(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080246
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】メタルマスク版製造設備と製造方法
(51)【国際特許分類】
B41C 1/14 20060101AFI20220520BHJP
B41N 1/24 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B41C1/14 101
B41N1/24
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053592
(22)【出願日】2021-03-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2020190626
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592173412
【氏名又は名称】株式会社プロセス・ラボ・ミクロン
(72)【発明者】
【氏名】大津 紀美子
(72)【発明者】
【氏名】▲橋▼本 哲
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 数雅
【テーマコード(参考)】
2H084
2H114
【Fターム(参考)】
2H084BB02
2H084BB08
2H084BB13
2H084CC10
2H114AB03
2H114AB05
2H114AB11
2H114AB15
2H114AB17
2H114DA04
2H114DA56
2H114EA08
2H114GA01
2H114GA38
(57)【要約】
【課題】
従来よりも簡易な設備で構成されており、コンビネーション部に荷重する圧力が均一であり、コンビネーション部の接着力やメタルマスクのテンションを均一になるため、品質の良いメタルマスク版を製造できる製造設備と製造方法を提供する。
【解決手段】
メタルマスク版製造設備1は、外枠21と被覆シート22からなる押圧用枠2と、製版台3と、弾性支持体5と、所定の熱と圧力で硬化する接着剤6と、面状発熱体7と、空気吸引機Pから構成されている。これによれば、外枠21と被覆シート22と製版台3の平面に囲まれた空間から空気を吸引したとき、被覆シート22が弾性支持体側に吸着し、これらに挟まれたメタルマスクMとメッシュシートSを押圧すると同時に、面状発熱体7の熱により接着剤6を硬化させて、メタルマスクMをメッシュシートSに固着させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュシートが張設されている金属製のスクリーン枠に、前記メッシュシートを介してメタルマスクを張設するための、メタルマスク版製造設備であって、
前記スクリーン枠より大きい外枠に、柔軟な被覆シートを張設した押圧用枠と、
前記スクリーン枠の全体を載置可能な大きさの平面を有する製版台と、
前記製版台の平面上に載置され、前記スクリーン枠の内側に収納可能な形状の弾性支持体と、
前記製版台と前記被覆シートの両方またはいずれか一方に形成された吸気孔と、
前記吸気孔と蛇管を介して空気の流通自在に接続され、所定の吸引力を有する空気吸引機と、
所定の熱と圧力で硬化する接着剤の層と、
前記接着剤の硬化温度を出力可能な面状発熱体と、
を備え、
前記接着剤は、前記メタルマスクの外周を含むロの字形状に塗布、形成または配置されており、
前記吸気孔は、前記押圧用枠を前記製版台に密着させたとき、前記外枠の枠内であり、前記スクリーン枠の枠外の範囲に位置している、
ことを特徴とする、メタルマスク版製造設備。
【請求項2】
前記面状発熱体と被覆シートの間、または前記面状発熱体と前記メタルマスクの間に、前記メタルマスクの外周を含むロの字形状に形成または配置された押圧治具を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のメタルマスク版製造設備。
【請求項3】
金属製のスクリーン枠に、メッシュシートを介してメタルマスクを張設するための、メタルマスク版製造方法であって、
前記スクリーン枠を載置可能な大きさの平面を有する製版台の前記平面上に、弾性支持体を載置する工程と、
前記スクリーン枠を、前記メッシュシートを上にして、その枠内に、厚板状の弾性支持体を収納した状態で平面上に置き、前記スクリーン枠の前記メッシュシート上に、前記メタルマスクの外周を含むロの字形状に塗布、形成または配置された接着剤の層を挟んで、メタルマスクを密着させる工程と、
前記接着剤の硬化温度を出力可能な面状発熱体を、前記メタルマスク上に設置する工程と、
前記スクリーン枠より大きい外枠に張設された、柔軟な被覆シートで前記スクリーン枠を押圧する工程と、
前記面状発熱体を発熱させ、前記接着剤を硬化させるとともに、前記外枠と前記被覆シートと前記平面に囲まれた空間から空気を吸引し、前記被覆シートにより前記メタルマスクを前記メッシュシートに圧着する工程と、
前記メッシュシートの、前記メタルマスクに固着した部分の内側を切除する工程と、
を含むことを特徴とする、メタルマスク版製造方法。
【請求項4】
金属製のスクリーン枠に、メッシュシートを介してメタルマスクを張設するための、メタルマスク版製造方法であって、
前記スクリーン枠を載置可能な大きさの平面を有する製版台の前記平面上に面状発熱体、前記メタルマスクをこの順番で載置する工程と、
前記メタルマスクの外周を含むロの字形状に、接着剤の層を塗布、形成または配置する工程と、
前記スクリーン枠を、前記メッシュシートを下にして前記メタルマスク上に載置する工程と、
前記スクリーン枠内に、弾性支持体を収納する工程と、
前記スクリーン枠と前記弾性支持体を、前記スクリーン枠より大きい外枠に張設された、柔軟な被覆シートで押圧する工程と、
前記面状発熱体を発熱させ、前記接着剤を硬化させるとともに、前記外枠と前記被覆シートと前記平面に囲まれた空間から空気を吸引し、前記被覆シートにより前記メタルマスクを前記メッシュシートに圧着する工程と、
前記メッシュシートの、前記メタルマスクに固着した部分の内側を切除する工程と、
を含むことを特徴とする、メタルマスク版製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路製造工程において、基板やシリコンウエハーなどのワーク上に、はんだなどのペーストを微細なパターンで印刷するためのメタルマスク版の製造設備、及びメタルマスク版の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路実装工程や半導体製造工程において、部品実装をしたり、バンプ電極を形成したりするときは、基板やシリコンウエハーなどのワーク上に、はんだなどの導電性ペーストを印刷し、これをリフロー炉で高温処理をして溶接する方法が一般的に用いられている。
【0003】
はんだ印刷には、金属の薄板に微細な開口部が形成された孔版であるメタルマスクが一般に使用されている。メタルマスクの開口部は、ワーク上の電極に対応するパターンで形成されており、印刷機に設置されたメタルマスクが、ワークに対して適正な位置に配置されたとき、開口部を介して電極上に適正にペーストを印刷できるように設定されている。
【0004】
ここで、メタルマスクは、主に、アルミなどの金属製の枠にポリエステルなどの繊維からなるメッシュシートを介して所定の張力で張設したメタルマスク版として印刷に供される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
従来からのメタルマスク版の製造方法としては、メッシュシートを張設したスクリーン枠の中央部に、メタルマスクを固着し(周辺部の幅約1~1.5cmの範囲に接着剤を塗布し、メッシュシートに接着する。この固着面を「コンビネーション部」という。)、メタルマスクの固着面の内側部分のメッシュシートを切抜く製造方法(製版作業)が主に採られている(例えば特許文献1)。メタルマスクの周辺部固着面の内側部分のメッシュシートを切抜くのは、メッシュシートがメタルマスク上の開口部パターン部分に存在すると、メタルマスク版を使用する際にメッシュシートに妨げられてペーストの抜けが悪くなるためである。そのため、メッシュシートを切り抜いて、メタルマスクの開口部パターンを露出させる。
【0006】
メタルマスクは、周辺部がメッシュシートと固着されているため、メッシュシートの有する張力が与えられている状態となる。すなわち、上記工程により得られたメタルマスク版は、スクリーン枠によって張力がかけられた状態のメタルマスクを有することとなる。
【0007】
ここで、この従来の製版作業は、専ら製版作業員の手によるハンドメイドであり、生産効率が低く、また、作業者の違いによる品質の変動も問題となっていた。
【0008】
一方、
図5、6に示すメタルマスク版の製造設備100のような、熱圧着による製版作業の半自動化による効率化を目的とした設備も考えられている。従来のメタルマスク版製造設備100は、押圧板200と、可動ステージ300と、枠支持体400と、メタルマスク支持体500と、接着シート600から構成される。
【0009】
押圧板200は、金属製の平板状の固定板201と、その表面に形成された熱伝導性ゴム層202と、固定板201と熱伝導性ゴム層202の間に設置された、シート状の電気ヒーターである面状発熱体203と、固定板201を設備に上から固定するための架柱204からなる。
【0010】
可動ステージ300は、平板状の製版台301と、製版台301を下から支える支柱302と、支柱302に設置され、製版台301を空気圧で上下に可動させる空圧シリンジ303からなる。
【0011】
枠支持体400と、メタルマスク支持体500は、製版作業において、最適な熱圧着ができるように、スクリーン枠FとメタルマスクMの高さ調整をするものであり、シリコンゴムなどのある程度の硬度を有する弾性体で形成されている。
【0012】
接着シート600は、熱圧着性接着剤で、メタルマスクMの外周に沿った形状で1~1.5cm幅で形成されており、所定の温度と圧力で硬化し、メタルマスクMをメッシュシートSに固着させることに使用される。
【0013】
次に、
図7に基づいて、従来のメタルマスク版製造設備100による、メタルマスク版製造方法について説明する。まず、可動ステージ300の所定の位置に、枠支持体400とメタルマスク支持体500を載置する(
図7(a))。次に、枠支持体400の上に、スクリーン枠Fを、メタルマスク支持体500に被せるように載置する(同(b))。次に、スクリーン枠FのメッシュシートSの上に、接着シート600とメタルマスクMを載置する(同(c))。次に、面状発熱体203を作動させて、接着シート600の硬化に必要な温度まで熱伝導性ゴム層202を加熱する。空圧シリンダー303と作動させ、製版台301を上昇させて、メタルマスクMと接着シート600と、メッシュシートSを、熱伝導性ゴム層202に所定の圧力で押圧する(同(d))。所定の時間経過後、接着シート600が硬化したら、製版台301を下降させる(同(e))。メタルマスクMを固着したスクリーン枠Fを取り出し、メッシュシートSの、メタルマスクMに固着した部分の内側を切除して、メタルマスク版700を得ることができる(同(f))。
【0014】
ここで、従来のメタルマスク版製造設備100によるメタルマスク版製造方法によると、確かに従来の製版作業に比べ生産効率は上昇し、作業者による品質の変動もある程度は改善されるが、固定板201と製版台301の水平性や、エアシリンダーの出力のバランスが保たれていないと、メタルマスクMとメッシュスクリーンSに加重される圧力や熱に場所による差異が発生し、コンビネーション部における接着力を不均一にし、使用中のメタルマスクMの脱落などの原因となったりメタルマスクMにかかるテンションが不均一になることで印刷品質を下げる原因となったりするなど、メタルマスク版800の品質の低下を惹き起こすという問題があった。
【0015】
また、エアシリンダー303により強い圧力を印加したり、その圧力を架柱204、支柱302で支えたりする必要があるために、設備全体として丈夫に設計する必要があり、構造的に大型化・複雑化になる原因となり、問題となっていた。
【0016】
また、メタルマスク版800のサイズに合わせて設備全体の大きさを設計する必要があるため、大型化など、版の大きさの変化に対応が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
この発明の目的は、上記事情に鑑み、従来よりも簡易な設備で構成された、メタルマスク版製造設備を提供することである。
【0019】
また、コンビネーション部に荷重する圧力や熱を均一にし、コンビネーション部の接着力やメタルマスクのテンションを均一にして、従来よりも品質の良いメタルマスク版を製造できる、製造設備と製造方法を提供することである。
【0020】
さらに、製造するメタルマスク版の大きさの変化に柔軟に対応できる、製造設備と製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、メッシュシートが張設されている金属製のスクリーン枠に、前記メッシュシートを介してメタルマスクを張設するための、メタルマスク版製造設備であって、前記スクリーン枠より大きい外枠に、柔軟な被覆シートを張設した押圧用枠と、前記スクリーン枠の全体を載置可能な大きさの平面を有する製版台と、前記製版台の平面上に載置され、前記スクリーン枠の内側に収納可能な形状の弾性支持体と、前記製版台と前記被覆シートの両方またはいずれか一方に形成された吸気孔と、前記吸気孔と蛇管を介して空気の流通自在に接続され、所定の吸引力を有する空気吸引機と、所定の熱と圧力で硬化する接着剤の層と、前記接着剤の硬化温度を出力可能な面状発熱体と、を備え、前記接着剤は、前記メタルマスクの外周を含むロの字形状に塗布、形成または配置されており、前記吸気孔は、前記押圧用枠を前記製版台に密着させたとき、前記外枠の枠内であり、前記スクリーン枠の枠外の範囲に位置している、ことを特徴とする、メタルマスク版製造設備である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のメタルマスク版製造設備であって、前記面状発熱体と被覆シートの間、または前記面状発熱体と前記メタルマスクの間に、前記メタルマスクの外周を含むロの字形状に形成または配置された押圧治具を備える、
ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、金属製のスクリーン枠に、メッシュシートを介してメタルマスクを張設するための、メタルマスク版製造方法であって、前記スクリーン枠を載置可能な大きさの平面を有する製版台の前記平面上に、弾性支持体を載置する工程と、前記スクリーン枠を、前記メッシュシートを上にして、その枠内に、厚板状の弾性支持体を収納した状態で平面上に置き、前記スクリーン枠の前記メッシュシート上に、前記メタルマスクの外周を含むロの字形状に塗布、形成または配置された接着剤の層を挟んで、メタルマスクを密着させる工程と、前記接着剤の硬化温度を出力可能な面状発熱体を、前記メタルマスク上に設置する工程と、前記スクリーン枠より大きい外枠に張設された、柔軟な被覆シートで前記スクリーン枠を押圧する工程と、前記面状発熱体を発熱させ、前記接着剤を硬化させるとともに、前記外枠と前記被覆シートと前記平面に囲まれた空間から空気を吸引し、前記被覆シートにより前記メタルマスクを前記メッシュシートに圧着する工程と、前記メッシュシートの、前記メタルマスクに固着した部分の内側を切除する工程と、を含むことを特徴とする、メタルマスク版製造方法である。
請求項4に記載の発明は、金属製のスクリーン枠に、メッシュシートを介してメタルマスクを張設するための、メタルマスク版製造方法であって、前記スクリーン枠を載置可能な大きさの平面を有する製版台の前記平面上に面状発熱体、前記メタルマスクをこの順番で載置する工程と、前記メタルマスクの外周を含むロの字形状に、接着剤の層を塗布、形成または配置する工程と、前記スクリーン枠を、前記メッシュシートを下にして前記メタルマスク上に載置する工程と、前記スクリーン枠内に、弾性支持体を収納する工程と、前記スクリーン枠と前記弾性支持体を、前記スクリーン枠より大きい外枠に張設された、柔軟な被覆シートで押圧する工程と、前記面状発熱体を発熱させ、前記接着剤を硬化させるとともに、前記外枠と前記被覆シートと前記平面に囲まれた空間から空気を吸引し、前記被覆シートにより前記メタルマスクを前記メッシュシートに圧着する工程と、前記メッシュシートの、前記メタルマスクに固着した部分の内側を切除する工程と、を含むことを特徴とする、メタルマスク版製造方法である。
【0022】
これによれば、外枠と被覆シートと製版台の平面に囲まれた空間から空気を吸引したとき、被覆シートが弾性支持体側に吸着し、これらに挟まれたメタルマスクとメッシュシートを押圧すると同時に、面状発熱体の熱により接着剤を硬化させ、メタルマスクをメッシュシートに固着させる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、従来よりも簡易な設備構成で、メタルマスク版製造設備を得ることが可能になる。
【0024】
請求項1から3に記載の発明によれば、被覆シート及び弾性支持体が柔軟性を有するため、メタルマスクとメッシュシートを押圧するときの圧力と熱のバランスが自然に調整されるので、コンビネーション部の接着力やメタルマスクのテンションが均一で、品質の良いメタルマスク版を製造することが可能になる。また、構造が比較的簡易であるので、単一の設備で様々なサイズのメタルマスク版の製造に柔軟に対応することが可能になり、さらに外枠の範囲内に収まる数であれば、一度に複数のメタルマスク版を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態に係る、メタルマスク版製造設備の概略の分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る、メタルマスク版製造設備の概略の側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る、メタルマスク版製造方法を示す、概略の工程フロー図である。
【
図4】本発明の別の実施の形態に係る、メタルマスク版製造方法を示す、概略の工程フロー図である。
【
図5】従来のメタルマスク版製造設備の概略の分解斜視図である。
【
図6】従来のメタルマスク版製造設備の概略の側面図である。
【
図7】従来のメタルマスク版製造方法を示す、概略の工程フロー図である。
【
図8】本発明の別の実施の形態に係る、メタルマスク版製造設備の概略の分解斜視図である。
【
図9】本発明の別の実施の形態に係る、メタルマスク版製造設備の概略の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面において、図面中の各部の構成の大きさ、間隔、数、その他詳細は、視認と理解の助けのために、実際の物に比べて大幅に簡略化して表現している。
【0027】
図1、2は、本実施の形態に係る、メタルマスク版製造設備1の概略の分解斜視図とメタルマスク版製造設備1の概略の側面図である。メタルマスク版製造設備1は、押圧用枠2と、ステージ状の平面を有する製版台3と、製版台3上に敷設された遮熱シート4と、遮熱シート上に載置された弾性支持体5と、所定の熱と圧力で硬化する接着剤6と、接着剤6の硬化温度を出力可能な面状発熱体7と、空気吸引機Pから構成されている。
【0028】
また、図中においてメタルマスクMは、ステンレスまたはニッケル製であり、厚さ0.05~0.5mm、一辺が30~50cmの略長方形の薄い平板状の金属孔版である。また、スクリーン枠Fはポリエステル製のメッシュシートSが所定の張力で張設されている、一辺40~100cmの略長方形のアルミニウム枠(枠辺は一辺10~30mmの角柱)である。
【0029】
押圧用枠2は、金属製の外枠21に柔軟な被覆シート22が張設された構造をしている。ここで、外枠21を構成する金属は、メタルマスクM等を押圧するために適した剛性と重量を有した素材で形成されており、本実施の形態では、ステンレスが用いられている。また、被覆シート22は、押圧用枠2を製版台3のステージ上に載置したときに、同様に製版台3のステージ上に載置されたスクリーン枠F等を被覆可能な程度の緩さで、外枠21に設置されており、また、後述するように、スクリーン枠F等を被覆した状態で空気を吸引した時に、内包した物の形状に追従して形状を変化させられる程度の柔軟な素材でできており、本実施の形態では、厚さ2.5mmの合成ゴムが使用されている。
【0030】
また、外枠21には、製版台3との密着性を高め、空気吸引を効率的に行うために、外枠21を台座3に固定するためのフックレバー23が、向かい合う2つの辺に各2個ずつ設置されている。
【0031】
製版台3は、スクリーン枠Fの全体を載置可能な大きさの平面状のステージを有する物体であり、表面には、外枠21との密着性を高めるために、柔軟性を有するシート(図示略)が敷設されており、本実施の形態では、合成ゴムシートが使用されている。
【0032】
製版台3のステージには、吸気孔31が2箇所形成されている。吸気孔31は、外枠21を製版台3のステージに置いたときに、被覆シート22によって被覆された空間の空気を吸引できるように、外枠21の内側に位置する場所に形成されている。
【0033】
また、前述のフックレバー23を固定するために、これに対応する場所に突起32が設置されている。
【0034】
遮熱シート4は、後述する面状発熱体7の熱を逃がさないために敷設し、その素材は、熱絶縁性が高いものが使用されており、本実施の形態ではガラス繊維が使用されており、スクリーン枠Fを載置するのに十分な大きさと形状に設定されている。
【0035】
弾性支持体5は、スクリーン枠Fの内周と略同形状の弾性体であり、被覆シート22がメタルマスクMを押圧したときに、反対側から支える役割を担う。
【0036】
また形状は、矩形の厚板状であり、被覆シート22がメタルマスクMを効果的に押圧できるように、スクリーン枠Fの内周よりやや小さく、メタルマスクMより大きく形成されている。メタルマスクMより小さい場合、メタルマスクMを支持できないので、押圧の効果が弱まることになる。また、同様の理由から、厚さはスクリーン枠Fと略同じに設定されている。ここで、弾性支持体5がスクリーン枠Fに対して厚すぎると、スクリーン枠Fの内部に収納したときに、スクリーン枠Fが浮いてしまい、薄すぎると、メタルマスクMがへこんでしまうので、被覆シート22による押圧の効果が弱まることになる。
【0037】
また、素材は、被覆シート22に押し負けない程度の弾性を有しており、本実施の形態では、シリコンゴムを使用している。
【0038】
接着剤6は、シート状または液体状であり、シート状の場合は予めにメタルマスクMのコンビネーション部の形状に沿った一辺の幅1~1.5cmのロの字形状に形成されており、液体状の場合は、予めメタルマスクMの外周に沿って幅1~1.5cmの幅で塗布されている。本実施の形態では、熱可塑性樹脂からなるシート状接着剤を使用した。この素材の硬化温度は120℃~200℃であり、硬化時間は3分以上、圧力は0.05MPa以上であるが、他の部分への影響を考慮すると、温度と硬化時間は接着剤6が有効に硬化できる範囲で、なるべく低い温度や短い時間であることが望ましい。
【0039】
面状発熱体7は、電源ケーブル(図示略)を通じて外部から供給された電力により発熱をするシート状の電気ヒーターであり、接着剤6を硬化可能な温度を出力可能であり、シート状の接着剤6と、メタルマスクMの外周を被覆可能な大きさと形状に形成されている。本実施の形態では、長方形状に形成されている。
【0040】
空気吸引機Pは、蛇管Tを介して吸気孔31に空気の流通自在なように接続されており、被覆シート3が、メタルマスクMを押圧し、接着剤6が有効に硬化できる圧力を発現できる程度の吸引力を有する真空ポンプである。
【0041】
次に、本実施の形態に係る、メタルマスク版製造方法について、
図3に基づいて説明をする。
【0042】
先ず、製版台3のステージ上に、遮蔽シート4を敷設し、その上に弾性支持体5を載置する(
図3(a))。
【0043】
次に、遮蔽シート4上に、スクリーン枠Fを、メッシュシートSを上にして、その枠内に、弾性支持体5を収納した状態で載置する(同(b))。
【0044】
次に、コンビネーション部の形状に切り出した接着剤6のシートを、メッシュシート6上に載置し、さらにその上にメタルマスクMを密着させる(同(c))。このとき、メタルマスクMは、スクリーン枠Fの中央にくるように、接着剤6とメタルマスクMの位置を調節する。
【0045】
次に、メタルマスクMの外周を覆う様に、面状発熱体7を設置する(同(d))。
【0046】
次に、押圧用枠2を、被覆シート22をメタルマスクMやスクリーン枠F等に押し当てて変形させながら、外枠21が製版台3のステージに密着するまで押し下げ、フックレバー23を回転させ、突起32に係合して、製版台3に固定する(同(e))。
【0047】
次に、面状発熱体7を所定の温度に発熱させ、接着剤6を硬化させるとともに、空気吸引機Pを稼働させて、外枠21と被覆シート22と製版台のステージに囲まれた空間から、吸気孔31を介して空気を吸引し、被覆シート22を、スクリーン枠Fの外形に沿って変形させ、スクリーン枠Fを押圧する。そして、変形した被覆シート22の弾力により、メタルマスクMをメッシュシートSに圧着させる(同(f))。ここで、温度、吸引力及びメタルマスクMをメッシュシートSに固着させるために必要な接着剤6の硬化時間は、接着剤6の特性や、接着物の材質により調整するが、本実施の形態では温度は180℃、吸引力は0.1MPaとし、硬化時間は5分とした。
【0048】
接着剤6が硬化したのち、面状発熱体7と空気吸引機Pを停止させ、フックレバー23を解除し、押圧用枠2と面状発熱体7を取り除く(同(g))
【0049】
メタルマスクMを固着したスクリーン枠Fを取り出し、メッシュシートSの、メタルマスクMに固着した部分の内側を切除して、メタルマスク版8を得る。
【0050】
本実施の形態の発明によれば、従来よりも簡易な設備構成で、メタルマスク版製造設備1を得ることが可能になる。
【0051】
また、被覆シート22及び弾性支持体5が柔軟性を有するため、メタルマスクMとメッシュシートSを押圧するときの圧力と熱のバランスが自然に調整されるので、均等な接着力でメタルマスク版8を製造することが可能になる。また、構造が比較的簡易であるので、単一の設備で様々なサイズのメタルマスク版の製造に柔軟に対応することが可能になり、さらに外枠の範囲内に収まる数であれば、一度に複数のメタルマスク版を製造することが可能である。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本願発明の範囲は以上の実施の形態に限られるものではなく、これと同視しうる他の形態に対しても及ぶ。
【0053】
例えば、メタルマスク版製造方法において、
図4のように、設備構成を変えずに、製版台3に設備を置く順番を逆にしても、同様の効果が得られる。すなわち、製版台3のステージ上に、遮蔽シート4を敷設して、その上に面状発熱体7を載置する(
図4(a))。メタルマスクMをこの上に載置し、外周に液体又はシート状の接着剤6の層を形成する(同(b))。次に、スクリーン枠Fを、メッシュシートSを下にしてメタルマスクM上に載置する(同(c))。次に、スクリーン枠Fの枠内に、弾性支持体5を収納する(同(d))。次に、押圧用枠2を、被覆シート22をスクリーン枠Fや弾性支持体5等に押し当てて変形させながら、外枠21が製版台3のステージに密着するまで押し下げ、フックレバー23を回転させて突起32に係合して、製版台3に固定する(同(e))。次に、面状発熱体7を発熱させ、接着剤6を硬化させるとともに、空気吸引機Pを稼働させて、外枠21と被覆シート22と製版台のステージに囲まれた空間から、吸気孔31を介して空気を吸引し、被覆シート22を、スクリーン枠Fの外形に沿って変形させ、スクリーン枠Fを押圧し、接着剤6を硬化させ、メタルマスクMをメッシュスクリーンSに固着する(同(f))。次に、フックレバー23を解除し、弾性支持体5を取り除き(同(g))、メタルマスクMを固着したスクリーン枠Fを取り出し、メッシュシートSの、メタルマスクMに固着した部分の内側を切除して、メタルマスク版8を得ることができる(同(h))。
【0054】
また、押圧用枠2と製版台3をスクリーン枠Fより十分大きくすれば、一度に複数のメタルマスク版8を製造することが可能になり、さらなる生産性の向上が可能となる。
【0055】
また、弾性支持体5は、必ずしもスクリーン枠Fと略同じ厚さであることを要せず、厚さが異なり段差が生じる場合には、段差調整用のスペーサーを間に挟むことで、効果的な押圧を確保することができる。すなわち、弾性支持体5がスクリーン枠Fより厚い場合には、スクリーン枠F側にスペーサーを設置し、スクリーン枠Fより薄い場合には弾性支持体5側にスペーサーを設置して、高さを調整する。
【0056】
さらに、押圧用枠2の一辺を、丁番で製版台3に接続し、扉の様に開閉できるようにすることで、さらに生産性を向上させることが可能となる。
【0057】
また被覆シート22の色は特に限定はされないが、透明性の高い素材を使用すれば、押圧用枠2を載せた状態でも、スクリーン枠FやメタルマスクMを目視することができるので、位置ずれなどの異常を発見しやすくなり、メタルマスク版8の品質をより向上させることが可能となる。
【0058】
さらに、遮熱シート4は、前述の通り、面状発熱体7の熱を逃がさないために効果があり、工程の効率化が図れるが、必ずしもこれを用いなくともメタルマスク版8を製造することは可能であり、この場合さらなる設備と工程の簡易化が可能となる。
【0059】
また、弾性支持体5は、本実施の形態では平板状であったが、コンビネーション部の内側にあたる中央部分をくり抜いて、ロの字形状とすることで、コンビネーション部に集中して圧力がかかるようになるので、より均等な接着力でメタルマスク版8を製造することができ、品質を向上させることが可能となる。この場合、ロの字形状のそれぞれの辺は、少なくともコンビネーション部以上の幅で形成されることが好ましい。
【0060】
さらに、接着剤6はコンビネーション部だけに限らず、メタルマスクMを囲むメッシュシートSまでを被覆可能な広さ(この場合、メタルマスクMの外周を含むロの字形状となる)で形成し、コンビネーション部と同時に硬化させることで、当該部分のメッシュシートSの保護膜を形成することができるので、さらにメタルマスク版8の品質を向上させることが可能となる。また、同様にスクリーン枠Fを被覆可能な広さにまで形成すれば、スクリーン枠Fの保護膜を同時に形成することが可能となる。
【0061】
また、メタルマスクMと面状発熱体7の間にマスキング用のシートを介在させると、接着剤6のはみ出しによる両者の接着を防止することが可能である。この場合、マスキングシートは、離型性の高いPTFE製を用いると効果的である。なお、メッシュシートSと弾性支持台5の間も同様である。
【0062】
また、接着剤6がシート状の場合、必ずしも一体的なロの字形状に形成する必要はなく、例えば短冊状に切り出した接着剤6を、メタルマスクMの外周に沿って、ロの字形状に配置する場合も、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0063】
また、
図8、9に示したように、吸気孔31を、被覆シート22に形成して、蛇管Tを介して空気吸引機Pを接続しても、スクリーン枠Fを被覆シート22で押圧できるので、本実施の形態と同様の作用と効果が得られる。この場合、製版台3には、必ずしも吸気孔31を設ける必要はないが、製版台3側にも形成して、被覆シート22側と同時に空気を吸引すれば、より効果的に空気を吸引することができる。すなわち、吸気孔31は製版台3と被覆シート22の一方だけでなく、両方に形成しても良い。また、個数は2個に限られず、1個でも3個以上でもよい。
【0064】
さらに、
図8、9のように、面状発熱体7とメタルマスクMの間に、金属板からなる押圧治具8を設置することで、より効果的にメタルマスクMの外周を押圧することができる。ここで、押圧治具8は、メタルマスクMの外周を含む、ロの字形状に形成して、設置した箇所に圧力が集中するようにして、メタルマスクMを接着剤6、メッシュシートSに有効に押圧できるようにした。押圧治具8は、遮蔽シート22による圧力に変形しない程度の剛性と、面状発熱体7の熱を、メタルマスクMに有効に伝える熱伝導性を有する素材(例えばステンレス、アルミニウム、銅など)で形成することが望ましい。この実施の形態では、厚さ3mmのアルミニウムを用いた。さらに、必ずしも一体的なロの字形状に加工する必要はなく、前述のシート状の接着剤6の場合と同様に、短冊状に切り出したものをメタルマスクMの外周に沿って、ロの字形状に配置してもよい。また、面状発熱体7と被覆シート22の間に配置しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 メタルマスク版製造設備
2 押圧用枠
21 外枠
22 被覆シート
3 製版台
31 吸気孔
4 遮熱シート
5 弾性支持体
6 接着剤
7 面状発熱体
8 押圧治具
F スクリーン枠
M メタルマスク
P 空気吸引機
S メッシュシート