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特開2022-8029フィルタープレス装置用の濾板、及びフィルタープレス装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008029
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】フィルタープレス装置用の濾板、及びフィルタープレス装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 25/12 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
B01D25/12 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056737
(22)【出願日】2021-03-30
(62)【分割の表示】P 2020148767の分割
【原出願日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2020110546
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517375738
【氏名又は名称】株式会社笹山工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古橋 孝將
(72)【発明者】
【氏名】古橋 加津彦
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116CC02
4D116CC08
4D116CC11
4D116CC21
4D116CC22
4D116CC24
4D116CC26
4D116FF13B
4D116KK05
4D116QB49
4D116VV11
4D116VV12
4D116VV15
(57)【要約】
【課題】フィルタープレス装置において固液混合体を脱水する際に、固液混合体に含まれる液体を円滑に排出する。
【解決手段】フィルタープレス装置用の濾板10は、板部と、板部と重なって配置される被覆部と、を備え、固液混合体を受けて、固液混合体から液体を排出するフィルタープレス装置用の濾板である。濾板10は、防水性の板材、防水性のシート材、防水性の層、のいずれかを有する防水材を備える。防水材は、非金属材料の表面が被覆部に面し、被覆部の一方面側から他方面側に通過した液体を非金属材料の表面で受ける。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板部と、
前記板部と重なって配置される被覆部と、
を備え、
固液混合体を受けて、前記固液混合体から液体を排出するフィルタープレス装置用の濾板であって、
防水性の板材、防水性のシート材、防水性の層、のいずれかを有する防水材を備え、
前記被覆部は、当該被覆部の一方面側から他方面側に前記液体を通す通水部が形成され、
前記防水材が前記板部を覆いつつ、前記板部の板面と前記被覆部の前記他方面との間に前記防水材が挟まれた構成で、前記板部と前記被覆部と前記防水材とが重なり、
前記防水材は、非金属材料の表面が前記被覆部に面し、前記被覆部の前記一方面側から前記他方面側に通過した前記液体を前記表面で受ける
フィルタープレス装置用の濾板。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタープレス装置用の濾板を含む
フィルタープレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレス装置用の濾板、及びフィルタープレス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フィルタープレス装置の一例が開示されている。この種のフィルタープレス装置は、濾板が所定方向に並んで設けられ、複数の濾板が互いに接近及び離間し得る構成をなし、複数の濾板が接近状態で重なって配置されたときに内部に構成される濾室内に泥水等が注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-247464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフィルタープレス装置は、固液混合体を脱水する場合に、網板内を通して濾板を構成する板部側に液体を流すように排水する。しかし、網板によって板部を直接覆う構成では、網板での液体の排出機能が、板部の表面状態の影響を受けやすい。例えば、濾板の板部は、一般的に剛性や強度が重視されるが、これらの点を重視すること等に起因して板部の表面状態が適切に維持されないと、板部の劣化等に起因して一部が網板内に詰まったりする虞がある。
【0005】
本開示は、上述した課題の少なくとも一つを解決するために、フィルタープレス装置において固液混合体を脱水する際に、固液混合体に含まれる液体を円滑に排出することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つであるフィルタープレス装置用の濾板は、
板部と、
前記板部と重なって配置される被覆部と、
を備え、
固液混合体を受けて、前記固液混合体から液体を排出するフィルタープレス装置用の濾板であって、
防水性の板材、防水性のシート材、防水性の層、のいずれかを有する防水材を備え、
前記被覆部は、当該被覆部の一方面側から他方面側に前記液体を通す通水部が形成され、
前記防水材が前記板部を覆いつつ、前記板部の板面と前記被覆部の前記他方面との間に前記防水材が挟まれた構成で、前記板部と前記被覆部と前記防水材とが重なり、
前記防水材は、非金属材料の表面が前記被覆部に面し、前記被覆部の前記一方面側から前記他方面側に通過した前記液体を前記表面で受ける
フィルタープレス装置用の濾板。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、フィルタープレス装置において固液混合体を脱水する際に、固液混合体に含まれる液体を円滑に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るフィルタープレス装置を概念的に示す側面図である。
図2図2は、図1のフィルタープレス装置の一部を具体化した一例を概念的に示す説明図である。
図3図3は、図1のフィルタープレス装置の一部を上側から見た構成を概念的に例示する説明図である。
図4図4は、図1のフィルタープレス装置の一部を前側から見た構成を概念的に例示する説明図である。
図5】(A)は、第1保持状態のときの隣り合う濾板の組の一つを上側から見た様子を例示する説明図であり、(B)は、その濾板の組を離間させてケーキ(残存物)を落下させる様子を例示する説明図である。
図6図6は、第1実施形態に係るフィルタープレス装置の濾板構造において一の濾板と他の濾板とが離間した状態を例示する説明図である。
図7図7は、第1実施形態に係るフィルタープレス装置の濾板構造において一の濾板と他の濾板が密着した状態で固液混合体が流入した状態を例示する説明図である。
図8】第1実施形態に係るフィルタープレス装置の1つの濾板の正面図である。
図9図9は、図8の濾板から濾布を省略した状態を例示する正面図である。
図10図10は、図9の構成から更に被覆部を省略した状態を例示する正面図である。
図11図11は、図8の濾板の背面図である。
図12図12は、図11の濾板から濾布を省略した状態を例示する背面図である。
図13図13は、図12の構成から更に被覆部を省略した状態を例示する背面図である。
図14図14は、図6図7に例示される濾板の断面の一部を拡大して示す拡大図である。
図15図15(A)は、一方面側から見た被覆部(排水板)の構成を拡大して示す拡大図であり、図15(B)は、他方面側から見た被覆部(排水板)の構成を拡大して示す拡大図である。
図16図16(A)は、図15(A)のA-A断面における排水板及び防水材の構成を概念的に示す断面概略図である。図16(B)は、図15(A)のB-B断面における排水板及び防水材の構成を概念的に示す断面概略図である。
図17図17は、図15(A)のB-B断面付近の濾布、排水板、防水材、板状体の構成を拡大して概念的に説明する説明図である。
図18図18は、第2実施形態に係るフィルタープレス装置の濾板の一部を概略的に示す図であり、図13の構成を変形した構成を示す図である。
図19図19は、第2実施形態に係るフィルタープレス装置の濾板の一部を概略的に示す図であり、図14の構成を変形した構成を示す図である。
図20図20は、他の実施形態に係るフィルタープレス装置の濾板に用いられる排水板(被覆部)を例示する図であり、(A)は、一方の板面側から見た図であり、(B)は、板厚方向に沿って切断した断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔17〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕金属板材を有する板部と、
前記板部と重なって配置される被覆部と、
を備え、
固液混合体を受けて、前記固液混合体から液体を排出するフィルタープレス装置用の濾板であって、
樹脂材料からなる板材又は樹脂材料からなるシート材を有する防水材を備え、
前記被覆部において、当該被覆部の一方面側から他方面側に前記液体を通す通水部が形成され、
前記防水材が前記金属板材を覆いつつ、前記金属板材の板面と前記被覆部の前記他方面との間に前記防水材が挟まれた構成で、前記金属板材と前記被覆部と前記防水材とが重なり、
前記防水材における樹脂材料の表面が前記被覆部側に面し、前記被覆部の前記一方面側から前記他方面側に通過した前記液体を前記防水材の前記表面で受ける
フィルタープレス装置用の濾板。
【0011】
上記〔1〕のフィルタープレス装置用の濾板は、防水材が、板部の板面と被覆部の他方面との間に挟まれた構成で、板部と被覆部と防水材とが重なるため、固液混合体に含有される液体が板部の板面に直接当たることを抑えることができる。よって、液体に起因する板部の板面の劣化(錆の発生等)を抑えることができ、板面の劣化に起因する被覆部の排出性の低下を抑えることができる。更に、防水材における樹脂材料の表面が被覆部側に面するため、防水材における被覆部側の表面が液体によって錆びることを抑えることができ、錆に起因する排水性の低下(被覆部の目詰まり等)を抑制することができる。よって、この濾板は、フィルタープレス装置において固液混合体を脱水する際に、固液混合体に含有される液体を円滑に排出することができる。
【0012】
〔2〕板部と、
前記板部と重なって配置される被覆部と、
を備え、
固液混合体を受けて、前記固液混合体から液体を排出するフィルタープレス装置用の濾板であって、
非金属材料からなる防水性の板材、非金属材料からなる防水性のシート材、非金属材料からなる防水性の層、のいずれかを有するとともに前記板部よりも薄く構成された防水材を備え、
前記被覆部において、当該被覆部の一方面側から他方面側に前記液体を通す通水部が形成され、
前記防水材が前記板部を覆いつつ、前記板部の板面と前記被覆部の前記他方面との間に前記防水材が挟まれた構成で、前記板部と前記被覆部と前記防水材とが重なり、
前記防水材における非金属材料の表面が前記被覆部側に面し、前記被覆部の前記一方面側から前記他方面側に通過した前記液体を前記防水材の前記表面で受ける
フィルタープレス装置用の濾板。
【0013】
上記〔2〕のフィルタープレス装置用の濾板は、防水材が、板部の板面と被覆部の他方面との間に挟まれた構成で、板部と被覆部と防水材とが重なるため、固液混合体に含有される液体が板部の板面に直接当たることを抑えることができる。よって、液体に起因する板部の板面の劣化を抑えることができ、板面の劣化に起因する被覆部の排出性の低下を抑えることができる。更に、防水材における非金属材料の表面が被覆部側に面するため、防水材における被覆部側の表面が液体によって錆びることを抑えることができ、錆に起因する排水性の低下(被覆部の目詰まり等)を抑制することができる。よって、この濾板は、フィルタープレス装置において固液混合体を脱水する際に、固液混合体に含有される液体を円滑に排出することができる。
【0014】
〔3〕上記の〔1〕又は〔2〕に記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記防水材の上記表面と上記他方面との間で上記液体が流れる。
【0015】
上記〔3〕のフィルタープレス装置用の濾板は、防水材の表面と被覆部の他方面との間で液体が流れるため、板部へ液体が当たることを抑えつつ、液体を良好に排出することができる。
【0016】
〔4〕上記の〔1〕から〔3〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記被覆部の上記他方面は、上記防水材側に凸となる凸面と上記防水材とは反対側に凹む凹面とを有する凹凸面である。
【0017】
上記〔4〕のフィルタープレス装置用の濾板は、被覆部の他方面(防水材に対向する面)が凹凸面とされているため、防水材に対して被覆部の他方面が全体的に密着することを抑えることができ、防水材と被覆部との間に空隙が確保されやすい。よって、この濾板は、上記他方面が全体的に密着することに起因する排水性の低下が抑えられ、排水性が一層高められる。
【0018】
〔5〕上記の〔4〕に記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記被覆部の上記一方面側から上記他方面側に通過した上記液体が、少なくとも上記凹面と上記表面との間を通って下方に流れる。
【0019】
上記〔5〕のフィルタープレス装置用の濾板は、凹凸面の存在によって被覆部と防水材とが密着しすぎることを抑えることができ、しかも、凹部の存在により、被覆部を通って防水材側に通過した液体が、より円滑に下方に流れやすくなる。
【0020】
〔6〕上記の〔1〕から〔5〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記被覆部は、板状に構成され、板厚方向に貫通する孔部が形成された排水板である。
【0021】
上記〔6〕のフィルタープレス装置用の濾板は、板状に構成された排水板と板部との間に防水材をコンパクト且つ安定的に挟み込むことができる。
【0022】
〔7〕上記の〔1〕から〔6〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記被覆部は、樹脂材料によって構成され、上記防水材は、樹脂シートによって構成され、上記板部は、金属材料によって構成される。
【0023】
上記〔7〕のフィルタープレス装置用の濾板は、板部の強度を高めつつ、板部がさびにくい構成、且つ板部の錆の影響が被覆部に及びにくい構成とすることができる。
【0024】
〔8〕上記の〔1〕から〔7〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、環状に構成され、上記板部に重ねられて上記板部に固定される枠部を有し、上記被覆部の周縁部と上記防水材の周縁部とが上記板部と上記枠部とに挟まれ、上記枠部の内側に入り込んだ上記固液混合体の上記液体が、上記被覆部を通って上記防水材側へ流れる構成をなす。
【0025】
上記〔8〕のフィルタープレス装置用の濾板は、枠部と板部とによって被覆部及び防水材の各周縁部を挟み込むように保持することができる。よって、枠部の内縁部によって液体を被覆部側に案内し得る構成を実現しつつ、枠部を被覆部及び防水材の保持にも兼用することができる。しかも、枠部と板部とによって被覆部及び防水材の各周縁部を挟み込むため、このように挟み込まれる部分はより密封性が高くなり、固液混合体に圧力をかけて絞る際に、上記のように挟み込まれた部分から液体が漏洩することを抑えることができる。
【0026】
〔9〕上記の〔1〕から〔8〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記被覆部と上記防水材との間の部材間空間と当該濾板の外部の空間とに連通する排水路を有し、上記排水路は、上記部材間空間から上記外部の空間へと上記液体を流す流路である。
【0027】
上記〔9〕のフィルタープレス装置用の濾板は、防水材によって排水性を高める構成を実現しつつ、防水材と被覆部とによって案内される液体を、排出路によって濾板の外部に良好に排出することができる。
【0028】
〔10〕上記の〔1〕から〔7〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、環状に構成され、上記板部に重ねられて上記板部に固定される枠部を有する。更に、上記被覆部の周縁部と上記防水材の周縁部とが上記板部と上記枠部とに挟まれ、上記枠部の内側に入り込んだ上記固液混合体の上記液体が、上記被覆部を通って上記防水材側へ流れる構成をなす。更に、上記板部には、上記被覆部と上記防水材との間の部材間空間と当該濾板の外部の空間とに連通するとともに上記部材間空間に入り込んだ上記液体を上記外部の空間へと流す流路として構成された排水路が設けられる。更に、上記排水路は、溝部を有し、上記溝部の少なくとも一部は、上記枠部の内側の領域において上記被覆部に対向するように開放する。そして、少なくとも上記部材間空間と上記溝部とが連通した構成をなす。
【0029】
上記〔10〕のフィルタープレス装置用の濾板は、枠部と板部とによって被覆部及び防水材の各周縁部を挟み込むように保持することができる。よって、枠部の内縁部によって液体を被覆部側に案内し得る構成を実現しつつ、枠部を被覆部及び防水材の保持にも兼用することができる。しかも、枠部と板部とによって被覆部及び防水材の各周縁部を挟み込むため、このように挟み込まれる部分はより密封性が高くなり、固液混合体に圧力をかけて絞る際に、上記のように挟み込まれた部分から液体が漏洩することを抑えることができる。一方で、板部には、溝部を有する排水路が設けられ、排水路の溝部の少なくとも一部は、枠部の内側の領域において被覆部に対向するように開放し、少なくとも被覆部と防水材との間の部材間空間と溝部とが連通した構成をなす。このように、被覆部及び防水材の周縁部付近において挟み込み構造によって密封性を高めつつ、排水路の溝部付近では、溝部の少なくとも一部を被覆部に対向させるように開放することができるため、より円滑に液体を溝部に流れ込ませることができるとともに、密封部分に液体からの強い圧力がかかりすぎることを抑えることができる。よって、この濾板は、意図しない液体の漏洩を抑えつつ、決められた経路から良好に液体を排出することができる。
【0030】
〔11〕上記の〔10〕に記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記防水材は、上記枠部の内側の領域において上記溝部を避けて配置される。
【0031】
上記〔11〕のフィルタープレス装置用の濾板は、液体が板部に接触することを防水材によって抑える構造を実現しつつ、その一方で、枠部の内側の領域において防水材が溝部の開放を阻害することを抑えることができる。よって、この濾板は、板部の劣化防止と円滑な排水を良好に両立することができる。
【0032】
〔12〕上記の〔10〕又は〔11〕に記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記防水材には、切欠き形状又は孔形状の開放部が形成され、上記開放部の内側の空間と上記溝部とが上記枠部の内側の領域において通じている。
【0033】
上記〔12〕のフィルタープレス装置用の濾板は、簡易な構造で、円滑な排水を良好に実現することができる。
【0034】
〔13〕上記の〔1〕から〔7〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、環状に構成され、上記板部に重ねられて上記板部に固定される枠部を有し、上記被覆部の周縁部と上記防水材の周縁部とが上記板部と上記枠部とに挟まれる。更に、上記枠部の内側に入り込んだ上記固液混合体の上記液体が、上記被覆部を通って上記防水材側へ流れる構成をなし、上記板部には、上記被覆部と上記防水材との間の部材間空間と当該濾板の外部の空間とに連通するとともに上記部材間空間に入り込んだ上記液体を上記外部の空間へと流す流路として構成された排水路が設けられる。更に、上記防水材は、上記表面に沿って上記液体を上記枠部の内縁部よりも外側の領域に向かって流し、上記枠部の内縁部よりも外側において上記枠部と上記板部との間で、上記防水材から上記排水路へと上記液体が流れる構成をなす。
【0035】
上記〔13〕のフィルタープレス装置用の濾板は、枠部と板部とによって被覆部及び防水材の各周縁部を挟み込むように保持することができる。よって、枠部の内縁部によって液体を被覆部側に案内し得る構成を実現しつつ、枠部を被覆部及び防水材の保持にも兼用することができる。しかも、枠部と板部とによって被覆部及び防水材の各周縁部を挟み込むため、このように挟み込まれる部分はより密封性が高くなり、固液混合体に圧力をかけて絞る際に、上記のように挟み込まれた部分から液体が漏洩することを抑えることができる。一方で、板部には、排水路が設けられ、枠部の内縁部よりも外側において枠部と板部との間で防水材から排水路へと液体が流れる構成をなすため、排出路への排出のために枠部の内縁部よりも内側に防水材が存在しない領域を大きく設けずに済む。よって、内縁部よりも内側に防水材が存在しない領域が存在しないことに基づく板部の劣化を抑えることができる。
【0036】
〔14〕上記の〔10〕から〔13〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記板部は、金属板材を有し、上記排水路は、上記金属板材に形成され、上記排水路内の内壁部には、非金属材料からなる防錆層が設けられている。
【0037】
上記〔14〕のフィルタープレス装置用の濾板は、金属板材を用いて板部を実現しつつ、板部に形成された排水路に錆が生じることを防ぐことができる。
【0038】
〔15〕上記の〔1〕から〔14〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記防水材における上記被覆部側の表面の表面粗さが、上記板部における上記被覆部側の上記板面の表面粗さよりも小さくされている。
【0039】
上記の〔15〕のフィルタープレス装置用の濾板は、防水材に沿って液体を案内する際に、より円滑に案内することができる。
【0040】
〔16〕上記の〔1〕から〔15〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記防水材は、上記板部に対して着脱自在とされている。
【0041】
上記の〔16〕のフィルタープレス装置用の濾板は、防水材において破損や劣化が生じた場合に、板部の使用はそのまま継続し、防水材を新しい防水材に取り換えた構成で使用を継続することができる。
【0042】
〔17〕上記の〔1〕から〔16〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板において、上記防水材の厚さは、上記被覆部の厚さよりも小さい。
【0043】
上記の〔17〕のフィルタープレス装置用の濾板は、固液混合体に含有される液体が板部の板面に直接当たることを抑える構造を、より小サイズ且つより軽量な防水材を用いて実現することができる。
【0044】
〔18〕上記の〔1〕から〔17〕のいずれか一つに記載のフィルタープレス装置用の濾板を含むフィルタープレス装置。
【0045】
上記の〔18〕のフィルタープレス装置は、上記の〔1〕から〔17〕のいずれかに記載のフィルタープレス装置用の濾板と同様の効果を奏することができる。
【0046】
<第1実施形態>
以下の説明は、第1実施形態に係るフィルタープレス装置用の濾板10及びフィルタープレス装置1に関する。なお、以下の説明で参照される各図面は、技術的特徴を説明するために用いられるものであり、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0047】
(フィルタープレス装置の概要)
次の説明は、フィルタープレス装置1の概要に関する。
フィルタープレス装置1は、固液混合体(例えば、汚泥、掘削土、セメントなどが水中にまざったスラリーなど)を脱水し、固液混合体を脱水した残余物を固めた物体(ケーキ)を排出し得る装置である。
【0048】
図2図3に示されるように、フィルタープレス装置1は、所定方向に移動する複数の濾板10を備えた濾板群5を有する。なお、以下の説明では、複数の濾板10が移動する方向(所定方向)が前後方向である。図3等で示される例では、複数の濾板10が接近状態となったとき(隣り合う濾板同士が接触する状態となったとき)の各濾板10の厚さ方向が前後方向とされている。図3等の例では、前後方向において、供給路62側(固液混合体が注入される側)が前側であり、それとは反対側が後ろ側である。更に、上記前後方向と直交する方向のうち、所定の第1方向が上下方向である。図4等で示される例では、矩形状(具体的には、正面視四角形状)に構成される濾板10において両側部が延びる方向(縦方向)が上下方向とされている。上下方向は、鉛直上下方向であることが望ましいが、鉛直上下方向に対して若干傾いた方向であってもよい。そして、上記前後方向及び上記上下方向と直交する方向が左右方向である。図4等で示される例では、矩形状に構成される濾板10の上端部及び下端部が延びる方向が左右方向である。
【0049】
フィルタープレス装置1では、図3図7のように複数の濾板10が互いに接近しつつ所定方向(前後方向)に重なって配置された接近状態のときに濾板群5の内部に構成される濾室40(収容部)内に固液混合体が注入される。そして、フィルタープレス装置1では、複数の濾板10が互いに離間した離間状態のときに濾室40(収容部)内に収容された固液混合体の残存物が排出される。
【0050】
図1図3等で示されるように、フィルタープレス装置1は、濾板構造3を用いており、この濾板構造3は、濾板10を直列に配置した構成をなす。濾板10は、固液混合体を受けて、固液混合体から液体を排出する機能を有する板状の部分である。濾板10は、中心部に貫通孔16が形成された板状の基板部11を覆うように濾布18を張った構成をなしている。フィルタープレス装置1は、濾板構造3を構成する複数の濾板10を互いに接近及び離間し得る接近離間装置(図1図2では、詳細な図示は省略)を有している。フィルタープレス装置1は、固液混合体の供給時には、隣り合う濾板10を互いに密着させた積層状態(図1図2図7等参照)で、固液混合体(例えば、泥水等のスラリー)をポンプによって各濾板10の貫通孔16に流し込むように加圧圧入する。圧入された固液混合体は、内圧が高い状態で図2図7等で示される濾室(濾過室)40内に溜まり、水分が濾布18の微少の隙間から排出される。そして、隣り合う濾板10の間(具体的には、隣り合う濾板10における濾布18の間)には、ポンプから供給された固液混合体から大量の水分を除去した残余物を固めた固形物(脱水ケーキ)が形成される。なお、濾布18の目を通って濾板10の内部に流入した水は、濾板10内の排水路28を通って濾板10の外部(下部)に排出されるようになっている。この点については、後に詳述される。
【0051】
(濾板構造)
次の説明は、濾板構造3の詳細に関する。
図7のように、濾板構造3は、複数の濾板10によって構成される構造である。各々の濾板10は、自身の板厚方向の一方面側及び他方面側に中央側凹部12及び周縁側凸部14がそれぞれ形成されている。
【0052】
中央側凹部12は、貫通孔16の周辺において板厚方向に凹となる部分である。図7等では、各濾板10に形成された2つの中央側凹部12のうち、一方面側(環状凸部24が形成された面側)の凹部を一方の中央側凹部12A(又は、単に中央側凹部12A)とし、他方面側(環状凹部34が形成された面側)の凹部を他方の中央側凹部12B(又は、単に中央側凹部12B)とする。図8図9のように一方の中央側凹部12Aは、正面側から見て外径が矩形状の凹部となっている。図11図12のように他方の中央側凹部12Bは、背面側から見て外径が矩形状の凹部となっている。
【0053】
周縁側凸部14は、中央側凹部12を囲んで枠状に形成されるとともに板厚方向に凸となる形状をなし且つ少なくとも一部が中央側凹部12の周りに環状に配置される部分である。図8図9のように一方面側(環状凸部24が形成された面側)の周縁側凸部14Aは、正面側から見て矩形状の枠部となっており、濾板10の周縁部に沿うように四角形状(具体的には正方形状)に配置される。図11図12のように他方面側(環状凹部34が形成された面側)の周縁側凸部14Bは、正面から見て矩形状の枠部となっており、濾板10の周縁部に沿うように四角形状(具体的には正方形状)に配置される。
【0054】
図8図9のように、一方面側(環状凸部24が形成された面側)の周縁側凸部14Aには、中央側凹部12Aの周りに環状(具体的には、四角枠状)に配置される第1押圧面22と、中央側凹部12Aの周りに環状(具体的には、四角枠状)に配置されるとともに第1押圧面22から突出した構成をなす環状凸部24と、が形成されている。
【0055】
環状凸部24は、ゴム、ゴム以外のエラストマーなどの弾性材料によって構成されており、周縁側凸部14Aの第1押圧面22に形成された溝(中央側凹部12Aを囲むように形成された溝)内に嵌り込んだ構成で周縁側凸部14Aに固定されている。図7のように、環状凸部24は、当該環状凸部24が延びる方向と直交する平面方向に切断した断面の外形が外側に凸となるように湾曲した形状をなしている。また、環状凸部24は、内部に空隙部24Aが形成された中空状をなしている。空隙部24Aは、濾板10の厚さ方向において第1押圧面22の位置よりも外側(厚さ方向の中心よりも遠い側)に形成され、環状凸部24が延びる方向に沿って延びた構成且つ中央側凹部12の周りに環状に配置された構成となっている。
【0056】
図11図12のように、他方面側(環状凹部34が形成された面側)の周縁側凸部14Bには、中央側凹部12Bの周りに環状(具体的には、四角枠状)に配置される第2押圧面32と、中央側凹部12Bの周りに環状(具体的には、四角枠状)に配置されるとともに第2押圧面32から窪んだ構成をなす環状凹部34と、が形成されている。
【0057】
図7図13に示されるように、各々の濾板10において、一方面側(環状凸部24が形成された面側)の中央側凹部12Aと他方面側(環状凹部34が形成された面側)の中央側凹部12Bとの間を板厚方向に貫通するように貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、濾板10の内部を通すように固液混合体を濾板10の厚さ方向に流動させる流路として機能する。
【0058】
図7図8のように、板厚方向一方面側において貫通孔16の外側の領域を覆うように濾布18が配置されており、図7図11のように、板厚方向他方面側において貫通孔16の外側の領域を覆うように濾布18が配置されている。なお、図7では、第1押圧面22と第2押圧面32との間及び環状凸部24と環状凹部34との間に介在する2つの濾布18を省略して示している。図7図8図11では、濾布18のうち一方面側(環状凸部24が形成された面側)を覆うものを濾布18Aとし、他方面側(環状凹部34が形成された面側)のものを濾布18Bとしている。
【0059】
図7図8のように、一方面側(環状凸部24が形成された面側)の濾布18Aは、後述する環状板部15Aに固定され、環状板部15Aの外側の領域において基板部11の周縁部に至るまで全体的に配置されている。図7図11のように、他方面側(環状凹部34が形成された面側)の濾布18Bは、後述する環状板部15Bに固定され、環状板部15Bの外側の領域において基板部11の周縁部に至るまで全体的に配置されている。図7では、濾布18を二点鎖線にて概念的に示しており、図8図11では、濾布18を模様の領域として概念的に示している。図7の例では、周縁側凸部14A,14Bに挟まれた部分にも濾布18A,18Bが存在するが、この部分の濾布18A,18Bの図示(二点鎖線の図示)は省略している。図7等の例では、各々の濾板10において、濾布18Aの周縁部と濾布18Bの周縁部とが連結されているが、各々の周縁部が連結されていなくてもよい。濾布18Aは、少なくとも、貫通孔16を外れた領域において中央側凹部12Aの内面を覆うように配置されていればよく、濾布18Aの被覆領域は図7図8図11等の構成に限定されない。
【0060】
フィルタープレス装置1は、図2図3図7等で示される濾板構造3を、図5(A)、図7のように隣り合う濾板10が互いに密着する状態と、図5(B)のように隣り合う濾板10が離間する状態とに切り替え得る。なお、図5は、濾板構造3の一部を上方側から見た構成を簡略的に示す図である。図5(A)は、隣り合う濾板10が互いに接触する状態を示す図である。図5(A)、図7は、固液混合体が濾板群5内に注入されるときの状態である。図5(B)は、濾板群5から残存物(脱水ケーキ)が排出されるときの状態である。
【0061】
複数の濾板10は、図1図2図3のように厚さ方向が揃えられ(即ち、各々の濾板10の厚さ方向が同方向となるように揃えられ)且つ各々の濾板10における外周縁の位置(厚さ方向と直交する平面方向における外周縁の位置)が揃えられており、このように揃えられた状態で各濾板10がレールに沿って動くことにより、複数の濾板10において隣り合う濾板10が互いに接近及び離間し得るようになっている。複数の濾板10が移動する過程では、各濾板10の左右方向への移動は規制され、各濾板10の上下方向の移動も規制され、各濾板10は、例えば厚さ方向を前後方向とする姿勢を保ちながら移動し得る。
【0062】
複数の濾板10は、図5(A)、図7のように、一の濾板10と他の濾板10とが密着するように重ねられたとき、図7のように一の濾板10の環状凸部24が他の濾板10の環状凹部34内に入り込んで当該環状凹部34内の内面を押圧し、一の濾板10の第1押圧面22と他の濾板10の第2押圧面32とが互いに押圧し合う構成をなす。図7の例では、一の濾板10の第1押圧面22と他の濾板10の第2押圧面32との間に2つの濾板10をそれぞれ覆う2つの濾布18A,18Bが介在し、この状態で、一の濾板10の第1押圧面22と他の濾板10の第2押圧面32とが押圧し合う。つまり、一の濾板10の第1押圧面22と他の濾板10の第2押圧面32とが、一の濾板10の濾布18A及び他の濾板10の濾布18Bを介して互いに押圧し合う。そして、環状凸部24と環状凹部34との間にも2つの濾板10をそれぞれ覆う2つの濾布18A,18Bが介在し、この状態(即ち、環状凸部24の外面と環状凹部34の内面との間に濾布18A,18Bが介在した状態)で、環状凸部24と環状凹部34とが押圧し合う。即ち、一の濾板10の環状凸部24が、一の濾板10の濾布18A及び他の濾板10の濾布18Bを介して環状凹部34内の内面を押圧する。
【0063】
図2図3図7のように、固液混合体の投入の際には、濾板群5の各濾板10が隣り合う濾板10と密着した積層状態で、図2で示される第1注入装置60(例えば、ポンプを含んだスラリー供給装置)により貫通孔16を介して固液混合体が流し込まれる。すると、濾板群5に対して貫通孔16を介して圧入された固液混合体は、内圧が高い状態で図7等で示される濾室(濾過室)40内に溜まり、濾室40では、水分が濾布18の微少の隙間から基板部11側(即ち、濾布18の裏側)に排出される。そして、隣り合う濾板10の間(具体的には、隣り合う濾板10における濾布の間)には、残存物としての脱水ケーキが形成される。なお、脱水ケーキは、濾室40内に注入された固液混合体7からある程度の水分が除去された物体である。
【0064】
図7のように、各々の濾板10には、基板部11が設けられる。基板部11は、板状に構成される。基板部11は、板状体11Aと、周縁側凸部14A,14Bとを備える。基板部11は、2つの中央側凹部12のうちの一方の中央側凹部12Aと2つの周縁側凸部14のうちの一方の周縁側凸部14Aとが一方の板面側(上述の一方面側)に形成されている。更に、基板部11は、2つの中央側凹部12のうちの他方の中央側凹部12Bと2つの周縁側凸部14のうちの他方の周縁側凸部14Bとが他方の板面側(上述の他方面側)に形成されている。濾板10には、一方の中央側凹部12Aの内壁部を覆うように濾布18Aが設けられ、他方の中央側凹部12Bの内壁部を覆うように濾布18Bが設けられる。一方の中央側凹部12A及び他方の中央側凹部12Bにおいて濾布18の裏側には、濾板10の外部に通じる排水路28(一方の排水路28A及び他方の排水路28B)が設けられている。排水路28は、排水板13(被覆部)と防水材100との間の部材間空間と濾板10の外部空間とに連通する流路であり、上記の部材間空間から上記の外部空間へと液体を流す流路である。部材間空間は、排水板13(被覆部)と防水材100との間の隙間の空間であり、この隙間の空間から排水路28内の空間へと液体が流れ込む構成となっている。
【0065】
濾板10の一方の中央側凹部12A及び他方の中央側凹部12Bの各々において、各々の深さ方向最深部側の内壁部(内面部)には、液体を自身の板厚方向に通過させる通水部を備えた排水板13(一方の排水板13A及び他方の排水板13B)がそれぞれ設けられている。排水板13は、被覆部の一例に相当し、板状体11Aを覆うように板状体11A(板部)と重なって配置される。排水板13A,13Bのいずれの通水部も、多数の孔部によって構成されていてもよく、溝や切欠きによって構成されていてもよい。排水板13A,13Bは、表面側で濾布18を支持している状態で表面側から裏面側に水が通過し得る構成であればよく、板状体に複数の貫通孔を多数形成したような構成であってもよく、網状の構成などであってもよい。
【0066】
基板部11において各々の排水板13よりも板厚方向(濾板10の板厚方向)の内側には、各々の排水板13によって板厚方向の両側が覆われる板状体11Aが設けられている。板状体11Aは、板部の一例に相当する。板状体11Aは、例えば、金属材料によって又は金属材料を主体として構成され、例えば金属板からなる。そして、図7のように、一方の周縁側凸部14Aは、この板状体11Aの一方面側において板状体11Aの周縁部に沿って固定される矩形状の枠体となっている。一方の周縁側凸部14Aは、枠部の一例に相当し、環状に構成され、板状体11A(板部)に重ねられて板状体11Aに固定される。また、他方の周縁側凸部14Bは、この板状体11Aの他方面側において板状体11Aの周縁部に沿って固定される矩形状の枠体となっている。一方の排水板13Aは、その周縁部が板状体11Aと周縁側凸部14Aを構成する枠体の内縁部との間に挟み込まれた形で固定される。一方の排水板13Bは、その周縁部が板状体11Aと周縁側凸部14Bを構成する枠体の内縁部との間に挟み込まれた形で固定される。
【0067】
板状体11Aにおいて各々の排水板13(一方の排水板13A及び他方の排水板13B)の裏側の所定位置には、濾板10の外側に通じる排水路28A,28Bがそれぞれ構成されている。排水路28A,28Bはいずれも水を通す通水路として構成されている。
【0068】
一方の中央側凹部12Aにおいて濾布18Aの裏側に形成された排水路28Aは、例えば、図7図10のようになっている。図7図9の例では、基板部11の一方面側の下端側(設置時における鉛直方向下端側)において、複数の排水路28Aが溝状に形成されており、各々の排水路28Aにおいて水が流れ得る構成となっている。複数の排水路28Aは、一方の端部(上端部)側が排水板13Aの裏側に位置し、排水板13Aの裏面の一部が各々の排水路28Aの内部空間に面している。排水板13Aにおいて排水路28Aの内部空間と連通する隙間は、当該隙間を通る水が排水路28Aに流れ込むような構成となっている。そして、各々の排水路28Aの他方の端部(下端部)側は濾板10の下端部まで達しており、各々の排水路28Aの内部空間が濾板10の外側の空間に連通している。なお、排水板13Aの裏面と板状体11Aの表面との間には空間が存在し、この空間が各々の排水路28Aに連通するようになっていることが望ましく、このように構成されていれば、排水板13Aの裏面側に流れ込んだ水分が各々の排水路28Aを介して濾板10の外側に流れやすくなる。
【0069】
一方の中央側凹部12Bにおいて濾布18Bの裏側に形成された排水路28Bは、例えば、図7図11図13のようになっている。図7図11図13の例では、基板部11の一方面側の下端側(設置時における鉛直方向下端側)において、複数の排水路28Bが溝状に形成されており、各々の排水路28Bにおいて水が流れ得る構成となっている。複数の排水路28Bは、一方の端部(上端部)側が排水板13Bの裏側に位置し、排水板13Bの裏面の一部が各々の排水路28Bの内部空間に面している。排水板13Bにおいて排水路28Bの内部空間と連通する隙間は、当該隙間を通る水が排水路28Bに流れ込むような構成となっている。そして、各々の排水路28Bの他方の端部(下端部)側は濾板10の下端部まで達しており、各々の排水路28Bの内部空間が濾板10の外側の空間に連通している。なお、排水板13Bの裏面と板状体11Aの表面との間には空間が存在し、この空間が各々の排水路28Bに連通するようになっていることが望ましく、このように構成されていれば、排水板13Bの裏面側に流れ込んだ水分が各々の排水路28Bを介して濾板10の外側に流れやすくなる。
【0070】
なお、図6図14の例では、濾板10の下端部側に複数の排水路28を設けた構成を例示したが、濾布18を通って排水板13側に流れ込んだ水を濾板10の外部に排出し得る流路であればよい。
【0071】
図7図10図13図14のように、防水材100は、防水性の板材又は防水性のシート材によって構成されている。防水材100は、板状体11A(板部)よりも薄く構成されている。防水材100は、非金属製材料を主体として構成される板材であってよく、非金属材料を主体として構成されるシート材であってもよい。非金属材料としては、例えば、樹脂材料などの高分子材料やセラミック材料などが挙げられる。代表例では、防水材100は、樹脂板や樹脂シートによって構成されている。
【0072】
防水材100は、板状体11A(板部)の板面と排水板13(被覆部)の他方面(板状体11A側の面)との間に挟まれている。一方の防水材100Aは、一方の排水板13Aと板状体11Aとの間に挟まれている。他方の防水材100Bは、他方の排水板13Bと板状体11Aとの間に挟まれている。このように構成された濾板10は、防水材100の表面と上記他方面(排水板13における板状体11A側の面)との間で液体が流れるようになっている。濾板10において、排水板13の上記他方面(排水板13における板状体11A側の面)は、防水材100側に凸となる凸面と防水材100とは反対側に凹む凹面とを有する凹凸面とされている。排水板13は、板状に構成され、板厚方向に貫通する孔部が形成された排水板であるが、この排水板13の上記他方面には溝や窪みなどが形成されていてもよい。
【0073】
図6図13のように、濾板10は、基板部11の一方の中央側凹部12A内及び他方の中央側凹部12B内にそれぞれ固定される一対の環状板部15A,15Bを有する。そして、環状板部15A,15Bには、濾板10の板厚方向に突出する貫通孔側突起部17A,17Bが形成されている。一方面側の環状板部15Aからは、一方面側の貫通孔側突起部17Aが複数突出しており、複数の貫通孔側突起部17Aは、図8図9のように、貫通孔16の周囲において貫通孔16を囲むように配置されている。同様に、他方面側の環状板部15Bからは、他方面側の貫通孔側突起部17Bが複数突出しており、複数の貫通孔側突起部17Bは、図11図12のように、貫通孔16の周囲において貫通孔16を囲むように配置されている。貫通孔16は、一対の環状板部15A,15Bのうちの一方の環状板部15A側から他方の環状板部15B側に連通する構成で形成されており、具体的には、一対の環状板部15A,15Bを連結する筒状部の内部が貫通孔16となっている。この構成では、図7のように、一の濾板10の一方面側と他の濾板10の他方面側とが押圧し合うように重ねられたとき、一の濾板10の一方面側の貫通孔側突起部17Aと他の濾板10の他方面側の貫通孔側突起部17Bとが互いに対向する構成となっている。図2のように一の濾板10の一方面側の貫通孔側突起部17Aと他の濾板10の他方面側の貫通孔側突起部17Bとが対向したとき、これら貫通孔側突起部17A,17Bの間隔(先端部の間隔)は、環状板部15A,15Bの板面間隔よりも小さくなっており、0であってもよい(即ち、対向する貫通孔側突起部17A,17Bが接触していてもよい)。なお、図2等の例では、対向する貫通孔側突起部17A,17Bの間には濾布18が介在しない。
【0074】
一方の中央側凹部12A内及び他方の中央側凹部12B内には、各々の排水板13よりも板厚方向に突出する排水板側突起部19(一方の排水板側突起部19A及び他方の排水板側突起部19B)がそれぞれ形成されている。一方の排水板側突起部19Aは、排水板13A又は板状体11Aの少なくともいずれかに固定され、排水板13Aの表面よりも板厚方向(濾板10の板厚方向)に突出した構成をなす。排水板側突起部19Aは、自身の突出方向の先端側に近づくにつれて細くなる先細り形状をなしている。図8図9の例では、このような構成をなす複数の排水板側突起部19Aが貫通孔16を囲むように配置されている。他方の排水板側突起部19Bは、排水板13B又は板状体11Aの少なくともいずれかに固定され、排水板13Bの表面よりも板厚方向(濾板10の板厚方向)に突出した構成をなす。排水板側突起部19Bは、自身の突出方向の先端側に近づくにつれて細くなる先細り形状をなしている。図11図12の例では、このような構成をなす複数の排水板側突起部19Bが貫通孔16を囲むように配置されている。そして、図7のように一の濾板10の一方面側と他の濾板10の他方面側とが押圧し合うように重ねられたとき、一の濾板10の一方面側の各々の排水板側突起部19Aと他の濾板10の他方面側の各々の排水板側突起部19Bとが互いに対向する構成となっている。図7のように一の濾板10の一方面側の排水板側突起部19Aと他の濾板10の他方面側の排水板側突起部19Bとが対向したとき、これら排水板側突起部19A,19Bの間隔(先端部の間隔)は、互いに対向する排水板13A、13Bの間隔よりも小さくなっている。なお、図7等の例では、対向する排水板側突起部19A,19Bの間に濾布18A,18Bが介在しており、対向する排水板側突起部19A,19Bによって濾布18A,18Bが挟み込まれている。
【0075】
(保持装置等の構成)
図1図3で示されるフィルタープレス装置1は、このような濾板構造3を有している。図2図3のように、フィルタープレス装置1は、濾板構造3を構成する複数の濾板10を所定の姿勢(即ち、各々の濾板10の厚さ方向が同方向となる姿勢且つ各々の濾板10の外周縁の位置が揃えられた姿勢)で揃えた状態で、ガイドレール90(ガイドレール90A,90B)に沿って複数の濾板10を前後方向に移動させ得るようになっており、このような移動動作によって、複数の濾板10において隣り合う濾板が互いに接近及び離間し得るようになっている。
【0076】
図8図13では図示は省略されているが、図2図4のように、各々の濾板10には、各々の濾板10における基板部11の左右両側部から側方に突出するように張り出す一対の突出部41,42が設けられている。これら一対の突出部41,42は、一対の被支持部として機能する。一対の突出部41,42は、それぞれがガイドレール90A,90B上に載置されつつ支持される。複数の濾板10では、一対の突出部41,42がガイドレール90A,90B上に載置されながら移動する。一対のガイドレール90A,90Bは、支持部材の一例に相当し、突出部41,42を支持するように機能する。各濾板10は、このような移動時に、図3図4等で示される所定姿勢を保ちながら前後方向(各々の濾板10の板厚方向)に移動する。なお、フィルタープレス装置1は、図3図4のような構成に加え、濾板10の姿勢を保つための追加機構が設けられていてもよい。
【0077】
図2図3のように、フィルタープレス装置1は、上述された濾板構造3に加え、保持装置50、第1注入装置60、第2注入装置70、供給路62、供給路72、第1切替部81、第2切替部82、などを備える。図2等では、第1注入装置60は、スラリー供給装置とも称され、第2注入装置70は、エア供給装置とも称される。供給路62は、第1注入装置60から濾板群5へ固液混合体7を供給する経路である、供給路72は、第2注入装置70から濾板群5へエアを供給する経路である。第1切替部81は、供給路62を第1注入装置60から濾板群5への固液混合体の供給が可能な状態(開放状態)と固液混合体の供給が不能な状態(遮断状態)とに切り替える装置である。第2切替部82は、供給路72を第2注入装置70から濾板群5へのエアの供給が可能な状態(開放状態)とエアの供給が不能な状態(遮断状態)とに切り替える装置である。なお、図2図3では図示はされていないが、フィルタープレス装置1は、保持装置50、第1注入装置60、第2注入装置70、第1切替部81、第2切替部82の動作(動作タイミングや制御量など)を制御する制御装置(例えばコンピュータなどの情報処理装置)も備える。
【0078】
保持装置50は、一対のガイドレール90(ガイドレール90A,90B)と、駆動装置54と、固定壁51,52とを備えてなり、これらが一体的に組み付けられた構成をなす。駆動装置54は、濾板群5の端部(固定壁52側の端部)の濾板10に作用する作用部54Cと、作用部54Cに連結される駆動軸54Bと、駆動軸54Bを所定方向(濾板群5の各濾板10の板厚保方向)に移動させる駆動部54Aとを備える。駆動部54Aが駆動軸54Bを介して作用部54Cを固定壁51側に移動させることで、複数の濾板10が所定姿勢を保ちながら固定壁51側に押し付けられ、図2図3のように、濾板群5において隣り合う濾板間が互いに接触した状態となる。一方、駆動部54Aが駆動軸54Bを介して作用部54Cを固定壁52側に移動させることで、濾板群5において隣り合う濾板間が互いに離間した状態となる。例えば、複数の濾板10において隣り合う濾板間の最大間隔が所定間隔となるように間隔を規制する間隔規制部(図示略)が設けられていれば、作用部54Cが濾板群5の端部(固定壁52側の端部)の濾板10と係合又は保持しながらその濾板10を固定壁52側に移動させようと動作したときに、それぞれの濾板間において隣り合う濾板が離間するように各濾板が移動するようになる。なお、ここで説明される例はあくまで一例であり、複数の濾板10を所定姿勢(即ち、各々の濾板10の厚さ方向が同方向となる姿勢且つ各々の濾板10の外周縁の位置が揃えられた姿勢)で揃えつつ各々の濾板間を接近及び離間し得る構成であれば、保持装置は他の構成としてもよい。
【0079】
このように、保持装置50は、作用部54Cを固定壁51側に移動させることにより、図2図3のように、複数の濾板10を重ねた状態で配置しつつ、隣り合う濾板間において片方の濾板10の環状凸部24がもう片方の濾板10の環状凹部34内に入り込んで当該環状凹部34内を押圧し且つ片方の濾板10の第1押圧面22ともう片方の濾板10の第2押圧面32とが互いに押圧し合う保持状態(第1保持状態)で保持することができる。
【0080】
第1注入装置60は、図示しない固液混合体収容部(例えば、スラリー収容槽など)から濾板群5側へ固液混合体を移送する移送装置であり、第1切替部81が開放状態となっており且つ供給路62が濾板群5の端部の貫通孔16に連通しているときに、供給路62を介して濾板群5の内部に固液混合体を注入し得る。第1注入装置60は、図2図3のように保持装置50が濾板群5を第1保持状態で保持しているときに、濾板群5の一端部の濾板10の貫通孔16から複数の濾板10の内部に固液混合体7を注入するように動作する。第1切替部81は、濾板群5における一端部側での流体の流出入を停止する第1停止状態と、第1停止状態を解除する第1解除状態とに切り替わる装置である。第1切替部81は、供給路62(管路)を開放状態と遮断状態とに切り替える公知の電磁弁によって構成されている。第1切替部81の開放動作及び遮断動作は、例えば図示しない制御装置によって制御される。
【0081】
第2注入装置70は、エア(空気)を圧送し得る公知のエア(空気)供給装置として構成されており、第2切替部82が開放状態となっており且つ供給路72が濾板群5の端部の貫通孔16に連通しているときに、供給路72を介して濾板群5の内部にエア(空気)を注入し得る。第2注入装置70は、図2図3のように保持装置50が濾板群5を第1保持状態で保持しているときに、濾板群5における上記一端部とは反対側の他端部の貫通孔16から複数の濾板10の内部にエアを注入するように動作する。第2切替部82は、濾板群5における他端部側での流体の流出入を停止する第2停止状態と、第2停止状態を解除する第2解除状態とに切り替わる装置である。第2切替部82は、供給路72(管路)を開放状態と遮断状態とに切り替える公知の電磁弁によって構成されている。第2切替部82の開放動作及び遮断動作は、例えば図示しない制御装置によって制御される。
【0082】
(注入動作及び排出動作)
フィルタープレス装置1では、固液混合体7を注入する前に、保持装置50が濾板群5を動作させ、濾板群5を上述の第1保持状態で保持する。第1保持状態では、図2図3図7のように、複数の濾板10の各々が、隣り合う濾板10と互いに密着した状態となる。フィルタープレス装置1では、図3図7のように保持装置50が濾板群5を第1保持状態で保持しているときに、第2切替部82が第2停止状態(供給路72を遮断した状態)とされ且つ第1切替部81が第1解除状態(供給路62を開放した状態)とされ、このような状態で、第1注入装置60が濾板群5の内部に固液混合体7を注入するように固液混合体注入動作を行う。このような固液混合体注入動作により、濾板群5内に構成された各濾室40内には固液混合体7が充満し、固液混合体7に含有された水の一部は排水路28から排出される。なお、各装置の動作タイミングや動作時間等は図示しない制御装置によって制御される。
【0083】
フィルタープレス装置1では、第1注入装置60が濾板群5に固液混合体7を注入した後、保持装置50が、図2図3図7のような第1保持状態を保ちつつ、第1切替部81が第1停止状態(供給路62を遮断した状態)に切り替えられ、第2切替部82が第2開放状態(供給路72を開放した状態)に切り替えられ、このような状態で、第2注入装置70が濾板群5の内部にエアを注入するようにエア注入動作を行う。このようなエア注入動作により、濾板群5内に構成された各濾室40内にはエアが供給され、エアの圧力により、濾室40内に残存する固液混合体7からの水の排出が促進される。具体的には、エア注入動作の際には、濾板群5の他端部の貫通孔16側から各々の濾板10の排水路28側へとエアが流され、濾板群5の内部に存在する固液混合体7の液体(水分)がエアと共に排水路28を介して濾板群5の外部に排出される。なお、各装置の動作タイミングや動作時間等は図示しない制御装置によって制御される。
【0084】
フィルタープレス装置1は、固液混合体注入動作の後(具体的にはエア注入動作の後)に濾室40内に残存する残存物(脱水ケーキ)を排出する排出動作を行う。フィルタープレス装置1では、エア注入動作の後、保持装置50の駆動部54Aが駆動軸54Bを介して作用部54Cを前後方向他方側(固定壁52側)に移動させることで、濾板群5において隣り合う濾板間が互いに離間した状態となる。具体的には、排出動作の際には、保持装置50は、濾板群5の端部の濾板10から各濾板10を順番に前後方向他方側(駆動部54A側)に移動させる。この排出動作時には、保持装置50が各濾板10を順番に前後方向他方側に移動させる過程において、各濾板10の付近において図5(A)から図5(B)のように変化し、直近に前後方向他方側への移動を開始した濾板10とその濾板10の前後方向一方側に隣接する濾板10(次に前後方向他方側への移動が予定される濾板10)との間で残留物(脱水ケーキ7A)が下方に排出される。即ち、直近に移動し始めた濾板10が、静止状態で維持されている次の濾板10から離間した際に、それら2つの濾板10の間に保持されていた残留物(脱水ケーキ7A)が下方に落下する。保持装置50は、排出動作の際に、直近に前後方向他方側に移動し始めた濾板10と、次の濾板10(直近に前後方向他方側に移動し始めた濾板10の前後方向一方側に隣接する濾板10)との間隔が最大間隔になると、複数の濾板10に取り付けられた間隔規制部材が次の濾板10を前後方向他方側に移動させるように、各濾板10を順番に前後方向他方側に移動させる。
【0085】
このような排出動作により、図5(B)のように隣り合う濾板間の距離を大きくして残存物(脱水ケーキ7A)を下方に落とすような排出動作を行うことができる。図5(A)(B)のように、隣り合う2つの濾板10,10が接近状態から離間状態に変化する過程では、各濾板10の左右方向への移動は規制され、各濾板10の上下方向の移動も規制され、各濾板10は、例えば板厚方向を前後方向とし且つ図4のように両側部10Aが延びる方向を上下方向とする姿勢を保ちながら移動し得る。なお、各濾板10が移動する過程では、各濾板10の若干の姿勢変化は許容されてもよい。各濾板10の側部10Aは、濾板群5の側部5Aを構成する。具体的には、複数の濾板10の一方側の側部10Aが前後に並んで配置され、濾板群5の一方側の側部5Aを構成する。同様に、複数の濾板10の他方側の側部10Aが前後に並んで配置され、濾板群5の他方側の側部5Aを構成する。
【0086】
(被覆部及び防水材の詳細)
以下では、一方の防水材100(具体的には防水材100B)及び一方の排水板13(具体的には排水板13B)に着目した構成が詳述される。なお、以下の説明の構成は、防水材100A及び排水板13Aも同様である。
【0087】
図14図16図17のように、防水材100は、樹脂材料からなる板材又は樹脂材料からなるシート材によって構成されており、板状体11A(板部)よりも薄く構成されている。図14の例では、防水材100は、樹脂シートによって構成されているが、板材であってもよい。図14の例では、板状体11A(板部)は、金属材料によって構成され、具体的には金属板材として構成されている。防水材100は、板状体11A(板部)における最も厚さの大きい部分よりも厚さが小さくなっている。防水材100は、当該防水材100の一方面から他方面への液体の通過を遮断する構成をなしている。
【0088】
図17のように、防水材100の厚さは、排水板13(被覆部)の厚さよりも小さい。具体的には、防水材100は、排水板13(被覆部)における最も厚さの大きい部分よりも厚さが小さくなっている。防水材100における排水板13側(被覆部側)の表面100Zの表面粗さは、板状体11A(板部)における排水板13側の板面の表面粗さよりも小さくなっている。防水材100は、板状体11A(板部)に対して着脱自在とされている。防水材100は、ねじ、ボルト等の締結部材によって板状体11Aに対して着脱可能に固定されていてもよく、接着剤や接着シートなどの接着媒体によって着脱可能に板状体11Aに貼り付けられていてもよい。
【0089】
図15図16(B)、図17のように、排水板13において、当該排水板13の一方面側から他方面側に液体を通す通水部138が形成されている。排水板13は、板状且つ網状に構成される。通水部138は、排水板13の板厚方向に貫通する孔部である。排水板13は、樹脂材料などの非金属材料によって構成されている。
【0090】
図15(A)のように、排水板13の一方面13X側(具体的には濾布18に接触する面側)には、第1方向(具体的には、左右方向である横方向)に延びるリブ状の凸部132が一方側(濾布18側)に突出して形成されている。複数の凸部132は、互いに平行に延びている。複数の凸部132において、互いに隣り合う2つの凸部132の間には凹部が構成されている。互いに隣り合う凸部132の間には、凹部内に上記通水部138(孔部)が形成されている。
【0091】
図15(B)のように、排水板13の他方面13Y側(具体的には防水材100に接触又は近接する面側)には、第1方向と直交する第2方向に延びるリブ状の凸部134が他方側(防水材100側)に突出して形成されている。第2方向は、例えば、鉛直方向又は鉛直方向に沿った方向である。複数の凸部134は、互いに平行に延びている。複数の凸部134において、互いに隣り合う2つの凸部134の間には凹部が構成されている。
【0092】
図14図17のように、防水材100は、板状体11A(金属板材)を覆っている。そして、板状体11A(金属板材)の板面と排水板13の他方面13Y(防水材100に接触又は近接する面)との間に防水材100が挟まれた構成で、板状体11Aと排水板13と防水材100とが重なる。そして、防水材100における表面100Z(樹脂材料の表面)が排水板13側に面し、排水板13の一方面13X側から他方面13Y側に通過した液体を防水材100の表面で受けるようになっている。図17では、液体の流れが矢印にて概念的に示される。そして、防水材100側に向かって排水板13を通過した液体は、防水材100の表面100Zと他方面13Yとの間で下方に流れる。
【0093】
図17のように、排水板13の他方面13Yは、防水材100側に凸となる凸面と防水材100とは反対側に凹む凹面とを有する凹凸面である。図15図17の例では、複数の凸部134において隣り合う凸部134間に凹面が構成され、凸部134の表面が凸面として構成される。この排水板13では、一方面13X側から他方面13Y側に通過した液体が、少なくとも上記凹面と表面100Zとの間を通って下方に流れるようになっている。また、排水板13と防水材100との間では、複数の凸部134における防水材100側の端面134Aと表面100Zとの間にも隙間が構成され、この隙間を通って液体が下方に流れるようになっている。他方面13Yに設けられた複数の凸部134は、鉛直方向に沿って延びる構成をなし、複数の凸部134における凸部間に構成された凹部は、鉛直方向に沿って延びる溝として構成されている。従って、一方面13X側から他方面13Y側に移動して複数の凸部134の間の上記凹部に入り込んだ液体は、重力によって凹部を通って下方に流れやすい。
【0094】
図6図9図12図13等に示される周縁側凸部14は、枠部の一例に相当する。周縁側凸部14は、環状に構成され、板状体11Aに重ねられて板状体11Aに固定される構成をなす。図12図13のように、排水板13の周縁部と防水材100の周縁部とが板状体11Aと周縁側凸部14とに挟まれる。そして、図7のように固液混合体が注入された場合には、周縁側凸部14の内側に入り込んだ固液混合体の液体が、図17のように排水板13を通って防水材100側へ流れる構成をなす。
【0095】
金属板材として構成される板状体11A(板部)には、排水板13と防水材100との間の部材間空間140(図17)と濾板10の外部の空間とに連通するとともに部材間空間140に入り込んだ液体を外部の空間へと流す流路として構成された排水路28が設けられている。部材間空間140は、図17のように、隣り合う凸部134の間の空間を含み、凸部134の端面134Aと防水材100の表面100Zとの間の空間を含む。排水路28は、溝部を有している。図14のように、排水路28を構成する溝部の少なくとも一部は、周縁側凸部14の内側の領域(周縁側凸部14の内縁部よりも中央側の領域)において排水板13に対向するように開放している。このように対向して開放した部分では、排水板13を通過した液体が直接的に排水路28に流れ込む。そして、少なくとも部材間空間と排水路28の溝部とが連通した構成をなす。排水路28内の内壁部(溝部内の内壁部)には、非金属材料からなる防錆層が設けられている。防錆層は、例えば、樹脂材料からなる樹脂層である。
【0096】
図13図14の例では、防水材100は、周縁側凸部14(枠部)の内側の領域において排水路28(溝部)を避けて配置される。即ち、板状体11Aの板面において排水路28から外れた領域に防水材100が配置されている。防水材100には、切欠き形状又は孔形状の開放部100Cが形成されている。開放部100Cの内側の空間と排水路28(溝部)とが周縁側凸部14(枠部)の内側の領域において通じている。開放部100Cが設けられた領域では、排水板13を通過した液体が開放部100Cを通過して直接的に排水路28に流れ込む。開放部100Cは,上述の部材間空間140と連通しており、部材間空間140を通って流れる液体が、開放部100Cを通過して排水路28に流れ込み得る。
【0097】
(効果の例示)
濾板10は、板状体11A(板部)と、板状体11Aと重なって配置される排水板13(被覆部)と、を備え、固液混合体を受けて、固液混合体から液体を排出するフィルタープレス装置用の濾板として構成される。濾板10は、防水性の板材又は防水性のシート材を有するとともに板状体11A(板部)よりも薄く構成された防水材100を備え、排水板13には、当該排水板13の一方面側から他方面側に液体を通す通水部が形成されている。そして、防水材100が板状体11Aの板面と排水板13の上記他方面との間に挟まれた構成で、板状体11Aと排水板13と防水材100とが重なる。
【0098】
この濾板10は、防水材100が板状体11Aの板面と排水板13の他方面との間に挟まれた構成で、板状体11Aと排水板13と防水材100とが重なるため、固液混合体に含有される液体が板状体11Aの板面に直接当たることを抑えることができる。よって、液体に起因する板状体11Aの板面の劣化を抑えることができ、板面の劣化に起因する排水板13の排出性の低下を抑えることができる。よって、この濾板10は、フィルタープレス装置1において固液混合体を脱水する際に、固液混合体に含入される液体を円滑に排出することができる。
【0099】
濾板10において、上記防水材100の表面と上記他方面との間で液体が流れるようになっている。この濾板10は、防水材100の表面と排水板13の他方面との間で液体が流れるため、板状体11Aへ液体が当たることを抑えつつ、液体を良好に排出することができる。
【0100】
濾板10において、排水板13の上記他方面は、上記防水材100側に凸となる凸面と上記防水材100とは反対側に凹む凹面とを有する凹凸面である。濾板10は、排水板13の他方面(防水材100に対向する面)が凹凸面とされているため、防水材100に対して排水板13の他方面が全体的に密着することを抑えることができる。よって、この濾板10は、上記他方面が全体的に密着することに起因する排水性の低下が抑えられ、排水性が一層高められる。
【0101】
排水板13は、板状に構成され、板厚方向に貫通する孔部が形成されている。この濾板10は、板状に構成された排水板13と板状体11Aとの間に防水材100をコンパクト且つ安定的に挟み込むことができる。
【0102】
濾板10では、排水板13は、樹脂材料によって構成され、防水材100は、樹脂シートによって構成され、板状体11Aは、金属材料によって構成されている。この濾板10は、板状体11Aの強度を高めつつ、板状体11Aがさびにくい構成、且つ板状体11Aの錆の影響が排水板13に及びにくい構成とすることができる。
【0103】
濾板10には、枠部としての周縁側凸部14A、14Bが設けられている。周縁側凸部14A、14Bは、環状に構成され、板状体11Aに重ねられて板状体11Aに固定される構成をなす。そして、排水板13の周縁部と防水材100の周縁部とが板状体11Aと枠部(周縁側凸部14A、14Bのいずれか)とに挟まれ、周縁側凸部14A、14Bの内側に入り込んだ固液混合体の液体が、排水板13を通って防水材100側へ流れる構成となっている。この濾板10は、周縁側凸部14A、14Bと板状体11Aとによって排水板13及び防水材100の各周縁部を挟み込むように保持することができる。よって、周縁側凸部14A、14Bの内縁部によって液体を排水板13側に案内し得る構成を実現しつつ、周縁側凸部14A、14Bを排水板13及び防水材100の保持にも兼用することができる。
【0104】
濾板10は、排水板13と防水材100との間の部材間空間と濾板10の外部の空間とに連通する排水路28を有し、排水路28は、上記部材間空間から外部の空間へと液体を流す流路とされている。この濾板10は、防水材100によって排水性を高める構成を実現しつつ、防水材100と排水板13とによって案内される液体を、排水路28によって濾板10の外部に良好に排出することができる。
【0105】
<第2実施形態>
図18図19には、第2実施形態に係る濾板10の一部が示される。第2実施形態に係る濾板10は、防水材100の形状のみが第1実施形態の濾板10と異なり、その他の点は第1実施形態の濾板10と同一である。第2実施形態の濾板10の防水材100は、周縁側凸部14の内側の領域において排水路28(溝部)を覆うように防水材100が設けられている点(開放部100Cの領域も防水材100とした点)が第1実施形態の濾板10の防水材100と異なり、その他の点は、第1実施形態の濾板10の防水材100と同一である。第2実施形態の濾板10が設けられるフィルタープレス装置は、防水材100以外は、第1実施形態に係るフィルタープレス装置1と同一である。
【0106】
第2実施形態の濾板10でも、排水板13(被覆部)の周縁部と防水材100の周縁部とが板状体11A(板部)と周縁側凸部14(枠部)とに挟まれる。そして、固液混合体の液体が図7と同様に周縁側凸部14の内側に入り込んだ場合には、排水板13を通って防水材100側へ流れる構成をなす。板状体11Aには、排水板13と防水材100との間の部材間空間(図17の部材間空間140と同様の部材間空間)と濾板10の外部の空間とに連通するとともに部材間空間に入り込んだ液体を外部の空間へと流す流路として構成された排水路28が設けられる。防水材100は、液体を表面100Zに沿うように周縁側凸部14の内縁部よりも外側の領域に向かって流す。この構成では、図19において矢印にて示されるように、周縁側凸部14の内縁部よりも外側において周縁側凸部14と板状体11Aとの間で、防水材100から排水路28へと液体が流れる構成をなす。
【0107】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組合せが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0108】
上述の実施形態では、固液混合体の一例が説明されたが、固液混合体は、上述した例以外のもので、少なくとも液体と固体(例えば、粉粒体、粉体、粒体の少なくともいずれか)とが混合したものであってもよい。例えば、固液混合体は泥水などに限定されず、液体と固体とが混合した食品又は食品用の材料などであってもよい。或いは、固液混合体は、固体と液体とが混合した工業製品用の材料などであってもよい。
【0109】
上述の実施形態では、板部の一例に相当する板状体11Aが、1つの金属板材のみによって構成されていたが、複数の金属板材が積層された構成であってもよく、金属板材に対して何らかの金属部材や非金属部材(樹脂部材やセラミック部材など)が固定された構成であってもよい。板部は、液体に接触することが望ましくない材料又は避けた方が良い材料を備えたものであれば、他の構成であってもよい。
【0110】
上述の実施形態では、濾板10は、正面視四角形状の構成であったが、濾板の形状は正面視四角形状のものに限定されない。濾板の外縁の形状は、四角形以外の多角形状であってもよく、一部又は全部が湾曲した外縁をなす構成であってもよく、その他の構成であってもよい。
【0111】
上述の実施形態では、濾板群5は、同様の構成をなす複数の濾板10が並ぶ構成のものであったが、濾板群5の内部に濾室が構成される構成のものであればよい。例えば、フィルタープレス装置は、2種類以上の濾板を備えたものであってもよく、濾板間に枠体が介在する構成のものであってもよい。
【0112】
上述の実施形態では、濾板構造3において環状凸部24と環状凹部34とが設けられ、複数の濾板10が密着したときに環状凹部34内に環状凸部24が入り込む構成であったが、この構成に限定されない。例えば、環状凸部24の位置が第1押圧面22と同様の平坦面であってもよい。即ち、環状凸部24が存在せずに環状凸部24の位置まで第1押圧面22が及んでいてもよい。同様に、環状凹部34の位置が第2押圧面32と同様の平坦面であってもよい。即ち、環状凹部34が存在せずに環状凹部34の位置まで第2押圧面32が及んでいてもよい。
【0113】
上述の実施形態では、濾板構造3を構成する各濾板10において環状凸部24と環状凹部34とが設けられていたが、環状凸部24の部分が、第1押圧面22よりも突出する凸部と第1押圧面22よりも凹む凹部を備えた第1環状凹凸部として構成されていてもよく、環状凹部34の部分が、第2押圧面32よりも突出する凸部と第2押圧面32よりも凹む凹部を備えた第2環状凹凸部として構成されていてもよい。例えば、第1環状凹凸部は、中央側凹部12Aの周りに環状に配置され、周方向において凹部と凸部が交互に配される構成であってもよい。同様に、第2環状凹凸部は、中央側凹部12Bの周りに環状に配置され、周方向において凹部と凸部が交互に配される構成であってもよい。そして、この場合の濾板構造は、隣り合う濾板10が密着する際に、第1環状凹凸部の凸部が第2環状凹凸部の凹部内に入り込みつつ当該凹部を押圧し、第2環状凹凸部の凸部が第1環状凹凸部の凹部内に入り込みつつ当該凹部を押圧するような密封構造を有していてもよい。
【0114】
上述の実施形態では、防水材を構成する非金属材料からなる板材又はシート材の例として樹脂製の板材又は樹脂製のシート材が例示されたが、この例に限定されない。例えば、防水材は、セラミック製のシート材又は板材によって構成されていてもよい。防水材は、板状体11A(板部)の板面に積層する形で構成された防水性の層であってもよい。
【0115】
上述の実施形態では、排水板13又は排水板113が樹脂材料によって構成される例が望ましい一例であるが、排水板13又は排水板113は、樹脂材料以外の非金属材料(例えば、セラミック材料)などによって構成されていてもよい。
【0116】
上述の実施形態では、排水路28が板状体11A(板部)に設けられていたが、被覆部と防水材との間の部材間空間と濾板の外部の空間とに連通する構成であれば、板部に設けられていなくてもよい。例えば、部材間空間から濾板の外部に続く管が、枠部や板状体の内部を通る構成で配置されていてもよい。
【0117】
上述の実施形態では、被覆部の一例として排水板13を例示したが、被覆部は、排水板13の構成に限定されない。例えば、図20(A)(B)のように、所定の厚さの樹脂板190において板厚方向に貫通した貫通孔198が多数形成された排水板113が、排水板13の代わりに用いられてもよい。樹脂板190は、一方の板面190Aが平坦に構成され、他方の板面190Bが平坦に構成される。
【0118】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1 :フィルタープレス装置
7 :固液混合体
10 :濾板
11A :板状体(板部)
13 :排水板(被覆部)
14 :周縁側凸部(枠部)
28 :排水路
100 :防水材
100C :開放部
100Z :表面
113 :排水板(被覆部)
132 :凸部
134 :凸部
134A :端面
138 :通水部
140 :部材間空間
198 :貫通孔(通水部)
図1
図2
図3
図4
図5
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図20