(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080335
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】逆走車誘導道路構造
(51)【国際特許分類】
E01F 9/608 20160101AFI20220523BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220523BHJP
E01F 9/623 20160101ALI20220523BHJP
E01F 15/04 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
E01F9/608
G08G1/16 A
E01F9/623
E01F15/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191320
(22)【出願日】2020-11-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】502256778
【氏名又は名称】宇都宮測量株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達男
【テーマコード(参考)】
2D064
2D101
5H181
【Fターム(参考)】
2D064AA12
2D064AA22
2D064BA01
2D101CA04
2D101CA11
2D101GA11
5H181AA01
5H181BB04
5H181FF24
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL06
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】高速道路や一方通行道路等において、物理的並びに体感的な手段を用いて逆走車を安全且つ確実に誘導して、正規走行車との衝突事故を未然に防ぐ逆走車誘導道路構造を提供する。
【解決手段】逆走車21を安全に誘導して事故を未然に防ぐための逆走車誘導道路構造10であって、正規走行車20の進行方向に対し走行車線22より右側箇所に誘導車線23が形成されて成り、該誘導車線23は、前記走行車線22から進行方向と逆方向に分岐すると共に、前記走行車線22に沿って車両が走行可能な所定の走行距離を有し、末端が突き当り24に形成されて成る手段を採る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆走車を安全に誘導して事故を未然に防ぐための逆走車誘導道路構造であって、
正規走行車の進行方向に対し走行車線より右側箇所に誘導車線が形成されて成り、
該誘導車線は、前記走行車線から進行方向と逆方向に分岐すると共に、前記走行車線に沿って車両が走行可能な所定の走行距離を有し、末端が突き当りに形成されて成ることを特徴とする逆走車誘導道路構造。
【請求項2】
前記走行車線と前記誘導車線との境界線上に、車線用道路標示が付されると共に末端から所定距離の区間に境界ポール若しくはガードレールが付設されて成ることを特徴とする請求項1記載の逆走車誘導道路構造。
【請求項3】
前記誘導車線の末端に、衝撃緩和手段が備えられて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の逆走車誘導道路構造。
【請求項4】
前記誘導車線における末端から所定距離の区間に、減速手段が形成されて成ることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか記載の逆走車誘導道路構造。
【請求項5】
前記誘導車線における任意の箇所に、運転者へ逆走状態であることを認識させる警告手段が備えられて成ることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか記載の逆走車誘導道路構造。
【請求項6】
前記誘導車線における末端近傍に、インターホンなど外部と通信可能な通信手段が設置されて成ることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか記載の逆走車誘導道路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路や一方通行道路等における逆走車を誘導し得る道路構造に関し、詳しくは、物理的並びに体感的な手段を用いて逆走車を安全且つ確実に誘導して衝突事故を未然に防ぐための道路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や一方通行道路等において、入口と出口を勘違いしたり、所望出口を通り過ぎたためにUターンしたりなどして、正規の走行方向とは逆行する方向で道路に進入し、そのまま逆走する自動車が度々見受けられる。かかる逆走車の存在は、正しく走行車線を走行している自動車との衝突事故を引き起こす危険があり、実際にその様な事故が多数発生している。その様な逆走車への対策として、逆走する自動車に逆走している状態を早期に認知させる警告手段や、逆走している自動車の存在を正規に走行している運転者に確実に知らせることで、衝突事故を未然に防ぐ対策が必要とされている。また、認知させるだけでなく、物理的に車両の走行を停止させる道路構造が求められている。
【0003】
逆走状態を認知させる警告手段として、例えば高速道路の出口で逆走する自動車をセンサーで感知し、通信機で警察に通報し、扉式バーを開閉し、逆走する自動車の車上のランプを点灯させる「高速道路の出口での自動車の逆走を感知し、ランプを点灯させる通信システム」(特許文献1)が提案され、公知技術となっている。具体的には、高速道路の出口で逆走する自動車を感知するセンサーと、センサーで逆走する自動車を感知した際に、警察に通報する通信機と、センサーで逆走する自動車を感知した際に、開閉動作を行う扉式バーと、逆走車の車上に設けられた通信機能付きランプであって、センサーによって逆走していることを感知した際に、点灯する通信機能付きランプと、を備えて形成されている技術提案である。
【0004】
しかしながら、かかる「高速道路の出口での自動車の逆走を感知し、ランプを点灯させる通信システム」の提案によれば、逆走車と正規走行車との走行する道路が同一道路であるため、逆走車を探知したセンサーによって扉式バーが作動した場合、扉式バーが正規走行車の走行も停止させてしまうことから、出入口の混乱が生じる可能性があると共に、警告ランプの点灯によって逆走する運転者に視覚的に警告する手段は、逆走する運転者が気付かない可能性があるもので、逆走車を安全に且つ確実に誘導して衝突事故を未然に防ぐことができる技術提案ではなかった。
【0005】
また、逆走ではないと思い込んでいる逆走車のドライバーに対して、逆走である事実を気付かせることができる「逆走防止システム、逆行防止システム及び逆走警告装置」(特許文献2)が提案され、公知技術となっている。具体的には、高規格幹線道路及び/又は都市高速道路の出口通路に設置する逆走車検知装置と、逆走車検知装置が逆走車を検知した場合に前記出口通路に沿って所定長にわたって逆走車のドライバーが視認継続可能に配置される強力ライトと、から形成されている技術提案である。
【0006】
しかしながら、かかる「逆走防止システム、逆行防止システム及び逆走警告装置」の提案によれば、逆走ではないと思い込んでいる逆走車のドライバーに対して、視覚的な照明手段によって逆走していることを認知させようとしているため、逆走車のドライバーが逆走であることを認識せずに見過ごす可能性があり、逆走車を安全に且つ確実に誘導して衝突事故を未然に防ぐことができる技術提案ではなかった。
【0007】
さらに、車両の運転者に事前に逆走を気づかせることで、それぞれの車両が安全に走行することができる「逆走防止装置」(特許文献3)が提案され、公知技術となっている。具体的には、駐車場から一方通行路へ退出する車両に対し、退出方向を案内する標識が退出方向に沿って設置され、その標識には退出方向へ向いた矢印が付与されていると共に、連続的または断続的に発光する発光部が設けられている技術提案である。
【0008】
しかしながら、かかる「逆走防止装置」の提案によれば、逆走ではないと思い込んでいる逆走車のドライバーに対して、視覚的な標識手段によって逆走していることを認知させようとしているため、逆走車のドライバーが逆走であることを認識せずに見過ごす可能性があり、逆走車を安全に且つ確実に誘導して衝突事故を未然に防ぐことができる技術提案ではなかった。
【0009】
またさらに、車両に逆走を警告するための専用装置を搭載することなく、逆走した車両に対して、漏れなく警告を与えることができる「逆走防止道路構造及び逆走防止道路装置」(特許文献4)が提案され、公知技術となっている。具体的には、一方通行道路の車線部分に設けられたスロープ形状の逆走防止道路構造であって、一方通行道路の幅方向に沿って道路面から垂直に突設した段差部と、段差部から、一方通行道路の逆走方向に延設され且つ該逆走方向に向かって徐々に道路面からの高さ寸法が減少して該道路面に到達する斜面部とを備えている技術提案である。
【0010】
しかしながら、かかる「逆走防止道路構造及び逆走防止道路装置」の提案によれば、ドライバーの注意の散漫度(居眠り、うっかり、ぼんやり、会話に夢中等) からくる逆走に対し、段差による衝撃で逆走していることを認知させるものであって、垂直に突設した段差部により、正規の走行車両に対しても少なからず逆走車と同様の衝撃を付与することとなってしまい、その衝撃について逆走か否かを区別し難く、結果として逆走路と認識しない可能性があるため、逆走車を安全に且つ確実に誘導して衝突事故を未然に防ぐことができる技術提案ではなかった。
【0011】
本出願人は、以上の様な高速道路や一方通行道路等における逆走を防止するための道路構造や装置に着目し、逆走車を正規走行車線から外れる様に誘導することで正規走行車との衝突事故を未然に防ぐことができないものかという着想の下、物理的並びに体感的な手段を用いて逆走車を安全且つ確実に誘導し得る道路構造を開発し、本発明にかかる「逆走車誘導道路構造」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実用新案登録第3222401号公報
【特許文献2】特開2017-107559号公報
【特許文献3】特開2011-13946号公報
【特許文献4】実用新案登録第3160999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、高速道路や一方通行道路等において、物理的並びに体感的な手段を用いて逆走車を安全且つ確実に誘導して衝突事故を未然に防ぐ逆走車誘導道路構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、逆走車を安全に誘導して事故を未然に防ぐための逆走車誘導道路構造であって、正規走行車の進行方向に対し走行車線より右側箇所に誘導車線が形成されて成り、該誘導車線は、前記走行車線から進行方向と逆方向に分岐すると共に、前記走行車線に沿って車両が走行可能な所定の走行距離を有し、末端が突き当りに形成されて成る手段を採る。
【0015】
また、本発明は、前記走行車線と前記誘導車線との境界線上に、車線用道路標示が付されると共に末端から所定距離の区間に境界ポール若しくはガードレールが付設されて成る手段を採る。
【0016】
さらに、本発明は、前記誘導車線の末端に、衝撃緩和手段が備えられて成る手段を採る。
【0017】
またさらに、本発明は、前記誘導車線における末端から所定距離の区間に、減速手段が形成されて成る手段を採る。
【0018】
さらにまた、本発明は、前記誘導車線における任意の箇所に、運転者へ逆走状態であることを認識させる警告手段が備えられて成る手段を採る。
【0019】
そしてまた、本発明は、前記誘導車線における末端近傍に、インターホンなど外部と通信可能な通信手段が設置されて成る手段を採る。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる逆走車誘導道路構造によれば、逆走車が逆走に気付くまでの間走行可能な所定の走行距離を有する誘導車線を、正規の走行車線から分岐し且つ該走行車線に沿って形成する態様であるため、逆走が発生しやすい箇所として挙げられるインターチェンジやサービスエリア、パーキングエリアの出入走行路だけでなく、高速道路・有料道路等の走行車線や中央分離帯が設けられるような一般道路、そして一方通行道路など、あらゆる走行路における道路構造として採用することが可能である、といった優れた効果を奏する。
【0021】
また、左側走行を採用している日本では、逆走車が、逆走方向における一番左側車線を走行する傾向がある。その点、本発明にかかる逆走車誘導道路構造によれば、正規走行車の進行方向に対し走行車線より右側箇所に誘導車線が形成されていることによって、逆走車にとっては当該誘導車線が一番左側車線となり、故に逆走車は体感的に誘導道路へと自然に誘導されることとなって、正規走行車線から外れて逆走車と正規走行車との衝突事故を未然に防ぐことができる、といった優れた効果を奏する。
【0022】
さらに、本発明にかかる逆走車誘導道路構造によれば、走行車線と誘導車線との境界線上に車線用道路標示が付されると共に、末端から所定距離の区間に境界ポール若しくはガードレールが付設されてことによって、逆走車が無理に走行車線側へ戻るのを阻止することができる、といった優れた効果を奏する。
【0023】
またさらに、本発明にかかる逆走車誘導道路構造によれば、万一の衝突に備えて誘導車線の末端に衝撃緩和手段が備えられていることによって、逆走車が誘導車線を高速で走行した場合であっても、袋小路の壁による衝突事故を最小限に抑制することができる、といった優れた効果を奏する。
【0024】
さらにまた、本発明にかかる逆走車誘導道路構造によれば、誘導車線における末端から所定距離の区間に、任意の上り傾斜を有する坂道や、連続する凸凹路面、砂利道、急カーブなどの減速手段が形成されていることによって、逆走している運転者に物理的な認知手段を付与することが可能であって、安全且つ確実に逆走していることを認知させることができる、といった優れた効果を奏する。
【0025】
そしてまた、本発明にかかる逆走車誘導道路構造によれば、誘導車線における任意の箇所に、運転者へ逆走状態であることを認識させる警告看板、警告灯、道路標識・標示、音声警告機等の警告手段が備えられていることによって、逆走している運転者に視覚的並びに聴覚的な警告を与え、安全且つ確実に逆走していることを認知させることができる、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明にかかる逆走車誘導道路構造の実施形態を示す説明図である。
【
図2】本発明にかかる逆走車誘導道路構造の別の実施形態を示す説明図である。
【
図3】本発明にかかる逆走車誘導道路構造の別の実施形態を示す説明図である。
【
図4】本発明にかかる逆走車誘導道路構造の別の実施形態を示す説明図である。
【
図5】本発明にかかる逆走車誘導道路構造の別の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明にかかる逆走車誘導道路構造10は、高速道路や一方通行道路等において、物理的並びに体感的な手段を用いて逆走車21を正規の走行車線22とは別の誘導車線23に安全に且つ確実に誘導することで、正規走行車20との衝突事故を未然に防ぐ手段を採用したことを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる逆走車誘導道路構造10の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0028】
尚、本発明にかかる逆走車誘導道路構造10は、以下に述べる実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる構造や構成要素等の範囲内で、適宜変更することができる。
【0029】
図1乃至
図5は、本発明にかかる逆走車誘導道路構造10の実施形態を示す説明図であり、
図1(a)はサービスエリアS.A並びにパーキングエリアP.Aでの実施例、
図1(b)は中央分離帯25を備える走行道路11での実施例を示す。
本発明にかかる逆走車誘導道路構造10は、正規走行車20の進行方向に対し走行車線22より右側箇所に誘導車線23を併設したことを基本の構成とするものである。
【0030】
誘導車線23は、走行車線22の右側箇所において進行方向と逆方向に分岐すると共に、走行車線22に沿って車両が走行可能な所定の走行距離を有して形成されている。該誘導車線23の末端は、突き当り24に形成されており、該誘導車線23を走行してきた逆走車21が、当該突き当り24によって停止しその先へ進行できない様になっている。かかる誘導車線23の構造は、本発明の主要な構成要素であって、左側走行を採用している日本において、逆走車21を運転する運転者が、本能的に逆走方向における一番左側車線を走行する傾向があること、換言すれば正規の進行方向に対して走行車線22より右側方向に進行する習性があることに鑑み、上記構造的特徴を採用したものである。
【0031】
突き当り24は、誘導車線23の末端・最奥部において、逆走車21がそれ以上逆走状態で進行し得ない様、行き止まり状に形成されるもので、Uターンが可能な袋小路状に形成することもできる。かかる誘導車線23の末端の構造について、衝撃緩和手段27や通信手段32を備える態様も考え得るが、この衝撃緩和手段27並びに通信手段32については後述する。
【0032】
該誘導車線23は、走行車線22の右側箇所に存するスペースを利用して形成される。例えば、
図1(a)に示す様なサービスエリアS.A並びにパーキングエリアP.Aの進入路に形成される場合は、走行道路11と該走行道路11から分岐した進入路との間に存するスペースを利用して形成され、逆走車21のスピードもさほど高速ではないことから、誘導車線23の全長は50乃至200m程度に形成されれば足りる。また、
図1(b)に示す様な走行道路11に誘導車線23が形成される場合は、走行車線22と反対側車線22Aとの間の中央分離帯25などが存するスペースに形成されることとなり、かかる走行車線22と反対側車線との間に少なくとも車両一台分が走行可能なスペースを要する。このとき、逆走車21のスピードが高速であることも想定されることから、誘導車線23の全長は200乃至500m程度に形成されることが好ましい。
【0033】
走行車線22と誘導車線23との境界線上には、車線用道路標示26が付されている。かかる車線用道路標示26は、走行車線22と誘導車線23との境界を示すための指示標示であって、実線道路標示26aや破線道路標示26bから成り、実線道路標示26aについては白色の実線や黄色の実線など、標示態様について特に限定するものではなく、種々の実線道路標示26aを適宜採用し得る。
【0034】
かかる車線用道路標示26について、走行車線22と誘導車線23との分岐箇所の一定区間については、通常の合流地点や分岐地点に見られる様に、白色の破線で標示することが望ましく、破線道路標示26bが採用される。かかる分岐箇所における車線用道路標示26を破線道路標示26bにすることで、逆走車21が当該破線道路標示26bによる分岐標示に促され、走行車線22から誘導車線23へと自然に誘導されることとなる。
【0035】
ところで、走行車線22と誘導車線23との分岐箇所において、逆走車21を走行車線22から誘導車線23へと誘導すべく、
図1(b)に示すように、矢印による案内標示26cを路面に付する態様が好適である。かかる案内標示26cは、逆走車21を誘導するためのものであることから、正規の進行方向とは逆の方向へ矢印を付する態様となる。このとき、正規走行車20が矢印を見て進行方向等を勘違いすることのないよう、矢印の先端部分は誘導車線23側に位置するように標示する態様が好適である。
【0036】
前記車線用道路標示26における実線道路標示26aと併せて、誘導車線23の末端から所定距離の区間に、境界ポール30やガードレール31を付設する態様が好適である。
図2(a)は、実線道路標示26aと併せて境界ポール30が付設された場合について示しており、また、
図2(b)は、実線道路標示26aと併せてガードレール31が付設された場合について示している。走行車線22と誘導車線23との境界線が実線道路標示26aのみである場合、物理的な面で逆走車21を誘導車線23内に留め置くことは不可能であり、Uターンや車線変更などにより走行車線22側へ飛び出すことも想定され、その際に正規走行車20との衝突事故を引き起こす危険が存する。そこで、走行車線22と誘導車線23との境界線に、実線道路標示26aと併せて境界ポール30やガードレール31を付設することで、逆走車21の走行車線22側への飛び出しを確実に防止し、正規走行車20との衝突事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0037】
境界ポール30やガードレール31の具体的構造については、「車両用防護柵」として機能する既存の境界ポール30やガードレール31で足りる。すなわち、境界ポール30並びにガードレール31は、共に主として進行方向を誤った車両が道路外の対向車線または歩道に逸脱することによる交通事故の被害を防ぐ「車両用防護柵」の一種であり、本発明においては、誘導車線23と正規の走行車線22の境界を判別し得ると共に、逆走車21が容易に誘導車線23から飛び出すことを防止する目的で、杭状の柵で形成された境界ポール30、あるいは、補強リム加工を施した長尺のレール板で形成されたガードレール31が付設される。
【0038】
本発明にかかる逆走車誘導道路構造10として、誘導車線23の末端に衝撃緩和手段27を備えた態様について説明する。
図3は、かかる衝撃緩和手段27の構成態様を示しており、
図3(a)は、衝撃緩和手段27として金属ばねダンパー装置27aを採用した場合について示している。金属ばねダンパー装置27aは、衝撃吸収度が高く、安価でメンテナスコストが低い装置であって、かかる金属ばねダンパー装置27aを衝撃緩和手段27として採用することで、逆走車21が高速で走行して誘導車線23の末端に衝突する様な場合であっても、金属ばねダンパー装置27aにより衝撃が吸収され、衝突による事故被害を最小限に抑制することができる。
【0039】
また、
図3(b)は、衝撃緩和手段27として土手壁27bを採用した場合について示している。土手壁27bは、盛土構造によるもので、現場土壌を利用した盛土など設置コストが安価であると共に、現地の環境条件に合わせて違和感なく且つクッション性を付与して設置することが可能であり、かかる土手壁27bを衝撃緩和手段27として採用することで、逆走車21が高速で走行して誘導車線23の末端に衝突する様な場合であっても、土手壁27bの自然のクッション性により衝撃が吸収され、衝突による事故被害を最小限に抑制することができる。
【0040】
尚、衝撃緩和手段27の具体的構造については、上記した金属ばねダンパー装置27aや土手壁27bのほか、例えば、油圧ダンパー装置やエアーバッグ装置等の機械的なものや、合成樹脂部材、天然ゴム、水郷、進行方向に対して徐々に幅狭となる徐行道路構造等の非機械的なものなど、種々の手段を採用可能であって、特に限定するものではない。
【0041】
さらに本発明にかかる逆走車誘導道路構造10として、誘導車線23に減速手段28を形成する態様を採用し得る。かかる減速手段28は、誘導車線23を走行する逆走車21の速度を減速させるための構造であって、誘導車線23おける末端から所定距離の区間に形成されるものである。
図4は、かかる減速手段28の実施形態を示している。
【0042】
図4(a)は、減速手段28として、誘導車線23を上り勾配の坂道状28aに形成した場合について示している。このように、誘導車線23を坂道状28aとすることで、任意の上り勾配傾斜を利用して重力による減速力を発生させ、逆走車21が自然に減速すると共に、運転者に対し逆走状態であることを安全且つ確実に認知させることができる。
【0043】
図4(b)は、減速手段28として、誘導車線23の路面を凸凹路面状28bに形成した場合について示している。このように、誘導車線23を凸凹路面状28bとすることで、逆走車21に連続した走行衝撃を与えて走行速度を抑制させることができると共に、運転者に対し逆走状態であることを安全且つ確実に認知させることができる。
【0044】
図4(c)は、減速手段28として、誘導車線23の路面を砂利道状28cに形成した場合について示している。このように、誘導車線23を砂利道状28cとすることで、逆走車21にアスファルト面と異なる走行振動を与えて走行速度を抑制させることができると共に、運転者に対し逆走状態であることを安全且つ確実に認知させることができる。
【0045】
図4(d)は、減速手段28として、誘導車線23の路面に柔軟なパイロンを埋設した衝突突起状28dに形成した場合について示している。このように、誘導車線23を衝突突起状28dとすることで、逆走車21にパイロンによる穏やかな接触衝突力を与えて走行速度を抑制させることができると共に、運転者に対し逆走状態であることを安全且つ確実に認知させることができる。
【0046】
さらに本発明にかかる逆走車誘導道路構造10として、誘導車線23に警告手段29を備える態様を採用し得る。かかる警告手段29は、誘導車線23を走行する逆走車21の運転手に対し、逆走状態であることを認識させる手段であって、誘導車線23おける任意の箇所に一乃至複数備えられるものである。
図5は、かかる警告手段29の実施形態を示している。
【0047】
図5(a)は、警告手段29として、誘導車線23に警告看板29aを備えた態様を示している。このように、警告看板29aを備えることで、正規の走行車線20における標識では見ることのない「止まれ!」や「進入禁止!」、「逆走道路!」などの文字を警告看板29aに表示して、視覚をとおして運転者に逆走を想起させ、安全且つ確実に逆走状態を認知させることができる。
【0048】
図5(b)は、警告手段29として、誘導車線23に所定間隔を置いて複数の点滅灯29bを配備した態様を示している。このように、点滅灯29bを配備することで、該点滅灯29bの点滅により、視覚をとおして運転者に逆走を想起させ、安全且つ確実に逆走状態を認知させることができる。
【0049】
図5(c)は、警告手段29として、誘導車線23にゲート状の交通規制標識29cを設置した態様について示している。このように、ゲート状の交通規制標識29cを設置することで、該交通規制標識29cをくぐる際に逆走車21のフロントガラス上方に「逆走中!」や「危険!」などの文字が表示されることによって、視覚をとおして運転者に逆走を想起させ、安全且つ確実に逆走状態を認知させることができる。
【0050】
尚、警告手段29の具体的構造については、上記した警告看板29aや点滅灯29b、交通規制標識29cのほか、例えば、警告灯などの視覚的手段や、スピーカー・サイレンなどの聴覚的手段も採用可能であり、また、複数の異なる手段を選択的・重畳的に採用することも可能である。
【0051】
さらに本発明にかかる逆走車誘導道路構造10として、誘導車線23に通信手段32を設置した態様を採用し得る。かかる通信手段32は、誘導車線23を走行して突き当り24により停車した逆走車21の運転手が、外部と連絡を取るための手段であって、誘導車線23おける末端近傍、具体的には逆走車21の停止位置付近に設置されるものである。
図2乃至5は、かかる通信手段32の実施形態を示している。
【0052】
通信手段32の具体的構構成態様については、外部と通信可能な手段であれば特に限定はなく、例えば、高速道路等に設置されている非常電話や、インターホンなど、既存の通信手段32を採用すれば足りる。
【0053】
以上のとおり、本発明にかかる逆走車誘導道路構造10は、正規走行車20の進行方向に対し、走行車線22より右側箇所に、逆方向へ分岐した誘導車線23が、所定の走行距離を有すると共に末端が突き当り24に形成されることで、高速道路のインターチェンジI.CやサービスエリアS.A、パーキングエリアP.Aといった逆走が発生しやすい箇所をはじめ、高速道路・有料道路等の走行車線22や中央分離帯25が設けられるような一般道路、そして一方通行道路など、あらゆる走行道路11における道路構造として採用することが可能であり、逆走車21の習性を利用して、逆走車21が自然に誘導道路23へと誘導される構造となっているため、逆走車21と正規走行車20との衝突事故を未然に防ぐことが可能である。
【0054】
また、本発明にかかる逆走車誘導道路構造10は、走行車線22と誘導車線23との境界線上に、車線用道路標示26が付されると共に、末端から所定距離の区間に境界ポール30若しくはガードレール31が付設されてことによって、逆走車21の無理な走行車線22への車線変更やUターンを阻止することが可能であり、さらには、誘導車線23の末端に逆走車21の万一の衝突に備えて衝撃緩和手段27が備えられているため、逆走車21が突き当り24に突っ込む様なことがあっても、衝突による衝撃力を吸収して逆走運転者の身の安全を確保し得ると共に、車両の衝突による破損を最小限に抑えることが可能となる。
【0055】
さらにまた、本発明にかかる逆走車誘導道路構造10は、誘導車線23に任意の減速手段28が形成されることによって、逆走している運転者に対し体感的に物理的な衝撃を与え、逆走状態であることを安全且つ確実に認知させることができると共に、誘導車線23の任意箇所に警告手段29が備えられることで、逆走している運転者に対し視覚的・聴覚的な警告を与えて、逆走状態であることを安全且つ確実に認知させることが可能となる。
【0056】
そしてまた、本発明にかかる逆走車誘導道路構造10は、誘導車線23の末端近傍に通信手段32が設置されることによって、逆走車21が逆走状態で誘導車線23の突き当り24に停車した際に、道路管理者や高速道路交通警察隊、ロードサービスなどの外部と即時通信して、救援依頼を行ったり対応指示を仰ぐことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかる逆走車誘導道路構造は、物理的並びに体感的な手段を用いて逆走車を安全に且つ確実に誘導して衝突事故を未然に防ぐことができると共に、逆走車の運転者の体感並びに視覚と聴覚に対して安全且つ確実に逆走状態を認知させることが可能であり、逆走が発生しやすい箇所として挙げられるインターチェンジやサービスエリア、パーキングエリアの出入走行路だけでなく、高速道路・有料道路等の走行車線や中央分離帯が設けられるような一般道路、そして一方通行道路など、あらゆる走行路における道路構造として採用することが可能なものである。したがって、本発明にかかる「逆走車誘導道路構造」の産業上の利用可能性は、極めて大であるものと思料する。
【符号の説明】
【0058】
10 逆走車誘導道路構造
11 走行道路
20 正規走行車
21 逆走車
22 走行車線
22A 反対側車線
23 誘導車線
24 突き当り
25 中央分離帯
26 車線用道路標示
26a 実線道路標示
26b 破線道路標示
26c 案内標示
27 衝撃緩和手段
27a 金属ばねダンパー、
27b 土手壁
28 減速手段
28a 坂道状
28b 凸凹路面状
28c 砂利道状
28d 衝突突起状
29 警告手段
29a 警告看板
29b 点滅灯
29c 交通規制標識
30 境界ポール
31 ガードレール
32 通信手段
S.A サービスエリア
P.A パーキングエリア
【手続補正書】
【提出日】2021-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆走車を安全に誘導して事故を未然に防ぐための逆走車誘導道路構造であって、
正規走行車の進行方向に対し走行車線より右側箇所に誘導車線が形成されて成り、
該誘導車線は、前記走行車線から進行方向と逆方向に分岐すると共に、前記走行車線に沿って車両が走行可能な所定の走行距離を有し、末端が突き当りに形成されて成り、
前記走行車線と前記誘導車線との境界線上に、車線用道路標示が付されると共に末端から所定距離の区間に境界ポール若しくはガードレールが付設されて成ることを特徴とする逆走車誘導道路構造。
【請求項2】
前記誘導車線の末端に、衝撃緩和手段が備えられて成ることを特徴とする請求項1記載の逆走車誘導道路構造。
【請求項3】
前記誘導車線における末端から所定距離の区間に、減速手段が形成されて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の逆走車誘導道路構造。
【請求項4】
前記誘導車線における任意の箇所に、運転者へ逆走状態であることを認識させる警告手段が備えられて成ることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか記載の逆走車誘導道路構造。
【請求項5】
前記誘導車線における末端近傍に、インターホンなど外部と通信可能な通信手段が設置されて成ることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか記載の逆走車誘導道路構造。