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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080272
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】噴霧型害虫忌避製品
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/16 20060101AFI20220520BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20220520BHJP
   A01N 37/44 20060101ALI20220520BHJP
   A01N 37/18 20060101ALI20220520BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20220520BHJP
   A01N 65/22 20090101ALI20220520BHJP
   A01N 65/28 20090101ALI20220520BHJP
【FI】
A01N47/16 A
A01P17/00
A01N37/44
A01N37/18 Z
A01N31/08
A01N65/22
A01N65/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166604
(22)【出願日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020191090
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田丸 友裕
(72)【発明者】
【氏名】三好 一史
(72)【発明者】
【氏名】下方 宏文
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC06
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB13
4H011BB22
(57)【要約】
【課題】害虫忌避組成物が噴霧された際の、塗布判別性が向上し、さらに、塗布均一性や塗布付着性にも優れる噴霧型害虫忌避製品を提供する。
【解決手段】(a)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上である害虫忌避成分と、(b)精油と、(c)有機溶剤と、を含有する害虫忌避組成物が充填され、噴口が形成された噴霧型害虫忌避製品であって、下記式(I)で定義される塗布噴霧係数が-1.8~6.0である、噴霧型害虫忌避製品。
【数1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上である害虫忌避成分と、
(b)精油と、
(c)有機溶剤と、を含有する害虫忌避組成物が充填され、噴口が形成された噴霧型害虫忌避製品であって、下記式(I)で定義される塗布噴霧係数が-1.8~6.0である、噴霧型害虫忌避製品。
【数1】
【請求項2】
前記噴霧型害虫忌避製品において、噴口から15cm離れた位置における害虫忌避組成物のメジアン粒子径(D50)r15は、30~160μmであるように調整されている請求項1に記載の噴霧型害虫忌避製品。
【請求項3】
前記(b)精油は、イランイラン油、ウイキョウ油、オレンジ油、カシア油、カミツレ油、カモミラ油、グレープフルーツ油、クローブ油、ケイヒ油、シソ油、シダー油、シダーウッド油、シトロネラ油、シナモン油、シナモンリーフ油、ジャスミン油、スペアミント油、ゼラニウム油、タイムホワイト油、チョウジ油、ティートリー油、テレビン油、ノバラ油、パイン油、パチュリ油、ハッカ油、ヒバ油、ピメント油、ビャクダン油、フェンネル油、べチベル油、ペニーローヤル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ライム油、ラバンジン油、ラベンダー油、ルー油、レモン油、レモングラス油、レモンユーカリ油、ローズヒップ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油からなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の噴霧型害虫忌避製品。
【請求項4】
前記(c)有機溶剤は、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤からなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の噴霧型害虫忌避製品。
【請求項5】
前記(b)精油を害虫忌避組成物全体量に対して0.1~5.0w/v%含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の噴霧型害虫忌避製品。
【請求項6】
人体に噴霧処理される請求項1~5のいずれか1項に記載の噴霧型害虫忌避製品。
【請求項7】
腕又は足首に噴霧処理される請求項1~6のいずれか1項に記載の噴霧型害虫忌避製品。
































【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧型害虫忌避製品に関する。より詳細には、害虫忌避成分、精油、及び有機溶剤を含有する害虫忌避組成物が充填され、噴口が形成された噴霧型害虫忌避製品において、害虫忌避組成物が噴霧された際の、塗布判別性、塗布均一性、塗布付着性に優れた噴霧型害虫忌避製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール等を配合した害虫忌避剤が知られている。(特許文献1、2等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-118922号公報
【特許文献2】特開2018-35150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの中でもディートは、12歳未満の児童が使用する場合、使用回数が制限される。そのため、子供(特に未就学児)に使用する場合、保護者が慎重に子供に塗布して使用する必要がある。また、イカリジン等はディートのように12歳未満の児童への使用制限はないが、子供に使用する場合、保護者が子供に塗布して使用するのが一般的である。そのため、保護者が子供に噴霧型害虫忌避製品を使用する場合、害虫忌避成分の過剰使用、塗り斑や塗り漏れを避けるために、塗布した箇所を適切に判別できること、薬剤を均一に噴霧塗布すること、噴霧塗布の際に十分量の薬剤を安定して付着させることは重要な課題である。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、害虫忌避成分、精油、及び有機溶剤を含有する害虫忌避組成物が充填され、噴口が形成された噴霧型害虫忌避製品において、害虫忌避組成物が噴霧された際の、塗布判別性、塗布均一性、塗布付着性に優れた噴霧型害虫忌避製品を提供することを目的とする。
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、噴口が形成された噴霧型害虫忌避製品において、下記で説明する塗布噴霧係数が一定の範囲内となるように、害虫忌避成分、精油、有機溶剤を配合した害虫忌避組成物を充填することで、害虫忌避組成物が噴霧された際の、塗布判別性が向上し、さらに、塗布均一性や塗布付着性にも優れる効果があることを見出し、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)(a)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上である害虫忌避成分と、
(b)精油と、
(c)有機溶剤と、を含有する害虫忌避組成物が充填され、噴口が形成された噴霧型害虫忌避製品であって、下記式(I)で定義される塗布噴霧係数が-1.8~6.0である、噴霧型害虫忌避製品。
【0008】
【数1】
【0009】
(2)前記噴霧型害虫忌避製品において、噴口から15cm離れた位置における害虫忌避組成物のメジアン粒子径(D50)r15は、30~160μmであるように調整されている(1)に記載の噴霧型害虫忌避製品。
(3)前記(b)精油は、イランイラン油、ウイキョウ油、オレンジ油、カシア油、カミツレ油、カモミラ油、グレープフルーツ油、クローブ油、ケイヒ油、シソ油、シダー油、シダーウッド油、シトロネラ油、シナモン油、シナモンリーフ油、ジャスミン油、スペアミント油、ゼラニウム油、タイムホワイト油、チョウジ油、ティートリー油、テレビン油、ノバラ油、パイン油、パチュリ油、ハッカ油、ヒバ油、ピメント油、ビャクダン油、フェンネル油、べチベル油、ペニーローヤル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ライム油、ラバンジン油、ラベンダー油、ルー油、レモン油、レモングラス油、レモンユーカリ油、ローズヒップ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油からなる群より選択される1種又は2種以上である(1)又は(2)に記載の噴霧型害虫忌避製品。
(4)前記(c)有機溶剤は、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤からなる群より選択される1種又は2種以上である(1)~(3)のいずれか1に記載の噴霧型害虫忌避製品。
(5)前記(b)精油を害虫忌避組成物全体量に対して0.1~5.0w/v%含有する(1)~(4)のいずれか1に記載の噴霧型害虫忌避製品。
(6)人体に噴霧処理される(1)~(5)のいずれか1に記載の噴霧型害虫忌避製品。
(7)腕又は足首に噴霧処理される(1)~(6)のいずれか1に記載の噴霧型害虫忌避製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、害虫忌避組成物が噴霧された際の、塗布判別性が向上し、さらに、塗布均一性や塗布付着性にも優れる噴霧型害虫忌避製品を提供することができる。また、精油を用いているため、子供に対しても安心して噴霧処理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の噴霧型害虫忌避製品について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や実施例に限定されることを意図しない。なお、本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100ml」と同義である。また、本明細書における範囲を示す表記「~」がある場合は、上限と下限を含有するものとする。
【0012】
<噴霧型害虫忌避製品>
本発明の噴霧型害虫忌避製品は、(a)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上である害虫忌避成分と、(b)精油と、(c)有機溶剤と、を含有する害虫忌避組成物が充填され、噴口が形成された噴霧型害虫忌避製品であって、下記で説明する塗布噴霧係数が-1.8~6.0であることを特徴とする。
【0013】
[第1の実施形態]
本実施形態では、噴霧型害虫忌避製品の一態様として、噴霧型害虫忌避製品がポンプ製品である場合について説明する。本実施形態の噴霧型害虫忌避製品は、害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器と、ポンプ容器に取り付けられ、噴口が形成されたアクチュエータとを備えるポンプ製品である。
【0014】
<害虫忌避組成物>
害虫忌避組成物は、ポンプ容器に充填される内容物であり、(a)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上である害虫忌避成分(以下、(a)成分とも称す)と、(b)精油(以下、(b)成分とも称す)と、(c)有機溶剤(以下、(c)成分とも称す)と、を含有し、下記で説明する塗布噴霧係数が-1.8~6.0である。以下、各成分や塗布噴霧係数等について説明する。
【0015】
<(a)成分>
(a)成分は、害虫忌避成分である。本発明において使用される害虫忌避成分は、イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上である。これらの害虫忌避成分は、蚊、ブユ、サシバエ、イエバエ、マダニ、ナンキンムシ等の衛生害虫(但し、衛生害虫のうちシラミは除く)に加え、ユスリカ、チョウバエ等の不快害虫も好適に忌避し得る。本実施形態の所望の効果が顕著に得られる観点から、噴霧型害虫忌避製品における害虫忌避組成物中の(a)成分の濃度の下限値は、1w/v%以上が好ましく、3w/v%以上がより好ましく、5w/v%以上が特に好ましく、害虫忌避製品における害虫忌避組成物中の(a)成分の濃度の上限値は、30w/v%以下が好ましく、20w/v%以下がより好ましく、10w/v%以下が特に好ましい。
【0016】
<(b)成分>
(b)成分は、精油である。本発明において使用される精油は、植物の枝葉、根茎、木皮、果実、花、つぼみ、樹脂等から得られる揮発性の油状物であり、水蒸気蒸留法、圧搾法、抽出法等で植物の各箇所より分離し、精製して得られる。本発明における精油は、イランイラン油、ウイキョウ油、オレンジ油、カシア油、カミツレ油、カモミラ油、グレープフルーツ油、クローブ油、ケイヒ油、シソ油、シダー油、シダーウッド油、シトロネラ油、シナモン油、シナモンリーフ油、ジャスミン油、スペアミント油、ゼラニウム油、タイムホワイト油、チョウジ油、ティートリー油、テレビン油、ノバラ油、パイン油、パチュリ油、ハッカ油、ヒバ油、ピメント油、ビャクダン油、フェンネル油、べチベル油、ペニーローヤル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ライム油、ラバンジン油、ラベンダー油、ルー油、レモン油、レモングラス油、レモンユーカリ油、ローズヒップ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油等が挙げられる。これらの中でも、ハッカ油、ペパーミント油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモンユーカリ油、ローズマリー油が好ましく、ハッカ油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモンユーカリ油がさらに好ましい。本実施形態の所望の効果が顕著に得られる観点から、噴霧型害虫忌避製品における害虫忌避組成物中の精油濃度の下限値は特に限定されないが、0.1w/v以上であり、0.2w/v%以上が好ましく、0.3w/v%以上がより好ましく、0.5w/v%以上が特に好ましい。本実施形態の効果を奏する害虫忌避組成物中の精油濃度の上限値は特に限定されないが、噴霧型害虫忌避製品の嗜好性の観点から、5w/v%以下であり、3w/v%以下が好ましく、2w/v%以下がより好ましく、1.5w/v%以下が特に好ましい。
【0017】
<(c)成分>
(c)成分は、有機溶剤である。本発明において使用される有機溶剤は、特に限定されないが、例示すると、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール等のグリコールエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、n-パラフィン、イソパラフィン等の炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、ブタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール等のグリコールエーテル系溶剤が好ましく、エタノール、2-プロパノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、フェノキシエタノールがより好ましい。噴霧型害虫忌避製品における害虫忌避組成物中の有機溶剤濃度の下限値は特に限定されないが、10w/v%以上が好ましく、20w/v%以上がより好ましく、30w/v%以上が特に好ましい。本実施形態の効果を奏する害虫忌避組成物中の有機溶剤濃度の上限値は特に限定されないが、90w/v%以下が好ましく、80w/v%以下がより好ましく、70w/v%以下が特に好ましい。
【0018】
<その他成分>
また、本実施形態の効果を阻害しない限り、害虫忌避組成物に配合される任意成分が適宜配合されていても良い。一例を挙げると、任意成分は、上記(a)成分以外の他の害虫忌避成分、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、双性界面活性剤、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤、エデト酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤、タルクや珪酸等の無機粉体、抗菌剤(防黴剤)、消毒剤、芳香剤(香料)、色素、pH調整剤、UV吸収促進剤、水等が挙げられる。
【0019】
他の害虫忌避成分としては、フェノトリン、ジブチルフタレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、p-ジクロロベンゼン、ジ-n-ブチルサクシネート、カプリン酸ジエチルアミド、n-プロピルアセトアニリド等が挙げられる。
【0020】
ノニオン系界面剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(POEアルキルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(POEアルキルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル(POE高級脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(POEグリセリン脂肪酸エステル)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(POEPOPアルキルエーテル)、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0021】
<塗布噴霧係数>
本発明では、上記の(a)成分、(b)成分、(c)成分を用いて害虫忌避組成物を可溶化し、下記式(I)で定義される塗布噴霧係数が-1.8~6.0となるように、好ましくは-1.6~3.0となるように、より好ましくは-1.5~3.0となるように、さらに好ましくは-1.4~2.0となるように害虫忌避組成物を調製されている。
【0022】
【数2】
【0023】
本発明者らは、(a)成分濃度(w/v%)、(b)成分濃度(w/v%)、(c)成分濃度(w/v%)及びこれらからなる項目を、分子又は分母又は指数とする数式を作成し、底を10とする当該数式の対数となる式を作成し、塗布判別性、塗布均一性、塗布付着性に関する試験結果から考察することで、上記式(I)を見出した。
【0024】
上記数式(I)において、(a)成分濃度及び(b)成分濃度の数値上昇は、噴霧塗布における塗布判別性や塗布付着性を向上させる要因であり、(c)成分濃度は、噴霧塗布における塗布均一性を変化させる要因である。これらの数値により算出される値が、特定の値を示す際に、害虫忌避組成物を噴霧塗布した場合に、塗布判別性が向上し、さらに、優れた塗布均一性及び塗布付着性を実現できると推測される。
【0025】
<pH>
さらに、本実施形態の害虫忌避組成物は、成分の安定性、皮膚や粘膜に対する低刺激性の観点から、pH(20℃)が4.3~9.0の液性を備えていればよい。好ましくはpH4.5~9.0であり、より好ましくはpH5.0~9.0、さらに好ましくはpH5.5~8.0の弱酸性又は中性の害虫忌避組成物である。害虫忌避組成物のpH調整は、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いて適宜行うことができる。害虫忌避組成物のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定できる。なお、害虫忌避組成物が水を含有しない場合、前記害虫忌避組成物を精製水で20倍希釈して測定した値をpHとする。
【0026】
<ポンプ容器>
本実施形態の噴霧型害虫忌避製品は、上記害虫忌避組成物がポンプ容器に充填されてなる害虫忌避製品である。ポンプ容器の材質は特に限定されないが、一例を挙げると、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、ポリエチレン(PE)製容器、ポリプロピレン(PP)製容器、ガラス製容器等が挙げられ、取り扱いの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、ポリエチレン(PE)製容器、ポリプロピレン(PP)製容器が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器がより好ましい。容器は、透明でも非透明でも良く、無色でも着色されていても良く、ラメが入っていても良い。容器が着色されている場合、容器の色は特に限定されないが、緑色、青色、桃色、赤色、黄色等が挙げられる。また、透明容器を用いる場合、容器の一部または全部がフィルム等で覆われていてもよい。例えば、内容表示用ラベル・印刷部分は不透明あるいは半透明でそれ以外の部分が透明な容器や、看視窓程度の大きさの透明部分のみを有する不透明容器など、内容物が視認できる透明部分が存在する限りにおいて透明領域については特に限定されない。
【0027】
<アクチュエータ>
アクチュエータは、ポンプ容器開口を閉止するとともに、ポンプ容器内に充填された害虫忌避組成物を噴射するための部材である。アクチュエータは、ポンプ容器内に充填された害虫忌避組成物を取り出すためのバルブ機構と、バルブ機構を作動するためのステム機構と、ステム機構と連動し、バルブ機構によって取り出された害虫忌避組成物を噴射するための噴口が形成されている。また、噴射部材は、使用者に操作されるトリガー部を有する。
【0028】
本実施形態の噴霧型害虫忌避製品は、使用者によってトリガー部を操作されることにより、ステム機構およびバルブ機構が作動し、ポンプ容器から害虫忌避組成物を取り出して、噴射部材の噴口から噴射することができる。
【0029】
アクチュエータの形状は、特に限定されないが、トリガータイプ、フィンガーポンプタイプ等が挙げられる。これらのアクチュエータの噴口の大きさは、一例をあげると、直径0.05~1.0mmであり、噴口は1つでも複数でも構わない。ディップチューブの内径は、一例を挙げると、1.0~10.0mmであり、1.0~5.0mmが好ましい。1回噴射当たりの噴射量は、例えば0.05~3.0mLであり、0.05~1.5mLが好ましい。蓄圧式ポンプの場合、1秒当たりの噴射量は、例えば0.1g~5.0gである。
【0030】
本実施形態の噴霧型害虫忌避製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、噴霧型害虫忌避製品は、ポンプ容器に害虫忌避組成物を充填し、アクチュエータによって透明容器の開口を閉止することによって製造できる。
【0031】
本実施形態の噴霧型害虫忌避製品によって噴霧される害虫忌避組成物は、噴口から15cm離れた位置におけるメジアン粒子径(D50)r15の下限値は、本実施形態の所望の効果が顕著に得られる観点から、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることがさらに好ましい。また、メジアン粒子径(D50)r15の上限値は、本実施形態の所望の効果が顕著に得られる観点から、160μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。なお、噴霧型害虫忌避製品の噴口から15cm離れた位置における害虫忌避組成物のメジアン粒子径(D50)r15は、レーザー光散乱方式粒度分布測定装置Spraytec(Malvern Panalytical社製)により測定することができる。
【0032】
本実施形態の噴霧型害虫忌避製品の噴霧処理対象は特に限定されないが、人体や衣料等が挙げられる。塗布判別性、塗布均一性及び塗布付着性において優れるという本発明の趣旨を鑑みると、人体に対して好適に噴霧処理することができ、人体の中でも腕又は足首に対してより好適に噴霧処理することができる。また、本実施形態の噴霧型害虫忌避製品の使用対象となる年齢は特に限定されないが、大人でも子供でも使用することができる(但し、(a)成分にディートを使用する場合は、6カ月未満の子供への使用は推奨されない。)。中でも、0~12歳の子供に好適に使用することができ、0~6歳の子供により好適に使用することができる。
【0033】
[第2の実施形態]
本実施形態では、噴霧型害虫忌避製品の一態様として、噴霧型害虫忌避製品がエアゾール製品である場合について説明する。本実施形態の噴霧型害虫忌避製品は、害虫忌避組成物および噴射剤が加圧充填されたエアゾール容器と、エアゾール容器に取り付けられ、噴口が形成されたアクチュエータとを備えるエアゾール製品である。
【0034】
<害虫忌避組成物>
害虫忌避組成物は、後述する噴射剤とともにエアゾール容器に加圧充填される内容物であり、(a)イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、及びディートからなる群より選択される1種又は2種以上である害虫忌避成分と、(b)精油と、(c)有機溶剤と、を含有し、下記で説明する塗布噴霧係数が-1.8~6.0である。第1の実施形態において上記した害虫忌避組成物と同様である。
【0035】
<噴射剤>
噴射剤は、害虫忌避組成物とともにエアゾール容器に加圧充填される内容物である。噴射剤は、後述するアクチュエータが作動されることにより、害虫忌避組成物とともに噴射される。その際、噴射剤は、害虫忌避組成物を噴射する際の推進力を付与するとともに、害虫忌避組成物を微細化する。
【0036】
噴射剤は特に限定されないが、一例をあげると、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)、ノルマルペンタン、イソペンタン、ジメチルエーテル(DME)、及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、HFO1234ze等のハイドロフルオロオレフィン等の液化ガス、並びに窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、及び圧縮空気等の圧縮ガスが挙げられる。上記の噴射剤は、単独又は混合状態で使用することができ、液化ガス及び圧縮ガスは、併用されてもよい
【0037】
噴射剤として、液化ガスが使用される場合、液化ガスの充填量は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの充填量は、害虫忌避組成物および噴射剤の合計に対し、20~80容量%である。また、液化ガスの充填量は、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.1~0.7MPaとなる量であることが好ましい。
【0038】
噴射剤として圧縮ガスが使用される場合、圧縮ガスの充填量は特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスの充填量は、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.1~1.0MPaとなる量である。
【0039】
<エアゾール容器>
本実施形態において、害虫忌避組成物は、エアゾール容器に加圧充填される。エアゾール容器は、特に限定されないが、一例を挙げると、上部に開口が形成された略円筒状の耐圧容器である。開口は、害虫忌避組成物を充填するための充填口であり、害虫忌避組成物が充填された後、後述のアクチュエータにより閉止される。
【0040】
エアゾール容器の材質は特に限定されないが、一例を挙げると、エアゾール容器の材質はアルミニウムやブリキ等の金属製容器、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、耐圧ガラス製容器等が挙げられる。
【0041】
<アクチュエータ>
アクチュエータは、エアゾール容器の開口を閉止するとともに、エアゾール容器内に充填された害虫忌避組成物を噴射剤とともに噴射するための部材である。アクチュエータは、エアゾール容器内に充填された害虫忌避組成物および噴射剤を取り出すためのバルブ機構と、バルブ機構を作動するためのステム機構と、ステム機構と連動し、バルブ機構によって取り出された害虫忌避組成物を噴射剤とともに噴射するための噴射部材とを備える。噴射部材には、害虫忌避組成物を噴射剤とともに噴射するための噴口が形成されている。また、噴射部材は、使用者に操作されるトリガー部を備える。
【0042】
本実施形態の噴霧型害虫忌避製品は、使用者によってトリガー部が操作されることにより、ステム機構およびバルブ機構が作動し、エアゾール容器内と外部とが連通する。これにより、エアゾール容器内の害虫忌避組成物および噴射剤は、エアゾール容器内と外部との圧力差に従ってエアゾール容器から取り出され、噴射部材の噴口から噴射される。
【0043】
本実施形態の噴霧型害虫忌避製品の製造方法は、特に限定されない。一例を挙げると、噴霧型害虫忌避製品は、エアゾール容器に害虫忌避組成物を充填し、アクチュエータによってエアゾール容器の開閉を閉止し、アクチュエータの噴射部材の噴口またはステム機構を介して噴射剤を加圧充填することにより製造が可能である。
【0044】
本実施形態の噴霧型害虫忌避製品によって噴霧される害虫忌避組成物は、噴口から15cm離れた位置におけるメジアン粒子径(D50)r15の下限値は、本実施形態の所望の効果が顕著に得られる観点から、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることがさらに好ましい。また、メジアン粒子径(D50)r15の上限値は、本実施形態の所望の効果が顕著に得られる観点から、160μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。なお、噴霧型害虫忌避製品の噴口から15cm離れた位置における害虫忌避組成物のメジアン粒子径(D50)r15は、レーザー光散乱方式粒度分布測定装置Spraytec(Malvern Panalytical社製)により測定することができる。
【0045】
本実施形態の噴霧型害虫忌避製品の噴霧処理対象は特に限定されないが、人体や衣料等が挙げられる。塗布判別性、塗布均一性及び塗布付着性において優れるという本発明の趣旨を鑑みると、人体に対して好適に噴霧処理することができ、人体の中でも腕又は足首に対してより好適に噴霧処理することができる。また、本実施形態の噴霧型害虫忌避製品の使用対象となる年齢は特に限定されないが、大人でも子供でも使用することができる(但し、(a)成分にディートを使用する場合は、6カ月未満の子供への使用は推奨されない。)。中でも、0~12歳の子供に好適に使用することができ、0~6歳の子供により好適に使用することができる。
【実施例0046】
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
[1]効力試験1
(a)イカリジンを5.0g(5w/v%)、(b)ハッカ油0.9g(0.9w/v%)、(c)無水エタノールを45g(45w/v%)、並びに、精製水を残分(バランス)混合し、全量100mLの害虫忌避組成物を調製した。噴口が形成されたプッシュダウン式のアクチュエータ付きのスプレー容器Aに上記害虫忌避組成物を充填し、実施例1の噴霧型害虫忌避製品を製造した。本噴霧型害虫忌避製品の噴口から15cm離れた位置における害虫忌避組成物のメジアン粒子径(D50)r15は、60~80μmであった。
【0048】
さらに、表1、表2、表3に記載のように各成分を配合し、他は実施例1と同様にして、実施例2~28、比較例1~3の噴霧型害虫忌避製品を製造した。なお、各噴霧型害虫忌避製品の噴口から15cm離れた位置における害虫忌避組成物のメジアン粒子径(D50)r15は、レーザー光散乱方式粒度分布測定装置Spraytec (Malvern Panalytical社製)により測定した。また、本発明では以下のスプレー容器A~Eを使い分けることにより、概ねその粒子径の分布範囲を調整することができた。
スプレー容器A:60~80μm
スプレー容器B:80~95μm
スプレー容器C:100~145μm
スプレー容器D:150~160μm
スプレー容器E:30~50μm
【0049】
[塗布判別性試験]
実施例1の噴霧型害虫忌避製品を用いて、マネキンの左右の足首部、左右の前腕部の計4カ所のうち、数カ所にランダムに塗布した。30分後に5名の研究員に4カ所それぞれについて触れずに害虫忌避組成物が塗布されているか否かを回答してもらい、各被験者の正答率の平均値を求め、以下の基準により3段階評価で行った。実施例2~28、比較例1~3の噴霧型害虫忌避製品においても同様の試験を行った。(試験結果は表1、表2、表3に記載する。)
(評価基準)
A;90%<(正答率)≦100%
B;80%<(正答率)≦90%
C;(正答率)≦80%
【0050】
[塗布均一性試験]
実施例1の噴霧型害虫忌避製品に蛍光成分として7-ヒドロキシクマリン0.1gを添加した。利き腕と逆の腕から約15cm離れたところに噴口をセットし、1回噴霧した。その後、室内照明を落とし、噴霧処理した腕に20Wのブラックライトを照射し、噴霧の様子を観察した。塗布均一性についての評価は、以下の基準により3段階評価で行った。なお、評価は5名の研究員全員での協議により決定した。実施例2~28、比較例1~3の噴霧型害虫忌避製品においても同様の試験を行った。(試験結果は表1、表2、表3に記載する。)
(評価基準)
A;均一に塗布されている、
B;やや不均一である、
C;不均一である
【0051】
[塗布付着性試験]
20cm×20cmの濾紙をバット内に立てて設置し、水平方向に15cmから濾紙に向けて実施例1の噴霧型害虫忌避製品を噴霧した。噴霧30秒後に濾紙を回収し、重量測定により、濾紙への付着重量、噴霧型害虫忌避製品の噴霧重量を求め、次式により付着率を算出した(付着率(%)=濾紙への付着重量/検体の噴霧重量×100)。試験を5回繰り返して平均付着率と最小付着率を求めた。そして塗布付着性についての評価は、以下の基準により3段階評価で行った。実施例2~28、比較例1~3の噴霧型害虫忌避製品においても同様の試験を行った。(試験結果は表1、表2、表3に記載する。)
(評価基準)
A;[(平均付着率)-(最小付着率)]×100/(平均付着率)≦5%、
B;5%<[(平均付着率)-(最小付着率)]×100/(平均付着率)≦10%、
C;10%<[(平均付着率)-(最小付着率)]×100/(平均付着率)
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
上記試験結果から、(b)成分を配合しない比較例1においては塗布判別性が不十分な結果であった。また、塗布噴霧係数が-1.8未満である比較例2においては、塗布付着性が不十分な結果であり、塗布噴霧係数が6.0を超える比較例3においては、塗布均一性が不十分な結果であった。
【0056】
一方、塗布噴霧係数が-1.8~6.0の範囲内にある実施例1~28においては、塗布判別性、塗布均一性、及び塗布付着性のいずれもが良好な結果(全てがB以上)を示すことが分かった。また、噴口から15cm離れた位置における害虫忌避組成物のメジアン粒子径(D50)r15は、60~150μmであり、尚且つ塗布噴霧係数が-1.6~3.0の範囲内である実施例1~11、14、16~18、21~28では、塗布判別性、塗布均一性、及び塗布付着性のいずれもがより良好な結果(1つがBで、2つがA)を示すことが分かった。中でも、噴口から15cm離れた位置における害虫忌避組成物のメジアン粒子径(D50)r15は、60~100μmであり、尚且つ塗布噴霧係数が-1.4~2.0の範囲内である実施例1~8、10、11、17、18、21~28では、塗布判別性、塗布均一性、及び塗布付着性のいずれもがさらに良好な結果(3つがA)を示すことが分かった。