(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080413
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】歩行トレーニング装置
(51)【国際特許分類】
A61H 3/04 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191464
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】粂野 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】本田 修
(72)【発明者】
【氏名】金谷 学
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046BB07
4C046BB10
4C046CC01
4C046DD02
4C046DD33
4C046EE10
4C046EE27
4C046EE32
4C046EE33
4C046FF02
(57)【要約】
【課題】歩行トレーニング装置において、使用者に適正な難易度の認知課題を提供する。
【解決手段】歩行トレーニング装置は、本体部と、本体部に接続された把持部と、把持部を把持しながら歩行する使用者に認知課題を提供する認知課題提供部と、使用者の身体状態を取得する身体状態取得部と、認知課題の提供前後での身体状態取得部によって取得される身体状態の変化に応じて、使用者に対する認知課題の難易度についての適正度を評価する適正度評価部と、適正度評価部による適正度の評価結果に応じて、使用者に提供される認知課題の難易度を調整する難易度調整部と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行トレーニング装置であって、
本体部と、
前記本体部に接続された把持部と、
前記把持部を把持しながら歩行する使用者に認知課題を提供する認知課題提供部と、
前記使用者の身体状態を取得する身体状態取得部と、
前記認知課題の提供前後での前記身体状態取得部によって取得される前記身体状態の変化に応じて、前記使用者に対する前記認知課題の難易度についての適正度を評価する適正度評価部と、
前記適正度評価部による前記適正度の評価結果に応じて、前記使用者に提供される前記認知課題の難易度を調整する難易度調整部と、
を備える歩行トレーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記身体状態取得部は、前記使用者の歩行速度を取得する歩行速度取得部を有し、
前記適正度評価部は、前記認知課題の提供前後での前記歩行速度取得部によって取得される前記歩行速度の変化を前記適正度の評価に用いる、歩行トレーニング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記身体状態取得部は、前記使用者の心拍数を取得する心拍数取得部を有し、
前記適正度評価部は、前記認知課題の提供前後での前記心拍数取得部によって取得される前記心拍数の変化を前記適正度の評価に用いる、歩行トレーニング装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記認知課題提供部によって提供された前記認知課題に対する回答を取得する回答取得部と、
前記回答取得部によって取得された前記回答の正否を判定する正否判定部と、を備え、
前記適正度評価部は、前記正否判定部によって判定される前記回答の正否を前記適正度の評価に用いる、歩行トレーニング装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記認知課題提供部によって提供された前記認知課題に対する回答を取得する回答取得部と、
前記認知課題提供部によって前記認知課題が提供されてから前記回答取得部によって前記認知課題に対する回答が取得されるまでの回答時間を取得する回答時間取得部と、を備え、
前記適正度評価部は、前記回答時間取得部によって取得される前記回答時間を前記適正度の評価に用いる、歩行トレーニング装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記把持部は、前記本体部に対して、前記歩行トレーニング装置の前後方向に沿って移動可能に設けられ、
前記回答取得部は、前記本体部に対する前記把持部の移動によって前記回答を取得する、歩行トレーニング装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記把持部は、前記本体部に対して、前記歩行トレーニング装置の前後方向に沿って移動可能に設けられる、歩行トレーニング装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記認知課題の種類と前記認知課題の難易度との関係を記憶した関係記憶部を備え、
前記難易度調整部は、前記適正度評価部による前記適正度の評価結果と前記関係記憶部に記憶された前記関係を用いて、前記認知課題の難易度を調整する、歩行トレーニング装置。
【請求項9】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記本体部の下端部に接続された車輪と、
前記車輪を回転させるモータと、
前記モータを制御するモータ制御部と、
を備え、
前記モータ制御部は、前記認知課題提供部によって前記認知課題の提供が開始されるタイミングから前記回答取得部によって前記認知課題に対する回答の取得が終了するタイミングまでの期間に、前記モータを制御することによって前記車輪の回転速度を減少させる、歩行トレーニング装置。
【請求項10】
請求項9に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記モータ制御部は、前記認知課題提供部によって前記認知課題の提供が開始されるタイミングから前記回答取得部によって前記認知課題に対する回答の取得が終了するタイミングまでの期間に、予め定められた係数を前記車輪の回転速度の目標値に乗じることによって前記車輪の回転速度を漸減させる、歩行トレーニング装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記認知課題に対する前記使用者の反応に応じて、前記使用者の認知機能を評価する認知機能評価部を備える、歩行トレーニング装置。
【請求項12】
請求項11に記載の歩行トレーニング装置であって、
前記認知機能評価部は、前記使用者の前記認知機能を他の使用者との相対評価で評価する、歩行トレーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行トレーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者の歩行を支援する歩行支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歩行等の運動課題と計算問題等の認知課題とを同時並列的に実行させることによって認知機能を向上させるデュアルタスクトレーニングが知られている。特許文献1の装置は、運動課題としての歩行を使用者に実行させることができる。しかしながら、上述した装置は、使用者に認知課題を実行させる機能を有していない。そのため、使用者に運動課題としての歩行と認知課題とを同時並列的に実行させることができる装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、歩行トレーニング装置が提供される。この歩行トレーニング装置は、本体部と、前記本体部に接続された把持部と、前記把持部を把持しながら歩行する使用者に認知課題を提供する認知課題提供部と、前記使用者の身体状態を取得する身体状態取得部と、前記認知課題の提供前後での前記身体状態取得部によって取得される前記身体状態の変化に応じて、前記使用者に対する前記認知課題の難易度についての適正度を評価する適正度評価部と、前記適正度評価部による前記適正度の評価結果に応じて、前記使用者に提供される前記認知課題の難易度を調整する難易度調整部と、を備える。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、把持部を把持しながら歩行する使用者に対して認知課題を提供することによって、使用者にデュアルタスクトレーニングを実行させることができる。さらに、認知課題の難易度の使用者に対する適正度に応じて認知課題の難易度が調整されるので、適正な難易度の認知課題を使用者に提供して、デュアルタスクトレーニングを効果的に実行させることができる。
(2)上記形態の歩行トレーニング装置において、前記身体状態取得部は、前記使用者の歩行速度を取得する歩行速度取得部を有し、前記適正度評価部は、前記認知課題の提供前後での前記歩行速度取得部によって取得される前記歩行速度の変化を前記適正度の評価に用いてもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、認知課題の提供前後での使用者の歩行速度の変化を用いて適正度を評価することができる。
(3)上記形態の歩行トレーニング装置において、前記身体状態取得部は、前記使用者の心拍数を取得する心拍数取得部を有し、前記適正度評価部は、前記認知課題の提供前後での前記心拍数取得部によって取得される前記心拍数の変化を前記適正度の評価に用いてもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、認知課題の提供前後での使用者の心拍数の変化を用いて適正度を評価することができる。
(4)上記形態の歩行トレーニング装置は、前記認知課題提供部によって提供された前記認知課題に対する回答を取得する回答取得部と、前記回答取得部によって取得された前記回答の正否を判定する正否判定部と、を備え、前記適正度評価部は、前記正否判定部によって判定される前記回答の正否を前記適正度の評価に用いてもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、認知課題に対する回答の正否を用いて適正度を評価することができる。
(5)上記形態の歩行トレーニング装置は、前記認知課題提供部によって提供された前記認知課題に対する回答を取得する回答取得部と、前記認知課題提供部によって前記認知課題が提供されてから前記回答取得部によって前記認知課題に対する回答が取得されるまでの回答時間を取得する回答時間取得部と、を備え、前記適正度評価部は、前記回答時間取得部によって取得される前記回答時間を前記適正度の評価に用いてもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、回答時間を用いて適正度を評価することができる。
(6)上記形態の歩行トレーニング装置において、前記把持部は、前記本体部に対して、前記歩行トレーニング装置の前後方向に沿って移動可能に設けられ、前記回答取得部は、前記本体部に対する前記把持部の移動によって前記回答を取得してもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、使用者に把持部を把持したまま認知課題に対する回答を入力させることができる。
(7)上記形態の歩行トレーニング装置において、前記把持部は、前記本体部に対して、前記歩行トレーニング装置の前後方向に沿って移動可能に設けられてもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、把持部を把持している使用者に腕を前後に振りながら歩行させることができる。
(8)上記形態の歩行トレーニング装置は、前記認知課題の種類と前記認知課題の難易度との関係を記憶した関係記憶部を備え、前記難易度調整部は、前記適正度評価部による前記適正度の評価結果と前記関係記憶部に記憶された前記関係を用いて、前記認知課題の難易度を調整してもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、提供する認知課題の種類を変更したとしても、所期の難易度で認知課題を提供できる。
(9)上記形態の歩行トレーニング装置は、前記本体部の下端部に接続された車輪と、前記車輪を回転させるモータと、前記モータを制御するモータ制御部と、を備え、前記モータ制御部は、前記認知課題提供部によって前記認知課題の提供が開始されるタイミングから前記回答取得部によって前記認知課題に対する回答の取得が終了するタイミングまでの期間に、前記モータを制御することによって前記車輪の回転速度を減少させてもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、認知課題の提供後に使用者の歩行速度が低下したとしても、歩行トレーニング装置の走行速度と使用者の歩行速度とが乖離することを抑制できる。
(10)上記形態の歩行トレーニング装置において、前記モータ制御部は、前記認知課題提供部によって前記認知課題の提供が開始されるタイミングから前記回答取得部によって前記認知課題に対する回答の取得が終了するタイミングまでの期間に、予め定められた係数を前記車輪の回転速度の目標値に乗じることによって前記車輪の回転速度を漸減させてもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、歩行トレーニング装置の走行速度が急激に変化することを抑制できるので、使用者の歩行速度が急激に変化することを抑制できる。
(11)上記形態の歩行トレーニング装置は、前記認知課題に対する前記使用者の反応に応じて、前記使用者の認知機能を評価する認知機能評価部を備えてもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、認知機能評価部による認知機能の評価結果を用いて、デュアルタスクトレーニングの効果を確認できる。
(12)上記形態の歩行トレーニング装置において、前記認知機能評価部は、前記使用者の前記認知機能を他の使用者との相対評価で評価してもよい。
この形態の歩行トレーニング装置によれば、使用者の認知機能をより多角的に評価できる。
本開示は、歩行トレーニング装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、歩行トレーニングシステム、歩行支援装置、歩行支援システム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の歩行トレーニング装置の構成を示す側面図。
【
図2】第1実施形態の歩行トレーニング装置の構成を示す正面図。
【
図4】ハンドルユニットが前後に移動する様子を示す第1の説明図。
【
図5】ハンドルユニットが前後に移動する様子を示す第2の説明図。
【
図6】ハンドルユニットが前後に移動する様子を示す第3の説明図。
【
図7】第1実施形態のコントローラの構成を示す説明図。
【
図8】認知課題提供処理の内容を示すフローチャート。
【
図9】デュアルタスクトレーニングが実行される様子を示す説明図。
【
図10】デュアルタスクトレーニング中の歩行速度の推移を示す説明図。
【
図11】第2実施形態のコントローラの構成を示す説明図。
【
図12】第3実施形態の歩行トレーニング装置の構成を示す斜視図。
【
図13】第4実施形態の歩行トレーニング装置の構成を示す斜視図。
【
図14】第5実施形態の歩行トレーニング装置の構成を示す斜視図。
【
図15】第5実施形態のアーム部内の構成を示す斜視図。
【
図16】第6実施形態の歩行トレーニングシステムの構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における歩行トレーニング装置11の概略構成を示す側面図である。
図2は、第1実施形態における歩行トレーニング装置11の概略構成を示す正面図である。
図1および
図2には、互いに直交する3つの座標軸であるX,Y,Z軸を表す矢印が示されている。X軸は歩行トレーニング装置11の前後方向に沿った座標軸であり、X軸を表す矢印の指し示す方向は後方である。Y軸は歩行トレーニング装置11の左右方向に沿った座標軸であり、Y表す矢印の指し示す方向は右方である。Z軸は歩行トレーニング装置11の上下方向に沿った座標軸であり、Z軸を表す矢印の指し示す方向は上方である。X,Y,Z軸を表す矢印は、他の図においても、矢印の指し示す方向が
図1や
図2と対応するように適宜、図示してある。
【0009】
本実施形態における歩行トレーニング装置11は、使用者の歩行を支援する機能と、使用者に歩行トレーニングを提供する機能とを有している。歩行トレーニング装置11は、例えば、医療施設や介護施設で用いられる。歩行トレーニング装置11は、家庭等で用いられてもよい。
【0010】
歩行トレーニング装置11は、動作モードとして、アシストモードと、負荷トレーニングモードと、腕振り歩行トレーニングモードと、デュアルタスクトレーニングモードとを有している。アシストモードでは、歩行トレーニング装置11は、所定の推進力を発生させつつ使用者に押されて走行することによって、使用者の歩行を支援する。負荷トレーニングモードでは、歩行トレーニング装置11は、所定の制動力を発生させつつ使用者に押されて走行することによって、使用者に歩行トレーニングを提供する。腕振り歩行トレーニングモードでは、歩行トレーニング装置11は、使用者の腕振りの速度と腕振りのストロークとに応じた所定の速度で走行しつつ使用者に腕振り歩行トレーニングを提供する。
【0011】
図1に示すように、歩行トレーニング装置11は、本体部20と、一対のアーム部50と、一対のハンドル移動部60と、一対のハンドルユニット70と、一対のモータ80と、バッテリ85と、回生電力消費部86と、モータ制御部90と、コントローラ100とを備えている。一対のアーム部50、一対のハンドル移動部60、一対のハンドルユニット70、および、一対のモータ80は、左右対称に設けられている。
【0012】
本体部20は、フレーム30と、フレーム30の下端部に接続された4つの車輪40とを有している。
図2に示すように、フレーム30は、左右方向に沿って設けられた中央フレーム31と、中央フレーム31の左端部に固定された左フレーム32と、中央フレーム31の右端部に固定された右フレーム33とによって構成されている。
図1に示すように、左フレーム32は、前後方向に沿って設けられた下側部分と、下側部分の前端部と後端部との間から上方に向かって突き出した上側部分とを有している。右フレーム33は、左フレーム32とは左右対称に設けられている。左フレーム32には、箱状の収納部35が固定されている。
【0013】
本体部20は、車輪40として、左右対称に設けられた一対の前輪41と、左右対称に設けられた一対の後輪42とを有している。左側の前輪41は、左フレーム32の下側部分の前端部に接続されており、右側の前輪41は、右フレーム33の下側部分の前端部に接続されている。左側の後輪42は、左フレーム32の下側部分の後端部に接続されており、右側の後輪42は、右フレーム33の下側部分の後端部に接続されている。各前輪41および各後輪42は、路面RSに接触している。本実施形態では、各前輪41は、トウの向きを前後左右に変更可能に構成されている。各後輪42は、トウの向きが前方に固定されるように構成されている。なお、各後輪42は、トウの向きを前後左右に変更可能に構成されてもよい。車輪40の数は、4つに限られず、例えば、3つでもよいし、5つ以上でもよい。
【0014】
アーム部50は、前後方向に沿って設けられた外ケース51と、外ケース51の前端部と後端部との間から下方に向かって突き出した接続部52とを有している。
図2に示すように、左側のアーム部50に設けられた接続部52は、ネジ39によって、左フレーム32の上端部に固定されており、右側のアーム部50に設けられた接続部52は、ネジ39によって、右フレーム33の上端部に固定されている。左右のアーム部50同士は、連結部材59によって連結されている。
【0015】
図1に示すように、ハンドル移動部60は、シャフト61と、後述するシャフト支持部64とを有している。シャフト61は、前後方向に沿って設けられた棒状部材である。シャフト61は、外ケース51の後端部に設けられた貫通孔に挿入されている。シャフト61の前端部は、外ケース51内に収容されており、シャフト61の後端部は、後方に向かって外ケース51から突き出している。シャフト61は、外ケース51に対して前後方向に沿って移動することができる。シャフト支持部64は、外ケース51内に配置されている。シャフト支持部64の構成については後述する。
【0016】
ハンドルユニット70は、シャフト61の後端部に固定されている。ハンドルユニット70は、シャフト61とともに外ケース51に対して前後方向に沿って移動することができる。ハンドルユニット70は、第1把持部71と、第2把持部72と、ブレーキレバー73とを有している。使用者は、第1把持部71または第2把持部72を把持した状態で、歩行トレーニング装置11を用いることができる。
【0017】
第1把持部71は、シャフト61の後端部に固定されている。第1把持部71は、前後方向に沿って設けられた棒状の外形形状を有しており、シャフト61の後端部から後方に向かって突き出すように設けられている。
【0018】
第2把持部72は、第1把持部71の前端部に固定されている。第2把持部72は、上下方向に沿って設けられた棒状の外形形状を有しており、第1把持部71の前端部から上方に向かって突き出すように設けられている。
【0019】
ブレーキレバー73は、第1把持部71の前端部に固定されている。ブレーキレバー73は、第1把持部71に沿って設けられている。ブレーキレバー73は、ブレーキワイヤ74によって、後輪42に設けられた図示しないブレーキに接続されている。
【0020】
モータ80は、左フレーム32の後端部と右フレーム33の後端部とに1つずつ設けられている。モータ80は、動作モードとして、駆動輪である後輪42を駆動する力行モードと、後輪42を制動する回生モードとを有している。歩行トレーニング装置11がアシストモードまたは腕振り歩行トレーニングモードで動作している場合には、モータ80は力行モードで運転され、歩行トレーニング装置11が負荷トレーニングモードで動作している場合には、モータ80は回生モードで運転される。左側のモータ80は、左側の後輪42を駆動あるいは制動し、右側のモータ80は、右側の後輪42を駆動あるいは制動する。本実施形態では、モータ80として、出力軸の回転角度を検出するロータリーエンコーダあるいはホールセンサを内蔵したACブラシレスモータが用いられる。なお、モータ80にロータリーエンコーダやホールセンサが内蔵されずに、コイルに発生する誘起電圧を用いて出力軸の回転角度が算出されてもよい。モータ80が2つ設けられずに、1つのモータ80によって左右の後輪42が駆動あるいは制動されてもよい。
【0021】
バッテリ85は、収納部35に収納されている。バッテリ85として、例えば、リチウムイオン二次電池やニッケル水素蓄電池などの二次電池を用いることができる。バッテリ85は、インバータなどの電源回路を介して左右のモータ80に電気的に接続されている。本実施形態では、バッテリ85から出力された直流電力は、パルス幅変調によって交流電力に変換された後、力行モードで動作している左右のモータ80に供給される。
【0022】
回生電力消費部86は、収納部35に収納されている。回生電力消費部86は、左右のモータ80に電気的に接続されており、回生モードで動作している左右のモータ80によって発電された回生電力を消費する。回生電力消費部86として、例えば、セメント抵抗を用いることができる。なお、バッテリ85が満充電でない場合には、左右のモータ80によって発電された回生電力は、回生電力消費部86によって消費されずにバッテリ85に充電されてもよい。
【0023】
モータ制御部90は、収納部35内に収納されている。モータ制御部90は、1つまたは複数のプロセッサと、主記憶装置と、補助記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピュータによって構成されている。本実施形態では、モータ制御部90は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサが実行することによって、左右のモータ80を制御する。なお、モータ制御部90は、コンピュータではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0024】
コントローラ100は、固定部材109を介して左側のアーム部50に固定されている。本実施形態では、コントローラ100は、タブレット端末によって構成されている。コントローラ100は、歩行トレーニング装置11の動作モードを切り替える機能と、後述するように使用者に認知課題を提供する機能とを有している。なお、コントローラ100は、タブレット端末に限られず、例えば、スマートフォンによって構成されてもよい。
【0025】
図3は、
図2におけるIII-III線断面図である。
図3には、アーム部50の外ケース51内の構成が模式的に表されている。
図3には、外ケース51内の構成とともに、第1把持部71および第2把持部72に外力が加えられていない状態のハンドルユニット70が表されている。外ケース51内には、上述したシャフト61の一部と、シャフト支持部64と、位置検出部65と、ロックピン66と、第1弾性部材68と、第2弾性部材69と、内ケース54と、カラー55と、ダンパ56とが配置されている。
【0026】
外ケース51には、外ケース51内の空間を前後に区画する隔壁53が設けられている。隔壁53には、シャフト61が挿入される貫通孔が設けられている。外ケース51の前端部には、内ケース54が固定されている。内ケース54の前端部と後端部とには、それぞれ、貫通孔が設けられている。
【0027】
外ケース51内に収容されたシャフト61の前端部には、シャフト61の外周に向かって突き出したフランジ部62が設けられている。フランジ部62は、外ケース51の前端部と隔壁53との間に配置されている。シャフト61の前側部分は、中空断面を有しており、シャフト61の後側部分は、中実断面を有している。シャフト61の側面部には、凹部63が設けられている。凹部63は、隔壁53よりも後方に設けられている。
【0028】
シャフト支持部64は、隔壁53の後方に配置されており、外ケース51に接続されている。シャフト支持部64は、前後方向に沿って移動可能にシャフト61を支持している。本実施形態では、シャフト支持部64は、3つのローラーによって構成されている。各ローラーは、シャフト61の前端部と後端部との間の部分を支持している。3つのローラーのうちの1つは、シャフト61の下側の面に接触しており、3つのローラーのうちの2つは、シャフト61の上側の面に接触している。
【0029】
第1弾性部材68は、シャフト61内に配置されている。第1弾性部材68は、前後方向に沿って伸縮する。第1弾性部材68の前端部は、内ケース54に設けられた貫通孔を通じて外ケース51の前端部に接続されており、第1弾性部材68の後端部は、シャフト61の中空部分の底面に接続されている。第1弾性部材68は、シャフト61を前方に向かって付勢する。本実施形態では、第1弾性部材68は、引張コイルバネによって構成されている。なお、第1弾性部材68は、引張コイルバネではなく、ゴムやエラストマでもよい。
【0030】
内ケース54には、前方から順に、第2弾性部材69、カラー55、および、ダンパ56が配置されている。カラー55は、円環状の外形形状を有している。ダンパ56は、カラー55の後側の面に固定されている。ダンパ56は、円環状の外形形状を有している。ダンパ56には、シャフト61のフランジ部62が接触する。ダンパ56は、ゴムやエラストマ等の弾性部材で構成されている。
【0031】
第2弾性部材69は、前後方向に沿って伸縮する。第2弾性部材69の前端部は、内ケース54の前端部に接続されており、第2弾性部材69の後端部は、カラー55の前側の面に接続されている。第2弾性部材69は、カラー55を後方に向かって付勢する。第2弾性部材69によって付勢されたカラー55は、内ケース54の後端部に接触する。本実施形態では、第2弾性部材69は、圧縮コイルバネによって構成されている。なお、第2弾性部材69は、圧縮コイルバネではなく、ゴムやエラストマでもよい。
【0032】
ロックピン66は、シャフト61の凹部63に挿入されることによって、前後方向のシャフト61の移動を制限する。前後方向において、ロックピン66の凹部63に挿入される部分の幅は、凹部63の幅よりも数ミリメートル広い。そのため、ロックピン66が凹部63に挿入されても、シャフト61は、前後方向に数ミリメートル移動することができる。アシストモードおよび負荷トレーニングモードでは、ロックピン66が凹部63に挿入された状態で歩行トレーニング装置11が用いられ、腕振り歩行トレーニングモードでは、ロックピン66が凹部63から外された状態で歩行トレーニング装置11が用いられる。
【0033】
位置検出部65は、外ケース51に対する前後方向のシャフト61の位置を検出する。本実施形態では、位置検出部65は、リニアエンコーダによって構成されている。位置検出部65によって検出されたシャフト61の位置に関する情報はモータ制御部90に送信される。位置検出部65によって検出されたシャフト61の位置を用いて、第1弾性部材68の伸縮量、および、第2弾性部材69の伸縮量を検出できる。第2弾性部材69の伸縮量と第2弾性部材69の弾性係数とを用いて、ハンドルユニット70からアーム部50に伝達される前向きの力を検出できる。第1弾性部材68の伸縮量と第1弾性部材68の弾性係数とを用いて、ハンドルユニット70からアーム部50に伝達される後向きの力を検出できる。位置検出部65によって検出されるシャフト61の位置の変化を用いて、アーム部50に対するハンドルユニット70の移動速度を検出できる。
【0034】
図4は、ハンドルユニット70が前後に移動する様子を示す第1の説明図である。
図5は、ハンドルユニット70が前後に移動する様子を示す第2の説明図である。
図6は、ハンドルユニット70が前後に移動する様子を示す第3の説明図である。
図4には、凹部63にロックピン66が挿入された状態で、ハンドルユニット70が前方に移動する様子が表されている。
図5には、凹部63にロックピン66が挿入された状態で、ハンドルユニット70が後方に移動する様子が表されている。
図6には、凹部63からロックピン66が外された状態で、ハンドルユニット70が後方に移動する様子が表されている。
【0035】
図4に示すように、第1把持部71または第2把持部72が前方に向かって押された場合、ハンドルユニット70は、シャフト61とともに前方に移動する。シャフト61が前方に移動する際、ダンパ56およびカラー55は、フランジ部62に押されることによって、シャフト61とともに前方に移動する。カラー55が前方に移動することによって、第2弾性部材69は圧縮されて縮む。第2弾性部材69の復元力によって、ハンドルユニット70およびシャフト61は後方に押し戻される。第1把持部71または第2把持部72から入力された前向きの力は、第2弾性部材69を介してアーム部50に伝達される。
【0036】
図5に示すように、ロックピン66が凹部63に挿入された状態で、第1把持部71または第2把持部72が後方に向かって引かれた場合、ハンドルユニット70およびシャフト61は、凹部63がロックピン66に接触するまで後方に移動することができる。
【0037】
図6に示すように、ロックピン66が凹部63から外された状態で、第1把持部71または第2把持部72が後方に向かって引かれた場合、ハンドルユニット70およびシャフト61は、
図5に示した位置よりもさらに後方に移動することができる。この際の前後方向におけるハンドルユニット70およびシャフト61の移動可能距離は、第1把持部71の前後方向における長さよりも長い。この際のハンドルユニット70およびシャフト61の移動可能距離は、200ミリメートル以上であることが好ましく、300ミリメートル以上であることがより好ましく、400ミリメートル以上であることがさらに好ましい。シャフト61が後方に移動することによって、第1弾性部材68はシャフト61に引張られて伸びる。第1弾性部材68の復元力によって、ハンドルユニット70およびシャフト61は前方に引き戻される。第1把持部71または第2把持部72から入力された後向きの力は、第1弾性部材68を介してアーム部50に伝達される。
【0038】
図7は、コントローラ100の構成を示す説明図である。コントローラ100は、出題制御部101と、音声出力部102と、音声入力部103と、表示部104と、通信部105とを備えている。本実施形態では、音声出力部102は、音声を出力するスピーカで構成されている。音声入力部103は、音声の入力を受け付けるマイクで構成されている。表示部104は、タッチパネル式の液晶ディスプレイで構成されている。通信部105は、無線通信によってデータを送受信する。
【0039】
本実施形態では、コントローラ100には、無線通信によって、心拍数計測器200が接続されている。心拍数計測器200は、使用者の心拍数を計測する。心拍数計測器200として、例えば、使用者の手首に装着される光学式心拍計を用いることができる。
【0040】
出題制御部101は、1つまたは複数のプロセッサと、主記憶装置と、補助記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピュータによって構成されている。本実施形態では、出題制御部101は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサが実行することによって、後述する認知課題提供処理を実行して、使用者に認知課題を提供する。なお、出題制御部101は、コンピュータではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0041】
本実施形態では、出題制御部101は、認知課題提供部110と、回答取得部121と、正否判定部122と、回答時間取得部123と、身体状態取得部130と、適正度評価部140と、難易度調整部150と、認知機能評価部160と、認知課題記憶部171と、関係記憶部172と、データ記憶部173とを有している。認知課題提供部110、回答取得部121、正否判定部122、回答時間取得部123、身体状態取得部130、適正度評価部140、難易度調整部150、および、認知機能評価部160は、出題制御部101のプロセッサがプログラムを実行することによってソフトウェア的に実現されている。認知課題記憶部171、関係記憶部172、および、データ記憶部173は、出題制御部101の補助記憶装置に設けられている。
【0042】
認知課題提供部110は、音声出力部102を介して、音声によって使用者に認知課題を提供する。なお、認知課題提供部110は、表示部104を介して、使用者に文字や数字等によって認知課題を提供してもよい。
【0043】
回答取得部121は、音声入力部103を介して入力された、認知課題に対する回答を取得する。正否判定部122は、回答取得部121によって取得された認知課題に対する回答の正否を判定する。回答時間取得部123は、認知課題が提供されてから認知課題に対する回答が取得されるまでの時間である回答時間を取得する。回答時間取得部123は、コントローラ100に内蔵されたタイマを用いて回答時間を計測して取得する。
【0044】
身体状態取得部130は、使用者の身体状態を取得する。本実施形態では、身体状態取得部130は、歩行速度取得部131と、心拍数取得部132とを有している。歩行速度取得部131は、モータ80に内蔵されたロータリーエンコーダによって計測される後輪42の回転速度と予め記憶された後輪42の直径とを用いて使用者の歩行速度を取得する。心拍数取得部132は、心拍数計測器200によって計測される使用者の心拍数を取得する。
【0045】
適正度評価部140は、認知課題提供部110から提供される認知課題の難易度についての使用者に対する適正度を評価する。難易度調整部150は、適正度評価部140による評価結果に応じて、認知課題提供部110によって提供される認知課題の難易度を調整する。
【0046】
認知機能評価部160は、使用者の認知機能を評価する。本実施形態では、認知機能評価部160は、使用者に提供された認知課題の難易度、正答率、回答時間、歩行速度、および、生理的コスト指標(PCI:Physiological Cost Index)を用いて使用者の認知機能を評価する。生理的コスト指標は、下式(1)によって表される。下式(1)において、HR1は歩行後の心拍数を表しており、HR2は安静時の心拍数を表しており、Vwは歩行速度を表している。
PCI=(HR1-HR2)/Vw ・・・(1)
【0047】
認知課題記憶部171には、認知課題とその正答が記憶されている。認知課題記憶部171には、認知課題として、例えば、計算問題や、クイズ形式の質問が記憶されている。計算問題として、例えば、1桁の足し算や、2桁の足し算や、1桁の引き算や、2桁の引き算等の四則演算の問題が記憶されている。クイズ形式の質問として、例えば、天気に関する質問等が記憶されている。認知課題記憶部171には、認知課題が種類ごとに記憶されている。1桁の足し算や2桁の足し算や1桁の引き算や2桁の引き算や天気に関する質問は、互いに異なる種類の認知課題として記憶されている。
【0048】
関係記憶部172は、認知課題の種類とその難易度との関係を記憶している。関係記憶部172には、例えば、1桁の足し算の難易度がレベル1と記憶されており、2桁の足し算の難易度がレベル2と記憶されており、1桁の引き算の難易度がレベル2と記憶されており、2桁の引き算の難易度がレベル3と記憶されており、今日の天気に関する質問の難易度がレベル1と記憶されている。レベルの数字が大きいほど高い難易度であることを表している。
【0049】
データ記憶部173は、歩行速度取得部131によって取得された歩行速度や、心拍数取得部132によって取得された心拍数や、正否判定部122によって判定された回答の正否や、回答時間取得部123によって取得された回答時間や、適正度評価部140による適正度の評価結果や、認知機能評価部160による認知機能の評価結果等の各種データを記憶する。データ記憶部173には、使用者を識別するIDごとに上述した各種データが記憶されている。使用者を識別するIDは、例えば、表示部104のタッチパネルを介して登録される。
【0050】
図8は、本実施形態における認知課題提供処理の内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば、コントローラ100に設けられた開始ボタンが押された場合に、出題制御部101によって実行される。この処理は、歩行トレーニング装置11がアシストモードで動作中に実行されてもよいし、負荷トレーニングモードで動作中に実行されてもよいし、腕振り歩行トレーニングモードで動作中に実行されてもよい。
【0051】
まず、ステップS110にて、身体状態取得部130は、使用者の身体情報の取得を開始する。身体状態取得部130は、歩行速度取得部131による歩行速度の取得を開始し、心拍数取得部132による心拍数の取得を開始する。歩行速度および心拍数の取得は、この処理が終了されるまで継続される。歩行速度および心拍数は、データ記憶部173に記憶される。
【0052】
次に、ステップS120にて、認知課題提供部110は、音声出力部102を介して使用者に認知課題を提供する。本実施形態では、認知課題提供部110は、認知課題記憶部171に記憶された認知課題のうち、使用者によって予め選択された難易度に応じた認知課題を抽出して提供する。認知課題提供部110は、関係記憶部172に記憶された認知課題の種類と難易度との関係を用いて、選択された難易度に応じた認知課題を抽出する。
【0053】
ステップS130にて、回答取得部121は、音声入力部103を介して入力された認知課題に対する回答を取得する。ステップS140にて、回答時間取得部123は、認知課題が提供されてから回答が取得されるまでの時間である回答時間を取得する。回答時間取得部123は、例えば、音声出力部102を介した認知課題の提供が終了したタイミングから、音声入力部103を介した回答の取得が終了するタイミングまでの時間を計測して、計測された時間を回答時間として取得する。ステップS150にて、正否判定部122は、回答取得部121によって取得された回答の正否を判定する。本実施形態では、正否判定部122は、取得された回答と認知課題記憶部171に記憶された正答とを照合することによって回答の正否を判定する。回答の正否および回答時間は、データ記憶部173に記憶される。
【0054】
ステップS160にて、適正度評価部140は、使用者に対する認知課題の難易度が適正であるか否かを判定する。適正度評価部140は、認知課題の提供前後での使用者の身体状態の変化に応じて、使用者に対する認知課題の難易度についての適正度を評価し、適正度が所定値を超える場合には、使用者に対する認知課題の難易度が適正であると判断し、適正度が所定値以下である場合には、使用者に対する認知課題の難易度が適正でないと判断する。適正度の評価結果は、データ記憶部173に記憶される。
【0055】
本実施形態では、適正度評価部140は、認知課題の提供前後での使用者の歩行速度の低下度合いに応じて適正度を評価する。適正度評価部140は、例えば、認知課題の提供が開始される1秒前から認知課題の提供が開始されるタイミングまでの期間における歩行速度の平均値に対する、認知課題の提供が開始されるタイミングから回答の取得が終了するタイミングまでの期間における歩行速度の最小値の割合が小さいほど、適正度を低く評価する。そのため、適正度評価部140は、歩行が停止した場合には、使用者に対する認知課題の難易度が適正でないと判断する。なお、適正度評価部140は、歩行速度ではなく、正答率を用いて適正度を評価し、正答率が低いほど適正度を低く評価してもよい。回答時間を用いて適正度を評価し、回答時間が長いほど適正度を低く評価してもよい。歩行速度と心拍数とを用いて算出される生理的コスト指標を用いて適正度を評価し、生理的コスト指標が高いほど、難易度が適正でないと評価してもよい。歩行速度の低下度合いと正答率と回答時間と生理的コスト指標とのうちの2つ以上を組み合わせて適正度を評価してもよい。
【0056】
ステップS160で難易度が適正であると判断されなかった場合、ステップS165にて、難易度調整部150は、使用者に提供される認知課題の難易度を調整する。本実施形態では、難易度調整部150は、難易度が適正であると判断されなかった場合、認知課題の難易度を1段階低くする。難易度調整部150は、適正度が低いほど低下させる難易度の段階を大きくしてもよい。既に最も低い難易度に調整されている場合には、難易度調整部150は、最も低い難易度のまま難易度を維持する。ステップS160で難易度が適正であると判断された場合には、ステップS165の処理はスキップされる。
【0057】
ステップS170にて、認知課題提供部110は、認知課題の提供を終了するか否かを判定する。本実施形態では、認知課題提供部110は、予め定められた数の認知課題が出題された場合、または、コントローラ100に設けられた終了ボタンが押された場合に、認知課題の提供を終了すると判断する。
【0058】
ステップS170で認知課題の提供を終了すると判断されなかった場合、ステップS175にて、認知課題提供部110は、使用者の歩行速度が所定速度以上であるか否かを判定する。この速度は、例えば、1つ目の認知課題の提供が開始される1秒前から認知課題の提供が開始されるタイミングまでの期間における歩行速度の平均値に予め定められた係数を乗じた速度に設定される。この係数は、例えば、0.9に設定される。ステップS175で使用者の歩行速度が所定速度以上であると判断されなかった場合、認知課題提供部110は、ステップS170に処理を戻す。ステップS175で使用者の歩行速度が所定速度以上であると判断された場合、認知課題提供部110は、ステップS120に処理を戻して、使用者に次の認知課題を提供する。この際、ステップS165で難易度が調整された場合には、調整後の難易度の認知課題が提供される。ステップS170で認知課題の提供を終了すると判断されるまで、ステップS175、および、ステップS120からステップS170までの処理が繰り返される。
【0059】
ステップS170で認知課題の提供を終了すると判断された場合、ステップS180にて、認知機能評価部160は、認知課題に対する使用者の反応に応じて認知機能を評価する。認知機能評価部160は、正答率が高いほど認知機能が高いと評価し、回答時間が短いほど認知機能が高いと評価し、正答した認知課題の難易度が高いほど認知機能が高いと評価し、歩行速度が高いほど認知機能が高いと評価し、生理的コスト指標が小さいほど認知機能が高いと評価する。本実施形態では、認知機能評価部160は、予め記憶された各評価項目の基準値を用いて、使用者の認知機能を絶対評価で評価する。認知機能評価部160は、データ記憶部173に記憶された他の使用者のデータと比較して、相対評価で認知機能を評価してもよい。認知機能評価部160は、使用者の認知機能の評価結果を、表示部104に表示させる。認知機能の評価結果は、例えば、スコアやランクによって表される。認知機能評価部160は、前回以前の認知機能の評価結果との比較を表示させてもよい。例えば、前回以前のスコアと今回のスコアとを折れ線グラフで表示させてもよい。その後、認知課題提供部110は、この処理を終了する。
【0060】
図9は、使用者Pがデュアルタスクトレーニングを実行する様子を示す説明図である。
図9には、一例として、腕振りトレーニングモードで動作する歩行トレーニング装置11を用いて運動課題としての歩行を実行中の使用者Pに対して認知課題が提供されることによってデュアルタスクトレーニングが実行される様子が表されている。腕振り歩行トレーニングモードでは、使用者Pは、第2把持部72を把持した状態で左右の腕を前後に振りながら、走行する歩行トレーニング装置11とともに歩行できる。そのため、歩行トレーニング装置11の腕振り歩行トレーニングモードでは、自然な歩行動作を訓練することができる。ここでいう自然な歩行動作とは、左右のうちの一方の腕を前方に振り、他方の腕を後方に振るという腕振り動作を左右交互に繰り返しながら歩く動作のことを意味する。腕振り歩行トレーニングモードでは、左右のハンドルユニット70の位置を前後方向に異ならせた場合に、歩行トレーニング装置11は走行を開始する。歩行トレーニング装置11は、所定の速度まで加速した後、使用者Pの歩行速度と同じ速度で走行する。左右のハンドルユニット70の中間位置が所定位置よりも後方に移動した場合には、歩行トレーニング装置11はハンドルユニット70の移動速度に比例した減速度合いで減速し、左右のハンドルユニット70の中間位置が所定位置よりも前方に移動した場合には、歩行トレーニング装置11はハンドルユニット70の移動速度に比例した加速度合いで加速する。つまり、腕を前後に振りながら歩行する使用者の歩行速度に対して歩行トレーニング装置11の走行速度が速い場合には、歩行トレーニング装置11は減速し、腕を前後に振りながら歩行する使用者の歩行速度に対して歩行トレーニング装置11の走行速度が遅い場合には、歩行トレーニング装置11は加速する。左右のハンドルユニット70が同時に後方に移動した場合には、歩行トレーニング装置11は走行を停止する。歩行トレーニング装置11は、腕振り歩行トレーニングモードで走行中に、認知課題提供処理を実行することによって、運動課題としての歩行と認知課題とを同時並列的に使用者Pに実行させることができる。
【0061】
図10は、デュアルタスクトレーニングを実行中の使用者の歩行速度の推移の一例を示す説明図である。
図10には、レベル2の難易度の認知課題が提供された場合の使用者の歩行速度の推移が実線で表されており、レベル1の難易度の認知課題が提供された場合の使用者の歩行速度の推移が一点鎖線で表されている。一般に、認知機能が衰えると、運動課題と認知課題とを同時並列的に処理することが困難になる。そのため、認知機能が衰えると、歩行中に認知課題が提供された場合に歩行が停止することがある。提供される認知課題の難易度が高いほど歩行が停止しやすい。認知課題に提供によって使用者の歩行が停止する場合には、使用者に効果的なデュアルタスクトレーニングを提供することが困難である。
図10に示した例では、レベル2の難易度の認知課題が提供された後では、使用者の歩行が停止している。本実施形態では、レベル2の難易度の認知課題が提供されてから回答が入力されるまでの間に使用者の歩行が停止した場合には、次に提供される認知課題の難易度がレベル1に下げられる。
図10に示した例では、レベル1の難易度の認知課題が提供された後では、使用者の歩行は停止していない。
【0062】
以上で説明した本実施形態の歩行トレーニング装置11によれば、第1把持部71あるいは第2把持部72を把持しながら運動課題としての歩行を実行する使用者に対して、認知課題提供部110によって認知課題を提供することができるので、運動課題と認知課題とを同時並列的に実行させるデュアルタスクトレーニングを使用者に提供することができる。さらに、本実施形態では、適正度評価部140は、認知課題提供部110によって使用者に提供された認知課題の難易度についての適正度を評価し、難易度調整部150は、適正度の評価結果に応じて、認知課題提供部110によって提供される次の認知課題の難易度を調整する。そのため、使用者の認知機能に対して適正な難易度で認知課題を提供して、使用者にデュアルタスクトレーニングを効果的に実行させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、認知課題提供部110によって認知課題が提供された後に使用者の歩行が停止した場合には、適正度評価部140は、使用者に対する認知課題の難易度が適正でないと評価し、難易度調整部150は、認知課題提供部110によって提供される次の認知課題の難易度を低下させる。そのため、使用者の認知機能に対して認知課題の難易度が高いことに起因して、使用者の歩行が停止することを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態では、ハンドルユニット70がアーム部50に対して前後に移動可能に設けられており、腕振り歩行トレーニングモードでは、ハンドルユニット70の第2把持部72を把持した使用者に、左右の腕を前後に振りながら歩行させることがきる。つまり、腕振り歩行トレーニングモードでは、2本のポールを用いて歩行を補助しつつ運動効果を増強するノルディックウォークのように、自然な歩行動作の訓練を使用者に提供することができる。そのため、歩行トレーニング装置11やポールを用いない通常の歩行時よりも使用者の心拍数や酸素摂取量を高めて使用者に効果的な有酸素運動を提供できる。また、ノルディックウォークのような動作を使用者に促すことができるので、使用者の脳を活性化させて認知症の発症を抑制できる。さらに、使用者が歩行トレーニング装置11にもたれ掛かった前傾姿勢で歩行することを抑制できる。
【0065】
また、本実施形態では、認知課題提供部110は、関係記憶部172に記憶された認知課題の種類とその難易度との関係を用いて、難易度調整部150によって調整された難易度の問題を提供する。そのため、所期の難易度で複数の種類の認知課題を提供できる。
【0066】
また、本実施形態では、認知機能評価部160は、正答率、回答時間、歩行速度の推移、および、生理的コスト指標を用いて使用者の認知機能を評価して、認知機能の評価結果を表示部104に表示させる。そのため、認知機能が向上したか否かを確認することができる。
【0067】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態における歩行トレーニング装置12の概略構成を示す説明図である。第2実施形態では、歩行トレーニング装置12は、音声入力部103への音声入力ではなく、ハンドルユニット70の操作によって認知課題に対する回答の入力を受け付けることが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0068】
本実施形態では、出題制御部101の回答取得部121は、アーム部50に設けられた位置検出部65を用いて、アーム部50に対するハンドルユニット70の位置および移動速度を取得する。回答取得部121は、例えば、右側のハンドルユニット70が所定時間内に2回連続で引かれた場合には「1」という回答を取得し、左側のハンドルユニット70が所定時間内に2回連続で引かれた場合には「2」という回答を取得し、右側のハンドルユニット70が1回引かれる間に左側のハンドルユニット70が2回引かれた場合には「3」という回答を取得するように構成されてもよい。なお、本実施形態では、コントローラ100は、音声入力部103を備えていなくてもよい。
【0069】
認知課題提供部110は、例えば、「右を2回引き、左を1回引き、右を4回引け」のように、ハンドルユニット70の操作の順序を使用者に覚えさせて、順序通りにハンドルユニット70を操作させる認知課題を提供してもよい。認知課題提供部110は、例えば、「今日は何曜日ですか。1:月曜日、2:水曜日、3:金曜日」のように、三択形式のクイズを出題してもよい。アーム部50に対するハンドルユニット70の位置ごとに音階が割り当てられ、ハンドルユニット70の位置に応じた音が出力されてもよい。認知課題提供部110は、例えば、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」のように、音階を用いてハンドルユニット70の操作の順序を覚えさせて、順序通りにハンドルユニット70を操作させる認知課題を提供してもよい。
【0070】
モータ制御部90は、認知課題提供部110によって認知課題の提供が終了したタイミングから回答取得部121によって認知課題に対する回答の取得が終了するタイミングまでの期間に、左右のハンドルユニット70の中間位置を所定位置よりも後方に移動させなくても、歩行トレーニング装置12の走行速度を所定の速度まで減少させる。本実施形態では、モータ制御部90は、歩行トレーニング装置12の走行速度を所定の目標値まで漸減させる。この目標値は、例えば、1つ目の認知課題の提供が開始される1秒前から認知課題の提供が開始されるタイミングまでの期間における歩行速度の平均値に予め定められた係数を乗じた速度に設定される。この係数は、例えば、0.7に設定される。歩行トレーニング装置12が上述した目標値まで減速される前に認知課題に対する回答が取得された場合には、モータ制御部90は、歩行トレーニング装置12の減速を停止させる。
【0071】
以上で説明した本実施形態における歩行トレーニング装置12によれば、ハンドルユニット70の操作によって使用者に認知課題に対する回答を入力させることができる。そのため、発声機能の低い使用者に、回答を入力させやすくできる。特に、本実施形態では、第1把持部71あるいは第2把持部72を把持したまま回答を入力できるので、例えば、第1把持部71あるいは第2把持部72を一旦離して押しボタン等を操作させて回答を入力させる形態に比べて、安全に回答を入力できる。
【0072】
また、本実施形態では、モータ制御部90は、認知課題提供部110によって認知課題の提供が終了したタイミングから回答取得部121によって認知課題に対する回答の取得が終了するタイミングまでの期間に、左右のハンドルユニット70の中間位置を所定位置よりも後方に移動させなくても、歩行トレーニング装置12の走行速度を減速させる。そのため、認知課題を提供された使用者の歩行速度が低下した場合に、使用者の歩行速度と歩行トレーニング装置12の走行速度とが乖離することによって、ハンドルユニット70が意図せず所定位置よりも後方に引かれて認知課題の回答が誤入力されることを抑制できる。特に、本実施形態では、モータ制御部90は、1つ目の認知課題の提供が開始される1秒前から認知課題の提供が開始されるタイミングまでの期間における歩行速度の平均値に0.7を乗じた目標値まで漸減させる。そのため、歩行トレーニング装置12の急激な減速によって使用者の歩行速度が遅くなり過ぎて、歩行トレーニングの効果が得られにくくなることを抑制できる。
【0073】
C.第3実施形態:
図12は、第3実施形態における歩行トレーニング装置13の概略構成を示す斜視図である。第3実施形態では、歩行トレーニング装置13は、自走する機能を有しておらず、トレッドミルとして構成されていることが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0074】
本実施形態では、歩行トレーニング装置13は、本体部320と、一対のアーム部350と、一対の把持部370と、モータ380、モータ制御部390と、コントローラ400とを備えている。
【0075】
本体部320は、フレーム330と、車輪340と、ベルト345とを有している。車輪340は、ローラー状に構成されており、フレーム330の前端部と後端部とに1つずつ設けられている。各車輪340は、フレーム330に接続されている。ベルト345は、無端ベルトであり、各車輪340に掛け渡されている。モータ380は、モータ制御部390の制御下で、車輪340を回転させる。車輪340の回転によってベルト345は、回転する。回転するベルト345上を使用者が歩行する。
【0076】
アーム部350は、フレーム330の上端部に固定されている。アーム部350は、前後方向に沿って設けられており、アーム部350の上面には、溝状のレール部351が前後方向に沿って設けられている。把持部370は、レール部351に沿って前後方向に移動可能にアーム部350に接続されている。把持部370を把持した状態の使用者は、左右の腕を前後に振りながらベルト345上を歩行できる。そのため、歩行トレーニング装置13は、自然な歩行動作の訓練を使用者に提供することができる。
【0077】
把持部370の前後方向の位置は、アーム部350に設けられた図示しないリニアエンコーダによって検出される。左右の把持部370の中間位置が所定位置よりも後方に移動した場合には、ベルト345の回転が減速され、左右の把持部370の中間位置が所定位置よりも前方に移動した場合には、ベルト345の回転が加速される。
【0078】
コントローラ400は、本体部320の上端部に固定されている。コントローラ400の構成は、第1実施形態のコントローラ100と同じであるため説明を省略する。コントローラ400は、
図8に示した認知課題提供処理を実行することによって、ベルト345上を歩行する使用者に認知課題を提供する。
【0079】
以上で説明した本実施形態における歩行トレーニング装置13によれば、スペースの限られた場所でも使用者にデュアルタスクトレーニングを提供できる。
【0080】
D.第4実施形態:
図13は、第4実施形態における歩行トレーニング装置14の概略構成を示す斜視図である。第4実施形態では、本体部320に対して回転可能に接続されたシャフト361の先端部に把持部370が設けられていることが第3実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、
図12に示した第3実施形態と同じである。
【0081】
シャフト361は、本体部320に対して、左右方向に沿った回転軸RX1を中心にして回転可能に接続されている。把持部370は、シャフト361の先端部に固定されている。把持部370を把持した状態の使用者は、左右の腕を前後に振りながらベルト345上を歩行できる。そのため、歩行トレーニング装置14は、自然な歩行動作の訓練を使用者に提供することができる。把持部370の前後方向の位置は、図示しないロータリーエンコーダによって検出される本体部320に対するシャフト361の回転角度を用いて検出できる。なお、本実施形態では、アーム部350は、設けられていない。
【0082】
以上で説明した本実施形態における歩行トレーニング装置14によれば、スペースの限られた場所でも使用者にデュアルタスクトレーニングを提供できる。
【0083】
E.第5実施形態:
図14は、第5実施形態における歩行トレーニング装置15の概略構成を示す斜視図である。第5実施形態では、把持部370がワイヤ365によってアーム部350に接続されていることが第3実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、
図12に示した第3実施形態と同じである。
【0084】
把持部370は、ワイヤ365を介してアーム部350に接続されている。ワイヤ365は、アーム部350の後端部に設けられた貫通孔352に挿通されている。なお、本実施形態では、アーム部350には、レール部351が設けられていない。
【0085】
図15は、巻取り機構355の構成を示す説明図である。巻取り機構355は、アーム部350内に設けられている。巻取り機構355は、リール356と、渦巻バネ357とによって構成されている。リール356は、アーム部350に対して、左右方向に沿った回転軸RX2を中心にして回転可能に接続されている。リール356にはワイヤ365が巻き回されている。リール356は、ワイヤ365を巻き取る向きに回転するように、渦巻バネ357によって付勢されている。把持部370が後方に移動した場合には、リール356からワイヤ365が繰り出される。把持部370が前方に移動した場合には、渦巻バネ357の付勢力によってリール356が回転して、ワイヤ365がリール356に巻き取られる。把持部370を把持した状態の使用者は、左右の腕を前後に振りながらベルト345上を歩行できる。そのため、歩行トレーニング装置15は、自然な歩行動作の訓練を使用者に提供することができる。把持部370の前後方向の位置は、ロータリーエンコーダ358によって検出されるリール356の回転角度を用いて検出できる。
【0086】
以上で説明した本実施形態における歩行トレーニング装置15によれば、スペースの限られた場所でも使用者にデュアルタスクトレーニングを提供できる。
【0087】
F.第6実施形態:
図16は、第6実施形態における歩行トレーニングシステム500の概略構成を示す説明図である。歩行トレーニングシステム500は、複数の歩行トレーニング装置11と、情報処理装置510とを備えている。各歩行トレーニング装置11の構成は、第1実施形態の歩行トレーニング装置11と同じである。なお、歩行トレーニングシステム500は、歩行トレーニング装置11に代えて、第2実施形態の歩行トレーニング装置12、または、第3実施形態の歩行トレーニング装置13、または、第4実施形態の歩行トレーニング装置14、または、第5実施形態の歩行トレーニング装置15を備えてもよい。
【0088】
情報処理装置510は、1つまたは複数のプロセッサと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピュータによって構成されている。情報処理装置510は、ネットワークを介して、各歩行トレーニング装置11と通信可能に構成されている。情報処理装置510は、各歩行トレーニング装置11のデータ記憶部173に記憶された各種データや、認知課題記憶部171に記憶された認知課題や、関係記憶部172に記憶された認知課題の種類と難易度との関係を収集する。
【0089】
本実施形態では、情報処理装置510は、機械学習によって、各歩行トレーニング装置11から収集した各種データを学習して、各使用者に対して適正な認知課題の難易度を決定する。機械学習のアルゴリズムは、教師あり学習でもよいし、教師なし学習でもよいし、強化学習でもよい。情報処理装置510は、例えば、各歩行トレーニング装置11から収集した各使用者の認知機能のスコアを解析して、各使用者の認知機能を相対評価で評価する。情報処理装置510は、認知機能のスコアに応じて各使用者をグループ分けして、グループごとに適正な認知課題の難易度を決定する。各使用者は、使用者を識別するIDを歩行トレーニング装置11に入力することによって、情報処理装置510によって決定された難易度を取得し、情報処理装置510によって調整された難易度で認知課題の提供を受けることができる。なお、情報処理装置510は、例えば、各使用者に提供された認知課題の難易度と、各使用者の認知機能のスコアの推移との関係を学習させることによって、使用者に対してどの難易度の認知課題を提供すれば当該使用者の認知機能の向上度合いが最大化されるかを予測し、認知機能の向上度合いが最大化されると予測された難易度を、当該使用者に提供する認知課題の難易度に決定してもよい。
【0090】
以上で説明した本実施形態における歩行トレーニングシステム500によれば、情報処理装置510は、各歩行トレーニング装置11から収集したデータを解析して、各使用者に対して適正な難易度を算出するので、使用者に対して、より適正な難易度で認知課題を提供できる。
【0091】
G.他の実施形態:
(G1)上述した第1実施形態および第2実施形態の歩行トレーニング装置11,12は、動作モードとして、アシストモード、腕振り歩行トレーニングモード、および、負荷トレーニングモードとを有している。これに対して、歩行トレーニング装置11,12は、動作モードとして、アシストモードと腕振り歩行トレーニングモードと負荷トレーニングモードとのうちのいずれか1つを有しなくてもよい。例えば、歩行トレーニング装置11,12は、負荷トレーニングモードを有しなくてもよい。負荷トレーニングモードを有しない場合には、モータ80は、回生モードを有しなくてもよい。また、歩行トレーニング装置11,12は、動作モードとして、アシストモードと腕振り歩行トレーニングモードと負荷トレーニングモードとのうちのいずれか1つのみを有してもよい。例えば、歩行トレーニング装置11,12は、アシストモードのみを有してもよい。腕振り歩行トレーニングモードを有しない場合には、ハンドルユニット70に第2把持部72が設けられていなくてもよい。
【0092】
(G2)上述した第1実施形態および第2実施形態の歩行トレーニング装置11,12において、ハンドルユニット70は、ハンドル移動部60によって、アーム部50に対して移動可能に接続されている。これに対して、ハンドルユニット70は、アーム部50に固定されてもよい。
【0093】
(G3)上述した各実施形態の歩行トレーニング装置11~15において、適正度評価部140は、歩行速度の変化を用いて難易度の適正度を評価している。これに対して、適正度評価部140は、歩行速度の変化を用いずに、回答の正否を用いて難易度を評価してもよいし、回答時間を用いて難易度を評価してもよいし、回答の正否と回答時間とを用いて難易度を評価してもよい。
【0094】
(G4)上述した各実施形態の歩行トレーニング装置11~15において、身体状態取得部130は、脳血流計測器によって計測される使用者の脳血流を取得する脳血流取得部を備えてもよい。脳血流計測器は、例えば、使用者の頭部に装着され、近赤外光を用いて使用者の脳血流を計測する。脳血流取得部は、例えば、脳血流計測器から無線通信によって脳血流を取得する。脳血流取得部によって取得された脳血流は、適正度評価部140による適正度の評価に用いられてもよいし、認知機能評価部160による認知機能の評価に用いられてもよい。
【0095】
(G5)上述した各実施形態の歩行トレーニング装置11~15は、回答取得部121を備えている。これに対して、歩行トレーニング装置11~15は、回答取得部121を備えていなくてもよい。この場合であっても、歩行速度取得部131によって取得される歩行速度を用いて、認知課題の難易度の適正度を評価することができる。
【0096】
(G6)上述した各実施形態の歩行トレーニング装置11~15は、認知課題の種類と難易度との関係を記憶する関係記憶部172を備えている。これに対して、歩行トレーニング装置11~15は、関係記憶部172を備えていなくてもよい。この場合、認知課題記憶部171には、認知課題の種類ごとではなく、認知課題の1つ1つに難易度が紐付けられて記憶されてもよい。
【0097】
(G7)上述した第1実施形態および第2実施形態の歩行トレーニング装置11,12は、モータ80とモータ制御部90とを備えている。これに対して、歩行トレーニング装置11,12は、モータ80とモータ制御部90とを備えていなくてもよい。この場合であっても、使用者に押されることによって歩行トレーニング装置11,12は走行でき、歩行トレーニング装置11,12を押しながら歩行する使用者に歩行トレーニングを提供できる。
【0098】
(G8)上述した第2実施形態の歩行トレーニング装置12において、モータ制御部90は、認知課題提供部110によって認知課題の提供が終了したタイミングから回答取得部121によって認知課題に対する回答の取得が終了するタイミングまでの期間に、左右のハンドルユニット70の中間位置を所定位置よりも後方に移動させなくても、歩行トレーニング装置12の走行速度を減速させる。これに対して、モータ制御部90は、上述した期間に、歩行トレーニング装置12の走行速度を減速させなくてもよい。
【0099】
(G9)上述した第1実施形態の歩行トレーニング装置11において、モータ制御部90は、第2実施形態のように、認知課題提供部110によって認知課題の提供が終了したタイミングから回答取得部121によって認知課題に対する回答の取得が終了するタイミングまでの期間に、左右のハンドルユニット70の中間位置を所定位置よりも後方に移動させなくても、歩行トレーニング装置12の走行速度を減速させてもよい。
【0100】
(G10)上述した各実施形態の歩行トレーニング装置11~15は、認知機能評価部160を備えている。これに対して、歩行トレーニング装置11~15は、認知機能評価部160を備えていなくてもよい。
【0101】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
11~15…歩行トレーニング装置、20…本体部、30…フレーム、40…車輪、50…アーム部、60…ハンドル移動部、70…ハンドルユニット、71…第1把持部、72…第2把持部、73…ブレーキレバー、80…モータ、90…モータ制御部、100…コントローラ、101…出題制御部、102…音声出力部、103…音声入力部、104…表示部、105…通信部、109…固定部材、110…認知課題提供部、121…回答取得部、122…正否判定部、123…回答時間取得部、130…身体状態取得部、131…歩行速度取得部、132…心拍数取得部、140…適正度評価部、150…難易度調整部、160…認知機能評価部、171…認知課題記憶部、172…関係記憶部、173…データ記憶部、200…心拍数計測器、500…歩行トレーニングシステム、510…情報処理装置