(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080307
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】脂肪肝疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20220520BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220520BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220520BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220520BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220520BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220520BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220520BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220520BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20220520BHJP
A23L 33/13 20160101ALI20220520BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K48/00
A61P1/16
A61P43/00 105
A61P3/10
A61P3/04
A61P3/00
A61P35/00
A23L33/18
A23L33/13
G01N33/53 D
G01N33/53 M
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187313
(22)【出願日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0153591
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518165752
【氏名又は名称】ハイセンスバイオ
(71)【出願人】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュチョル
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンソル
(72)【発明者】
【氏名】ファン クムピッ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018MD44
4B018ME14
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA18
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA751
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZC211
4C084ZC351
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脂肪肝疾患の予防または治療用薬学的組成物、脂肪肝疾患の予防または緩和用医薬部外品組成物、ならびに脂肪肝疾患の予防または緩和用健康機能性食品組成物を提供する。
【解決手段】CPNE7タンパク質を含む組成物であり、具体的にSREBF1(SREBP1)遺伝子の発現を調節するCPNE7タンパク質またはそれをコードする遺伝子を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む非アルコール性脂肪性肝疾患の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項2】
上記薬学的組成物は、SREBF1(SREBP1)の発現を調節することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
上記薬学的組成物は、細胞内炎症細胞または脂肪小粒蓄積を調節することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
上記薬学的組成物は、肝細胞においてSREBF1(SREBP1)遺伝子発現を調節することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
上記肝細胞はHepG2細胞であることを特徴とする、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
上記薬学的組成物は、肝組織において細胞質が膨張した肝細胞、炎症細胞または脂肪小粒の蓄積を調節することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
上記薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
上記薬学的組成物は、肝組織において、低分子代謝過程(small molecule metabolic process)、脂質代謝過程(lipid metabolic process)、細胞脂質代謝過程(cellular lipid metabolic process)、有機酸代謝過程(organic acid metabolic process)、酸化-還元代謝過程(oxidation-reduction metabolic process)、カルボン酸代謝過程(carboxylic acid metabolic process)、オキソ酸代謝過程(oxoacid metabolic process)、モノカルボン酸代謝過程(monocarboxylic acid metabolic process)、脂質生合成過程(lipid biosynthetic process)、脂肪酸代謝過程(fatty acid metabolic process)、ステロイド代謝過程(steroid metabolic process)、ステロイド生合成過程(steroid biosynthetic process)、ステロール代謝過程(sterol metabolic process)、コレステロール代謝過程(cholesterol metabolic process)、2次アルコール代謝過程(secondary alcohol metabolic process)、ステロール生合成過程(sterol biosynthetic process)、プリンヌクレオシドビスホスフェート代謝過程(purine nucleoside bisphosphate metabolic process)、ヌクレオシドビスホスフェート代謝過程(nucleoside bisphosphate metabolic process)、コレステロール生合成過程(cholesterol biosynthetic process)および2次アルコール生合成過程(secondary alcohol biosynthetic process)からなる群より選択された1つ以上の過程を調節することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
上記非アルコール性脂肪性肝疾患は、2型糖尿病、肥満および代謝異常症候群、肝臓内脂肪沈着、非アルコール性脂肪肝炎、肝臓の線維化、肝硬変、または肝癌であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
CPNE7タンパク質またはその遺伝子の発現を検出するための、上記遺伝子に相補的に結合し得るプローブまたはタンパク質と結合し得る抗体を含む脂肪肝疾患診断用組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を、ヒトを除いた個体に投与する段階を含む、非アルコール性脂肪性肝疾患の予防または治療方法。
【請求項12】
脂肪肝疾患の診断に必要な情報を提供するために、CPNE7タンパク質またはその遺伝子の発現を検出し得るプライマー、プローブまたは抗体を用いたCPNE7タンパク質またはその遺伝子を検出する方法。
【請求項13】
CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む非アルコール性脂肪性肝疾患の予防または緩和用医薬部外品組成物。
【請求項14】
CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む非アルコール性脂肪性肝疾患の予防または緩和用健康機能性食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪肝疾患の予防または治療用組成物に関するもので、より詳細には、体内に存在するCPNE7タンパク質またはその遺伝子の濃度によって調節される細胞内の炎症細胞または脂肪小粒の蓄積と関連した脂肪肝疾患の予防または治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂肪肝は、肝臓に脂肪が過剰に蓄積されて起こる疾病であり、肝臓内の脂肪沈着による重さが肝臓内重さの5%以上からなるものと定義される。
【0003】
アルコールは、脂肪肝の主な原因となる。そこで、飲酒による脂肪肝とそうでない脂肪肝とに分類し、前者をアルコール性脂肪肝(alcoholic fatty liver)と呼び、後者を非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver disease、NAFLD)と呼ぶ。
【0004】
非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease、NAFLD)は、その脂肪肝の原因がアルコールに起因しない場合をいい、肝臓内の単純脂肪蓄積(simple steatosis)から脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis、NASH)、肝硬変(cirrhosis)に至る一連の過程を全て含み、慢性肝疾患の中で最も一般的な疾患であり、2型糖尿病、肥満、および代謝異常症候群と密接な関係があると知られている。
【0005】
非アルコール性脂肪肝が深刻に進行すると、非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis, NASH)に至ることとなる。脂肪肝炎は、単純脂肪肝に比べて危険な段階であり、B型肝炎、またはその他健康上の問題と結びついた場合には、肝硬変または肝癌に発展し得る。
【0006】
単純脂質段階では特別な病的症状は現れないが、よく管理しないと、単純脂質が非アルコール性脂肪肝炎、肝臓の線維化および肝硬変に進行して深刻な合併症を引き起こすことがあり、稀に肝細胞癌(hepatocellular carcinoma、HCC)に発展することもある。
【0007】
慢性疾患誘発転写体に関する研究は、多くの研究者によって長い間研究されてきており、その結果、現在まで脂肪代謝関連酵素の発現を調節するのに核心となる転写因子としてSREBP(Sterol regulatory element-binding protein)がよく知られている。このようなSREBPs(Sterol regulatory-element binding proteins)遺伝子は、SREBF1(Sterol regulatory element-binding transcription factor 1)とも命名され、コレステロール生合成に関与する遺伝子のプロモーターおよびLDL受容体(LDLR)経路を調節する転写因子として初めて報告された。
【0008】
SREBPsは酵母からヒトに至るまでよく保存されており、細胞内脂質の恒常性を調節する遺伝子の発現を制御する。SREBPは、SREBP-1a、SREBP-1cおよびSREBP-2と、3種類のアイソフォーム(isoforms)がある。SREBP-1aとSREBP-1cは、主に脂肪酸および中性脂肪の合成に関与し、SREBP-2は、コレステロール代謝に関与するものと知られている。特にSREBP1cは、肝臓のような脂肪の生合成器官において脂肪酸とトリグリセリドとの生合成を調節する。脂肪酸の合成に関与するSREBP-1は、核内で転写のために結合するDNA結合部位であるSRE-1とEボックスモチーフ(E-box motif)部分とを含んでいる。
【0009】
脂肪肝の原因と深刻性は明らかになっているが、食事の調整と運動により症状を改善するべき脂肪肝患者がこれを実践できない場合が多く、非アルコール性脂肪性肝疾患の疑い、またはこれを保有している患者のための確立した緩和または治療剤などが不在なのが実情である。
【0010】
特に、一般的に非アルコール性脂肪性肝疾患を患っている患者の場合、体重減量が通常の処方であるが、肥満患者はなかなか有意な体重減少のための生活習慣の大々的な改善が難しいため、非アルコール性脂肪性肝疾患のための対策として減量のみ提示するのは好ましくない。
【0011】
したがって、食事の調整と運動以外の実質的な脂肪肝の治療のために、特に、非アルコール性脂肪肝の治療のために脂肪肝治療薬物の開発必要性が求められている。
【0012】
このような背景下で、本発明者らは、非アルコール性脂肪性肝疾患を予防または治療し得る方法を開発しようと鋭意研究努力した結果、CPNE7タンパク質またはその遺伝子を用いると、肝臓で脂肪酸合成に関与するSREBP1の活性調節により脂肪肝疾患を予防または治療し得ることを確認して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2019-0046705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の実施例による組成物は、脂肪肝疾患の予防に用いるためのものであることを目的とする。
【0015】
本発明の他の実施例による組成物は、脂肪肝疾患の治療に用いるためのものであることを目的とする。
【0016】
本発明の目的は、以上で言及したことに制限されず、言及されていないまた他の目的は、以下の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記技術的課題を解決するための本発明の一様態によると、CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物が提供される。
【0018】
ここで、薬学的組成物は、SREBP1の発現を調節し得る。
【0019】
また、薬学的組成物は、細胞内の炎症細胞または脂肪小粒の蓄積を調節し得る。
【0020】
また、薬学的組成物は、肝細胞においてSREBP1遺伝子(SREBF1)発現を調節し得る。
【0021】
また、肝細胞はHepG2細胞であり得る。
【0022】
また、薬学的組成物は、肝組織において細胞質が膨張した肝細胞、炎症細胞または脂肪小粒の蓄積を調節し得る。
【0023】
また、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤をさらに含み得る。
【0024】
なお、薬学的組成物は、肝組織において低分子代謝過程(small molecule metabolic process)、脂質代謝過程(lipid metabolic process)、細胞脂質代謝過程(cellular lipid metabolic process)、有機酸代謝過程(organic acid metabolic process)、酸化-還元代謝過程(oxidation-reduction metabolic process)、カルボン酸代謝過程(carboxylic acid metabolic process)、オキソ酸代謝過程(oxoacid metabolic process)、モノカルボン酸代謝過程(monocarboxylic acid metabolic process)、脂質生合成過程(lipid biosynthetic process)、脂肪酸代謝過程(fatty acid metabolic process)、ステロイド代謝過程(steroid metabolic process)、ステロイド生合成過程(steroid biosynthetic process)、ステロール代謝過程(sterol metabolic process)、コレステロール代謝過程(cholesterol metabolic process )、2次アルコール代謝過程(secondary alcohol metabolic process)、ステロール生合成過程(sterol biosynthetic process)、プリンヌクレオシドビスホスフェート代謝過程(purine nucleoside bisphosphate metabolic process)、ヌクレオシドビスホスフェート代謝過程(nucleoside bisphosphate metabolic process)、コレステロール生合成過程(cholesterol biosynthetic process)、および2次アルコール生合成過程(secondary alcohol biosynthetic process)からなる群より選択された1つ以上の過程を調節し得る。
【0025】
また、脂肪肝疾患は、2型糖尿病、肥満および代謝異常症候群、肝臓内脂肪沈着、非アルコール性脂肪肝炎、アルコール性脂肪肝炎、肝臓の線維化、肝硬変、または肝癌であり得る。
【0026】
本発明の他の様態によると、上記薬学的組成物を、ヒトを除いた個体に投与する段階を含む、脂肪肝疾患の予防または治療方法が提供される。
【0027】
本発明のまた他の様態によると、脂肪肝疾患の診断に必要な情報を提供するために、CPNE7タンパク質またはその遺伝子の発現を検出し得るプライマー、プローブまたは抗体を用いたCPNE7タンパク質またはその遺伝子を検出する方法が提供される。
【0028】
本発明のまた他の様態によると、CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む脂肪肝疾患の予防または緩和用医薬部外品組成物が提供され得る。
【0029】
本発明のまた他の様態によると、CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む脂肪肝疾患の予防または緩和用健康機能性食品組成物が提供され得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明の実施例による組成物は、細胞内の炎症細胞または脂肪小粒の蓄積を調節するか、または肝組織において細胞質が膨張した肝細胞、炎症細胞または脂肪小粒の蓄積を調節することにより、脂肪肝疾患を予防するようにし得る。
【0031】
本発明の他の実施例による組成物は、細胞内炎症細胞または脂肪小粒の蓄積を阻害するか、または肝組織において細胞質が膨張した肝細胞、炎症細胞または脂肪小粒の蓄積を阻害することにより、脂肪肝疾患の治療に使用し得る。
【0032】
本発明の効果は、以上で言及したものに制限されず、言及されていないまた他の効果は、以下の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できることである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、対照群(WT)と実験群CPNE7遺伝子欠損(CPNE7 KO)マウスとの肝組織をヘマトキシリン・エオシン染色により分析した結果であり、
図1のAは、対照群である正常マウスの肝組織を染色したもので、A’はAの拡大写真である。対照群においては、脂肪小粒のような如何なる脂肪肝疾患の所見は見られなかった。
図1のBは、実験群であるCPNE7遺伝子欠損マウスの肝組織を染色したものでB’はBの拡大写真で、対照群に比べて部分的に脂肪小粒が生成されたことが観察された。脂肪小粒は矢印で表示しており、
図1のB’の右側の写真は、
図1のB’におけるボックス部分を拡大して、脂肪小粒をより明確に示しているものである。
【
図2】
図2は、対照群(wild type)と、実験群CPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織を透過電子顕微鏡により分析した結果である。
図2のA~Bは、対照群の肝細胞を観察したもので、細胞質に空き領域がなく、脂肪小粒も観察されなかった。
図2のC~Dは、実験群(CPNE7遺伝子欠損マウス)の肝細胞を観察したもので、細胞質が膨張して空き領域が多く見られ、細胞質の間に脂肪小粒が観察された。矢印は脂肪小粒を指す。
【
図3A】
図3Aは、対照群(wild type)と、実験群CPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織で発現する様々な遺伝子のRNA塩基配列を解析した結果で、発現程度が類似している集団同士で群集化してヒートマップ(heat map)で示したものである。
【
図3B】
図3Bは、対照群と、実験群CPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織で発現する様々な遺伝子のRNA塩基配列を解析した結果で、上のグラフは、対照群に比べて実験群において2倍以上増加または減少した遺伝子の数を示し、下のグラフは、2倍以上増加または減少した遺伝子において統計的に有意な(p<0.05)遺伝子の数を示す。
【
図3C】
図3Cは、対照群と、実験群CPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織で発現する様々な遺伝子のRNA塩基配列を解析した結果において、このような遺伝子を対象に遺伝子オントロジーエンリッチメント(gene ontology enrichment)解析をした際、生物処理(biological process)分野の上位20項目(top 20 term)を示すものである。項目における下線部分は、脂肪関連処理として上位20項目のうち50%である10項目に該当する。
【
図4A】
図4Aは、対照群(wild type)と、実験群CPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織で発現する様々な遺伝子のRNA塩基配列解析結果において、SREBP1の発現を比較した結果であり、非アルコール性脂肪性肝疾患の発生に重要な役割をする転写因子であるSREBP1が、CPNE7遺伝子欠損マウスの肝臓で約2倍増加したことを示す。
【
図4B】
図4Bは、対照群と、上記様々な遺伝子のRNA塩基配列解析結果において、上記解析の結果を検証するためにRNA塩基配列解析を依頼したサンプルで技術的反復実験(technical repeat、TR)をした結果と、他の新たなサンプルで生物学的反復実験(biological repeat、BR)を行った結果を示す。両実験の結果、いずれも対照群に比べて実験群においてSREBP1が増加したことが確認された。
【
図5】
図5は、In vitro実験において、CPNE7とSREBP1遺伝子(SREBF1)との相関性を確認するために、肝細胞株であるHepG2細胞にCPNE7遺伝子を形質注入してSREBP1の遺伝子発現様相を観察した結果である。
図5のAは、HepG2細胞株にCPNE7遺伝子を形質注入した結果で、対照群に比べてCPNE7遺伝子を形質注入した群においてCPNE7遺伝子発現が増加したことを確認した。
図5のBは、CPNE7遺伝子が形質注入された群においてSREBP1遺伝子(SREBF1)発現を確認した際に、対照群に比べて減少した結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、対照群(wild type)と、実験群であるCPNE7遺伝子過発現(CPNE7 Tg)マウスまたはCPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織をヘマトキシリン・エオシン染色により分析した結果である。
図6のAは、対照群である正常マウスの肝組織を染色した結果である。
図6のBは、実験群であるCPNE7遺伝子過発現マウスの肝組織を染色したもので、病的な側面は確認されなかった。
図6のCは、実験群であるCPNE7遺伝子欠損マウスの肝組織を染色したもので、対照群やCPNE7過発現マウスの肝組織とは異なり、部分的に細胞質が膨張した肝細胞(hepatocellular ballooning)と多量の炎症細胞が観察された。
【
図7】
図7は、In vivo実験において、CPNE7とSREBP1との相関性を対照群と実験群マウスとの肝組織で分析した結果である。対照群とCPNE7遺伝子過発現マウスまたはCPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織からRNAを抽出して、CPNE7とSREBP1遺伝子(SREBF1)の発現を測定した。
図7のAは、CPNE7遺伝子発現を示すグラフであり、
図7のBは、SREBP1遺伝子(SREBF1)発現を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の目的および効果、そしてそれらを達成するための技術的構成は、添付の図面とともに詳細に後述している実施例を参照すると明確になることである。本発明を説明するに当たり、公知の機能または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にし得ると判断される場合は、その詳細な説明を省略し得る。そして、後述する用語は、本発明における実施例の説明のために定義された用語であり、これはユーザー、運用者の意図または慣例などによって異なり得る。
【0035】
しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現され得る。ただ、本実施例は、本発明の開示を完全たるものとし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範囲によって定義されるのみである。したがって、その定義は、本明細書全般に亘る内容に基づいてなされるべきである。
【0036】
本発明において、「脂肪肝」とは、肝臓内脂肪沈着による重さが肝臓内重さの5%以上からなるものと定義される。「非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic liver disease)」は、そのうち脂肪肝の原因がアルコールに起因しない場合を指し、肝臓内単純脂肪沈着(simple steatosis)から脂肪肝炎、肝硬変に至る一連の過程を全て含む用語と定義され得る。
【0037】
本発明において、「脂肪肝疾患」は、本発明のCPNE7タンパク質またはその遺伝子によって治療効果を示す限り、特にこれに限定されないが、一例として、2型糖尿病、肥満、および代謝異常症候群、肝臓内の脂肪沈着、非アルコール性脂肪肝炎、アルコール性脂肪肝炎、肝臓の線維化、肝硬変または肝癌等となり得る。
【0038】
「CPNE7タンパク質」は、CPNE7遺伝子によってコードされる、カルシウム依存性メンブレン結合タンパク質であるコピン(copine)ファミリーの1つと定義され得る。上記タンパク質は、2つのN-末端C2ドメインおよび1つのフォン・ヴィレブランド(von Willebrand)因子Aドメインを含有する。本願発明の目的を達成するために、本願発明の効果を達成する限り、様々な有来および/または形態のCPNE7遺伝子および/またはタンパク質が使用され得る。野生型配列はもちろん、細胞内における発現またはタンパク質の安定性などのような特徴が有利になるように塩基配列の一部が人為的に変形された遺伝子、および自然に発見される塩基配列の一部が変形された遺伝子、またはそれら全ての断片を含むものである。
【0039】
本発明において、CPNE7タンパク質の遺伝子塩基配列の変形は、相応するアミノ酸の変形を伴うか、伴わなくても良く、アミノ酸の変形を伴う場合、このような変形が誘発された遺伝子は、これによりコードされるタンパク質において、1つ以上のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質を暗号化するものとして、突然変異体(mutants)、誘導体(derivatives)、対立遺伝子(alleles)、変形体(variants)、および同質体(homologues)を含み得る。
【0040】
遺伝子塩基配列の変異がタンパク質中のアミノ酸の変形を伴わない場合は、例えば、縮重変異が存在することがあり、このような縮重変異体(degeneracy mutants)もまた、本発明の上記遺伝子に含まれ得る。
【0041】
人為的遺伝子塩基配列の変形は、当業者に周知の方法、例えば、部位特異的変異導入法(Site-directed mutagenesis、Kramer et al, 1987)、エラー誘発性PCR(R C Cadwell and G F Joyce. 1992. PCR methods Appl., 2:28-33)、点突然変異法(Sambrook and Russel, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd Ed., 2001、Cold Spring Harbor Laboratory Press)などにより製造され得る。
【0042】
本発明の実施例に用いられるタンパク質は、当業界に公知の方法により製造され得る。一実施例において、タンパク質の製造方法は、遺伝子組換え技術を利用するものである。
【0043】
例えば、上記タンパク質をコードする相応する遺伝子を含むベクターを原核または真核細胞、例えば昆虫細胞、哺乳類細胞に伝達して発現させた後、精製して使用し得る。上記のプラスミドは、例えばpET28b(Novagen)のような発現ベクターに当該遺伝子をクローニングして細胞株に伝達移入した後、発現されたタンパク質を精製して用いられるが、これに制限されるものではない。合成されたタンパク質は、沈殿、透析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、HPLC(high performance liquid chromatography)、逆相HPLC、プレップ用SDS-PAGE、抗スクリーニングタンパク質抗体を用いた親和性カラム等を含むカラムクロマトグラフィーにより分離精製され得る。
【0044】
本発明による一実施例において、CPNE7遺伝子およびタンパク質は、類人猿、ヒトなどの哺乳動物由来であり、特にヒト由来である。CPNE7遺伝子およびタンパク質は、その全長、または本願の効果を達成する限りその断片も用いられて良く、全長配列は、例えばGenBankアクセス番号で、マウスの場合はNM170684(アミノ酸)、NP733785(核酸)、ヒトの場合はNM014427(アミノ酸)、NP055242(核酸)を参照し得るが、これに制限されるものではない。
【0045】
本願による一実施例において、前述した遺伝子は、本願の組成物が用いられる細胞内で発現が可能となるようプロモーターに作動可能に連結された発現ベクターの形態で提供され得る。
【0046】
本発明の用語「発現ベクター」とは、目的とする宿主細胞でターゲット遺伝子を発現し得る組換えベクターであり、遺伝子挿入物が発現されるよう作動可能に連結された必須的な調節要素を含む遺伝子制作物のことを意味する。上記発現ベクターは、開始コドン、終止コドン、プロモーター、オペレーターなどの発現調節要素を含むが、上記開始コドンおよび終止コドンは、一般的にポリペプチドを暗号化するヌクレオチド配列の一部とみなされ、遺伝子制作物が投与されたとき、個体にて必ず作用を示す必要があり、コード配列とインフレーム(in frame)にあらねばならない。ベクトルのプロモーターは、構成的または誘導性であり得る。
【0047】
本発明の用語「作動可能に連結(operably linked)」とは、一般的な機能を行うように核酸発現調節配列と、目的とするタンパク質またはRNAをコードする核酸配列とが、機能的に連結(functional linkage)されている状態のことを意味する。例えばプロモーターとタンパク質またはRNAをコードする核酸配列が作動可能に連結され、コード配列の発現に影響を与え得る。発現ベクターとの作動的な連結は、当該技術分野に周知の遺伝子組換え技術を利用して製造することができ、部位特異的DNA切断および連結は、当該技術分野で一般的に知られている酵素などを使用し得る。
【0048】
本発明の用語「予防」とは、本発明のCPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む脂肪肝疾患の予防または治療用薬学的組成物の投与により、脂肪肝疾患の発生を阻害または遅延させる全ての行為のことを意味する。
【0049】
本発明の用語「治療」とは、本発明のCPNE7タンパク質またはその遺伝子を有効成分として含む薬学的組成物を脂肪肝疾患の治療を必要とする個体に投与して、肝臓において肝細胞の脂肪蓄積を抑制することにより、脂肪肝疾患の治療が行われるようにする全ての行為のことを意味する。
【0050】
本発明の薬学的組成物は、上記CPNE7タンパク質またはその遺伝子に薬学的組成物の調製に通常用いられる適切な担体(自然的または非自然的担体)、賦形剤、または希釈剤をさらに含む脂肪肝疾患および/または脂肪肝治療用薬学的組成物の形態で調製され得る。具体的に、上記薬学的組成物は、それぞれ通常の方法により脂肪肝疾患および/または脂肪肝が誘発された部位に投与し得る滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用され得る。本発明において、上記薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、でん粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、コラーゲンなどが挙げられる。製剤化する場合は、通常用いられる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製され得る。特に、滅菌済の水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤、軟膏剤(例えば、歯髄裏装材など)などが含まれ得る。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(Witepsol、登録商標)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0051】
本発明の薬学的組成物に含まれている上記CPNE7タンパク質またはその遺伝子の含有量は特に制限されないが、最終組成物の総重量を基準に0.0001重量%~50重量%、より好ましくは0.01重量%~20重量%の含有量で含まれ得る。
【0052】
上記本発明の薬学的組成物は、薬剤学的に有効な量で投与され得るが、本発明の用語「薬剤学的に有効な量」とは、医学的治療または予防に適用可能な合理的なベネフィット・リスク比で疾患を治療または予防するのに十分な量のことを意味し、有効容量レベルは、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する感受性、使用された本発明の組成物の投与時間、投与経路および排出の割合、治療期間、使用された本発明の組成物と配合または同時に用いられる薬物とを含む要素、およびその他医学分野に周知の要素に応じて決定され得る。本発明の薬学的組成物は、単独で投与するか、公知の脂肪肝疾患および/または脂肪肝治療用薬学的組成物と併用して投与され得る。上記要素を全て考慮して、副作用もなく最小限の量で最大の効果が得られ得る量を投与することが重要である。
【0053】
本発明の薬学的組成物の投与量は、使用目的、疾患の中毒度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、または有効成分として用いられる物質の種類などを考慮して、当業者が決定し得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、成人1人当たり約0.1ng~約100mg/kg、好ましくは1ng~約10mg/kgで投与することができ、本発明の組成物の投与頻度は特に制限されないが、1日1回投与するか、または容量を分割して数回投与し得る。上記投与量は、いかなることからも、本発明の範囲を限定するものではない。
【0054】
本発明は、他の一様態として、上記薬学的組成物を薬剤学的に有効な量で脂肪肝疾患が発症した個体に投与する段階を含む脂肪肝疾患の治療方法を提供する。また他の一様態として、上記薬学的組成物を薬剤学的に有効な量で、脂肪肝が発症した、ヒトを除いた個体に投与する段階を含む脂肪肝疾患の治療方法を提供する。
【0055】
本発明の用語「個体」とは、脂肪肝疾患および/または脂肪肝の治療が必要とされるヒト、またはヒトを除くマウス、家畜などを含む哺乳動物などを制限なく含み得る。
【0056】
本発明の脂肪肝疾患および/または脂肪肝治療用薬学的組成物の投与経路は、ターゲット組織に到達し得る限り、いかなる一般的な経路を介しても投与され得る。本発明の薬学的組成物は、特に限定されないが、目的に応じて口腔内投与または口腔内注射などの経路を介して投与され得る。
【0057】
また他の一様態として、本発明は、上記CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む脂肪肝疾患の予防または改善用医薬部外品組成物、または上記CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む脂肪肝の予防または改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0058】
本発明の用語「改善」とは、治療される状態に関するパラメータ、例えば症状の程度を少なくとも減少させる全ての行為のことを意味する。
【0059】
本発明において、上記改善は、本発明のCPNE7タンパク質またはその遺伝子を有効成分として含む薬学的組成物を脂肪肝疾患の治療を必要とする個体に投与して、肝臓において肝細胞の脂肪蓄積を抑制することにより、脂肪肝疾患の症状が好転するか、または有利になるようにする全ての行為、または本発明のCPNE7タンパク質またはその遺伝子を有効成分として含む薬学的組成物を脂肪肝の治療を必要とする個体に投与して、肝臓において肝細胞の脂肪蓄積を抑制することにより、脂肪肝の症状が好転するか、または有利になるようにする全ての行為のことを意味するものと解釈され得る。
【0060】
本発明の用語「医薬部外品」とは、ヒトや動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置、または予防する目的で用いられる物品のうち、医薬品よりも作用が軽微な物品のことを意味するもので、例えば、薬事法によると、医薬部外品とは医薬品の用途に用いられる物品を除いたもので、ヒト・動物の疾病治療や予防に使われる繊維・ゴム製品、人体に対する作用が軽微であるか、直接作用せず、器具または機械ではないものやこれと類似のもの、感染症を防ぐための殺菌・殺虫剤などがこれに含まれる。
【0061】
本発明において、上記CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む医薬部外品組成物の種類や剤形は、特に制限されない。
【0062】
また他の一様態として、本発明は、上記CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む脂肪肝疾患および/または脂肪肝の予防または改善用健康機能性食品組成物を提供する。
【0063】
本発明の用語「食品」は、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、健康機能食品、および健康食品などがあり、通常の意味における食品全般を含む。
【0064】
上記健康機能(性)食品(functional food)とは、特定保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同様の用語であり、栄養補給のほか、生体調節機能が効率的に現れるように加工された医学・医療効果の高い食品のことを意味する。なお、「機能(性)」とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の食品は、当業界で通常用いられる方法により製造可能であり、上記製造の際には、当業界で通常添加する原料および成分を添加して製造し得る。また、上記食品の剤形もまた、食品として認められる剤形であれば制限なく製造され得る。本発明の食品用組成物は、様々な形態の剤形で製造されて良く、一般薬品とは異なり、食品を原料とするため、薬品の長期服用の際に発生し得る副作用などがないという利点があり、携帯性に優れ、本発明の食品は脂肪肝疾患および/または脂肪肝の予防または改善の効果を増進させるための補助剤として摂取可能である。
【0065】
上記健康食品(health food)は、一般食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品のことを意味し、健康補助食品(health supplement food)は、健康補助目的の食品のことを意味する。場合によっては、健康機能食品、健康食品、健康補助食品の用語は混用され得る。
【0066】
具体的に、上記健康機能食品は、本発明のCPNE7タンパク質またはその遺伝子を飲料、茶類、香辛料、ガム類、菓子類などの食品素材に添加するか、カプセル化、粉末化、懸濁液などで製造した食品であって、これを摂取すると、健康上の特定の効果をもたらすことを意味するが、一般薬品とは異なり、食品を原料とするため、薬品の長期服用の際に発生し得る副作用がないという利点がある。
【0067】
本発明の食品組成物は、日常的に摂取することが可能なため、脂肪肝疾患および/または脂肪肝の予防または改善に対して高い効果が期待できるので、非常に有用に使用され得る。
【0068】
上記食品組成物は、生理学的に許容可能な担体をさらに含み得るが、担体の種類は特に制限されず、当該技術分野で通常用いられる担体であれば、いかなるものでも使用し得る。
【0069】
また、上記食品組成物は、食品組成物に通常使用され、香り、味、視覚などを向上させ得る成分をさらに含み得る。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、葉酸塩(folate)、パントテン酸(pantothenic acid)などを含み得る。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、などのミネラルを含み得る。また、リジン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含み得る。
【0070】
また、上記食品組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウム等)、殺菌剤(さらし粉および高度さらし粉、次亜塩素酸ナトリウム等)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等)、着色剤(タール色素等)、発色剤(亜硝酸ナトリウム等)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(グルタミン酸ナトリウム(MSG)等)、甘味料(ズルチン、チクロ(サイクラミン酸ナトリウム)、サッカリン、ナトリウム等)、香料(バニリン、ラクトン類等)、膨張剤(ミョウバン、D-酒石酸水素カリウム等)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、皮膜剤、ガム基礎剤、泡抑制剤、溶剤、改良剤などの食品添加物(food additives)を含み得る。上記添加物は、食品の種類に応じて選別され、適量で使用され得る。
【0071】
本発明のCPNE7タンパク質またはその遺伝子は、そのまま添加するか、他の食品または食品成分とともに使用され、通常の方法により適切に使用され得る。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康または治療的処置)に応じて好適に決定され得る。一般的に、食品または飲料製造の際、本発明の食品組成物は、食品または飲料に対して50重量部以下、具体的に20重量部以下の量で添加され得る。しかし、健康および衛生を目的として長期間摂取する場合には、上記範囲以下の含有量を含んで良く、安全性の面で何ら問題がないため、有効成分は上記範囲以上の量でも使用され得る。
【0072】
本発明の食品組成物の一例として、健康飲料組成物として使用されて良く、この場合、通常の飲料のように様々な香味料または天然炭水化物などを追加成分として含有し得る。上記の天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のような単糖類(monosaccharide);マルトース、スクロースのようなニ糖類(disaccharide);デキストリン、シクロデキストリンのような多糖類(polysaccharide);キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであり得る。甘味料は、タウマチン(thaumatin)、ステビア抽出物のような天然甘味料;サッカリン、アスパルテームのような人工甘味料などを使用し得る。上記天然炭水化物の割合は、本発明の健康飲料組成物100ml当たり、一般的に約0.01g~0.04g、具体的に約0.02g~0.03gとなり得る。
【0073】
上記のほか、健康飲料組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、または炭酸化剤などを含有し得る。その他、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、または野菜飲料の製造のための果肉を含有し得る。このような成分は、独立してまたは混合して使用し得る。このような添加剤の割合は、それほど重要ではないが、本発明の健康飲料組成物100重量部当り0.01重量部~0.1重量部の範囲で選択されるのが一般的である。
【0074】
本発明の食品組成物は、脂肪肝疾患および/または脂肪肝の予防または改善効果を示し得るのであれば、様々な重量%で含み得る。具体的に、本発明のCPNE7タンパク質またはその遺伝子を、食品組成物の総重量に対して0.00001重量%~100重量%または0.01重量%~80重量%で含み得るが、これに限定されない。
【0075】
本発明のまた他の一様態として、上記CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む組成物を個体に投与する段階を含む、脂肪肝疾患の予防または治療方法、および/または脂肪肝の予防または治療方法を提供する。
【0076】
また他の一様態として、上記CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む組成物を個体に投与する段階を含む、肝臓において肝細胞の脂肪蓄積を抑制する方法、および/またはSREBP1の発現を抑制する方法を提供する。
【0077】
本発明のまた他の一様態として、アミノ酸配列を含むCPNE7タンパク質またはその遺伝子、もしくは上記CPNE7タンパク質またはその遺伝子を含む組成物の肝細胞内の炎症細胞または脂肪小粒蓄積抑制用途および脂肪肝疾患または脂肪肝の予防または治療用途を提供する。
【0078】
本発明の一実施例より、CPNE7遺伝子の欠損が、肝組織において脂肪小粒の蓄積に及ぼす影響を検証した。その結果、CPNE7遺伝子欠損(CPNE7 KO)マウスの肝組織では、対照群である正常マウスの肝組織とは異なり、脂肪小粒が生成されたことが観察された。
【0079】
図1は、対照群(WT)と実験群CPNE7遺伝子欠損(CPNE7 KO)マウスとの肝組織をヘマトキシリン・エオシン染色により分析した結果である。
図1のAは、対照群である正常マウスの肝組織を染色したもので、A’はAの拡大写真である。対照群では、脂肪小粒のような何ら脂肪肝疾患の所見が見られなかった。
図1のBは、実験群であるCPNE7遺伝子欠損マウスの肝組織を染色したもので、B’はBの拡大写真であり、対照群に比べて部分的に脂肪小粒が生成されたことが観察された。脂肪小粒は矢印で表示しており、
図1のB’の右側の写真は
図1のB’におけるボックス部分を拡大して、脂肪小粒をより明確に示すものである。
【0080】
CPNE7遺伝子欠損による肝細胞の差異を確認するために、対照群(wild type)と実験群CPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織を透過電子顕微鏡により分析した。対照群(wild type)の肝細胞は、細胞質に空き領域がなく脂肪小粒も観察されなかった(
図2のA、Bを参照)。一方、実験群(CPNE7遺伝子欠損マウス)の肝細胞では、細胞質が膨張して空き領域が多く見られ、細胞質の間に脂肪小粒が観察(矢印)された(
図2のC、Dを参照)。
【0081】
本発明の実施例による薬学的組成物は、低分子代謝過程(small molecule metabolic process)、脂質代謝過程(lipid metabolic process)、細胞脂質代謝過程(cellular lipid metabolic process)、有機酸代謝過程(organic acid metabolic process)、酸化-還元代謝過程(oxidation-reduction metabolic process)、カルボン酸代謝過程(carboxylic acid metabolic process)、オキソ酸代謝過程(oxoacid metabolic process)、モノカルボン酸代謝過程(monocarboxylic acid metabolic process)、脂質生合成過程(lipid biosynthetic process)、脂肪酸代謝過程(fatty acid metabolic process)、ステロイド代謝過程(steroid metabolic process)、ステロイド生合成過程(steroid biosynthetic process)、ステロール代謝過程(sterol metabolic process)、コレステロール代謝過程(cholesterol metabolic process)、2次アルコール代謝過程(secondary alcohol metabolic process)、ステロール生合成過程(sterol biosynthetic process)、プリンヌクレオシドビスホスフェート代謝過程(purine nucleoside bisphosphate metabolic process)、ヌクレオシドビスホスフェート代謝過程(nucleoside bisphosphate metabolic process)、コレステロール生合成過程(cholesterol biosynthetic process)、2次アルコール生合成過程(secondary alcohol biosynthetic process)に関与し得る(
図3を参照)。
【0082】
図3は、対照群(wild type)と、実験群CPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織で発現する様々な遺伝子のRNA塩基配列を解析した結果である。
図3のAは、発現程度が類似の集団同士で群集化して、ヒートマップ(heat map)で示したものである。
図3のBにおいて、上のグラフはRNA塩基配列解析結果であり、対照群に比べて実験群において2倍以上増加または減少した遺伝子の数を示し、下のグラフは、2倍以上増加または減少した遺伝子で統計的に有意な(p<0.05)遺伝子の数を示す。
図3のCは、このような遺伝子を対象に遺伝子オントロジーエンリッチメント(gene ontology enrichment)解析をしたとき、生物処理(biological process)分野の上位20項目(top 20 term)を示すものである。項目における下線部分は、脂肪関連処理(process)として上位20項目のうちの50%である10種類に該当する。
【0083】
対照群(wild type)と、実験群CPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織で発現する様々な遺伝子のRNA塩基配列解析の結果からSREBP1の発現を比較した結果、非アルコール性脂肪性肝疾患の発生に重要な役割をする転写因子であるSREBP1が、CPNE7遺伝子欠損マウスの肝臓において約2倍増加したことが確認できた。RNA塩基配列解析結果を検証するために、RNA塩基配列解析を依頼したサンプルで技術的反復実験(TR)を行った結果と、他の新たなサンプルで生物学的反復実験(BR)を行った結果を示す。両方の結果はいずれも対照群に比べて実験群においてSREBP1が増加したことが確認された(
図4のB)。
【0084】
In vitro実験でCPNE7とSREBP1遺伝子(SREBF1)との相関性を確認するために、肝細胞株のHepG2細胞にCPNE7遺伝子を形質注入してSREBP1の遺伝子発現様相を観察した結果、対照群に比べてCPNE7遺伝子を形質注入した群においてCPNE7遺伝子発現が増加したことを確認した(
図5のA)。また、CPNE7遺伝子が形質注入された群でSREBP1遺伝子(SREBF1)発現を確認したとき、対照群に比べて減少した結果を確認できた(
図5のB)。
【0085】
図6(wild type)は、対照群と、実験群のCPNE7遺伝子過発現(CPNE7 Tg)マウスまたはCPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織をヘマトキシリン・エオシン染色により分析した結果である。具体的に、
図6のAは、対照群である正常マウスの肝組織を染色した結果である。
図6のBは、実験群であるCPNE7遺伝子過発現マウスの肝組織を染色したもので、病的な側面は確認できなかった。
図6のCは、実験群であるCPNE7遺伝子欠損マウスの肝組織を染色したもので、対照群やCPNE7過発現マウスの肝組織とは異なり、部分的に細胞質が膨張した肝細胞(hepatocellular ballooning)と多量の炎症細胞が観察された。
【0086】
図7は、In vivo実験でCPNE7とSREBP1との相関性を、対照群と実験群マウスとの肝組織で分析した結果である。対照群とCPNE7遺伝子過発現マウスまたはCPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織からRNAを抽出して、CPNE7とSREBP1遺伝子(SREBF1)との発現を測定した。
図7のAは、CPNE7遺伝子発現を示すグラフであり、
図7のBは、SREBP1遺伝子(SREBF1)発現を示すグラフである。
図7から分かるように、CPNE7遺伝子過発現マウスの場合、SREBP1遺伝子(SREBF1)が、対照群またはCPNE7遺伝子欠損マウスの肝組織とは異なり、相対的に少なく発現されたことが観察された。
【0087】
以下では、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0088】
(実施例)
(実施例1:実験材料および方法)
(実施例1-1.実験動物の準備)
本実験において、対照群として使用されたオスC57BL/6Jマウスは、ドゥヨルバイオテック社(DOO YEOL BIOTECH、韓国)から購入し、実験群として使用されたCPNE7遺伝子欠損マウス(CPNE7 KO)は、標準遺伝子ターゲティング方式で生成した。CPNE7遺伝子エクソン5~7の塩基配列の代わりにEGFPコード領域(EGFR)およびネオマイシン耐性カセット(NeoR)が含まれているベクターをクローニングした。
【0089】
クローニングされたベクターは、129/SVEVマウスに由来のCMTI-1ES細胞株に電気穿孔(electroporation)法により形質転換した。電気穿孔の後、G418/ガンシクロビル(ganciclovir)耐性コロニーを選別して、代理母に移植して子孫を生成した。
【0090】
CPNE7過発現マウスは、上皮細胞に特異的に過発現するために、上皮細胞マーカー遺伝子ケラチン(Keratin)-14(K14)プロモーターを使用してベクターを製作し、次いでCPNE7遺伝子欠損マウスを作製する過程のような方法により作製した。
【0091】
実験に使用された全てのマウスは、12時間の昼夜明暗サイクルのケージで約20℃~25℃、約45%~55%の湿度調節下で飼育された。
【0092】
正常マウスとCPNE7遺伝子欠損または過発現マウスは、飼育1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後に灌流後、肝組織を採取して、組織学的解析または遺伝子解析を実施した。全ての実験は、ソウル大学(ソウル)施設内の動物管理使用委員会に承認された後、使用した。
【0093】
(実施例1-2.ヘマトキシリン・エオシン染色)
3ヶ月間飼育したマウスを犠牲にして肝組織を摘出し、4%パラホルムアルデヒド溶液に24時間固定した。その後、脱水してパラフィン包埋し、組織を5μm厚さに薄切(thin sectioning)した。キシレンで組織切片のパラフィンを除去し、含水後にヘマトキシリンとエオシンとで染色した。脱水および透明過程後に標本を作製した。
【0094】
(実施例1-3.透過電子顕微鏡分析)
6ヶ月飼育されたマウスを犠牲にして肝組織を摘出し、約1×1×1mm大きさにして4%パラホルムアルデヒド溶液に24時間の前固定をし、1%四酸化オスミウムで後固定を行う。脱水過程を経た後、spurr樹脂で包埋して薄切した後、透過電子顕微鏡で観察した。
【0095】
(実施例1-4.RNA抽出およびRNA塩基配列解析)
1ヶ月飼育されたマウスを犠牲にして摘出した肝組織から、試薬(TRI Reagent(登録商標)、TR118、MRC、USA)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAを約1μgに定量してマクロジェン社にRNA塩基配列解析を依頼した。
【0096】
(実施例1-5.細胞株培養および形質注入)
HepG2細胞株(KCLB88065)は、韓国細胞株銀行から購入して使用した。HepG2細胞株は、5%のCO2を含む37℃の条件で10%の熱が不活性化された牛の血清が添加されたMEM培地で培養した。形質注入は、全長ヒトCPNE7をオリジン(OriGene社、USA)から購入した、エンコードする発現ベクター、緑色蛍光タンパク質(GFP)-CPNE7(NM_153636)、およびDDK(フラグ)タグされたCPNE7(NM_153636)を使用して行った。
【0097】
(実施例1-6.リアルタイム遺伝子増幅分析)
試薬(TRI Reagent(登録商標)、TR118、MRC、USA)を用いて肝組織とHepG2細胞株(KCLB 88065、韓国細胞株銀行)から総RNAを抽出した。その後、上記RNAからMaxime Rt premix kit(25081、iNtRON)を使用してcDNAを合成した。SYBR(登録商標)Green PCR Master Mix(タカラバイオ社)を使用したABI PRISM 7500配列検出システム(Applied Biosystems、USA)にてマニュアルに基づいてリアルタイムPCRを行った。
【0098】
それぞれ概ね95℃にて10分後に、95℃にて15秒、60℃にて1分間、40サイクルの条件でPCRを行った。全ての反応は3回繰り返しで行われ、PCR生成物レベルはハウスキーピング遺伝子GAPDHを基準にノーマライズした。遺伝子発現における相対的変化は、比較閾値サイクル(CT)法により計算した。使用したプライマー(primer)は次のとおりである。
【0099】
【0100】
(実施例2:実験結果)
(実施例2-1.CPNE7遺伝子欠損が肝組織における脂肪小粒(lipid droplet)蓄積に及ぼす影響分析)
一般対照群である正常マウスと、CPNE7遺伝子欠損マウス(CPNE7 KO)との肝組織から脂肪小粒蓄積を比較するために、3ヶ月齢のマウスの肝組織をヘマトキシリン・エオシン染色により観察した(
図1)。
【0101】
対照群(
図1のA-A’)と比較して、CPNE7遺伝子欠損マウスにおいて肝組織内脂肪小粒(lipid droplet)の蓄積が増加している様相が観察された(
図1のB-B’)。
【0102】
図2は、正常マウス(A-A’)とCPNE7遺伝子欠損マウス(B-B’)との肝組織の形態学的特性と脂肪小粒蓄積とを透過電子顕微鏡により分析した結果である。6ヶ月齢のマウスの肝組織を摘出して、透過電子顕微鏡分析のための試料を作製した。透過電子顕微鏡分析の結果、正常マウスに比べてCPNE7遺伝子欠損マウスの肝細胞は、細胞質が膨張して(hepatocellular ballooning)細胞質に空き領域が多く観察されるとともに、脂肪小粒も観察された。
【0103】
(実施例2-2.正常マウスとCPNE7遺伝子欠損(CPNE7 KO)マウスとの肝組織において脂肪形成に関与する遺伝子発現の比較分析)
図1~
図2の組織学的分析における肝細胞の膨張と脂肪小粒蓄積との原因を分析するために、1カ月齢の正常マウスとCPNE7遺伝子欠損マウスとの肝組織からRNAを抽出して、RNA塩基配列解析を行った(
図3)。塩基配列解析の結果、グラフにおけるWTを対照群、CPNE7 KOを実験群として、2倍以上の差が出る遺伝子の数を分析したとき、CPNE7遺伝子欠損(CPNE7 KO)マウスの肝組織において、増加した遺伝子は178個、減少した遺伝子は171個となった(
図3B)。この中で、統計的に有意な遺伝子の数は、増加した遺伝子が135個、減少した遺伝子が81個と確認された。このように、対照群と実験群との間で有意に発現差がある遺伝子を対象に、遺伝子オントロジーエンリッチメント解析を行い、生物処理分析において上位20項目を見ると、大部分が脂肪関連プロセスとして観察された(
図3C)。したがって、
図1、2および3の結果から、CPNE7が脂肪肝疾患と関連性があることを確認できた。
【0104】
(実施例2-3.CPNE7遺伝子が非アルコール性脂肪肝の発生を誘発する因子SREBP1の発現に及ぼす影響)
対照群と実験群との間で有意に差があった脂肪関連遺伝子のうち、非アルコール性脂肪肝の発生に重要な転写因子として知られているSREBF1(Sterol regulatory element binding transcription factor 1)遺伝子が含まれていることを確認した。SREBF1によってコードされるタンパク質であるSREBP1(Sterol regulatory element binding protein 1)は、脂肪合成関連遺伝子の転写活性を増加させる役割をする脂質恒常性調節因子である。先行研究において、マウスにSREBP1を肝臓に過剰発現させると脂肪肝になり、逆に誘導された脂肪肝マウスモデルにSREBP1を欠損させると脂肪肝が改善されるということが知られている。
図4においてRNA塩基配列解析の結果、対照群に比べてCPNE7 KO肝組織においてSREBF1(SREBP1)が増加していることを確認しており、このような結果は反復実験により検証した。
【0105】
(実施例2-4.肝細胞株HepG2においてCPNE7の過発現がSREBP1発現に及ぼす影響分析)
肝細胞株においてCPNE7の過発現がSREBF1(SREBP1)遺伝子発現に及ぼす影響を確認するために、肝細胞株HepG2を用いてCPNE7遺伝子を過発現した後、SREBF1(SREBP1)遺伝子の発現を確認した。対照群に比べてCPNE7遺伝子を過発現した群においてSREBF1(SREBP1)遺伝子発現が著しく減少したことが観察された(
図5)。この結果は、CPNE7がSREBF1(SREBP1)遺伝子発現調節によって非アルコール性脂肪肝を予防または治療し得る治療剤としての可能性を示している。
【0106】
(実施例2-5.CPNE7過発現マウス(CPNE7 Tg)マウスの肝組織の組織学的分析)
図6において、CPNE7過発現(CPNE7 Tg)マウス、正常マウスまたはCPNE7遺伝子欠損(CPNE7 KO)マウスの肝組織を、ヘマトキシリン・エオシン染色により分析した。正常マウスに比べて、CPNE7遺伝子欠損(CPNE7 KO)マウスの肝組織では、細胞質が膨張した肝細胞(hepatocellular ballooning)と多量の炎症細胞が確認できた。しかし、CPNE7過発現(CPNE7 Tg)マウスの肝組織では、脂肪小粒および細胞質が膨張した肝細胞のような脂肪肝病変が観察されなかった。
【0107】
(実施例2-6.CPNE7過発現(CPNE7 Tg)マウスの肝組織におけるSREBP1の遺伝子発現分析)
正常マウス(WT)、CPNE7遺伝子欠損(CP7 KO)マウス、CPNE7過発現(CP7 Tg)マウスの肝組織からRNAを抽出して、CPNE7とSREBF1(SREBP1)との遺伝子発現を確認した。CPNE7遺伝子発現は、正常マウスの肝組織に比べて、CPNE7遺伝子欠損(CPNE7 KO)マウスの肝組織で減少しており、CPNE7過発現(CPNE7 Tg)マウスの肝組織では増加した(
図7のA)。SREBF1(SREBP1)遺伝子発現は、CPNE7遺伝子欠損(CPNE7 KO)マウスの肝組織では増加しているが、CPNE7過発現(CPNE7 Tg)マウスの肝組織では減少する様相を確認した(
図7のB)。
【0108】
以上の結果をまとめてみると、CPNE7が、SREBF1(SREBP1)遺伝子発現調節によって非アルコール性脂肪性肝疾患を予防または治療し得ることが分かる。
【0109】
本明細書および図面には本発明の好ましい実施例について開示しており、特定の用語が使用されてはいるものの、これは単に本発明の技術内容を分かりやすく説明して発明の理解を助けるための一般的な意味で使用されたのであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示された実施例の他にも、本発明の技術的思想に基づいた他の変形例が実施可能であるということは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に自明のことである。
【配列表】