(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080265
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】締固め方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/00 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
E02B7/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151006
(22)【出願日】2021-09-16
(62)【分割の表示】P 2020190844の分割
【原出願日】2020-11-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 健二
(72)【発明者】
【氏名】松本 信也
(72)【発明者】
【氏名】寺内 健二
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 洋
(72)【発明者】
【氏名】取違 剛
(57)【要約】
【課題】土木構造物を効率よく締固める。
【解決手段】締固め方法は、土木構造物の法面を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、締固め部は、施工面と、施工面とは反対側に位置し振動発生部と所定の方向に対向する背面と、施工面と背面と間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材を備えており、締固め方法は、板部材の施工面を法面に押当てた状態で振動発生部を作動させて締固め部を振動させ、法面を締固める。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大粗骨材寸法が40mmを超えて200mm以下であり単位セメント量が90kg/m3以上180kg/m3以下であり水セメント比が50%以上120%以下でありスランプ値が3cm未満である超硬練りコンクリート材料で形成された土木構造物の法面を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、
前記締固め部は、
施工面と、前記施工面とは反対側に位置し前記振動発生部と前記所定の方向に対向する背面と、前記施工面と前記背面と間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材を備えており、
前記施工面における前記貫通孔の各々の開口面積の合計の割合である開口率は、0.5%以上4.0%以下であり、
前記施工面における前記貫通孔の分布密度は、30個/m2以上100個/m2以下であり、
前記施工面の1m2当たりの前記振動発生部の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下であり、
締固め方法は、前記板部材の前記施工面を前記法面に押当てた状態で前記振動発生部を作動させて前記締固め部を振動させ、前記法面を締固める、
締固め方法。
【請求項2】
最大粗骨材寸法が40mmを超えて90mm以下であり単位セメント量が50kg/m3以上120kg/m3以下であり水セメント比が50%以上120%以下であるCSG材料で形成された土木構造物の法面を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、
前記締固め部は、
施工面と、前記施工面とは反対側に位置し前記振動発生部と前記所定の方向に対向する背面と、前記施工面と前記背面と間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材を備えており、
前記施工面における前記貫通孔の各々の開口面積の合計の割合である開口率は、0.5%以上4.0%以下であり、
前記施工面における前記貫通孔の分布密度は、30個/m2以上100個/m2以下であり、
前記施工面の1m2当たりの前記振動発生部の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下であり、
締固め方法は、前記板部材の前記施工面を前記法面に押当てた状態で前記振動発生部を作動させて前記締固め部を振動させ、前記法面を締固める、
締固め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構造物を締固める締固め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート材料又はCSG(Cemented Sand and Gravel)材料を盛立ててダム、堤防及び道路等の土木構造物を構築する場合に、未固化の土木構造物を締固める作業が行われる。特許文献1には、土木構造物の締固め作業に用いられる締固めアタッチメント装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された締固めアタッチメント装置は、建設機械のアームに取付け可能に形成された基体と、基体に支持された振動発生部と、振動発生部に連結された板部材と、を備えている。板部材には、土木構造物に押当てられる施工面が形成されている。板部材の施工面を土木構造物に押当てた状態で振動発生部を作動させて板部材を振動させることにより、土木構造物が締固められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたアタッチメント装置では、板部材の施工面を土木構造物に押当てるときに、板部材の施工面と土木構造物の表面との間に空気が封じ込められることがある。この場合には、板部材の振動が土木構造物に十分に伝わらず、締固めの作業効率が悪くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、土木構造物を効率よく締固めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、最大粗骨材寸法が40mmを超えて200mm以下であり単位セメント量が90kg/m3以上180kg/m3以下であり水セメント比が50%以上120%以下でありスランプ値が3cm未満である超硬練りコンクリート材料で形成された土木構造物の法面を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、締固め部は、施工面と、施工面とは反対側に位置し振動発生部と所定の方向に対向する背面と、施工面と背面と間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材と、を備えており、施工面における貫通孔の各々の開口面積の合計の割合である開口率は、0.5%以上4.0%以下であり、施工面における貫通孔の分布密度は、30個/m2以上100個/m2以下であり、施工面の1m2当たりの振動発生部の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下であり、締固め方法は、板部材の施工面を法面に押当てた状態で振動発生部を作動させて締固め部を振動させ、法面を締固める。
【0008】
また、本発明は、最大粗骨材寸法が40mmを超えて90mm以下であり単位セメント量が50kg/m3以上120kg/m3以下であり水セメント比が50%以上120%以下であるCSG材料で形成された土木構造物の法面を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、締固め部は、施工面と、施工面とは反対側に位置し振動発生部と所定の方向に対向する背面と、施工面と背面と間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材と、を備えており、施工面における貫通孔の各々の開口面積の合計の割合である開口率は、0.5%以上4.0%以下であり、施工面における貫通孔の分布密度は、30個/m2以上100個/m2以下であり、施工面の1m2当たりの振動発生部の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下であり、締固め方法は、板部材の施工面を法面に押当てた状態で振動発生部を作動させて締固め部を振動させ、法面を締固める。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、土木構造物を効率よく締固めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る締固めアタッチメント装置を用いて土木構造物を締固めている状態を示す図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す締固めアタッチメント装置の側面図であり、(b)は、
図1に示すアタッチメント装置の底面図である。
【
図3】締固めアタッチメント装置を用いて土木構造物の法面を締固めている状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る締固めアタッチメント装置100及び締固め方法について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、土木構造物1を構築している状態を示す図である。
図1に示すように、締固めアタッチメント装置100及び締固め方法は、コンクリート材料又はCSG材料で土木構造物1を構築する工事において用いられる。ここでは、土木構造物1がダムにおける堤体の一部である場合について説明するが、土木構造物1は、堤防における堤体であってもよいし道路における盛土であってもよい。
【0013】
まず、土木構造物1を構築するための材料であるコンクリート材料又はCSG材料について説明する。
【0014】
コンクリート材料は、寸法別に選定された骨材にセメント及び水を混合して製造されるセメント系材料である。スランプ値が3cm未満となるように、スランプ値が3cm以上である有スランプコンクリート材料に比して単位セメント量及び単位水量を少なくした貧配合のコンクリート材料は、超硬練りコンクリート材料とも呼ばれる。超硬練りコンクリート材料の配合は、例えば、最大粗骨材寸法が40mmを超えて200mm以下であり、単位セメント量が90kg/m3以上180kg/m3以下であり、水セメント比が50%以上120%以下である。
【0015】
なお、「スランプ値」は、固化前のセメント系材料の軟らかさを示す値であり、スランプ値が大きいほど軟らかいことを意味する。スランプ値は、例えばJIS(日本工業規格)A 1101:2005に規定されているスランプ試験方法により測定される。
【0016】
CSG材料は、建設現場周辺で得られる砂礫や岩塊等の掘削土質材料(現地発生材とも呼ばれる)にセメント及び水を混合して製造されるセメント系材料である。CSG材料の配合は、例えば、最大粗骨材寸法が40mmを超えて90mm以下であり、単位セメント量が50kg/m3以上120kg/m3以下であり、水セメント比が50%以上120%以下である。CSG材料は、セメントの凝固反応を遅延させる凝固遅延剤を含んでいてもよい。
【0017】
超硬練りコンクリート材料及びCSG材料は、有スランプコンクリート材料に比して単位セメント量が少ないため、原材料費を低減することができる。また、超硬練りコンクリート材料及びCSG材料は、有スランプコンクリート材料に比して単位水量が少なく未固化状態において流動性が低いため、型枠を設けずに所望の形状に打設することができ、土木構造物1の構築期間を短縮することができる。さらに、超硬練りコンクリート材料及びCSG材料は、有スランプコンクリート材料に比して単位セメント量及び単位水量が少ないため、水和熱による温度上昇を抑えることができ、水和熱に起因するひび割れを軽減することができる。
【0018】
次に、
図1を参照して、土木構造物1を構築する手順の概略を説明する。
【0019】
まず、地盤上に超硬練りコンクリート材料又はCSG材料を盛立てて断面台形状の土木構造物1を形成する。具体的には、不図示のダンプトラック等を用いて搬送された超硬練りコンクリート材料又はCSG材料を荷卸しして、不図示のブルドーザ等を用いて敷き均し、転圧ローラ、振動ローラ等の大型重機により締固める。超硬練りコンクリート材料又はCSG材料の荷卸し、敷き均し及び締固めを複数回繰り返して複数の層を形成することにより、断面台形状の土木構造物1が形成される。
【0020】
超硬練りコンクリート材料又はCSG材料の締固めでは、未固化の超硬練りコンクリート材料又はCSG材料の表面(法面1a及び天面1b)から振動を加えて超硬練りコンクリート材料又はCSG材料から空気を除去して密度を向上させ、併せて未固化の超硬練りコンクリート材料又はCSG材料の表面を平滑に仕上げる必要がある。締固めを行うことにより構造体としての強度が確保できる。
【0021】
以上により、土木構造物1の構築が完了する。
【0022】
締固めアタッチメント装置100及び締固め方法は、土木構造物1の締固め作業において用いられる。
図1では、締固めアタッチメント装置100を用いて土木構造物1の法面1aを締固めている状態を示している。
【0023】
締固めアタッチメント装置100は、建設機械2におけるアーム2aの先端に揺動自在に装着されて用いられる。建設機械2は、例えばバックホウであり、自走可能である。建設機械2及びアーム2aを移動させて締固めアタッチメント装置100を順次移動させることにより、土木構造物1の全体を締固めることが可能である。
【0024】
なお、土木構造物1の締固めには、自走可能な不図示の転圧ローラ又は振動ローラを用いることができるが、転圧ローラ又は振動ローラを法面1aで移動させるのは困難である。締固めアタッチメント装置100は、建設機械2の駆動により法面1aで容易に移動可能であるため、法面1aの締固めにより好適である。同様に、締固めアタッチメント装置100は、土木構造物1の狭所での締固め作業にも好適である。
【0025】
締固めアタッチメント装置100は、アーム2aに取付け可能に形成された基体10と、基体10に支持された起振機(振動発生部)20と、起振機20に連結された締固め部30と、を備えている。締固め部30は、土木構造物1に押当てられる板部材31を備えている。板部材31を土木構造物1に押当てた状態で起振機20を作動させて締固め部30を振動させると、土木構造物1が締固められる。
【0026】
板部材31を用いた締固めにおいて、板部材31と土木構造物1の表面との間に空気が封じ込められ介在していると、板部材31の振動が土木構造物1に十分に伝わらなくなる。また、振動する板部材31と土木構造物1との間に介在する空気が振動により圧縮され解放されることで、超硬練りコンクリート材料又はCSG材料に混合された骨材が土木構造物1から分離・剥離して表面の平滑性が損なわれる等、締固めが不十分、不良となる。その結果、締固めの作業効率が悪くなるおそれがある。
【0027】
そこで、締固めアタッチメント装置100の締固め部30には、
図2に示すように、板部材31を貫通する貫通孔31cが複数形成されている。そのため、板部材31と土木構造物1の表面との間に介在する空気は、板部材31を振動させる締固め作業時に貫通孔31cを通じて抜ける。したがって、板部材31と土木構造物1の表面との間に空気が封じ込められ介在することを防止することができ、板部材31の振動を土木構造物1に十分に伝えることができる。これにより、土木構造物1を効率よく締固めることができる。
【0028】
締固めアタッチメント装置100の構造を、
図2を参照して詳述する。
図2(a)は、締固めアタッチメント装置100の断面図であり、
図2(b)は、締固めアタッチメント装置100の底面図(
図2(a)における矢印IIBの方向に見た図)である。
【0029】
図2(a)に示すように、基体10は、アーム2a(
図1参照)の先端に連結されるブラケット11と、ブラケット11に取付けられたフレーム12と、を備えている。フレーム12は、断面が略コ字状に形成されており、弾性部材13を介して起振機20を挟持している。弾性部材13は、例えば、ゴム板と鋼板とを交互に積層した積層ゴムである。
【0030】
起振機20は、
図2(a)における上下方向に振動可能に形成されている。
図2(a)では、起振機20の筐体のみが示されており、起振機20の内部構造の図示が省略されている。起振機20の内部構造を簡単に説明すると、起振機20は、電動モータと、電動モータの駆動により同位相で互いに逆回転する一対の回転軸と、一対の回転軸に偏心してそれぞれ設けられた一対の回転子と、を備えている。一対の回転軸は、
図2(a)における紙面垂直方向に延びかつ
図2(a)における左右方向に並列して設けられている。そのため、電動モータの駆動により一対の回転子が回転すると、左右方向の遠心力は打ち消され、上下方向の遠心力だけが残る。その結果、上下方向に起振力が生じ、起振機20が上下方向に振動する。以下において、起振機20が振動する方向(
図2(a)における上下方向)を「振動方向」とも称する。
【0031】
起振機20は振動を伝達するベース部21を有する。ベース部21は例えば、少なくとも一部にプレート(板)形状の部分を含み、プレート形状の板面は、板部材31の板面である背面31bと対向している。起振機20のベース部21は、ボルトナット(不図示)を用いて締固め部30と連結されている。起振機20の振動はベース部21を通じて締固め部30に伝達される。
【0032】
締固め部30は、板部材31と、板部材31を補強する補強リブ32と、を備えている。そのため、締固め時に板部材31が変形するのを補強リブ32によって防止することができる。したがって、板部材31を軽量化でき効率よく土木構造物1(
図1参照)を締固めることができる。補強リブ32は、板部材31の板面である背面31bと交差して延在する部分を有する鋼製の部材であって、板部材31の変形を防止するものである。
【0033】
板部材31は、土木構造物1に押当てられる施工面31aと、施工面31aとは反対側に位置する背面31bと、施工面31aと背面31bとの間を貫通する複数の貫通孔31cと、を有している。
図2(a)及び(b)に示すように、補強リブ32は、背面31bに格子状に設けられ、連結されている。
【0034】
貫通孔31cの断面は、略円形に形成されており、貫通孔31cの内径は、施工面31aと背面31bとの間に渡って略同じである。貫通孔31cの中心軸は、振動方向に沿って延びている。貫通孔31cの断面は、円形に限られず、例えば四角形であってもよい。貫通孔31cの断面積は、施工面31aと背面31bとの間に渡って同じでなくてもよく、例えば施工面31aから背面31bに向かうにつれ拡大していてもよい。また、貫通孔31cの中心軸は、振動方向に沿っていなくてもよく、施工面31aと背面31bとの間を貫通する範囲で振動方向に対して傾いていてもよい。
【0035】
板部材31の背面31bは、振動方向に起振機20と対向しており、背面31bの一部は、振動方向に背面31bを見て起振機20に覆われた被覆領域CAとなっている。貫通孔31cの一部は、被覆領域CAに開口している。
【0036】
起振機20の振動を板部材31に伝達するためには、所定の大きさの被覆領域CAが必要となる。仮に、起振機20が板部材31の背面31bに密着しており貫通孔31cの一部を閉塞していると、貫通孔31cの一部から板部材31と土木構造物1の表面との間の空気が抜けなくなる。その結果、板部材31と土木構造物1の表面との間に空気が封じ込められ、締固めの作業効率が悪くなるおそれがある。特に、被覆領域CAは起振機20に対向しており、かつ、板部材31の中心部に位置するため、締固め不良は顕著となる。
【0037】
締固めアタッチメント装置100では、
図2(a)及び(b)に示すように、補強リブ32の突出する部分に起振機20が接合されており、補強リブ32は、板部材31の背面31bと起振機20とを離間している。より具体的には、補強リブ32は起振機20のベース部21と板部材31の背面31bとに所定の空間を確保するように離間する。そのため、被覆領域CAに開口する貫通孔31cからも、板部材31の施工面31aと土木構造物1(
図1参照)の表面との間の空気が抜ける。したがって、板部材31の施工面31aと土木構造物1の表面との間に空気が封じ込められ、介在していることをより確実に防止することができる。これにより、土木構造物1をより効率的に締固めることができる。
【0038】
ところで、施工面31aにおける貫通孔31cの開口面積が小さ過ぎたり、施工面31aにおける貫通孔31cの分布密度が小さ過ぎたりする場合には、板部材31の施工面31aと土木構造物1の表面との間の空気が抜けにくくなる。一方、施工面31aにおける貫通孔31cの開口面積が大き過ぎたり、施工面31aにおける貫通孔31cの分布密度が大き過ぎたりする場合には、空気は抜けやすくなるものの、施工面31aと土木構造物1との接触面積が小さくなり、土木構造物1を締固めにくくなる。
【0039】
そこで、施工面31aにおける貫通孔31cの開口面積及び分布密度を変えて試験を行った。締固め板である板部材31の大きさに関して、法面1aの傾斜方向である縦方向の長さは1.4m又は1.7mであり、水平方向である横方向の寸法は1.3mである。なお、締固め板である板部材31の好適な大きさは、縦方向が0.9m以上、2.0m以下であり、横方向が0.9m以上、1.6m以下である。試験の良否は、土木構造物1の締固め作業時における超硬練りコンクリート材料又はCSG材料の分離・剥離の有無、及び、締固め作業後における土木構造物1の表面の平滑度を目視により判断した。
【0040】
その結果、施工面31aにおける貫通孔31cの各々の開口面積の合計の割合、つまり、板部材31の面積に対する開口面積の合計の割合(開口率)を、0.5%(m2/m2)以上4.0%(m2/m2)以下とし、施工面31aにおける貫通孔31cの分布密度を30個/m2以上100個/m2以下とした場合に、土木構造物1を良好に締固めることができた。また、施工面31aにおける貫通孔31cの開口率を0.5%(m2/m2)以上3.0%(m2/m2)以下とし、施工面31aにおける貫通孔31cの分布密度を30個/m2以上75個/m2以下とした場合に、土木構造物1をより良好に締固めることができた。開口率が上記の設定より小さいと、締固め時作業時に、硬練りコンクリート材料又はCSG材料の分離・剥離が多く観察され、開口率が上記の設定より大きいと締固め不足の部分が発生することが観察された。また、分布密度が上記の設定より小さいと締固め不足の部分が発生することが観察され、分布密度が上記の設定より大きいと硬練りコンクリート材料又はCSG材料の分離・剥離が多く観察された。
【0041】
以上のことから、施工面31aにおける貫通孔31cの開口率は、0.5%(m2/m2)以上4.0%(m2/m2)以下であり、施工面31aにおける貫通孔31cの分布密度は30個/m2以上100個/m2以下であることが好ましい。また、施工面31aにおける貫通孔31cの開口率は、0.5%(m2/m2)以上3.0%(m2/m2)以下であり、施工面31aにおける貫通孔31cの分布密度が30個/m2以上75個/m2以下であることがより好ましい。
【0042】
なお、貫通孔31cの内径はφ20mm程度(12mm~30mm)が好ましい。更に好ましくは、12mm~24mmである。
【0043】
また、起振機20の起振力が小さ過ぎる場合には、土木構造物1に伝達される振動が弱く、土木構造物1を締固めにくくなるおそれがあり、起振機20の起振力が大き過ぎる場合には、土木構造物1の表面が崩れるおそれがある。
【0044】
そこで、施工面31aの1m2当たりの起振機20の起振力を変えて試験を行った。その結果、施工面31aの1m2当たりの起振機20の起振力を50kN/m2以上150kN/m2以下とした場合に、土木構造物1を良好に締固めることができた。また、施工面31aの1m2当たりの起振機20の起振力を60kN/m2以上120kN/m2以下とした場合に、土木構造物1をより良好に締固めることができた。
【0045】
以上のことから、施工面31aの1m2当たりの起振機20の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下であることが好ましい。また、施工面31aの1m2当たりの起振機20の起振力は、60kN/m2以上120kN/m2以下であることがより好ましい。貫通孔31cの開口の合計である開口率と貫通孔31cの分布密度と起振機20の起振力を適切な条件に設定することで、効率的に締固めることができる。
【0046】
なお、起振機20の起振力は、起振機20における回転子の偏心モーメント量に比例し、起振機20における回転軸の角振動数の自乗に比例して大きくなり、次式で表される。
【0047】
P=(Kω2)×10-3
ただし、P:起振力(kN)
K:回転子の偏心モーメント量(kg・m)
ω:回転軸の角振動数(sec-1)
【0048】
図2(a)に示すように、板部材31は、端部近傍において背面31b側に折られており、施工面31aに対して斜めに延びる傾斜面31dが板部材31に形成されている。そのため、板部材31を土木構造物1上で傾斜面31d側に容易にスライドさせることができる。
【0049】
図2(b)に示すように、締固めアタッチメント装置100では、振動方向に見て、施工面31aの中心C1は、起振機20の振動中心C2に対してオフセットして設けられている。施工面31aの中心C1は、振動方向に見て、起振機20の振動中心C2と一致していてもよい。
【0050】
図3は、締固めアタッチメント装置100を用いて土木構造物1の法面1aを締固めている状態を示す拡大図である。
図3に示すように、締固めアタッチメント装置100を用いて土木構造物1の法面1aを締固める場合には、施工面31aの中心C1が振動方向に見て起振機20の振動中心C2よりも鉛直下方に位置するように締固めアタッチメント装置100の向きを定めることが好ましい。この場合には、締固めアタッチメント装置100の重量により生じる板部材31の下端周りのモーメントが土木構造物1の法面1aに作用する。したがって、土木構造物1の法面1aをより強い力で押固めることができ、土木構造物1の法面1aをより効率的に締固めることができる。
【0051】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0052】
締固めアタッチメント装置100及び締固め方法では、板部材31を貫通する貫通孔31cが複数形成されている。そのため、板部材31と土木構造物1の表面との間に介在する空気は、板部材31を振動させる締固め作業時に貫通孔31cを通じて抜ける。したがって、板部材31と土木構造物1の表面との間に空気が封じ込められ介在することを防止することができ、板部材31の振動を土木構造物1に十分に伝えることができる。これにより、土木構造物1を効率よく締固めることができる。
【0053】
また、締固めアタッチメント装置100及び締固め方法では、補強リブ32は、板部材31の背面31bと起振機20のベース部21とを離間している。そのため、被覆領域CAに開口する貫通孔31cからも、板部材31の施工面31aと土木構造物1(
図1参照)の表面との間の空気が抜ける。したがって、板部材31の施工面31aと土木構造物1の表面との間に空気が封じ込められるのをより確実に防止することができる。これにより、土木構造物1を効率的に締固めることができる。
【0054】
また、施工面31aにおける貫通孔31cの各々の開口面積の合計の割合、つまり、板部材31の面積に対する開口面積の合計の割合(開口率)は、0.5%(m2/m2)以上4.0%(m2/m2)以下であり、施工面31aにおける貫通孔31cの分布密度は30個/m2以上100個/m2以下である。そのため、板部材31の施工面31aと土木構造物1の表面との間の空気を抜きつつ、施工面31aと土木構造物1との接触面積を確保することができる。したがって、土木構造物1をより効率的に締固めることができる。
【0055】
施工面31aの1m2当たりの起振機20の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下である。そのため、土木構造物1に伝達される振動が弱くなり過ぎるのを防ぎつつ押固めつつ土木構造物1の表面が崩れるのを防ぐことができる。したがって、土木構造物1をより効率的に締固めることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0057】
上記実施形態では、起振機20は、補強リブ32の突出する部分に接合されているが、補強リブ32の突出する部分に不図示の天板が接合され、天板に起振機20が接合されていてもよい。また、起振機20は、板部材31の背面31bから離間した状態で補強リブ32の側面に接合されていてもよい。つまり、起振機20と板部材31の背面31bとが補強リブ32によって離間させていればよい。
【0058】
上記実施形態では、超硬練りコンクリート材料又はCSG材料で形成された土木構造物1を締固めアタッチメント装置100を用いて締固める場合について説明したが、締固めアタッチメント装置100は、有スランプコンクリート材料で形成された土木構造物1の締固めにも適用可能である。超硬練りコンクリート材料又はCSG材料は、有スランプコンクリート材料と比較して板部材31の押固めによる飛散が生じにくい。このような理由から、締固めアタッチメント装置100は、超硬練りコンクリート材料又はCSG材料で形成された土木構造物1の締固めに好適である。
【0059】
なお、上記実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載されうる。
[請求項1]
コンクリート材料又はCSG材料で形成された土木構造物を締固める締固めアタッチメント装置であって、
建設機械のアームに取付け可能に形成された基体と、
前記基体に支持され、所定の方向に振動する振動発生部と、
前記振動発生部に連結され、前記振動発生部の起振力により振動して前記土木構造物を締固める締固め部と、を備え、
前記締固め部は、
前記土木構造物に押当てられる施工面と、前記施工面とは反対側に位置し前記振動発生部と前記所定の方向に対向する背面と、前記施工面と前記背面との間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材を備える、
締固めアタッチメント装置。
[請求項2]
前記締固め部は、前記背面に設けられ、前記板部材を補強する補強リブを更に備え、
前記複数の貫通孔の少なくとも一部は、前記所定の方向に前記背面を見て前記振動発生部によって覆われる領域に開口しており、
前記補強リブは、前記背面と前記振動発生部とを離間している、
請求項1に記載の締固めアタッチメント装置。
[請求項3]
前記施工面における前記貫通孔の各々の開口面積の合計の割合である開口率は、0.5%以上4.0%以下であり、
前記施工面における前記貫通孔の分布密度は、30個/m2以上100個/m2以下である、
請求項1又は2に記載の締固めアタッチメント装置。
[請求項4]
前記施工面の1m2当たりの前記振動発生部の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の締固めアタッチメント装置。
[請求項5]
超硬練りコンクリート材料又はCSG材料で形成された土木構造物を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、
前記締固め部は、
施工面と、前記施工面とは反対側に位置し前記振動発生部と前記所定の方向に対向する背面と、前記施工面と前記背面と前の間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材を備えており、
締固め方法は、前記板部材の前記施工面を前記土木構造物に押当てた状態で前記振動発生部を作動させて前記締固め部を振動させ、前記土木構造物を締固める、
締固め方法。
【符号の説明】
【0060】
100・・・アタッチメント装置
1・・・土木構造物
2・・・建設機械
2a・・・アーム
10・・・基体
20・・・起振機(振動発生部)
30・・・締固め部
31・・・板部材
31a・・・施工面
31b・・・背面
31c・・・貫通孔
32・・・補強リブ
CA・・・被覆領域
【手続補正書】
【提出日】2021-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大粗骨材寸法が40mmを超えて200mm以下であり単位セメント量が90kg/m3以上180kg/m3以下であり水セメント比が50%以上120%以下でありスランプ値が3cm未満である超硬練りコンクリート材料で形成された土木構造物の法面を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、
前記締固め部は、
施工面と、前記施工面とは反対側に位置し前記振動発生部と前記所定の方向に対向する背面と、前記施工面と前記背面と間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材を備えており、
前記施工面における前記貫通孔の各々の開口面積の合計の割合である開口率は、0.5%以上4.0%以下であり、
前記施工面における前記貫通孔の分布密度は、30個/m2以上100個/m2以下であり、
前記施工面の1m2当たりの前記振動発生部の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下であり、
締固め方法は、前記板部材の前記施工面を前記法面にのみ押当てた状態で前記振動発生部を作動させて前記締固め部を振動させ、前記法面のみを締固める、
締固め方法。
【請求項2】
最大粗骨材寸法が40mmを超えて90mm以下であり単位セメント量が50kg/m3以上120kg/m3以下であり水セメント比が50%以上120%以下であるCSG材料で形成された土木構造物の法面を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、
前記締固め部は、
施工面と、前記施工面とは反対側に位置し前記振動発生部と前記所定の方向に対向する背面と、前記施工面と前記背面と間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材を備えており、
前記施工面における前記貫通孔の各々の開口面積の合計の割合である開口率は、0.5%以上4.0%以下であり、
前記施工面における前記貫通孔の分布密度は、30個/m2以上100個/m2以下であり、
前記施工面の1m2当たりの前記振動発生部の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下であり、
締固め方法は、前記板部材の前記施工面を前記法面にのみ押当てた状態で前記振動発生部を作動させて前記締固め部を振動させ、前記法面のみを締固める、
締固め方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、最大粗骨材寸法が40mmを超えて200mm以下であり単位セメント量が90kg/m3以上180kg/m3以下であり水セメント比が50%以上120%以下でありスランプ値が3cm未満である超硬練りコンクリート材料で形成された土木構造物の法面を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、締固め部は、施工面と、施工面とは反対側に位置し振動発生部と所定の方向に対向する背面と、施工面と背面と間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材と、を備えており、施工面における貫通孔の各々の開口面積の合計の割合である開口率は、0.5%以上4.0%以下であり、施工面における貫通孔の分布密度は、30個/m2以上100個/m2以下であり、施工面の1m2当たりの振動発生部の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下であり、締固め方法は、板部材の施工面を法面にのみ押当てた状態で振動発生部を作動させて締固め部を振動させ、法面のみを締固める。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、本発明は、最大粗骨材寸法が40mmを超えて90mm以下であり単位セメント量が50kg/m3以上120kg/m3以下であり水セメント比が50%以上120%以下であるCSG材料で形成された土木構造物の法面を、所定の方向に振動する振動発生部に連結された締固め部を用いて締固める締固め方法であって、締固め部は、施工面と、施工面とは反対側に位置し振動発生部と所定の方向に対向する背面と、施工面と背面と間を貫通する複数の貫通孔と、を有する板部材と、を備えており、施工面における貫通孔の各々の開口面積の合計の割合である開口率は、0.5%以上4.0%以下であり、施工面における貫通孔の分布密度は、30個/m2以上100個/m2以下であり、施工面の1m2当たりの振動発生部の起振力は、50kN/m2以上150kN/m2以下であり、締固め方法は、板部材の施工面を法面にのみ押当てた状態で振動発生部を作動させて締固め部を振動させ、法面のみを締固める。