(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080247
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】水槽用気水分離器、およびそれを備えたエアレーション装置
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20220520BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20220520BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20220520BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20220520BHJP
【FI】
A01K63/04 C
A01K63/04 A
B01D19/00 B
B01F1/00 A
B01F3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067885
(22)【出願日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020190935
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520451049
【氏名又は名称】黒木 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 哲也
【テーマコード(参考)】
2B104
4D011
4G035
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CA03
2B104CB41
2B104EB05
4D011AA02
4D011AC03
4D011AC04
4D011AC06
4G035AA01
4G035AB06
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】エアレーションによる水槽内外への水の飛散を防止しつつ、水槽内全体へ適切に水を循環させることが可能な水槽用気水分離器、およびそれを備えたエアレーション装置を提供する。
【解決手段】外郭を構成する筐体10の第1側壁11に、空気供給源Pから揚水パイプ21内に導入される水および空気を第1側壁11に対向する第2側壁12へ向けて筐体10の内空部100に導出させる吐出口部43が設けられ、第2側壁12の下縁寄りの位置に、吐出口部43から導出される水を筐体10外部に流出させる排水孔50が設けられ、筐体10の側壁上縁寄りの位置に、吐出口部43から導出される空気を筐体10外部に排出させる排気孔51が設けられ、筐体10の内底部に、第1側壁11における吐出口部43の下方位置から第2側壁12における排水孔50の下方位置に亘って延長する導水板13が設けられた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内に立設された揚水パイプの上端部に連設され、空気供給源から前記揚水パイプ内に送り込まれる空気とそのエアリフト効果によって前記揚水パイプ内に導入される水とを分離させる水槽用気水分離器であって、
外郭を構成する筐体の第1側壁に、前記揚水パイプ内に導入される前記水および空気を前記第1側壁に対向する前記筐体の第2側壁側へ向けて前記筐体の内空部に導出させる吐出口部が設けられ、
前記第2側壁の下縁寄りの位置に、前記吐出口部から前記内空部に導出される水を筐体外部に流出させる排水孔が設けられ、
前記筐体の少なくとも一の側壁の上縁寄りの位置に、前記吐出口部から前記内空部に導出される空気を筐体外部に排出させる排気孔が設けられ、
前記筐体の内底部に、前記第1側壁における前記吐出口部の下方位置から前記第2側壁における前記排水孔の下方位置に亘って延長する導水板が設けられた、水槽用気水分離器。
【請求項2】
前記第2側壁における前記吐出口部の開口上縁高さより下方位置に、前記排水孔が設けられた、請求項1に記載の水槽用気水分離器。
【請求項3】
前記筐体の側壁外側に、所定の間隔を存して前記排気孔を外側から覆うカバー板が並設された、請求項1または2に記載の水槽用気水分離器。
【請求項4】
前記第1側壁に、筐体外部の水面域の水を前記内空部に流入させる吸水孔が設けられた、請求項1から3のいずれか1項に記載の水槽用気水分離器。
【請求項5】
前記吸水孔から前記排水孔に至る水流路の中間部に、前記吸水孔側から前記排水孔側に向かうにつれて水の流路断面積が小さくなる絞り部が設けられた、請求項4に記載の水槽用気水分離器。
【請求項6】
水槽内に立設され、内部に空気供給源から空気が送り込まれる揚水パイプと、
請求項1から5のいずれか1項に記載の水槽用気水分離器と、を備えた、エアレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観賞魚や水草を育成する水槽において、エアレーションによって生じる水の飛散を防止するための水槽用気水分離器、およびそれを備えたエアレーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
観賞魚や水草を育成する水槽において、外部に設置したエアポンプからエアチューブを介して水中に空気を送り込み、気泡を発生させることによって、水の溶存酸素量を維持する所謂エアレーションを行う方法が広く知られている。
【0003】
また、水槽用のエアレーション装置として、水槽内に立設される揚水パイプと、揚水パイプの下端部に連設される底面フィルターやスポンジフィルターなどのフィルターとを備え、揚水パイプ内でエアレーションを行い、その気泡が揚水パイプ内を上昇する際に生じる水の上昇流、即ち、エアリフト効果によって水槽内の水をフィルターを通して揚水パイプ内に導入し、上端部から再び水槽内へ導出させる所謂エアリフト式の濾過装置が知られている(例えば、特許文献1~3)。
【0004】
特許文献1および2の濾過装置は、揚水パイプの上端部に吐出パイプが連設されており、上記のように揚水パイプ内に導入された水は、吐出パイプの側面部に設けられた吐出口から気泡と共に水面に沿って流出される。さらに、水面に沿って流出された水は、水槽の内側面を伝って底面側へ導かれ、再びフィルターを通して揚水パイプ内へ吸い込まれる。これにより、水槽内全体で水の循環流が形成されるから、水の溶存酸素量を適切に維持しつつ、効率良く水を濾過することができる。
【0005】
特許文献3の濾過装置は、揚水パイプの上端部に、蓋付き容器状の濾過室が連設されており、上記のように揚水パイプ内に導入された水は、揚水パイプの上端開口部から気泡と共に濾過室内に導入された後、濾過室内に収容された濾過材を通って濾過室底部の濾過水放出孔から水槽内に流出される。これにより、水槽の水をより効率的に濾過することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-146773号
【特許文献2】特開平5-168824号
【特許文献3】特開2005-58201号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2の濾過装置では、揚水パイプ内で発生させた多量の気泡が、吐出パイプからそのまま水流に乗って水槽内に導出され、水面で弾けて水を飛散させるから、水槽の上枠やガラス面、水槽上部に設置される照明器具等の表面に、カルシウム成分など水中の汚れが付着堆積したり、カビが発生したりする原因となっていた。
【0008】
一方、特許文献3の濾過装置の場合、揚水パイプ内で発生させた気泡は、水と共に一旦濾過室内に導入され、濾過材を通過する際に水と分離されるから、気泡の弾けに起因する水槽内外への水の飛散は抑制可能と考えられる。しかし一方で、濾過室内に導入された水は、濾過材を通して濾過室底部の濾過水放出孔からその下方へ流出されるから、水槽内全
体へ水が循環し難く、水の澱み部ができてしまい、かえって水質を低下させる虞があった。
【0009】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、エアレーションによる水槽内外への水の飛散を防止しつつ、水槽内全体へ適切に水を循環させることが可能な水槽用気水分離器、およびそれを備えたエアレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の水槽用気水分離器、およびそれを備えたエアレーション装置は、以下の技術的手段を講じている。
【0011】
本発明の水槽用気水分離器は、水槽内に立設された揚水パイプの上端部に連設され、空気供給源から前記揚水パイプ内に送り込まれる空気とそのエアリフト効果によって前記揚水パイプ内に導入される水とを分離させる水槽用気水分離器であって、外郭を構成する筐体の第1側壁に、前記揚水パイプ内に導入される前記水および空気を前記第1側壁に対向する前記筐体の第2側壁側へ向けて筐体内部に導出させる吐出口部が設けられ、前記第2側壁の下縁寄りの位置に、前記吐出口部から導出される水を筐体外部に流出させる排水孔が設けられ、前記筐体の少なくとも一の側壁の上縁寄りの位置に、前記吐出口部から導出される空気を筐体外部に排出させる排気孔が設けられ、前記筐体の内底部に、前記第1側壁における前記吐出口部の下方位置から前記第2側壁における前記排水孔の下方位置に亘って延長する導水板が設けられたことを特徴としている。また、本発明のエアレーション装置は、水槽内に立設され、内部に空気供給源から空気が送り込まれる揚水パイプと、上記水槽用気水分離器とを備えたことを特徴としている。
【0012】
好ましくは、前記第2側壁における前記吐出口部の開口上縁高さより下方位置に、前記排水孔が設けられる。
【0013】
好ましくは、前記筐体の側壁外側に、所定の間隔を存して前記排気孔を外側から覆うカバー板が並設される。
【0014】
好ましくは、前記第1側壁に、筐体外部の水面域の水を前記内空部に流入させる吸水孔が設けられる。
【0015】
さらに好ましくは、前記吸水孔から前記排水孔に至る水流路の中間部に、前記吸水孔側から前記排水孔側に向かうにつれて水の流路断面積が小さくなる絞り部が設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水槽用気水分離器、およびそれを備えたエアレーション装置によれば、エアリフト効果によって揚水パイプから吐出口部を通じて筐体内に導出される水は、筐体内底部の導水板上に流下した後、そのまま導水板に沿って導出方向、即ち、第2側壁側へ導かれ、第2側壁の排水孔を通じて筐体外部へ流出されるから、水槽内全体に適切な循環水流を形成させることができる。一方、吐出口部から水と共に筐体内に導出される気泡は、導水板上に流下する際にその流水の水面側へ浮かび上がり、第2側壁側へ流れる間に弾けて、筐体内部で消失する。これにより、水面での気泡の弾けに起因する水槽内外への水の飛散も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の水槽用気水分離器を備えたエアレーション装置の設置状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態の水槽用気水分離器の一部断面斜視概略図である。
【
図3】第1実施形態の水槽用気水分離器の側方視縦断面概略図である。
【
図4】第1実施形態の水槽用気水分離器の前方視縦断面概略図である。
【
図5】第2実施形態の水槽用気水分離器の側方視縦断面概略図である。
【
図6】第2実施形態の水槽用気水分離器の一部断面斜視概略図である。
【
図7】第2実施形態の水槽用気水分離器の後方斜視概略図である。
【
図8】第2実施形態の水槽用気水分離器の下方視横断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る水槽用気水分離器、およびそれを備えたエアレーション装置を、図面に基づき説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、第1実施形態のエアレーション装置2は、水槽3内に立設された揚水パイプ21の下端部に底面フィルターやスポンジフィルターなどのフィルター23が設けられ、揚水パイプ21内で気泡を発生させることにより、水槽3内の水をフィルター23を介して循環させるエアリフト式の濾過装置である。
【0020】
詳述すると、上記エアレーション装置(以下、「濾過装置」という)2は、水槽3の内部に立設される揚水パイプ21と、揚水パイプ21の下端部に連設される連結パイプ22と、連結パイプ22の下端部に連設されるフィルター(本実施形態では、スポンジフィルター)23と、揚水パイプ21の上端部に連設される吐出パイプ24および水槽用気水分離器1と、を備えている。なお、揚水パイプ21は、図示しない単数または複数の吸盤によって水槽3の内壁面に支持固定される。
【0021】
揚水パイプ21は、外パイプ21Aおよび内パイプ21Bからなる内外二重構造の管体であり、両パイプ21A,21B相互を上下に摺動させることによって伸縮するように構成されている。本実施形態では、外パイプ21Aが揚水パイプ21の下側部分、内パイプ21Bが揚水パイプ21の上側部分を構成しており、外パイプ21Aの下端部に連結パイプ22が連設され、内パイプ21Bの上端部に吐出パイプ24および水槽用気水分離器1が連設される。なお、内パイプ21Bの外径は、外パイプ21Aの内径と略同一に形成されている。従って、両パイプ21A,21Bを上下摺動させたとき、内パイプ21Bは、両パイプ21A,21Bの重なり面相互の接触摩擦力によって、外パイプ21Aの内側に保持される。
【0022】
連結パイプ22は、上端部に外パイプ21Aが接続され、下端部には、下側方に向かって略L字状に折曲する吸込口部41が設けられている。フィルター23は、吸込口部41の先端側外周に環装される。図示しないが、吸込口部41の周面には、多数の通水孔が形成されており、フィルター23を通過した水槽3内の水は、上記通水孔を通って連結パイプ22内に導入される。
【0023】
連結パイプ22の側面部には、エアチューブ25を接続可能なチューブ接続口部42が設けられており、水槽3の外部に設置され、揚水パイプ21内に空気を送り込むための空気供給源としてのエアポンプPは、エアチューブ25を介してチューブ接続口部42に接続される。図示しないが、連結パイプ22の内周面には、チューブ接続口部42の先端開口に繋がる空気導出孔が設けられており、エアポンプPからエアチューブ25を通じてチューブ接続口部42の先端開口に供給される空気は、上記空気導出孔から小さな気泡となって連結パイプ22内に放出される。
【0024】
また、連結パイプ22内に放出された空気(気泡)は、揚水パイプ21の内部空間を上
昇して水の上昇流を発生させる。そしてこのエアリフト効果によって、水槽3内の水がフィルター23を通して連結パイプ22内に吸い込まれる。さらに、連結パイプ22に吸い込まれた水は、上記気泡と共に揚水パイプ21内を上昇し、吐出パイプ24へ導かれる。これにより、水槽3の水が濾過される。また、上記のように揚水パイプ12内にてエアレーションを行うことによって、水槽3内の水の溶存酸素量も適切に維持される。
【0025】
吐出パイプ24は、略逆L字状に折曲形成された管体であり、その下端部に揚水パイプ21の内パイプ21Bの上端部が接続される。吐出パイプ24の側端部(以下、「吐出口部」という)43は、吐出パイプ24の側面上部から側方に向かって略水平に延長形成されており、水槽用気水分離器1の外郭を構成する筐体10にその外側後方から貫挿されている。
【0026】
吐出口部43の先端開口430は、筐体10の内空部(以下、「分離室」という)100に配されており、上記のように吐出パイプ24へ導かれた水および空気は、吐出口部43の先端開口430から分離室100内に導出される。
【0027】
図2~
図4に示すように、水槽用気水分離器1は、略矩形箱状の筐体10と、筐体10を揚水パイプ21に支持する支持板部40とを備えており、支持板部40に開設されたパイプ挿通孔400に揚水パイプ21の内パイプ21Bが貫挿され、且つ筐体10の後壁(以下、「筐体後壁」という)11に開設された管接続孔110に吐出パイプ24の吐出口部43が貫挿されることによって、揚水パイプ21の上端部に連設支持されている。
【0028】
なお、本実施形態では、吐出口部43の延長方向を筐体10の前後方向、上記延長方向と水平に直交する方向を筐体10の左右方向、上記延長方向と鉛直に直交する方向を筐体10の上下方向とする。
【0029】
筐体後壁11の上縁部には、管接続孔110に挿通される吐出口部43の前端より前方へ略水平に延出し、吐出口部43の先端開口430を上方から覆う庇板111が設けられている。庇板111の前縁部には、上方へ略鉛直に起立する庇前壁112が設けられている。上記のように先端開口430の上方位置に庇板111が設けられていることで、吐出口部43から気泡と共に水が導出される際に、先端開口430付近からその上方へ水が飛散するのを抑制できる。
【0030】
筐体後壁11の管接続孔110は、分離室100の上下左右間の略中央位置に開設されている。即ち、吐出口部43の先端開口430は、分離室100の上下左右間の略中央位置に配されている。
【0031】
筐体10の第2側壁としての前壁(以下、「筐体前壁」という)12は、第1側壁としての筐体後壁11の前方に対向して立設されている。筐体前壁12の上下間の中央より下方位置には、吐出口部43から分離室100内に導出された水を筐体10の外部に流出させる排水孔として、上下に長い複数本の細幅直線状のスリット(以下、「排水スリット」という)50が開設されている。即ち、排水スリット50は、吐出口部43の先端開口430における上下間の中央より下方、即ち、先端開口430の上縁より下方の高さ位置に配設されている。
【0032】
排水スリット50は、筐体前壁12における左右間の略全域に左右略等間隔で並設されている。また、排水スリット50は、筐体前壁12の下略半域に形成されており、その下端は、筐体10の底壁(以下、「筐体底壁」という)13と略一致する位置に配されている。従って、吐出口部43から分離室100内に導出される水は、排水スリット50を通って筐体10の外部へ円滑に流出する。
【0033】
本実施形態の水槽用気水分離器1は、排水スリット50が水中に全没し、且つ分離室100の略上半域に空間が画成される高さに設置して使用されることを想定して設計されている(
図1~3参照)。このように設置することで、分離室100内に導出される水に残留する気泡が排水スリット50を抜けて外部に流出したり、分離室100の内圧が上昇し過ぎて気泡が大きく膨れ上がり、水と共に排気スリット51から外部に溢れ出したりするのを効果的に防止できる。また、水槽用気水分離器1を上記の高さ位置に設定することで、排水スリット50から筐体10の外部に流出する水が、水槽3内の水面WLに沿って水槽3の一の内壁面側へ流れるから、水槽3内全体への水の循環が促進される。なお、水槽用気水分離器1の設置高さは、揚水パイプ21を上下に伸縮させることによって調整できる。
【0034】
筐体前壁12の上縁寄りの位置には、吐出口部43から筐体10の分離室100内に導出された空気を筐体10の外部に排出させる排気孔として、左右に長い一本の細幅直線状のスリット(以下、「排気スリット」という)51が開設されている。排気スリット51は、筐体前壁12における左右間の略全域に亘って延設されている。
【0035】
排気スリット51は、筐体10の左右の側壁(以下、「筐体側壁」という)14および筐体後壁11の前方上部に設けられた庇前壁112にも同様に設けられている。筐体側壁14の排気スリット51は、筐体側壁14における前後間の略全域に亘って延設され、庇前壁112の排気スリット51は、庇前壁112における左右間の略全域に亘って延設されている。筐体前壁12の排気スリット51を含め、これらの排気スリット51は、全て同一の高さ位置に設けられている。即ち、排気スリット51は、吐出口部43の先端開口430より上方、分離室100の上域を全周に亘って囲うように配置されている。
【0036】
筐体底壁13は、筐体後壁11における管接続孔110の下方位置、即ち、吐出口部43の下方位置から筐体前壁12における排水スリット50の下方位置に亘って略水平に延出形成されている。従って、吐出口部43から筐体10内に導出される水は、筐体底壁13の上面部に沿って排水スリット50へ円滑に導かれる。即ち、筐体10の内底部を構成する筐体底壁13が、吐出口部43から筐体10内に導出された水を排水スリット50へ導く導水板となる。なお、揚水パイプ21に連結させる支持板部40は、筐体底壁13の後縁部から筐体10の後方に向かって延出形成されている。
【0037】
筐体底壁13の前縁部は、筐体前壁12の外側面より外側へ略水平に延出形成されており、排水スリット50の下方位置に、筐体10の外側前方に向かって延出する板体(以下、「前端板」という)113を形成している。左右の筐体側壁14の前縁部も同様、筐体前壁12の外側面より外側へ略水平に延出形成されており、上記前端板113の左右位置にて起立する板体(以下、「側端板」という)114を形成している。従って、分離室100内から排水スリット50を通じて流出する水は、前端板113および側端板114に沿って筐体10の前方へ円滑に導かれる。
【0038】
筐体10の上壁(以下、「筐体上壁」という)15は、筐体底壁13の上方に対向して設けられており、分離室100の上域を上方から覆っている。筐体上壁15の周縁部は、庇前壁112や筐体前壁12、筐体側壁14より外側まで延出形成されており、その周縁部には、上記各側壁112,12,14に設けられた排気スリット51に外周側から所定の間隔Sを存して対向する帯状のカバー板115が設けられている。従って、分離室100内から各排気スリット51を通じて排出される空気は、カバー板115の内側の間隙Sを通って筐体10の外部へ排出される。
【0039】
このように、本実施形態の水槽用気水分離器1を備えた濾過装置2によれば、揚水パイ
プ21から吐出口部43を通じて筐体10の分離室100内に導出される水は、筐体底壁13上に流下した後、そのまま筐体底壁13の上面に沿って導出方向、即ち、筐体前壁12側へ導かれ、筐体前壁12の下縁寄りの位置に設けられた排水スリット50を通じて筐体10の外部へ流出されるから、水槽3内の全体に適切な循環水流を形成させることが可能である。これにより、水の溶存酸素量を適切に維持しつつ、効率良く水を濾過することができる。
【0040】
一方、吐出口部43から水と共に分離室100内に導出される気泡は、筐体底壁13上へ流下する際にその流水の水面側へ浮かび上がり、筐体前壁12に達するまでの間、或いは筐体前壁12に達した際に弾けて、分離室100内で消失する。これにより、水槽3の内外への水の飛散も確実に防止できる。よって、上記のようにエアレーションを行っても、水槽3内外が汚れ難い。
【0041】
しかも、上記のように、排水スリット50が水中に全没され、且つ分離室100の略上半域に空間が画成される高さに水槽用気水分離器1が設置されていれば、分離室100内の水面WL上を流れて筐体前壁12に達した気泡は、筐体前壁12における排水スリット50の上方位置にて堰き止められ、筐体10外部への流出が阻止される。従って、気泡の弾けに起因する水槽3の内外への水の飛散をより確実に防止できる。なお、本実施形態の水槽用気水分離器1の場合、排水スリット50が上下に長い細幅直線状に形成されているから、たとえ水槽3内の水位の低下や水槽用気水分離器1の設置高さの設定によって、排水スリット50の一部(上端部)が水面WLの上方へ露出した状態であっても、筐体前壁12に達した気泡は、排水スリット50の周縁部に吸着され、筐体10外部への流出が妨げられる。
【0042】
また、このものでは、吐出口部43の先端開口430における上下間の中央より下方の高さ位置に排水スリット50が配設されているから、水面WLが上記先端開口30の上下間の略中央の高さ位置になるように水槽用気水分離器1の設置高さを調整すれば、排水スリット50が水中に全没し、且つ分離室100の略上半域に空間が画成された状態にすることが可能である。
【0043】
さらに、このものでは、筐体10の庇前壁112、筐体前壁12、および筐体側壁14の各側壁の外側に、所定の間隔Sを存して排気スリット51を外側から覆うカバー板115が並設されているから、分離室100の内圧が上昇し、排気スリット51の近傍で気泡が弾けたときに、排気スリット51を通じて直接的に水が筐体10の外側へ飛散するのも確実に防止できる。
【0044】
ところで、観賞魚や水草を育成する水槽では、生体の排泄物や餌に含まれる油成分等が水面で凝結して油膜化する場合があるが、上記油膜は、水中の溶存酸素量を低下させ、アンモニアや亜硝酸の分解に寄与する好気性バクテリアの活動を阻害する原因となる。従って、できる限り水面に油膜が形成されないよう、水槽内全体で水を循環させ、濾過効率を高めることが望ましい。しかしながらそれでもなお、水面に油膜が形成された場合、その水面に浮遊する油膜は、水槽内の循環水流だけでは十分に分解されない。
【0045】
〔第2実施形態〕
そこで、
図5~8に示すように、第2実施形態の水槽用気水分離器6では、筐体60の第1側壁としての筐体後壁61に吸水孔52,53が設けられ、水槽3内の水面WL域の水を吸水孔52,53から筐体60の内空部(分離室)600に流入させることで、水面WLに形成された油膜を筐体60内で撹拌し、分解するようにしている。
【0046】
詳述すると、本実施形態の水槽用気水分離器6は、略矩形箱状の筐体60と、筐体60
を揚水パイプ21の上端部の吐出パイプ24に支持する支持枠部80とを備えており、上記水槽用気水分離器6、吐出パイプ24、揚水パイプ21、さらには連結パイプ22、およびフィルター23によって、第1実施形態の濾過装置2と同様のエアリフト式の濾過装置7を構成する。
【0047】
なお、本実施形態の濾過装置7では、揚水パイプ21内にエアパイプ26が挿通されており、エアチューブ25は、エアパイプ26の上端部に接続される。また、図示しないが、エアパイプ26の下端部には、エアストーンが連設されている。従って、エアポンプPからエアチューブ25を通じてエアパイプ26の上端部に供給される空気は、エアストーン表面の複数の空気孔から小さな気泡となって揚水パイプ21内に放出される。これにより、第1実施形態の濾過装置2と同様、水槽3内の水がフィルター23を介して循環され、濾過されるとともに、エアレーションにより水中の溶存酸素量も適切に維持される。
【0048】
吐出パイプ24は、略逆L字状に折曲形成された管体であり、その下端部に揚水パイプ21が接続される。本実施形態の吐出パイプ24の吐出口部43は、断面略矩形筒状に形成されており、支持枠部80の後部開口800に外側後方から貫挿される。また、吐出パイプ24の上部には、小径の連結孔44が貫設されており、エアチューブ25の接続口部となるエアパイプ26の上端部は、連結孔44を通じて吐出口部43の上部に突出されている。従って、本実施形態では、連結パイプ22にチューブ接続口部42や空気導出孔が設けられていなくてもよい。
【0049】
なお、本実施形態では、吐出口部43の延長方向を筐体60の前後方向、上記延長方向と水平に直交する方向を筐体60の左右方向、上記延長方向と鉛直に直交する方向を筐体60の上下方向とする。
【0050】
支持枠部80は、前後に開口し、且つ左右幅寸法が筐体60の左右幅寸法より小さい略矩形筒状に形成されており、吐出パイプ24の吐出口部43を、枠部上板81、枠部下板83、および左右の枠部側板84によって上下左右から挟み付けるようにして保持する。
【0051】
支持枠部80は、筐体後壁61における上下左右間の略中央位置に連設されている。従って、支持枠部80の後部開口800に貫挿される吐出口部43の先端開口430は、分離室600の上下左右間の略中央位置に配される。
【0052】
枠部上板81には、上記連結孔44に対向して小径の貫通孔85が設けられており、吐出口部43の上部に突設されるエアパイプ26の上端部は、上記貫通孔85に挿通され、支持枠部80の上方に突出する。
【0053】
枠部上板81は、前端部が筐体後壁61の上壁面部(以下、「筐体上後壁」という)611の下縁部に沿って連結支持されている。一方、枠部下板83は、前後間の中央部が筐体後壁61の下壁面部(以下、「筐体下後壁」という)612の上縁部に沿って連結支持されている。
【0054】
枠部上板81は、後部開口800に貫挿される吐出口部43の前端より前方へ略水平に延出形成され、吐出口部43の先端開口430を上方から覆っている。これにより、吐出口部43から分離室600内に水が導出される際に、先端開口430付近からその上方へ水が飛散するのを抑制できる。
【0055】
枠部下板83の前板部830は、筐体下後壁612の上縁から分離室600の下域へ向かって斜め下方に延長形成されている。これにより、吐出口部43の先端開口430から導出された水は、上記前板部(以下、「傾斜板」という)830の上面に沿って筐体底壁
63の上面前方へ導かれる。
【0056】
筐体上後壁611は、筐体上壁65の後縁部やや前寄りの位置に立設されている。一方、筐体下後壁612は、筐体底壁63の後縁部に沿って立設されている。このように、筐体下後壁612は、筐体上後壁611より後方へオフセットした位置に配されている。また、筐体下後壁612は、筐体60の左右幅より小幅に形成されており、左右の枠部側板84相互間に亘って延設されている。なお、本実施形態において、第1側壁としての筐体後壁61には、筐体上後壁611や筐体下後壁612だけでなく、左右の筐体側壁64の後端面、およびそれら後端面を枠部側板84側へ水平方向に延長した仮想平面(後述する吸水孔53の形成面)も含まれる。
【0057】
筐体60の第2側壁としての筐体前壁62には、吐出口部43の先端開口430より下方の高さ位置、即ち、筐体前壁62の上下間の中央より下方位置に、吐出口部43から分離室600内に導出された水を筐体60の外部に流出させる排水孔として、上下に長い複数本の細幅直線状の排水スリット50が開設されている。
【0058】
排水スリット50は、筐体前壁62における左右間の略全域に左右略等間隔で並設されている。また、排水スリット50は、下端が筐体底壁63と略一致し、且つ上端が吐出口部43の先端開口430の下縁より下方、より具体的には、傾斜板830の前端高さと略一致する長さに形成されている。
【0059】
筐体底壁63は、筐体下後壁612の下端から傾斜板830の下方を通り、筐体前壁62の下端、即ち、排水スリット50の下方位置に向かって略水平に延出形成されている。従って、吐出口部43から分離室600内に導出される水は、傾斜板830の上面に沿って前方へ流れ、さらには筐体底壁63の上面に沿って排水スリット50へ円滑に導かれる。即ち、筐体60の内底部を構成する筐体底壁63が、吐出口部43から筐体60内に導出された水を排水スリット50へ導く導水板となる。
【0060】
筐体底壁63および左右の筐体側壁64の前縁部は何れも、第1実施形態の濾過装置2と同様、筐体前壁62の外側面より外側へ略水平に延出形成されており、排水スリット50の外側に、前端板613および側端板614を形成している。従って、分離室600内から排水スリット50を通じて流出する水は、前端板613および側端板614に沿って筐体60の前方へ円滑に導かれる。
【0061】
筐体上後壁611には、吐出口部43から分離室600内に導出された空気を筐体60の外部に排出させる排気孔として、左右に長い一本の細幅直線状の排気スリット51が開設されている。この排気スリット51は、筐体上後壁611における左右間の略全域に亘って延設されている。
【0062】
筐体前壁62における上記排気スリット51の前方対向位置にも同様に、左右に長い一本の細幅直線状の排気スリット51が開設されている。この排気スリット51は、筐体前壁62の上縁寄りの位置において、左右間の略全域に亘って延設されている。
【0063】
このように、本実施形態では、吐出口部43の先端開口430より上方、分離室600の上域における前後位置に排気スリット51が設けられている。なお、筐体上壁65の後縁部および前縁部にはそれぞれ、排気スリット51に外側から所定の間隔Sを存して対向する帯状のカバー板615が立設されており、分離室600内から各排気スリット51を通じて排出される空気は、カバー板615の内側の間隙Sを通って筐体60の外部へ排出される。
【0064】
筐体下後壁612には、水槽3内の水面WL域の水を分離室600に流入させる吸水孔として、上下に長い複数本の細幅直線状のスリット(以下、「第1吸水スリット」という)52が開設されている。筐体側壁64の後縁部と支持枠部80の左右の側板(以下、「枠部側板」という)84との間にも、水槽3内の水面WL域の水を分離室600に流入させる吸水孔として、上下に長い細幅直線状の間隙(以下、「第2吸水スリット」という)53が開設されている。
【0065】
第1吸水スリット52は、筐体下後壁612における左右間の略全域に左右略等間隔で並設されている。また、第1吸水スリット52は、下端が筐体底壁63と略一致し、且つ上端が筐体下後壁612の上縁と略一致する長さに形成されている。
【0066】
第2吸水スリット53は、筐体側壁64の後縁部に沿って、筐体底壁63の上面から枠部上板81の上面高さに至る長さに形成されている。従って、仮に水面WLが筐体下後壁612の上縁より上方となる高さ位置に設定され、第1吸水スリット52が水中に没しても、第2吸水スリット53は、少なくともその上端の一部を水面WL上に露出させておくことができる。
【0067】
また、上記のように、筐体後壁61に吸水スリット52,53が設けられていることで、吐出口部43から分離室600内に導入された水が筐体底壁63に沿って排水スリット50側(下流側)へ流れるときのドラフト力によって、水槽3内の水面WL域の水が、吸水スリット52,53を通して分離室600内に吸い込まれる。従って、水面WLに油膜が浮遊している場合には、その油膜も水と共に分離室600内に吸い込まれる。そして、分離室600内に吸い込まれた油膜は、吐出口部43から傾斜板830に沿って筐体底壁63上に流下する水および気泡によって撹拌され、微小粒子に分解される。また、上記のように筐体60内で微小粒子化された油成分は、水と共に排水スリット50を通じて筐体60の外部に流出し、水槽3内を循環する間に、水中や土中、フィルター内のバクテリアによって効率良く分解除去される。
【0068】
枠部下板83の傾斜板830は、第1吸水スリット52の上方位置から分離室600の下域へ向かって斜め下方に延設されており、傾斜板830と筐体底壁63との間隙の上下幅を、第1吸水スリット52側から排水スリット50側に向かって徐々に狭くしている。即ち、傾斜板830は、第1吸水スリット52から排水スリット50に至る水流路の中間部に、上流側(第1吸水スリット52側)から下流側(排水スリット50側)に向かうにつれて水の流路断面積が小さくなる絞り部602を画成している。この絞り部602によって、上記のように第1吸水スリット52から吸い込まれた水が排水スリット50側へ流れる際に、第1吸水スリット52側の空間と排水スリット50側の空間とで圧力差が生じ、上記ドラフト力が増加されるから、水面WL域の水がより確実に第1吸水スリット52から分離室600内に吸い込まれる。
【0069】
筐体側壁64の内側面における枠部側板84との対向位置には、筐体側壁64の内側面から枠部側板84側に向かって斜め前方に突出する傾斜面部66が形成されており、傾斜面部66と枠部側板84との間隙の左右幅を、第2吸水スリット53側から排水スリット50側に向かって徐々に狭くしている。即ち、傾斜面部66は、第2吸水スリット53から排水スリット50に至る水流路の中間部に、上流側(第2吸水スリット53側)から下流側(排水スリット50側)に向かうにつれて水の流路断面積が小さくなる絞り部603を画成している。この絞り部603によって、上記のように第2吸水スリット53から吸い込まれた水が排水スリット50側へ流れる際に、第2吸水スリット53側の空間と排水スリット50側の空間とで圧力差が生じ、上記ドラフト力が増加されるから、水面WL域の水がより確実に第2吸水スリット53から分離室600内に吸い込まれる。
【0070】
本実施形態の水槽用気水分離器6は、排水スリット50が水中に全没し、且つ第1吸水スリット52の上端側の一部が水面WLより上方に露出する高さ、即ち、水面WLが排水スリット50の上端より上方で且つ第1吸水スリット52の上端より下方となる高さに設置して使用されることを想定して設計されている(
図5参照)。このように設置することで、分離室600の上側略3/4の範囲に空間が画成されるから、実施形態の水槽用気水分離器1と同様、気泡が排水スリット50を抜けて外部に流出したり、分離室600の内圧上昇に伴って膨れ上がり、水と共に排気スリット51から外部に溢れ出したりするのを効果的に防止できる。また、排水スリット50から水槽3内の水面WLに沿って水槽3の一の内壁面側に向かって排出される水の流れによって、水槽3内全体への水の循環を促進させることもできる。なお、水槽用気水分離器6の設置高さは、揚水パイプ21を上下に伸縮させることによって調整できる。
【0071】
しかも、上記のように設置することで、第2吸水スリット53だけでなく、第1吸水スリット52の上端側の一部も水面WLより上方に露出するから、水面WLに浮遊する油膜を分離室600内へより確実に吸い込むことができる。
【0072】
このように、本実施形態の水槽用気水分離器6を備えた濾過装置7によれば、第1実施形態の濾過装置2と同様、吐出口部43から筐体60の分離室600内に導出される水は、筐体底壁63の上面に沿って筐体前壁62の排水スリット50から筐体60の外部へ流出されるから、水槽3内の全体に適切な循環水流を形成させることが可能である。また、吐出口部43から水と共に分離室600内に導出される気泡は、筐体底壁63上へ流下する際に水と分離され、分離室600内で消失するから、気泡の弾けに起因する水槽3の内外への水の飛散も確実に防止できる。
【0073】
しかも、上記のように、排水スリット50が水中に全没され、且つ分離室600の上側略3/4の範囲に空間が画成される高さに水槽用気水分離器6が設置されていれば、第1実施形態の濾過装置2と同様、筐体前壁62に達した気泡が排水スリット50から筐体10外部へ流出するのが阻止されるから、気泡の弾けに起因する水槽3の内外への水の飛散をより確実に防止できる。
【0074】
さらに、このものでは、筐体上壁65の後縁部および前縁部に沿ってそれぞれ、所定の間隔Sを存して排気スリット51を外側から覆うカバー板615が立設されているから、第1実施形態の濾過装置2と同様、排気スリット51を通じて直接的に水が筐体60の外側へ飛散するのも確実に防止できる。
【0075】
また、このものでは、水面WLに油膜が浮遊している場合、その油膜を吸水スリット52,53から分離室600内へ水面WL域の水と共に吸い込み、分離室600内で分解することができるから、水槽3内の水の溶存酸素量をより適切に維持することができる。よって、水質が一層向上する。
【0076】
しかも、上記のように、第1吸水スリット52の上端側の一部が水面WLより上方に露出する高さに水槽用気水分離器6が設置されていれば、第2吸水スリット53だけでなく、第1吸水スリット52からも水面WLに浮遊する油膜を分離室600内へ流入させることができるから、より確実に油膜を分解させることが可能となる。また、仮に第1吸水スリット52が水中に全没していても、第1吸水スリット52より上方に延設される第2吸水スリット53を通して水面WLに浮遊する油膜を分離室600内へ流入させることができるから、確実に油膜を分解させることが可能となる。
【0077】
また、このものでは、吸水スリット52、53の下流側に絞り部602,603を設けたことで、吸水スリット52,53からの水の吸込力が増加するから、水面WLに浮遊す
る油膜を分離室600内へより確実に吸い込み、分解することが可能となる。
【0078】
なお、第1実施形態では、筐体10の庇前壁112、筐体前壁12、および筐体側壁14の各側壁に排気スリット51が設けられたものを説明したが、分離室100内から筐体10の外部へ確実に空気が排出されれば、筐体10の庇前壁112、筐体前壁12、および筐体側壁14のいずれか一側壁にのみ排気スリット51が設けられたものとしてもよいし、所定の複数の側壁(例えば、左右の筐体側壁14のみ)に排気スリット51が設けられたものとしてもよい。
【0079】
また、上記各実施形態では、筐体10,60と吐出パイプ24とが別体で構成されたものを説明したが、筐体後壁11,61に、吐出パイプ24に相当する略逆L字状のパイプ接続口部が一体形成されており、上記パイプ接続口部の下端部に揚水パイプ21の上端部が連結され、揚水パイプ21内に導入される水および空気を、パイプ接続口部側面の吐出口部から分離室100,600へ導出させるように構成されたものとしてもよい。このものにおいても、上記各実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0080】
また、上記各実施形態では、水槽用気水分離器1,6を備えたエアレーション装置として、揚水パイプ21の下端部にフィルター23が設けられたエアリフト式の濾過装置2,7を説明したが、水槽用気水分離器1,6は、揚水パイプ21の下端部に底面フィルターやスポンジフィルターなどのフィルターが設けられていないエアレーション装置に用いることもできる。このようにフィルター機能を備えていないエアレーション装置においても同様に、水槽3内の全体に適切な循環水流を形成させることが可能であるから、水の溶存酸素量を適切に維持することができる。また、エアレーションに起因する水槽3内外の汚れも防止できる。また、第2実施形態の水槽用気水分離器6を備えたエアレーション装置においては、水面WLに浮遊する油膜を分解することも可能であるから、水の溶存酸素量をより適切に維持することができる。
【0081】
また、第1実施形態では、水槽用気水分離器1を備えたエアレーション装置として、連結パイプ22のチューブ接続口部42にエアチューブ25が接続され、連結パイプ22の図示しない空気導出孔から揚水パイプ21内に空気を供給するように構成されたものを説明したが、揚水パイプ21内にエアチューブ25が挿通され、そのエアチューブ25の先端にエアストーンが連結され、上記エアストーンから揚水パイプ21内に空気を供給するように構成されたものとしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,6 水槽用気水分離器
2,7 濾過装置(エアレーション装置)
3 水槽
10,60 筐体
11,61 筐体後壁(第1側壁)
12,62 筐体前壁(第2側壁)
13,63 筐体底壁(導水板)
14,64 筐体側壁
15,65 筐体上壁
21 揚水パイプ
22 連結パイプ
23 フィルター
24 吐出パイプ
43 吐出口部
50 排水スリット(排水孔)
51 排気スリット(排気孔)
52 第1吸水スリット(吸水孔)
53 第2吸水スリット(吸水孔)
100 分離室(内空部)
115 カバー板
P エアポンプ(空気供給源)
WL 水面