(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080357
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】空気圧ベローズを用いた加圧ステージ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220523BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20220523BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
H01L21/68 N
B25J11/00 Z
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191360
(22)【出願日】2020-11-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
2.テフロン
3.SIMULINK
4.バイトン
(71)【出願人】
【識別番号】310004219
【氏名又は名称】アイアールスペック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(72)【発明者】
【氏名】小倉 睦郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 壽憲
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
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5F131KB32
(57)【要約】
【課題】 精密アライメントが必要な半導体接合装置において、従来の多軸ステージでは、加圧による弾性変形が累積する。また摺動部分に必要な潤滑油は、接合界面の汚染要因となる。そこで、加圧空気圧ベローズを用いたパラレルリンク機構と光学的非接触姿勢計測により摺動部を含まず、清浄度に優れた推力1,000N以上のサブミクロン精度6自由度加圧ステージを実現する。
【解決手段】 6本以上の空圧ベローズをステージに直接接続し、小口径のベローズを水平位置決めに用い、大口径のベローズを垂直に設置して加圧推力を確保する。ベローズの山数や板厚によりステージの剛性を調整し、空気圧によるベローズ推力と必要なステージ移動距離を整合させる。収束光を用いたレーザ干渉計測や顕微鏡画像処理により、サブミクロン精度の高速姿勢計測を行い、複数ベローズに対する並列圧力フィードバックによりステージ制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空気圧ベローズを用い、該ベローズに座屈が生じない範囲の正圧および負圧にて該ベローズに導入する空気圧を制御することにより空間姿勢および推力を制御する、空気圧ベローズを用いた加圧ステージであって;
ステージを剛体と見なしたときの6自由度に相当する垂直、水平および回転方向の位置および力制御のための、6本以上の該ベローズが直接該ステージに接続され;
該ベローズへの同時、並列的な空気圧力フィードバック機構を有し;
垂直、水平および回転方向それぞれの仕様に対応した異なった推力およびストロークに応じて上記ベローズの空間配置、有効断面積、弾性定数および自然長が変えられていること;
を特徴とする6自由度加圧ステージ。
【請求項2】
有効面積の大きい上記ベローズを垂直方向に設置し、有効断面積の小さい上記ベローズの取り付け角度をステージ水平方向あるいは、水平面に対し浅く設置することにより、位置決め精度を向上したこと;
を特徴とする請求項1記載の6自由度加圧ステージ。
【請求項3】
ステージを剛体と見なしたときの6自由度より冗長な数の上記空気圧ベローズを有し、有効断面積の小さい上記ベローズに引張応力を、有効断面積の大きい上記ベローズに圧縮応力を発生させ、垂直推力を増強しつつ、該ベローズの座屈を防止したこと;
を特徴とする請求項1記載の6自由度加圧ステージ。
【請求項4】
上記ステージを剛体と見なしたときの6自由度よりも多数の上記ベローズを有し、上記ステージの加圧推力の面分布を調整すること;
を特徴とする請求項1記載の加圧ステージ。
【請求項5】
中心座標、回転、あおりを含む上記ステージの三次元空間における位置と姿勢を非接触位置センサーあるいはアライメントマーク位置により検出し、加圧位置決めをなすこと;
を特徴とする請求項1記載の6自由度加圧ステージ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧ベローズを用いた加圧ステージに関し、特に例えば半導体製造分野におけるウェファ接合装置やナノインプラント装置に必要なあおりを含むサブミクロン精度の加圧アライメント機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年3次元ICの製造に必要なウェファボンディング工程では、400℃程度の高温下でウェファの相対位置ずれをサブミクロンオーダーでアライメント調整した後にトンオーダの加圧をする必要がある。 また、ヘテロ半導体材料を用いた赤外撮像チップでは、チップレベルで赤外フォトダイオードアレイと読み出しICを十数μmの画素ピッチで高密度接合するプロセスが必要となる。上記接合プロセスにおいては、清浄雰囲気において水平方向の位置のみならず、ウェファ同士の平行度(隙間)を制御しつつ、加熱(~300℃)、加圧(~1,000N)あるいは超音波印可を行う必要がある。
【0003】
例えばチップ面積1cm2程度のVGA(640x520画素)赤外撮像素子を製造するためのチップレベルの接合工程においては、アライメント精度±1ミクロン、平行度±100マイクロラジアン(□1cm2のチップの両端で隙間の差が1μm以内)にて、数百Nの加圧、超音波印加を必要とする。(非特許文献1)
【0004】
従来の接合装置構成においては、上下方向の駆動機構として、トルク制御ACサーボモータやエアシリンダーを用いた空圧アクチュエータが、また水平方向の駆動機構として、ベアリングステージが用いられて来た。例えば、ACサーボアクチュエターでは、東京都八王子市狭間町1463在の蛇の目ミシン工業は、加圧能力最大30kNの精密加圧制御サーボプレス装置を開発している。また、空圧アクチュエータでは、東京都品川区大崎2-1-1在の住友重機械工業はエアベアリングを用いた空圧シリンダーに位置決め制御機構を設けた機構を「エアーソニック」という商標で生産している。(特許文献1)
【0005】
電子部品や半導体モジュル-の接合装置としては、福岡県那珂川市片縄8丁目140番地在のアドウェルズ社FA1000型超音波高精度フリップチップボンダにおいては、面方向の位置合わせ手段として、クロスローラガイドを用いたX,Yステージおよび回転機構を用い、Z方向は、エアシリンダーを用いた空圧アクチュエータを使用している。また、京都府京都市南区吉祥院石原西町77在のボンドテック社のWI-1000型真空ウェファ接合装置では、Z方向に電動式リニアアクチュエータを使用している。上記Z方向のアクチュエータにはリニアエンコーダや歪みゲージが設けられ、サブミクロン精度の位置決め精度が確保されている。(特許文献2)
【0006】
チップあるいはウェファ相互の平行度を保つ機構としては、例えばアドウェルズ社の球面軸受型倣い機構や、ボンドテック社のピエゾステージなどが用いられて、高精度は平行度の管理が必要な半導体チップの接合に用いられている。但し、倣い機構は、倣い動作の精度や経時変化の問題がある。またピエゾステージは、ストロークが短い(~数十μm)のため、ベアリングステージとローラあるいはボールネジを組合せた従来方式の機械的粗動機構と組合せる必要がある。特に、半導体プロセス装置において必要となる、清浄雰囲気下での高温、高荷重装置においては、ピエゾ素子の耐熱、耐荷重性の克服、またベアリングステージに必要な潤滑油による汚染の防止など対処が複雑になる。
【0007】
ベアリングガイドとボールネジを用いたリニアあるいは回転ステージを必要な自由度分だけ重ね合せた従来のシリアルリンクステージでは、1,000N程度のラジアルあるいはアキシアル荷重により、各軸において1μm程度の弾性変形は免れない。例えば、ローラガイドステージに圧縮あるいは引張応力を加えると0.5μm/1,000N程度の変形が生じる。(非特許文献2)またステージの駆動に使用する送りネジ機構として使用されるボールネジやより剛性の高いローラネジにおける変形率は、軸径40mmの比較的大きな送りネジを使用した場合でも1μm/1,000N程度以上となる。(非特許文献3)
【0008】
1軸ごとに光学式リニアあるいは回転エンコーダを併用してバックラッシュ等のヒステリシスを軽減し、繰り返し位置決め精度をサブミクロンレベルに向上させることは可能であるが、各軸の計測では把握できないモーメント荷重による各軸のねじれ(ヨーイング、ピッチング、ローリング)が想定される。精密アライメント用ステージにおいて、平行度を含めると垂直および水平方向に3軸(x,y,z)、回転(θ:ヨーイング)およびあおり(α:ローリング、β:ピッチング)方向の計6軸の制御を必要とする。シリアルリンクステージでは、加圧に伴う弾性変形が6台の駆動機構間で累積し各軸レベルでは把握不能な数μm程度の位置ずれが生じる。従って、荷重印加条件下でサブミクロンの位置決め精度を確保するためには、対象となるステージの空間絶対座標を計測しフィードバック制御することが必要となる。
【0009】
多軸ステージの制御方法では、パラレルメカニズムを用いた6軸ステージが、スチュワートプラットフォーム(Stewart platform)あるいは、ヘキサポッド(Hexapod)と呼ばれ、剛性の高い6軸ステージとして実用化されている。この場合、6本の可変長ロッドがボールジョイントあるいはユニバーサルジョイントを介してステージを保持している。ヘキサポッドは、ベアリング方式のステージに比べて、ストロークが制限されるが、ステージを支える6本のロッドの長さを同時並列的に制御することにより、リンク連結部の変位誤差やバックラッシュによる誤差の累積なしに、ステージの位置およびあおりを敏速に設定することができる。6本のアームの長さとステージ位置座標は、三角関数を含む多項式で表されるが、計算機やソフトウェアの発達により、所望のステージ位置への移動に必要なアーム長の計算(逆運動学)に関しては、大きな障害にはならなくなっている。
【0010】
但し、仮に6本のそれぞれのロッドの長さを光学的リニアスケール付きのリニアアクチュエータを用いてサブミクロン精度で制御できたとしても、ステージ位置をサブミクロン精度で保持することは困難である。なぜなら、1,000N程度の荷重条件下でロッドや、ジョイント部の弾性変形をサブミクロンレベル以下に抑制することは難しいからである。また、ジョイント部のバックラッシュは、伸縮の切り替え時のヒステリシスの原因となるため与圧を与える必要があるが、潤滑性や荷重範囲に制約を生じる。従って、大荷重かつサブミクロンレベルのステージ精度を得るためには、シリアルリンクステージと同様に、対象となるステージの絶対座標を計測しフィードバック制御することが必要となる。
【0011】
強度的・構造的に適度なやわらかさがあり、繊細な力加減で動作できるロボットハンドが医療用や半導体加工装置において求められている。
空気圧駆動機構は、圧力に比例した駆動力を発生するため、力制御(Stiffness Control)に適している。空気圧駆動機構は、コンタミネーションが少なく構造が簡単なので、医療用に、空気圧シリンダーとボールジョイントを用いた、パラレルメカニズムによるマニュピュレータが製作されている。特に,供給圧力により推力の上限が定まるので、安全性が高い。(非特許文献4)
【0012】
同様な機構により、空気圧シリンダーとユニバーサルジョイントを用いた6軸ステージ(Hexapod)も容易に想定できる。但し、空気圧シリンダーの場合、摺動摩擦を減らすために空気軸受を用いると、十数μmのエアギャップが形成され、軸垂直方向の剛性が低くなる。また、ジョイント部にベアリングを用いたユニバーサルや摺動面を有するボールジョイントを使用する必要があり、弾性変形や高温等の耐環境性能が低下する。
【0013】
空圧ベローズは、空気圧シリンダーと同様に、圧力を力あるいは変位に変換する機能がある。また、べローズには、軸方向の変位に対しても、バネ作用があるため、ボールジョイントやユニバーサルジョイントを必要としない。軸方向にも摺動機構を持たないため、摩擦によるヒステリシスが発生しない。通常は、座屈を避けるため、外骨格あるいは内骨格を併用し、張力が与えられた状態で使用されている。(非特許文献5)生体を模した力制御の駆動機構は、ソフトロボティクス(soft robotics) と呼ばれ、ロボット研究の大きな分野となりつつある。(非特許文献6)
【0014】
半導体分野への応用では、空圧ベローズと弾性ヒンジを用いた加圧機構も提案されている。空圧ベローズの周囲に弾性ヒンジを配置することにより、シリンダーなどの摺動機構を伴わずに変位方向を空圧ベローズの軸方向のみに制限し、更に、リニアエンコーダやロードセルなどを内蔵することにより、長手方向の位置決めが可能である。(特許文献3)この1軸空圧アクチュエータを軸方向に垂直に3台ステージに取り付けることにより、上下およびあおり駆動が可能になる。また、直交させた2軸アクチュエータユニットを3台組み合わせることにより、上記上下およびあおり駆動に加え、回転が可能なステージが示されている。(特許文献4)
【0015】
発明者らは、金属成形ベローズと弾性ヒンジを用いた1軸空圧位置決め機構において、高精度かつ高速な位置センサーと高速応答特性を持つリニア空圧サーボ弁を組み合わせて数十nmの精度を実現した。これは、光学的リニアスケールやレーザ干渉計による位置情報を用いて、フレキシブルベローズに供給する圧力を電空アクチュエータによりフィードバック制御したものである。この系では、ステージの圧力―変位特性を差圧400[kPa]に対し,300[㎛]程度に設定している。このとき可動部質量とヒンジのばね定数が成す固有周波数は約60[Hz]である。レーザ干渉計(レニショー製RLU10)を用いて0.1msecの周期で位置計測を行い、制御信号を、計測制御ソフトウェアMATLAB Simulink xPC Targetにより算出し、16bitDACによりノズルフラッパ型の3方向サーボ弁を用いた電空アクチュエータに出力した。(非特許文献7)
更に、ヒステリシスの少ないボイスコイルモータを用いた低流体ノイズサーボ弁を採用し、圧力制御特性を向上させた。ステージのストローク±1250μmに対し、静止位置精度は1nmに達している。(非特許文献8)
【0016】
金属成形ベローズは、通常ステンレス鋼などの金属薄板を波形形状に変形して製作されるが、その構造上いくつかの制約がある。一つは、伸縮ストロークで、寿命の観点から概ね自然長の±数%以内に設定する必要がある。もうひとつの制約は座屈で、一定圧力以上では、軸方向に対して直角に変形が生じる。座屈が発生する圧力Pcrは、概ね式1)で表される。(非特許文献9)
Pcr=2πfi/(N2 q) ・・・ 式1)
但しfiは、ベローズ1山あたりの弾性係数、Nはベローズの山数、qはベローズ1山あたりのピッチである。
【0017】
すなわち、限界圧力は、一山あたりの弾性係数に比例し、山数の二乗に反比例する。また、ベローズの1山あたりの弾性係数は周長に比例し、ベローズの板厚の3乗に比例する。推力はベローズの有効面積に比例することから、座屈限界における推力は、概ねベローズ径およびベローズ板厚の3乗に比例する。従って、必要なストロークと座屈限界、バネ定数を勘案しつつ、板厚、ベローズ径、山数(ベロース長さ)を調整することが金属成形ベローズを用いた安定なステージ駆動には重要となる。
【0018】
ウェファあるいはチップ接合時に必要最低限のストロークに関して、アライメント開始時の位置ずれは、搬送ロボットの位置決め精度~200μm程度、接合時に必要なストロークはウェファ搬送時の隙間確保のための数mm程度である。従って、100mm程度の自然長の金属成形ベローズを用いることにより接合装置に必要な数mmのストロークを確保することができる。
【0019】
接合プロセスにおいては、位置決めの後、位置ずれを監視しつつ加圧を行う。まず、位置決めプロセスにおいては、ベローズに供給される空気圧による推力と、ベローズあるいは並列に設置されたスプリングによるバネ作用との釣り合い条件によりステージ位置が決定される。位置決め精度を確保するためには、ベローズやスプリングによりステージの剛性を調節し、電空アクチュエータによって制御可能な空気圧の範囲と精度がステージ位置と精度に合致させた上で、必要な加圧方向の推力を確保する必要がある。
【0020】
最近の非接触光学的距離計測システムでは、測定スパンを数mmに制限する代わり、対象面の角度ずれを±0.3~±3°程度以上許容する製品が発表されている。例えば収束光を用い、光ファイバコリメータ端面と対象面間で形成されるファブリペロー型共振器の反射強度振動原理を用いた光ファイバ干渉距離計(attocube社,IDS3010、Eglfinger Weg 2,
85540 Haar,Germany)やレンズの色収差を用いたマルチカラーレーザ同軸変位計(キーエンス社、CL-3000シリーズ、大阪市東淀川区東中島1-3-14)などが上市されており、ステージの精密調整範囲が、アライメント工程に伴う位置および角度調整の範囲であれば、ステージの剛体としての位置情報(x, y, z, θ, α, β)をサブミクロン精度かつ0.1msec以下の時間間隔で計測することができる。
【0021】
空気圧制御システムでは、システムの固有周波数よりも十分速い速度で圧力を制御する必要がある。磁性体によるヒステリシスを避けるため、空芯ソレノイドを用いたノズルフラッパ弁やリニア直動弁がMOOG社(400 Jamison Road Elma, New York, 14059 USA)や愛知県尾張旭市平子町東241-1在のピーエスシー株式会社から開発され、カットオフ周波数として400Hz程度の製品が上市されている。
【0022】
以上、パラレルリンクシステムシステムにおいては、コンピュータによる逆運動学的制御が必要であるが、ロボット関連技術や3次元計測技術の発達により、従来のシリアルリンクステージよりも機構的には簡素化しかつ精度や出力荷重の優れたシステムを実現できる環境が整いつつある。また、力加減が調節できるソフトロボティクス(soft robotics) の分野で、安全性や清浄性に優れた空気圧制御方式が注目されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2004-144196号公報
【特許文献2】特開2007-141972号公報
【特許文献3】特開2014-199106号公報
【特許文献4】特開2014-199215号公報
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】小倉睦郎、西田克彦、村井博信、「高解像度、広ダイナミックレンジUSB3Vision対応InGaAs近赤外カメラ」映像情報インダストリアル 2017年2月p.21-24.
【非特許文献2】松本 淳 加藤 総一郎 「工作機械用リニアガイドの特性解析」 2004 年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集 A75
【非特許文献3】大塚二郎、大沢高志、 深田茂生「遊星ローラねじに関する研究」精密工学会誌 JSPE-53-08 '87-08-1203
【非特許文献4】早川恭弘、川村貞夫、後藤健夫、永井克明 「カセンシング機能を有する空気圧ベローズによるロボットマニピュレータ用回転駆動機構の開発」 日本ロボット学会誌14巻2号(1996年3月)
【非特許文献5】清水清人, 平井慎一, 川村貞夫 「ベローズチューブ空気圧群アクチュエータの試作」第19回日本ロボット学会学術講演会 (2001年9月18-20日) 1G1
【非特許文献6】Aaron Fishman1, Martin Stephen Garrad, Andrew Hinitt1, Plinio Zanini, Tim Barker and Jonathan Rossiter ‘A Compliant Telescopic Limb with Anisotropic Stiffness’, Front. Robot. AI, 01 February 2017 | https://doi.org/10.3389/frobt.2016.00080
【非特許文献7】藤田 壽憲,榊 和敏,宮崎 里美,宮崎 敬一 「空気圧ベローズにより駆動する微動ステージの制御方法とナノ位置決め」日本フルードパワーシステム学会論文集 2017年9月
【非特許文献8】藤田壽憲 「半導体産業に向けた空気圧サーボ制御による超精密位置決め技術」 計測と制御 第54巻 第9号 2015年9月号
【非特許文献9】EJMA「Standards of The Expansion Joint Manufacturers Association, Inc.」Eighth Edition EXPANSION JOINT MANUFACTURERS ASSOCIATION, Aug. 1, 200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上述してきた各従来例における問題点に鑑み、本発明では空気圧ベローズを用いたパラレルリンク機構により摺動部を含まず、清浄度や耐環境性に優れた高精度6軸加圧ステージを実現する。その際、座屈限界を考慮したベローズの空間配置を行い、比較的安価な金属成形ベローズを用いて、半導体ウェファあるいは半導体チップ接合装置に必要なアライメント精度、ストロークおよび荷重を満たす構成を明らかにする。
【0026】
サブミクロンレベルかつ1,000N程度以上の加圧を前提としたステージ制御においては、全ての構成部品を弾性体と見なし、荷重に伴う弾性ひずみを考慮する必要がある。従って、空間的な位置および姿勢をサブミクロンオーダで制御するためには、どのような構成のステージにおいても、ステージの3次元空間計測に基づいたフィードバック制御が必要となる。本発明では、バネ作用と空圧シリンダー作用を併せ持つ複数の金属フレキべローズに対して、十分速い計測間隔で空気圧を並列にフィードバック制御することにより、従来の各軸ごとにフィードバック機構を持つシリアルリンクよりも高い剛性と制御性を実現する。
【0027】
金属フレキベローズは、座屈の可能性があり、その傾向は傾きや横方向荷重により助長される。通常は、座屈を避けるため、外骨格あるいは内骨格を併用するが、その際可動ジョイント部を伴うので、潤滑油による汚染やベアリングの変形、あるいはバックラッシュによるヒステリシスが発生する。そこで、可動ジョイント部を使用せずに、作動範囲において、座屈が起こらない設計を行う必要がある。また、座屈限界圧力条件は、ベローズの軸方向に対して直交する荷重が加わると低くなるため、ベローズ軸に沿ってステージが駆動されることが望ましい。
【0028】
ベローズに発生する推力は、ベローズの有効面積に印加される空気圧を乗じた値となる。例えば、断面積100cm2のベローズに1気圧の空気を加圧すると、その推力は概ね1,000Nとなる。ウェファ接合装置においては、主に必要な荷重は垂直方向(y)であり、水平(x、z)、回転(θ:ヨーイング)およびあおり(α:ローリング、β:ピッチング)方向のアライメント調整に必要な荷重は垂直方向の角度ズレによる応力成分を補正する程度となり、垂直荷重の1/100~1/1000程度と推定される。また、サブミクロンレベルのアライメント調整精度を実現するには、ベローズの口径を小さくし、制御パラメータとなる空気圧力に対して発生する駆動力を小さくする方が有利となる。従って、接合時の圧縮推力を確保しつつ、アライメント精度を確保するためには、垂直方向に駆動するベローズの口径を水平方向や回転方向に駆動するベローズよりも大きくすることが有効である。
【0029】
電空アクチュエータによって制御可能な空気圧の範囲は、概ね-0.5~3気圧程度であり、その上限はベローズの座屈限界圧力である。また、一般にアナログ量の設定は、14~16ビット(16,384~65,536)程度の分解能が限界である。従って、サブミクロン精度のステージ位置制御を実現するためのステージの圧力応答としては、~1mm/気圧程度が適当である。また、垂直方向の推力は1,000N/気圧程度が必要となる。従って、ベローズの直径に加えて、ベローズの板厚、形状、自然長、併置スプリングの有無などを最適設計する必要がある。その際、精度を要する位置決めと、推力を要する昇降機能を独立に制御することが望ましい。
【0030】
ステージを剛体と見なしたときその自由度は、6軸(x,y,z,θ,α,β)であるので、ステージの位置および角度を計測するためには、距離計を用いて、水平方向で3点、側面方向で3点において、剛体(ステージ)の辺と支持体(フレーム)との距離を測定すれば良い。接合工程では、2枚のチップの相対的な位置ずれを評価し、最小にする必要がある。特に、加圧時の位置ずれが歩止まりの低下の原因となっている。そのため、アライメントマークの位置ずれを画像処理により算出し、ステージ位置補正を加圧時も含めてリアルタイムで行うことが必要となる。
【0031】
試料の搬入時には、ロボットハンドの挿入が可能な数mm程度の隙間が必要となる。一方精密なアライメントに必要な範囲は、チップ搬送ロボットなどの位置決め精度に依存するが、±200μm程度に収まる。またウェファの初期平行度も±1/1000ラジアン(~0.06°)以内には収めることができる。従って、アライメントに必要な精度の高い空間的な距離測定においては、作動距離範囲を1mm程度に限定することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は上記目的を達成するため、複数の空気圧ベローズを用い、該ベローズに座屈が生じない範囲の正圧および負圧にて該ベローズに導入する空気圧を制御することによりシリンダーやボールジョイントなどの摺動部を用いずに空間姿勢および推力を制御する、空気圧ベローズを用いた加圧ステージであって:
垂直、水平および回転方向それぞれの仕様に対応した異なった推力およびストロークに応じてベローズの有効断面積、弾性定数および自然長が変えられていることを特徴とする6軸加圧ステージを提案する。
【0033】
こうした基本構成を満たした上で、本発明はさらに、
有効面積の大きいベローズを垂直方向に設置し、有効断面積の小さい上記ベローズの取り付け角度をステージ水平方向あるいは、水平面に対し浅く設置することにより、垂直方向の推力を確保するととともに位置決め精度を向上したことを特徴とする請求項1記載の加圧ステージも提案する。
【0034】
本発明ではまた、上記基本構成を満たした上で、ステージの自由度より冗長な数の空気圧ベローズを有し、有効断面積の小さい上記ベローズに引張応力を、有効断面積の大きいベローズに圧縮応力を発生させ、垂直推力を増強しつつ、該ベローズの座屈を防止したことを特徴とする請求項1記載の加圧ステージも提案する。
【0035】
本発明ではまた、上記基本構成を満たした上で、上記ステージを剛体と見なしたときの自由度6よりも多数の上記ベローズを有し、上記ステージの加圧推力の面分布を調整することを特徴とする請求項1記載の加圧ステージも提案する。
【0036】
本願発明ではさらに、中心座標、回転、あおりを含む上記ステージの三次元空間における位置と姿勢を非接触位置センサーにより検出し、上記空気圧ベローズに供給する圧力を制御することで加圧位置決めをなすことを特徴とする請求項1記載の加圧ステージも提案する。
【発明の効果】
【0037】
従来のボールネジとベアリングステージを用いた駆動機構では、シリアルリンク、パラレルリンクに係わらず、摺動部が存在し、潤滑油の使用が不可避であった。本発明で使用する金属成形ベローズは、空気圧シリンダーと弾性ヒンジの特性を併せ持ち、摺動部が存在しない。従って、摩擦に伴う発塵や、潤滑油による汚染が無い。また金属成形ベローズは、真空配管にも用いられている製品でもあり、清浄性や耐熱性に優れている。
【0038】
加圧装置においては、垂直方向には十分な推力が必要な一方で、水平方向やあおり方向ではサブミクロンレベルの精度を必要とする。一方、設定空気圧力は、ベローズの座屈や空気源圧力、真空排気ポンプ容量を勘案すると、その設定範囲は、-0.5気圧から3気圧(0.3MPa)程度が妥当である。電気信号により空気圧を発生する電空アクチュエータは、ヒステリシスや外乱などにより、設定空気圧力範囲の1,000~10,000分の1程度の微圧設定誤差を想定しておくことが望ましい。従って、電空アクチュエータによる圧力設定範囲とステージに必要なストロークおよび推力とが整合する必要がある。すなわち、微小な位置変位を制御するには、小さい力の調節が必要となるため設定圧力に対して推力の小さい小口径のベローズを用い、加圧方向に必要な推力を確保するためには、大口径のベローズを用いる。また、ベローズの自然長とベローズの板厚により、ベローズのバネ定数を調整し、ステージの剛性を最適化することにより、電空アクチュエータによる圧力設定範囲において、必要かつ十分なステージ移動量を確保することができる。
【0039】
更に、ベローズの接続角度とそのベローズが担うステージの移動方向を調整することにより個々のステージ自由度に対する推力を調整し、位置決め精度を向上するとともに、加圧方向の推力を確保することができる。大口径ベローズが垂直方向に設置される場合は、ベローズ推力の変化に伴う水平方向の位置ずれが発生しにくい。また小口径のベローズを水平に設置することにより、微小な推力調整による精密位置決めを行うことができる。更に、小口径のベローズをステージ面から浅い角度に設定することにより、垂直方向にも精密な高さ調整が可能になる。
【0040】
剛体の自由度に等しい数(6)のベローズを用いる場合、位置決め用の口径の小さいベローズには、圧縮および引張応力の両方を発生させる必要がある。口径の小さいベローズは、座屈限界圧力が低いため、設定圧力範囲に制限が生じる。また、電空アクチュエータとしては、陽圧と陰圧を発生させることが必須となる。そこで、剛体の自由度よりも多いベローズの数を配置し、有効断面積の大きい垂直方向駆動用ベローズに圧縮応力を発生させ、垂直推力を増強しつつ、位置決め用の口径の小さいベローズを自然長よりも伸長させるか、ベローズ内部を真空側に保つことにより常時引張応力を発生させる。位置決め用ベローズの座屈を防ぐとともに、設定圧力を陽圧側のみで制御可能となる。
【0041】
一般的に、小口径半導体ウェファは、研磨工程において、中央が高く周辺が低い傾向がある。従って、均一な接合を行うためには、周辺の推力を中央部より大きくする必要が生じる。そこで、中央部と周辺部において垂直方向駆動用ベローズの数を増すことにより加圧ステージの面分布を調節することが可能となる。
【0042】
中心座標、回転、あおりを含む上記ステージの三次元空間における位置と姿勢を非接触位置センサーにより検出し、上記空気圧ベローズに供給する圧力を制御することにより、誤差の累積無しにステージの6軸加圧位置決めが可能となる。非接触位置センサーとしては、光学的計測と近接効果による圧力やインピーダンス変化を計測する方式など多様な方式が利用可能である。光学的計測では、参照光と対象からの反射光の位相差を計測するレーザ干渉計、参照ミラーと対象間で形成されるファブリペロー共振器の反射波の位相差を計測する手法、あるいは、集光レンズの色収差を用いる手法などが光ファイバを用いた光学系で構成され、数nm~サブミクロン程度の精度を持つ。
【0043】
また、三角測量方式のレーザ変位計も要求ステージ精度が2~3μm程度の場合は使用できる。概ね測定精度と許容角度ずれとには相関があり、想定されるステージの回転量も光学的距離計測器の選定において考慮する必要がある。更に、エアーマイクロメータのように、空気排出孔と対向面との距離による圧力変化を検出する方式、キャパシタンスマノメータや誘導式変位測定システムなども必要な精度や動作環境により選択できる。ウェファやチップ間の接合では、アライメントマークを用いたリアルタイム画像偏差測定を行い、加圧時のステージの位置調整を行うことが必要になるが、その場合、水平方向の距離計を省くことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】底面と底面に垂直な側面にて空圧ベローズアクチュエータが保持された空圧ベローステージの、概略構成図である。
【
図2】
図1の実施形態の空圧ベローステージに用いられている空圧ベローズアクチュエータの部分断面を含む概略図である。
【
図3】
図1の構成に中央に冗長な数の空圧アクチュエータを加えることにより、圧力分布の調整を可能とした空圧ベローステージの概略構成図である。
【
図4】
図1の構成に中央に口径の大きな空圧アクチュエータを加えることにより、荷重と座屈限界を改善した空圧ベローステージの概略構成図である。
【
図5】底面のみで保持された空圧ベローズアクチュエータによる、空圧ベローステージの概略構成図である。
【
図6】
図5の構成に中央に口径の大きな空圧アクチュエータを加えることにより、荷重と座屈限界を改善するとともに、位置決め精度を改善した空圧ベローステージの概略構成図である。
【
図7】
図1において、水平方向駆動用ベローズの冗長度を増した例を示す。水平方向駆動用ベローズに引張応力により座屈を防止できる利点がある。
【
図8】
図5に示された空圧べローズをバネダンパーに置き換えた場合のステージ模式図を示す。
【
図9】
図8においてステージ剛性行列(A)およびバネ抗力行列(B)の計算例を示す。
【
図10】
図8においてx方向(水平)の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。
【
図11】
図8においてy方向(垂直)の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。
【
図12】
図6に示された空圧べローズをバネダンパーに置き換えた場合のステージ模式図を示す。
【
図13】
図12においてステージ剛性行列(A)およびバネ抗力行列(B)の計算例を示す。を示す。
【
図14】
図12においてx方向(水平)の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。
【
図15】
図12においてy方向(垂直)の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。
【
図16】
図1に示された空圧べローズをバネダンパーに置き換えた場合のステージ模式図を示す。
【
図17】
図16においてステージ剛性行列(A)およびバネ抗力行列(B)の計算例を示す。
【
図18】
図16においてx方向(水平)の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。
【
図19】
図16においてy方向(垂直)の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。
【
図20】
図7に示された空圧べローズをバネダンパーに置き換えた場合のステージ模式図を示す。
【
図21】
図20においてステージ剛性行列(A)およびバネ抗力行列(B)の計算例を示す。
【
図22】
図20においてx方向(水平)の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。
【
図23】
図20においてy方向(垂直)の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。
【
図24】
図1の空圧ベローズ構成を用いた、超音波接合装置の模式図を示す。
【
図25】
図7の空圧ベローズ構成を用いた、半導体ウェファ熱圧着装置の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、ステージの6自由度(6DOF)あるいはそれを上回る数の金属ベローズをステージに直づけし、ウェファあるいはチップ接合装置に必要な推力と精度を確保した加圧装置の構成例を示す。ロッド長制御方式のヘキサポッドの場合、6自由度を持つステージの位置制御には6本の伸縮ロッドあるいは7本のストリングが必要である。制御軸を更に追加することは、死点を回避するためには有効であるが、伸縮長さの組み合わせに拘束条件が生ずるため、制御誤差により制御対象に過大な内部応力が発生する恐れがある。一方本発明による、アクチュエータがバネ定数を持つ力制御の場合、アクチュエータの数に係わらず、複数のバネの弾性エネルギーが最小となるように平衡位置が定まるのでアクチュエータの冗長性が制御性を阻害することが無い。
【0046】
金属ベローズには溶接型と成形型がある。いずれも、真空フランジの規格に準拠して、可動部や位置合わせが必要な真空機器に使用されている。成形ベローズは、溶接ベローズよりも安価で、真空粗挽き排管や、真空チェンバ同士の接続などに多用されている。例えば株式会社ミラプロ(山梨県北杜市須玉町穴平 1100番地)、大阪ラセン管工業株式会社(大阪市西淀川区姫里3-12-33)、入江工研株式会社(東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ヒ゛ル813)、南国フレキ管工業株式会社(大阪府大東市新田北町5番9号)など各社から予め標準的なサイズが準備されている。本発明では、適度に弾性を持つステンレス製成形ベローズを使用する。
【0047】
これらの金属成形ベローズを、空気圧ベローズとして加圧ステージに転用した場合に必要な仕様として、垂直方向ストローク8mm、水平方向ストローク±1mmを満たす、ベローズの諸元を表1に示す。板厚や口径、山の形状により様々な推力の金属成形ベローズが設計可能である。昇降用ベローズの推力を1気圧あたり、600~1800Nとすると、フランジ呼び径としては65A~150Aが相当し、座屈限界は0.2~0.7MPaとなる。例えば有効面積58.5cm2、座屈圧力0.2MPaの昇降用ベローズ(表1:#65-1)を3本使用した加圧装置の最大推力は、3,600N(600Nx2気圧x3本)となる。
【0048】
また、位置決め用ベローズに使用する小口径ベローズ(表1:#25-2)の場合、有効面積は、12.5cm2座屈圧力は、0.08Maと1気圧以下となる。従って、座屈を防ぐためには、負圧を含めた±0.5気圧程度の範囲で使用する必要がある。ベローズの形状や、板厚を厚くして、座屈圧力を増すことも有効である。例えば、ベローズ口径を拡大して(表1:#50-2)ベローズのバネ定数を大きくすると共に、冗長度を持つ構成では、引張応力を発生する状態に保持することにより座屈を防ぐことができる。
【0049】
【0050】
上掲の表1に併記したベローズのバネ定数は、軸方向および軸直角方向に1mm変位させた場合の反発力を示す。例えば、降用ベローズ(表1:#65-1)の軸方向のバネ定数は16.4N/mmであることからを1mm駆動させるため空気圧は、3KPa程度となる。ステージを水平方向に移動させる場合、垂直方向に設置されたベローズの軸直角方向のバネ定数が抗力として加算される。例えば、圧力レンジ±0.5気圧(1気圧は0.1MPa)の電空アクチュエータにより設定可能な圧力の精度は数十Paであるので、加圧ステージの位置決め精度を向上するためには、ベローズの板厚や形状を調節したり、バネを併設して、ステージ全体の剛性と必要なストロークの積がベローズの推力と同程度とすることが有効である。参考文献7では、1軸の制御において、400[kPa]に対し,300[㎛]の変位が得られるよう、金属ベローズと並列に弾性ヒンジを設置している。
【0051】
表1において、同一呼び径においても、板厚や山の形状を変えることにより、様々なバネ定数を持つ金属ベローズを選定することができる。例えば、呼び径65Aのベローズにおいて、板厚を0.2から0.4mmに増加することにより座屈圧力は、0.2から0.51MPaに、またバネ定数は、板厚に応じて16.4から94.7N/mmに増加している。昇降用ベローズの軸直角方向のバネ定数は、6自由度ステージの水平方向の変位に対する抗力となるため、適切な金属ベローズの選定により、付加的なバネ無しに、水平、垂直および回転方向に対し、必要な抗力およびストロークを設計することができる。
【0052】
図1は、本発明に基づく金属フレキベローズを用いた6自由度加圧ステージの模式図を示す。1辺223mmの6角形厚さ20mmのアルミ合金製昇降ステージ1の底面に、3本の太い垂直方向駆動用空圧ベローズ2(表1:#65-1)が、またステージの側面において、ステージの中心からオフセットした位置にて3本の細い水平方向駆動用空圧ベローズ3(表1:#25-2)が配置されている。水平方向のベローズ3は、それぞれ、ベローズ軸に直交する壁面(図示せず)に固定されている。3本の垂直方向駆動用空圧ベローズ2は、主にZ方向およびあおり(α:ローリング・β:ピッチング)を制御し、3本の水平方向のベローズ3は、主にX,Y方向とZ軸廻りの回転方向(θ:ヨーイング)を制御する。ステージ中心からのオフセット距離は、Z軸廻りの回転トルクを与える。垂直方向のベローズの直径を水平方向のベローズよりも大きくすることにより、加圧装置に必要な推力を確保するとともに、水平、回転方向用ベローズの直径を小さくすることにより、印加圧力に対する水平方向出力を減らし、位置決め精度を向上させている。
【0053】
3本の水平方向駆動用ベローズ3の軸は、概ね、3本の垂直方向の駆動軸に直交している。従って、水平方向のベローズの伸縮により、ほとんど垂直方向の移動なしに、水平方向にステージが移動する。但し、
図1の配置では、ベローズ軸は、ステージの中心軸から離して設置されているため、それぞれのベローズの伸縮により並進と回転運動が同時に起こる。従って、並進運動のみの場合は、回転運動を打ち消すように圧力を調整する必要がある。また、3本の水平方向駆動用ベローズ3が同時に伸びると、昇降ステージ1は、時計廻りに回転する。
【0054】
昇降ステージ1のZ方向およびあおりをステージ上面3ヶ所に配置された垂直方向距離センサー4により、またX,Y方向とZ軸廻りの回転方向をステージ側面3ヶ所に配置された水平方向距離センサー5により計測する。
【0055】
図2は、垂直方向駆動用空圧ベローズ2の内部を示す部分断面図である。上部フランジ2-1、ステンレスフレキシブルベローズ2-2、下部フランジ2-3が気密溶接されている。下部フランジの内部には、空気導入孔2-4および空気排出孔2-5が設けられた円筒ブロックが設けられている。円筒ブロックによりベローズ内部の容積を減らすことにより、空圧制御の時間応答を改善する。円筒の上部隙間は、垂直方向駆動用空圧ベローズ2の設計ストローク以内に変形範囲を限定する機能もある。円筒ブロックによる内部容積を減らすためにも、ベローズ軸に沿ってステージが駆動され、ベローズの直交方向の変位が少ないことが望ましい。
【0056】
図3では、中央部に垂直方向駆動用空圧ベローズ6(表1:#65-1)が追加されている。空気圧べローズは、バネ作用と空気圧による力制御作用を有するので、昇降ステージ1の機械的自由度6以上の本数を接続しても、過拘束とならない。垂直方向駆動用空圧ベローズの数を増やすことにより、半導体ウェファ接合におけるそりの補正や、接合面の開始位置などを細かく調整することが可能になる。
【0057】
図4は、垂直方向を駆動するベローズを
図3と同じく4本とし、垂直荷重を荷なう太い中央部垂直方向駆動用空圧ベローズ6(表1:#125-2)の周囲に、あおり動作を担当する3本の細い垂直方向駆動用空圧ベローズ2(表1:#25-2)と水平移動および回転を担当する水平方向駆動用空圧ベローズ3(表1:#25-2)を配した例を示す。水平動作およびあおり動作のベローズの直径を小さくすることにより、圧力制御に対する推力を減少させ、精密な位置決めおよびあおり制御を可能にしている。一般にベローズの直径を増加することにより、一山あたりの弾性常数が直径に比例して増加する。また推力は、ベローズの有効面積に比例するため、座屈限界推力は、ベローズ直径の3乗に比例して増加する。逆にベローズの口径を小さくすると、座屈限界圧力が減少するが、太い中央部垂直方向駆動用空圧ベローズ6には陽圧を与え、口径の小さい垂直方向駆動用ベローズ2は減圧状態にして、常に張力が加えられるように圧力調整を行うことにより、座屈を防止できる。あるいは、細い垂直方向駆動用空圧ベローズ2の板厚を厚くし、予め自然長よりは伸長させて引張応力を発生することにより、陽圧においても座屈を防ぐことができる。
【0058】
また、
図4においては、
図1,
図3に配置された水平方向距離センサー5の代わりに、2台のアライメント用顕微鏡7が用いられている。2ヶ所のアライメントマーク8の中心座標を画像処理により検出することにより水平方向(X,Y)とZ軸周りの回転を検出することができる。アライメント顕微鏡に用いるディジタルカメラとしては、例えば東京都日野市旭が丘4-7-1在の東芝テリー製M160などからビニングしてVGA (640x520画素)程度に画素数を制限することにより、汎用CMOSカメラでも500fps程度のフレームレイトを確保することができる。並列画層処理技術により、数msec程度の時間遅れでマーク位置を検出することができ、接合時のその場観察・制御が可能になる。尚、x20倍の対物レンズを用いた解像度は1μm程度である。
【0059】
図5は、従来の伸縮型リニアアクチュエータとユニバーサルジョイントを用いたヘキサポッドを金属フレキベローズに置き換えた場合を示す。この構成では、やや大きな口径の斜め方向空圧ベローズ9(表1:#50-2)6本が、3対を構成し、ベローズ9とステージ1の法線のなす角度は、概ね30°であり、図中破線で示す様に、それぞれのベローズ対の軸は、ステージ上方3点で交叉している。それぞれのベローズ対の底部は、ベローズ対の軸が交叉した点を底面(記載せず)に投影した点を基点とし、ステージ中心がなす線分から45°回転した位置に対照的に配置されている。
図5の構成は、ベローズの固定面が平面であり、ベローズおよび固定治具の形状が全て同一であるため、設計や配置が容易であるという利点がある。一方、ベローズの長さLに対して、ステージの高さHがベローズとステージの法線の角度をαとするとH = L・cos(α)< 1となり、同一ストロークを得るために必要なベローズ長が長くなる。一方、垂直方向の推力はcos(α)倍となるので、座屈を考慮した限界推力は、cos(α)^2だけ不利となる。斜め方向空圧ベローズ9の座屈限界圧力0.28MPaの使用圧力(~0.2MPa)における推力は268Nx2であり、ベローズとステージの法線の角度を30°とすると、6本のベローズからの推力は、2,800Nになる。
【0060】
図6は、
図5において、垂直荷重を荷なう太い中央部垂直方向駆動用空圧ベローズ6(表1:#100-2)を追加した例を示す。中央部垂直方向駆動用空圧ベローズ6を加圧することにより、周辺の斜め方向空圧ベローズ9への圧力を減圧あるいは予め伸ばした位置に保持して引張応力を発生させることができ、座屈限界を緩和できる。また、斜め方向空圧ベローズ9は、垂直方向の推力を必要としないので、
図5よりは、ステージに対して浅く(ベローズとステージの法線の角度を~60°に)設置し、有効径も小さめなベローズ(表1:#25-2)を使用している。すなわち、アライメント調整用ベローズの直径を小さくすることとともに、取り付け角度を調整することにより、座屈を防ぎつつ、設定圧力あたりのステージ駆動量を抑制し、精密なアライメントが可能になる。太い中央部垂直方向駆動用空圧ベローズ6(表1:#100-2)の座屈限界は0.3MPa,使用圧力0.2MPa程度であるため、ステージの最大推力は2,000N程度となる。
【0061】
図7は、水平方向のベローズを4本用いた例を示す。ストリングを用いるパラレルリンクステージの場合、系の自由度+1本のストリングが必要であることが知られているが、座屈圧力の低い細いベローズの圧力を大気圧以下に設定するか予め張力を与えることにより、引張状態となり、長いベローズでも座屈を回避することができる。そのため、
図1の構成よりは、水平方向に長いストロークを確保することができる。また水平方向に長いベローズは、ステージ昇降に伴う軸方向に対して垂直な変形に対しても使用寿命の点で有利となる。
【0062】
空気圧ベローズを用いたパラレルリンクステージの制御性に関して、一定荷重に対するステージ変位や、各空気圧ベローズへの駆動圧力に対するステージ変位をpychrono(http://projectchrono.org/pychrono/)という名称の、剛体運動シミュレーションプログラムにより評価した。実際の空圧ベローズは、圧力に対して伸縮あるいは推力を発生すると同時に、ベローズ両端では、ベローズの傾きに対して抗力を発生する弾性ヒンジ作用がある。すなわち、金属フレキベローズは、両端接続部を弾性ヒンジで固定されたスプリングダンパーと空圧によりスプリング方向に力を発生するリニアアクチュエータとモデリングできる。但し今回は、ヒンジ部分のバネ定数を無視し、リニアスプリングダンパーがトルクを発生しないユニバーサルジョイントに接続されるとして計算した。従って、横方向のステージ剛性は過小評価となる。
【0063】
空圧ベローズステージ制御性の評価としては、各空気圧ベローズの駆動に関して、ステージの剛体としての6自由度に対する応力が十分発生すること(死点が存在しないこと)。垂直推力が他の自由度に比べて大きく取れること。ステージに対する応力と空気圧ベローズへの駆動力、特に、使用強度の大きな垂直応力成分と微小な力制御を必要とするその他の応力成分間にできるだけ相互作用が無いこと、座屈の観点からは引張応力(負)が発生した状態が望ましい等が挙げられる。それらの観点から、
図5、
図6、
図1および
図7の空圧ベローズ配置に対応したスプリングダンパーモデルを解析した。
【0064】
図8は、
図5に相当する、ヘキサポッド配置の空気圧ベローズステージに対応した模式図を示す。ステージとしては、質量7Kg、直径400mm、厚さ20mmの円板とし、自由長さ100mmのバネダンパーを円板の外周からステージ面法線に対して30°また、対となるバネダンパーの底面の投影角を±30°で配置した。ステージの高さは77mmである。バネ定数は、表1:#50-2に相当する14,700N/mとし、ダンピング定数として10N/(m/s)と仮定した。更に、ステージの剛性を評価するために、x,y,z方向に1mm、それぞれの軸の廻りに1°回転したときの抗力を算出した。
図9は
図8においてステージ剛性行列(A)およびバネ抗力行列(B)の計算例を示す。本図では、y方向が垂直軸、左手前がx軸、右手前がz軸で表記されている。
【0065】
図10,11にそれぞれx方向およびy方向に1mmだけ変位させた後の、それぞれ、X軸(A)、Y軸(B)、Z軸(C)およびX軸廻り(D)、Y軸廻り(E)、Z軸廻り(F)におけるステージの自由振動波形の計算結果を示す。
図10においては、水平方向(x方向(A))で周期5Hz、
図11においては、垂直方向(y方向(B))で周期15Hzの減衰振動が得られた。初期条件をx方向のみに与えた場合、y、z方向の振幅は10
-5程度(
図10(B),(C))、回転に関しては、z軸方向に0.2°程度(
図10(F))の付随的な振動が発生している。一方初期条件をy方向のみに与えた場合垂直(y軸、
図11(B))の振動しか観測されない。これは,
図9において、y方向変位に対応するステージ剛性行列要素(A)の2行目において、forceyに対応する2列目しか存在しないことに対応する。
【0066】
尚、
図9において正が圧縮応力、負が引張応力に対応する。
図9(A)において、垂直方向(y)の抗力が-53.2N/mmに対して水平方向(x、z)の抗力は-17.7N/mmである。また水平方向の変位に対して、xおよびz軸廻りにトルクが±3.2N発生しており、回転力が寄生的に発生することを示す。
図9(B)において、各スプリングが発生する抗力は、垂直方向(y)変位に対してはすべて-11.4N/mm、水平方向の変位に対しては,±6N/mm程度の極性の異なる力が発生している。
図9(B)は同時に、各列に相当する応力を発生した場合、それぞれ、x、y、---、rotZに至る6自由度の方向にステージが移動、回転することを示す。
【0067】
図12は、ヘキサポッド配置に加え、中央に大口径の空気圧ベローズ(表1:#100-2)を配置し、周辺に細いベローズ(表1:#25-2)を配置した
図6に対応した空気圧ベローズステージの模式図示す。周辺ベローズの固定点の高さを上げることにより、周辺ベローズの取り付け角度を浅く(水平面から~30°)設定し、周辺ベローズにおける水平方向(x,z)と垂直方向(y)の推力をほぼ等しく設定している。すなわちアライメント調整は周辺ベローズにより行い、加圧は中心部のベローズを用いることにより、垂直方向の推力を保持しつつ、水平および回転、あおり方向のアライメント精度を向上することができる。
【0068】
図13は、
図12においてステージ剛性行列(A)およびバネ抗力行列(B)の計算例を示す。ステージ剛性行列(A)の2行2列目(-23N/mm)は、垂直方向の剛性を示し、水平方向の剛性(-7.3 N/mm)よりも大きい。系の冗長度を利用して、バネ抗力行列(B)においては、中央ベローズ(sp0)に予め圧縮応力(~200N)、周辺ベローズ(sp1-sp6)に引張応力(~-90N)が発生するように、自由長あるいは空気圧を設定することにより、周辺ベローズを張力モードにバイアスし、細いベローズの座屈を防ぐことができる。また、垂直方向に限界座屈圧の大きい太いベローズを追加することにより、垂直方向の推力を増強することができる。
図14および
図15は、
図12においてxおよびy方向の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。振動モードに関しては、
図10,11に類似している。
【0069】
図16は
図1に対応する空気圧ベローズ加圧装置の解析例を示す。垂直方向に太いベローズ(表1:#65-1)が3本、水平方向にステージ中心から30°の方向に、細いベローズ(表1:#25-2)が3本設置されている。バネ定数は、それぞれ16400N/mmおよび2500N/mmとした。
図17は、
図16においてステージ剛性行列(A)およびバネ抗力行列(B)の計算例を示す。
図9に比較すると、x方向の剛性(3.7)に対して、y方向の剛性(49)が大きいこと、x方向の変位に対してz軸方向のトルクが発生しないことから、各軸の独立性が高い。但し、例えば
図17(B)の1列目に示すようにx方向に移動させる場合や、
図17(B)の5列目に示すように垂直方向のみを回転させる(rotY)場合には、水平に設置されたsp1-sp3に加えて、垂直方向に設置されたsp1vt-sp3vtを調節する必要がある。従って、平面方向のみの移動に際しても6本のベローズの設定圧力を並列的に制御することが必要になる。
【0070】
図18、
図19においては、水平方向(x方向)、垂直方向(y方向)ともに周期5Hzの減衰振動が得られた。初期条件をx方向のみに与えた場合、y(
図18(B))、z方向(
図18(C))の振幅は10
-5および10
-9程度、回転に関しては、x(
図18(D))軸まわりに10
-5およびy軸廻りに10
-3程度の付随的な振動が発生している。付随的な振動は、ヘキサポッドの配列に準じた
図10よりは2桁以上抑制されている。また初期条件をy方向のみに与えた場合は、
図10と同じく垂直(y軸、
図19(B))の振動しか観測されない。これは,
図17においても、y方向変位に対応する2行目の行列要素が、forceyに対応する2列目しか存在しないことに対応する。平面に拘束された剛体の自由度(DOF)は3であり、3本のバネにより位置決めが可能であるが、バネには、圧縮力と張力の両方を与える必要がある。実際、
図17(B)において、各軸方向の変位によるバネの抗力の符号は混在している。
【0071】
図20は
図7に示された空圧べローズをバネダンパーに置き換えた場合のステージ模式図を示す。水平方向に1本冗長度を加えることにより、バネに予め張力を与えることができる。実際、
図21のバネ抗力行列(B)において、水平方向に対応するforce_sp1a, force_sp1b, force_sp2a, force_sp2bの抗力はすべて負(張力)に設定できる。
図22および
図23においてx方向およびy方向の初期変位に対するステージ過渡応答の計算例を示す。x方向(
図22(A))およびy方向(
図23(B))の初期振幅1mmの自由振動に対して、それ以外の方向の付随的な振動は発生していない。実際、
図21ステージ剛性行列(A)の非対角項でゼロ成分が多く、位置決め制御が容易になる。また、この構成では、水平ベローズは、ひも(string)と見なせるので、座屈の恐れなく小口径でストロークの長いベローズを選定することができる。
【0072】
電空アクチュエータによる空気圧設定範囲は、真空から座屈限界の3気圧程度が妥当で、その設定精度は、圧力レンジの1/1,000~1/10,000程度が限界である。そのため、加圧装置の位置決め精度を決める方向においては、ベローズの口径を最適化し、水平方向のステージ剛性と発生推力を勘案して、設定可能な圧力範囲でのステージ水平移動範囲を必要最小限(~1mm以下)にすることが望ましい。一方加圧方向には、ベローズの口径を大きく、かつベローズ軸を垂直に設定し、必要な推力確保する必要がある。その際にも、垂直方向の位置決め精度は、垂直方向のバネ定数に比例することを勘案して、ベローズの垂直方向のバネ定数を調整するか、コイルバネなどを付加する必要がある。
【0073】
以下、より具体的に超音波接合装置を構成した場合の本発明実施例に就き説明するに、
図1に示す空気圧ベローズ配置に基づいた超音波接合装置を、
図24に示す。昇降ステージ1の側面3ヶ所にストッパ兼支柱11を設け、ベース板10と上板12を連結している。中央部分の凹みを用いて、昇降ステージ1を挟み込み、ステージの水平方向の可動範囲を±1mm、上下方向のストロークを8mmに制限している。
【0074】
上板12には、レーザ干渉型の垂直方向距離センサー4が3ヶ所に設置されて、上下およびあおり方向の計測・制御を行う。また、支柱11の側面(3ヶ所)には、3角測量型のレーザ距離計を用いた水平方向距離センサー5が設けられ水平方向のステージ位置および回転を計測制御する。通常エアーアクチュエータはシリンダーなどの摺動機構で上下方向のみにストロークを制限するが、6方向の側面の距離を能動的に制御することによりステージの位置および姿勢を一義的に決めることが可能となり、摺動機構が不要となる。
【0075】
昇降ステージ1の上には、超音波ホーン13が設けられ、また上板12の下面には、試料吸着ステージ14が設けられている。半導体チップの導入には、4軸マニュピュレータ15を使用する。まず、昇降ステージ1をストッパの下限まで下ろし、超音波ホーン13および試料吸着ステージ14のそれぞれに向きを反転しつつ2枚の半導体チップを吸着、固定する。
【0076】
上板12には、赤外顕微鏡16が設けられている。2枚の半導体チップの隙間が20μm程度になった時点で、赤外顕微鏡16を用いて、それぞれの半導体チップのアライメントマークを複数位置で確認し、それぞれのチップに設けられたアライメントマークの中心位置が一致するように水平方向駆動用ベローズを制御する。
【0077】
アライメント位置を確認・微調整しながら昇降ステージ1を上昇させ、力対変位の変動を測定し、サンプル同士が重なり合った時点で、超音波加振を開始する。更に荷重(垂直方向駆動用ベローズの圧力)を増加させ、所定(~2μm)のバンプ変形に基づく変位を3ヶ所における垂直方向距離センサー4を用いて計測制御する。
【0078】
アライメントマークによる2つのチップの水平位置および回転角の位置合わせには、少なくとも2ヶ所のアライメントマークが必要となる。赤外顕微鏡16をXYステージ17で移動して複数のアライメントマークのズレを計測する方法と複数の画像を同時に撮影して位置と回転角を計測する方法がある。複数の画像を同時に計測する方が、高速位置サンプリングが必要な運動学的制御には有利であるが、赤外カメラの撮像チップと同程度以下のチップサイズにおいては、スプリットイメージングなどの光学系が必要となる。尚、赤外顕微鏡を用いたアライメントマークの画像解析を行う場合には、昇降ステージ1の側面に設けた水平方向距離センサー5による制御は、比較的高倍率(~x20)の対物レンズの視野にアライメントマーク像が入る程度の精度(~±50μm)で良いため、比較的安価な3角測量型のレーザ距離計5を用いている。
【0079】
図7に示す空気圧ベローズ配置に基づいた半導体ウェファ接合装置を、
図25に示す。ハッチング部は、部分的な断面を示す。
図7に示す空気圧ベローズ配置は、水平駆動用ベローズ3が両側左右対称に配置されるため、ウェファ搬入経路が広く取れる利点がある。水平駆動用ベローズ3の変位は、ベローズの軸に対して直交する方向に±4mm設定されている。そのため、ベローズ内部の空気圧容量を減らすためのブロックの先端方向にテーパを設けている。
【0080】
ウェファ接合の場合、ウェファ温度を300℃程度に昇温する必要がある。従って試料吸着ステージ14および下側試料加熱ステージ20は、シースヒータなどを組み込んだ金属プレートをセラミックスペーサなどで断熱した構造となる。その際、昇降ステージ1、垂直および水平方向駆動用ベローズの一部も加熱される。ベローズ駆動部分の耐熱性は、それらの基部シール部分にバイトンやテフロンOリング21を用いた場合~100-150℃、Oリングを用いない溶接シール構造の場合は300℃程度の耐熱性がある。またベローズは比較的熱伝導度の悪いステンレス薄板でできているため、ステージ面に接する部分と基部とで100℃以上の温度差を設けることができる。すなわち、潤滑油の使用が不可避である高荷重ベアリングやキューリ点の制約がある圧電素子を用いたステージに比べて遙かに耐熱性を有している。また、摺動に伴う発塵などの影響の少なく、清浄環境を保つことが容易である。
【0081】
上板には3個の垂直方向距離センサー4と2台の赤外顕微鏡16が設けられている。試料吸着ステージ14には、アライメントマーク位置に対応して円錐状の開口が設けられ、直径4インチの化合物半導体ウェファ18を透過して下側加熱ステージに置かれたシリコン6インチウェファ19を観察する。2台の赤外顕微鏡16によりそれぞれのアライメントマークの中心位置を計測することにより、水平(X,Y)方向および垂直(Z)方向の回転量が算出できる。
【0082】
3本の垂直方向ベローズ2は、それぞれ注入圧力に比例した垂直応力を発生するため、ウェファ接触後、3点の一定圧による、倣い動作も可能であるし、ステージの6自由度を制御することにより一定の隙間を確保した接合も可能である。例えば銀ペーストや銀ナノペーストを用いて、アライメントを伴うウェファあるいはチップ接合を行う場合、ウェファ間の隙間(ペースト厚さ)を一定に保ちたい場合に適用できる。
【0083】
以上、数百~数万Nの荷重が必要とするチップあるいはウェファ接合装置において、接合に必要なストロークに限定しつつ、安価で清浄環境に耐える空圧ベローズを用いた6自由度アライメント加圧ステージを実現した。要求されるアライメント精度により、画像認識処理を含む様々な非接触距離計測装置が使用可能である。テーブルの姿勢制御に必要な6自由度を同時に計測し、6本あるいはそれ以上の空圧ベローズへの圧力を逆運動力学的に計算・出力する。ステージの固有振動数は100Hz程度であるので、1msec望ましくは100μSの時間間隔にてステージの姿勢を計測し、空気圧の制御を行うことによりサブミクロン以下の位置精度を確保することができる。
【0084】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1:昇降ステージ
2:垂直方向駆動用空圧ベローズ
2-1:昇降ステージ
2-2:垂直方向駆動用空圧ベローズ
2-3:水平方向駆動用空圧ベローズ
2-4:垂直方向距離センサ
2-5:水平方向距離センサー
3:水平方向駆動用空圧ベローズ
4:垂直方向距離センサ
5:水平方向距離センサ
6:中央部垂直方向駆動用空圧ベローズ
7:アライメント用顕微鏡
8:アライメントマーク
9:斜め方向空圧ベローズ
10:ベース板
11:ストッパ兼支柱
12:上板
13:超音波ホーン
14:試料吸着ステージ
15:4軸マニピュレータ
16:赤外顕微鏡
17:XYステージ
18:4インチウェファ
19: 6インチウェファ
20: 下側試料加熱ステージ
21:Oリング
22:スプリング