(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080263
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】車体の接合位置の最適化解析方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/23 20200101AFI20220520BHJP
G06F 30/15 20200101ALI20220520BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20220520BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/15
G06F30/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145145
(22)【出願日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020190719
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】時田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 孝信
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 毅
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA05
5B146DC04
5B146DC05
5B146DJ02
5B146DJ07
(57)【要約】
【課題】疲労寿命と剛性を向上させる最適接合点の位置を求める車体の接合位置の最適化解析方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る車体の接合位置の最適化解析方法は、複数の部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点が設定された車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定するステップ(S1)と、解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定するステップ(S3)と、解析対象モデルの応力解析を行うステップ(S5)と、初期接合点の疲労寿命を算出し目標疲労寿命を設定するステップ(S7)と、解析対象モデルに接合候補点を設定して最適化解析モデルを生成するステップ(S9)と、接合候補点の点数と接合候補点の疲労寿命と最適化解析モデルの剛性に関する最適化解析条件である目的関数又は制約条件を設定するステップ(S11)と、最適化解析条件を満たす接合候補点を最適接合点として求めるステップ(S13)を含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁要素、平面要素及び/又は立体要素からなる複数の部品モデルを有してなり、複数の前記部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点を有する自動車の車体モデルの全部又は一部について、コンピュータが以下の各ステップを実行し、前記部品組みを接合する最適接合点の位置を求める最適化解析を行う車体の接合位置の最適化解析方法であって、
前記車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定する解析対象モデル設定ステップと、
前記解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定する荷重・拘束条件設定ステップと、
前記荷重条件及び拘束条件を前記解析対象モデルに与えて応力解析を行う応力解析ステップと、
前記応力解析の結果を用いて前記解析対象モデルの前記各初期接合点の疲労寿命を算出し、算出した前記各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定する目標疲労寿命設定ステップと、
前記解析対象モデルに対して前記部品組みを接合する前記最適接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ステップと、
前記接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、前記目標疲労寿命設定ステップにおいて設定した前記目標疲労寿命に基づいて前記最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した前記接合候補点の疲労寿命に関する条件と、前記最適化解析モデルの剛性に関する条件と、前記残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定する最適化解析条件設定ステップと、
前記荷重・拘束条件設定ステップにおいて設定した前記拘束条件に基づく前記荷重条件を前記最適化解析モデルに与え、前記最適化解析条件の下で最適化解析を行い、該最適化解析において残存した接合候補点を前記部品組みを接合する最適接合点として求める最適化解析ステップと、を含むことを特徴とする車体の接合位置の最適化解析方法。
【請求項2】
前記最適化解析ステップは、密度法によるトポロジー最適化を行うものであり、該トポロジー最適化においてペナルティ係数を4以上に設定して離散化することを特徴とする請求項1に記載の車体の接合位置の最適化解析方法。
【請求項3】
梁要素、平面要素及び/又は立体要素からなる複数の部品モデルを有してなり、複数の前記部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点を有する自動車の車体モデルの全部又は一部について、コンピュータが以下の各ステップを実行し、前記部品組みを接合する最適接合点の位置を求める最適化解析を行う車体の接合位置の最適化解析方法であって、
前記車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定する解析対象モデル設定ステップと、
前記解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定する荷重・拘束条件設定ステップと、
前記荷重条件及び拘束条件を前記解析対象モデルに与えて応力解析を行う応力解析ステップと、
前記応力解析の結果を用いて前記解析対象モデルの前記各初期接合点の疲労寿命を算出し、算出した前記各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定する目標疲労寿命設定ステップと、
前記解析対象モデルに対して前記部品組みを接合する前記最適接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ステップと、
前記接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、前記目標疲労寿命設定ステップにおいて設定した前記目標疲労寿命に基づいて前記最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した前記接合候補点の疲労寿命に関する条件と、前記最適化解析モデルの剛性に関する条件と、前記残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定する最適化解析条件設定ステップと、
前記荷重・拘束条件設定ステップにおいて設定した前記拘束条件に基づく前記荷重条件を前記最適化解析モデルに与え、前記最適化解析条件の下で最適化解析を行い、該最適化解析において残存した接合候補点を前記部品組みを接合する最適接合点として求める最適化解析ステップと、
前記残存した接合候補点の中から所定点数の接合候補点を選出し、選出した前記接合候補点を前記初期接合点の代わりに前記解析対象モデルに設定して選出接合候補点設定解析対象モデルを生成する選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップと、
前記選出接合候補点設定解析対象モデルに前記荷重・拘束条件設定ステップにおいて設定した前記荷重条件及び拘束条件を与えて応力解析を行い、該応力解析の結果を用い、前記選出した接合候補点の疲労寿命と前記選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とを算出する選出接合候補点性能算出ステップと、
前記選出接合候補点設定解析対象モデルにおける前記接合候補点の疲労寿命と前記選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とが前記初期接合点が設定された前記解析対象モデルを超える所定の性能を満たすかどうかを判定する判定ステップと、
該判定ステップにおいて前記所定の性能を満たすと判定された場合には、前記選出した接合候補点を最適接合点として決定し、前記判定ステップにおいて前記所定の性能を満たさないと判定された場合、該所定の性能を満たすまで、前記最適化解析条件設定ステップにおいて前記接合候補点の点数に関する条件を変更し、前記最適化解析ステップと、前記選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップと、前記選出接合候補点性能算出ステップと、前記判定ステップと、を繰り返し、前記所定の性能を満たしたときに選出した接合候補点を最適接合点として決定する最適接合点決定ステップと、を含むことを特徴とする車体の接合位置の最適化解析方法。
【請求項4】
梁要素、平面要素及び/又は立体要素からなる複数の部品モデルを有してなり、複数の前記部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点を有する自動車の車体モデルの全部又は一部について、前記部品組みを接合する最適接合点の位置を求める車体の接合位置の最適化解析装置であって、
前記車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定する解析対象モデル設定部と、
前記解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定する荷重・拘束条件設定部と、
前記荷重条件及び拘束条件を前記解析対象モデルに与えて応力解析を行う応力解析部と、
前記応力解析の結果を用いて前記解析対象モデルの前記各初期接合点の疲労寿命を算出し、算出した前記各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定する目標疲労寿命設定部と、
前記解析対象モデルに対して前記部品組みを接合する前記最適接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成部と、
前記接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、前記目標疲労寿命設定部により設定された前記目標疲労寿命に基づいて前記最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した前記接合候補点の疲労寿命に関する条件と、前記最適化解析モデルの剛性に関する条件と、前記残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定する最適化解析条件設定部と、
前記荷重・拘束条件設定部により設定された前記拘束条件に基づく前記荷重条件を前記最適化解析モデルに与え、前記最適化解析条件の下で最適化解析を行い、該最適化解析において残存した接合候補点を前記部品組みを接合する最適接合点として求める最適化解析部と、を備えたことを特徴とする車体の接合位置の最適化解析装置。
【請求項5】
前記最適化解析部は、密度法によるトポロジー最適化を行うものであり、該トポロジー最適化においてペナルティ係数を4以上に設定して離散化することを特徴とする請求項4に記載の車体の接合位置の最適化解析装置。
【請求項6】
梁要素、平面要素及び/又は立体要素からなる複数の部品モデルを有してなり、複数の前記部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点を有する自動車の車体モデルの全部又は一部について、前記部品組みを接合する最適接合点の位置を求める車体の接合位置の最適化解析装置であって、
前記車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定する解析対象モデル設定部と、
前記解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定する荷重・拘束条件設定部と、
前記荷重条件及び拘束条件を前記解析対象モデルに与えて応力解析を行う応力解析部と、
前記応力解析の結果を用いて前記解析対象モデルの前記各初期接合点の疲労寿命を算出し、算出した前記各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定する目標疲労寿命設定部と、
前記解析対象モデルに対して前記部品組みを接合する前記最適接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成部と、
前記接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、前記目標疲労寿命設定部により設定された前記目標疲労寿命に基づいて前記最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した前記接合候補点の疲労寿命に関する条件と、前記最適化解析モデルの剛性に関する条件と、前記残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定する最適化解析条件設定部と、
前記荷重・拘束条件設定部により設定された前記拘束条件に基づく前記荷重条件を前記最適化解析モデルに与え、前記最適化解析条件の下で最適化解析を行い、該最適化解析において残存した接合候補点を前記部品組みを接合する最適接合点として求める最適化解析部と、
前記残存した接合候補点の中から所定点数の接合候補点を選出し、選出した前記接合候補点を前記初期接合点の代わりに前記解析対象モデルに設定して選出接合候補点設定解析対象モデルを生成する選出接合候補点設定解析対象モデル生成部と、
前記選出接合候補点設定解析対象モデルに前記荷重・拘束条件設定部により設定された前記荷重条件及び拘束条件を与えて応力解析を行い、該応力解析の結果を用い、前記選出した接合候補点の疲労寿命と前記選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とを算出する選出接合候補点性能算出部と、
前記選出接合候補点設定解析対象モデルにおける前記接合候補点の疲労寿命と前記選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とが前記初期接合点が設定された前記解析対象モデルを超える所定の性能を満たすかどうかを判定する判定部と、
該判定部により前記所定の性能を満たすと判定された場合には、前記選出した接合候補点を最適接合点として決定し、前記判定部により前記所定の性能を満たさないと判定された場合、該所定の性能を満たすまで、前記最適化解析条件設定部により前記接合候補点の点数に関する条件を変更し、前記最適化解析部と、前記選出接合候補点設定解析対象モデル生成部と、前記選出接合候補点性能算出部と、前記判定部と、による処理を繰り返し、前記所定の性能を満たしたときに選出した接合候補点を最適接合点として決定する最適接合点決定部と、を備えたことを特徴とする車体の接合位置の最適化解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の接合位置の最適化解析方法及び装置に関し、特に、自動車の車体の剛性と該車体における部品組みを接合する接合点の疲労寿命とを向上させる前記接合点の最適な位置を求める車体の接合位置の最適化解析方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に自動車産業においては環境問題に起因した車体の軽量化が進められており、車体の設計にコンピュータ支援工学による解析(以下、「CAE解析」という)は欠かせない技術となっている。
このCAE解析では数理最適化、板厚最適化、形状最適化、トポロジー最適化等の最適化技術を用いることによって剛性の向上や軽量化が図られることが知られており、例えばエンジンブロック等の鋳物の構造最適化によく用いられている。
【0003】
最適化技術の中で、特にトポロジー最適化が着目されつつある。
トポロジー最適化は、ある大きさの設計空間を構造体に設け、当該設計空間に立体要素を組み込み、与えられた条件を満たし、かつ必要最小限の立体要素の部分を残すことで当該条件を満たす最適形状を得るという方法である。そのため、トポロジー最適化は、設計空間をなす立体要素に直接拘束を行い、直接荷重を加えるという方法が用いられる。
このようなトポロジー最適化に関する技術として、複雑な構造体のコンポーネントのトポロジー最適化のための方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車体のような構造体は、複数の部品を部品組みとして溶接等で接合することによって形成されており、部品組みとして接合する部位における接合量を増やせば(例えば、スポット溶接による接合点を増加すれば)、車体全体としての剛性と接合点の疲労寿命は向上することが知られている。しかしながら、コストの観点から接合量をできるだけ少なくすることが望まれる。
【0006】
そこで、車体の剛性と接合点の疲労寿命を向上させるために、部品同士を接合する接合位置(スポット溶接点等の溶接位置)を求める方法として、経験や勘等により接合位置を決める方法や、応力解析により応力が大きい部位を接合位置とする方法がある。
【0007】
しかしながら、経験や勘により接合位置を決める方法では、剛性と疲労寿命を向上させるのに必要な接合点の位置を求めるものではないため、剛性と疲労寿命の向上に不要な位置を接合点とする場合もあり、試行錯誤を繰り返してコストの面からも効率が悪いと言わざるを得ない。
【0008】
また、応力解析により応力が大きい部位を接合位置とする方法では、当該方法により接合位置を求める前と比較すると剛性や疲労寿命に変化は見られるものの、接合位置の近傍のみの剛性や疲労寿命が向上する反面、他の部位の剛性や疲労寿命が相対的に低下する場合も多々あり、車体全体として評価したとき、当該方法により求めた接合位置が必ずしも最適とはいえない。
【0009】
また、スポット溶接による接合点の位置を上記の方法で求める場合、隣接する接合点同士の位置が近すぎると、先に溶接した隣接する接合点に電流が流れてしまい(分流)、次にスポット溶接する接合点に十分な電流が流れず、溶接が不良となる。
【0010】
そこで、特許文献1に開示された最適化技術により、スポット溶接による接合点の最適な位置を求めることが考えられる。しかしながら、当該最適化技術は、剛性の向上を目的としたものであり、スポット溶接による接合点の疲労寿命の向上については何ら考慮されていなかった。そのため、車体の剛性と接合点の疲労寿命とを向上することができる接合点の最適な位置を求める技術が望まれていた。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、自動車の車体の剛性と該車体における部品組みを接合する接合点の疲労寿命とを向上させる前記接合点の最適な位置を求める車体の接合位置の最適化解析方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る車体の接合位置の最適化解析方法は、梁要素、平面要素及び/又は立体要素からなる複数の部品モデルを有してなり、複数の前記部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点を有する自動車の車体モデルの全部又は一部について、コンピュータが以下の各ステップを実行し、前記部品組みを接合する最適接合点の位置を求める最適化解析を行うものであって、
前記車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定する解析対象モデル設定ステップと、
前記解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定する荷重・拘束条件設定ステップと、
前記荷重条件及び拘束条件を前記解析対象モデルに与えて応力解析を行う応力解析ステップと、
前記応力解析の結果を用いて前記解析対象モデルの前記各初期接合点の疲労寿命を算出し、算出した前記各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定する目標疲労寿命設定ステップと、
前記解析対象モデルに対して前記部品組みを接合する前記最適接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ステップと、
前記接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、前記目標疲労寿命設定ステップにおいて設定した前記目標疲労寿命に基づいて前記最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した前記接合候補点の疲労寿命に関する条件と、前記最適化解析モデルの剛性に関する条件と、前記残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定する最適化解析条件設定ステップと、
前記荷重・拘束条件設定ステップにおいて設定した前記拘束条件に基づく前記荷重条件を前記最適化解析モデルに与え、前記最適化解析条件の下で最適化解析を行い、該最適化解析において残存した接合候補点を前記部品組みを接合する最適接合点として求める最適化解析ステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0013】
(2)上記(1)に記載のものにおいて、
前記最適化解析ステップは、密度法によるトポロジー最適化を行うものであり、該トポロジー最適化においてペナルティ係数を4以上に設定して離散化することを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明に係る車体の接合位置の最適化解析方法は、梁要素、平面要素及び/又は立体要素からなる複数の部品モデルを有してなり、複数の前記部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点を有する自動車の車体モデルの全部又は一部について、コンピュータが以下の各ステップを実行し、前記部品組みを接合する最適接合点の位置を求める最適化解析を行うものであって、
前記車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定する解析対象モデル設定ステップと、
前記解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定する荷重・拘束条件設定ステップと、
前記荷重条件及び拘束条件を前記解析対象モデルに与えて応力解析を行う応力解析ステップと、
前記応力解析の結果を用いて前記解析対象モデルの前記各初期接合点の疲労寿命を算出し、算出した前記各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定する目標疲労寿命設定ステップと、
前記解析対象モデルに対して前記部品組みを接合する前記最適接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ステップと、
前記接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、前記目標疲労寿命設定ステップにおいて設定した前記目標疲労寿命に基づいて前記最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した前記接合候補点の疲労寿命に関する条件と、前記最適化解析モデルの剛性に関する条件と、前記残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定する最適化解析条件設定ステップと、
前記荷重・拘束条件設定ステップにおいて設定した前記拘束条件に基づく前記荷重条件を前記最適化解析モデルに与え、前記最適化解析条件の下で最適化解析を行い、該最適化解析において残存した接合候補点を前記部品組みを接合する最適接合点として求める最適化解析ステップと、
前記残存した接合候補点の中から所定点数の接合候補点を選出し、選出した前記接合候補点を前記初期接合点の代わりに前記解析対象モデルに設定して選出接合候補点設定解析対象モデルを生成する選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップと、
前記選出接合候補点設定解析対象モデルに前記荷重・拘束条件設定ステップにおいて設定した前記荷重条件及び拘束条件を与えて応力解析を行い、該応力解析の結果を用い、前記選出した接合候補点の疲労寿命と前記選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とを算出する選出接合候補点性能算出ステップと、
前記選出接合候補点設定解析対象モデルにおける前記接合候補点の疲労寿命と前記選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とが前記初期接合点が設定された前記解析対象モデルを超える所定の性能を満たすかどうかを判定する判定ステップと、
該判定ステップにおいて前記所定の性能を満たすと判定された場合には、前記選出した接合候補点を最適接合点として決定し、前記判定ステップにおいて前記所定の性能を満たさないと判定された場合、該所定の性能を満たすまで、前記最適化解析条件設定ステップにおいて前記接合候補点の点数に関する条件を変更し、前記最適化解析ステップと、前記選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップと、前記選出接合候補点性能算出ステップと、前記判定ステップと、を繰り返し、前記所定の性能を満たしたときに選出した接合候補点を最適接合点として決定する最適接合点決定ステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明に係る車体の接合位置の最適化解析装置は、梁要素、平面要素及び/又は立体要素からなる複数の部品モデルを有してなり、複数の前記部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点を有する自動車の車体モデルの全部又は一部について、前記部品組みを接合する最適接合点の位置を求めるものであって、
前記車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定する解析対象モデル設定部と、
前記解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定する荷重・拘束条件設定部と、
前記荷重条件及び拘束条件を前記解析対象モデルに与えて応力解析を行う応力解析部と、
前記応力解析の結果を用いて前記解析対象モデルの前記各初期接合点の疲労寿命を算出し、算出した前記各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定する目標疲労寿命設定部と、
前記解析対象モデルに対して前記部品組みを接合する前記最適接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成部と、
前記接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、前記目標疲労寿命設定部により設定された前記目標疲労寿命に基づいて前記最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した前記接合候補点の疲労寿命に関する条件と、前記最適化解析モデルの剛性に関する条件と、前記残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定する最適化解析条件設定部と、
前記荷重・拘束条件設定部により設定された前記拘束条件に基づく前記荷重条件を前記最適化解析モデルに与え、前記最適化解析条件の下で最適化解析を行い、該最適化解析において残存した接合候補点を前記部品組みを接合する最適接合点として求める最適化解析部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0016】
(5)上記(4)に記載のものにおいて、
前記最適化解析部は、密度法によるトポロジー最適化を行うものであり、該トポロジー最適化においてペナルティ係数を4以上に設定して離散化することを特徴とするものである。
【0017】
(6)本発明に係る車体の接合位置の最適化解析装置は、梁要素、平面要素及び/又は立体要素からなる複数の部品モデルを有してなり、複数の前記部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点を有する自動車の車体モデルの全部又は一部について、前記部品組みを接合する最適接合点の位置を求めるものであって、
前記車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定する解析対象モデル設定部と、
前記解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定する荷重・拘束条件設定部と、
前記荷重条件及び拘束条件を前記解析対象モデルに与えて応力解析を行う応力解析部と、
前記応力解析の結果を用いて前記解析対象モデルの前記各初期接合点の疲労寿命を算出し、算出した前記各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定する目標疲労寿命設定部と、
前記解析対象モデルに対して前記部品組みを接合する前記最適接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成部と、
前記接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、前記目標疲労寿命設定部により設定された前記目標疲労寿命に基づいて前記最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した前記接合候補点の疲労寿命に関する条件と、前記最適化解析モデルの剛性に関する条件と、前記残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定する最適化解析条件設定部と、
前記荷重・拘束条件設定部により設定された前記拘束条件に基づく前記荷重条件を前記最適化解析モデルに与え、前記最適化解析条件の下で最適化解析を行い、該最適化解析において残存した接合候補点を前記部品組みを接合する最適接合点として求める最適化解析部と、
前記残存した接合候補点の中から所定点数の接合候補点を選出し、選出した前記接合候補点を前記初期接合点の代わりに前記解析対象モデルに設定して選出接合候補点設定解析対象モデルを生成する選出接合候補点設定解析対象モデル生成部と、
前記選出接合候補点設定解析対象モデルに前記荷重・拘束条件設定部により設定された前記荷重条件及び拘束条件を与えて応力解析を行い、該応力解析の結果を用い、前記選出した接合候補点の疲労寿命と前記選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とを算出する選出接合候補点性能算出部と、
前記選出接合候補点設定解析対象モデルにおける前記接合候補点の疲労寿命と前記選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とが前記初期接合点が設定された前記解析対象モデルを超える所定の性能を満たすかどうかを判定する判定部と、
該判定部により前記所定の性能を満たすと判定された場合には、前記選出した接合候補点を最適接合点として決定し、前記判定部により前記所定の性能を満たさないと判定された場合、該所定の性能を満たすまで、前記最適化解析条件設定部により前記接合候補点の点数に関する条件を変更し、前記最適化解析部と、前記選出接合候補点設定解析対象モデル生成部と、前記選出接合候補点性能算出部と、前記判定部と、による処理を繰り返し、前記所定の性能を満たしたときに選出した接合候補点を最適接合点として決定する最適接合点決定部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、自動車の車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとし、該解析対象モデルに対して部品組みとして接合する接合候補点を設定した最適化解析モデルを生成し、最適化の対象とする接合候補点の点数、接合候補点の疲労寿命及び最適化解析モデルの剛性に関する最適化解析条件(目的関数又は制約条件)を設定して接合候補点についての最適化解析を行うことにより、接合候補点の点数最適化、解析対象モデルの剛性向上、部品組みを接合する接合点の疲労寿命の向上を目的とすることができる最適接合点の位置を求めることができる。
これによって、車体構造におけるスポット溶接箇所の最適化が可能になり、溶接コストの低減と車体の軽量化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る車体の接合位置の最適化解析装置のブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1において、解析対象モデルの一例として、車体モデルの一部であるフロア部モデルを示す図である((a)全体図、(b)剛性を評価する剛性評価点の近傍の拡大図)。
【
図3】本発明の実施の形態1において、解析対象モデルの一例として、フロア部モデルに予め設定されている初期接合点を説明する図である((a)斜視図、(b)初期接合点の間隔)。
【
図4】本発明の実施の形態1において、解析対象モデルとしたフロア部モデルに与える荷重条件及び拘束条件の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態1において、解析対象モデルとしたフロア部モデルの応力解析の結果の一例であるZ方向変位のコンター図である。
【
図6】本発明の実施の形態1において、(a)疲労寿命を算出するための入力条件と、(b)応力解析の結果を用いて求められた最も疲労寿命の短い初期接合点を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態1における初期接合点の疲労寿命の算出において、初期接合点をモデル化したスポット溶接部の一例を示す図である((a)上面図、(b)斜視図)。
【
図8】本発明の実施の形態1において、解析対象モデルに予め設定された初期接合点と該解析対象モデルに追加した追加接合点とを接合候補点として設定した最適化解析モデルの一例を示す図である((a)最適化解析モデル、(b)最適化解析モデルに設定された接合候補点)。
【
図9】本発明の実施の形態1及び実施例において、フロア部モデルを解析対象とし、剛性と疲労寿命に関する最適化解析条件を設定した最適化解析により求められた最適接合点の一例を示す図である((a)斜視図、(b)点線枠の上面図)。
【
図10】本発明の実施の形態1に係る車体の接合位置の最適化解析方法における処理の流れを示すフロー図である。
【
図11】本発明の実施の形態2に係る車体の接合位置の最適化解析装置のブロック図である。
【
図12】本発明の実施の形態2に係る車体の接合位置の最適化解析方法における処理の流れを示すフロー図である。
【
図13】実施例1において、フロア部モデルを解析対象とし、剛性に関する最適化解析条件を設定した最適化解析により求められた最適接合点を示す図である。
【
図14】実施例1において、最適化解析により求めた最適接合点を設定したフロア部モデルの剛性向上率を示すグラフである。
【
図15】実施例1において、最適化解析により求めた最適接合点を設定したフロア部モデルにおける最適接合点の最短疲労寿命を示すグラフである。
【
図16】実施例2において、最適化解析により求めた最適接合点を設定したフロア部モデルの接合点数を示すグラフである。
【
図17】実施例2において、最適化解析により求めた最適接合点を設定したフロア部モデルの剛性向上率を示すグラフである。
【
図18】実施例2において、最適化解析により求めた最適接合点を設定したフロア部モデルの最短疲労寿命を示すグラフである。
【
図19】実施例3において、最適化解析により求めた最適接合点を設定したフロア部モデルにおける最適接合点の最短疲労寿命を示すグラフである。
【
図20】実施例3において、最適化解析により求めた最適接合点を設定したフロア部モデルの剛性向上率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態1及び実施の形態2に係る車体の接合位置の最適化解析方法及び装置の説明に先立ち、本発明で対象とする車体モデルについて説明する。
なお、本願の明細書及び図面において、車体前後方向、車体左右方向及び車体上下方向は、それぞれ、X方向、Y方向及びZ方向と表し、車体前後方向(X方向)における車体モデルの中心軸をFR軸と表す。
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能や構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
<車体モデル及び解析対象モデル>
本発明において対象とする車体モデルは、車体骨格部品やシャシー部品等といった複数の部品モデルで構成されたものであり、これらの部品モデルは、梁要素、平面要素及び/又は立体要素を使ってモデル化されている。
【0022】
一般に、車体骨格部品やシャシー部品等は主に薄鋼板によって形成されているため、車体モデルを構成する部品モデルは、平面要素のみによって構成されたものでよい。
【0023】
さらに、車体モデルは、複数の部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点を有する。初期接合点は、複数の自動車部品を部品組みとして接合するスポット溶接点を梁要素や立体要素を用いてモデル化したものである。
【0024】
例えば、平面要素からなる2つの部品モデルが梁要素でモデル化された初期接合点により接合されている場合、2つの部品モデルの平面要素に梁要素が結合されている。
【0025】
また、初期接合点が立体要素でモデル化されている場合においては、初期接合点に作用する並進力を部品モデルに分配させるべく、部品モデルの平面要素と初期接合点の立体要素とが、剛体要素で結合されている。
【0026】
本発明は、車体モデルの全体又は一部である解析対象モデル(後述)に荷重が作用して生じる変形を解析するものであるため、車体モデルにおける各部品モデルは、弾性体若しくは粘弾性体又は弾塑性体としてモデル化されたものである。
そして、車体モデルを構成する各部品モデルの材料特性や要素情報、さらには、各部品組みにおける初期接合点等に関する情報は、車体モデルファイル101(
図1、
図11参照)に格納されている。
【0027】
[実施の形態1]
<車体の接合位置の最適化解析装置>
本発明の実施の形態1に係る車体の接合位置の最適化解析装置(以下、単に「最適化解析装置」という)の構成について、以下に説明する。
【0028】
最適化解析装置は、車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとし、該解析対象モデルを構成する複数の部品モデルを部品組みとして接合する最適接合点の位置を求めるための最適化解析を行う装置である。
【0029】
図1に、本実施の形態1に係る最適化解析装置1の構成の一例を示す。最適化解析装置1は、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成され、
図1に示すように、表示装置3、入力装置5、記憶装置7、作業用データメモリ9及び演算処理部11を有している。
表示装置3、入力装置5、記憶装置7及び作業用データメモリ9は、演算処理部11に接続され、演算処理部11からの指令によってそれぞれの機能が実行される。
以下、本実施の形態1に係る最適化解析装置1の各構成要素の機能を説明する。
【0030】
≪表示装置≫
表示装置3は、車体モデルや解析対象モデル、さらには解析結果等の表示に用いられ、液晶モニター等で構成される。
【0031】
≪入力装置≫
入力装置5は、車体モデルファイル101の読み出しや、車体モデルや解析対象モデルの表示等といった操作者による指示の入力等に用いられ、キーボードやマウス等で構成される。
【0032】
≪記憶装置≫
記憶装置7は、車体モデルファイル101等の各種ファイルや解析結果の保存等に用いられ、ハードディスク等で構成される。
【0033】
≪作業用データメモリ≫
作業用データメモリ9は、演算処理部11が使用するデータの一時保存や演算に用いられ、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0034】
≪演算処理部≫
演算処理部11は、
図1に示すように、解析対象モデル設定部13と、荷重・拘束条件設定部15と、応力解析部17と、目標疲労寿命設定部19と、最適化解析モデル生成部21と、最適化解析条件設定部23と、最適化解析部25と、を有し、PC等のCPU(中央演算処理装置)によって構成される。これらの各部は、CPUが所定のプログラムを実行することによって機能する。
以下、演算処理部11の各部の機能を説明する。
【0035】
(解析対象モデル設定部)
解析対象モデル設定部13は、車体モデルファイル101から車体モデルを取得し、取得した車体モデルの全体又は一部を解析対象モデルとして設定するものである。
【0036】
解析対象モデル設定部13による処理の一例を以下に述べる。
まず、操作者が、車体モデルファイル101から車体モデルの読み出しを入力装置5により指示することで、車体モデルが記憶装置7から読みだされる。
次に、操作者の指示により、車体モデルが表示装置3に表示される。
そして、操作者の指示により、表示装置3に表示された車体モデルにおいて最適化解析の対象とする部位が指定される。解析対象モデル設定部13は、当該指定された部位を解析対象モデルとして設定する。
【0037】
図2に、解析対象モデルとして、車体の一部であるフロア部を簡略化してモデル化したフロア部モデル111を設定した例を示す。
【0038】
フロア部モデル111は、部品モデルとして、フロアパネルモデル113と、トンネルモデル115と、ロッカーインナモデル117と、ロッカーアウタモデル119と、フロントフロアクロスモデル121と、リアフロアクロスモデル123と、を有して構成されている。なお、ロッカーインナモデル117とロッカーアウタモデル119は、いずれも、車体前後方向に連なる3つの部材が結合されてなるものである。
【0039】
そして、これらの部品モデルは、
図3に示すように、部品組みとして接合する初期接合点131が所定の間隔Dで予め設定されている。初期接合点131は、例えば、部品組みを構成する複数の部品モデルの平面要素等の節点を結合する梁要素でモデル化されている。
【0040】
以下、本実施の形態1においては、
図2に示すフロア部モデル111を解析対象モデルとした場合について説明する。
【0041】
(荷重・拘束条件設定部)
荷重・拘束条件設定部15は、解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定するものである。
【0042】
荷重・拘束条件設定部15により設定する荷重条件及び拘束条件は、応力解析部17により応力解析を行うためのものであり、解析対象モデルに与える荷重の位置、大きさ及び向きや、解析対象モデルを拘束する位置、等である。
【0043】
図4に、フロア部モデル111に対して、FR軸回りに捩じるような荷重が作用する場合の荷重条件及び拘束条件を示す。
【0044】
図4に示す荷重条件及び拘束条件を設定するにあたり、まず、フロア部モデル111におけるフロアパネルモデル113とトンネルモデル115の前端面及び後端面それぞれを剛体要素で結合し、前端面部125と後端面部127とを生成する。
次に、前端面部125の重心を荷重入力点Aとし、前端面部125と剛体要素で結合する。さらに、後端面部127の重心を拘束点Bとし、後端面部127と剛体要素で結合する。
そして、荷重条件として、荷重入力点AにFR軸回りに0.1kN・mのモーメントを与え、拘束条件として、拘束点Bを完全拘束とする。
【0045】
(応力解析部)
応力解析部17は、荷重・拘束条件設定部15により設定された荷重条件及び拘束条件を解析対象モデルに与えて応力解析を行うものである。応力解析部17による応力解析には、市販の応力解析ソフトを用いることができる。
【0046】
図5に、
図4に示す荷重条件及び拘束条件をフロア部モデル111に与えて応力解析を行った結果の一例を示す。
図5に示す結果は、フロア部モデル111のZ方向変位(表示倍率50倍)をコンター図で示したものである。応力解析により、フロア部モデル111の変位の他、フロア部モデル111の各初期接合点131が結合する部品モデルの平面要素の応力や、各初期接合点131の両端に作用する力及びモーメント、等を求めることができる。
【0047】
(目標疲労寿命設定部)
目標疲労寿命設定部19は、応力解析部17による応力解析の結果を用いて解析対象モデルにおける各初期接合点の疲労寿命を算出し、該算出した各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定するものである。
【0048】
目標疲労寿命設定部19による各初期接合点の疲労寿命の算出には、市販の疲労寿命予測解析ソフトを用いるとよい。例えば、梁要素でモデル化された初期接合点の疲労寿命を市販の疲労寿命予測解析ソフトを用いて算出する場合においては、初期接合点の応力を疲労寿命予測解析ソフトに入力することにより、初期接合点の疲労寿命を算出することができる。初期接合点の応力としては、梁要素が結合している各部品モデルの平面要素の応力値、又は、梁要素の両端に作用する力とモーメントから求められる公称構造応力を用いることができる。
【0049】
目標疲労寿命は、最適化解析により残存する接合候補点(後述)が満たすべき疲労寿命である。そして、目標疲労寿命は、少なくとも、目標疲労寿命設定部19により算出した各初期接合点の最も短い疲労寿命(最短疲労寿命)よりも長い疲労寿命とする。
【0050】
図6に、フロア部モデル111に対して
図4に示す荷重条件及び拘束条件を与えた応力解析の結果を用いて初期接合点131の疲労寿命を算出する際の入力条件と、初期接合点131の最短疲労寿命を示す。
初期接合点131の疲労寿命の算出においては、
図6(a)に示すように、一例として0.7kN・mのモーメントが両振りで負荷する繰り返し応力が初期接合点131に作用しているとする入力条件を与えた。
【0051】
図6(b)に示すように、フロアパネルモデル113とフロントフロアクロスモデル121又はリアフロアクロスモデル123とを接合する初期接合点131の目標疲労寿命は2.7万回であり、他の初期接合点131に比べて最も疲労寿命が短かった。
【0052】
なお、目標疲労寿命設定部19により初期接合点の疲労寿命を算出するにあたっては、
図7に例示するスポット溶接部141のように、実際のスポット溶接点のナゲット径に基づいて、部品モデル143における梁要素145が結合する部位(中心部147及び周辺部149)を設定してクモの巣状の平面要素に切り直し、周辺部149における平面要素の応力値を用いるとよい。
【0053】
(最適化解析モデル生成部)
最適化解析モデル生成部21は、解析対象モデルに対して部品組みを接合する最適な接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成するものである。
【0054】
図8に、一例として、フロア部モデル111に接合候補点155を設定して生成した最適化解析モデル151を示す。
【0055】
フロア部モデル111には、前述した
図3に示すように、複数の部品が接合されてなる部品組みに初期接合点131が所定の間隔Dで予め設定されている。
本実施の形態1において、最適化解析モデル生成部21は、
図8に示すように、各部品組みにおける初期接合点131同士の間に所定の間隔d(<D)で追加接合点153を密に設定する。そして、フロア部モデル111に予め設定されていた初期接合点131と追加接合点153との双方を接合候補点155として設定し、最適化解析モデル151を生成した。
【0056】
なお、最適化解析モデル生成部21により接合候補点を設定する手順としては、実際に追加接合点を増やすことが可能な間隔で最密にする等、解析対象モデルにおいて部品組みとして接合される部位の大きさに応じて追加接合点を設定するとよい。
【0057】
なお、追加接合点は、前述した初期接合点と同様、梁要素でモデル化してもよいし、立体要素でモデル化してもよい。
【0058】
(最適化解析条件設定部)
最適化解析条件設定部23は、接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、目標疲労寿命設定部19により設定された目標疲労寿命に基づいて最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した接合候補点の疲労寿命に関する条件と、最適化解析モデルの剛性に関する条件と、残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定するものである。
【0059】
最適化解析条件には、目的関数と制約条件の2種類がある。
目的関数は、最適化解析の目的に応じて一つだけ設定されるものである。本実施の形態1においては、最適化解析モデルの剛性に関する条件を目的関数として設定する。剛性に関する条件は、例えば、解析対象モデルにおける所定の位置を剛性評価点とし、該剛性評価点の変位又はひずみを指標にするとよい。
【0060】
制約条件は、最適化解析を行う上で課す制約であり、必要に応じて複数設定されるものである。本実施の形態1においては、接合候補点の疲労寿命が、目標疲労寿命設定部19により設定された目標疲労寿命よりも大きいとする条件を制約条件として設定する。
【0061】
疲労寿命に関する条件は、目標疲労寿命をそのまま制約条件として与えるものに限らず、例えば、接合候補点の応力が目標疲労寿命に相当する応力未満の値とする制約条件を与えてもよい。ここで、接合候補点の応力は、例えば、接合候補点としてモデル化した梁要素が結合する部品モデルの平面要素の応力や、梁要素の両端に作用する力とモーメントから算出される公称構造応力、等を用いることができる。
【0062】
接合候補点の点数に関する条件は、残存させる接合候補点の点数を所定の値に設定することができる。本実施の形態1においては、残存させる接合候補点の点数を初期接合点の点数とする。
【0063】
なお、接合候補点の点数に関する最適化解析条件については、例えば後述する最適化解析部25による最適化解析においてトポロジー最適化で密度法を適用する場合にあっては、接合候補点としてモデル化する要素(梁要素や立体要素等)の密度に基づいて算出される接合候補点の体積を制約条件として与えてもよい。
【0064】
(最適化解析部)
最適化解析部25は、荷重・拘束条件設定部15により設定された拘束条件に基づく荷重条件を最適化解析モデルに与え、最適化解析条件の下で最適化解析を行い、最適化解析において残存した接合候補点を部品組みを接合する最適接合点として求めるものである。
【0065】
最適化解析部25による最適化解析としては、トポロジー最適化を適用することができる。
トポロジー最適化において密度法を用いる場合、接合候補点としてモデル化した要素(梁要素や立体要素等)に対して、0から1までの値をとる正規化された仮想的な密度を設計変数として与え、最適化解析条件を満たす密度の値を算出する。
【0066】
そして、算出された密度の値が1であれば接合候補点が完全に存在している状態、0であれば接合候補点が存在していない状態であり、その中間値であれば接合候補点による部品組みの接合が中間的な状態となる。
【0067】
そのため、トポロジー最適化で密度法を適用する中間的な密度が多い場合には、式(1)で示すように、ペナルティ係数を用いて離散化することが好ましい。
【0068】
【0069】
離散化によく用いられるペナルティ係数は2以上であるが、本発明に係る接合位置の最適化解析においては、ペナルティ係数は4以上であることが好ましい。さらに、ペナルティ係数は、平面要素や立体要素では4以上、梁要素では20以上がより好ましい。
【0070】
なお、最適化解析部25は、上記のとおりトポロジー最適化による最適化解析を行うものであってもよいし、他の計算方式による最適化解析を行うものであってもよい。そして、最適化解析部25としては、例えば市販されている有限要素法を用いた最適化解析ソフトを用いることができる。
【0071】
図9に、最適化解析部25によりトポロジー最適化において密度法を適用して最適化解析を行って求められた最適接合点157の一例を示す。なお、本実施の形態1において求められた最適接合点の作用効果については、後述する実施例にて述べる。
【0072】
<車体の接合位置の最適化解析方法>
本発明の実施の形態1に係る車体の接合位置の最適化解析方法(以下、単に、「最適化解析方法」という)は、車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとし、該解析対象モデルを構成する複数の部品モデルを部品組みとして接合する最適接合点を求める最適化解析を行うものであって、
図10に示すように、解析対象モデル設定ステップS1と、荷重・拘束条件設定ステップS3と、応力解析ステップS5と、目標疲労寿命設定ステップS7と、最適化解析モデル生成ステップS9と、最適化解析条件設定ステップS11と、最適化解析ステップS13と、を含むものである。
以下、これらの各ステップについて説明する。なお、以下の各ステップは、コンピュータによって構成された最適化解析装置1(
図1)が行うものとする。
【0073】
≪解析対象モデル設定ステップ≫
解析対象モデル設定ステップS1は、車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとして設定するものである。
【0074】
本実施の形態1において、解析対象モデル設定ステップS1は、解析対象モデル設定部13が、車体モデルの一部であるフロア部モデル111を解析対象モデルとして設定する。
【0075】
≪荷重・拘束条件設定ステップ≫
荷重・拘束条件設定ステップS3は、解析対象モデル設定ステップS1において設定した解析対象モデルに与える荷重条件及び拘束条件を設定するものである。
【0076】
本実施の形態1において、荷重・拘束条件設定ステップS3は、最適化解析装置1の荷重・拘束条件設定部15が、前述した
図4に示すように、フロア部モデル111に与える荷重条件及び拘束条件を設定する。
【0077】
≪応力解析ステップ≫
応力解析ステップS5は、荷重・拘束条件設定ステップS3において設定した荷重条件及び拘束条件を解析対象モデルに与えて応力解析を行うものである。
【0078】
本実施の形態1において、応力解析ステップS5は、最適化解析装置1の応力解析部17が、
図4に示す荷重条件及び拘束条件をフロア部モデル111に与えて応力解析を行う。
【0079】
≪目標疲労寿命設定ステップ≫
目標疲労寿命設定ステップS7は、応力解析ステップS5における応力解析の結果を用いて解析対象モデルの初期接合点の疲労寿命を算出し、算出した各初期接合点の疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定するものである。
【0080】
目標疲労寿命は、最適化の対象とする接合候補点が満たすべき疲労寿命であり、少なくとも、目標疲労寿命設定ステップS7において算出した各初期接合点の最も短い疲労寿命(最短疲労寿命)よりも長い疲労寿命とする。
【0081】
本実施の形態1において、目標疲労寿命設定ステップS7は、最適化解析装置1の目標疲労寿命設定部19が、フロア部モデル111の初期接合点について疲労寿命を算出し、該算出した初期接合点の最も短い疲労寿命に基づいて、目標疲労寿命を設定する。
【0082】
≪最適化解析モデル生成ステップ≫
最適化解析モデル生成ステップS9は、解析対象モデルに対して部品組みを接合する最適な接合点の候補となる全ての接合候補点を密に設定して最適化解析モデルを生成するものである。
【0083】
本実施の形態1において、最適化解析モデル生成ステップS9は、最適化解析モデル生成部21が、フロア部モデル111に予め設定された初期接合点131の間に追加接合点153を所定の間隔d(d<D、D:初期接合点同士の間隔)で密に生成し、初期接合点131と追加接合点153との双方を接合候補点155として設定する。
【0084】
≪最適化解析条件設定ステップ≫
最適化解析条件設定ステップS11は、最適化解析モデルにおける接合候補点を最適化の対象とする最適化解析を行うために、目標疲労寿命設定ステップS7において設定した目標疲労寿命に基づいて最適化解析により残存させる接合候補点の疲労寿命に関する条件を決定し、決定した接合候補点の疲労寿命に関する条件と、最適化解析モデルの剛性に関する条件と、残存させる接合候補点の点数に関する条件と、を最適化解析条件である目的関数又は制約条件として設定するものである。
【0085】
本実施の形態1において、最適化解析条件設定ステップS11は、最適化解析条件設定部23が、最適化解析モデルの剛性最大化(剛性評価点Pの変位の最小化)を目的関数とし、接合候補点155の疲労寿命が目標疲労寿命よりも大きいとする制約条件と、残存させる接合候補点の点数を初期接合点の点数とする制約条件とを、最適化解析条件として設定する。
【0086】
疲労寿命に関する条件は、目標疲労寿命をそのまま制約条件として与えるものに限らず、例えば、接合候補点の応力が目標疲労寿命に相当する応力未満とする制約条件を与えてもよい。接合候補点の応力としては、例えば、接合候補点としてモデル化した梁要素が結合する部品モデルの平面要素の応力や、梁要素の両端に作用する力とモーメントから算出される公称構造応力、等を用いることができる。
【0087】
≪最適化解析ステップ≫
最適化解析ステップS13は、荷重・拘束条件設定ステップS3において設定した拘束条件に基づく荷重条件を最適化解析モデルに与え、最適化解析条件設定ステップS11において設定した最適化解析条件の下で最適化解析を行い、最適化解析において残存した接合候補点を部品組みを接合する最適接合点として求めるものである。
【0088】
本実施の形態1において、最適化解析ステップS13は、最適化解析部25がフロア部モデル111に設定された接合候補点を最適化の対象として最適化解析を行い、
図9に示すように、最適化解析条件を満たす接合候補点155を最適接合点157として求める。
【0089】
以上、本実施の形態1に係る車体の接合位置の最適化解析方法及び装置によれば、自動車の車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとし、該解析対象モデルに対して部品組みとして接合する接合候補点を設定した最適化解析モデルを生成し、最適化の対象とする接合候補点の残存させる点数、疲労寿命及び最適化解析モデルの剛性に関する最適化解析条件(目的関数又は制約条件)を設定して接合候補点についての最適化解析を行うことにより、接合候補点の点数最適化、解析対象モデルの剛性向上、部品組みを接合する接合点の疲労寿命の向上を目的とする最適接合点の位置を求めることができる。
【0090】
[実施の形態2]
前述した本発明の実施の形態1は、最適化解析において密度法に基づくトポロジー最適化を適用し、最適化解析条件を満たす接合候補点を求めるものであった。トポロジー最適化において接合候補点が残存するか消滅するかは、接合候補点の密度の値に基づいて判断される。
【0091】
密度法に基づいたトポロジー最適化における密度は、前述したように、0から1までの値をとる正規化された仮想的な密度であり、密度の値が1であれば接合候補点が完全に残存している状態、0であれば接合候補点が消滅した状態を表し、0から1までの間の中間値であれば接合候補点の残存と消滅とが中間的な状態を表す。
【0092】
そのため、前述のとおり、トポロジー最適化で密度法を適用する中間的な密度が多い場合には、式(1)で示すように、ペナルティ係数を用いて離散化することが好ましい。
【0093】
そして、トポロジー最適化においてペナルティ係数を与えて離散化した場合、最適化解析により残存した所定の点数の接合候補点を最適接合点として設定した解析対象モデルにおける接合点の疲労寿命と解析対象モデルの剛性は、いずれも、疲労寿命及び剛性の目標性能を満足する。
【0094】
しかしながら、トポロジー最適化においてペナルティ係数を与えて離散化しなかった場合、最適化解析した後の最適化解析モデルには中間的な密度の接合候補点が残存する。そして、最適化解析した結果に基づいて所定の点数の最適接合点を求めるために、例えばある閾値以上の密度の接合候補点を最適接合点として選出し、閾値未満の中間的な密度の値の接合候補点は最適接合点として選出しない場合、当該選出されなかった接合候補点の位置には部品組みとして接合する最適接合点が存在しない場合がある。
【0095】
このように求めた最適接合点を解析対象モデルに新たに設定して解析対象モデルの疲労寿命を算出すると、最適接合点に応力が集中して目標疲労寿命よりも低下したり、解析対象モデルの剛性が低下し、最適接合点を設定した解析対象モデルの疲労寿命及び/又は剛性が所定の性能を満足しないという問題が生ずる場合がある。
【0096】
そこで、上記問題を解消すべく鋭意検討した結果、選出した接合候補点を初期接合点の代わりに設定した解析対象モデルの疲労寿命と剛性が所定の性能を満たすか否かを判定し、満たさないと判定された場合には、最適化解析条件を変更して最適化解析を再度行うことで、剛性と疲労寿命について所定の性能を満足した最適接合点を求めることができるという知見が得られた。
【0097】
本実施の形態2に係る車体の接合位置の最適化解析方法及び装置は、上記知見に基づいてなされたものであり、その具体的な構成について説明する。なお、本実施の形態2に係る車体の接合位置の最適化解析方法及び装置と同一の構成要素については、重複する説明を省略する。
【0098】
<車体の接合位置の最適化解析装置>
本発明の実施の形態2に係る車体の接合位置の最適化解析装置31(以下、単に「最適化解析装置31」という)の構成について、以下に説明する。
【0099】
最適化解析装置31は、車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとし、解析対象モデルを構成する複数の部品を部品組みとして接合する最適な接合点を求める最適化解析を行う装置であって、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成され、
図11に示すように、表示装置3、入力装置5、記憶装置7、作業用データメモリ9及び演算処理部33を有している。そして、表示装置3、入力装置5、記憶装置7及び作業用データメモリ9は、演算処理部33に接続され、演算処理部33からの指令によってそれぞれの機能が実行される。
【0100】
≪演算処理部≫
演算処理部33は、
図11に示すように、解析対象モデル設定部13と、荷重・拘束条件設定部15と、応力解析部17と、目標疲労寿命設定部19と、最適化解析モデル生成部21と、最適化解析条件設定部23と、最適化解析部25とを含み、さらに、選出接合候補点設定解析対象モデル生成部35と、選出接合候補点性能算出部37と、判定部39と、最適接合点決定部41と、を有し、PC等のCPU(中央演算処理装置)によって構成される。これらの各部は、CPUが所定のプログラムを実行することによって機能する。
【0101】
演算処理部33における解析対象モデル設定部13と、荷重・拘束条件設定部15と、応力解析部17と、目標疲労寿命設定部19と、最適化解析モデル生成部21と、最適化解析条件設定部23と、最適化解析部25については、前述した本実施の形態1と同様の機能であるため、以下、選出接合候補点設定解析対象モデル生成部35と、選出接合候補点性能算出部37と、判定部39と、最適接合点決定部41の機能を説明する。
【0102】
(選出接合候補点設定解析対象モデル生成部)
選出接合候補点設定解析対象モデル生成部35は、最適化解析により残存した接合候補点の中から所定点数の接合候補点を選出し、選出した接合候補点を初期接合点の代わりに解析対象モデルに設定して選出接合候補点設定解析対象モデルを生成するものである。
【0103】
密度法に基づいたトポロジー最適化においては、接合候補点としてモデル化された要素(例えば、梁要素等)の密度が算出されるので、選出接合候補点設定解析対象モデル生成部35は、例えば、要素の密度が所定の閾値以上の接合候補点から所定の点数を選出し解析モデルに設定するとよい。
【0104】
(選出接合候補点性能算出部)
選出接合候補点性能算出部37は、選出接合候補点設定解析対象モデルに荷重・拘束条件設定部15により設定された荷重条件及び拘束条件を与えて応力解析を行い、応力解析の結果を用いて選出した接合候補点の疲労寿命と選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とを算出するものである。
【0105】
選出接合候補点設定解析対象モデルに設定された接合候補点の疲労寿命は、前述した目標疲労寿命設定部19と同様に、選出接合候補点設定解析対象モデルの応力解析により求めた接合候補点の応力を用い、市販の疲労寿命解析ソフトにより求めることができる。接合候補点の応力としては、例えば、接合候補点としてモデル化した梁要素が結合する部品モデルの平面要素の応力や、梁要素の両端に作用する力とモーメントから算出される公称構造応力、等を用いることができる。
【0106】
また、選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性は、例えば、選出接合候補点設定解析対象モデルにおける剛性評価点の変位やひずみを指標とすればよい。
【0107】
(判定部)
判定部39は、選出接合候補点設定解析対象モデルに設定された接合候補点の疲労寿命と選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とが初期接合点が設定された解析対象モデルを超える所定の性能を満たすかどうかを判定するものである。
【0108】
疲労寿命に係る所定の性能は、例えば、目標疲労寿命設定部19により設定された目標疲労寿命の所定範囲内とするとよい。
【0109】
(最適接合点決定部)
最適接合点決定部41は、判定部39により所定の性能を満たすと判定された場合には、前記選出した接合候補点を最適接合点として求め、判定部39により所定の性能を満たさないと判定された場合、選出した接合候補点の疲労寿命と選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とが前記所定の性能を満たすまで、最適化解析条件設定部23により設定する接合候補点の点数に関する条件を変更し、最適化解析部25と、選出接合候補点設定解析対象モデル生成部35と、選出接合候補点性能算出部37と、判定部39と、による処理を繰り返し、所定の性能を満たしたときに選出された接合候補点を最適接合点として決定するものである。
【0110】
判定部39により剛性と疲労寿命が所定の性能を満たすと判定されなかった場合、最適接合点決定部41は、最適化解析条件設定部23において最適化解析において残存させる接合候補点の点数を増やすように最適化解析条件を変更するとよい。
【0111】
<車体の接合位置の最適化解析方法>
本発明の実施の形態2に係る車体の接合位置の最適化解析方法は、車体モデルの全部又は一部を解析対象モデルとし、コンピュータが以下の各ステップを実行し、該解析対象モデルを構成する複数の部品モデルを部品組みとして接合する最適接合点の位置を求める最適化解析を行うものであって、
図12に示すように、解析対象モデル設定ステップS1と、荷重・拘束条件設定ステップS3と、応力解析ステップS5と、目標疲労寿命設定ステップS7と、最適化解析モデル生成ステップS9と、最適化解析条件設定ステップS11と、最適化解析ステップS13と、選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップS15と、選出接合候補点性能算出ステップS17と、判定ステップS19と、最適接合点決定ステップS21と、を含むものである。
【0112】
上記の各ステップのうち、解析対象モデル設定ステップS1と、荷重・拘束条件設定ステップS3と、応力解析ステップS5と、目標疲労寿命設定ステップS7と、最適化解析モデル生成ステップS9と、最適化解析条件設定ステップS11と、最適化解析ステップS13と、については、前述した本実施の形態1と同様であるため、以下、選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップS15と、選出接合候補点性能算出ステップS17と、判定ステップS19と、最適接合点決定ステップS21について説明する。なお、本実施の形態2に係る最適化解析方法の各ステップは、コンピュータによって構成された最適化解析装置31(
図11)が行うものである。
【0113】
≪選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップ≫
選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップS15は、最適化解析ステップS13における最適化解析により残存した接合候補点の中から所定点数の接合候補点を選出し、選出した接合候補点を初期接合点の代わりに解析対象モデルに設定して選出接合候補点設定解析対象モデルを生成するものである。
本実施の形態2において、選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップS15は、選出接合候補点設定解析対象モデル生成部35が行う。
【0114】
≪選出接合候補点性能算出ステップ≫
選出接合候補点性能算出ステップS17は、選出接合候補点設定解析対象モデルに荷重・拘束条件設定ステップS3において設定した荷重条件及び拘束条件を与えて応力解析を行い、応力解析の結果を用いて、選出接合候補点設定解析対象モデルに設定された接合候補点の疲労寿命と選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とを算出するものである。
本実施の形態2において、選出接合候補点性能算出ステップS17は、選出接合候補点性能算出部37が行う。
【0115】
≪判定ステップ≫
判定ステップS19は、選出接合候補点設定解析対象モデルに設定された接合候補点の疲労寿命と選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とが初期接合点が設定された解析対象モデルを超える所定の性能を満たすかどうかを判定するものである。
本実施の形態2において、判定ステップS19は、判定部39が行う。
【0116】
前述のとおり、疲労寿命に係る所定の性能は、例えば、目標疲労寿命設定部19により設定された目標疲労寿命の所定範囲内とすればよい。
【0117】
≪最適接合点決定ステップ≫
最適接合点決定ステップS21は、判定ステップS19において所定の性能を満たすと判定された場合には、選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップS15において選出した接合候補点を最適接合点として求め、判定ステップS19において所定の性能を満たさないと判定された場合、選出接合候補点設定解析対象モデルにおける接合候補点の疲労寿命と選出接合候補点設定解析対象モデルの剛性とが所定の性能を満たすまで、最適化解析条件設定ステップS11において接合候補点の点数に関する条件を変更し、最適化解析ステップS13と、選出接合候補点設定解析対象モデル生成ステップS15と、選出接合候補点性能算出ステップS17と、判定ステップS19と、を繰り返し、所定の性能を満たしたときに選出した接合候補点を最適接合点として決定するものである。なお、判定ステップS19において、所定の性能を満たさない場合があるのは、中間的な密度の接合候補点が多数存在し、これらを総合した性能を判定しているためである。
本実施の形態2において、最適接合点決定ステップS21は、最適接合点決定部41が行う。
【0118】
以上、本実施の形態2に係る車体の接合位置の最適化解析方法及び装置においては、密度法に基づくトポロジー最適化において離散化をしない場合であっても、接合候補点の点数最適化、解析対象モデルの剛性向上、部品組みを接合する接合点の疲労寿命の向上を目的とする最適接合点を適切に決定することができる。
【0119】
上記の説明は、車体全体をモデル化した車体モデルを取得し、車体モデルの一部であるフロア部モデルを解析対象モデルとしたものである。もっとも、本発明は、車体モデルの全体を解析対象モデルとしてもよいし、車体モデルにおけるフロア部モデル以外の部位を解析対象モデルとしてもよい。また、車体モデルの一部である車体部分モデルを取得し、該取得した車体部分モデルを解析対象モデルとしてもよい。
【0120】
上記の説明は、フロア部モデル111にあらかじめ60mmの間隔で352点の初期接合点131が設定されている場合を例に挙げたが、初期接合点131の間隔及び点数はこれに限定されるものではない。
【0121】
また、初期接合点131は、操作者又は他者によりフロア部モデル111に予め設定されている場合についてのものであった。もっとも、本発明は、解析対象モデル設定部より、又は、解析対象モデル設定ステップにおいて、操作者が新たに初期接合点を設定するものや、初期接合点がすでに設定されている解析対象モデルにさらに追加して初期接合点を設定してもよい。
【0122】
本実施の形態1は、フロア部モデル111に対して、FR(フロントからリアへの)軸回りに捩じるような荷重が作用する場合を想定し、
図4に示す荷重条件及び拘束条件を設定するものであったが、本発明は、解析対象とする車体の部位や実際の車体に作用する荷重を想定して、荷重条件と拘束条件を適宜設定すればよい。
【0123】
本発明の実施の形態1及び実施の形態2においては、接合候補点の疲労寿命の目標性能は、解析対象モデルに設定された初期接合点の最も短い疲労寿命(最短疲労寿命)に基づいて設定するものであった。
【0124】
もっとも、本発明は、最適化解析を行う前の初期接合点131に追加接合点153を密に設定(
図8)した最適化解析モデルにおける接合候補点155の疲労寿命を算出し、該算出した接合候補点の疲労寿命のうち最短疲労寿命を決定し、以下の関係を満たすように、最適化解析における目標疲労寿命を設定するとよい。
(初期接合点の最短疲労寿命)<(接合候補点の目標疲労寿命)<(最適化解析前の接合点を密に設定した接合候補点の最短疲労寿命)
【0125】
さらに、上記の説明は、初期接合点と追加接合点の双方を接合候補点として最適化解析を行うものであったが、追加接合点のみを接合候補点とし、初期接合点は最適化解析の対象とせず、初期接合点に追加する最適接合点を求めるものであってもよい。
【0126】
また、上記の説明においては、接合候補点の点数を初期接合点の点数と同じとする最適化解析条件を設定していたが、初期接合点と異なる点数を接合候補点の点数に関するとする最適化解析条件を設定してもよい。
【0127】
なお、本実施の形態1及び実施の形態2は、最適化解析条件として、最適化解析モデル151の剛性に関する目的関数と、接合候補点155の疲労寿命及び残存させる接合候補点の点数に関する制約条件とを、設定する場合についてのものであったが、本発明は、接合候補点の点数に関する目的関数と、最適化解析モデルの剛性及び接合候補点の疲労寿命に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定するものであってもよいし、接合候補点に関する目的関数と、接合候補点の点数及び最適化解析モデルの剛性に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定するものであってもよい。
目的関数と制約条件との違いによる作用効果については、後述する実施例において説明する。
【0128】
さらに、初期接合点を接合候補点として設定して最適化解析を行うと、最適化解析において部品組みとして接合する接合候補点が消失して部品組みがバラバラになり、最適化解析を行うことができなくなってしまうことがある。このような場合には、最適化解析の対象とはしない固定接合点を、各部品組みに少なくとも1つ設けるとよい。
【0129】
固定接合点は、例えば、初期接合点の中から任意に選択してもよいし、固定接合点の候補となる固定接合候補点を設定して解析対象モデルの応力解析又は最適化解析を別途行い、その結果に基づいて固定接合候補点の中から固定接合点を選出してもよい。
また、上記の説明は接合候補点の疲労寿命又は最適化解析モデルの剛性を目的関数とするものであったが、接合候補点の点数を目的関数とし、疲労寿命と剛性を制約条件としてもよい。
【実施例0130】
本発明の効果を確認する解析を行ったので、これについて説明する。
本実施例では、
図2に示すように、車体のフロア部をモデル化したフロア部モデル111を対象とし、フロア部モデル111を構成する部品モデルを部品組みとして接合する最適接合点を最適化解析により求めた。
【0131】
フロア部モデル111は、実施の形態1で述べたように、部品モデルとして、フロアパネルモデル113と、トンネルモデル115と、ロッカーインナモデル117と、ロッカーアウタモデル119と、フロントフロアクロスモデル121と、リアフロアクロスモデル123と、を有して構成されている。これらの各部品モデルは、平面要素でモデル化されている。
【0132】
そして、フロア部モデル111は、部品モデルを部品組みとして接合する初期接合点131が予め設定されている。初期接合点131は、部品モデルの平面要素の節点を結合する梁要素でモデル化され、初期接合点の点数は352点、初期接合点131同士の間隔Dは60mmであった。
【0133】
まず、
図4に示す荷重条件と拘束条件をフロア部モデル111に与えて、応力解析を行った。
次に、応力解析により求めた初期接合点の応力を用いて各初期接合点の疲労寿命を算出し、最も短い疲労寿命に基づいて目標疲労寿命を設定した。
【0134】
続いて、
図8に示すように、フロア部モデル111における初期接合点131の間に間隔d=20mmで追加接合点153を設定し、初期接合点131と追加接合点153とを接合候補点155とする最適化解析モデル151を密に生成した。
【0135】
続いて、
図4に示す拘束条件の下で荷重条件を与えて最適化解析を行い、最適化解析条件を満たす接合候補点155を求めた。最適化解析には、密度法に基づいたトポロジー最適化を適用し、トポロジー最適化においてペナルティ係数を20に設定して離散化した。
【0136】
実施例では、最適化解析モデル151の剛性に関する目的関数と、最適化解析により残存させる接合候補点155の疲労寿命に関する制約条件と、最適化解析により残存させる接合候補点155の点数に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定したものを発明例とした。
【0137】
これに対し、比較対象として、疲労寿命に関する制約条件を与えず、最適化解析モデルの剛性を目的関数とし接合候補点の点数のみを制約条件とする最適化条件を与えたものを比較例とした。
【0138】
発明例において、疲労寿命に関する制約条件は、接合候補点155の応力が初期接合点131の最短疲労寿命に相当する応力よりも小さいとして与えた。
【0139】
さらに、発明例及び比較例ともに、目的関数として最適化解析モデルの剛性最大化、制約条件として接合候補点の点数を初期接合点の点数とした。なお、最適化解析モデルの剛性については、
図2(b)に示すように、車体前端面におけるフロアパネルモデル113とロッカーインナモデル117とが接合する部位に近い節点を剛性評価点Pとし、剛性評価点PのZ方向変位を剛性の指標とした。
【0140】
図9に、発明例における残存した接合候補点155の結果を、
図13に、比較例における残存した接合候補点155の結果を示す。
図9と
図13とを比較すると、実線楕円で囲まれた部位と破線楕円で囲まれた部位において、発明例と比較例とでは接合候補点155の有無に違いがみられた。
【0141】
さらに、最適化解析により残存した接合候補点155を最適接合点とし、
図9及び
図13に示すように、最適接合点157を設定した最適接合点フロア部モデル161について、最適接合点フロア部モデル161の剛性と最適接合点157の疲労寿命を算出した。
【0142】
剛性と疲労寿命の算出においては、まず、
図4に示す拘束条件に基づく荷重条件を最適接合点フロア部モデル161に与えて応力解析を行った。
最適接合点フロア部モデル161の剛性については、応力解析により求められた剛性評価点P(
図2(b)参照)の変位を指標とした。
最適接合点157の疲労寿命については、最適接合点フロア部モデル161の応力解析により求めた最適接合点157の応力を用いて算出した疲労寿命のうち、最短疲労寿命を指標とした。なお、最適接合点157の疲労寿命の算出においては、最適接合点157のナゲット径を5mmとし、最適接合点157としてモデル化した梁要素が結合する部品モデルの平面要素をクモの巣状に切り直した(
図7参照)。
【0143】
さらに、初期接合点131が設定されたフロア部モデル111(
図2)と、最適化解析をする前の初期接合点131と追加接合点153を密に設定した最適化解析モデル151と、についても剛性と最短疲労寿命を求め、それぞれ基準例、参考例とした。
【0144】
図14に、基準例、発明例、参考例及び比較例の剛性向上率の結果を、
図15に発明例、基準例、参考例及び比較例の最短疲労寿命の結果を示す。なお、発明例と比較例における最適接合点フロア部モデル161の剛性向上率は、基準例のフロア部モデル111における剛性評価点Pの変位を基準として求めたものである。
【0145】
発明例及び比較例は、いずれも、剛性向上率が正の値であり、基準例よりも剛性が向上し、また、最短疲労寿命も向上した。
発明例と比較例とを比較すると、発明例の剛性向上率は1.0%であり、比較例の剛性向上率1.9%に比べて若干低いものの、基準例に比べて剛性が向上している。
さらに、発明例の最短疲労寿命は7.8万回であり、基準例(2.7万回)よりも2.9倍長く、また、比較例の最短疲労寿命(4.8万回)に比べても長くなり、参考例の結果(11.4万回)に近づいた。
【0146】
<実施例2>
上記の説明は、最適化解析モデル151(
図8)の剛性を目的関数として最適化解析を行った場合(以下、「実施例1」と称す)についてのものであったが、最適化解析により残存させる接合候補点155の点数を目的関数とした場合(以下、「実施例2」と称す)、及び、最適化解析により残存させる接合候補点155の疲労寿命を目的関数とした場合(以下、「実施例3」と称す)、のそれぞれについて、実施例1と同様に、最適化解析モデル151に設定した接合候補点155の最適化解析を行った結果について説明する。
表1に、実施例1~実施例3における最低化解析条件(目的関数及び制約条件)の組み合わせの一覧を示す。
【0147】
【0148】
実施例2では、表1に示すように、最適化解析により残存させる接合候補点155の点数に関する目的関数と、最適化解析により残存させる接合候補点155の疲労寿命に関する制約条件と、最適化解析モデル151の剛性に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定したものを発明例2とした。
【0149】
これに対し、比較対象として、表1に示すように、疲労寿命に関する制約条件を与えず、接合候補点155の点数に関する目的関数と、最適化解析モデル151の剛性のみに関する制約条件と、を最適化条件として与えたものを比較例2-1とした。また、比較対象として、最適化解析モデル151の剛性に関する制約条件を与えず、接合候補点155の点数に関する目的関数と、疲労寿命のみに関する制約条件と、を最適化条件として与えたものを比較例2-2とした。
【0150】
発明例2、比較例2-1及び比較例2-2において、目的関数は、最適化解析モデル151の接合候補点155の点数最小化とした。
【0151】
また、発明例2及び比較例2-1において、最適化解析モデル151の剛性に関する制約条件は、初期接合点131が設定されたフロア部モデル111における剛性よりも大きいとして与えた。
さらに、発明例2及び比較例2-2において、疲労寿命に関する制約条件は、接合候補点155の応力が初期接合点131の最短疲労寿命に相当する応力よりも小さいとして与えた。
【0152】
最適化解析により残存した接合候補点155を最適接合点157とし、最適接合点157を設定した最適接合点フロア部モデルについて、最適接合点157の接合点数、最適接合点フロア部モデルの剛性、及び、最適接合点157の疲労寿命を算出した。
【0153】
図16に、基準例、参考例、比較例2-1、比較例2-2及び発明例2の接合点数の結果を、
図17に、基準例、参考例、比較例2-1、比較例2-2及び発明例2の剛性向上率の結果を、
図18に、基準例、参考例、比較例2-1及び比較例2-2及び発明例2の最短疲労寿命の結果を示す。基準例及び参考例は、前述した実施例1と同様である。
【0154】
発明例2、比較例2-1及び比較例2-2は、いずれも接合候補点155の点数を目的関数としているので、
図16に示すように、基準例よりも接合点数を減らすことができ、それぞれ6.3%(22点)、2.8%(10点)、0.6%(2点)削減できた。
【0155】
また、発明例2は、最適化解析モデル151の剛性及び接合候補点の疲労寿命に関する制約条件としているので、
図17に示すように剛性向上率は1.5%であり、基準例よりも剛性が向上し、さらに、
図18に示すように最短疲労寿命は2.7万回であり、基準例(2.7万回)と同じであった。
【0156】
比較例2-1は、最適化解析モデル151の剛性に関する制約条件を与えているが、剛性向上率は、
図17に示すように、-0.2%であり、基準例とほぼ同等であった。さらに、比較例2-1は、疲労寿命に関する制約条件を与えていないため、
図18に示すように、疲労寿命は0.7万回であり、基準例の疲労寿命(2.7万回)よりも74%低下した。
【0157】
比較例2-2は、最適化解析モデル151の疲労寿命に関する制約条件を与えているため、最短疲労寿命は
図18に示すように、2.7万回であり、基準例と同程度であった。しかし、剛性に関する制約条件を与えていないため、
図17に示すように、剛性向上率は、0.1%であり、基準例と同程度の剛性となった。
【0158】
以上、本実施例2の結果から、最適化解析条件として、接合候補点に関する目的条件と、剛性及び疲労寿命に関する制約条件と、を与えて接合候補点についての最適化解析を行うことで、剛性の向上と疲労寿命を維持しつつ、接合点数を初期接合点数よりも減らすことができることが示され、これにより、製造コストを低減できることが示唆された。
【0159】
<実施例3>
実施例3では、前掲した表1に示すように、最適化解析により残存させる接合候補点155の疲労寿命に関する目的関数と、最適化解析モデル151の剛性に関する制約条件と、最適化解析により残存させる接合候補点155の点数に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定したものを発明例3とした。
【0160】
これに対し、比較対象として、前掲した表1に示すように、最適化解析モデル151の剛性に関する制約条件を与えず、最適化解析により残存させる接合候補点155の疲労寿命に関する目的関数と、接合候補点155の点数のみに関する制約条件と、を最適化条件として設定したもの比較例3とした。
【0161】
発明例3及び比較例において、目的関数は、最適化解析により残存させる接合候補点155の疲労寿命の最長化とし、制約条件は接合候補点155の点数を初期接合点131の点数とした。
【0162】
また、発明例3において、最適化解析モデルの剛性に関する制約条件は、初期接合点131が設定されたフロア部モデル111における剛性よりも大きいとして与えた。
【0163】
最適化解析により残存した接合候補点155を最適接合点157とし、最適接合点157を設定した最適接合点フロア部モデルについて、最適接合点フロア部モデルの剛性と最適接合点157の疲労寿命を算出した。
【0164】
図19に、基準例、参考例、比較例3及び発明例3の最短疲労寿命の結果を、
図20に、基準例、参考例、比較例3及び発明例3の剛性向上率の結果を、示す。基準例及び参考例は、前述した実施例1と同様である。
【0165】
発明例3及び比較例3は、いずれも接合候補点155の点数を制約条件としているので、接合点数は基準例と同じ352点であった。
【0166】
また、発明例3は、接合候補点155の疲労寿命を目的関数としたので、
図19に示すように、最短疲労寿命は8.1万回であり、基準例(2.7万回)の3.0倍に向上した。また、最適化解析モデル151の剛性を制約条件としたので、剛性向上率は、
図20に示すように正の値で0.9%であり、基準例よりも剛性が若干向上した。
【0167】
一方、比較例3も、接合候補点155の疲労寿命を目的関数としたので、最短疲労寿命は、
図19に示すように、10.5万回であり、基準例(2.7万回)の3.9倍まで向上した。しかし、最適化解析モデル151の剛性を制約条件としていないので、剛性向上率は、
図20に示すように負の値で-29%であり、基準例よりも大幅に剛性が大幅に低下した。
【0168】
以上、本実施例3の結果から、最適化解析条件として、疲労寿命に関する目的条件と、接合点数及び剛性に関する制約条件と、を与えて接合候補点についての最適化解析を行うことで、接合点数を維持しつつ剛性を向上し、さらに、疲労寿命を最大限向上できることが示された。