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  • 特開-内燃機関および車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080290
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】内燃機関および車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/00 20060101AFI20220520BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20220520BHJP
   F02B 33/36 20060101ALI20220520BHJP
   F02B 33/06 20060101ALI20220520BHJP
   F02B 65/00 20060101ALI20220520BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
F02D23/00 A
F02M21/02 G
F02B33/36
F02B33/06
F02B65/00 D
F02B75/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021185377
(22)【出願日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】20207946.3
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】アーン・アンダースン
(72)【発明者】
【氏名】アルバート・セラ・ダルマウ
【テーマコード(参考)】
3G005
3G092
【Fターム(参考)】
3G005EA01
3G005EA05
3G005FA05
3G092AA01
3G092AA18
3G092AB09
3G092AC01
3G092DB02
3G092FA17
3G092FA18
3G092FA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水素ガスを動力源とする先行技術の内燃機関に対して少なくともいくつかの点で改良された内燃機関を提供する
【解決手段】燃焼シリンダアセンブリの少なくとも1つの燃焼室102内で水素ガスを燃焼させ、内燃機関のクランクシャフト120を駆動するように構成された4ストローク燃焼シリンダアセンブリ101と、燃焼シリンダアセンブリの上流側に設けられた吸気通路117および燃焼シリンダアセンブリの下流側に設けられた排気通路118と、吸気通路内に配置され、吸気ガスを圧縮するように構成された容積型圧縮機110と、排気通路からの排気の少なくとも一部を容積型圧縮機に再循環させるように構成された排気ガス再循環システム103と、を備えた内燃機関100。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの燃焼室(102)内で水素ガスを燃焼させ、クランクシャフト(120)を駆動するように構成された4ストローク燃焼シリンダアセンブリ(101)と、
前記燃焼シリンダアセンブリ(101)の上流側に設けられた吸気通路(117)および前記燃焼シリンダアセンブリ(101)の下流側に設けられた排気通路(118)と、
前記吸気通路(117)内に配置され、吸気ガスを圧縮するように構成された容積型圧縮機(110)と、
前記排気通路からの排気の少なくとも一部を前記容積型圧縮機に再循環させるように構成された排気ガス再循環システム(103)と、
前記燃焼室(102)と下流側で流体連通するように配置され該燃焼室(102)からの排気を受け入れる膨張機(106)とを備え、
前記排気ガス再循環システム(103)が、前記膨張機(106)と下流側で流体連通するように配置される、内燃機関。
【請求項2】
前記排気ガス再循環システムが、前記排気を冷却するための熱交換器(104)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記熱交換器(104)が、前記排気を少なくとも該排気の露点まで冷却するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記排気ガス再循環システム(103)が、凝縮された排気および排気ガスの両方を前記熱交換器(104)から前記容積型圧縮機(110)へ送り込むように構成されることを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記排気ガス再循環システム(103)が、該排気ガス再循環システム(103)からの前記排気の少なくとも一部を、前記容積型圧縮機(110)に到達する前に凝縮して減少させるように構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記排気ガス再循環システム(103)が、ガス状の排気のみを前記容積型圧縮機(110)に再循環させるように構成されることを特徴とする、請求項5に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記吸気通路(117)内の前記容積型圧縮機(110)の下流側に設けられたターボ圧縮機(111)をさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記4ストローク燃焼シリンダアセンブリ(101)が、リーン混合気を用いて水素ガスを燃焼させるように構成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項9】
前記膨張機(106)が、前記クランクシャフト(120)に駆動連結された膨張ピストンを有する2ストローク膨張シリンダを備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項10】
前記容積型圧縮機(110)が、前記クランクシャフト(120)に駆動連結された圧縮ピストンを有する2ストローク圧縮シリンダを備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項11】
前記圧縮ピストンと前記膨張ピストンが、一体となって動くように剛的に連結されることを特徴とする、請求項9と組み合わせた請求項10に記載の内燃機関。
【請求項12】
前記少なくとも1つの燃焼室(102)に水素ガスを噴射するための少なくとも1つの燃料噴射装置(109)をさらに備える、請求項1から11のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項13】
排気ガス後処理システムをさらに備える、請求項1から12のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の内燃機関を備える、車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関および車両に関する。
【0002】
本発明は、トラックやバスや建設機械などの大型車両に適用することができる。本発明はトラックに関連して説明するが、本発明はこの特定の車両に限定されるものではなく、バスや作業機や乗用車など他の車両に適用することもできる。また、本発明は、船舶や定置用途のものに適用することもできる。
【背景技術】
【0003】
従来、バスやトラックなどの重車両には、ディーゼルを燃料として車両に動力を供給する内燃機関が使用されてきた。二酸化炭素の排出量を削減するための取り組みにおいて、電気動力システムや、例えばバイオ燃料、水素ガスを燃料とする燃料電池などを動力源とするエンジンを含む代替動力システムが開発されている。燃料電池は、発電時の副生成物が熱以外に水のみである点で、特に魅力的である。しかし、燃料電池はかなりコストが高く、車両の推進システムにおいては、電力伝送の損失が比較的大きいことやエンジンブレーキ機能に欠けるなどの欠点も伴う。そのため、水素を利用した競合動力システムの開発が望まれている。そのような競合システムの候補には、水素を燃料とする燃焼機関がある。しかし、このような既存の機関は、一般的に燃料電池よりも効率が悪い。したがって、燃料電池に競合可能な、水素を燃料として使用出来るより効率的でクリーンな燃焼機関の開発が望まれている。
【0004】
[定義]
本明細書において、4ストローク燃焼シリンダとは、吸気ストローク、圧縮ストローク、燃焼ストローク、および排気ストロークの往復運動をする燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダを意味する。吸気ストロークで燃焼ピストンが燃焼シリンダの下死点に向かって下降すると、圧縮空気が燃焼シリンダの燃焼室に送り込まれる。その後、圧縮ストロークで燃焼ピストンが燃焼シリンダの上死点に向かって上昇すると、燃焼シリンダ内のガスが圧縮される。上死点付近、あるいはピストンが上死点に到達した少し後に、燃焼プロセスが開始される。その後、燃焼ピストンは下死点に向かって下降し、ピストンが仕事をする。これをここでは燃焼ストロークとする。最後に、排気ストロークで燃焼ピストンが再び上昇すると、排気ガスが燃焼室から排出される。
【0005】
本明細書に記載の4ストローク燃焼シリンダアセンブリは、このような4ストローク燃焼シリンダを複数備えてもよい。
【0006】
容積型圧縮機とは、往復動型圧縮機や回転型圧縮機などの容積式の圧縮機を意味する。容積型圧縮機は、機械的リンク機構の変位を利用してガスを収容する空間の容積を減少させることにより、ガスを圧縮する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水素ガスを燃料として使用できる内燃機関であって、水素ガスを動力源とする先行技術の内燃機関に対して、少なくともいくつかの点で改良された内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、上記目的は、請求項1に記載の内燃機関によって達成される。
【0009】
本発明の内燃機関は、
燃焼シリンダアセンブリの少なくとも1つの燃焼室内で水素ガスを燃焼させ、内燃機関のクランクシャフトを駆動するように構成された4ストローク燃焼シリンダアセンブリと、
燃焼シリンダアセンブリの上流側に設けられた吸気通路および燃焼シリンダアセンブリの下流側に設けられた排気通路と、
吸気通路内に配置され、吸気ガスを圧縮するように構成された容積型圧縮機と、
排気通路からの排気の少なくとも一部を容積型圧縮機に再循環させるように構成された排気ガス再循環システムと、
燃焼室と下流側で流体連通するように配置され燃焼室からの排気を受け入れる膨張機とを備え、
排気ガス再循環システムが、膨張機と下流側で流体連通するように配置される。
【0010】
提案されている内燃機関は水素ガスを燃焼させるように構成されているため、排気には多量の水とともに窒素酸化物(NOx)や窒素ガス(N)が含まれる。燃焼プロセスで生成されるNOxの量は、排気ガス再循環システム(EGR)により削減することができる。これは、特にリーン混合気を使用する場合に有効である。再循環された排気が燃焼室に導入されることにより、燃焼温度が低下するためである。また、吸気通路内に圧縮機を配置し吸気ガスを燃焼室内に送り込むことで、エンジンの効率と出力密度(power density)が向上する。そのために例えばディーゼルエンジンでは、一般的にターボ圧縮機が使用されているが、凝縮による影響を受けやすく、圧縮機ホイールが破損する恐れがある。容積型圧縮機は、EGRシステムからの凝縮した排気の受け入れの影響を受けにくく、凝縮した排気が送り込まれても機能を維持することができる。これにより、EGRシステムからの排気が直接ターボ圧縮機に送られる機関よりも、EGRシステム内の排気を低温にすることが可能となる。この低温化により、圧縮機の作業量が減り、エンジンのエネルギー効率が向上する。また、温度が下がることで、NOxの排出量も減少する。
【0011】
膨張機は、容積型圧縮機と組み合わせて使用され、排気ガスの流れを増加させることにより、内燃機関の効率をさらに向上させる。膨張機は、容積型圧縮機に駆動連結してもよく、容積型圧縮機とは別個に設けることも可能である。
【0012】
容積型圧縮機は、ピストン圧縮機であってもよく、ルーツブロワなどのブロワであってもよい。容積型圧縮機は、内燃機関の異なる負荷点や燃焼モードに適応するために、制御可能な容積効率を有することが好ましい。
【0013】
内燃機関の吸気ガスは、空気とEGRシステムを介して供給される排気の混合物となる。
【0014】
任意選択的に、排気ガス再循環システムは、排気を冷却するための熱交換器を備える。排気を冷却することで容積型圧縮機が行うべき作業を減らすことができるが、一方で、冷却によって凝縮した排気が圧縮機に混入する恐れがある。しかし、先に説明したように、容積型圧縮機を使用しているため問題とはならない。
【0015】
任意選択的に、熱交換器は、排気を少なくとも排気の露点まで冷却するように構成される。言い換えれば、飽和した排気が容積型圧縮機に送り込まれる。この場合、排気ガス再循環システムに凝縮物が形成される可能性がある。
【0016】
任意選択的に、排気ガス再循環システムは、凝縮された排気および排気ガスの両方を熱交換器から容積型圧縮機へ送り込むように構成される。この場合、排気ガス再循環システムは、凝縮された排気のすべてを容積型圧縮機に送り込むように構成してもよいし、あるいは、凝縮された排気の一部のみを容積型圧縮機に送り込むように構成してもよい。
【0017】
任意選択的に、排気ガス再循環システムは、該排気ガス再循環システムからの排気の少なくとも一部を、容積型圧縮機に到達する前に凝縮して減少させるように構成される。この場合任意選択的に、排気ガス再循環システムは、ガス状の排気のみを容積型圧縮機に再循環させるように構成してもよい。これにより、容積型圧縮機内の腐食のリスクが低減される。凝縮された排気は、廃棄してもよいし、内燃機関内で他の目的に使用してもよい。
【0018】
任意選択的に、内燃機関は、該機関の吸気通路内の容積型圧縮機の下流側に設けられたターボ圧縮機をさらに備える。これにより、2段階の圧縮が達成され、第1段階の圧縮は容積型圧縮機で行われ、それにより露点からそれ、凝縮された排気がターボ圧縮機に導入される恐れなく第2段階の圧縮がターボ圧縮機、すなわち、排気通路に配置されたタービンホイールによって駆動される圧縮機ホイールで行わる。これにより、燃焼室への導入前に吸気ガスをさらに圧縮することが可能となり、機関のエネルギー効率をさらに向上させることができる。ターボ圧縮機が設けられている場合、膨張機は、ターボ圧縮機に接続してもよい。膨張機は、例えば、ターボ圧縮機のタービンとして設けてもよい。
【0019】
任意選択的に、4ストローク燃焼シリンダアセンブリは、リーン混合気を用いて水素ガスを燃焼させるように構成される。リーン混合気とは、理論混合気よりも空気の割合が多い混合気を意味する。容積型圧縮機と膨張機によって排気ガスの流れが大きくなり、燃料の流れと出力密度が維持されるため、リーン運転状態ではエンジン効率が向上する。
【0020】
任意選択的に、膨張機は、内燃機関のクランクシャフトに駆動連結された膨張ピストンを有する2ストローク膨張シリンダを備える。この場合、膨張機のピストンと燃焼シリンダアセンブリのピストンは、第1のピストンの動きが第2のピストンの所定の動きに関連付けられるように連結してもよい。あるいは、別のタイプの膨張機を設けてもよい。膨張ピストンは、中間部材、例えば、少なくとも1つのコネクティングロッドを介して、クランクシャフトに連結してもよい。
【0021】
任意選択的に、容積型圧縮機は、内燃機関のクランクシャフトに駆動連結された圧縮ピストンを有する2ストローク圧縮シリンダを備える。このため、クランクシャフトは、例えば、少なくとも1つのコネクティングロッドや他の中間部品を介して、圧縮ピストンを駆動することができる。
【0022】
任意選択的に、圧縮ピストンと膨張ピストンは、一体となって動くように剛的に連結される。本内燃機関での使用に適したそのような剛的に連結された圧縮ピストンおよび膨張ピストンは、国際公開公報第2018/166591号に記載されている。
【0023】
任意選択的に、内燃機関は、少なくとも1つの燃焼室に水素ガスを噴射するための少なくとも1つの燃料噴射装置をさらに備える。燃料噴射装置は、燃焼プロセスを最適化するように、所定のクランク角またはクランク角間隔で水素ガスを噴射するように構成してもよい。
【0024】
任意選択的に、内燃機関は、排気ガス後処理システムをさらに備える。本実施形態における排気ガス後処理システムは、燃焼室と下流側で流体連通するように配置され、排気ガスを受け入れる。排気ガス後処理システムは、例えば、三元触媒コンバータや選択還元触媒(SCR)コンバータで構成され、効率的な窒素酸化物(NOx)の削減を実現する。内燃機関がリーン混合気を使用するように構成されている場合、排気後処理システムは、効率的にNOx削減を達成するために好ましくはSCRコンバータを備えてもよい。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、上記に明示した目的は、第1の態様のいずれか1つの実施形態による内燃機関を備える車両によって達成される。車両は、例えば、バスやトラックなどの大型車両であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態による内燃機関を搭載した車両の側面図である。
図2】本発明の一実施形態による内燃機関の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照して、本発明を実施形態に基づいてさらに説明する。
【0028】
図面は、本発明の例示的な実施形態を示すものであり、したがって、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。ここで示し、説明する実施形態は例示的なものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。また、本発明をよりよく説明するために、図面の一部の詳細が誇張されている場合があることに留意されたい。同一の参照符号は、他に表現されていない限り、説明全体を通して同一の要素を指す。
【0029】
図1は、大型トラックの形態としての車両1を模式的に示す。該車両1は、本発明の例示的な実施形態による内燃機関100によって駆動される。
【0030】
図2は、例示的な実施形態による内燃機関100を模式的に示す。内燃機関100は、燃焼シリンダアセンブリ101の燃焼室102内で水素ガスなどのガス状燃料を燃焼させるように構成された、4ストローク燃焼シリンダアセンブリ101を備える。燃焼シリンダ内には、上死点(TDC)と下死点(BDC)との間で往復運動するように配置された往復動ピストン115が設けられている。ピストン115は、内燃機関100のクランクシャフト120を駆動するコネクティングロッド116に接続される。図示の実施形態では、簡潔にするために、燃焼シリンダアセンブリ101は単一の燃焼シリンダを有するものとして図示されているが、もちろん、内燃機関100は複数の燃焼シリンダを備えてもよく、それぞれをピストンおよびコネクティングロッドを介してクランクシャフト120に接続してもよい。圧縮水素ガスまたは液体水素を貯蔵するための水素タンク119が設けられ、水素ガスを燃焼室102に噴射するための燃料噴射装置109が設けられている。なお、内燃機関100の構成に応じて、燃焼室102内の水素ガスの燃焼を開始するための点火手段(図示せず)を設けてもよい。
【0031】
内燃機関100の吸気通路117には、大気中の空気を取り込むための吸気口105が設けられている。吸気通路117は、燃焼室102の上流側に設けられた容積型圧縮機110を介して、燃焼室102に吸気ガスを送り込むように構成される。また、図示の実施形態では、圧縮機110の下流側にターボ圧縮機111が設けられ、容積型圧縮機110と燃焼室102とを流体連通させているが、このようなターボ圧縮機は省いてもよい。また、吸気通路117は、吸気ガスを周期的に貯留するための1つまたは複数の吸気ガス室(図示せず)を備えてもよい。吸気ガス室は、容積型圧縮機110から、および、存在する場合はターボ圧縮機111から圧縮された吸気ガスを受け入れ、受け入れた吸気ガスをピストン115の吸気ストロークで燃焼シリンダ102に送出してもよい。
【0032】
燃焼室102の下流側には排気通路118が設けられ、内燃機関100の運転中に、この排気通路を介して排気が排気口108に送り込まれる。また一方、燃焼室102の下流側には、排気の一部を容積型圧縮機110に送り込むように構成された排気ガス再循環(EGR)システム103も設けられている。したがって、吸気通路117を介して燃焼室102に送り込まれる吸気ガスは、空気とEGRシステム103からの排気との混合物で構成される。図示の実施形態では、EGRシステム103は排気を所望の温度に冷却するように構成された熱交換器104を備える。
【0033】
図示の実施形態では、排気通路118には燃焼室102とEGRシステム103とを流体連通させる膨張機106が設けられている。図示の実施形態では、膨張機106はターボ圧縮機111のタービンであってもよい。また、膨張機はピストン膨張機であってもよく、ピストン膨張機とタービンの両方を設けてもよい。
【0034】
内燃機関100の動作を制御するために、電子制御ユニット(ECU、図示せず)を設けてもよい。制御ユニットは、例えば、燃料噴射装置109を介した燃料の噴射を直接的または間接的に制御するように構成してもよい。また、制御ユニットは、例えば、EGRシステムを介した排気の流れや、燃焼室102への吸気ガスの流れを調整するために、内燃機関100の様々な入口弁や出口弁(図示せず)を開閉するように構成してもよい。このような弁は、代替的に、例えばカムシャフト(図示せず)を用いて機械的に操作してもよい。制御ユニットは、燃焼室内の空燃比が要求された空燃比になるように、燃料噴射装置および吸気弁を制御するように構成してもよく、例えば、リーン運転状態を提供するように構成してもよい。
【0035】
内燃機関100の運転中、大気中の空気および再循環された排気は、それぞれ吸気口105およびEGRシステム103を介して容積型圧縮機110に吸入される。空気と排気は、第1段階の圧縮で混合されて吸気ガスを形成し、この吸気ガスはターボ圧縮機111に送り込まれ、第2段階の圧縮でさらに圧縮される。その後、圧縮された吸気ガスは燃焼室102に送り込まれ、4サイクルの燃焼が行われ、機械的動力が発生する。発生した排気は、排気通路118を経由して膨張機106に送り込まれ、そこでの膨張中に、排気の圧力と温度が低下する。排気の一部は排気口108を介して排出され、他の一部はEGRシステム103に送り込まれ、排気が熱交換器104で冷却される。排気は、例えばその露点まで冷却されてもよく、冷却された排気は、その後容積型圧縮機110に送り込まれる。
【0036】
本発明は、上述し図面に示した実施形態に限定されるものではなく、むしろ、当業者であれば添付の請求項の範囲内で多くの変更および修正を行うことができると認識するであろうことを理解されたい。
図1
図2
【外国語明細書】