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特開2022-80363変調波レゾルバ装置および回転角計測補間補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080363
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】変調波レゾルバ装置および回転角計測補間補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191368
(22)【出願日】2020-11-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】599041684
【氏名又は名称】有限会社ワイエスデイ
(71)【出願人】
【識別番号】316012360
【氏名又は名称】内 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】597057472
【氏名又は名称】吉田 征夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 征夫
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA25
2F077CC02
2F077FF34
2F077PP26
2F077TT49
2F077TT83
(57)【要約】
【課題】 解決しようとする問題点は、変調波レゾルバ装置の回転角の高精度誤差補正方法と回転角計測制御装置を用いた高精度誤差補正数値の設定である。
【解決手段】本発明に係る回転角検出方法は、変調波レゾルバ装置のレゾルバの所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を予め第1の記憶素子に保存するための準備工程と、信号発生器により変調波生成信号を生成し出力する工程と、変調波生成回路により変調波生成信号から変調波信号を生成し、変調波レゾルバ装置の入力コイルを駆動する工程と、変調波レゾルバ装置の出力コイルからの出力信号から、回転角検出回路を介して回転角を検出し回転角検出値を出力する工程と、回転角検出値から、当該回転角検出値を含む第1区間を決定し、第1の記憶素子に記憶された第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、当該回転角補正情報を線形補間することにより、回転角検出値の回転角補正値を算出する工程とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調波レゾルバ装置による回転角の検出方法であって、
前記変調波レゾルバ装置のレゾルバの所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を予め第1の記憶素子に保存するための準備工程と、
信号発生器により変調波生成信号を生成し出力する変調波生成信号出力工程と、
変調波生成回路により変調波生成信号から変調波信号を生成し、前記変調波レゾルバ装置の入力コイルを駆動する入力コイル駆動工程と、
前記変調波レゾルバ装置の出力コイルからの出力信号から、回転角検出回路を介して回転角を検出し回転角検出値を出力する回転角検出工程と、
前記回転角検出値から当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、当該回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値の回転角補正値を算出する回転角補正工程と、
前記回転角補正値に基づいて前記回転角検出値を補正し、補正された補正回転角を出力する補正回転角出力工程と、を備えることを特徴とする回転角検出方法。
【請求項2】
前記回転角補正情報算出ステップの前に、第2の記憶素子に記憶された振幅電圧調整情報及び位相調整情報の少なくとも一方の情報を読み出し、読み出した情報に基づいて、振幅電圧調整回路により前記変調波生成回路から出力される変調波信号の振幅電圧を制御し、及び/又は位相調整器により前記信号発生器から出力される変調波生成信号の位相を制御する回転角誤差調整ステップを含み、
前記第2の記憶素子に記憶された前記振幅電圧調整情報及び前記位相調整情報は、レゾルバの回転角の誤差を予め計測し、当該誤差が最小となる最小振幅電圧調整情報、及び最小位相調整情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出方法。
【請求項3】
前記最小振幅電圧調整情報、及び前記最小位相調整情報は、予め計測された前記レゾルバの回転角の誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの2次の次数成分を最小とする前記振幅電圧調整情報、及び前記位相調整情報であることを特徴とする請求項2に記載の回転角検出方法。
【請求項4】
前記準備工程は、前記レゾルバの回転角の誤差を計測し、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を算出する工程と、
前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差を算出し、前記回転角補正情報を生成する工程と、
前記回転角補正情報を前記第1の記憶素子に記憶する工程を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の回転角検出方法。
【請求項5】
前記準備工程は、前記レゾルバの回転角の誤差を計測し、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を算出する工程と、
前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの1次の次数成分を除去して得られたフーリエ変換データから、逆フーリエ変換して前記第1区間の回転角誤差を算出し、前記回転角補正情報を生成する工程と、
前記回転角補正情報を前記第1の記憶素子に記憶する工程を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の回転角検出方法。
【請求項6】
前記初期回転角誤差は、無補正のレゾルバの回転角又は補正された前記補正回転角と、計測した機械回転角との差として求めることを特徴とする請求項4又は5に記載の回転角検出方法。
【請求項7】
回転角を検出するための変調波レゾルバ装置であって、
変調波生成信号を出力する信号発生器、検出された回転角を補正するための回転角補正情報を記憶する第1の記憶素子、及び前記回転角補正情報から回転角補正値を算出する演算素子を含む演算部を有するコントローラと、
前記信号発生器に接続され、前記変調波生成信号から変調波信号を生成する変調波生成回路と、
前記変調波生成回路から出力される変調波信号により駆動される入力コイルと、レゾルバの回転角に応じた回転角信号を出力する出力コイルとを備えたレゾルバメカ機構と、
前記出力コイルに接続され前記回転角信号から回転角検出値を出力する回転角検出回路と、を備え、
前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記レゾルバの所定の第1区間ごとの回転角に対応して決定されており、
前記演算素子は、前記回転角検出回路から出力される前記回転角検出値から、当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、読み出した回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値を補正した補正回転角を算出し、前記コントローラの出力端子から出力することを特徴とする変調波レゾルバ装置。
【請求項8】
前記変調波信号の振幅電圧を制御するための振幅電圧調整回路を更に備え、
前記コントローラは、振幅電圧調整情報及び位相調整情報を記憶する第2の記憶素子と、前記振幅電圧調整情報に対応して前記振幅電圧調整回路を制御するための振幅電圧調整信号を出力する振幅調整器と、前記位相調整情報に対応して前記変調波生成信号の位相を制御するための位相調整信号を出力する位相調整器と、を備え、
前記第2の記憶素子に記憶された前記振幅電圧調整情報及び前記位相調整情報は、レゾルバの回転角の誤差を予め計測し、当該誤差が最小となる最小振幅電圧調整情報、及び最小位相調整情報を含むことを特徴とする請求項7に記載の変調波レゾルバ装置。
【請求項9】
前記最小振幅電圧調整情報、及び前記最小位相調整情報は、予め計測された前記レゾルバの回転角の誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの2次の次数成分を最小とする前記振幅電圧調整情報、及び前記位相調整情報であることを特徴とする請求項8に記載の変調波レゾルバ装置。
【請求項10】
前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を予め計測し、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差を含むことを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の変調波レゾルバ装置。
【請求項11】
前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を予め計測し、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの1次の次数成分を除去して得られたフーリエ変換データから、逆フーリエ変換して得られた前記第1区間の回転角誤差を含むことを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の変調波レゾルバ装置。
【請求項12】
前記初期回転角誤差は、無補正のレゾルバの回転角又は補正された前記補正回転角と、計測した機械回転角との差として求めることを特徴とする請求項10又は11に記載の変調波レゾルバ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調波レゾルバ装置の回転角誤差補正機構および回転角誤差補正値の設定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の巻線型のレゾルバは、鉄心と複数の巻線コイルで構成されており、電磁誘導現象により、回転角度や位置検出を検出する電磁気式の絶対変位検出センサーである。この巻線型のレゾルバは、形状および重量が大きく、製造コストが高いなどの問題点があった。一方で、鉄心と巻線コイルのみで構成されており構造が単純で、信頼性が高く、耐環境性に優れるため、航空機、電気自動車、ロボット、工作機械などに広い分野で採用されている。
【0003】
また、レゾルバには、巻線型以外に、特許文献1に開示されている変調波レゾルバ装置が知られている。変調波レゾルバは、従来の巻線型のレゾルバに較べて、高周波の駆動信号を利用できるので、検出感度を高くできるため、コイル巻数も大幅に減少することができる。このため変調波レゾルバ装置では、回転機構に含まれる入力及び出力コイルをパターン化してプリント基板上に形成されている。これにより、小型、軽量で、製造コストが低いという優れた特性を持っている。また、引用文献2には、高周波(約500kHz)の変調波を用いた変調波レゾルバ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3047231号
【特許文献2】特開2018-31704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レゾルバは、構造的に堅牢で耐環境性に優れているため、屋外で使用される航空宇宙、建設機械、AIロボット、工作機械などに使用されてきた。一方で、エンコーダなどと比較すると回転角検出精度が低いという課題を抱えている。そこで高精度化を目指したレゾルバの回転角誤差補正が、一般的に行われている。
【0006】
レゾルバメカ機構のSIN系列入力コイルとCOS系列入力コルから回転角θを出力するステイタとロータ間の内部プリント基板で構成されたコイル間に構造上の偏差および製造上の誤差が存在する。これらのレゾルバ内部の構造上の誤差は、レゾルバの出力信号の振幅や位相の不整合となって現れる。
この調整として、SIN系列入力コイルとCOS系列入力コル間の振幅および位相調整を駆動回路上で精密に調整する必要がある。この調整操作は、従来は手動で、試行錯誤によって行われていたために、高精度な補正には限界があり、手間と作業時間が掛かっていた。求められているのは、振幅および位相調整の合理的で高精度な調整手段である。
【0007】
個々のレゾルバは、1回転360度の分解数について、個体ごとに固有の回転角誤差を持っている。レゾルバは回転センサーの特性から、回転角誤差を高精度に補正することが求められている。しかし、分解数の数だけ、計測器で計測しそれを補正するのは、分解数が増大(例えば16ビット:65536点)すると、実現困難となり現実的ではない。
現実的に計測可能な50~100点くらいの少ない計測点数の回転角誤差を基に、細分化、微細化して、最終的にレゾルバの分解数に対応する分解能まで伸張して、回転角誤差を正確に補間出来れば理想的である。
要するに少ない計測点数で、大きな分解数の回転角誤差を正確に補間補正出来るようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転角検出方法は、変調波レゾルバ装置による回転角の検出方法であって、前記変調波レゾルバ装置のレゾルバの所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を予め第1の記憶素子に保存するための準備工程と、信号発生器により変調波生成信号を生成し出力する変調波生成信号出力工程と、変調波生成回路により変調波生成信号から変調波信号を生成し、前記変調波レゾルバ装置の入力コイルを駆動する入力コイル駆動工程と、前記変調波レゾルバ装置の出力コイルからの出力信号から、回転角検出回路を介して回転角を検出し回転角検出値を出力する回転角検出工程と、前記回転角検出値から当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、当該回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値の回転角補正値を算出する回転角補正工程と、前記回転角補正値に基づいて前記回転角検出値を補正し、補正された補正回転角を出力する補正回転角出力工程とを備える。
【0009】
本発明に係る回転角検出方法では、変調波レゾルバ装置のレゾルバの所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を予め第1の記憶素子に保存し、変調波レゾルバ装置から出力される回転角検出値から、当該回転角検出値を含む第1区間を決定し、第1の記憶素子に記憶された第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、回転角補正情報を線形補間することにより、回転角検出値の回転角補正値を算出し、回転角補正値に基づいて回転角検出値を補正し、補正回転角を出力することができる。予め第1の記憶素子に保存された所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を用いて、第1区間の回転角誤差を線形補間して、回転角検出値の回転角補正値を求めているので、回転角を精密に、かつ高精度で検出することができる。また、第1の記憶素子に保存する回転角補正情報は、第1区間ごとの回転角補正情報であり、この回転角補正情報を利用して、更に第1区間の回転角誤差を線形補間して回転角検出値の回転角補正値を求めているため、第1の記憶素子に保存する回転角補正情報の容量を少なくすることができる。また、回転角検出値の回転角補正値を算出する演算器の負荷も低減できるので、高速に補正された補正回転角を出力することができる。
【0010】
また、本発明に係る回転角検出方法では、前記回転角補正情報算出ステップの前に、第2の記憶素子に記憶された振幅電圧調整情報及び位相調整情報の少なくとも一方の情報を読み出し、読み出した情報に基づいて、振幅電圧調整回路により前記変調波生成回路から出力される変調波信号の振幅電圧を制御し、及び/又は位相調整器により前記信号発生器から出力される変調波生成信号の位相を制御する回転角誤差調整ステップを含み、前記第2の記憶素子に記憶された前記振幅電圧調整情報及び前記位相調整情報は、レゾルバの回転角の誤差を予め計測し、当該誤差が最小となる最小振幅電圧調整情報、及び最小位相調整情報を含むことを特徴としてもよい。
【0011】
変調波レゾルバ装置は、レゾルバメカ機構のSIN系列入力コイルとCOS系列入力コルは、例えばプリント基板上に形成することができる。しかし、これらのコイル間には、構造上の偏差および製造上の誤差が存在することがある。これらのレゾルバ内部の構造上の誤差は、レゾルバの出力信号の振幅や位相の不整合となって現れる。本発明に係る回転角検出方法では、レゾルバ内部の構造上に起因するレゾルバの出力信号の振幅や位相の不整合に基づく回転角誤差を計測し、これらの誤差を小さくするための振幅電圧調整情報及び位相調整情報が第2の記憶素子に記憶されており、この振幅電圧調整情報及び位相調整情報を読み出して振幅電圧調整回路により前記変調波生成回路から出力される変調波信号の振幅電圧を制御し、及び/又は位相調整器により前記信号発生器から出力される変調波生成信号の位相を制御する回転角誤差調整ステップを含むことができる。振幅電圧調整情報及び位相調整情報は、レゾルバの回転角の誤差が最小となる最小振幅電圧調整情報、及び最小位相調整情報を含むことができる。これにより、レゾルバ内部の構造上に起因するレゾルバの出力信号の振幅や位相の不整合に基づく回転角誤差を予め低減することができる。この結果、所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報の精度も向上することができる。
【0012】
また、本発明に係る回転角検出方法では、前記最小振幅電圧調整情報、及び前記最小位相調整情報は、予め計測された前記レゾルバの回転角の誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの2次の次数成分を最小とする前記振幅電圧調整情報、及び前記位相調整情報であることを特徴としてもよい。
【0013】
変調波レゾルバ装置のコイルの構造上の偏差および製造上の誤差に起因する回転角誤差は、回転角誤差のパワースペクトルの2次成分として現れる。本発明に係る回転角検出方法では、最小振幅電圧調整情報、及び最小位相調整情報は、予め計測されたレゾルバの回転角の誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの2次の次数成分を最小とする振幅電圧調整情報、及び前記位相調整情報であるので、変調波レゾルバ装置のコイルの構造上の偏差および製造上の誤差に起因する回転角誤差を効果的に低減することができる。
【0014】
また、本発明に係る回転角検出方法では、前記準備工程は、前記レゾルバの回転角の誤差を計測し、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を算出する工程と、 前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差を算出し、前記回転角補正情報を生成する工程と、前記回転角補正情報を前記第1の記憶素子に記憶する工程を含むことを特徴としてもよい。
【0015】
また、本発明に係る回転角検出方法では、前記準備工程は、前記レゾルバの回転角の誤差を計測し、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を算出する工程と、 前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの1次の次数成分を除去して得られたフーリエ変換データから、逆フーリエ変換して前記第1区間の回転角誤差を算出し、前記回転角補正情報を生成する工程と、前記回転角補正情報を前記第1の記憶素子に記憶する工程を含むことを特徴としてもよい。
【0016】
本発明に係る回転角検出方法では、第1区間の回転角誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの1次の次数成分を除去して得られたフーリエ変換データから、逆フーリエ変換して第1区間の回転角誤差を算出し、前記回転角補正情報を生成する。これにより、回転角を検出する対象物の回転軸にレゾルバメカ機構を取り付け時の偏心と軸の傾斜に関わる誤差を取り除いた、レゾルバ装置内部の構造的な誤差成分のみを取り出して、回転角補正情報を生成することができる。これにより、レゾルバメカ機構の取り付け方法に依存しない回転角補正情報を得ることができるので、中空軸タイプのレゾルバ装置に適用することができる。
【0017】
また、本発明に係る回転角検出方法では、前記初期回転角誤差は、無補正のレゾルバの回転角又は補正された前記補正回転角と、計測した機械回転角との差として求めることを特徴としてもよい。初期回転角誤差は、無補正のレゾルバの回転角又は補正された補正回転角と、計測した機械回転角との差として求めることができる。特に、初期回転角誤差を補正された補正回転角と計測した機械回転角との差として求めた場合は、無補正のレゾルバの回転角を用いた場合に比べて、初期回転角誤差を更に低減することができる。
【0018】
また、本発明に係る変調波レゾルバ装置は、回転角を検出するための変調波レゾルバ装置であって、変調波生成信号を出力する信号発生器、検出された回転角を補正するための回転角補正情報を記憶する第1の記憶素子、及び前記回転角補正情報から回転角補正値を算出する演算素子を含む演算部を有するコントローラと、前記信号発生器に接続され、前記変調波生成信号から変調波信号を生成する変調波生成回路と、前記変調波生成回路から出力される変調波信号により駆動される入力コイルと、レゾルバの回転角に応じた回転角信号を出力する出力コイルとを備えたレゾルバメカ機構と、前記出力コイルに接続され前記回転角信号から回転角検出値を出力する回転角検出回路とを備えることができる。前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記レゾルバの所定の第1区間ごとの回転角に対応して決定されており、前記演算素子は、前記回転角検出回路から出力される前記回転角検出値から、当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、読み出した回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値を補正した補正回転角を算出し、前記コントローラの出力端子から出力することを特徴としてもよい。
【0019】
また、本発明に係る変調波レゾルバ装置では、前記変調波信号の振幅電圧を制御するための振幅電圧調整回路を更に備えることができる。また、前記コントローラは、振幅電圧調整情報及び位相調整情報を記憶する第2の記憶素子と、前記振幅電圧調整情報に対応して前記振幅電圧調整回路を制御するための振幅電圧調整信号を出力する振幅調整器と、前記位相調整情報に対応して前記変調波生成信号の位相を制御するための位相調整信号を出力する位相調整器とを備えることができる。さらに、前記第2の記憶素子に記憶された前記振幅電圧調整情報及び前記位相調整情報は、レゾルバの回転角の誤差を予め計測し、当該誤差が最小となる最小振幅電圧調整情報、及び最小位相調整情報を含むことを特徴としてもよい。
【0020】
また、本発明に係る変調波レゾルバ装置では、前記最小振幅電圧調整情報、及び前記最小位相調整情報は、予め計測された前記レゾルバの回転角の誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの2次の次数成分を最小とする前記振幅電圧調整情報、及び前記位相調整情報であることを特徴としてもよい。
【0021】
また、本発明に係る変調波レゾルバ装置では、前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を予め計測し、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差を含むことを特徴としてもよい。
【0022】
また、本発明に係る変調波レゾルバ装置では、前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を予め計測し、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの1次の次数成分を除去して得られたフーリエ変換データから、逆フーリエ変換して得られた前記第1区間の回転角誤差を含むことを特徴としてもよい。
【0023】
また、本発明に係る変調波レゾルバ装置では、前記初期回転角誤差は、無補正のレゾルバの回転角又は補正された前記補正回転角と、計測した機械回転角との差として求めることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る回転角検出方法では、変調波レゾルバ装置のレゾルバの所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を予め第1の記憶素子に保存し、変調波レゾルバ装置から出力される回転角検出値から、当該回転角検出値を含む第1区間を決定し、第1の記憶素子に記憶された第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、回転角補正情報を線形補間することにより、回転角検出値の回転角補正値を算出し、回転角補正値に基づいて回転角検出値を補正し、補正回転角を出力することができる。予め第1の記憶素子に保存された所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を用いて、さらに第1区間の回転角誤差を線形補間して、回転角検出値の回転角補正値を求めるという2段階の回転角の誤差補正を行っているので、回転角を精密に、かつ高精度で検出することができる。また、第1の記憶素子に保存する回転角補正情報は、第1区間ごとの回転角補正情報であり、この回転角補正情報を利用して、更に第1区間の回転角誤差を線形補間して回転角検出値の回転角補正値を求めているため、第1の記憶素子に保存する回転角補正情報の容量を少なくすることができる。また、回転角検出値の回転角補正値を算出する演算器の負荷も低減できるので、高速に補正された補正回転角を出力することができる。
【0025】
また、本発明に係る変調波レゾルバ装置では、変調波レゾルバ装置のレゾルバの所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を予め保存された第1の記憶素子を有している。変調波レゾルバ装置から出力される回転角検出値から、当該回転角検出値を含む第1区間を決定し、第1の記憶素子に記憶された第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、回転角補正情報を線形補間することにより、回転角検出値の回転角補正値を算出し、回転角補正値に基づいて回転角検出値を補正し、補正回転角を出力することができる。予め第1の記憶素子に保存された所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を用いて、第1区間の回転角誤差を線形補間して、回転角検出値の回転角補正値を求めるといった2段階の回転角の誤差補正を行っているので、回転角を精密に、かつ高精度で検出して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、変調波レゾルバ装置の構成を示した図である。
図2図2は、回転角計測制御装置の構成を示した図である。
図3図3は、回転角の振幅/位相調整と誤差補間補正の処理手順 を示した図である。
図4図4は、SIN系列とCOS系列の振幅電圧調整回路例を示した 図である。
図5図5は、回転角θと回転角誤差Δθの関係を示した図である。
図6図6は、回転角誤差のパワースペクトルの例を示した図である。
図7図7は、位相調整を説明した図である。
図8図8は、直交性の位相誤差に起因する回転角誤差を示した図である。
図9図9は、回転角の振幅/位相調整のフローチャートを示した 図である。
図10図10は、回転角誤差の補正ステップの工程を説明した図である。
図11図11は、回転角の誤差補間補正(第1次補間補正)のフローチャートを示した図である。
図12図12は、第2次補間補正(線形補間)の方法を説明した 図である。
図13図13は、変調波レゾルバの原理構成を説明するための図 である。
図14図14は、回転角検出回路の各信号の流れを説明するため の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図1図14に基づいて説明する。
本発明に係る変調波レゾルバについて説明する前に、まず、変調波レゾルバ装置の動作原理について説明する。
【0028】
図13に変調波レゾルバの原理構成図を示す。従来の変調波レゾルバは、直交するSIN、COSの信号波を包絡線に持つ変調波(搬送波)で、レゾルバメカ機構の入力コイルを駆動し、出力コイルからのレゾルバの回転角に伴う出力変調波の位相を検出して、回転角または回転数を測定するというシンプルな原理で動作する。
【0029】
図14には、回転角検出回路の各信号の流れを説明するための図を示す。
レゾルバメカ機構7の出力コイルから出力される出力変調波から回転位相θを検出する過程の信号を、参照信号を基準に示す。レゾルバメカ機構7の出力コイルから出力される回転角θだけ位相回転された変調波を、差動増幅器を通して振幅増幅する。差動増幅後の信号は、AM変調波の他に様々な高周波成分を含むため、かなり歪んだ波形となっている。この後の変調波再生回路を通すと、不要な高周波成分が除去され、信号波を包絡線に持つ本来のAM変調波が再生される。
【0030】
検波回路で、基本クロックで位相同期検波を行うと、参照信号の半周期に同期した極性反転に連動して信号波のエンベロープが得られる。その後の位相同期検波で、AM変調波がサイン波状に変換される。
次に、フィルタを通すと完全な信号波が得られる。位相検出回路で、この信号波とのゼロクロス点から位相入力θが検出される。この位相入力θをカウントし、コントローラ1に入力することによってレゾルバの回転角を求めることが出来る。
【0031】
図1には、本発明を適用した変調波レゾルバ装置1の一実施例の構成を示す。
変調波レゾルバ装置1は、電子制御基板で構成され、変調波レゾルバメカ機構7を統括、制御する。
変調波レゾルバ装置1は、フラッシュメモリが組み込まれたコントローラ2、入力コイルを駆動する駆動回路である変調波生成回路3と変調波生成回路4、振幅電圧調整回路5そして回転角検出回路6から構成される。
【0032】
コントローラ2はDSPあるいはFPGAで構成される。
レゾルバの入力コイルを駆動する駆動回路としては、様々な方式の回路があるが、本例では、符号付きPWM回路を用いた実施例を示す。SIN系列の信号と変調波生成回路3でレゾルバメカ機構7の入力コイルを駆動し、COS系列の信号と変調波生成回路4で他方の入力コイルを駆動する。
レゾルバメカ機構7の回転に伴って、出力コイルから回転角信号が出力される。回転角検出回路6で回転角θが検出され、コントローラ2に入力される。このときの回転角θは、本実施形態における検出回転角に相当する。
【0033】
コントローラ2には、フラッシュメモリが組み込まれ、複数の記憶領域を有することができる。後で詳しく説明するが、フラッシュメモリには、補間補正情報と調整情報が格納される。調整情報には、さらに振幅情報と位相情報が含まれている。また、フラッシュメモリは、本実施形態における第1の記憶素子、及び/又は第2の記憶素子として機能することができる。第1の記憶素子には補間補正情報が格納され、第2の記憶素子には調整情報が格納される。
フラッシュメモリ内の補間補正情報と調整情報は、あらかじめ、変調波レゾルバ措置1と回転角計測制御装置12を用いて、それぞれの最適値がSPI(Serial Peripheral Interface )バスを通して書き込まれている。
【0034】
電源ON時に、振幅情報は、振幅調整器から振幅電圧調整回路に出力され、本例では、変調波生成回路4の電源Vcに供給され、COS振幅を調節する。振幅電圧調整回路はSIN振幅側の変調波生成回路側を調整することも可能である。
同様に電源ON時に、位相情報は、位相調整器から、本例では、SIN系列信号発生部に供給され、SIN側の直交位相を調節する。位相調整器はCOS系列信号発生部側を調整することも可能である。
これらの調整後の段階で動作する変調波レゾルバは、フラッシュメモリによる回転角誤差補正前の最小の回転角誤差(±0.3度~±1度程度)を示している。
【0035】
実行前のコンローラ2内のフラッシュメモリには、さらに、回転角計測制御装置12からSPIを通して補間補正情報が書き込まれている。このときフラッシュメモリは、本実施形態における第1の記憶素子として機能している。
回転角計測制御装置12内では、SIN-COS振幅および位相調整後の段階から、さらに高精度補正をするために、第1次補間補正が行われる。後で詳しく説明されるが、例えばまず、360度の間を100点抽出し回転角誤差を計測する。この区間が、本実施形態における第2区間に相当する。次に、計測した100点の計測回転角誤差データから、例えば3次スプライン補間を行い、そこからスプライン関数演算により、さらに2048点の区間に細分化された補正データである細分化セルを生成する。この2048点に細分化した区間が、本実施形態における第1区間に相当する。
【0036】
電源ON後のコントローラ2の実行段階では、細分化セルを用いて、さらに高精度の補正となる第2次補間補正が行われる。後で詳しく説明されるが、これは、計測データの補正値を求める手段として、細分化セルの下位ビット補正値を線形補間によりを求め、そこから全ビット長の補正値である微細化セルを生成する。その補正値から、レゾルバの現在の回転角情報11が求められる仕組みになっている。この回転角情報11が本実施形態における補正回転角出力に相当する。
【0037】
図2に、回転角計測制御装置12の構成を示す。
回転角計測制御装置12は、変調波レゾルバ装置1とレゾルバメカ機構7の使用条件に合わせて回転角および回転角誤差を計測し、回転角誤差の補正をアシストするための外部装置である。
【0038】
回転角計測制御装置12には、下記の3項目の機能がある。
・ レゾルバの1回転、0度~360度間の回転角の計測。
・ SIN系列入力コイルとCOS系列入力コル間の振幅および位相調整を駆動回路上で精密に制御調整する。得られた振幅および位相調整データを、コントローラ2のフラッシュメモリの調整情報に転送する。
・ 外部回転角計測制御装置の高性能演算装置(PCおよびそれに付属するGPU)を用いて高精度補正の最適値を演算し、演算結果の最適値(細分化セル)をコントローラ2のフラッシュメモリの補間補正情報に転送する。
【0039】
本発明では、総合的な回転角誤差を高精度に補正するために、コントローラ2の演算機構と小容量のフラッシュメモリを活用し、大容量の分解数を持つレゾルバの高精度補正を、効果的に実現している。
回転角誤差の高精度補正を実現するためには、小容量のフラッシュメモリに厳選された最適値を設定する必要がある。
【0040】
この手段として外部回転角計測制御装置には、高性能演算装置(PCおよびそれに付属するGPU)を装備し、AI、ディジタル信号処理を含む誤差を最小とする演算アルゴリズム(演算量が多い)により最適値を算出し、演算結果の最適値(細分化セル)をコントローラ2のフラッシュメモリに設定する。これらの一連の処理は、生産工程では、連続したループの中で、高速に実行されることを要求されるので、高性能演算装置が必須の条件となる。
【0041】
一方、実行マシン(FORWARD)となるコントローラ2は、必要最小限の低機能演算機構と小容量のフラッシュメモリを装備し、簡易な構成で安価なハードウエアで実行することができる。
【0042】
回転角計測制御装置12は、変調波レゾルバ装置1、レゾルバメカ機構7、レゾルバメカ機構7を回転駆動するステッピングモータ8とインタフェース制御部9、およびシステムを統括する高性能演算装置PC 10から構成される。
ステッピングモータ8は、レゾルバメカ機構7の回転軸を所定の回転角だけ回転させる機能があり、より高精度に回転軸を回転させるには、回転軸にさらに高精度エンコーダを追加装備することもある。
【0043】
回転角計測制御装置12の統括処理は、PC 10のGUI画面から指令、制御される。PC 10はUSBを経由してインタフェース制御部9と接続されている。
インタフェース制御部9は、FPGAをコントローラにして、以下の3つの役割を持つ。
(1)USBラインを通して、PC 10との通信を行い、PC 10からのコマンドを実行し、変調波レゾルバ装置1からのSPIを経由した情報をPC 10に送信する。
(2)PC 10のコマンドにより、ステッピングモータ制御回路を通してレゾルバメカ機構7の回転軸に接続されたステッピングモータの回転を制御する。
(3)SPIを通して、変調波レゾルバ装置1と情報の交信を行う。
コントローラ2からは、SPIを経由してレゾルバの回転角情報をインタフェース制御部9で受信し、インタフェース制御部9からは、後で詳しく説明する調整情報と補間補正情報を、SPIを経由してコントローラ2のフラッシュメモリに送信する。
【0044】
レゾルバの1回転360度の回転角計測データN点を計測するには、以下の手順により実行する。
PC画面のコマンド指令でNを指定し、インタフェース制御部9内のステッピングモータ制御回路からドライバを介してステッピングモータ8を指令数だけ歩進回転させ、その時のレゾルバの回転角を計測し、これをN回繰り返すことで、1回転360度の回転角を自動計測することが出来る。この回転角計測データとステッピングモータの回転角の差から、1回転360度の回転角誤差データを算出することが出来る。
本例では、ステッピングモータ8の歩進回転数からレゾルバの回転角を取得しているが、より正確には、同じ回転軸に高精度エンコーダを装着し、そこから回転角を取得する方法が用いられる。
【0045】
図3には、回転角計測制御装置12の振幅/位相調整と誤差補間補正の処理手順を示している。
補間補正は、下記の3つの主要なPHASEから出来ている。
この内、最初の2項目は、回転角計測制御装置12を用いて実行される。
「SIN-COS駆動信号-振幅位相調整」
「第1次補間補正」
「第2次補間補正」:変調波レゾルバ装置1の単独実行
このPHASEの手順に沿って、以下にその機能と動作を説明する。
【0046】
「SIN-COS駆動信号-振幅位相調整」のPHASEについて、最初に「振幅調整制御」を続いて「位相調整制御」について説明する。
【0047】
レゾルバメカ機構7のSIN系列入力コイルとCOS系列入力コルから回転角θを出力するステイタとロータ間の内部プリント基板で構成されたコイル間に構造上の偏差および製造上の誤差が存在する。これらのレゾルバ内部の構造上の誤差は、レゾルバの出力信号の振幅や位相の不整合となって現れる。
【0048】
この補正として、SIN系列入力コイルとCOS系列入力コル間の振幅および位相調整を駆動回路上で精密に調整する必要がある。この調整操作は、従来は手動で、試行錯誤によって行われていたために、高精度な補正には限界があり、手間と作業時間が掛かっていた。高精度な振幅および位相調整の合理的な手段が求められている。
【0049】
レゾルバ内部の構造上の誤差は、レゾルバの出力信号の振幅や位相の不整合となって現れる。ここでは、振幅補正をレゾルバ外部で、SIN系列入力コイルとCOS系列入力コル間の電圧振幅を精密に調整することで、間接的にレゾルバ内部の構造上の誤差に対処するようにしたものである。
【0050】
「SIN-COS駆動信号-振幅/位相調整」のPHASEについて、図4図8を用いて以下に説明する。図9に、回転角の振幅/位相調整のフローチャートを示す。
(1)計測誤差データN点を取収集
(2)パワースペクトル2次あるいは最大誤差の最小化を指標に追尾
追尾制御⇒振幅/位相調整情報の確定
・ 調整情報をコントローラのフラッシュメモリに転送
このとき、フラッシュメモリは、本発明の第2の記憶素子として機能している。
【0051】
図4には、SIN系列とCOS系列の振幅電圧調整回路例を示す。
本例では、SIN系列とCOS系列の駆動方式として、変調波生成に符号付きPWM回路を用いて、入力コイルを駆動する例を示す。コントローラ2のSIN系列信号発生部からのSIN -SW回路3でレゾルバメカ機構7の入力コイルを駆動し、COS系列信号発生部からのCOS-SW回路4で他方の入力コイルを駆動する。
【0052】
本例は、振幅電圧調整回路として、DAC_PWM信号とフルターの組合せによる簡単な構成のDAC(Digital Analog Converter :D/A変換器)を組込んで、振幅調整を行う例を示したものである。
精密にSIN系列入力コイルとCOS系列入力コル間の振幅調整をするには、レゾルバメカ機構を1回転させたときの回転角誤差を最小にする振幅調整が必要となる。
【0053】
この場合は、SIN系列の電圧Vsを基準にして、COS系列の電圧をVc=Vs±ΔVとして、回転角誤差が最小となる±ΔVを探索する操作によりCOS系列の電圧調整を行うことで、変調波SINとCOSの振幅調整を行う。この操作は、従来は手動で、試行錯誤によって行われていた。
【0054】
Vcは、コントローラ2からDAC5の出力電圧を制御することで得られる。コントローラがFPGAの場合には、ΣΔ方式が用いられることもあるが、本例では、構成の簡単なPWM制御のD/A変換器5を用いた例を示す。DAC5はコントローラ2からの指令信号DAC_PWM信号によって動作し、Vcを制御する。
Vcの最適値は、後述の回転角計測制御装置を用いて決定され、振幅情報としてコントローラ内のフラッシュメモリの調整情報に記憶され、コントローラの電源ON時にVcを再生することが出来る。
【0055】
レゾルバ内部の構造上の誤差は、レゾルバの出力信号の振幅や位相の不整合となって現れるが、その原理的な仕組みと誤差調整について説明する。
変調波レゾルバの回転原理は、信号波によって規定され、信号波によって、その動作が実現される。信号波は参照信号を周期とする正弦波および余弦波で構成され、レゾルバの基本動作を表現する。図13の変調波は信号波のキャリアであり、変調波の包絡線が信号波となっている。
【0056】
変調波レゾルバの回転原理を、複素関数を用いて表現すると、信号波回転角をωt、レゾルバ回転角をθとして、(1)式のように表される。
【数1】
【0057】
この関係を、複素関数と三角関数をつなぐオイラーの公式で表現すると、実数部と虚数部からそれぞれ、下記の三角関数の加法定理が得られる。

cosωt・cosθ-sinωt・sinθ=cos(ωt+θ) (2)
sinωt・cosθ+cosωt・sinθ=sin(ωt+θ) (3)

虚数部の(3)式に注目して、ゼロクロス点を考える(本発明の回転角検出回路6でも、位相を信号波のゼロクロス点で検出する)。
(3)式のゼロクロス点は、sin(ωt-θ)=0であるから、ωt-θ=0、πのときである。
ωt-θ=0の側のゼロクロス点に注目して、θ=ωtの時にゼロクロスする。すなわち、ゼロクロスする回転角ωtを計測すれば、回転角θを求めることが出来る仕組みになっている。
【0058】
「振幅調整制御」について、原理式を用いて説明する。
(3)式の左辺に注目し、ゼロクロス点を考える。SIN波とCOS波の振幅差がある場合には、それぞれの振幅をV1、V2とし、信号波回転角をωt、レゾルバ回転角をθとして、下記のように表現できる。
(V1 sinωt)・cosθ±(V2 cosωt)・sinθ=0 (4)
ここで、V1とV2の振幅比を k=V2 / V1 = 1+Δk とする。
このように振幅比にΔkの差があるときには、回転角θに(5)式に示すような回転角誤差Δθが生じる。
Δθ≒(90 / π)Δk sin2θ (度) (5)
回転角θと回転角誤差Δθの関係を図5に示す。
【0059】
DACの分解能を10ビットにすると、Δk=ΔV/Vsと(5)式を参考にして、
1ビット当たりの回転角誤差Δθの分解能は,以下の(6)式で表される。これから、分解能が10ビット程度のDACでも充分な精度の振幅調整を行うことが出来る。
Δθ≒±(90 / π)/1024=±0.028度 (6)
【0060】
SIN波とCOS波の振幅差による回転角誤差Δθの特徴は、(5)式のΔk sin2θにある。回転角0°~360°間の誤差分布をフーリエ変換して、高次誤差の分析をするときに、回転角誤差Δθは、パワースペクトルが2次のところに現れる。回転角誤差のパワースペクトルの例を図6に示す。
このことから、2次のところに顕著な数値が出たときには、変調波SINとCOSの振幅調整が不十分であることも一因であることを示している。逆に、2次のパワースペクトルが最小になった状態が最良の振幅調整の出来た状態を示している。
【0061】
レゾルバの回転角をθとして、回転角誤差Δθのフーリエ級数をsin側で示すと、以下の(7)式のように表現できる。
Δθ=a0+a1×sinθ+a2×sin2θ+a3×sin3θ+a4×sin4θ+・・・
(7)
ここで、Δθのフーリエ級数の係数(a0,a1,a2,a3,a4・・・)に注目すると、各係数のそれぞれは、レゾルバの構造的な誤差要因と関係している。
例えば、a0はDC成分で誤差計測のオフセット、a1はレゾルバの回転軸の偏芯と傾き、a2はSINとCOSの振幅差および直交位相の誤差、a1、a2、a3、a4はメカ機構の構造に、それぞれ起因している。レゾルバの回転角誤差の精度を向上するためには、これらの誤差要因を改善することが必要である。
【0062】
再び、図4を参照して、SIN系列とCOS系列の振幅電圧調整回路例に適用すると、レゾルバのメカ機構の内部的な機械構造の不整合を、入力コイルの片側の電圧を補正調整することでバランスさせ、これに対処するものである。
回転角誤差Δθを最小にするために、指標となるパワースペクトル2次の値を観測し、この数値が最小となるようにDACの出力Vc(ΔVを含む)を追尾制御し、Δθの最小値を得るように調整することになる。
【0063】
パワースペクトル2次の値を求めるには、FFT演算にCPUパワーが必要であるが、計測データをPCに取り込んで、数ms程度でオンライン、リアルタイム実行が可能である。
回転角誤差Δθを最小化する手段として、(5)式と関連付けたパワースペクトル2次の最小化による振幅調整の仕組みが本発明の要諦である。
【0064】
「位相調整制御」について、図7図8を用いて以下に説明する。
ここでは、SIN系列とCOS系列の直交性の角度誤差を位相誤差と表現している。
位相誤差があるときには、その位相誤差分だけ、キャンセルするように位相を調整する。
位相誤差を調整する手段は、図7に示すように、例えば、COS曲線を基準にしてSIN曲線を位相シフトすることで実現する。
【0065】
「位相調整制御」の原理式について説明する。
変調波レゾルバの回転角の式は、再び、下記の式(3)のように表される。
sinωt・cosθ±cosωt・sinθ=sin(ωt±θ) (3)
ここでゼロクロス点を考えると
sinωt・cosθ±cosωt・sinθ=sin(ωt±θ)=0
またsinωtとcosωtの直交性にsinωtを基準にして、cosに直交性の誤差Δだけの誤差があると、cos(ωt±Δ)となる。その影響は回転角θの回転から、( θ ± Δθ )となって表されると考える。
【数2】
【0066】
(8)式で±の-側をとると、sin(sinωt-θ)=0からωt=θとなる。

これから(8)式は以下のように示される。

【数3】
【0067】
【数4】
【0068】
【数5】
【0069】
ここで、( θ ± Δθ )の最大となるのは、sinθ=1、COS(θ±Δ)=0となる点で、θ=90度および270度である。そのときの最大値は、Δθ=Δのときである。
すなわち、最大位相誤差は、最大回転角誤差に等しい。
例えば、最大回転角誤差Δθ=±1度のときには、最大位相誤差Δ=±1度となる。
位相誤差Δによる回転角誤差Δθを図8に示す。
図8で、回転角0度~360度の間に、回転角誤差の山が2個ある。
この誤差パターンは、フーリエ解析すると、図6にも示されるようにパワースペクトルが2次のところにピークが顕著に現れる。
【0070】
回転角誤差Δθを最小にするために、指標となるパワースペクトル2次の値を観測し、この数値が最小となるように位相を追尾制御し、Δθの最小値を得るように調整すればよいことになる。このことは、位相誤差も振幅誤差と同様に、パワースペクトル2次のところに複合して表れることを示す。
【0071】
一般に、位相誤差は振幅誤差に比較して小さい値を持つ。
そのため、回転角誤差Δθを最小にする制御の順番としては、回転角誤差の大きい振幅誤差を先に実施し、誤差が充分に小さくなった後に、まだパワースペクトル2次の値が残っている時には、位相誤差を最小にする追尾制御を行うようにする。
最終的には、回転角誤差の縮小傾向を見ながら、回転角誤差が最小となるように、振幅誤差と位相誤差の振り分けを行うことになる。
【0072】
図9には、回転角の振幅/位相調整のフローチャートを示す。
回転角計測制御装置で、最初に計測誤差データN点を取得する。次に2次スペクトルが最小、あるいは誤差データの振幅が最小になるようにSIN-COS振幅/位相調整を行い、その時の振幅情報/位相情報を取得する。この振幅情報/位相情報はSPIバスを通して、コントローラ2のフラッシュメモリの調整情報に転送する。
このサイクルは、SIN-COS振幅調整およびSIN-COS位相調整について独立に行われ、それぞれ、2次スペクトルが最小、あるいは誤差データの振幅が最小値になった時点で完了する。
【0073】
「第1次補間補正」のPHASEについて図10図11を用いて以下に説明する。
図10は回転角誤差の補正ステップの工程を説明するための図であり、図11は回転角の誤差補間補正(第1次補間補正)のフローチャートである。
(1)計測誤差データN点を収集
(2)3次スプライン補間
(3)スプライン関数演算
2048個(11ビット)の細分化セルを生成
(4)補間補正情報: 2048個(11ビット)細分化セル
シャフトタイプ:スプライン関数演算データ
中空軸タイプ :逆フーリエ変換データ
(5)補間補正情報をコントローラのフラッシュメモリに転送
【0074】
レゾルバのSIN-COS振幅/位相調整によって、レゾルバの構造的な補正をした後にも、比較的大きな回転角誤差(通常±0.5度~±1度程度)が残っている。
この回転角誤差をさらに補正する手段は、SIN-COS振幅/位相調整後に、レゾルバの
1回転360度の回転角誤差を計測収集し、この回転角誤差データをコントローラ内のフラッシュメモリに記録し、計測データからこの数値を相殺することで補正を行うという原理に基づいている。
【0075】
個々のレゾルバは、1回転360度の分解数について、個体ごとに固有の回転角誤差を持っている。レゾルバは回転センサーの特性から、回転角誤差を高精度に補正することが求められている。しかし、分解数の数だけ、計測器で計測しそれを補正するのは、分解数が増大(本例では、16ビット:65536点)すると、実現困難となり現実的ではない。
そこで本発明では、SIN-COS振幅/位相調整後の現実的に計測可能なN点(本例では100点)の回転角誤差を回転角計測制御装置12で計測し、それを基に細分化、微細化して、最終的にレゾルバの分解数に対応する分解能まで正確に補間補正するようにしている。
【0076】
図10回転角誤差の補正ステップの工程にその様子を示す。計測誤差データを補正する補正値を「第1次補間補正」:細分化、「第2次補間補正」:微細化として、この2段ステップによって、より正確な回転角補間情報を得られるようにしたものである。
「第1次補間補正」は、回転角計測制御装置12で実行され、「第2次補間補正」はコントローラ2内で実行される。
【0077】
第1次補間補正について、図11回転角の誤差補間補正(第1次補間補正)のフローチャートを基に説明する。
生成された細分化セル(補正データ)を求めるには、まず回転角計測制御装置12で、SIN-COS振幅/位相調整済の0度~360度間の計測誤差データN点を収集する。
計測データは、変調波レゾルバ装置1のSPIバスから出力される。計測誤差データは、計測データとステッピングモータの回転角との差で表される。
このN点の計測誤差データを基に、フラッシュメモリの容量に合わせて細分化する。このデータを細分化セルと呼称する。細分化セルの数は、後のFFT演算および線形補間のBRM演算の関係から2進数である必要があり、本例では2048個としている。
生成された細分化セルは、インタフェース制御部9のSPIを通して、変調波レゾルバ装置1内にあるコントローラ2のフラッシュメモリに補間補正情報として転送される。
【0078】
計測誤差データN点から2048点の細分化セルを生成する過程では、計測誤差データN点の離散データから、誤差が小さくなるように内挿化される2048点の細分化セルを、生成する手段が問題となる。
そのためにまず、計測誤差データN点の間を接続する手段として、折れ線ではなく、出来るだけ滑らかな曲線で各点を連続的に接続するほうが、誤差を小さくする手段として合理的である。本発明では、隣接する誤差データの各接続点で、相互にデータ値が一致し、かつ微係数が等しい3次スプライン補間を用いて連続的に各点を滑らかに接続している。
【0079】
N点を滑らかに接続する3次スプライン補間から、さらにデータ点数を細分化するために、スプライン関数を用いる。1回転の誤差曲線をN点から2048点への拡張と細分化を、スプライン関数の演算実行間隔を2048にすることで得られる。このスプライン関数の演算で、2048個の細分化セルを得ることが出来る。
【0080】
変調波レゾルバには、SIN- COS入力コイル間の振幅および位相調整をしてもなお微小な回転角誤差が残っている。さらに、この他にも複数の要因のレゾルバ内部の構造上の回転角誤差がある。シャフトタイプでは、レゾルバメカ機構7の偏芯、傾斜角などの機構的な誤差が加算される。
レゾルバの回転角誤差補正に関しては、以下の2種類がある。
・ シャフトタイプは、レゾルバ内部の構造的な回転角誤差に加えて、
回転軸の偏芯、傾きの誤差を含めた総合的な回転角誤差を補正する。
・ 中空軸タイプは、総合的な回転角誤差から、回転軸の偏芯、傾きの誤差を外して、レゾルバ内部の構造的な回転角誤差のみを補正する。
【0081】
中空軸タイプに関しては、図6回転角誤差のパワースペクトルの例を参照して説明する。フーリエ解析後のパワースペクトルのデータ系列の次数において、レゾルバ内部の構造的な回転角誤差に関係しているのは、調整された後にも残った2次パワースペクトルを含めて、それ以上の高次パワースペクトルである。回転軸の偏芯、傾きの誤差に関係しているのは1次パワースペクトルで、中空軸タイプでは、この項を分離する。
【0082】
この分離手段として、先ず、2048点の細分化セルの平均値を取ってDC成分を削除する。
次に、このデータ系列を、FFTを用いてフーリエ解析する。この結果のDC成分と1次成分の複素データを0としたデータ系列で、逆フーリエ変換を行って、2048点のデータ系列を得ることができる。このデータ系列からは、回転軸の偏芯、傾きの回転角誤差が選択的に削除され、レゾルバ内部の構造的な回転角誤差に関係するデータ系列のみが分離され残されている。
なお、レゾルバ内部の構造的な回転角誤差の範囲は、削除するDC成分と1次成分の他に特定の高次の範囲を指定することも可能である。例えば、2次成分~32次成分以外は0とするようなバンド幅のデータ系列で逆フーリエ変換を行うことも出来る。
【0083】
フラッシュメモリに書込きこむ補間補正情報の「細分化セル」は、レゾルバの構造に応じて、下記の2種類となる。
(1)シャフトタイプのとき
スプライン関数演算で細分化したデータ系列
(2)中空軸タイプのとき
スプライン関数演算で細分化したデータ系列をフーリエ変換したデータの、1次成分だけを0としたデータ系列を逆フーリエ変換したデータ系列
この細分化セルは補間補正情報として、SPIを通してコントローラ2のフラッシュメモリに転送される。
【0084】
コントローラ2内にあるフラッシュメモリの補間補正情報の細分化セルのデータは、初期値を0に設定する。この設定により、初回の計測誤差データN点には、細分化セルデータの関与しない生データを計測することが出来る。初回の実行ループ後の細分化セルの初回データには、計測誤差生データを相殺する補間補正データが設定される。
【0085】
次の実行ループの計測誤差データN点には、細分化セルデータの関与した第1次補正補間後の(初回の計測誤差を相殺した)小さい計測誤差が観測される。相殺しても誤差がゼロとならないのは、第1次補正補間と第2次補正補間による操作で、実際の誤差データとの間に、小さな‘ずれ’が生じているからである。
この誤差成分を前回の補間補正情報に符号付き加算して、フラッシュメモリの補間補正情報にある2048個の細分化セルデータを修正アップデートすることが出来る。
この補間補正の実行フィードバック・ループの繰り返しにより、回転角誤差を最小化し、さらなる高い回転角精度を更新することが出来る。
【0086】
「第2次補間補正」のPHASE:
変調波レゾルバ装置の単独実行による高精度化ついて図12を用いて以下に説明する。
(1)計測データ(本例では16ビット)を取得
(2)線形補間
計測データと細分化セルから
BRM演算⇒65536点(16ビット)に微細化
(3)微細化セルから回転角情報を演算
(4)SPIバスから補正回転角情報を出力
【0087】
細分化セルは、計測制御装置12内で、0度から360度間の計測誤差分布を、スプライン関数演算を実行して最適に2048分割して得られたものである。その後、2048個の細分化セルは、変調波レゾルバ装置1内にあるコントローラ2のフラッシュメモリに補間補正情報として転送される。コントローラ2の電源ON時に、フラッシュメモリの補間補正情報はRAMに転送され、回転角情報の高速演算実行が可能となる。
【0088】
本例では、細分化セルを格納するRAMアドレスは、2048(11ビット)である。
レゾルバ回転位置の計測データ(本例では16ビット)の上位11ビットが細分化セルに割り付けられる。この段階で、隣接する細分化セル間を直線とみなしても誤差は非常に小さいと想定できる。その前提で、細分化セルの下位5ビットを線形補間で求めることが出来る。
回転角誤差データ
=細分化セルデータ+線形補間データ
【0089】
図12を参照して、細分化セルeiとei+1の間は5ビット(16ビット-11ビット=5ビット)ある。
実際の計測データ値(16ビットデータ)は、細分化セルiとi+1の間に存在する。計測データ値(16ビットデータ)の下位5ビットをjとすると、この下位5ビットが線形補間の対象区間となる。
アドレス16ビットは、以下のように構成される。
アドレス16ビット=11ビット(細分化セル区間:RAM 2k)+5ビット(線形補区間)
【0090】
細分化セルのアドレスをiとし、そのデータeiとすると、
細分化セルの隣接差分データΔeは、Δe=ei+1-eiとなる。
また、線形補間区間(5ビット)内のローカル・アドレスjを(j=0~31)とすると、任意のjのときの線形補間値Δejは、(12)式のように示される(Δejは±の符号を持つ)。
Δej= (Δe /32)×j=Δe×j /32 (12)
(12)式はBRM(Binary Rate multiplier)という手法で、2進数を用いることで、
割算1/32を、5ビット右シフトという簡易な演算のみで算出可能となる(従来は、除算器が必要であった)。
以上の演算から、補正値を示す微細化セルデータは(ei+Δej)で示される。
【0091】
補正された回転角情報は、以下の(13)式で示される。
回転角情報=計測データ値―微細化セルデータ(ei+Δej) (13)
回転角分解数16ビットのレゾルバでは、65536点に微細化され、この微細化セルから補正された回転角情報が求められる。
変調波レゾルバ装置1は、SPIバスから外部デバイスの要求に応じて、その時点の補正された回転角情報を外部に出力することが出来る。
【0092】
メモリ上に補間補正情報として2048個ある各細分化セルは、下位5ビットの線形情報空間を持っている。下位の線形処理は一義的に実行されるので、回転角誤差精度を決定するのは、細分化セルの補正情報の内容に依存することが分かる。細分化セルに最適化された補正データを設定することが、回転角誤差精度を最小化する手段となる。
【0093】
上記に示した実施形態は一例であり、本発明は特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形が考えられる。例えば、本実施例では、レゾルバの入力コイルをスイッチ回路で直接駆動している例を示しているが、変調波を用いて駆動するなども、本発明の範囲内である。
また、説明のために用いた例題の各種の数値は、実際の特許の行使の場面では、変更されるのは、言うまでもない事である。
【0094】
本発明の変調波レゾルバ装置の回転角誤差の高精度補正により、変調波レゾルバの持っている小型、軽量、耐環境性、低コスト化などの特徴が活かされる。
変調波レゾルバ装置は、AIロボット、航空宇宙、情報倉庫、工作機械、玩具などの基幹部品として採用され得る。また、IoTの回転センサーとして、5GなどのICT革命の汎用回転センサーとして有望であり、将来的に大きな成長市場が期待できる。
【符号の説明】
【0095】
1 変調波レゾルバ装置
2 コントローラ
3 変調波生成回路
4 変調波生成回路
5 振幅電圧調整回路
6 回転角検出回路
7 レゾルバメカ機構
8 ステッピングモータ
9 インタフェース制御部
10 PC
11 回転角情報、調整情報、補間補正情報
12 回転角計測制御装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2021-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調波レゾルバ装置による回転角の検出方法であって、
前記変調波レゾルバ装置のレゾルバの所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を予め第1の記憶素子に保存するための準備工程と、
信号発生器により変調波生成信号を生成し出力する変調波生成信号出力工程と、
変調波生成回路により変調波生成信号から変調波信号を生成し、前記変調波レゾルバ装置の入力コイルを駆動する入力コイル駆動工程と、
前記変調波レゾルバ装置の出力コイルからの出力信号から、回転角検出回路を介して回転角を検出し回転角検出値を出力する回転角検出工程と、
前記回転角検出値から当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、当該回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値の回転角補正値を算出する回転角補正工程と、
前記回転角補正値に基づいて前記回転角検出値を補正し、補正された補正回転角を出力する補正回転角出力工程と、を備え、
前記回転角補正工程の前に、第2の記憶素子に記憶された振幅電圧調整情報及び位相調整情報の少なくとも一方の情報を読み出し、読み出した情報に基づいて、振幅電圧調整回路により前記変調波生成回路から出力される変調波信号の振幅電圧を制御し、及び/又は位相調整器により前記信号発生器から出力される変調波生成信号の位相を制御する回転角誤差調整ステップを含み、
前記第2の記憶素子に記憶された前記振幅電圧調整情報及び前記位相調整情報は、レゾルバの回転角の誤差を予め計測し、当該誤差が最小となる最小振幅電圧調整情報、及び最小位相調整情報を含むことを特徴とする回転角検出方法。
【請求項2】
前記最小振幅電圧調整情報、及び前記最小位相調整情報は、予め計測された前記レゾルバの回転角の誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの2次の次数成分を最小とする前記振幅電圧調整情報、及び前記位相調整情報であることを特徴とする請求項に記載の回転角検出方法。
【請求項3】
前記準備工程は、前記レゾルバの回転角の誤差を計測し、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を算出する工程と、
前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差を算出し、前記回転角補正情報を生成する工程と、
前記回転角補正情報を前記第1の記憶素子に記憶する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角検出方法。
【請求項4】
前記準備工程は、前記レゾルバの回転角の誤差を計測し、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を算出する工程と、
前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの1次の次数成分を除去して得られたフーリエ変換データから、逆フーリエ変換して前記第1区間の回転角誤差を算出し、前記回転角補正情報を生成する工程と、
前記回転角補正情報を前記第1の記憶素子に記憶する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角検出方法。
【請求項5】
変調波レゾルバ装置による回転角の検出方法であって、
前記変調波レゾルバ装置のレゾルバの所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を予め第1の記憶素子に保存するための準備工程と、
信号発生器により変調波生成信号を生成し出力する変調波生成信号出力工程と、
変調波生成回路により変調波生成信号から変調波信号を生成し、前記変調波レゾルバ装置の入力コイルを駆動する入力コイル駆動工程と、
前記変調波レゾルバ装置の出力コイルからの出力信号から、回転角検出回路を介して回転角を検出し回転角検出値を出力する回転角検出工程と、
前記回転角検出値から当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、当該回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値の回転角補正値を算出する回転角補正工程と、
前記回転角補正値に基づいて前記回転角検出値を補正し、補正された補正回転角を出力する補正回転角出力工程と、を備え、
前記準備工程は、前記レゾルバの回転角の誤差を計測し、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を算出する工程と、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差を算出し、前記回転角補正情報を生成する工程と、前記回転角補正情報を前記第1の記憶素子に記憶する工程を含むことを特徴とする回転角検出方法。
【請求項6】
変調波レゾルバ装置による回転角の検出方法であって、
前記変調波レゾルバ装置のレゾルバの所定の第1区間ごとの回転角を補正するための回転角補正情報を予め第1の記憶素子に保存するための準備工程と、
信号発生器により変調波生成信号を生成し出力する変調波生成信号出力工程と、
変調波生成回路により変調波生成信号から変調波信号を生成し、前記変調波レゾルバ装置の入力コイルを駆動する入力コイル駆動工程と、
前記変調波レゾルバ装置の出力コイルからの出力信号から、回転角検出回路を介して回転角を検出し回転角検出値を出力する回転角検出工程と、
前記回転角検出値から当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、当該回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値の回転角補正値を算出する回転角補正工程と、
前記回転角補正値に基づいて前記回転角検出値を補正し、補正された補正回転角を出力する補正回転角出力工程と、を備え、
前記準備工程は、前記レゾルバの回転角の誤差を計測し、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を算出する工程と、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの1次の次数成分を除去して得られたフーリエ変換データから、逆フーリエ変換して前記第1区間の回転角誤差を算出し、前記回転角補正情報を生成する工程と、前記回転角補正情報を前記第1の記憶素子に記憶する工程を含むことを特徴とする回転角検出方法。
【請求項7】
前記初期回転角誤差は、無補正のレゾルバの回転角又は補正された前記補正回転角と、計測した機械回転角との差として求めることを特徴とする請求項3~6のいずれか一項に記載の回転角検出方法。
【請求項8】
回転角を検出するための変調波レゾルバ装置であって、
変調波生成信号を出力する信号発生器、検出された回転角を補正するための回転角補正情報を記憶する第1の記憶素子、及び前記回転角補正情報から回転角補正値を算出する演算素子を含む演算部を有するコントローラと、
前記信号発生器に接続され、前記変調波生成信号から変調波信号を生成する変調波生成回路と、
前記変調波生成回路から出力される変調波信号により駆動される入力コイルと、レゾルバの回転角に応じた回転角信号を出力する出力コイルとを備えたレゾルバメカ機構と、
前記出力コイルに接続され前記回転角信号から回転角検出値を出力する回転角検出回路と、
前記変調波信号の振幅電圧を制御するための振幅電圧調整回路と、を備え、
前記コントローラは、振幅電圧調整情報及び位相調整情報を記憶する第2の記憶素子と、前記振幅電圧調整情報に対応して前記振幅電圧調整回路を制御するための振幅電圧調整信号を出力する振幅調整器と、前記位相調整情報に対応して前記変調波生成信号の位相を制御するための位相調整信号を出力する位相調整器と、を備え、
前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記レゾルバの所定の第1区間ごとの回転角に対応して決定されており、
前記第2の記憶素子に記憶された前記振幅電圧調整情報及び前記位相調整情報は、レゾルバの回転角の誤差を予め計測し、当該誤差が最小となる最小振幅電圧調整情報、及び最小位相調整情報を含み、
前記演算素子は、前記回転角検出回路から出力される前記回転角検出値から、当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、読み出した回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値を補正した補正回転角を算出し、前記コントローラの出力端子から出力することを特徴とする変調波レゾルバ装置。
【請求項9】
前記最小振幅電圧調整情報、及び前記最小位相調整情報は、予め計測された前記レゾルバの回転角の誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの2次の次数成分を最小とする前記振幅電圧調整情報、及び前記位相調整情報であることを特徴とする請求項8に記載の変調波レゾルバ装置。
【請求項10】
前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を予め計測し、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の変調波レゾルバ装置。
【請求項11】
前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を予め計測し、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの1次の次数成分を除去して得られたフーリエ変換データから、逆フーリエ変換して得られた前記第1区間の回転角誤差を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の変調波レゾルバ装置。
【請求項12】
回転角を検出するための変調波レゾルバ装置であって、
変調波生成信号を出力する信号発生器、検出された回転角を補正するための回転角補正情報を記憶する第1の記憶素子、及び前記回転角補正情報から回転角補正値を算出する演算素子を含む演算部を有するコントローラと、
前記信号発生器に接続され、前記変調波生成信号から変調波信号を生成する変調波生成回路と、
前記変調波生成回路から出力される変調波信号により駆動される入力コイルと、レゾルバの回転角に応じた回転角信号を出力する出力コイルとを備えたレゾルバメカ機構と、
前記出力コイルに接続され前記回転角信号から回転角検出値を出力する回転角検出回路と、を備え、
前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記レゾルバの所定の第1区間ごとの回転角に対応して決定されていると共に、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を予め計測し、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差を含み、
前記演算素子は、前記回転角検出回路から出力される前記回転角検出値から、当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、読み出した回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値を補正した補正回転角を算出し、前記コントローラの出力端子から出力することを特徴とする変調波レゾルバ装置。
【請求項13】
回転角を検出するための変調波レゾルバ装置であって、
変調波生成信号を出力する信号発生器、検出された回転角を補正するための回転角補正情報を記憶する第1の記憶素子、及び前記回転角補正情報から回転角補正値を算出する演算素子を含む演算部を有するコントローラと、
前記信号発生器に接続され、前記変調波生成信号から変調波信号を生成する変調波生成回路と、
前記変調波生成回路から出力される変調波信号により駆動される入力コイルと、レゾルバの回転角に応じた回転角信号を出力する出力コイルとを備えたレゾルバメカ機構と、
前記出力コイルに接続され前記回転角信号から回転角検出値を出力する回転角検出回路と、を備え、
前記第1の記憶素子に記憶された前記回転角補正情報は、前記レゾルバの所定の第1区間ごとの回転角に対応して決定されていると共に、前記第1区間と異なる第2区間における初期回転角誤差を予め計測し、前記第2区間の前記回転角誤差を補間して得られた前記第1区間の回転角誤差をフーリエ解析して得られた回転角誤差のパワースペクトルの1次の次数成分を除去して得られたフーリエ変換データから、逆フーリエ変換して得られた前記第1区間の回転角誤差を含み、
前記演算素子は、前記回転角検出回路から出力される前記回転角検出値から、当該回転角検出値を含む前記第1区間を決定し、前記第1の記憶素子に記憶された前記第1区間の両端の回転角補正情報を読み出し、読み出した回転角補正情報を線形補間することにより、前記回転角検出値を補正した補正回転角を算出し、前記コントローラの出力端子から出力することを特徴とする変調波レゾルバ装置。
【請求項14】
前記初期回転角誤差は、無補正のレゾルバの回転角又は補正された前記補正回転角と、計測した機械回転角との差として求めることを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載の変調波レゾルバ装置。