(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080294
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】原料撹拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 35/75 20220101AFI20220520BHJP
B01J 2/12 20060101ALI20220520BHJP
B01F 29/60 20220101ALI20220520BHJP
B01F 29/64 20220101ALI20220520BHJP
B01F 35/10 20220101ALI20220520BHJP
【FI】
B01F15/02 C
B01J2/12
B01F9/02 B
B01F9/08
B01F15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185629
(22)【出願日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020190856
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597009046
【氏名又は名称】日本アイリッヒ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】内藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 雄一
(72)【発明者】
【氏名】嶺井 政尚
【テーマコード(参考)】
4G004
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4G004HA02
4G004HA06
4G036AA05
4G036AA06
4G037AA11
4G037AA18
4G037DA15
4G037DA30
4G037EA05
(57)【要約】
【課題】粉体を原料撹拌装置の周囲に飛散させることなく、該粉体を自動で回転容器から取り出すことが可能な原料撹拌装置を提供する。
【解決手段】原料撹拌装置は、原料を内部に収容し、回転する回転容器1と、回転容器1の上部開口を塞ぐ蓋部材5と、回転容器1から製品を取り出す吸引装置50と、を備える。吸引装置50は、真空源51と、蓋部材5を貫通して回転容器1内の製品に差し込まれる吸引ノズル53と、吸引ノズル53から真空源51まで延びる吸引ライン58と、を備えている。原料撹拌装置は、回転容器1を回転させながら、吸引装置50の真空源51を動作させて、製品を回転容器1から排出させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を内部に収容し、回転する回転容器と、
前記回転容器の上部開口を塞ぐ蓋部材と、
前記回転容器から製品を取り出す吸引装置と、を備え、
前記吸引装置は、
真空源と、
前記蓋部材を貫通して前記回転容器内の製品に差し込まれる吸引ノズルと、
前記吸引ノズルから前記真空源まで延びる吸引ラインと、を備えており、
前記回転容器を回転させながら、前記吸引装置の真空源を動作させて、前記製品を前記回転容器から排出させる、原料撹拌装置。
【請求項2】
前記吸引装置は、さらに、前記吸引ノズルを前記蓋部材に対して進退させることが可能なノズル移動機構を備えている、請求項1に記載の原料撹拌装置。
【請求項3】
前記吸引装置は、さらに、前記吸引ノズルの先端部から前記製品に向けて圧縮気体を噴射する気体噴射機構を備えており、
前記気体噴射機構は、
前記吸引ノズルの先端部に取り付けられた気体噴射ノズルと、
前記気体噴射ノズルに前記圧縮気体を供給する気体供給ラインと、を備え、
前記気体噴射ノズルは、前記圧縮気体を前記回転容器内の製品に向けて噴射する少なくとも1つの噴射口を有する、請求項2に記載の原料撹拌装置。
【請求項4】
前記吸引装置は、さらに、前記吸引ノズルの側面に設けられたスクレーパ部材を備えている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の原料撹拌装置。
【請求項5】
前記吸引装置は、前記スクレーパ部材を前記回転容器の内周面に付勢する付勢機構を備えている、請求項4に記載の原料撹拌装置。
【請求項6】
前記吸引ラインは、可撓性を有するチューブである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の原料撹拌装置。
【請求項7】
前記吸引装置は、さらに、前記回転容器からの前記製品の排出が完了したことを検知するセンサを備えている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の原料撹拌装置。
【請求項8】
前記吸引装置は、さらに、前記真空源によって前記吸引ノズルから前記吸引ラインに吸引された前記製品を捕集する捕集器を備えており、
前記真空源は、前記捕集器が内蔵されたエゼクタであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の原料撹拌装置。
【請求項9】
前記吸引装置は、
前記蓋部材と前記吸引ノズルとの間の隙間をシールするシール部と、
前記シール部に前記回転容器内の原料が到達することを防止する防塵カバーと、をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の原料撹拌装置。
【請求項10】
前記吸引装置は、前記防塵カバーによって前記回転容器内で区切られ、前記原料の侵入が阻止された清浄空間に気体を供給する気体供給機構をさらに備える、請求項9に記載の原料撹拌装置。
【請求項11】
前記吸引装置は、前記回転容器に対する前記吸引ノズルの角度を変更する傾斜台をさらに備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の原料撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料の造粒、コーティング、混合、混練、撹拌、および乾燥などの各種処理を行う原料撹拌装置に関し、特に、原料を収容し回転される回転容器から製品を自動で取り出す吸引装置を備えた原料撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原料撹拌装置は、原料の造粒、コーティング、混合、混練、撹拌、および乾燥などの各種処理を行う装置であり、医薬品、化学薬品、食品、化粧品、ファインケミカル、鋳物、建築材料、塗料、およびダスト処理などの様々な産業分野で用いられている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。近年では、粉砕技術や合成技術の進歩に伴って、原料の一例である粉体の微細化が進んでおり、粉体の粒子径はナノ単位まで至っている。このような微細な粉体材料でも、原料撹拌装置を用いて製造することができる。
【0003】
原料撹拌装置は、軸線周りに回転駆動される回転容器と、該回転容器の上部開口を開閉する蓋部材と、を備えている。回転容器は、一般に、有底円筒形状を有している。原料撹拌装置で処理される原料は、回転容器の上部開口から該回転容器に投入され、その後、回転容器の上部開口が蓋部材により閉じられる。蓋部材に原料投入口が設けられる場合もある。この場合、蓋部材は回転容器に固定されており、原料は、原料投入口から回転容器に投入される。そして、回転容器を所定の回転速度で回転させることにより、上記各種処理が行われる。
【0004】
なお、本明細書では、原料撹拌装置の回転容器に投入される材料を総称して、「原料」と称する。原料は、粉体、およびスラッジなどの固体材料であってもよいし、水およびオイルなどの液体材料であってもよいし、固体材料と液体材料との混合物(例えば、スラリー)であってもよい。さらに、原料撹拌装置では、複数の材料のそれぞれが所定の時間間隔を開けて回転容器に投入されることがある。例えば、固体材料を回転容器に投入して、該回転容器を回転させてから所定の時間が経過した後に、回転容器に液体材料を投入することがある。この場合、原料は、固体材料と液体材料である。また、本明細書では、各種処理を行った後で、回転容器から取り出される物体を総称して、「製品」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-17923号公報
【特許文献2】特開2016-2536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微細な粉体材料はこれまでにない優れた特性や物性を示すことが知られている一方で、空気中に飛散すると、浮遊した粉体材料が人体に取り込まれ、人体に悪影響を及ぼすことがある。例えば、医薬品分野でも、高い薬理活性を持つ微細な粉体材料の取り扱いが進んでいるが、これら微細な粉体材料は、患者以外の人体には有害な場合もある。
【0007】
従来の原料撹拌装置の回転容器から製品を取り出すときは、作業員が蓋部材を回転容器から離間させて、該回転容器の上部開口から製品を取り出している。あるいは、作業員が回転容器自体を原料撹拌装置から取り外して、該回転容器をひっくり返す場合もある。これらの取り出し方法のいずれも、作業員が微細な粉体形状を有する製品と接触してしまう。
【0008】
回転容器がその下部側面または底面に製品の排出口を有しており、該排出口を自動で開くことで製品をホッパーなどの回収容器に取り出すこともある。この場合は、作業員が微細な粉体形状を有する製品に直接触れずに該製品を回転容器から取り出すことが可能であるが、製品が回収容器と衝突する際に破損するおそれがあり、さらに発塵の問題がある。
【0009】
原料撹拌装置の周囲に飛散した微細な粉体材料は、環境を汚染したり、原料撹拌装置の周囲の機器に混入したりすることがある。そのため、原料撹拌装置から製品を取り出した後で飛散した製品の清掃作業を行う必要があり、作業者の大きな負担となる場合がある。これら問題点に鑑み、作業者への健康被害、環境汚染の防止、および作業者の負担軽減などを目的として、回転容器から製品を排出する際に、製品が原料撹拌装置の周囲に飛散(または、漏洩)することを防止する技術が求められている。
【0010】
そこで、本発明は、製品を原料撹拌装置の周囲に飛散させることなく、該製品を自動で回転容器から取り出すことが可能な原料撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、原料を内部に収容し、回転する回転容器と、前記回転容器の上部開口を塞ぐ蓋部材と、前記回転容器から製品を取り出す吸引装置と、を備え、前記吸引装置は、真空源と、前記蓋部材を貫通して前記回転容器内の製品に差し込まれる吸引ノズルと、前記吸引ノズルから前記真空源まで延びる吸引ラインと、を備えており、前記回転容器を回転させながら、前記吸引装置の真空源を動作させて、前記製品を前記回転容器から排出させる、原料撹拌装置が提供される。
【0012】
一態様では、前記吸引装置は、さらに、前記吸引ノズルを前記蓋部材に対して進退させることが可能なノズル移動機構を備えている。
一態様では、前記吸引装置は、さらに、前記吸引ノズルの先端部から前記製品に向けて圧縮気体を噴射する気体噴射機構を備えており、前記気体噴射機構は、前記吸引ノズルの先端部に取り付けられた気体噴射ノズルと、前記気体噴射ノズルに前記圧縮気体を供給する気体供給ラインと、を備え、前記気体噴射ノズルは、前記圧縮気体を前記回転容器内の製品に向けて噴射する少なくとも1つの噴射口を有する。
一態様では、前記吸引装置は、さらに、前記吸引ノズルの側面に設けられたスクレーパ部材を備えている。
一態様では、前記吸引装置は、前記スクレーパ部材を前記回転容器の内周面に付勢する付勢機構を備えている。
一態様では、前記吸引ラインは、可撓性を有するチューブである。
【0013】
一態様では、前記吸引装置は、さらに、前記回転容器からの前記製品の排出が完了したことを検知するセンサを備えている。
一態様では、前記吸引装置は、さらに、前記真空源によって前記吸引ノズルから前記吸引ラインに吸引された前記製品を捕集する捕集器を備えており、前記真空源は、前記捕集器が内蔵されたエゼクタである。
【0014】
一態様では、前記吸引装置は、前記蓋部材と前記吸引ノズルとの間の隙間をシールするシール部と、前記シール部に前記回転容器内の原料が到達することを防止する防塵カバーと、をさらに備える。
一態様では、前記吸引装置は、前記防塵カバーによって前記回転容器内で区切られ、前記原料の侵入が阻止された清浄空間に気体を供給する気体供給機構をさらに備える。
一態様では、前記吸引装置は、前記回転容器に対する前記吸引ノズルの角度を変更する傾斜台をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転容器から蓋部材を離間させずに、吸引装置を動作させることで製品を原料撹拌装置の周囲に飛散させることなく回転容器から自動で取り出すことができる。さらに、吸引装置の動作中に、回転容器を回転させることで、効率よく製品を回転容器から取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る原料撹拌装置の正面図である。
【
図3】
図3は、
図1および
図2に示す吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す吸引ノズルを上方に移動させた状態を示す模式図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る真空源を示す模式図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図9】
図9は、吸引ノズルが回動する様子を示す模式図である。
【
図10】
図10(a)は、吸引ノズルの吸引口の一例を示す模式図であり、
図10(b)は、吸引ノズルの吸引口の他の例を示す模式図である。
【
図11】
図11(a)は、吸引ノズルの吸引口のさらに他の例を示す模式図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す吸引口が開いた状態を示す模式図である。
【
図12】
図12は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図14】
図14は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図15】
図15は、アタッチメントに取り付けられる他のスクレーパの一例を示す模式図である。
【
図16】
図16(a)は、
図14に示すスクレーパの変形例を模式的に示す斜視図であり、
図16(b)は、
図16(a)に示すスクレーパを模式的に示す断面図である。
【
図18】
図18は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図19】
図19は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図20】
図20は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図21】
図21は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図22】
図22は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る原料撹拌装置の正面図である。
図2は、
図1に示す原料撹拌装置の側面図である。本実施形態に係る原料撹拌装置で処理される原料の種類、性状、および大きさは、特に限定されるものではないが、原料撹拌装置に投入される原料は、例えば、水またはアルコールなどの液体成分が10~30重量%含有された粉状もしくは粒状の原料である。粉状もしくは粒状の原料は、例えば、約200μm~2mmの範囲にある大きさ(例えば、平均直径)を有する。
【0018】
図1および
図2に示すように、原料撹拌装置は、原料を収容して回転する回転容器(混合パン)1と、回転容器1を回転させるための第1駆動装置(モータ)2と、回転容器1内の原料を撹拌するロータユニット3と、ロータユニット3を回転させるための第2駆動装置(モータ)4とを備えている。ロータユニット3は、プーリおよびベルトなどから構成される駆動力伝達機構10により第2駆動装置4に接続されている。第2駆動装置4の駆動力は、駆動力伝達機構10を介してロータユニット3に伝達される。
【0019】
本実施形態では、駆動装置2,4は制御装置8に接続されており、制御装置8はこれら駆動装置2,4の回転速度および回転方向を自在に制御するように構成されている。このような構成により、回転容器1およびロータユニット3をそれぞれ所望の回転速度および回転方向で独立して回転させることができる。なお、
図1および
図2では、図が煩雑にならないように、制御装置8から各構成要素に延びる信号線の図示を省略している。
【0020】
回転容器1は、有底円筒形状を有しており、カバー9の内部に回転可能に配置されている。本実施形態では、カバー9の上部には、蓋部材5が設けられており、該蓋部材5によって、回転容器1の上端に形成された開口が塞がれる。
図1に示すように、蓋部材5は、原料を回転容器1に供給するための供給口5aを有している。原料は、供給口5aから直接回転容器1内に供給されてもよいし、供給口5aにシュート、ノズル、またはホッパーなどの原料供給設備(図示せず)を連結し、該原料供給設備および供給口5aを介して、回転容器1に供給されてもよい。製品を製造するときは、原料が投入された回転容器1とロータユニット3を回転させる。
【0021】
なお、
図1および
図2に示した実施形態では、蓋部材5が図示しない駆動機構(例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ、または電動シリンダ)により回転容器1の回転軸と平行な方向に上昇することで、カバー9および回転容器1の上部開口が開かれるようになっている。図示はしないが、駆動機構は、蓋部材5を回転容器1の回転軸に対して斜めに上昇させるように構成されてもよい。この場合、駆動機構の昇降軸と回転容器1の回転軸との間の角度は、30°以内であることが好ましい。さらに、図示はしないが、蓋部材5が旋回軸を支点として回動することにより、カバー9および回転容器1の上部開口が開閉されてもよい。蓋部材5を上昇させて、回転容器1の上部開口が開かれたときに、原料を上部開口から回転容器1に投入してもよい。この場合、上記供給口5aを省略してもよい。
【0022】
原料撹拌装置は、所定量の原料が投入され、蓋部材5で上部開口が塞がれた回転容器1を回転させ、同時に、ロータユニット3を回転容器1内で回転させることにより、原料の造粒、コーティング、混合、混練、撹拌、乾燥などの各種処理を実行する。原料の処理を実行している間、回転容器1およびロータユニット3が回転しても、蓋部材5は回転しない。
【0023】
図1および
図2に示すように、原料撹拌装置は、さらに、製品を回転容器1から取り出すための吸引装置50を備えている。この吸引装置50は、真空源51と、蓋部材5を貫通して回転容器1内の製品に差し込まれる吸引ノズル53と、吸引ノズル53から真空源51まで延びる吸引ライン58と、を備えている。吸引ノズル53は、蓋部材5に形成された貫通孔を通って回転容器1内まで延びている。本実施形態では、吸引ノズル53の延びる方向は、回転容器1の中心軸線と平行である。
【0024】
吸引装置50も制御装置8に接続されており、該制御装置8は、吸引装置50の動作を制御するように構成されている。制御装置8が吸引装置50の真空源51を起動すると、回転容器1内の製品が空気とともに吸引ノズル53の先端に形成された開口(吸引口)から吸引ライン58に吸い込まれる。以下の説明では、吸引ノズル53から吸い込まれて、吸引ライン58を流れる、製品を含む空気を「混合空気」と称することがある。
【0025】
図1および
図2に示す吸引装置50は、さらに、吸引ライン58に配置され、製品を捕集する捕集器の一例であるフィルター55を備えている。フィルター55は、吸引ライン58を流れる混合空気から製品を分離して捕集する。混合空気から製品を分離可能である限り、捕集器はフィルター55に限定されない。例えば、捕集器は、サイクロンなどの固体分離装置であってもよい。
【0026】
フィルター55には、逆洗ライン60と回収ライン61とが連結されている。逆洗ライン60は、図示しない気体供給源に接続されている。さらに、逆洗ライン60には、開閉バルブ62が配置されている。回収ライン61の末端には回収容器65が連結される。制御装置8は、真空源51の動作を停止させた後で、開閉バルブ62を開くことで、フィルター55に加圧気体を供給し、捕集された製品を回収ライン61を介して回収容器65に搬送する。
【0027】
吸引ライン58は、好ましくは、可撓性を有するチューブである。この場合、フィルター55および回収容器65を所望の位置に容易に移動させることができる。
【0028】
図3は、
図1および
図2に示す吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
図3に示すように、吸引ノズル53は、蓋部材5の上面に取り付けられたノズル台30と、蓋部材5の下面に取り付けられたシール台40とに支持されている。ノズル台30は、その内部に形成された第1部屋30a内に、第1リップシール32および第1摺動シール33と、を有する第1シール部31を備えている。吸引ノズル53は、その外周を覆うノズルカバー54を備えている。第1リップシール32の外周面および第1摺動シール33の外周面は、それぞれ、ノズル台30の内面に固定されている。第1リップシール32の内周面および第1摺動シール33の内周面(すなわち、第1シール部31)は、ノズルカバー54の外周面に当接しており、ノズルカバー54とノズル台30の内面との間の隙間をシールしつつ、ノズルカバー54を支持している。第1シール部31は、蓋部材5の外部から異物が回転容器1に侵入することを防止し、さらに、第1シール部31によって、第1部屋30aから空気が漏洩することが防止される。なお、ノズル台30は、その上部に形成された分割ラインDLで二分割可能に構成されている。分割ラインDLで分割されるノズル台30の上部と下部は、図示しないボルトなどの締結具で互いに固定される。このような構成により、第1リップシール32および第1摺動シール33の取付およびメンテナンスを容易に行うことができる。
【0029】
シール台40は、その内部に形成された第2部屋40aに配置された第2摺動シール42と、シール台40の底壁に形成された貫通孔に配置された第2リップシール43と、を有する第2シール部41を備えている。第2摺動シール42の下面は、シール台40の底壁の上面に固定されており、第2摺動シール42の内周面は、吸引ノズル53の外周面に当接している。第2リップシール43の外周面は、シール台40の底壁に形成された貫通孔に固定されており、第2リップシール43の内周面は、吸引ノズル53の外周面に当接している。第2シール部41は、シール台40と吸引ノズル53との間の隙間をシールしつつ、吸引ノズル53を支持している。第2シール部41は、回転容器1から原料または製品が外部に漏洩することを防止する。
【0030】
図3に示すように、吸引ノズル53の先端は、回転容器1の底面に近接している。一実施形態では、吸引ノズル53の先端を回転容器1の底面に接触させてもよい。この場合、吸引ノズル53の吸引口は、その先端部の側面に形成される。
【0031】
原料撹拌装置での製品の製造が終了しても、制御装置8は、回転容器1およびロータユニット3の回転を維持する。一実施形態では、原料撹拌装置での製品の製造が終了した後で、制御装置8は、回転容器1およびロータユニット3の回転を停止させてもよい。次いで、制御装置8は、真空源51を起動させる。回転容器1およびロータユニット3の回転が停止している場合は、制御装置8は、真空源51を起動させるとともに、再度、回転容器1を回転させる。上述したように、回転容器1を回転させても、蓋部材5は回転しないので、吸引ノズル53の位置も変更されない。すなわち、回転容器1は回転される一方で、吸引ノズル53は静止している。この状態で、吸引ノズル53から製品が吸引ライン58に配置されたフィルター55に向けて吸い出される。回転容器1が回転しているので、該回転容器1内の製品を効率よく吸引ノズル53から吸い出すことができる。なお、一実施形態では、制御装置8は、回転容器1から製品を吸い出す際に、回転容器1の回転を停止させてもよい。すなわち、制御装置8は、回転容器1の回転を停止させた状態で、真空源51を起動させてもよい。
【0032】
製品の製造が完了する直前まで回転容器1およびロータユニット3が回転している場合は、制御装置8は、ロータユニット3の回転のみを停止してもよい。この場合、制御装置8は、ロータユニット3の回転を停止させた直後に、真空源51を起動する。この動作によって、原料撹拌装置のダウンタイムが最小限となる。なお、製品の製造が完了する直前までロータユニット3のみが回転している場合は、制御装置8は、ロータユニット3の回転を停止させた直後に、回転容器1を回転させるとともに、真空源51を起動してもよい。この場合も、原料撹拌装置のダウンタイムが最小限となる。
【0033】
フィルター55は、製品を含む混合空気から製品のみを抽出し、その内部に貯留する。制御装置8は、所定時間だけ真空源51を駆動した後に、該真空源51を停止させる。この所定時間は、回転容器1内の製品の取り出し時間であり、予め実験などにより決定されている。制御装置8は、所定時間を予め記憶している。
【0034】
次いで、制御装置8は、逆洗ライン60に配置された開閉バルブ62(
図1および
図2参照)を開き、フィルター55に捕集された製品を回収ライン61を介して回収容器65に搬送する。
【0035】
このように、本実施形態によれば、回転容器1から蓋部材5を離間させずに、吸引装置50を動作させるだけで、製品を原料撹拌装置の周囲に飛散させることなく回転容器1から自動で取り出すことができる。すなわち、作業員による作業を必要とせずに、かつ原料撹拌装置の周囲に製品を飛散させずに、該製品を回転容器1から取り出すことができる。さらに、回転容器1を回転させながら製品を回転容器1から取り出しているので、製品を回転容器1から効率よく取り出すことができる。
【0036】
図3に示すように、吸引装置50は、回転容器1からの製品の排出が完了したことを検知するセンサ45を備えていてもよい。
図3に示すセンサ45は、ロードセルであり、製品が収容された回転容器1の重量を監視している。真空源51を駆動すると、製品が収容された回転容器1の重量が徐々に減少する。制御装置8は、回転容器1の重量のしきい値を予め記憶しており、回転容器1の重量がしきい値に到達すると、真空源51の動作を停止させるように構成される。
【0037】
一実施形態では、センサ45は、吸引ライン58に配置された光電センサであってもよい(
図1および
図2の点線参照)。この場合、センサ45は、吸引ノズル53とフィルター55との間に配置される。光電センサであるセンサ45は、吸引ライン58を流れる混合流体に光を照射する投光部と、吸引ライン58を通った光を受光する受光部とを備えている。回転容器1から取り出される製品が少なくなると、センサ45が検知する光量が増加する。制御装置8は、センサ45が検知する光量のしきい値を予め記憶しており、光量がしきい値に到達すると、真空源51の動作を停止するように構成されている。
【0038】
あるいは、センサ45は、回収容器65の重量を監視するロードセルであってもよい(
図1および
図2の一点鎖線参照)。この場合、制御装置8は、真空源51の駆動および停止と、逆洗ライン60に配置された開閉バルブ62の開閉を繰り返す。より具体的には、制御装置8は、真空源51を所定時間動作させた後で停止させ、次いで、開閉バルブ62を所定時間開いた後で閉じる回収動作を繰り返す。回収動作を行うたびに、回収容器65の重量が増えていく。制御装置8は、回収容器65の重量のしきい値を予め記憶しており、回転容器1の重量がしきい値に到達すると、回収動作を停止させるように構成される。あるいは、制御装置8は、回収動作を繰り返しているのにも拘わらず、回収容器65の重量の変化がほとんどなくなった場合に、回収動作を停止させるように構成されてもよい。
【0039】
図3に示すように、吸引装置50は、吸引ノズル53を回転容器1の蓋部材5に対して進退させることが可能なノズル移動機構47を有していてもよい。ノズル移動機構47は、例えば、エアシリンダまたは位置決め用モータとボールねじとの組み合わせを含むリニアアクチュエータである。ノズル移動機構47も制御装置8に接続されており、制御装置8はノズル移動機構47の動作を制御するように構成されている。本実施形態では、ノズル移動機構47は、吸引ノズル53を蓋部材5に対して回転容器1の中心軸線と平行な方向に移動させる。
【0040】
吸引装置50がノズル移動機構47を有している場合、制御装置8は、回転容器1内で製品の製造中、吸引ノズル53の先端を回転容器1の上部に移動させる。
図4は、
図3に示す吸引ノズル53を上方に移動させた状態を示す模式図である。この動作によって、吸引ノズル53が回転容器1内で移動する原料に衝突することが防止され、その結果、円滑な原料の処理が達成される。
【0041】
図3および
図4に示すように、吸引ノズル53は、好ましくは、ノズルカバー54の外面に形成されたストッパ57を有する。ストッパ57は、吸引ノズル53の先端が蓋部材5よりも上方に移動することを阻止するための部材である。
図4に示すように、ストッパ57は、その上面が第1摺動シール33の下面に接触して、吸引ノズル53が過度に上方に移動することを阻止している。
【0042】
本実施形態では、ストッパ57は、ノズルカバー54と一体に形成されている。一実施形態では、ストッパ57は、ノズルカバー54にはめ込まれるリング状部材であってもよい。
【0043】
回転容器1から製品を取り出すときは、制御装置8は、真空源51を駆動するとともに、ノズル移動機構47を用いて吸引ノズル53を所定の時間間隔で徐々に回転容器1の底面に向けて移動させる。この動作により、回転容器1内に収容される製品の上部付近から徐々に製品を取り出すことができる。その結果、回転容器1から製品を迅速かつ確実に取り出すことができるので、製品の回収効率が向上する。一実施形態では、制御装置8は、吸引ノズル53の回転容器1の上部から下部までの複数回の往復移動動作を、ノズル移動機構47を用いて行ってもよい。この複数回の往復移動動作を行うことでも、迅速かつ完全に回転容器1内の製品を取り出すことができる。
【0044】
図示はしないが、吸引装置50は、回転容器1内の製品の上面を検知可能なセンサを有していてもよい。このセンサは、制御装置8に接続され、測定値を制御装置8に送信する。センサは、例えば、蓋部材5の下面に取り付けられる。このようなセンサの例は、光学式測距離センサ、赤外センサなどがあげられる。吸引装置が回転容器1内の製品の上面を検知可能なセンサを有する場合は、制御装置8は、吸引ノズル53の先端が製品の上面近傍に常に位置するように、ノズル移動機構47の動作を制御する。一実施形態では、制御装置8は、吸引ノズル53の先端が製品の上面から所定の距離だけ上方に、または下方に位置するように、ノズル移動機構47の動作を制御してもよい。このような構成によっても、迅速かつ完全に回転容器1内の製品を取り出すことができる。
【0045】
図5は、一実施形態に係る真空源を示す模式図である。
図5に示す真空源51は、駆動流体によって駆動されるエゼクタである。以下では、真空源51を「エゼクタ51」と称することがある。
【0046】
図5に示すエゼクタ51には、駆動流体ライン25が接続されており、エゼクタ51は、駆動流体ライン25から供給された駆動気体によるエゼクタ効果によって吸引ライン58および吸引ノズル53を介して回転容器1内に真空を発生させる。駆動流体ライン25には、駆動流体供給バルブ26が配置されており、制御装置8は、駆動流体供給バルブ26の開閉動作を制御するように構成されている。
【0047】
エゼクタ51は、上記したフィルター(捕集器)55が内蔵されており、エゼクタ51には、上記した逆洗ライン60が連結されている。
図5に示すエゼクタ51は、
図1および
図2に示す吸引ライン58の末端に接続される。
【0048】
真空源であるエゼクタ51を駆動する際には、制御装置8は、駆動流体ライン25に配置された駆動流体供給バルブ26を開き、エゼクタ51に駆動気体を供給する。この動作によって、吸引ライン58および吸引ノズル53を介して回転容器1内に真空が形成され、製品が回転容器1から取り出される。吸引ライン58を流れる混合流体に含まれる製品は、エゼクタ51に内蔵されるフィルター55に捕集され、混合流体に含まれる空気は、駆動気体とともにエゼクタ51から排出される。
【0049】
図5に示すエゼクタ51には、回収バルブ67を介して上記した回収ライン61が連結されている。回収バルブ67は、通常は、閉じられている。フィルター55に捕集された製品を回収するときは、制御装置8は、開閉バルブ62および回収バルブ67を開き、逆洗ライン60を介してエゼクタ51のフィルター55に供給された加圧気体によって、回収ライン61を介して回収容器65に製品を搬送する。
【0050】
回転容器1からの製品の回収効率を向上させるために、吸引ノズル53は、該吸引ノズル53の側面に設けられ、回転する回転容器の内面および底面に接触するスクレーパ部材を有していてもよい。
【0051】
図6は、他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0052】
図6に示す吸引装置の吸引ノズル53は、その側面に設けられたスクレーパ部材70を有し、回転容器1の内周面に近接して配置されている。スクレーパ部材70は、回転する回転容器1の内面および底面に接触し、これら内面および底面に付着した製品を掻き取ることができる。その結果、製品の回収効率を向上させることができる。
【0053】
本実施形態では、ノズルカバー54は円筒形状を有しており、ノズルカバー54の外周面にはレバー75が固定されている。ノズルカバー54および吸引ノズル53は、第1シール部31および第2シール部41を介してノズル台30およびシール台40に回動可能に支持されている。吸引ノズル53がノズル台30に対して回動しても、第1摺動シール33によって、外部から異物が回転容器1内に侵入することが防止される。同様に、吸引ノズル53がシール台40に対して回動しても、第2摺動シール42によって、回転容器1内の製品が該回転容器1の外部に漏洩することが防止される。
【0054】
第1摺動シール33および第2摺動シール42は、摩擦係数が小さく、かつある程度の硬度を有する材料から構成されるのが好ましい。このような材料は、例えば、すべり軸受の摺動部材(例えば、回転軸に固定されるブッシュ)を形成する樹脂である。このような樹脂の例としては、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
【0055】
吸引ノズル53は、混合流体の流路(図示せず)が形成されるノズル本体69と、ノズル本体69の側面に設けられ、回転容器1の内面に接触するスクレーパ部材70と、を有している。
図6に示す実施形態では、ノズル本体69とスクレーパ部材70は、一体に成形されている。このような構成により、ノズル本体69とスクレーパ70との間に製品が詰まることが防止される。
【0056】
図7は、
図6のA-A線断面図である。
図7に示すように、ノズルカバー54に固定されるレバー75は、ノズル台30の側壁に形成された窓30bを通って、該ノズル台30の外部まで延びている。窓30bは、ノズル台30の側壁を貫通しており、かつノズル台の円周方向に沿って延びている。後述するように、レバー75は、窓30bの長手方向(すなわち、ノズル台30の円周方向)に沿って、かつ窓30b内で回動可能である。さらに、レバー75は、長孔75aを有している。長孔75aは、レバー75の上面から下面まで延びる貫通孔であり、レバー75の長手方向(ノズルカバ-54の半径方向に対応する)に沿って延びている。
【0057】
図8は、
図6に示すノズル台の概略上面図である。
図8に示すように、吸引装置50は、レバー75に連結される付勢機構80をさらに備えている。付勢機構80は、レバー75、および該レバー75が固定されるノズルカバー54を介して、吸引ノズル53のスクレーパ部材70(
図6参照)を回転容器1の内周面に所定の付勢力で付勢する機構である。
【0058】
図8に示す付勢機構80は、レバー75に形成された長孔75aに挿入されるピン81(
図7の2点鎖線参照)と、ピン81が連結される棒部材83と、棒部材83を支持する2枚の支持板(支持部材)85,85と、棒部材83に所定の付勢力を付与する付勢部材87と、を備えている。
図8に示す実施形態では、ピン81は、棒部材83に設けられた支持フレーム89に固定されている。
【0059】
図示した例では、付勢部材87は、コイルばねであり、以下では、付勢部材87を「コイルばね87」と称することがある。しかしながら、本実施形態において、付勢部材87は、支持板(支持部材)85,85に対する棒部材83の進退を許容しつつ、棒部材83に所定の付勢力を付与できる限り、コイルばねに限定されない。例えば、付勢部材87は、コイルばねとは異なる任意の弾性部材であってもよい。このような弾性部材の例は、板ばね、およびゴムなどの樹脂などが挙げられる。さらに、付勢部材87は、エアシリンダであってもよいし、ダンパーであってもよい。付勢部材87がエアシリンダである場合は、棒部材83は、エアシリンダに供給される流体の圧力に応じた付勢力で棒部材83を付勢する。付勢部材87がダンパーである場合は、棒部材83は、ダンパーの復元力に応じた付勢力で棒部材83を付勢する。
【0060】
コイルばね87の一端は、一方の支持板85に接触しており、コイルばね87の他端は、棒部材83に設けられた板83aに接触している。棒部材83における板83aの位置は、付勢力調整ナット82によって固定されている。付勢力調整ナット82は、板83aと支持フレーム89との間で棒部材83に螺合し、棒部材83の長手方向における板83aの位置決めを行う部材である。コイルばね87は、縮められた状態で板83aと支持板85との間に配置されている。したがって、コイルばね87は、その復元力で板83aを付勢する。この復元力が、コイルばね87が棒部材83に与える付勢力に相当する。
【0061】
棒部材83に螺合する付勢力調整ナット82を、コイルばね87が接触する支持板85に向かって移動させると、コイルばね87の長さが縮み(すなわち、板83aと支持板85との間の距離が減少し)、コイルばね87が棒部材83に与える付勢力が増加する。付勢力調整ナット82を、コイルばね87が接触する支持板85から遠ざけると、コイルばね87の長さが伸びて(すなわち、板83aと支持板85との間の距離が増加し)、コイルばね87が棒部材83に与える付勢力が減少する。すなわち、棒部材83に対する付勢力調整ナット82の位置を変更することによって、コイルばね87の付勢力を調整することができる。
【0062】
本実施形態では、棒部材83は、2枚の支持板85,85を貫通して延びている。コイルばね87が接触する一方の支持板85を貫通して延びる棒部材83の先端には、ノズル位置調整ナット84が螺合されている。ノズル位置調整ナット84は、コイルばね87が接触する支持板85の面とは逆側の面に接触する。
【0063】
棒部材83は、長孔75aに挿入されたピン81を介してレバー75に連結されているため、レバー75は、棒部材83に与えられた付勢力で押圧される。レバー75は、ノズルカバー54に固定されている(
図7参照)ため、ノズルカバー54は、レバー75に付与されたコイルばね87の付勢力でノズル台30に対して回動しようとする。ノズルカバー54は、回転容器1の内周面に近接して配置された吸引ノズル53に連結されているので、吸引ノズル53のスクレーパ部材70(
図6参照)を、コイルばね87の付勢力に応じて回転容器1の内周面に押し付けることができる。
【0064】
このような構成によれば、吸引ノズル53は、回転する回転容器1の内周面のうねりに追従して回動することができる。より具体的には、回転する回転容器1の内周面が吸引ノズル53のスクレーパ部材70に近づく方向にうねると、吸引ノズル53が付勢機構80によって付与された付勢力に抗して吸引ノズル53の回転中心CPまわりに回動する(
図9参照)。このとき、コイルばね87が縮むとともに、レバー75が吸引ノズル53の回転中心CPまわりに回動する。ピン81は、レバー75の回動に応じて長孔75a内を移動する。
【0065】
その後、回転する回転容器1の内周面が吸引ノズル53のスクレーパ部材70から離れる方向にうねると、吸引ノズル53は、付勢機構80によって付与された付勢力によって回転容器1の内周面に密着したまま吸引ノズル53の回転中心CPの回転中心CPまわりに回動する。このとき、コイルばね87が伸びるとともに、レバー75が吸引ノズル53の回転中心CPまわりに回動する。ピン81は、レバー75の回動に応じて長孔75a内を移動する。
【0066】
本実施形態では、吸引ノズル53の吸引口は、該吸引ノズル53の側面に形成される。
図10(a)は、吸引ノズルの吸引口の一例を示す模式図であり、
図10(b)は、吸引ノズルの吸引口の他の例を示す模式図である。
【0067】
図10(a)に示す吸引ノズル53の吸引口53aは、吸引ノズル53の先端から該吸引ノズル53の長手方向に沿って延びる長孔形状を有している。
図10(b)に示す吸引ノズル53の吸引口53aは、吸引ノズル53の先端から該吸引ノズル53の長手方向に沿って延びる略三角形状を有している。このように、吸引ノズル53の吸引口53aの形状は、製品を吸い込むことができる限り任意である。
【0068】
図11(a)は、吸引ノズルの吸引口のさらに他の例を示す模式図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す吸引口が開いた状態を示す模式図である。
図11(a)に示す吸引ノズル53は、その先端が弾性部材53bによって構成されている。吸引口53aは、弾性部材53bに形成された切り込みであり、弾性部材53bの先端は、スクレーパ部材70の下面よりも下方に位置する。吸引ノズル53のスクレーパ部材70の下面が回転容器1の底面に接触するまで、吸引ノズル53を回転容器1内に挿入すると、吸引ノズル53の弾性部材が圧縮されて変形することで、切り込みが略菱形に変形する(
図11(b)参照)。これにより、吸引ノズル53の吸引口が形成される。
【0069】
図12は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
図13は、
図12に示す吸引ノズルを上方に移動させた状態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図3および
図4に示した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0070】
図12に示す例では、ノズルカバー54は、シール台40を貫通して回転容器1の内部まで延びている。ノズルカバー54の外面に形成されたストッパ57の外周面には、摺動リング76が取り付けられている。摺動リング76の外周面は、ノズル台30の内周面に摺動自在に接触している。ノズル台30の第1部屋30aは、ストッパ57および摺動リング76によって上側部屋30a1と、下側部屋30a2に分割される。なお、本実施形態では、
図3および
図4に示す第1シール部31の第1摺動シール33が省略されている。
【0071】
ノズル台30の側壁には、上側部屋30a1を外部と連通する貫通孔72が形成されており、貫通孔72には、気体供給ライン74が連結される。さらに、ノズル台30の側壁には、下側部屋30a2を外部と連通させる貫通孔73が形成されている。下側部屋30a2には、付勢部材71であるコイルバネが配置されており、付勢部材71は、ストッパ57と蓋部材5の上面との間に挟まれている。付勢部材71は、ノズルカバー54および吸引ノズル53を上方に押し上げる付勢力をストッパ57に付与する部材である。図示した例では、付勢部材71はコイルバネであるが、付勢部材71は、ノズルカバー54および吸引ノズル53を上方に押し上げる付勢力をストッパ57に付与することができる限り任意の部材を使用することができる。
【0072】
図13に示すように、回転容器1を回転させて製品を製造している間は、ストッパ57に接触する付勢部材75の付勢力によって、ノズルカバー54および吸引ノズル53が蓋部材5に対して上方に移動させられる。製品を回収するときは、制御装置8は、気体供給ライン74および貫通孔72を介して圧縮気体を上側部屋30a1に供給する。上側部屋30a1に圧縮気体が供給されると、付勢部材71の付勢力に抗して、ノズルカバー54および吸引ノズル53が回転容器1の製品に向けて移動させられる。
【0073】
製品の回収が完了したら、制御装置8は、圧縮気体の供給を停止する。圧縮気体の供給が停止されると、第1部屋30a内の圧縮気体が下側部屋30a2を外部に連通させる貫通孔73を通って外部に排出される。この動作によって、付勢部材71は、ストッパ57を介してノズルカバー54および吸引ノズル53を上方に押し上げる。本実施形態では、ノズル移動機構47は、上側部屋30a1に圧縮気体を供給する気体供給ライン74と、下側部屋30a2に配置された付勢部材75と、下側部屋30a2に形成された貫通孔73によって構成される。
【0074】
一実施形態では、制御装置8は、気体供給ライン74を介して上側部屋30a1に供給される圧縮気体の圧力を制御することにより、吸引ノズル53を所定の時間間隔で徐々に回転容器1の底面に向けて移動させてもよい。さらに、制御装置8は、気体供給ライン74を介して上側部屋30a1に供給される圧縮気体の圧力を制御することにより、吸引ノズル53の回転容器1の上部から下部までの複数回の往復移動動作を行ってもよい。あるいは、制御装置8は、回転容器1内の製品の上面を検知可能なセンサの測定値に基づいて上側部屋30a1に供給される圧縮気体の圧力を制御することにより、吸引ノズル53の先端を製品の上面近傍に位置させてもよいし、製品の上面から所定の距離だけ上方にまたは下方に位置させてもよい。
【0075】
図14は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図3および
図4に示した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
図14に示す吸引装置50の例は、
図3および
図4に示す吸引装置50の変形例に相当する。
【0076】
図14に示す吸引装置50は、第2シール部41と吸引ノズル53との間の隙間に、回転容器1内の原料(または、製品)が到達することを防止する防塵カバー90を備えている。防塵カバー90によって、回転容器1内の原料が第2シール部41を突破して回転容器1の外部に飛散することが効果的に防止される。
【0077】
本実施形態では、防塵カバー90は、シール台40の外周面に固定された上端と、吸引ノズル53に取り付けられたアタッチメント92の外面に固定された下端と、を有し、逆円錐形状を有する。防塵カバー90によって、回転容器1の内部は、原料(または、製品)が存在する撹拌空間1aと、原料(または、製品)の侵入が阻止された清浄空間1bとに分割される。本実施形態では、清浄空間1bは、シール台40、防塵カバー90、および吸引ノズル53によって区画された空間である。
【0078】
アタッチメント92は、後述する交換式スクレーパを吸引ノズル53に取り付ける際に利用される部品であり、吸引ノズル53の先端部近傍に固定されている。なお、防塵カバー90の取付位置および構成は、第2シール部41と吸引ノズル53との間に原料(または、製品)が到達することを防止できる限り、任意である。例えば、防塵カバー90の上端は、シール台40の下面に固定されていてもよいし、防塵カバー90の下端は、吸引ノズル53の外周面を取り囲むように、該吸引ノズル53に固定されていてもよい。
【0079】
上述したように、吸引装置50が吸引ノズル53を回転容器1の蓋部材5に対して進退させることが可能なノズル移動機構47を有している場合、防塵カバー90は、吸引ノズル53の移動によって変形可能な可撓性および/または伸縮性を有するのが好ましい。例えば、防塵カバー90は、原料(または、製品)の大きさよりも細かい目を有する布から形成される。防塵カバー90によって、吸引ノズル53の外面に原料(または、製品)が付着することが防止される。したがって、吸引ノズル53の移動にともなって吸引ノズル53に付着した原料(または、製品)が第2シール部41に到達することを完全に防止できる。その結果、吸引ノズル53の移動に起因して、原料が第2シール部41のシール性能、特に、第2リップシール43のシール性能を低下させることが防止される。
【0080】
回転容器1内で原料を撹拌して、製品を製造している間に、防塵カバー90の外面に、原料(または、製品)が付着する。防塵カバー90の外面に原料が付着すると、製品の回収率が低下してしまう。そこで、
図14に示すように、吸引装置50は、上記清浄空間1bに気体(例えば、圧縮気体、圧縮窒素)を導入する気体供給機構100を有しているのが好ましい。気体供給機構100は、回転容器1の外部から清浄空間1bの内部まで延びる少なくとも1つの気体供給ノズル101と、図示しない気体供給源から気体供給ノズル101まで延びる気体供給ライン102と、気体供給ライン102に配置された開閉弁103と、を備えている。
【0081】
本実施形態では、気体供給ノズル101は、蓋部材5およびシール台40を貫通しており、シール台40の下面で開口している。開閉弁103は、制御装置8に接続されており、制御装置8は、開閉弁103の開閉動作を制御可能に構成されている。制御装置8が開閉弁103を開くと、気体が清浄空間1bに供給される。制御装置8が開閉弁103を閉じると、清浄空間1bへの気体の供給が停止される。
【0082】
本実施形態では、防塵カバー90は、気体供給機構100から清浄空間1bに供給される気体の通過は許容するが、原料(または、製品)の通過を阻止する部材から構成される。このような防塵カバー90の材料の例としては、原料(または、製品)の大きさよりも小さい目を有する布が挙げられる。
【0083】
制御装置8が開閉弁103を操作して、気体を清浄空間1bに供給すると、気体は清浄空間1bから防塵カバー90を通過して上記撹拌空間1aに流れ込む。この際に、防塵カバー90に付着した原料(または、製品)が防塵カバー90から撹拌空間1aに脱落する。その結果、製品の回収率を向上させることができる。
【0084】
制御装置8は、開閉弁103を所定時間の間開けたままにしておき、連続して気体を清浄空間1bに供給してもよいし、開閉弁103の開閉動作を繰り返して、間欠的に気体を清浄空間1bに供給してもよい。
【0085】
図14に示す防塵カバー90を、
図6に示す吸引装置50に設けてもよいし、
図12および
図13に示す吸引装置50に設けてもよい。さらに、
図14に示す気体供給機構100も、
図6に示す吸引装置50に設けてもよいし、
図12および
図13に示す吸引装置50に設けてもよい。
【0086】
図14に示す例では、吸引ノズル53の先端には、アタッチメント92を介してスクレーパ94が取り付けられている。スクレーパ94は、アタッチメント92にボルトなどの固定具(図示しない)を介して固定される。本実施形態では、スクレーパ94は、アタッチメント92の下端に固定され、逆円錐形状を有しているが、スクレーパ94の取付位置および形状はこの例に限定されない。例えば、スクレーパ94をアタッチメント92の外面に固定してもよい。スクレーパ94の形状は、回転容器1から吸引される製品の性状(例えば、大きさ、比重、形状など)に応じて選択される。
【0087】
図15は、アタッチメントに取り付けられる他のスクレーパの一例を示す模式図である。
図15に示すスクレーパ94’は、円筒形状のスクレーパ本体95から外方に突出する2本の案内アーム96,96を有している。
図15に示すスクレーパ94’は、
図14に示すスクレーパ94を用いて吸引される製品の比重よりも小さな比重を有する製品を吸引するのに適している。吸引装置50を動作させると、回転容器1内の製品は、2本の案内アーム96,96に案内されてスクレーパ本体95に吸引される。したがって、製品を効率的に回転容器1から吸引することができる。
【0088】
本実施形態では、アタッチメント92の固定具を取り外すだけで、スクレーパ94をスクレーパ94’に容易に交換することができる。すなわち、吸引装置50のスクレーパ94を、簡単な操作で製品の性状に適したスクレーパ94’に交換することができる。さらに、スクレーパ94(94’)をアタッチメント92から容易に取り外すことができるので、スクレーパ94(94’)のメンテナンスが容易になる。
【0089】
図16(a)は、
図14に示すスクレーパの変形例を模式的に示す斜視図であり、
図16(b)は、
図16(a)に示すスクレーパを模式的に示す断面図である。
図16(a)および
図16(b)に示すように、スクレーパ94とアタッチメント92との間に配置される篩い98を設けてもよい。図示した例では、篩い98は、平板形状を有しており、ボルトなどの固定具を用いて、スクレーパ94の上端に固定されている。篩い98によって、所望の大きさ以下の製品を回転容器1から吸引することができる。
【0090】
篩い98を設ける場合は、スクレーパ94は、篩い98を介してアタッチメント92に固定される。図示はしないが、篩い98を
図15に示すスクレーパ94’に固定してもよい。
【0091】
図17(a)は、
図16(a)および
図16(b)に示す篩いの変形例を示す模式図であり、
図17(b)は、
図16(a)および
図16(b)に示す篩いの他の変形例を示す模式図である。
図17(a)に示すように、篩い98は、上に凸の円錐形状を有していてもよいし、
図17(b)に示すように、篩い98は、下に凸の円錐形状を有していてもよい。
図17(a)および
図17(b)に示す篩い98は、
図16(a)および
図16(b)に示す篩い98よりも大きな製品のろ過面積を有する。そのため、製品の目詰まりを効果的に防止することができる。
【0092】
図18は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図3および
図4に示した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
図18に示す吸引装置50の例は、
図3および
図4に示す吸引装置50の変形例に相当し、
図14で示した吸引装置50と同様に、アタッチメント92に取り付けられた交換式スクレーパ94を有する。図示はしないが、アタッチメント92と交換式スクレーパ94とを省略してもよい。交換式スクレーパ94を省略する場合、以下の説明では、スクレーパ94は吸引ノズル53と読み替えられる。
【0093】
図18に示す吸引装置50は、回転容器1に対する吸引ノズル53の角度を変更する傾斜台110を有している。本実施形態では、吸引装置50は、ノズル台30およびシール台40が固定される支持プレート111を有している。支持プレート111は、ノズル台30が固定される上面と、シール台40が固定される下面とを有しており、傾斜台110は、蓋部材5の上面と、支持プレート111の下面に挟まれるように、回転容器1に固定される。
【0094】
傾斜台110は、蓋部材5の上面と平行な下面と、蓋部材5の上面に対して傾斜する上面と、を有する円筒形状を有している。
図18に示すように、支持プレート111を傾斜台110の上面に固定すると、吸引ノズル53は、回転容器1に対して斜めに延びる。本実施形態では、吸引ノズル53は、その先端が回転容器1の半径方向内側に向かうように、回転容器1の下面(または、蓋部材5に)に対して斜めに延びている。図示はしないが、吸引ノズル53は、その先端が回転容器1の半径方向外側に向かうように、回転容器1の下面(または、蓋部材5に)に対して斜めに延びていてもよい。さらに、吸引ノズル53は、その先端が回転容器1の半径方向からずれるように延びていてもよい。
【0095】
回転容器1内で製造された製品の回収率を向上させるためには、スクレーパ94(または、吸引ノズル53)の先端は、できるだけ回転容器1の底面に近接させることが好ましい。一方で、スクレーパ94の先端を、回転容器1の底面に近づけすぎると、スクレーパ94の先端と回転容器1の底面との間の隙間が小さくなり、期待通りに製品を吸引できなくなる。さらに、回転容器1を回転させて製品を製造している間に、スクレーパ94と回転容器1の底面との間の隙間に存在する原料に多大な摩擦力が発生するおそれがある。この場合、スクレーパ94の先端および/または回転容器1の底面が傷つくか劣化してしまう。
【0096】
本実施形態によれば、スクレーパ94が回転容器1の底面に対して斜めに配置されているため、製品を容易にスクレーパ94の入口から吸引することができる。さらに、製品の製造中、スクレーパ94の下端のみが回転容器1の底面と近接する。したがって、スクレーパ94の先端および/または回転容器1の底面の劣化を抑制することができる。
【0097】
蓋部材5に対する傾斜角度が異なる上面を有する複数の傾斜台110を用意しておけば、回転容器1の底面に対する吸引ノズル53の傾斜角度を、原料および/または製品の性状に応じた最適な傾斜角度に容易に変更することができる。一方で、傾斜台110を交換することで、回転容器1の底面に対する吸引ノズル53の傾斜角度が変わると、スクレーパ94の先端と回転容器1の底面との間の距離が変わり、スクレーパ94が回転容器1の底面に接触するおそれがある。そこで、
図18に示すように、吸引ノズル53の下方への移動を制限する下限ストッパ機構120を有しているのが好ましい。
【0098】
図18に示す下限ストッパ機構120は、吸引ノズル53に固定された支持アーム121と、支持アーム121を貫通して延びるストッパボルト122と、ストッパボルト122に螺合する調整ナット123と、を備える。支持アーム121は、吸引ノズル53の外面に固定されている。調整ナット123を一方向(例えば、時計回り)に回すと、ストッパボルト122が支持アーム121に対して下方に移動し、調整ナット123を他方向(例えば、反時計回り)に回すと、ストッパボルト122が支持アーム121に対して上方に移動する。ノズル移動機構47により吸引ノズル53を下方に移動させたときに、ストッパボルト122の先端がノズル台30の上面に接触して、吸引ノズル53の下方への移動が阻止される。このような下限ストッパ機構120によって、回転容器1の底面に対するスクレーパ94の先端の位置を調整することができる。
【0099】
本実施形態では、下限ストッパ機構120は、傾斜台110を有する吸引装置50に設けられているが、下限ストッパ機構120を、
図3および
図4に示す吸引装置50に設けてもよいし、
図6に示す吸引装置50に設けてもよいし、
図12および
図13に示す吸引装置50に設けてもよい。
【0100】
図19は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図3および
図4に示した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
図19に示す吸引装置50の例は、
図3および
図4に示す吸引装置50の変形例に相当する。
【0101】
図19に示す吸引装置50は、吸引ノズル53の先端部から、回転容器1内の製品に圧縮気体(例えば、圧縮空気または圧縮窒素)を噴射する気体噴射機構130を備えている。
図19に示す気体噴射機構130は、吸引ノズル53の先端部に取り付けられた気体噴射ブロック131と、該気体噴射ブロック131に圧縮気体を供給する気体供給ライン132と、を備える。
【0102】
本実施形態では、気体供給ライン132は、気体供給源(図示せず)から蓋部材5まで延びる第1供給配管135と、蓋部材5に形成された貫通孔136と、蓋部材5から気体噴射ブロック131まで延びる第2供給配管137と、から構成される。貫通孔136は、第1供給配管135と第2供給配管137とを連通させる流路として機能する。第1供給配管135には、制御装置8(
図1参照)に接続された開閉弁139が配置されており、制御装置8は、開閉弁139の動作を制御可能に構成されている。第2供給配管137は、好ましくは、吸引ノズル53の進退移動に伴って変形可能な可撓性チューブから構成される。
【0103】
図19に示す例では、気体噴射ブロック131は、吸引ノズル53の外面に取り付けられた円筒形状を有し、第2供給配管137は、気体噴射ブロック131の上面に設けられた接続口131aに図示しない継手などを介して連結される。気体噴射ブロック131は、その下面に形成された噴射口131bを有しており、さらに、接続口131aと噴射口131bとを連通させる圧縮気体の流路131cをその内部に有している。図示した気体噴射ブロック131は、1つの噴射口131bを有しているが、噴射口131bの数は任意である。例えば、気体噴射ブロック131は、その周方向に沿って等間隔に配置された複数の(例えば、2つの)噴射口131bを有していてもよい。この場合、流路131cは、接続口131aから各噴射口131bまで延びる。一実施形態では、噴射口131bは、気体噴射ブロック131の全周にわたって延びる溝であってもよい。
【0104】
気体供給ライン132から気体噴射ブロック131に供給された圧縮空気は、噴射口131bから回転容器1内の製品に向けて噴射される。圧縮気体は、好ましくは、吸引ノズル53の進退方向と平行な方向に噴射される。
【0105】
気体噴射ブロック131の噴射口131bから圧縮気体を噴射させながら、吸引ノズル53を製品に向けて移動させると、製品に衝突した圧縮気体が製品の上面を抉るように変形させることができる。その結果、吸引ノズル53の先端を製品の中に容易に侵入させることができる。特に、製品の粘度の高い場合に、吸引ノズル53の製品への侵入を容易にさせるために、制御装置8は、吸引ノズル53の製品に向けた移動にあわせて、気体噴射機構130を動作させる。具体的には、制御装置8は、ノズル移動機構47を動作させて吸引ノズル53を下方に移動させつつ、第1供給配管135に配置された開閉弁139を開き、気体噴射ブロック131の噴射口131bから圧縮気体を噴射させる。
【0106】
図20は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。
図20に示す吸引装置50は、
図14を参照して説明された防塵カバー90、アタッチメント92、およびスクレーパ94と、
図19を参照して説明された気体噴射機構130とを備えている。特に説明しない本実施形態の構成は、
図14および
図19を参照して説明された実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0107】
図20に示す実施形態では、気体噴射機構130の第2供給配管137がアタッチメント92に接続され、上記少なくとも1つの噴射口はスクレーパ94の下面に形成されている。すなわち、本実施形態では、気体噴射ブロック131は、アタッチメント92とスクレーパ94の組み合わせにより構成される。言い換えれば、アタッチメント92とスクレーパ94の組み合わせが気体噴射ブロック131を兼ねる。
【0108】
図20に示す例では、第2供給配管137は、防塵カバー90によって区画された清浄空間1b内に位置しており、アタッチメント92の上面に連結される。貫通孔136は、蓋部材5とシール台40とを貫通している。第2供給配管137を清浄空間1b内に配置させると、第2供給配管137の外面が原料または製品で汚染されることが防止される。
【0109】
図20で仮想線(2点鎖線)で示すように、第2供給配管137を撹拌空間1aに配置してもよい。この場合、第2供給配管137は、防塵カバー90を避けるように、アタッチメント92の側面に連結され、貫通孔136は、蓋部材5のみを貫通する。
【0110】
気体噴射ブロック131の接続口と噴射口を連通させる流路は、アタッチメント92とスクレーパ94の内部に形成される。第2供給配管137を撹拌空間1aに配置する場合、第2供給配管137は、スクレーパ94の側面に連結されてもよい。この場合、スクレーパ94のみが気体噴射ブロック131として機能する。気体噴射ブロック131の接続口と噴射口は、スクレーパ94に形成され、接続口と噴射口を連通させる流路は、スクレーパ94の内部にのみ形成される。
【0111】
図示はしないが、上述した気体噴射機構130を、
図6、
図12、
図18に示す吸引装置50に設けてもよい。
【0112】
図21は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図3および
図4に示した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
図21に示す吸引装置50の例は、
図3および
図4に示す吸引装置50の変形例に相当する。
【0113】
図21に示す吸引装置50は、蓋部材5に対する吸引ノズル53の位置(進退量)を測定可能な位置センサ140と、蓋部材5に対する回転容器1内の製品の上面の位置を検出可能な測距離センサ145と、を備えている。位置センサ140は、蓋部材5の上面に設けられた支柱141に固定されており、吸引ノズル53の外面に固定されたドグの蓋部材5に対する位置を検出可能な近接センサである。
【0114】
本実施形態では、ドグとして、上記下限ストッパ機構120の支持アーム121を利用している。図示はしないが、位置センサ140用の専用のドグを吸引ノズル53の外面に固定してもよい。位置センサ140として用いられる近接センサの例としては、赤外センサ、磁気センサ、光学センサなどが挙げられる。支柱141に固定された位置センサ140は、制御装置8(
図1参照)に接続されており、該位置センサ140が検知したドグの位置を測定して、制御装置8に送信する。制御装置8は、位置センサ140の測定値から、蓋部材5に対する吸引ノズル53の位置を算出する(間接的に測定する)ことができる。
【0115】
測距離センサ145は、蓋部材5の下面に固定されており、回転容器1内の製品の上面と蓋部材5の下面との間の距離を計測する。測距離センサ145の例としては、赤外センサ、光学センサなどが挙げられる。測距離センサ145も制御装置8(
図1参照)に接続されており、その測定値を制御装置8に送信する。
【0116】
制御装置8は、測距離センサ145の測定値に基づいて、回転容器1内の、蓋部材5からの製品の上面までの距離を算出し、算出された距離に基づいて、ノズル移動機構47を操作することが可能に構成されている。この操作により、回転容器1内の製品(の上面)に対する吸引ノズル53の位置を制御することができる。位置センサ140は、蓋部材5に対する吸引ノズル53の進退量をリニアに監視する。この場合、制御装置8は、位置センサ140の測定値に基づいて、ノズル移動機構47を操作して(例えば、フィードバック制御して)、製品に対する吸引ノズル53の位置を正確に調整することができる。本実施形態では、位置センサ140、測距離センサ145、およびノズル移動機構47が、製品の上面に対する吸引ノズル53の先端の位置を調整するノズル位置調整機構を構成する。
【0117】
このような構成によれば、回転容器1内の製品に対する吸引ノズル53の先端の位置を任意に制御することができる。その結果、回転容器1内の製品の一部のみを容易に回収することができる。回転容器1から回収された製品の一部は、例えば、サンプリング、製品検査などに利用できる。さらには、回転容器1に原料が過剰に投入された場合に、所望量の製品だけを回転容器1から回収することもできる。あるいは、回転容器1内の製品の一部を他の装置(例えば、他の原料撹拌装置)に移動して、さらなる処理(例えば、さらなる原料の投入と撹拌処理)を実行することもできる。
【0118】
図22は、さらに他の実施形態に係る吸引装置の吸引ノズルの周辺を模式的に示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図21に示した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
図22に示す吸引装置50の例は、
図21に示す吸引装置50の変形例に相当する。
【0119】
図22に示すノズル位置調整機構は、位置センサ140の代わりに、複数の位置センサ140A,140B,140C,140D,140Eを備えている点で、
図21に示す実施形態と異なる。図示した例では、吸引装置50は、5つの位置センサ140A,140B,140C,140D,140Eを有しているが、位置センサの数は任意である。
【0120】
制御装置8は、測距離センサ145の測定値に基づいて、回転容器1内の、蓋部材5からの製品の上面までの距離を算出し、算出された距離に基づいて、吸引ノズル53の所望の移動量に相当する位置センサを複数の位置センサ140A,140B,140C,140D,140Eから選択する。次いで、制御装置8は、選択された位置センサがドグを検出するまでノズル移動機構47を動作させる。
【0121】
このような構成でも、回転容器1内の製品に対する吸引ノズル53の先端の位置を任意に制御することができる。その結果、回転容器1内の製品の一部のみを容易に回収することができるし、所望量の製品だけを回転容器1から回収することもできる。
【0122】
【0123】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0124】
1 回転容器(混合パン)
2 第1駆動装置
3 ロータユニット
4 第2駆動装置
5 蓋部材
9 カバー
30 ノズル台
31 第1シール部
40 シール台
41 第2シール部
45 センサ
50 吸引装置
51 真空源
53 吸引ノズル
54 ノズルカバー
55 フィルター(捕集器)
57 ストッパ
58 吸引ライン
60 逆洗ライン
61 回収ライン
65 回収容器
70 スクレーパ部材
80 付勢機構