(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080244
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】半導体発光装置および光サブアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20220520BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20220520BHJP
【FI】
H01S5/042 630
H01S5/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040959
(22)【出願日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2020190747
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 光一朗
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MA02
5F173MC18
5F173MD59
5F173ME23
5F173ME47
5F173MF39
5F173SA14
5F173SC02
5F173SE02
5F173SG03
(57)【要約】
【課題】高周波特性の劣化低減を目的とする。
【解決手段】半導体発光装置102は、導電パターン12を上面に備えるサブマウント10と、下電極42が導電パターン12に対向して接合されている光変調器36と、光変調器36に並列に接続されている終端抵抗器52と、グラウンドプレーン18が導電パターン12に対向して接合されているマイクロストリップ基板16と、を有する。シングルエンド伝送線路20は、第1セクション28と、第1セクション28から延びて第2端部24を含む第2セクション30と、を含む。第2セクション30は、特性インピーダンスにおいて、第1セクション28よりも低い。ワイヤ56、光変調器36および終端抵抗器52を含む負荷回路58が、第2端部24および導電パターン12の間に電気的に接続される。負荷回路58は、特性インピーダンスにおいて、第2セクション30以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電パターンを上面に備えるサブマウントと、
上電極を上表面に備え、下電極を底面に備え、前記下電極が前記導電パターンに対向して接合されている光変調器と、
前記光変調器に並列に接続されている終端抵抗器と、
第1端部から第2端部に延びるシングルエンド伝送線路を上表面に備え、グラウンドプレーンを裏面に備え、前記グラウンドプレーンが前記導電パターンに対向して接合されているマイクロストリップ基板と、
前記光変調器の前記上電極と前記シングルエンド伝送線路の前記第2端部に、両端部がそれぞれボンディングされたワイヤと、
を有し、
前記シングルエンド伝送線路は、第1セクションと、前記第1セクションから延びて前記第2端部を含む第2セクションと、を含み、
前記第2セクションは、特性インピーダンスにおいて、前記第1セクションよりも低く、
前記ワイヤ、前記光変調器および前記終端抵抗器を含む負荷回路が、前記第2端部および前記導電パターンの間に電気的に接続され、
前記負荷回路は、前記特性インピーダンスにおいて、前記第2セクション以下である半導体発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載された半導体発光装置であって、
前記シングルエンド伝送線路は、前記第1セクションと接続する、第1端部を含む外部接続セクションを備え、
前記マイクロストリップ基板は、前記シングルエンド伝送線路の前記外部接続セクションを挟む一対のグラウンド導体を前記上表面に備え、グランデッドコプレーナ線路を部分的に構成する半導体発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された半導体発光装置であって、
半導体レーザをさらに有し、
前記光変調器および前記半導体レーザは、いずれも半導体光素子にモノリシックに集積されている半導体発光装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された半導体発光装置であって、
前記光変調器の前記上表面は、前記マイクロストリップ基板の前記上表面と同等の高さにある半導体発光装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された半導体発光装置であって、
前記第1セクションは、均一幅であって直線状に延びている半導体発光装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された半導体発光装置であって、
前記第2セクションは、幅において、前記第1セクションよりも広い幅広部を含む半導体発光装置。
【請求項7】
請求項6に記載された半導体発光装置であって、
前記幅広部は、前記幅が徐々に広くなる形状である半導体発光装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載された半導体発光装置であって、
前記幅広部は、前記第2端部を含む半導体発光装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された半導体発光装置であって、
前記第1端部および前記第2端部は、前記シングルエンド伝送線路の長さ方向に沿って前記マイクロストリップ基板の両端にあって、前記長さ方向に直交する幅方向に相互にずれた位置にある半導体発光装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載された半導体発光装置であって、
前記第1端部は、前記第1セクションの長さ方向に沿って、前記マイクロストリップ基板の両端の一方にあり、
前記第2端部は、前記長さ方向に直交する幅方向に沿って、前記マイクロストリップ基板の両側の一方にある半導体発光装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載された半導体発光装置であって、
前記第2セクションは、屈曲部を含む半導体発光装置。
【請求項12】
請求項11に記載された半導体発光装置であって、
前記屈曲部は、一方向に凸の曲線に沿って延びている半導体発光装置。
【請求項13】
請求項11に記載された半導体発光装置であって、
前記屈曲部は、複数方向に凸の曲線に沿って延びている半導体発光装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載された半導体発光装置であって、
前記第1セクションは、前記第2セクションに接続される第1接続部を含み、前記第1接続部から、第1方向に沿って延び、
前記第2セクションは、前記第1セクションに接続される第2接続部を含み、前記第2接続部から、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び、
前記第1接続部および前記第2接続部は、前記第1方向に隣接し、前記第2方向には隣接しない半導体発光装置。
【請求項15】
請求項14に記載された半導体発光装置であって、
前記シングルエンド伝送線路は、直角に曲がっている半導体発光装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載された半導体発光装置であって、
前記第2接続部の一部は、前記第1接続部よりも細くなっている半導体発光装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載された半導体発光装置と、
電気コネクタと、
を有し、
前記電気コネクタは、前記シングルエンド伝送線路の前記第1端部に電気的に接続されている光サブアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体発光装置および光サブアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信用の光変調器は、入力される高周波電気信号に応じて光信号を生成するようになっている。高周波電気信号は、伝送線路で品質が劣化するので、光信号もそれに応じて劣化する。特許文献1は、高周波特性の劣化を低減するためにボンディングワイヤを短くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波電気信号源および伝送線路は、一般的に、シングルエンド駆動においては50Ω終端系として構成されている。一方、光変調器の特性インピーダンスは50Ωとは限らない。したがって、光変調器との特性インピーダンス不整合により高周波電気信号の反射が発生し、高周波電気信号の品質が劣化し、ひいては光信号の品質が低下する。例えば、電気/光応答特性を示すf3dB帯域の値が劣化する。
【0005】
本開示は、特性インピーダンスの不整合による影響の抑制を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
半導体発光装置は、導電パターンを上面に備えるサブマウントと、上電極を上表面に備え、下電極を底面に備え、前記下電極が前記導電パターンに対向して接合されている光変調器と、前記光変調器に並列に接続されている終端抵抗器と、第1端部から第2端部に延びるシングルエンド伝送線路を上表面に備え、グラウンドプレーンを裏面に備え、前記グラウンドプレーンが前記導電パターンに対向して接合されているマイクロストリップ基板と、前記光変調器の前記上電極と前記シングルエンド伝送線路の前記第2端部に、両端部がそれぞれボンディングされたワイヤと、を有し、前記シングルエンド伝送線路は、第1セクションと、前記第1セクションから延びて前記第2端部を含む第2セクションと、を含み、前記第2セクションは、特性インピーダンスにおいて、前記第1セクションよりも低く、前記ワイヤ、前記光変調器および前記終端抵抗器を含む負荷回路が、前記第2端部および前記導電パターンの間に電気的に接続され、前記負荷回路は、前記特性インピーダンスにおいて、前記第2セクション以下である。
【0007】
シングルエンド伝送線路は、特性インピーダンスが異なる第1セクションおよび第2セクションを含むので、光変調器との特性インピーダンス不整合による影響を抑制することができる。
【0008】
光サブアセンブリは、上記半導体発光装置と、電気コネクタと、を有し、前記電気コネクタは、前記シングルエンド伝送線路の前記第1端部に電気的に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る光サブアセンブリの内部構成図である。
【
図2】サブマウントおよびその上に搭載される部品の平面図である。
【
図3】
図2に示す構造のIII-III断面図である。
【
図4】高周波電気信号に対する光信号の応答特性(光/電気応答特性)の図である。
【
図5】第2の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。
【
図6】第3の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。
【
図7】第4の実施形態に係る光サブアセンブリの内部構成図である。
【
図8】第5の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。
【
図9】第6の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。
【
図10】第7の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。
【
図11】第8の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る光サブアセンブリの内部構成図である。光サブアセンブリ100は、半導体発光装置102を内部に有し、箱型のパッケージ104により封止されている。光信号は、レンズ106、光コネクタ108を介して、光サブアセンブリ100の外部へと出力される。
【0012】
光サブアセンブリ100は、パッケージ104の、光コネクタ108とは反対側に電気コネクタ110を有する。電気コネクタ110は、光サブアセンブリ100の内外を電気的につなげるようになっており、光サブアセンブリ100の外側(パッケージ104の外側)には、図示しないフレキシブル基板が接続され、電源を供給するようになっている。
【0013】
光サブアセンブリ100は、パッケージ104の側面に高周波コネクタ112を有する。高周波コネクタ112は、光サブアセンブリ100の内外を電気的につなげており、例えばGPPOコネクタである。高周波コネクタ112には、56Gbpsの高周波電気信号が入力されようになっている。
【0014】
[サブマウント]
半導体発光装置102は、サブマウント10を有する。サブマウント10は、セラミック基板の表面がメタライズされた構造になっている。サブマウント10は、導電パターン12を上面に備える。導電パターン12は、基準電位(接地電位)となっている。
【0015】
図2は、サブマウント10およびその上に搭載される部品の平面図である。
図3は、
図2に示す構造のIII-III断面図である。サブマウント10は、裏面の全面もメタライズがされている。図示しないビアにて、導電パターン12と裏面の金属膜14は導通している。サブマウント10は、側面もメタライズがされており、導電パターン12と裏面の金属膜14を接続している。ここでは、
図2の下側の側面がメタライズされている。なお、側面メタライズはなくても構わない。
【0016】
[マイクロストリップ基板]
半導体発光装置102は、マイクロストリップ基板16を有する。マイクロストリップ基板16は、セラミック基板の両面に電気配線が設けられた構造になっている。
【0017】
マイクロストリップ基板16は、グラウンドプレーン18を裏面に備える。グラウンドプレーン18は、サブマウント10の導電パターン12に対向して接合され、これにより基準電位となっている。接合には、はんだもしくは導電性の接着剤(図示せず)が使用される。
【0018】
マイクロストリップ基板16は、シングルエンド伝送線路20を上表面に備える。シングルエンド伝送線路20は、第1端部23から第2端部24に延びる。第1端部23および第2端部24は、シングルエンド伝送線路20の長さ方向に沿って、マイクロストリップ基板16の両端にある。なお、シングルエンド伝送線路20が完全にセラミック基板の両端まで達していなくても構わない。
【0019】
シングルエンド伝送線路20は、外部接続セクション22、第1セクション28、そして第2セクション30を含む。マイクロストリップ基板16は、シングルエンド伝送線路20の外部接続セクション22を挟む一対のグラウンド導体26を上表面に備える。一対のグラウンド導体26は、図示しないビアによってグラウンドプレーン18にされる。シングルエンド伝送線路20の一部、一対のグラウンド導体26、そしてグラウンドプレーン18によりグランデットコプレーナ線路が構成される。なお、一対のグラウンド導体26を備えないマイクロストリップ線路であってもよい。第1端部23は外部接続セクション22の領域内にある。ここで上述したグランデットコプレーナ線路は、外部電気信号の駆動系と同じ特性インピーダンスである50Ωとなるように線路幅等が設定されている。ここでは、外部接続セクション22の領域におけるシングルエンド伝送線路20の線路幅は、後述する第1セクション28の領域におけるシングルエンド伝送線路20の線路幅と同一としているが、これに限らず適宜幅を変えても良い。ただし、外部接続セクション22と第1セクション28との接続箇所においてはシングルエンド伝送線路20の線路幅は一致させることが好ましい。外部接続セクション22におけるシングルエンド伝送線路20の第1端部23および一対のグラウンド導体26は、高周波コネクタ112(
図1)と電気的に接続され、接続にはワイヤW1が使用される。具体的には、ワイヤW1はGSG線路となっており、シグナル配線がシングルエンド伝送線路20の第1端部23に接続され、一対のグラウンド配線が一対のグラウンド導体26にそれぞれ接続される。
【0020】
シングルエンド伝送線路20は、第1セクション28を含む。第1セクション28は、均一幅であって直線状に延びている。言い換えると、第1セクション28はワイヤW1が接続されておらず、かつ均一幅で直線状に伸びている領域を示す。グラウンドプレーン18が第1セクション28の下方にあるので、マイクロストリップ線路が構成される。第1セクション28は、特性インピーダンスにおいて、上述したグランデットコプレーナ線路を構成する外部接続セクション22と同じ50Ωに設定されている。第1セクション28は、第1端部23を含まない。なお、外部接続セクション22を無くして、高周波コネクタ112と第1セクション28が接続されてもよい。この場合、ワイヤW1が接続される領域が外部接続セクション22となり、それ以降のシングルエンド伝送線路20が均一幅で直線状に伸びている領域が第1セクション28となる。
【0021】
シングルエンド伝送線路20は、第2セクション30を含む。第2セクション30は、第1セクション28から延びる。グラウンドプレーン18が第2セクション30の下方にあるので、マイクロストリップ線路が構成される。第2セクション30は、厚みにおいて、第1セクション28と同じになっている。第2セクション30は、幅において、第1セクション28よりも広い幅広部32を含む。そのため、第2セクション30は、特性インピーダンスにおいて、第1セクション28よりも低い。第2セクション30の特性インピーダンスは45Ωとなっている。幅広部32が第2端部24を含み、第2セクション30が第2端部24を含む。第2端部24は、シングルエンド伝送線路20の他方の端部であって、第2セクション30のうち、後述するワイヤ56がボンディングされる領域を示す。
【0022】
[半導体光素子]
半導体発光装置102は、半導体光素子34(例えばEA/DFBレーザ)を有する。光変調器36(例えば電界吸収変調器(EA変調器)またはマッハツェンダ変調器(MZ変調器))および半導体レーザ38(例えば分布帰還型(Distributed Feedback:DFB)レーザ)が、いずれも半導体光素子34にモノリシックに集積されている。
【0023】
半導体レーザ38は、直流電流が注入されて連続光を発振するようになっている。光変調器36は、入力された高周波電気信号に応じて、半導体レーザ38の光を吸収することで、高周波光信号を生成するようになっている。
【0024】
光変調器36は、上電極40を上表面に備える。光変調器36の上表面は、マイクロストリップ基板16の上表面と同等の高さにある。光変調器36は、下電極42を底面に備える。下電極42が導電パターン12に対向して接合されている。接合には、はんだ(図示せず)が使用される。なお、光変調器36の下電極42は、半導体レーザ38の下電極(図示せず)と一体化している。
【0025】
[コンデンサ]
サブマウント10の上には、コンデンサ44が搭載されている。コンデンサ44の下電極46は、導電パターン12に対向して接合されている。接合には、はんだもしくは導電性の接着剤(図示せず)が使用される。コンデンサ44の上電極48は、ワイヤW2を介して、半導体レーザ38の上電極50に接続されている。コンデンサ44は、半導体レーザ38に並列に接続されるので、半導体レーザ38への高周波成分の流入を抑えることができる。コンデンサ44の上電極48は、
図1に示すように、ワイヤW3によって、電気コネクタ110に接続されている。
【0026】
[終端抵抗器]
半導体発光装置102は、終端抵抗器52を有する。終端抵抗器52は、メタライズおよびパターニングによって形成されており、50Ωに設定されている。サブマウント10の上面には、導電パターン12に導通しないパッド54があり、導電パターン12およびパッド54の間に終端抵抗器52が接続されている。パッド54と光変調器36は、ワイヤW4によって接続されている。これにより、終端抵抗器52は、光変調器36に並列に接続される。なお、50Ωに限定されず必要に応じて抵抗値は他の値に設定しても良い。
【0027】
[ワイヤ]
半導体発光装置102は、ワイヤ56を有する。ワイヤ56の両端部は、それぞれ、光変調器36の上電極40とシングルエンド伝送線路20の第2端部24にボンディングされている。なお、
図2及び
図3の例では、ワイヤ56およびワイヤW4が連続した1本のワイヤになっている。
【0028】
マイクロストリップ基板16は、半導体光素子34と略同じ高さとなっているため、シングルエンド伝送線路20と光変調器36との間のワイヤ56は短くなる。そのため、ワイヤ56に起因するインダクタンス成分の低減が可能となる。ここでワイヤ56の長さは150μm以下が好ましい。150μm以下を実現するためには、マイクロストリップ基板16と半導体光素子34の高さの差は、±10%以内が好ましい。高さの差が大きい場合は、ワイヤ56は150μmより長くなり、ワイヤ56のインダクタンスは高周波特性を劣化される。
【0029】
[負荷回路]
図2に示すように、ワイヤ56、光変調器36および終端抵抗器52を含む負荷回路58が、第2端部24および導電パターン12の間に電気的に接続される。負荷回路58はパッド54も含む。負荷回路58は、特性インピーダンスにおいて、第2セクション30以下である。負荷回路58の特性インピーダンスは、50Ωより小さい40Ωとなっている。特性インピーダンスは、周波数に応じて変化するが、ここでは駆動周波数全域の平均値として定義する。なお、本定義は、シングルエンド伝送線路20においても同様である。
【0030】
特性インピーダンスが異なると、高周波電気信号の反射が生じ、高周波特性が劣化する。しかし、本実施形態では、シングルエンド伝送線路20の特性インピーダンスは、50Ωから45Ωに変化し、40Ωの負荷回路58へとつながる。このように特性インピーダンスが段階的に小さくなることで、電気信号の反射を小さくすることが可能となり、第1端部23(外部接続セクション22)に入力された高周波電気信号を、効率良く負荷回路58、ひいては光変調器36に伝達させることが可能となる。その結果、高周波特性の向上を図ることが可能となる。
【0031】
[特性]
図4は、高周波電気信号に対する光信号の応答特性(光/電気応答特性)の図である。高周波電気信号は第1端部23に入力される。横軸は周波数を示し、縦軸は応答性(S21)を示している。実線は、本実施形態の応答特性を示す。点線は、比較例の応答特性を示す。比較例では、シングルエンド伝送線路20の全体が均一幅になっており、特性インピーダンスが均一である。光変調器36の周波数特性の指標の一つとして、-3dBとなる周波数(f3dB帯域)を使用する。実施形態は、比較例に対して、概算で5GHz程度の特性改善が見られた。
【0032】
本実施形態では、第1セクション28、第2セクション30および負荷回路58の特性インピーダンスは、それぞれ、50Ω、45Ωおよび40Ωである。変形例として、第2セクション30および負荷回路58の特性インピーダンスを同じ(40Ω)にしてもよい。その場合、第1セクション28と第2セクション30との特性インピーダンス差が大きくなるにもかかわらず、高周波特性の向上が得られることが実測にて確認された。
【0033】
その理由は、シングルエンド伝送線路20では電界分布がある程度まとまっているために、電界分布の変化が小さく、反射も小さいからと推測される。これに対して、負荷回路58は、インダクタンス成分および容量成分のみならず半導体領域を有しているために非常に複雑な構成をしており、両者の接続部での特性インピーダンスの差は、大きな反射を発生させる。また、ワイヤ56が短いことも重要である。例えば、マイクロストリップ基板16が配置されていなく、シングルエンド伝送線路がサブマウントにパターンとして形成されている場合を想定する。この場合、シングルエンド伝送線路の特性インピーダンスが小さい領域とワイヤ56との間で大きな反射が生じる。ワイヤ56を150μm以下とすることで、ワイヤ56のインダクタンスは特性インピーダンスへの影響を小さくすることができ、第2セクション30を配置することの効果が得られる。
【0034】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。第1の実施形態と同様にシングルエンド伝送線路220は、外部接続セクション222、第1セクション228、そして第2セクション230を含む。第2セクション230は、屈曲部260を含む。屈曲部260は、複数方向に凸の曲線(例えばS字曲線S)に沿って延びている。屈曲部260があることで電磁界が拡がり、第2セクション230のインピーダンスを下げることができる。なお、第2セクション230は、幅において、第1セクション228と同じである。
【0035】
第1端部223および第2端部224は、シングルエンド伝送線路220の長さ方向(
図5の左右方向)に沿って、マイクロストリップ基板216の両端にある。第1端部223および第2端部224は、長さ方向に直交する幅方向(
図5の上下方向)に相互にずれた位置にある。
図1の例では高周波コネクタ112の正面に光変調器が配置されているが、本実施形態は、両者がずれて配置されるときに有効である。これにより、光サブアセンブリ内の部品配置の自由度を高めることが可能となる。その他の内容には、第1の実施形態で説明した内容を適用可能である。
【0036】
なお、第2セクション230は、曲率が変化するように屈曲していてもよいし、直線に延びる部分を含んでもよい。これにより、第2セクション230の特性インピーダンスは位置によって異なるが、本開示では、第2セクション230の特性インピーダンスとは、第2セクション230全体の平均的な特性インピーダンスをいう。一方、第1セクション228は、幅が一定で、特性インピーダンスも一定になっている。本定義は、以降の実施形態においても同様である。
【0037】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。第1の実施形態と同様にシングルエンド伝送線路320は、外部接続セクション322、第1セクション328、そして第2セクション330を含む。第2セクション330は、幅において、第1セクション328よりも広い幅広部332を含む。幅広部332は、第1セクション328から離れる方向に、幅が徐々に広くなる形状である。幅広部332は、第2端部324を含む。第2セクション330で、第2端部324が最も広くなっている。その他の内容には、第2の実施形態で説明した内容を適用可能である。
【0038】
屈曲部360および幅広部332を組み合わせることで、小さい領域で低インピーダンス化を実現することができる。これにより、マイクロストリップ基板316の小型化を図ることが可能となる。そのため、光サブアセンブリ自体の小型化を図ることが可能となる。
【0039】
[第4の実施形態]
図7は、第4の実施形態に係る光サブアセンブリの内部構成図である。本実施形態では、高周波電気信号が入力される方向は、光信号が出力される方向と平行である。高周波電気信号および直流電流の入出力は、いずれも電気コネクタ410で行われるようになっている。電気コネクタ410は、マイクロストリップ基板416に、その長さ方向(
図7の上下方向)に隣り合う。マイクロストリップ基板416はシングルエンド伝送線路420を備えている。シングルエンド伝送線路420は、外部接続セクション422、第1セクション428、そして第2セクション430を含む。
【0040】
これに対して、光変調器436は、マイクロストリップ基板416に、幅方向(
図7の左右方向)に隣り合う。そのため、シングルエンド伝送線路420は、略90度曲る形状となっている。詳しくは、第2セクション430は、均一幅で90度曲がった形状をしている。第2セクション430の特性インピーダンスは、43Ωとなっている。屈曲部460を有することで低インピーダンスを実現している。
【0041】
第1端部423は、第1セクション428の長さ方向に沿って、マイクロストリップ基板416の両端の一方にある。第2端部424は、長さ方向に直交する幅方向に沿って、マイクロストリップ基板416の両側の一方にある。第2セクション430は、屈曲部460を含む。屈曲部460は、一方向に凸の曲線に沿って延びている。その他の内容には、第1および第2の実施形態で説明した内容を適用可能である。
【0042】
[第5の実施形態]
図8は、第5の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。第2セクション530は、幅において、第1セクション528よりも広い幅広部532を含む。幅広部532は、幅が徐々に広くなる形状である。幅広部532は、第2端部524を含む。その他の内容には、第4の実施形態で説明した内容を適用可能である。
【0043】
屈曲部560および幅広部532を組み合わせることで、小さい領域で低インピーダンス化を実現することができる。これにより、マイクロストリップ基板516の小型化を図ることが可能となる。そのため、光サブアセンブリ自体の小型化を図ることが可能となる。
【0044】
[第6の実施形態]
図9は、第6の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。シングルエンド伝送線路620は、外部接続セクション622、第1セクション628、そして第2セクション630を含む。第1端部623は、第1セクション628の長さ方向(
図9の上下方向)に沿って、マイクロストリップ基板616の両端の一方にある。第2端部624は、長さ方向に直交する幅方向(
図9の左右方向)に沿って、マイクロストリップ基板616の両側の一方にある。つまり、シングルエンド伝送線路620は、直角に曲がっている。これにより、電磁界が拡がり、第2セクション630のインピーダンスを下げることができる。
【0045】
第1セクション628は、第2セクション630に接続される第1接続部662を含む。第1セクション628は、第1接続部662から、第1方向D1に沿って延びる。
【0046】
第2セクション630は、第1セクション628に接続される第2接続部664を含む。第2セクション630は、第2接続部664から、第1方向D1に交差する第2方向D2に沿って延びる。第1セクション628および第2セクション630は、延びる方向が異なる。
【0047】
第1接続部662および第2接続部664は、第1方向D1に隣接するが、第2方向D2には隣接しない。第2接続部664の一部は、第1接続部662よりも細くなっている。その他の内容には、第5の実施形態で説明した内容を適用可能である。
【0048】
[第7の実施形態]
図10は、第7の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。第2セクション730は、幅において、第1セクション728よりも広い幅広部732を含む。幅広部732は、第2端部724を含む。その他の内容には、第6の実施形態で説明した内容を適用可能である。
【0049】
[第8の実施形態]
図11は、第8の実施形態に係るマイクロストリップ基板の平面図である。第2接続部864の一部は、
図9に示す第2接続部664の一部よりもさらに細くなっている。これにより、第2セクション830の特性インピーダンスを調整することができる。その他の内容には、第6の実施形態で説明した内容を適用可能である。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態を説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 サブマウント、12 導電パターン、14 金属膜、16 マイクロストリップ基板、18 グラウンドプレーン、20 シングルエンド伝送線路、22 外部接続セクション、23 第1端部、24 第2端部、26 グラウンド導体、28 第1セクション、30 第2セクション、32 幅広部、34 半導体光素子、36 光変調器、38 半導体レーザ、40 上電極、42 下電極、44 コンデンサ、46 下電極、48 上電極、50 上電極、52 終端抵抗器、54 パッド、56 ワイヤ、58 負荷回路、100 光サブアセンブリ、102 半導体発光装置、104 パッケージ、106 レンズ、108 光コネクタ、110 電気コネクタ、112 高周波コネクタ、216 マイクロストリップ基板、220 シングルエンド伝送線路、222 外部接続セクション、223 第1端部、224 第2端部、228 第1セクション、230 第2セクション、260 屈曲部、316 マイクロストリップ基板、320 シングルエンド伝送線路、322 外部接続セクション、324 第2端部、328 第1セクション、330 第2セクション、332 幅広部、360 屈曲部、410 電気コネクタ、416 マイクロストリップ基板、420 シングルエンド伝送線路、423 第1端部、424 第2端部、428 第1セクション、430 第2セクション、422 外部接続セクション、436 光変調器、460 屈曲部、516 マイクロストリップ基板、524 第2端部、528 第1セクション、530 第2セクション、532 幅広部、560 屈曲部、616 マイクロストリップ基板、620 シングルエンド伝送線路、622 外部接続セクション、623 第1端部、624 第2端部、628 第1セクション、630 第2セクション、662 第1接続部、664 第2接続部、724 第2端部、728 第1セクション、730 第2セクション、732 幅広部、830 第2セクション、862 第1接続部、864 第2接続部、D1 第1方向、D2 第2方向、W1 ワイヤ、W2 ワイヤ、W3 ワイヤ、W4 ワイヤ。