましく、15μm~50μmがより好ましい。また、別の観点では、樹脂フィルム層13の厚さは、接着剤層12の厚さよりも薄く形成されることが好ましい。
【0032】
図2において、表面層11の弾性層11aは可塑剤を含有するゴム組成物が架橋されて構成される。ゴム成分としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(ニトリルゴム)、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが用いられる。また、可塑剤としては、特に限定されず、エステル系可塑剤などが用いられる。
【0033】
弾性層11aのゴム硬度は、例えば40度~90度である。ゴム硬度は、JIS K6253-3タイプAデュロメーターAに準じて測定される値である。このゴム硬度は、ゴム組成物に周知の架橋法を適用して架橋させることで得られる。架橋法として、例えば、紫外線やγ線、電子線などの活性線を照射する方法を用いてもよく、上記ゴム組成物に過酸化物などの架橋剤や白金などの触媒を配合し、加熱処理する方法を用いてもよい。
【0034】
表面層11の補強層11bは、弾性層11aと接着剤層12の間に介在しており、綿布や不織布などで構成される。不織布としては、例えば、ナイロン繊維などの合成繊維が用いられる。補強層11bによって、織布と接触する表面層11を補強できる。また、弾性層11aと接着剤層12の間に補強層11bを設けることで、弾性層11aに含まれる可塑剤が接着剤層12へ移行することを抑制でき、移行に伴う悪影響を小さくできると考えられる。補強層11bの厚さは、例えば100μm~500μmである。
【0035】
なお、表面層11の構成は
図2の構成に限らない。例えば、表面層11から補強層11bを省略してもよく、また、補強層11bに代えて他の中間層を設けてもよい。
【0036】
接着剤層12は、表面層11と樹脂フィルム層13を接着させる層であり、熱硬化性樹脂系接着剤の塗工などによって形成される。実施例で示すように、接着剤として熱硬化性樹脂系接着剤を用いることで、熱可塑性樹脂系接着剤を用いる場合に比べて高温多湿な環境下でも接着力を維持でき、層間剥離を防止できる。熱硬化性樹脂系接着剤には、公知の接着剤を用いることができ、ポリウレタン系接着剤や、ポリエステル系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などを用いることができる。また、溶剤タイプの接着剤として、1液硬化型または2液硬化型の接着剤を用いることができる。
【0037】
熱硬化性樹脂系接着剤としては、耐熱性および耐水性に優れ、柔軟性を有するポリウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型ポリウレタン系接着剤がより好ましい。2液硬化型ポリウレタン系接着剤は、主剤であるポリオール成分と硬化剤であるイソシアネート成分からなる。ポリオール成分としては、例えば、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。イソシアネート成分としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。接着剤層12の厚さは、特に限定されないが、10μm~100μmが好ましく、30μm~100μmがより好ましい。
【0038】
離型層15には、PETフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの樹脂フィルムや離型紙を用いることができる。これらの中でも樹脂フィルムを用いることが好ましく、樹脂フィルム13と同種材の樹脂フィルムを用いることがより好ましい。同種材の樹脂フィルムとは、少なくとも樹脂の種類(PET、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレンなど)が同じであることをいう。例えば、樹脂フィルム層13にPETフィルムを用いるとともに、離型層15にPETフィルムを用いることが好ましい。この場合、各樹脂フィルム同士の厚さが略同一であることがより好ましい。なお、離型層15の粘着剤層14との接触面には、離型処理が施される。
【0039】
ラバーストリップ10の全体厚さは用途などによって適宜設定される。全体厚さは、例えば0.5mm~5.0mmである。ラバーストリップ10の層構造において、弾性層11aの厚さが最も厚く形成されることが好ましい。具体的には、弾性層11aの厚さが、ラバーストリップ10の全体の厚さの50%以上であり、60%以上であることが好ましい。一方で、離型層15を除く層構造において、樹脂フィルム層13の厚さが最も薄く形成されることが好ましい。これにより、ラバーストリップ10全体の曲げ剛性を適切にしやすく、ラバーストリップ10の取り付けの作業性の向上が図れる。
【0040】
本発明のラバーストリップは、例えば、表面層を含む表面層ユニットと、樹脂フィルム、粘着剤層、および離型層のユニット(フィルムテープ)とをそれぞれ作製し、これらを熱硬化性樹脂系接着剤を用いて加熱下で貼り合わせることで得られる。なお、表面層ユニットは、可塑剤を含有するゴム組成物を混練りし、シーティングし、必要に応じて綿布などを貼り付けた後、架橋させることで得られる。一方、フィルムテープは、樹脂フィルムの一方の面に、粘着剤を塗工し、離型層を貼り合わせることで得られる。
【0041】
図3には、例えばサーフェスローラ4の円柱状の基材4aにラバーストリップ10を巻き付ける態様を示している。
図3より、ラバーストリップ10は、無端の長尺形状をしている。ラバーストリップ10の離型層を所定長さ剥がした後、基材4aの幅方向(軸方向)の一方の端部に、釘などによって機械的にラバーストリップ10を固定する。そして、一方の端部から他方の端部に向かってテンションを掛けながら、弾性層11aが外周面となるようにして、螺旋状に基材4aに巻き付ける。この際、ラバーストリップ10は隙間なく、互いが重ならないようにして巻き付けられ、ラバーストリップ10の幅方向の両端部は互いに接触する。その後、ラバーストリップ10が他方の端部まで達すると釘などを用いて固定させる。
【0042】
本発明のラバーストリップ10は、上述の樹脂フィルム層が層間に設けられているので、ラバーストリップ10をローラ基材に巻き付けた後の収縮などによる寸法変化を防止できる。これにより、巻き付けられたラバーストリップ同士の間に隙間が生じにくく、巻き付け状態を安定的に維持できる。
【0043】
なお、本発明のラバーストリップが適用された織機用ローラおよび織機の構成は、図で示した構成に限定されず、適宜変更を加えてもよい。例えば、ラバーストリップ10をサーフェスローラ4の基材4aにのみ適用してよく、また、ラバーストリップ10をプレスローラ2、3の基材2a、3aにのみ適用してもよい。
【0044】
本発明のラバーストリップは、実施例で示すように高温多湿な環境でも優れた粘着力を維持でき、また層間剥離も防止できることから、高温多湿な環境で使用されるローラに好適に使用できる。例えば、ウォータジェットルームやエアージェットルームで使用される織機用ローラに用いることができる。ウォータジェットルームは、ポンプで圧縮した水をノズルから緯糸とともに噴射することで、緯糸を挿入していく織機であり、エアージェットルームは、圧縮空気をノズルから緯糸とともに噴射することで、緯糸を挿入していく織機である。
【0045】
また、本発明のラバーストリップが適用されるローラは、搬送物を搬送するローラであれば特に限定されず、織機以外の装置にも適用可能である。例えば、織布巻き取り装置や、織布検反機、漁網機、編み機巻き取り装置、布染色機、布乾燥機、フィルムスリッター、段ボール生産機などの装置におけるローラに適用することができる。応用用途として、印刷用ローラや、製鉄用ローラ、フィルム搬送ラインローラなどに適用することが期待できる。
【実施例0046】
実施例1
弾性層としてエステル系可塑剤を含有するニトリルゴム組成物を計量し、金属2本ロールにて混練りを行った。混練りしたニトリルゴム組成物を厚さ0.80mmとなるように所定寸法にシーティングし、補強層である綿布の一方の面に貼り合わせた。その後、弾性層にサンドペーパーを用いて目付けを転写し、加圧5kg/cm
2、170℃で4.5分加熱して架橋を行い、弾性層がニトリルゴム組成物の架橋体である表面層ユニットを得た。なお、弾性層のゴム硬度は70度であった。続いて、厚さ38μmのPETフィルムの一方の面に、乾燥後の厚さが50μmとなるようにアクリル系粘着剤を塗工し、厚さ38μmの離型PETフィルムを貼り合わせ、フィルムテープを得た。その後、フィルムテープのPETフィルムの他方の面に、乾燥後の厚さが60μmとなるように2液硬化型ウレタン系接着剤を塗工し、100度の2本ロールで表面層ユニットの綿布側と熱ラミネートすることで、
図2に示すラバーストリップを得た。
【0047】
比較例1
弾性層としてエステル系可塑剤を含有するニトリルゴム組成物を計量し、金属2本ロールにて混練りを行った。混練りしたニトリルゴム組成物を厚さ0.80mmとなるように所定寸法にシーティングし、補強層である綿布の一方の面に貼り合わせた。その後、弾性層にサンドペーパーを用いて目付けを転写し、加圧5kg/cm
2、170℃で4.5分加熱して架橋を行い、弾性層がニトリルゴム組成物の架橋体である表面層ユニットを得た。なお、弾性層のゴム硬度は70度であった。続いて、アクリル系粘着剤を離型紙に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、表面層ユニットの綿布側へ転写することで、
図4(a)に示すラバーストリップを得た。このラバーストリップは、外表面から順に、弾性層21、補強層22、粘着剤層23、離型層24が配置される。
【0048】
比較例2
ポリエチレンラミネートクロスに、スチレン・ブタジエンラテックスを乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工した。弾性層としてエステル系可塑剤を含有するニトリルゴム組成物を計量し、金属2本ロールにて混練りを行った。混練りしたニトリルゴム組成物を厚さ0.80mmとなるように所定寸法にシーティングし、スチレン・ブタジエンラテックスの面に貼り合わせた。その後、弾性層にサンドペーパーを用いて目付けを転写し、加圧5kg/cm
2、170℃で4.5分加熱して架橋を行い、弾性層をニトリルゴム組成物の架橋体とした。なお、弾性層のゴム硬度は70度であった。続いて、アクリル系粘着剤を離型紙に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、ポリエチレンラミネートクロス側へ転写することで、
図4(b)に示すラバーストリップを得た。このラバーストリップは、外表面から順に、弾性層31、ラテックス層32、ラミネートクロス層33、粘着剤層34、離型層35が配置される。
【0049】
比較例3
弾性層としてエステル系可塑剤を含有するニトリルゴム組成物を計量し、金属2本ロールにて混練りを行った。混練りしたニトリルゴム組成物を厚さ0.80mmとなるように所定寸法にシーティングし、補強層である綿布の一方の面に貼り合わせた。その後、弾性層にサンドペーパーを用いて目付けを転写し、加圧5kg/cm2、170℃で4.5分加熱して架橋を行い、弾性層がニトリルゴム組成物の架橋体である表面層ユニットを得た。なお、弾性層のゴム硬度は70度であった。続いて、厚さ38μmのPETフィルムの一方の面に、乾燥後の厚さが50μmとなるようにアクリル系粘着剤を塗工し、厚さ38μmの離型PETフィルムを貼り合わせ、フィルムテープを得た。その後、フィルムテープのPETフィルムの他方の面に、乾燥後の厚さが60μmとなるように熱可塑性ウレタン系接着剤を塗工し、160度の2本ロールで表面層ユニットの綿布側と熱ラミネートすることで、ラバーストリップを得た。このラバーストリップは、外表面から順に、弾性層、補強層、熱可塑性ウレタン系接着剤からなる接着剤層、樹脂フィルム層、粘着剤層、離型層が配置される。
【0050】
比較例4
市販の粘着剤付きラバーストリップとして、BOLIM社製ラバーストリップ(BO-301)を用いた。
【0051】
比較例5
市販の粘着剤付きラバーストリップとして、BOBOTEX社製ラバーストリップ(KMC-41/R)を用いた。
【0052】
<剥離試験(粘着力)>
上記で得たラバーストリップをそれぞれ、幅25mm、長さ200mmに切断して試験片を作製した。各試験片の粘着剤層をSUS304製のステンレス板に貼り付け、温度40℃、湿度100%の環境下で放置して、経過日数毎の粘着力および糊残性の評価を行った。試験環境は、例えばウォータジェットルームで使用される織機ローラでの使用を想定して、高温多湿な環境に設定した。粘着力は、JIS Z0237に準拠し、引張試験機を用い、上記試験片の端を把持して180度折り返し、ステンレス板から試験片が剥離する荷重を測定した。また、糊残性は、試験片を剥離した後のステンレス板の表面を観察することで評価した。結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
表1に示すように、実施例1のラバーストリップの粘着力は試験開始時から14日経過後までほとんど変化がなく、粘着力を維持することができた。また、剥離後の糊残りも見られなかった。一方、比較例1は、試験開始時から粘着力が低く、また、時間経過とともに粘着力の低下および糊残りが見られた。比較例1のラバーストリップは、弾性層と粘着剤層との間に補強層(綿布)が介在するのみであり、時間が経過するにつれて弾性層に含まれる可塑剤が粘着剤層へ移行した結果、粘着力の低下や糊残りを招いたと考えられる。また、比較例2は、可塑剤移行防止層としてスチレン・ブタジエンラテックスおよびポリエチレンラミネートクロスを設けているが、可塑剤の移行を十分に防止できず、時間経過とともに粘着力の低下および糊残りが見られた。また、比較例1と同様の層構成である比較例4および比較例5は、試験開始時から粘着力が低く、糊残りが見られた。これらについては、その後の経過観察は行わなかった。
【0055】
また、表1において比較例3は、糊残りがなく、粘着力も数値上、良好な結果が得られた。しかし、比較例3のラバーストリップでは、粘着力を測定する際にPETフィルムと綿布との間で層間剥離が発生し、粘着力を正確に評価できていない可能性が示唆された。そこで、PETフィルムと綿布との間の接着力を評価する下記の試験を実施した。
【0056】
<剥離試験(接着力)>
幅25mm、長さ200mmに切断した各試験片を、温度40℃、湿度100%の環境下で放置して、経過日数毎のPETフィルムと綿布との間の接着力の評価を行った。接着力は、JIS K6854-3に準拠してT型剥離試験により測定した。結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
表2に示すように、実施例1のPETフィルムと綿布との間の接着力は、試験開始時から14日経過後までほとんど変化がなく、良好に維持された。一方、比較例3の接着力は、試験開始時には高いものの、7日経過後には著しく低下する結果となった。この結果より、PETフィルムと表面層を接着する接着剤には、熱硬化性樹脂系接着剤を用いることで、環境に依らずに接着力を良好に維持でき、層間剥離を防止することができる。このように、本発明のラバーストリップは、高温・湿潤環境下でも剥離などの不具合なく安定した稼動に寄与できる。
本発明のラバーストリップは、早期剥離を防止して、長期間安定してローラ基材に巻き付け可能であり、交換時の作業性にも優れるので、搬送物を搬送するローラに広く用いることができる。また、接着剤をローラ基材に塗布することなく、ラバーストリップを巻き付け可能であるので、巻き付けの安定化、作業者の環境・作業性向上に寄与できる。