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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080317
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】遮音ブース
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20220520BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20220520BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
E04H1/12 302Z
E04H1/12 A
E04B1/82 Z
G10K11/16 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024876
(22)【出願日】2022-02-21
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】306007945
【氏名又は名称】ドリックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 淳
【テーマコード(参考)】
2E001
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF02
2E001FA03
2E001FA14
5D061CC13
5D061CC17
(57)【要約】
【課題】より遮音性を高めた遮音ブースを提供する。
【解決手段】遮音ブース20は、それぞれ床面に垂直に立設され、側辺で互いに連結された複数枚の矩形吸音パーティションにより構成され、平面形状が長方形の柱状空間を、該平面形状の中心の周囲230°以上で囲う本体部11と、前記本体部11の上部を閉鎖する吸音パーティション製の天井部21とを備える。天井部21は、本体部11の開放されている側(前方)において高く且つ開放されており、それに対向する側(後方)において低く且つ閉鎖されており、両側方において閉鎖され、上部が閉鎖されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ床面に垂直に立設され、側辺で互いに連結された複数枚の矩形吸音パーティションにより構成され、平面形状が多角形の柱状空間を、該平面形状の中心の周囲230°以上で囲う本体部と、
前記本体部の上部を閉鎖する吸音パーティション製の天井部と
を備えることを特徴とする遮音ブース。
【請求項2】
それぞれ床面に垂直に立設され、側辺で互いに連結された複数枚の矩形吸音パーティションにより構成され、平面形状が多角形の柱状空間を、該平面形状の中心の周囲230°以上で囲う本体部の上部を閉鎖する吸音パーティション製の遮音ブース用取り付け天井部であって、
前記本体部の平面形状が正方形または長方形であり、3方が前記吸音パーティションで囲まれており、前記本体部の開放されている側において高く且つ開放されており、それに対向する側において低く且つ吸音パーティション製の背板により閉鎖されており、両側方において吸音パーティション製の側板により閉鎖され、上部が吸音パーティション製の天板により閉鎖されている、遮音ブース用取り付け天井部。
【請求項3】
前記背板、前記側板及び前記天板が、それぞれの辺に固定された、表面に面ファスナーが巻き付けられた円柱状の連結具により連結されている請求項2に記載の遮音ブース用取り付け天井部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に大きな部屋の中に設置し、外部からの音の侵入を防ぎ、内部の音を外部に放出させない遮音ブースに関する。また、既存の上部が開放された遮音ブースの上部を閉鎖するために取り付ける、取り付け天井部に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭やオフィス等において、騒音対策として、パネル化された吸音材(いわゆる吸音パーティション)を壁や床に配設することがある。このような吸音パーティションを壁や床などではなく、室内において組み立てて作業者一人又は数人が作業するためのスペースを囲うブースを形成することもしばしば行われている(例えば、非特許文献1参照)。このような、吸音パーティションで形成されたブース(遮音ブース)は、周囲を吸音パーティションで完全に囲うことにより効果的に遮音を行うことができ、一人又は数人の作業者が大きな部屋の中で外部からの騒音に煩わされることなく静かに作業するに適している。また逆に、内部で大きな音を立てる作業を行った場合に、外部に迷惑を掛けることも少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1664143号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Officia オフィシア」,[online],株式会社ドリックス,[令和2年11月10日検索],インターネット<URL:https://www.dorix.co.jp/officeia/>
【非特許文献2】「残響室法吸音率試験」,[online],一般財団法人日本建築総合試験所,[令和2年11月10日検索],インターネット<URL:https://www.gbrc.or.jp/assets/test_series/documents/ac_05.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の遮音ブースは、周囲を吸音パーティションで囲ったとしても、上部(天井)は空いていたため、外部の音が該遮音ブースが設置されている部屋の天井に反射し、上部から遮音ブース内に侵入してくることがあった。また、内部で発生した音についても同様に、上部から遮音ブース外に出て、天井で反射して遮音ブース設置室内の他の場所に及ぶということがあった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、より遮音性を高めた遮音ブースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る遮音ブースは、
それぞれ床面に垂直に立設され、側辺で互いに連結された複数枚の矩形吸音パーティションにより構成され、平面形状が多角形の柱状空間を、該平面形状の中心の周囲230°(これを閉鎖角と呼ぶ)以上で囲う本体部と、
前記本体部の上部を閉鎖する吸音パーティション製の天井部と
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る遮音ブースは、周囲の230°以上が吸音パーティションで囲われ、更に、上部が同じく吸音パーティション製の天井部により閉鎖されているため、特に上部からの音の侵入が防止される。また、内部で発生した音が上部から出て周囲に発散することが防止される。
【0009】
本発明に係る遮音ブースは、天井のある部屋の中において使用するに適している。この場合、遮音ブースの外部の音がその部屋の天井で反射して遮音ブース内に侵入することを効果的に防止することができる。また逆に、遮音ブース内で発生した音が上部から抜けてその部屋の天井で反射し、その部屋の中の他の部分に至ることを防止することができる。
【0010】
もちろん、本発明に係る遮音ブースは、天井の無い(或いは、非常に高いところに天井がある)屋内で使用することも可能であるし、屋外(野外)で使用することも可能である。それらの場合でも、上部からの音の侵入が効果的に防止され、内部では静かな環境が維持される。
【0011】
上記遮音ブースの本体部の柱状空間は、四角柱状、三角柱状、五角柱状、星形柱状等、様々な形状のものであってよい。図11(a)に示すように、柱状空間が、平面形状が正方形の四角柱状である場合、周囲の3辺が吸音パーティションで囲われていればよい(この場合、閉鎖角は270°である)。図11(b)に示すように、平面形状が長辺:短辺=2:1の四角形の四角柱状である場合、一方の長辺が開いているブースであってよい(この場合、閉鎖角は233°である)。図11(c)に示すように、平面形状が正三角形の三角柱状である場合、1辺が開いているブースであってよい(この場合、閉鎖角は240°である)。
【0012】
天井の無い遮音ブース(本体部)が既存である場合、それに合わせてその上部を閉鎖する天井部のみを提供するようにしてもよい。すなわち、本発明は、それぞれ床面に垂直に立設され、側辺で互いに連結された複数枚の矩形吸音パーティションにより構成され、平面形状が多角形の柱状空間を、該平面形状の中心の周囲230°以上で囲う本体部の上部を閉鎖する吸音パーティション製の取り付け天井部としても実現される。
【0013】
本発明に係る遮音ブースの取り付け天井部は、既存の天井の無い遮音ブース(本体部)に取り付けることにより、その遮音性をより高めることができる。
【0014】
この取り付け天井部の一つの形態として、既存の遮音ブースの平面形状が正方形または長方形であり、3方(3辺)が吸音パーティションで囲まれている本体部に取り付けるものがある。この取り付け天井部は、本体部の開放されている側(辺)において高く且つ同様に開放されており、それに対向する側(辺)において低く且つ閉鎖されており、両側方(それらに挟まれる2辺)において閉鎖され、天井が閉鎖されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る遮音ブースは、周囲の230°以上が吸音パーティションで囲われ、更に、上部が同じく吸音パーティション製の天井部により閉鎖されているため、特に上部からの音の侵入が防止される。また、内部で発生した音が上部から出て周囲に発散することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態である、平面形状が正方形となるように3枚の同高・同幅の吸音パーティションで構成した本体部の斜視図(a)、及び、それに天井部を取り付けた遮音ブースの斜視図(b)。
図2】本発明の第2の実施形態である、図1(a)と同じ本体部の上部に、内部空間を少し高くする天井部を配置した遮音ブースの斜視図(b)、及び、その本体部の斜視図(a)。
図3】背面側の吸音パーティションの左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)及び平面図(d)。
図4図3の吸音パーティションのA-A'断面図。
図5】第2実施形態の遮音ブースの取り付け天井部の左側面図。
図6】前記取り付け天井部の側板の平面図、正面図及び左右側面図。
図7】前記取り付け天井部の背板の平面図、正面図及び右側面図。
図8】前記取り付け天井部の天板の背面図、平面図及び右側面図。
図9】前記取り付け天井部を本体部に固定するための結合金具の正面図(a)、側面図(b)及び斜視図(c)。
図10】吸音パーティションの吸音率を示すグラフ。
図11】各種平面形状を有する本体部の閉鎖角を示す平面図であり、(a)は正方形、(b)は長辺:短辺=2:1の長方形、(c)は正三角形のもの。
図12】本発明の第2の実施形態の遮音ブースに扉を取り付けた形態の遮音ブースの斜視図(b)、及び、その本体部の斜視図(a)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の実施形態である遮音ブースを図1(a)、(b)により説明する。図1(a)は、平面形状が正方形となるように3枚の同高・同幅のキャスター付き吸音パーティション12、13、14で構成した本体部11の斜視図である。
【0018】
3枚の吸音パーティションのうち、背面側のもの13は図3に示すように、2枚の同形の布張り単位板を貼り合わせて構成され、両側辺に円柱状の連結具15、16を固定したものである。連結具15、16は、心棒の表面に雄及び雌の面ファスナーを巻き付けて構成されたものであり、その巻き端を1枚の吸音パーティションを構成する表裏2枚の布張り単位板の間に挟み込むことにより吸音パーティション13に固定されているものである。連結具15、16の部分を拡大した吸音パーティション13の断面を図4に示す。この連結具15、16は特許文献1に記載のものである。この連結具15、16で2枚の吸音パーティションを連結することにより、それら2枚の吸音パーティションを任意の角度で連結することができる。すなわち、1種類の吸音パーティションのみで前述のような四角柱状、三角柱状、五角柱状、星形柱状等、様々な平面形状の遮音ブースを構成することができる。
【0019】
左右側面側の吸音パーティション12、14もその基本的構成は背面側の吸音パーティション13と同じであり、ただ、これらは一方の側辺のみに上記連結具が固定されている。これらの吸音パーティション12、13、14の寸法は、縦(高さ)が210cmまたは180cm、横(幅)が60cm、80cm、または120cm、厚さが3cmである。なお、横の寸法が異なるものを組み合わせ、平面形状が長方形の本体部としてもよい。
【0020】
この吸音パーティション12、13、14(図10では「30mm officia partition」と表記)の吸音効果を図10に示す。これは、福井県工業技術センターにおいてJIS A1409(残響室法吸音率の測定方法)に従って測定した(非特許文献2参照)データのグラフであり、200Hz以上の音域において高い吸音率を示している。
【0021】
図1(b)は、図1(a)の本体部11に、正方形(または、本体部の平面形状に合わせた長方形)の平板状の吸音パーティションから成る天井部17を固定したものである。天井部17の固定は、本体部11の各吸音パーティション12、13、14の上端面と、天井部17のそれに対応する吸音パーティションの周辺領域に面ファスナーを固定し、両面ファスナーで接合することにより行うことができる。これにより、本第1実施形態の遮音ブース10が完成する。
【0022】
本発明の第2の実施形態である遮音ブースを図2(a)、(b)により説明する。本実施形態の遮音ブース20は、図1(a)と同じ本体部11(図2(a))の上部に、内部空間を少し高くする天井部21を配置したものである。天井部21は前方(本体部11の開口側)が本体部11と同様に開口しており、後方(本体部11のパーティション13側)が前方よりも低く、且つ背板23により閉鎖され、両側方にはその前後の高さの差に対応した台形の側板22、24が設けられ、上部には天板27が設けられている。これら側板22、24、背板23及び天板27はいずれも本体部11の3枚の吸音パーティションと同様に2枚の同形の布張り単位板を貼り合わせて構成された吸音パーティションから成る。天井部21の側面図を図5に、その側板22(又は側板24)の正面図、平面図及び左右側面図を図6に、背板23の正面図、平面図及び右側面図を図7に、天板27の正面図、平面図及び右側面図を図8にそれぞれ示す。それらはいずれも前記連結具15、16と同様に、表面に面ファスナーが巻き付けられた円柱状の連結具28により連結されている。背板23の高さ(=側板22、24の短い方の辺の高さ)は、幅が60cmの場合は20cm、幅が90cmの場合は25cm程度とし、前方の開口の高さ(=側板22、24の長い方の辺の高さ)はそれらよりも5cm程度高いものとしておくことができる。
【0023】
この遮音ブース20の天井部21は、天板27が前方に向けて高く、後方に向けて低くなるように傾斜しているため(スローピングルーフ)、天井を水平とした場合と比較して、遮音ブース20内の作業者に対する圧迫感が少なく、遮音ブース20への出入りが容易となっている。
【0024】
この遮音ブース20の天井部21は、本体部11に固定した、一体型の遮音ブース20として製造・販売してもよいし、天井部21のみを既存の遮音ブース(本体部11)に後付けするためのものとして単独で流通、販売してもよい。
【0025】
天井部21のみを既存の遮音ブース(本体部11)に後付けする場合、図9に示すような、断面H形の結合金具29を用いることができる。これはネジが不要であるため、本体部11と天井部21を簡単に固定することができる。
【0026】
こうして、既存の天井開放型の遮音ブース(本体部11)に後付けでスローピングルーフの天井部21を取り付けることにより、遮音ブースの個室感がより高まるとともに、上部からの音の侵入が防止される。特に室内で使用する場合、部屋の天井からの反射音が有効に防止され、遮音ブース20内での静かな作業環境が確保される。
【0027】
上記2つの実施形態の遮音ブース10、20はいずれも前面を開放したものであったが、これでも3方及び上部が吸音パーティションで囲われているため、比較的良好な遮音効果を得ることができる。しかし、更に遮音効果を高めるために、図12に示すように、前面に開閉式の扉25を設けるようにしてもよい。この扉25は、背面の吸音パーティションと同じ形状の吸音パーティションで構成することができ、左または右側面の吸音パーティション12、14に前記連結具15、16を用いて連結することができる。この連結具15、16を開閉のヒンジとして利用することにより、扉25は遮音ブース10、20の前面の開口を容易に開閉することができ、且つ、扉25を任意の角度で開いた状態にしておくことができる。
【符号の説明】
【0028】
10、20…遮音ブース
11…本体部
12、13、14…吸音パーティション
15、16…連結具
17…天井部
20…遮音ブース
21…天井部
22、24…側板
23…背板
25…扉
27…天板
28…連結具
29…結合金具

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12