(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080240
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】車両構造材料強化システム及びそれを含む車両
(51)【国際特許分類】
B62D 29/00 20060101AFI20220520BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20220520BHJP
B60R 21/01 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B62D29/00
B62D25/04 A
B62D25/04 B
B60R21/01 310
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211516
(22)【出願日】2020-12-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】109140183
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】504455908
【氏名又は名称】国立成功大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】特許業務法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】林 士剛
(72)【発明者】
【氏名】劉 禹辰
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲いく▼清
(72)【発明者】
【氏名】林 冠▲こう▼
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB54
3D203BB55
3D203BB56
3D203CA04
3D203CA69
3D203DB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】少なくとも一つの衝突センサと、プロセッサと、電源とを含む車両構造材料強化システム及びそれを含む車両を提供する。
【解決手段】プロセッサ22は、車両90に取り付けた衝突センサ21から衝突信号を受信し、衝突信号に従って電源起動信号を送信するか否かを判定するために衝突センサに電気的に接続される。電源23はプロセッサ及び車両に電気的に接続される。衝突信号が衝突閾値以上である場合、プロセッサは、電源起動信号に従って車両に通電する電源に電源起動信号を送信し、又は、衝突信号が衝突閾値未満である場合、プロセッサは、電源起動信号を送信しない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への取り付けに適する少なくとも一つの衝突センサと、
少なくとも一つの前記衝突センサから衝突信号を受信し、前記衝突信号に従って電源起動信号を送信するか否かを判定するために少なくとも一つの前記衝突センサに電気的に接続されるプロセッサと、
前記プロセッサ及び前記車両に電気的に接続される電源と、
を含む車両構造材料強化システムであつて、
前記衝突信号が衝突閾値以上である場合、前記プロセッサは、前記電源起動信号に従って前記車両に通電する前記電源に前記電源起動信号を送信し、又は、
前記衝突信号が前記衝突閾値未満である場合、前記プロセッサは、前記電源起動信号を送信しない、
車両構造材料強化システム。
【請求項2】
前記車両は、有人車両及び無人車両のうちの少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の車両構造材料強化システム。
【請求項3】
前記有人車両は、自動車、公共輸送車両、クローラキャリア及び航空機のうちの少なくとも一つを含む、
請求項2に記載の車両構造材料強化システム。
【請求項4】
前記有人車両は前記自動車であり、前記電源は前記自動車のAピラー、Bピラー及びCピラーのうちの少なくとも一つに電気的に接続される、
請求項3に記載の車両構造材料強化システム。
【請求項5】
前記車両内に取り付けられるとともに、前記衝突信号に従って補助エアバッグ起動信号を送信するか否かを判定する前記プロセッサに電気的に接続される少なくとも一つの補助エアバッグをさらに含み、
前記衝突信号が前記衝突閾値以上である場合、前記補助エアバッグ起動信号に従って起動する少なくとも一つの前記補助エアバッグに前記補助エアバッグ起動信号を送信し、又は、
前記衝突信号が前記衝突閾値未満である場合、前記補助エアバッグ起動信号を送信しない、
請求項3に記載の車両構造材料強化システム。
【請求項6】
少なくとも一つの前記衝突センサは、前記車両に分散して取り付けられる複数の衝突センサを含む、
請求項1に記載の車両構造材料強化システム。
【請求項7】
複数の前記衝突センサは、前記車両の外面に分散して取り付けられる、
請求項6に記載の車両構造材料強化システム。
【請求項8】
少なくとも一つの前記衝突センサは、電気機械結合式衝突センサ、電子式衝突センサ及び水銀スイッチ式衝突センサのうちの少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の車両構造材料強化システム。
【請求項9】
前記電源は、0Aより大きく500A以下である電流を前記車両に供給する、
請求項1に記載の車両構造材料強化システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の車両構造材料強化システムを含む車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両分野に関し、特に車両構造材料強化システム及びそれを含む車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通手段として、車両の安全性は常に重要な指標の一つである。車両構造としてアルミニウム合金を使用する車両の場合、一般に、アルミニウム合金の組成(例えば、6000系や7000系など)及びその熱処理技術(例えば、T1、T3、T6熱処理ステップなど)によって、異なる機械的特性を有するアルミニウム合金を達成することができる。
【0003】
しかしながら、上記の方法は業界では非常に成熟しているが、組成及び熱処理技術にはまだ限界がある。したがって、従来技術に存在する問題を解決するために、車両構造材料強化システム及びそれを含む車両を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一の目的は、車両が衝突されたときに車両に電流を印加することによって車両構造の強度を増加させる車両構造材料強化システムを提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、本発明の車両構造材料強化システムを含む車両を提供することにある。前記車両構造材料強化システムは、従来の車両(例えば、従来の補助エアバッグ関連機器に追加して取り付ける)に追加して取り付けることができるため、コストを節約することができる。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも一つの衝突センサと、プロセッサと、電源とを含む車両構造材料強化システムが提供される。少なくとも一つの前記衝突センサは車両への取り付けに適する。前記プロセッサは少なくとも一つの前記衝突センサから衝突信号を受信し、前記衝突信号に従って電源起動信号を送信するか否かを判定するために少なくとも一つの前記衝突センサに電気的に接続される。前記電源は前記プロセッサ及び前記車両に電気的に接続される。前記衝突信号が衝突閾値以上である場合、前記プロセッサは、前記電源起動信号に従って前記車両に通電する前記電源に前記電源起動信号を送信し、又は、前記衝突信号が前記衝突閾値未満である場合、前記プロセッサは、前記電源起動信号を送信しない。
【0007】
本発明の一実施例において、前記車両は、有人車両及び無人車両のうちの少なくとも一つを含む。
【0008】
本発明の一実施例において、前記有人車両は、自動車、公共輸送車両、クローラキャリア及び航空機のうちの少なくとも一つを含む。
【0009】
本発明の一実施例において、前記有人車両は前記自動車であり、前記電源は前記自動車のAピラー、Bピラー及びCピラーのうちの少なくとも一つに電気的に接続される。
【0010】
本発明の一実施例において、前記車両内に取り付けられるとともに、前記衝突信号に従って補助エアバッグ起動信号を送信するか否かを判定する前記プロセッサに電気的に接続される少なくとも一つの補助エアバッグをさらに含み、前記衝突信号が前記衝突閾値以上である場合、前記補助エアバッグ起動信号に従って起動する少なくとも一つの前記補助エアバッグに前記補助エアバッグ起動信号を送信し、又は、前記衝突信号が前記衝突閾値未満である場合、前記補助エアバッグ起動信号を送信しない。
【0011】
本発明の一実施例において、少なくとも一つの前記衝突センサは、前記車両に分散して取り付けられる複数の衝突センサを含む。
【0012】
本発明の一実施例において、複数の前記衝突センサは、前記車両の外面に分散して取り付けられる。
【0013】
本発明の一実施例において、少なくとも一つの前記衝突センサは、電気機械結合式衝突センサ、電子式衝突センサ及び水銀スイッチ式衝突センサのうちの少なくとも一つを含む。
【0014】
本発明の一実施例において、前記電源は、0Aより大きく500A以下である電流を前記車両に供給する。
【0015】
上記さらなる目的を達成するために、本発明によれば、上記いずれかの実施例に係る車両構造材料強化システムを含む車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1B】電流が印加された又は印加されていない条件下で異なる結果を示すアルミニウム合金の硬度の概略図である。
【
図1C】電流が印加されていない及び5Aが印加されたアルミニウム合金の真応力及び真ひずみの概略図である。
【
図1D】衝突前のAA7075-T6、電流が印加されておらず衝突を受けた後のAA7075-T6及び電流(5A)が印加されて衝突を受けた後のAA7075-T6のXRD分析図である。
【
図1E】(a)は衝突前のアルミニウム合金表面の同じ位置における結晶方位、局所方位差及び亜粒界分析図である。(b)は電流が印加されておらず衝突を受けた後、アルミニウム合金表面の同じ位置における結晶方位、局所方位差及び亜粒界分析図である。(c)は電流(約5A)が印加されて衝突を受けた後、アルミニウム合金表面の同じ位置における結晶方位、局所方位差及び亜粒界分析図である。
【
図1F】
図1Eの(a)~(c)の結晶方位を色によって区別するための対応表示図である。
【
図1G】(a)は衝突前のアルミニウム合金表面の透過電子顕微鏡概略図である。(b)は電流が印加されておらず衝突を受けた後のアルミニウム合金表面の透過電子顕微鏡概略図である。(c)は電流(約5A)が印加されて衝突を受けた後のアルミニウム合金表面の透過電子顕微鏡概略図である。
【
図2】本発明の実施例に係る車両構造材料強化システムのブロック図である。
【
図3】衝突センサ並びにAピラー、Bピラー及びCピラーの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の上記及び他の目的、特徴、利点をより明確に理解可能にするために、以下では、本発明の好適実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。また、例えば、上、下、頂、底、前、後、左、右、内、外、側面、周囲、中央、水平、横方向、垂直、縦方向、軸方向、径方向、最上層や最下層など、本発明に言及される方向を表する用語は、図面における方向のみを参照する。したがって、使用された方向を表する用語は、本発明を説明及び理解するために使用され、本発明を限定するものではない。
【0018】
なお、本発明は、車両に電流を印加することにより、車両構造の機械的特性を強化するものである。上記の方法は、車両が衝突を受けたときに車両構造がより強い延性及び強度を有するようにして、衝突による車両構造の破壊を回避することができる。以下は、実現可能性を証明するための具体的な実験的分析結果を提供する。
【0019】
まず、7000系のアルミニウム合金(例えば、7075アルミニウム合金)を提供し、T6熱処理を施す(7075アルミニウム合金及びT6熱処理は、従来技術に従って行うことができ、本発明の主な特徴ではない)。次に、
図1Aに示すホプキンソン棒(Split Hopkinson pressure bar)10を利用して、ストレッサ11の約10kg/cm
2の応力で高ひずみ速度(例えば、約3000S
-1前後)により圧縮変形が生じるようにX方向でAA7075-T6アルミニウム合金試験片12に衝突させ、ひずみゲージ13でひずみを計算する。その後、一次元波動伝搬理論に基づいて応力-ひずみ曲線関係及び平均ひずみ率を計算し、無通電及び電源14による通電(例えば、約3~7A)の条件下での機械的特性に対する電流の影響を分析する。続いて、材料構造分析(形態、結晶相、方位配向、硬度及び弾性率など)を行う。
【0020】
図1Bに示すように、電流が印加された又は印加されていない条件下で、アルミニウム合金の硬度は、異なる結果を示す。例えば、電流が印加されていない場合に比べて、5Aの電流が印加されたアルミニウム合金の硬度が高くなる。電流が印加されていない場合及び電流が印加された場合の平均硬度は順に170.19±5.57HV、179.72±5.04HVである。また、
図1Cに示すように、電流が印加されていない場合に比べて、5Aの電流が印加されたアルミニウム合金の降伏応力が高くなる。また、この実験において、電流が印加されていないアルミニウム合金は衝突に耐えることができず破裂してしまうが、電流が印加されたアルミニウム合金は塑性変形しかない。
【0021】
次に、
図1Dを参照して、AA7075-T6の均一に分布された(111)及び(220)結晶方位は、衝突後に特定の配向に変化し、これは、最密パッキングスリップ面(111)である。また、電流が印加された場合、衝突後に(111)面の強い回折信号が発生する。
【0022】
図1Eの(a)~(c)、
図1Fを参照して、
図1Eの(a)は衝突前のアルミニウム合金表面の同じ位置における結晶方位(上図)、局所方位差(中図)及び亜粒界分析図(下図)である。
図1Eの(b)は電流が印加されておらず衝突を受けた後、アルミニウム合金表面の同じ位置における結晶方位(上図)、局所方位差(中図)及び亜粒界分析図(下図)である。
図1Eの(c)は電流(約5A)が印加されて衝突を受けた後、アルミニウム合金表面の同じ位置における結晶方位(上図)、局所方位差(中図)及び亜粒界分析図(下図)である。さらに説明すると、局所方位差(中図)及び亜粒界分析図(下図)は異なる測定方法に従って分析され、局所方位差(中図)の色が濃いほど、サブ粒界の角度が大きいことを示す(例えば、ライトグレー(又はライトブラック)は0~5度であり、ダークグレー(又はダークブラック)は5度以上である)。亜粒界分析図(下図)の色のうち、例えばライトグレー(又はライトブラック)は0~2度のサブ粒界であり、ミディアムグレー(又はミディアムブラック)は2~5度のサブ粒界であり、ダークグレー(又はダークブラック)は5度以上のサブ粒界である。また、
図1Fの色は、
図1Eの(a)~(c)の上図に対応するために使用され、
図1Eの(a)~(c)の上図の各位置における結晶方位を判定するために使用される。例えば、ライトグレー(又はライトブラック)は(101)面の位置を示し、ダークグレー(又はダークブラック)は(111)面の位置を示す。
【0023】
図1Eの(a)及び
図1Fからわかるように、衝突前はアルミニウム合金表面の(101)面の結晶粒が粗く、内部に大量の低角度サブ粒界(subgrain boundary)が存在し、応力が大きい。また、(111)面結晶粒は細長く、内部に亜粒界が存在し、かつ少量の高い角度の亜粒界がある。
図1Eの(b)~
図1Eの(c)からわかるように、電流が印加されているか否かに関係なく、衝突後の(101)面の内部応力は、(111)面の内部応力よりも小さく、結晶粒における亜粒界の数が増加する。また、電流が印加されて衝突を受けた後のアルミニウム合金は、(111)面の結晶粒において低角度(例えば、約5度以下)の亜粒界を発生させる。
【0024】
図1Gの(a)~(c)を参照して、それぞれ衝突前のアルミニウム合金表面、電流が印加されておらず衝突を受けた後のアルミニウム合金表面及び電流(約5A)が印加されて衝突を受けた後のアルミニウム合金表面の透過電子顕微鏡概略図である。
図1Gの(a)~(c)の比較からわかるように、電流が印加されて衝突を受けた後のアルミニウム合金ではサブ粒界に沿って形成された少量の析出物が観察される。
【0025】
一実施例において、
図1Aに示すホプキンソン棒(Split Hopkinson pressure bar)10を利用して、約10kg/cm
2の応力、異なる印加電流(例えば、0A、3A、4A、5A、6A及び7Aの電流)及び異なる環境温度(例えば、室温又は150℃下)で高ひずみ速度(例えば、約3000S
-1前後)により圧縮変形が生じるようにAA7075-T6アルミニウム合金試験片に衝突させる。実験結果からわかるように、電流が印加されていないアルミニウム合金(すなわち、0A)は室温又は150℃下で全て破裂してしまうが、3A、4A、5A、6A及び7Aの電流が印加されたアルミニウム合金は全て破裂していない。
【0026】
上記からわかるように、衝突される金属(例えば、アルミ合金)に電流を印加する場合、金属の機械的特性を強化することができる。一実施例において、前記供給される電流は、例えば、0Aより大きく500A以下である。
【0027】
これにより、
図2を参照して、本発明の実施例によれば、少なくとも一つの衝突センサ21と、プロセッサ22と、電源23とを含む車両構造材料強化システム20が提供される。少なくとも一つの前記衝突センサ21は車両90への取り付けに適する。前記プロセッサ22は少なくとも一つの前記衝突センサ21から衝突信号を受信し、前記衝突信号に従って電源起動信号を送信するか否かを判定するために少なくとも一つの前記衝突センサ21に電気的に接続される。前記電源23は前記プロセッサ22及び前記車両90に電気的に接続される。前記衝突信号が衝突閾値以上である場合、前記プロセッサ22は、前記電源起動信号に従って前記車両90に通電する前記電源23に前記電源起動信号を送信し、又は、前記衝突信号が前記衝突閾値未満である場合、前記プロセッサ22は、前記電源起動信号を送信しない。
【0028】
以上からわかるように、本発明の実施例に係る車両構造材料強化システム20は、衝突の発生を感知することにより車両に電流を印加し、それにより車両構造を強化する。車両構造を強化する原理は、上記の実験結果から証明することができるので、これ以上詳述しない。
【0029】
なお、上記の実験結果はAA7075-T6アルミニウム合金を主としているが、実際には他の金属にも適用することができる。
【0030】
なお、本文における「車両」とは、輸送手段を指し、交通手段とも呼ばれる。一般的に、車両とは人や貨物の輸送に使用される機器を指す。上記目的のために人間の意志によって動かされる動物及び人間自体も、陸上、水上、空中、水中、宇宙などを含む車両と呼ぶことができ、いずれも車両として使用される。本発明の一実施例において、前記車両は、有人車両及び無人車両のうちの少なくとも一つを含む。一例において、前記有人車両は、自動車、公共輸送車両、クローラキャリア及び航空機のうちの少なくとも一つを含む。具体的な例において、前記自動車は、例えば、二輪バイク、四輪以上の車両(例えば、分類によれば、トラック(truck)、バス(bus)、軍用車両、レーシングカー、特殊車両、工事車両、レクリエーション車両(recreation vehicle)、自家用車、バン、越境レクリエーション車両(CRV)、スポーツカー(sport car)など)など、例えば、線路や電力線に従わずに原動機で道路を走行する車両(バイクを含む)である。別の例において、前記公共輸送車両は、例えば、MRT(地下鉄)、列車、高速鉄道、リニアモーターカーなどを含む。別の例において、前記航空機は、例えば、飛行機を含む。一方、前記無人車両とは、例えば、遠隔制御又は自動操作により運行する車両、航空機、船舶又はそれらを組み合わせた無人運転交通輸送手段を指す。具体的な例において、前記無人車両は、例えば、ドローン、遠隔制御車両、遠隔制御ボート又は遠隔制御潜水艦などを含む。
【0031】
一実施例において、本発明の車両構造材料強化システムは、車両が高速で移動している場合、又は前記車両が衝突する可能性のある別の物体と相対的に高速で移動している場合に適する。本実施例において、本発明の車両構造材料強化システムは、車両の破裂が回避又は低減されるように車両構造の強度及び延性を増加させることができる。
【0032】
自動車を例として、
図3に示すように、前記電源23は、例えば、前記自動車のAピラー91、Bピラー92及びCピラー93のうちの少なくとも一つに電気的に接続される。なお、
図3に示すように、Aピラー91はフロントガラスと左右のフロントドアの間にあり、Bピラー92は前部座席と後部座席の間にあり、Cピラー93は後部座席のヘッドレストの両側にある。一実施例において、前記電源23の正極及び負極は、前記自動車のAピラー91(及び/又はBピラー92、及び/又はCピラー93)のヘッドエンド及びテールエンドに電気的に接続され、その結果、Aピラー91全体(及び/又はBピラー92及び/又はCピラー93)が電流の影響を受けて、機械的特性を改善することができる。
【0033】
一実施例において、本発明の実施例に係る車両構造材料強化システム20の一部又は全体は、従来の補助エアバッグシステムの一部又は全体と併用することができる。例えば、少なくとも一つの前記衝突センサ21及び/又はプロセッサ22は、従来の補助エアバッグシステムの部材であってもよく、又は、本発明の実施例に係る車両構造材料強化システム20における少なくとも一つの衝突センサ21及び/又はプロセッサ22は、従来の補助エアバッグシステムの部材としてもよい。一実施例において、本発明の実施例に係る車両構造材料強化システム20における電源23は、従来の車両90における電源(例えば、自動車の起動時に使用されるバッテリ)を採用してもよい。
【0034】
一例において、本発明の実施例に係る車両構造材料強化システム20は、前記車両90内に取り付けられるとともに、前記衝突信号に従って補助エアバッグ起動信号を送信するか否かを判定する前記プロセッサ22に電気的に接続される少なくとも一つの補助エアバッグ24をさらに含む。前記衝突信号が前記衝突閾値以上である場合、前記プロセッサ22は、前記補助エアバッグ起動信号に従って起動する少なくとも一つの前記補助エアバッグ24に前記補助エアバッグ起動信号を送信し、又は、前記衝突信号が前記衝突閾値未満である場合、前記プロセッサ22は、前記補助エアバッグ起動信号を送信しない。以上からわかるように、少なくとも一つの前記補助エアバッグ24も、衝突信号が衝突閾値以上である場合に作動するものであり、その結果、少なくとも一つの前記補助エアバッグ24が膨張して、車両90内に位置するユーザを保護する。一例において、少なくとも一つの前記補助エアバッグ24はハンドルに取り付けることができる。具体的な例において、少なくとも一つの前記補助エアバッグ24の数は複数であってもよく、車両90内に分散して取り付けられる。
【0035】
なお、本文で言及されている衝突閾値は設定値であってもよい。例えば、複数の衝突試験を通じて衝突センサ21の衝突信号を収集することができ、衝突試験中の車両及び/又はユーザへの損傷に応じて前記設定値を決定することができる。一実施例において、前記衝突閾値は、従来の補助エアバッグシステムで採用される衝突閾値であってもよい。
【0036】
一実施例において、少なくとも一つの前記衝突センサ21は、前記車両90に分散して取り付けられる複数の衝突センサ21を含む。一例において、
図3に示すように、複数の前記衝突センサ21は、前記車両90の外面に分散して取り付けられる。別の例において、少なくとも一つの前記衝突センサ21の位置は、従来の補助エアバッグシステムにおける衝突センサの設置位置を採用してもよい。
【0037】
一実施例において、少なくとも一つの前記衝突センサ21は、電気機械結合式衝突センサ、電子式衝突センサ及び水銀スイッチ式衝突センサのうちの少なくとも一つを含む。電気機械結合式衝突センサは、主に機械運動を利用して電気接点をオン/オフにすることにより衝突信号を発生させるものである。電子式衝突センサは、主に衝突時のひずみ抵抗の変形を利用して抵抗値を変化させるか、ピエゾ電気結晶の応力により出力電圧変化を発生させて衝突信号を発生させるものである。水銀スイッチ式衝突センサは、主に水銀の導電特性を利用して衝突信号を発生させるものである。
【0038】
以上からわかるように、本発明の実施例に係る車両構造材料強化システム20は、車両90に電流を印加することにより、車両構造の機械的特性を強化する。上記の方法は、車両90が衝突を受けたときに車両構造がより強い延性及び強度を有するようにして、衝突による車両構造の破壊を回避することができる。また、本発明の実施例に係る車両構造材料強化システム20の部材は、従来の車両の部材の一部又は全部によって提供されてもよく、又は本発明の実施例に係る車両構造材料強化システム20は、従来の車両に直接追加して取り付けられてもよいため、従来の車両を大幅に改修する必要はない。また、従来の車両構造で使用されている材料を変更する必要もない。
【0039】
なお、従来技術では、衝突時に衝突信号と衝突閾値との間の関係に従って車両に電流を印加するか否かを決定する如何なる技術も開示されていない。なお、車両に電流を印加した場合、電流は車両の外面(例えば、金属面)からのみ流れるため、車両内のユーザは電気ショックを受けない。上記の原理は、自動車が雷に打たれたときに自動車内に位置するユーザが電気ショックを受けないという状況を参照することができる。
【0040】
また、本発明によれば、上記いずれかの実施例に記載の車両構造材料強化システム20を含む車両90がさらに提供される。一実施例において、前記車両90は、従来の車両に上記いずれかの実施例に係る車両構造材料強化システム20を追加して取り付けるものであってもよい。
【0041】
本発明は、好適実施例によって開示されたが、本発明を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができる。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0042】
20…車両構造材料強化システム
21…衝突センサ
22…プロセッサ
23…電源
24…補助エアバッグ
90…車両
91…Aピラー
92…Bピラー
93…Cピラー
【手続補正書】
【提出日】2022-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
車両への取り付けに適する少なくとも一つの衝突センサと、
少なくとも一つの前記衝突センサから衝突信号を受信し、前記衝突信号に従って電源起動信号を送信するか否かを判定するために少なくとも一つの前記衝突センサに電気的に接続されるプロセッサと、
前記プロセッサ及び前記車両の金属製の車両構造材料に電気的に接続される電源と、
を含む車両構造材料強化システムであつて、
前記衝突信号が衝突閾値以上である場合、前記プロセッサは、前記電源起動信号に従って前記車両構造材料に通電する前記電源に前記電源起動信号を送信し、前記車両構造材料の強度及び延性を増加させ、又は、
前記衝突信号が前記衝突閾値未満である場合、前記プロセッサは、前記電源起動信号を送信しない、
車両構造材料強化システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも一つの衝突センサと、プロセッサと、電源とを含む車両構造材料強化システムが提供される。少なくとも一つの前記衝突センサは車両への取り付けに適する。前記プロセッサは少なくとも一つの前記衝突センサから衝突信号を受信し、前記衝突信号に従って電源起動信号を送信するか否かを判定するために少なくとも一つの前記衝突センサに電気的に接続される。前記電源は前記プロセッサ及び前記車両の金属製の車両構造材料に電気的に接続される。前記衝突信号が衝突閾値以上である場合、前記プロセッサは、前記電源起動信号に従って前記車両構造材料に通電する前記電源に前記電源起動信号を送信し、前記車両構造材料の強度及び延性を増加させ、又は、前記衝突信号が前記衝突閾値未満である場合、前記プロセッサは、前記電源起動信号を送信しない。