IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特開2022-80409ズームレンズ及びそれを有する撮像装置
<>
  • 特開-ズームレンズ及びそれを有する撮像装置 図1
  • 特開-ズームレンズ及びそれを有する撮像装置 図2
  • 特開-ズームレンズ及びそれを有する撮像装置 図3
  • 特開-ズームレンズ及びそれを有する撮像装置 図4
  • 特開-ズームレンズ及びそれを有する撮像装置 図5
  • 特開-ズームレンズ及びそれを有する撮像装置 図6
  • 特開-ズームレンズ及びそれを有する撮像装置 図7
  • 特開-ズームレンズ及びそれを有する撮像装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080409
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】ズームレンズ及びそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20220523BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191458
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】安部 大史
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA16
2H087PA15
2H087PA19
2H087PB17
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087SA57
2H087SA63
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA72
2H087SA74
2H087SB04
2H087SB15
2H087SB22
2H087SB35
2H087SB44
2H087UA06
(57)【要約】
【課題】撮像素子の大型化に伴う光学系全体の大型化を抑制しつつも、高い光学性能を有したズームレンズおよびそれを有する撮像装置を得ること。
【解決手段】本発明のズームレンズは、物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、負の屈折力を有する第5レンズ群と、正の屈折力を有する第6レンズ群からなり、変倍に際して隣り合うレンズ群の間隔が変化し、前記第6レンズ群の焦点距離、前記第6レンズ群内の最も物体側に配置されたレンズの焦点距離、物体側面の曲率半径および像側面の曲率半径を適切に設定することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、負の屈折力を有する第5レンズ群と、正の屈折力を有する第6レンズ群から成り、
変倍に際して隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
前記第6レンズ群の焦点距離をf6、前記第6レンズ群内の最も物体側に配置されたレンズの焦点距離、物体側面の曲率半径および像側面の曲率半径をそれぞれ、f61、R61f、R61rとしたとき、
-0.8<f61/f6<-0.2
1.5<(R61r+R61f)/(R61r-R61f)<4.0
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
広角端に対して望遠端では、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が広がり、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が狭まり、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群との間隔が狭まり、前記第4レンズ群と前記第5レンズ群との間隔が変化し、前記第5レンズ群と前記第6レンズ群との間隔が広がるように各レンズ群の間隔が変化することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
広角端に対し望遠端では、前記第6レンズ群は像側に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第1レンズ群と前記第3レンズ群は変倍のためには移動しないことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第6レンズ群の最も物体側の面から最も像側の面までの光軸上の間隔をL6としたとき、
-2.5<R61f/L6<-0.5
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第6レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、物体側が凹面である負レンズ、像側が凸面である正レンズ、像側が凸面である正レンズ、で構成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のズームレンズと、該ズームレンズによって形成された像を受光する撮像素子を有していることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はズームレンズ及びそれを有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた監視カメラ、ネットワークカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置に用いる撮影光学系には、小型でありながら高い変倍比を有したレンズが要望されている。
【0003】
近年、監視カメラ市場の急速な拡大に伴い、監視カメラ用のレンズに対する要望が種々挙げられている。例えば、設置性や目立ちにくさの観点から小型化の要望があるとともに、監視映像データが法廷証拠として使用される観点からも高精細かつ高感度の要望が望まれている。
特許文献1、2は、正の屈折力のレンズ群が最も物体側に配置される、ポジティブリード型のズームレンズを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-126278号公報
【特許文献2】特開2017-207665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、物体側から像側へ順に、正、負、正、正、負、正の第1レンズ群~第6レンズ群の6つのレンズ群よりなる実施例が示されている。ズーミングに際して第1レンズ群、第4レンズ群、最も像側のレンズ群は不動で、それ以外のレンズ群を移動させている。
【0006】
特許文献1、2のいずれも、小型で高い変倍比を備えたズームレンズの提供を目的としたものである。しかしながら、本発明の光学系はいずれも、撮像素子の大型化に伴う光学系全体の大型化の抑制が不十分であるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、これらの課題を鑑み、撮像素子の大型化に伴う光学系全体の大型化を抑制しつつも、高い光学性能を有したズームレンズおよびそれを有する撮像装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のズームレンズは、物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、負の屈折力を有する第5レンズ群と、正の屈折力を有する第6レンズ群からなり、変倍に際して隣り合うレンズ群の間隔が変化し、前記第6レンズ群の焦点距離をf6、前記第6レンズ群内の最も物体側に配置されたレンズの焦点距離、物体側面の曲率半径および像側面の曲率半径をそれぞれ、f61、R61f、R61rとしたとき、
-0.8<f61/f6<-0.2
1.5<(R61r+R61f)/(R61r-R61f)<4.0
なる条件式を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
撮像素子の大型化に伴う光学系全体の大型化を抑制しつつも、高い光学性能を有したズームレンズおよびそれを有する撮像装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の広角端におけるレンズ断面と移動軌跡の図である。
図2】実施例1の(A)広角端、(B)ズーム中間位置、(C)望遠端における無限遠合焦時の諸収差図である。
図3】実施例2の広角端におけるレンズ断面と移動軌跡の図である。
図4】実施例2の(A)広角端、(B)ズーム中間位置、(C)望遠端における無限遠合焦時の諸収差図である。
図5】実施例3の広角端におけるレンズ断面と移動軌跡の図である。
図6】実施例3の(A)広角端、(B)ズーム中間位置、(C)望遠端における無限遠合焦時の諸収差図である。
図7】保護カバーおよび実施例1のズームレンズ断面図である。
図8】本発明のズームレンズの監視カメラでの使用例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のズームレンズ及びそれを有する撮像装置を図面に基づいて説明する。
本発明の目的を達成するためのズームレンズは、最も物体側から像側へ順に、正、負、正、正、負、正の屈折力を有する6つのレンズ群から構成されている。そしてズーミングに際して、隣り合うレンズ群の間隔が変化する。
【0012】
図1は本発明での実施例1のズームレンズの広角端(短焦点距離端)におけるレンズ断面図と移動軌跡、図2は実施例1のズームレンズの(A)広角端、(B)ズーム中間位置、(C)望遠端(長焦点距離端)における無限遠合焦時の収差図である。
【0013】
実施例1のズームレンズはズーム比9.72、Fナンバー2.27~4.12である。
図3は本発明での実施例2のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図と移動軌跡、図4は実施例2のズームレンズの(A)広角端、(B)ズーム中間位置、(C)望遠端における無限遠合焦時の収差図である。実施例2のズームレンズはズーム比9.72、Fナンバー2.27~4.12である。
【0014】
図5は本発明での実施例3のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図と移動軌跡、図6は実施例3のズームレンズの(A)広角端、(B)ズーム中間位置、(C)望遠端における無限遠合焦時の収差図である。実施例3のズームレンズはズーム比9.72、Fナンバー2.27~4.12である。
図7は、実施例1のズームレンズに保護カバー16が装着された状態の断面図である。
図8は、本発明の撮像装置の要部概略図である。
【0015】
各実施例のズームレンズは、監視カメラ、ネットワークカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置に用いる撮影光学系である。レンズ断面図において、左方が被写体側(物体側)(前方)で、右方が像側(後方)である。レンズ断面図において、B1は正の屈折力(光学的パワー=焦点距離の逆数)の第1レンズ群、B2は負の屈折力の第2レンズ群、B3は正の屈折力の第3レンズ群、B4は正の屈折力の第4レンズ群、B5は負の屈折力の第5レンズ群、B6は正の屈折力の第6レンズ群である。隣接するレンズ群の間隔は変倍に際して変化する。SPは開口絞りであり第3レンズ群B3の物体側に隣接して位置している。開口絞りSPの開口径は、ズーミングの際に一定としても、ズーミングに応じて変化させても良い。開口絞りSPの開口径をズーミングに際して変化させると、軸外マージナル光線をカットし、コマフレアを低減することができるため、より良好な光学性能を得られる。
【0016】
Gは光学フィルター、フェースプレート等に相当する光学ブロックである。IPは像面であり、撮影光学系として使用するときはCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面に相当する。
【0017】
収差図において、FnoはFナンバー、ωは半画角(度)である。d、gはそれぞれd線、g線、M、Sはそれぞれメリディオナル像面、サジタル像面を表している。非点収差はd線におけるメリディオナル像面、サジタル像面を表示し、歪曲収差はd線を表示し、倍率色収差はd線に対するg線の収差を表示している。
【0018】
レンズ断面図において、実線の矢印は、無限遠合焦時の広角端から望遠端へのズーミングに際しての各レンズ群の移動軌跡を示し、破線の矢印は、近距離物体への合焦時の広角端から望遠端へのズーミングに際しての各レンズ群の移動軌跡を示す。実線の矢印Fは、無限遠距離物体から近距離物体へのフォーカシングをするときのフォーカスレンズの移動方向を示している。
【0019】
なお、以下の各実施例において広角端と望遠端は、変倍レンズ群が機構上、光軸上で移動可能な範囲の両端に位置した時のズーム位置をいう。
本発明の実施例1~3では、ズーミングに際して矢印のように、第1レンズ群B1と第3レンズ群B3は不動で、第2レンズ群B2と、第4レンズ群B4、第5レンズ群B5、第6レンズ群B6が移動する。
【0020】
また、第5レンズ群B5を光軸上で移動させてフォーカシングをおこなうインナーフォーカス方式を採用している。第5レンズ群B5に関する実線と点線の曲線は、各々無限遠物体と近距離物体にフォーカスしているときの、変倍に伴う像面変動を補正するための移動軌跡である。また、望遠端において無限遠物体から近距離物体へフォーカスを行う場合は、矢印Fに示すように、第5レンズ群B5を像側へ繰り込むことで行っている。
【0021】
本発明のズームレンズは、最も物体側から像側へ順に配置された、正、負、正、正、負、正の屈折力を有する6つのレンズ群より構成されている。このような構成により、全系が小型でありながら、所望のズーム比を達成している。
【0022】
ズーミングに際して、第2レンズ群B2の移動による変倍効果と、第3レンズ群B3と第4レンズ群B4の間隔変化と、第5レンズ群B5と第6レンズ群B6との間隔変化を用いて効率的にズーミングしている。
【0023】
全系の小型化には全体的に各レンズ群の屈折力を強くするのが効果的だが、像高拡大に伴う全系の大型化を抑制するには、最も像側に配置される第6レンズ群B6の構成が重要である。
【0024】
そこで、本発明のズームレンズは、撮像素子の大型化に伴う光学系全体の大型化の抑制と、高い光学性能との両立、という課題に対し、第6レンズ群の焦点距離をf6、第6レンズ群内の最も物体側に配置されたレンズの焦点距離、物体側面の曲率半径および像側面の曲率半径をそれぞれf61、R61f、R61rとしたとき、
-0.8<f61/f6<-0.2 ・・・(1)
1.5<(R61r+R61f)/(R61r-R61f)<4.0・・・(2)
なる条件式を満足する構成にすることで課題を達成している。
【0025】
条件式(1)は、第6レンズ群B6内の、最も物体側に配置されたレンズの屈折力と、第6レンズ群B6の屈折力との比を規定することで、第6レンズ群内で効率的に像高を拡大させるための条件である。
【0026】
まず、第6レンズ群B6が正の屈折力であるのに対して、条件式の数値範囲が負の領域であるために、第6レンズ群B6内の、最も物体側に配置されたレンズは、負の屈折力を有していることが条件となる。
【0027】
第6レンズ群B6の最も物体側に配置されたレンズが負の屈折力を有することにより、軸外光束が第6レンズ群B6に入射した直後に高像高側へ曲げられ、その後、第6レンズ群B6の全体が正の屈折力を有していることで撮像素子面上に光線が結像される。
【0028】
これにより、軸外光束の撮像素子面への光線入射角度を、第6レンズ群B6内の正の屈折力を有するレンズにより制御することが可能となる。
条件式(1)は、上記第6レンズ群B6内の、最も物体側に配置されたレンズの、負の屈折力を適切に設定するためのものである。
【0029】
条件式(1)の上限を超えると、第6レンズ群B6内の、最も物体側に配置されたレンズの、負の屈折力が過剰に大きくなるため、コマ収差や倍率色収差が補正不足となり、好ましくない。条件式(1)の下限を超えると、第6レンズ群B6内の、最も物体側に配置されたレンズの、負の屈折力が不十分なため、像高拡大効果が不十分となる。これは、全系の大型化につながってしまうため、好ましくない。
【0030】
条件式(2)は、第6レンズ群B6内の最も物体側に配置されたレンズのシェイプファクターを規定することで、第6レンズ群で像高拡大効果を持たせながらも、高い光学性能を達成するための条件である。
【0031】
軸外光束は、第6レンズ群B6に入射する際に、その主光線は拡散方向に入射する。そこで、軸外光束の光線の、光学面への入射角度が過剰に大きくならないようにするために、第6レンズ群B6の、最も物体側に配置された光学面は、凹面であることが好ましい。
【0032】
条件式(2)でシェイプファクターを規定することで、第6レンズ群B6の、最も物体側に配置されたレンズの、物体側面と像側面とで、効率的に像高拡大効果の確保と好適な収差補正を両立している。
【0033】
条件式(2)の上限を超えると、第6レンズ群B6内の最も物体側に配置されたレンズの屈折力が不足するために、像高拡大効果が不十分となる。そのため、全系の大型化につながってしまうため、好ましくない。条件式(2)の下限を超えると、第6レンズ群B6内の最も物体側に配置されたレンズの収差補正効果が過剰に強くなり、像面湾曲やコマ収差の補正が困難となり、好ましくない。
【0034】
次に、本発明のズームレンズに対するレンズ群の移動方法を説明する。
まず、第1レンズ群B1は、有効径が大きくなるため重量が大きくなり、ズーム時の駆動において迅速かつ高精度な追従が困難となるため、本発明では、変倍のためには第1レンズ群B1を不動として、装置全体の小型軽量化を図っている。
【0035】
広角端から望遠端への変倍は、第2レンズ群B2、第4レンズ群B4、第5レンズ群B5、第6レンズ群B6を、それぞれ独立に移動させることにより行っている。
【0036】
広角端での各レンズ群の間隔に対し、望遠端での各レンズ群の間隔は、以下のように変化する。
まず、第1レンズ群B1と第2レンズ群B2との間隔は広がっている。第2レンズ群B2と第3レンズ群B3との間隔は狭まっている。第3レンズ群B3と第4レンズ群B4との間隔は狭まっている。第4レンズ群B4と第5レンズ群B5との間隔は変倍中に変化している。第5レンズ群B5と第6レンズ群B6との間隔は広がっている。
【0037】
具体的には、第2レンズ群B2を物体側から像側へ単調移動し変倍させ、それと同時に第4レンズ群B4を像側から物体側へ移動させ、第5レンズ群B5を像側から物体側へ移動させ、第6レンズ群B6を物体側から像側へ移動させるような移動軌跡としている。
【0038】
なお、第4レンズ群B4と第5レンズ群B5は、変倍の途中で、物体側から像側へ移動する領域があっても良い。さらに、第6レンズ群B6は、変倍の途中で、像側から物体側へ移動する領域があっても良い。
【0039】
本実施例では、フォーカシングは、第5レンズ群B5が担っている。なお、フォーカシングは、第5レンズ群B5に限らず、その他のレンズ群を単独、もしくは複数のレンズ群を用いておこなっても良い。
【0040】
また、第3レンズ群B3は、ズーミングのためには不動である。第3レンズ群B3の物体側にある第2レンズ群B2により拡散した光線が第3レンズ群B3に入射するため、第3レンズ群B3はレンズ径を大きくする必要がある。さらに、第3レンズ群B3は絞りと近接した場所に配置されるため、第3レンズ群B3を移動させる、もしくは第3レンズ群B3と絞りを同時に移動させようとした場合、装置の複雑化や大型化が懸念される。そのため、本発明では、変倍のためには第3レンズ群B3と絞りを不動とすることで、装置全体の小型軽量化を図っている。
【0041】
本発明のズームレンズにおいてさらに好ましくは、第6レンズ群の最も物体側の面から最も像側の面までの光軸上の間隔をL6としたとき、次の条件式を満足するのが良い。
-2.5<R61f/L6<-0.5 ・・・(3)
条件式(3)は、第6レンズ群B6の最も物体側に配置されたレンズの物体側面の曲率半径と、第6レンズ群B6の全長との比を規定する。
【0042】
第6レンズ群B6では、最も物体側に配置されたレンズに像高拡大効果を持たせつつ、撮像素子面への光線入射角を制御するために、前記レンズの像側では正の屈折力を有し、撮像素子面上で光線が結像する状態を形成している。
【0043】
第6レンズ群B6が適正な全長を持つことにより、軸外光束の光線高さをより高くすることが可能となるため、第6レンズ群B6の最も物体側面の曲率を過剰に強くすることなく、像高拡大効果を確保することが可能となる。
【0044】
条件式(3)の上限を超えると、第6レンズ群B6の最も物体側の光学面の曲率が過剰に強くなり、像高拡大効果は高くなるが、像面湾曲やコマ収差の補正が困難となり、好ましくない。条件式(3)の下限を超えると、第6レンズ群B6の全長が過剰に短くなり、像高拡大効果を十分に確保できなくなるため、好ましくない。
【0045】
なお、条件式(1)、(2)、(3)の数値範囲は、以下のごとく特定すると更に好ましい。
-0.7<f61/f6<-0.4 ・・・(1a)
1.6<(R61r+R61f)/(R61r-R61f)<3.6・・・(2a)
-2.2<R61f/L6<-1.0 ・・・(3a)
さらに、条件式(1a)、(2a)、(3a)の数値範囲は、以下のごとく特定するとより好ましい。
-0.65<f61/f6<-0.45 ・・・(1b)
1.7<(R61r+R61f)/(R61r-R61f)<3.2・・・(2b)
-2.0<R61f/L6<-1.4 ・・・(3b)
次に、本発明のズームレンズの、レンズ構成について説明する。
以下、レンズ構成は、特に断りがない限り、物体側から像側へ順に配置されている順に説明する。
【0046】
第1レンズ群B1は、像側が凹でメニスカス形状の負レンズG11と物体側の凸の正レンズG12を接合した接合レンズと、物体側が凸の正レンズG13で構成している。このような構成とすることで、望遠端における球面収差や軸上色収差等を好適に補正している。
【0047】
第2レンズ群B2は、像側が凹の負レンズG21、物体側が凹の負レンズG22、物体側が凸の正レンズG23と負レンズG24を接合した接合レンズで構成している。このような構成とすることで、広角端より望遠端への変倍に際し発生する像面湾曲や倍率色収差の変動を好適に補正している。
【0048】
第3レンズ群B3は、物体側が凸で、少なくとも1面の非球面を有する正レンズG31で構成している。第3レンズ群B3が配置されることで、第4レンズ群B4以降のレンズ口径や、第3レンズ群B3から結像面までの距離を小型化するとともに、広角端より望遠端への変倍に際し発生するコマ収差や像面湾曲の変動を好適に補正している。
【0049】
第4レンズ群B4は、物体側が凸の正レンズG41、物体側が凸の正レンズG42、像側が凹の負レンズG43、物体側が凸で、少なくとも1面の非球面を有する正レンズG44で構成している。このような構成とすることで、広角端における球面収差や像面湾曲を好適に補正している。
【0050】
第5レンズ群B5は、像側が凸の正レンズG51、両面が凹の負レンズG52で構成している。第5レンズ群B5は、第4レンズ群B4により収斂された光束が入射するため、口径の小径化が容易であり、構成枚数も少ないことから、群全体が小さく、比較的軽量な群構成となる。そのため、第5レンズ群B5を、迅速かつ高精度な追従が必要となるフォーカス駆動に利用するのが好ましい。さらに、第5レンズ群B5の負レンズG52の像側を凹とすることで、軸外光束の主光線を発散方向へ曲げる効果を得ることができるため、像高拡大効果を第6レンズ群B6に効果的に付与している。
【0051】
第6レンズ群B6は、物体側が凹面であるメニスカス形状の負レンズG61、像側が凸面である正レンズG62、像側が凸面である正レンズG63で構成している。このような構成とすることで、前述した像高拡大効果を得ながら、像面湾曲やコマ収差を好適に補正している。さらに、負レンズG61の像側に、2枚の正レンズG62、G63を有することで、像高拡大された軸外光束の入射角度を好適に制御しながら高い光学性能を維持して結像させている。
【0052】
次に、本発明のズームレンズによって形成された像を受光する固体撮像素子を有した撮像装置を説明する。
本発明は、ズームレンズにより撮影された像を受光する素子を有した撮像装置に関するものである。近年はデジタル的に像を処理するためにCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどがおもに使用されており、本発明もこれに相当する固体撮像素子を有した撮像装置とするものである。
【0053】
また撮像装置は、例えば監視カメラとして使用する際に、図7のように、本発明の実施例のズームレンズ15の物体側に保護カバー16を取り付けた構成や、別の形態として、半球状のドームを取り付けた構成としても良い。
そこで、本発明のズームレンズを撮像光学系として用いた監視カメラの実施例を、図8を用いて説明する。
【0054】
図8において、11はカメラ本体、12はカメラ本体に内蔵され、本発明の実施例のズームレンズ15によって構成された撮像光学系によって形成された被写体像を受光するCCDやCMOS等の固体撮像素子、13は固体撮像素子12によって光線返還された被写体像に対応する情報を記録するメモリである。
【0055】
14はメモリ13によって記録された情報を伝送したり、監視カメラの動作を指示する電気信号を受信したりするためのネットワークケーブルである。15は、本発明のズームレンズによって構成された撮像光学系である。
【0056】
以上のように、各実施例によれば撮像素子の大型化に伴う光学系全体の大型化を抑制しつつも、高い光学性能を有したズームレンズおよびそれを有する撮像装置を得ることができる。
【0057】
なお各実施例においては、実施例に示したガラスの形状、枚数に限定されず、適宜変更してもよい。また、一部のレンズおよびレンズ群を光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動させ、これにより手ぶれ等の振動に伴う像ブレを補正するようにしてもよい。また、電気的な補正手段により、歪曲収差や色収差などを補正するようにしてもよい。以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態や光学仕様(画角やFno)に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
次に、各実施例に対応する数値実施例を示す。
【0058】
各数値実施例においては、物体側から面番号iを順に示し、rは曲率半径、dは第i面と第i+1面との間隔、nd、vdはそれぞれ第i面と第i+1面との間の媒体(光学材料)のd線を基準とした屈折率、アッベ数を示す。面番号の右に付した*はその面が非球面であることを意味する。
また、各数値実施例において最も像側の2面は光学ブロックGに相当する平面である。
非球面形状は光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位を、面頂点を基準にしてXとするとき
【数1】
なる式で表される。但しRは近軸曲率半径である。kは円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12はそれぞれ4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数である。「e-Z」は「×10-Z」を意味する。画角に関しては、歪曲収差を考慮した撮影可能画角に関する半画角(ω)の数値である。
また、各条件式と各数値実施例との関係を表1に示す。
【0059】
[数値実施例1]

単位 mm

面データ
面番号 r d nd vd
1 114.352 2.10 1.85478 24.8
2 53.099 10.17 1.59522 67.7
3 -1071.961 0.40
4 50.925 5.63 1.75500 52.3
5 221.173 (可変)
6 669.208 1.00 2.00100 29.1
7 19.665 6.32
8 -40.211 0.90 1.75500 52.3
9 87.380 0.50
10 48.527 2.96 1.95906 17.5
11 -66.491 0.80 2.00100 29.1
12 304.186 (可変)
13(絞り) ∞ 0.80
14* 30.215 2.04 1.88202 37.2
15 50.251 (可変)
16 22.342 2.28 1.49700 81.5
17 43.729 0.40
18 19.672 4.10 1.49700 81.5
19 536.316 1.95
20 76.153 0.90 1.85478 24.8
21 15.891 0.58
22* 18.038 3.94 1.69350 53.2
23* -74.741 (可変)
24 218.195 2.02 1.95906 17.5
25 -40.375 0.29
26 -37.400 0.80 1.75500 52.3
27 18.242 (可変)
28 -16.273 0.80 1.95906 17.5
29 -42.056 0.50
30 -115.693 4.11 1.59522 67.7
31 -22.783 0.50
32 161.704 4.21 1.69680 55.5
33 -33.899 (可変)
34 ∞ 1.20 1.51633 64.1
35 ∞ 5.35
像面 ∞

非球面データ
第14面
k = 0.00000e+000 A 4=-3.12417e-006 A 6=-5.12492e-009 A 8= 1.29859e-011 A10=-3.31372e-014

第22面
k = 0.00000e+000 A 4=-2.12783e-005

第23面
k = 0.00000e+000 A 4= 1.61418e-005 A 6= 7.73581e-008 A 8=-9.28152e-010 A10= 1.09108e-011 A12=-3.21410e-014

各種データ
ズーム比 9.72
広角 中間 望遠
焦点距離 16.47 77.85 160.13
Fナンバー 2.27 3.71 4.12
半画角 33.30 7.91 3.87
像高 10.82 10.82 10.82
レンズ全長 146.48 146.48 146.48
BF 5.35 5.35 5.35

d 5 2.01 28.69 36.22
d12 36.89 10.20 2.68
d15 17.40 7.02 2.50
d23 2.50 6.40 4.40
d27 6.60 17.99 30.65
d33 13.55 8.63 2.50

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 69.10
2 6 -15.62
3 13 82.00
4 16 26.14
5 24 -30.67
6 28 55.55
【0060】
[数値実施例2]

単位 mm

面データ
面番号 r d nd vd
1 92.233 2.10 1.85478 24.8
2 48.956 9.60 1.59522 67.7
3 685.923 0.40
4 54.953 5.46 1.75500 52.3
5 268.404 (可変)
6 316.405 1.00 2.00100 29.1
7 19.782 6.78
8 -43.672 0.90 1.75500 52.3
9 102.989 0.50
10 47.640 2.96 1.95906 17.5
11 -88.953 0.80 2.00100 29.1
12 203.330 (可変)
13(絞り) ∞ 0.80
14* 30.605 2.07 1.88202 37.2
15 52.792 (可変)
16 21.594 2.28 1.49700 81.5
17 42.693 0.40
18 18.509 4.12 1.49700 81.5
19 417.826 1.41
20 66.212 0.90 1.85478 24.8
21 15.345 0.78
22* 18.472 3.84 1.69350 53.2
23* -90.892 (可変)
24 208.123 2.03 1.95906 17.5
25 -41.551 0.29
26 -38.496 0.80 1.75500 52.3
27 18.022 (可変)
28 -17.948 0.80 1.95906 17.5
29 -64.766 0.50
30 -686.556 3.83 1.75500 52.3
31 -29.081 0.50
32 294.008 3.65 1.75500 52.3
33 -36.267 (可変)
34 ∞ 1.20 1.51633 64.1
35 ∞ 5.35
像面 ∞

非球面データ
第14面
k = 0.00000e+000 A 4=-3.12962e-006 A 6=-4.20531e-009 A 8= 8.51265e-012 A10=-1.79362e-014

第22面
k = 0.00000e+000 A 4=-1.99689e-005

第23面
k = 0.00000e+000 A 4= 1.71548e-005 A 6= 1.00308e-007 A 8=-1.57159e-009 A10= 2.25714e-011 A12=-9.55948e-014

各種データ
ズーム比 9.72
広角 中間 望遠
焦点距離 16.47 78.61 160.13
Fナンバー 2.27 3.71 4.12
半画角 33.30 7.84 3.87
像高 10.82 10.82 10.82
レンズ全長 146.65 146.65 146.65
BF 5.35 5.35 5.35

d 5 1.35 29.73 37.74
d12 39.15 10.77 2.76
d15 18.99 7.58 2.50
d23 2.50 5.01 2.50
d27 6.48 19.35 32.63
d33 12.16 8.18 2.50

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 72.15
2 6 -16.65
3 13 79.10
4 16 26.30
5 24 -30.32
6 28 60.26
【0061】
[数値実施例3]

単位 mm

面データ
面番号 r d nd vd
1 122.061 2.10 1.85478 24.8
2 54.700 10.52 1.59522 67.7
3 -521.581 0.40
4 48.542 5.57 1.75500 52.3
5 190.388 (可変)
6 -3008.891 1.00 2.00100 29.1
7 18.732 6.14
8 -33.775 0.90 1.75500 52.3
9 99.188 0.50
10 48.386 2.99 1.95906 17.5
11 -48.459 0.80 2.00100 29.1
12 451.220 (可変)
13(絞り) ∞ 0.80
14* 28.911 1.99 1.88202 37.2
15 42.677 (可変)
16 22.036 3.41 1.49700 81.5
17 72.785 0.40
18 20.794 2.90 1.49700 81.5
19 50.192 2.62
20 43.665 0.90 1.85478 24.8
21 15.300 0.52
22* 16.277 5.00 1.58313 59.4
23* -52.403 (可変)
24 97.290 2.09 1.95906 17.5
25 -40.921 0.28
26 -37.851 0.80 1.83481 42.7
27 18.461 (可変)
28 -15.143 0.80 1.95906 17.5
29 -30.067 0.50
30 -108.373 4.41 1.49700 81.5
31 -20.608 0.50
32 160.924 4.46 1.59522 67.7
33 -30.507 (可変)
34 ∞ 1.20 1.51633 64.1
35 ∞ 5.35
像面 ∞

非球面データ
第14面
k = 0.00000e+000 A 4=-2.68020e-006 A 6=-4.28063e-009 A 8=-2.48814e-011 A10= 1.42400e-013

第22面
k = 0.00000e+000 A 4=-2.52431e-005

第23面
k = 0.00000e+000 A 4= 1.89139e-005 A 6= 6.33560e-008 A 8=-5.86988e-010 A10= 3.71166e-012 A12= 6.66677e-015

各種データ
ズーム比 9.72
広角 中間 望遠
焦点距離 16.48 78.87 160.18
Fナンバー 2.27 3.71 4.12
半画角 33.29 7.81 3.86
像高 10.82 10.82 10.82
レンズ全長 146.53 146.53 146.53
BF 5.35 5.35 5.35

d 5 2.63 28.29 35.53
d12 35.52 9.86 2.62
d15 12.77 4.88 2.50
d23 2.49 10.97 10.33
d27 6.26 13.59 23.22
d33 17.02 9.11 2.50

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 66.89
2 6 -14.17
3 13 95.16
4 16 26.67
5 24 -30.62
6 28 52.35
【表1】
【符号の説明】
【0062】
B1:第1レンズ群
B2:第2レンズ群
B3:第3レンズ群
B4:第4レンズ群
B5:第5レンズ群
B6:第6レンズ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8