(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080427
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】粘性調整剤、及びそれを含有する被膜形成剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20220523BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220523BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220523BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220523BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C09K3/00 103H
C09D7/65
C09D201/00
C09J201/00
C09J11/08
C09K3/00 103N
C09K3/00 103G
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191489
(22)【出願日】2020-11-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 修
(72)【発明者】
【氏名】片岡 洋介
(72)【発明者】
【氏名】中塚 信明
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅弘
【テーマコード(参考)】
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J038DH002
4J038NA14
4J038PB07
4J038PB09
4J040EG002
4J040LA08
4J040NA12
4J040NA16
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】 高温条件で製造・使用される塗料、コーティング剤、塗工剤、フラックス、接着材及びシーリング材に添加して用いられるもので、熱に安定で、優れた増粘効果及び/又はたれ止め効果を付与できる粘性調整剤、及びそれを含有する被膜形成剤を提供する。
【解決手段】 粘性調整剤は、炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類と、炭素数12~36の多塩基酸類及び/又は炭素数12~30の無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とのポリアミド化合物を含有するポリアミド成分を含んでいる。被膜形成剤は、前記粘性調整剤と、被膜形成成分とを含有しており、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかであるというものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類と、炭素数12~36の多塩基酸類及び/又は炭素数12~30の無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とのポリアミド化合物を含有するポリアミド成分を含んでいることを特徴とする粘性調整剤。
【請求項2】
前記ポリアミド成分が、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とそれのアミノ基に対して当量の前記多塩基酸類である脂肪族ジカルボン酸類との前記ポリアミド化合物と、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とそれのアミノ基に対して当量の前記多塩基酸類である脂肪族ジカルボン酸類及び前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類との別な前記ポリアミド化合物との少なくとも何れかを、含有していることを特徴とする請求項1に記載の粘性調整剤。
【請求項3】
前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類と前記多塩基酸類である脂肪族ジカルボン酸類及び前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族カルボン酸類との前記ポリアミド化合物を、前記ポリアミド成分の主成分とすることを特徴とする請求項1~2に記載の粘性調整剤。
【請求項4】
前記ポリアミド成分が、前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類をモル比で合計aモル(0≦a≦2)と、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類をモル比で合計bモル(2≦b≦6)と、前記多塩基酸類をモル比で合計cモル(0≦c≦5)とから構成されるポリアミド(但し、a+c>0)のうちの少なくとも何れかの前記ポリアミド化合物を含有していることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の粘性調整剤。
【請求項5】
前記ポリアミド成分の融点が100℃~250℃であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の粘性調整剤。
【請求項6】
前記ポリアミド成分が、複数の分子種のポリアミド化合物を含有していることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の粘度調整剤。
【請求項7】
前記ポリアミド成分は、その軟化点が180℃~194℃であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の粘性調整剤。
【請求項8】
前記ポリアミド成分が、フェドアーズ法で求めた溶解性パラメータ値を9.0~10.2とするものであることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の粘性調整剤。
【請求項9】
塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかの用途に添加剤として用いられるものであることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載の粘性調整剤。
【請求項10】
50℃~200℃の高温条件で製造及び/又は使用される塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかの用途に添加剤として用いられるものであって、増粘性及び/又は垂れ止め性の付与剤として用いられるものであることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の粘性調整剤。
【請求項11】
粉末状であることを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の粘性調整剤。
【請求項12】
チクソ剤、揺変剤、増粘剤、垂れ止め剤、及び/又はフィラー成分の沈降防止剤であることを特徴とする請求項1~11の何れかに記載の粘性調整剤。
【請求項13】
炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類と、炭素数12~36の多塩基酸類及び/又は炭素数12~30の無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とをポリアミド化合物へと脱水させる反応により、前記ポリアミド化合物を含有するポリアミド成分を調製する工程、
前記ポリアミド成分を粉砕することにより、前記ポリアミド成分を含んでいる粘性調整剤を調製する工程
を有することを特徴とする粘性調整剤の製造方法。
【請求項14】
請求項1~12の何れかに記載の粘性調整剤と、被膜形成成分とを含有しており、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする被膜形成剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材、とりわけ50℃~200℃の高温条件で製造・使用される塗料、コーティング剤、塗工剤、フラックス、接着材及びシーリング材に添加して用いられるもので、優れた増粘効果及び/又は垂れ止め効果を付与できる粘性調整剤、及びそれを含有する被膜形成剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、建築、電子材料、プラスチック材料向けの塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材には、各種の添加剤が使用されている。そのような添加剤の内でも粘度を調整するのに用いられるものとして、用途に応じてチクソ剤、揺変剤、増粘剤、垂れ止め剤、又はフィラー成分の沈降防止剤とも称される、粘性調整剤が挙げられる。
【0003】
近年、これら塗料に関しては、環境に配慮してそれに含まれる有機溶剤特に揮発性有機溶剤の低減を目的として、樹脂或いは顔料成分の割合を増やすことでハイソリッド化或いは無溶剤型への切り替えが、全世界で進められている。
【0004】
有機溶剤を減らすと、塗料中の固形分濃度が相対的に上がるため、塗料を調合する際に分散熱が生じ50℃~60℃にまで、更にはサンドグラインダーを使用することで80℃近くまで発熱することがある。このため、使用される添加剤、特に従来汎用されていたアミド化合物などのような粘度調整剤は、耐熱性を有する組成物から構成されることが望ましい。
【0005】
特許文献1には「低揮発性有機成分量で塗装作業性・防食性に優れ、電気防食システムを併用しても基材に対し良好な付着性を有する防食塗膜を形成できる塗料組成物として、エポキシ樹脂、ポリアミドアミンのようなアミン硬化剤、鱗片状アルミニウム粉およびそれ以外のアルミニウム粉を含有する組成物」が開示されている。
【0006】
更に高い温度条件で準備される材料として、例えば特許文献2に「70℃、22時間の圧縮永久歪み(JIS K6301)が35%以下であり、かつ20℃における硬度(JIS K6301)が5以下であり、具体的にはスチレン-ジエン共重合体又はその水素化体(a1)に重合性単量体(a2)をグラフト反応させて得られるゴム質重合体(A)を含有してなるシール材」が開示されており「ホットメルト組成物からなるシーリング材では、被着体に適用するときのシール材の溶融温度は、通常100~200℃である。また、190℃におけるシール材の溶融粘度は塗工性の観点から好ましくは5,000~1000,000mPa・sであり、さらに好ましくは10,000~200,000mPa・sである」と記載されている。
【0007】
電子材料に用いられるプリント基板と集積回路でも、抵抗、及びコンデンサのような電子部品とのハンダ付けの工業的手法として、リフロー方式が知られている。リフロー方式は、樹脂成分、溶剤成分、活性剤、揺変剤、及び添加剤を含むフラックスと、ハンダ粉末とが混合されたソルダペーストを、プリント基板上に印刷し、その上に電子部品を載せてから、熱を加えてハンダを溶融することによってハンダ付けする手法である。電子部品の小型化・高密度実装化に伴って、リードピンを有しない電子部品を用いた表面実装技術が採用されるようになったため、ハンダ付けにはリフロー方式が主に採用されている。
【0008】
このようなリフロー方式において、ソルダペーストをプリント基板に印刷した後、リフロー炉内でプレヒートと呼ばれる予備加熱が行われる。このプレヒートは、通常150~170℃で行われる。プレヒートによって、溶剤成分を気化させたり、フラックスの活性を促進したりする。
【0009】
プレヒートにおいては、しばしば印刷されたソルダペーストが軟化してしまい、プリント基板上の電子部品の下やそれの周囲に流れる現象、所謂熱だれを生じることがある。この熱だれは、メインヒートにおいてハンダボールやハンダブリッジを誘発するため、ハンダ付け不良の原因となっている。この熱だれを抑制するのに、熱だれ抑制成分であるワックス状生成物を、揺変剤として含んでいるフラックスと、ハンダ粉末とを混和したソルダペースト(クリームハンダ)が、特許文献3に記載されている。このワックス状生成物は、高級脂肪族モノカルボン酸、多塩基酸、及びジアミンを脱水反応することによって得られるもので、例えばステアリン酸(炭素数18)及びセバシン酸(炭素数10)とエチレンジアミン(炭素数2)とのポリアミドから成るワックスが実施例に例示されている。
【0010】
熱だれ抑制成分は、常温で粉末状や小塊状をなしているため、これをフラックスに均一に分散させるのに、高温で長時間加熱処理し、これを溶融させながら混合する必要がある。この高温かつ長時間の加熱処理の所為で、熱だれ抑制成分が劣化したり、フラックスに含まれる樹脂成分が分解・変質し、フラックスが着色したりする熱ダメージを生じる。一方、この熱ダメージを回避するのに、加熱処理の時間を短縮したり、温度を下げたりすると、熱だれ抑制成分の分散不良を生じてしまう。
【0011】
このような状況であったので、高温下で製造或いは使用する塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材について優れた増粘性、垂れ止め性を付与することのできる粘性調整剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2020-84003号公報
【特許文献2】特開2002-38116号公報
【特許文献3】特開平7-75894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、高温条件で製造・使用される塗料、コーティング剤、塗工剤、フラックス、接着材及びシーリング材に添加して用いられるもので、熱に安定で、優れた増粘効果及び/又は垂れ止め効果を付与できる粘性調整剤、及びそれを含有する被膜形成剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、上記の問題を解決するため鋭意研究した結果、特定の炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類と、炭素数12~36の脂肪族ジカルボン酸類及び/又は炭素数12~30を有する無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とのポリアミド化合物を含有するポリアミド成分を、含んでいることを特徴とする粘性調整剤を作成することで、前記問題点を解決できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0015】
前記の目的を達成するためになされた粘性調整剤は、炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類と、炭素数12~36の多塩基酸類及び/又は炭素数12~30の無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とのポリアミド化合物を含有するポリアミド成分を含んでいるというものである。
【0016】
この粘性調整剤は、前記ポリアミド成分が、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とそれのアミノ基に対して当量の前記多塩基酸類である脂肪族ジカルボン酸類との前記ポリアミド化合物と、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とそれのアミノ基に対して当量の前記多塩基酸類である脂肪族ジカルボン酸類及び前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類との別な前記ポリアミド化合物との少なくとも何れかを、含有しているものであることが好ましい。
【0017】
この粘性調整剤は、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類と前記多塩基酸類である脂肪族ジカルボン酸類及び前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族カルボン酸類との前記ポリアミド化合物を、前記ポリアミド成分の主成分とするものであると、一層好ましい。
【0018】
この粘性調整剤は、具体的には、前記ポリアミド成分が、前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類をモル比で合計aモル(0≦a≦2)と、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類をモル比で合計bモル(2≦b≦6)と、前記多塩基酸類をモル比で合計cモル(0≦c≦5)とから構成されるポリアミド(但し、a+c>0)のうちの少なくとも何れかの前記ポリアミド化合物を含有しているというものである。
【0019】
この粘性調整剤は、前記ポリアミド成分の融点が100℃~250℃であるというものであると好ましい。
【0020】
この粘性調整剤は、前記ポリアミド成分が、複数の分子種のポリアミド化合物を含有しているというものである。
【0021】
この粘性調整剤は、例えば、前記ポリアミド成分が、その軟化点を180℃~194℃とするというものである。その軟化点を好ましくは190~192℃とするものであってもよい。
【0022】
この粘性調整剤は、前記ポリアミド成分が、フェドアーズ法(Fedors法)で求めた溶解性パラメータ値を9.0~10.2とするものであると、一層好ましい。
【0023】
この粘性調整剤は、例えば、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかの用途に添加剤として用いられるものである。
【0024】
この粘性調整剤は、例えば、50℃~200℃の高温条件で製造及び/又は使用される塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかの用途に添加剤として用いられるものであって、増粘性及び/又は垂れ止め性の付与剤として用いられるものである。
【0025】
この粘性調整剤は、粉末状であることが好ましい。
【0026】
この粘性調整剤は、例えば、チクソ剤、揺変剤、増粘剤、垂れ止め剤、及び/又はフィラー成分の沈降防止剤として用いることができる。
【0027】
前記の目的を達成するためになされた本発明の粘性調整剤の製造方法は、炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類と、炭素数12~36の多塩基酸類及び/又は炭素数12~30の無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とをポリアミド化合物へと脱水させる反応により、前記ポリアミド化合物を含有するポリアミド成分を調製する工程、前記ポリアミド成分を粉砕することにより、前記ポリアミド成分を含んでいる粘性調整剤を調製する工程を有するというものである。
【0028】
前記の目的を達成するためになされた本発明の被膜形成剤は、前記粘性調整剤と、被膜形成成分とを含有しており、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかであるというものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の粘度調整剤は、塗料、コーティング剤、塗工剤、フラックス、接着材及びシーリング材に添加して粘度を調整することができ、熱に安定であって加熱によっても劣化せず、優れた増粘効果を発現させると共に、熱によるたれを防止する効果を付与することができる。この粘度調整剤によれば、高温で塗料、コーティング剤、塗工剤、フラックス、接着材及びシーリング材を製造・使用する際に、加熱処理時間の短縮によって熱ダメージを阻害し、分散不良を生じさせない。
【0030】
この粘度調整剤は、塗料等の添加剤として添加され、一度活性化或いは溶解させてから使用される。それにより、塗料、コーティング材又は塗工剤、若しくはフラックス、若しくは粘着材及びシーリング材の粘性調整剤として(即ち、チクソ剤、揺変剤、増粘剤、垂れ止め防止剤、及び/又はフィラー成分の沈降防止剤として)、それらの優れた効果を付与することができる。
【0031】
この粘度調整剤は、低温乃至常温で使用する一般的な塗料、コーティング材、塗工材は勿論のこと、加熱する高温下での製造工程を必要とするフラックス、粘着材及びシーリング材に効果がある粉体粘性調整剤として、増粘性止め性及び/又は垂れ止め効果を付与することができる。
【0032】
この粘度調整剤の製造方法によれば、高品質で均質な粘度調整剤を簡便に大量生産することが可能となる。
【0033】
この粘度調整剤を含有させた本発明の被膜形成剤によれば、塗料、コーティング剤、塗工剤、フラックス、接着材、シーリング材として、高温でも製造・使用ができ、増粘性・たれ止め性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0035】
本発明の粘性調整剤は、直鎖状・分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類と、直鎖状・分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の炭素数12~36の多塩基酸類例えば脂肪族ジカルボン酸類や脂環式ジカルボン酸類や芳香族ジカルボン酸類及び/又は直鎖状・分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の炭素数12~30を有する無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とが縮合することにより得られるポリアミド化合物を含有するポリアミド成分を、含んでいる。
【0036】
炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類としては、具体的に、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、1,10-デカンジアミンが挙げられる。これらのジアミン類は単独で使用してもよく、複数を使用してもよい。
【0037】
炭素数12~36の多塩基酸類とは、カルボキシル基を複数有するカルボン酸類が挙げられるが、中でもジカルボン酸類であることがより好ましい。このようなジカルボン酸類として、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸及びダイマー酸等が挙げられる。これらの炭素数12~36の多塩基酸類は単独で使用してもよく、複数を使用してもよく、或いは含まなくてもよい。
【0038】
炭素数12~30を有する無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とは、例えば片末端にカルボン酸を有する脂肪酸で、直鎖状、分岐鎖状、及び/又は環状の炭素鎖を有する飽和又は不飽和で1~2個の水酸基を有していてもよい脂肪族カルボン酸であり、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸のような飽和脂肪族モノカルボン酸や、12-ヒドロキシステアリン酸のようなそれらの水酸基含有飽和脂肪族モノカルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸のような不飽和脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。これらの何れかを主成分とし他の脂肪族モノカルボン酸を含む混合物、例えば工業用ステアリン酸であってもよい。これらの炭素数12~30を有する無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類は単独で使用してもよく、複数を使用してもよい、或いは含まなくてもよい。
【0039】
なお、ポリアミド化合物は、ジカルボン酸類のような多塩基酸類と無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類との少なくとも何れかと、脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類との縮合ポリアミドである。ポリアミド成分は、それらポリアミド化合物の単独又は複数種の混合物である縮合ポリアミドであってもよい。
【0040】
例えば、前記ポリアミド成分が、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とそれのアミノ基に対して当量の前記脂肪族ジカルボン酸類との前記ポリアミド化合物と、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とそれのアミノ基に対して当量の前記脂肪族ジカルボン酸類及び前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類との別な前記ポリアミド化合物との少なくとも何れかを、含有していてもよい。前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類と前記脂肪族ジカルボン酸類及び前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族カルボン酸類との前記ポリアミド化合物を、前記ポリアミド成分の主成分としていると一層好ましい。
【0041】
具体的には、前記ポリアミド成分が、
(I)炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類の(n1+1)モル比と、炭素数12~36の多塩基酸類のn1モル比と、炭素数12~30の無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類の2モル比とを、脱水縮合した単一種又は複数種のポリアミド化合物(但しn1は1~3好ましくは1);
(II)炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類の1モル比と、炭素数12~36の多塩基酸類の1モル比とを、脱水縮合した単一種又は複数種のポリアミド化合物;又は
(III)炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類の1モル比と、炭素数12~30の無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類の2モル比とを、脱水縮合した単一種又は複数種のポリアミド化合物;
が挙げられる。
【0042】
より具体的には、前記ポリアミド成分が、(I)の単一種又は複数種のポリアミド化合物、(II)の単一種又は複数種のポリアミド化合物、(III)の単一種又は複数種のポリアミド化合物として、
下記化学式(1)
M-D-A-D-M ・・・(1)
(化学式(1)中、Mは前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸由来の脂肪族モノカルボニル基、Dは前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン由来のジアミノ基、Aは前記脂肪族ジカルボン酸由来の脂肪族ジカルボニル基)で示される前記ポリアミド化合物を前記主成分としつつ、
下記化学式(2)
M-D-M ・・・(2)
(化学式(2)中、M及びDは前記に同じ)で示される前記ポリアミド化合物と、
下記化学式(3)
M-(D-A)n-D-M ・・・(3)
(化学式(3)中、MとA及びDは前記に同じで、nは2~3の数)
で示される前記ポリアミド化合物と、
下記化学式(4)
Am1-(D-A)m2-Dm3 ・・・(4)
(化学式(4)中、D及びAは前記に同じで、m1及びm3は独立して0又は1の数、m1+m2+m3は2~6の数)
で示される少なくとも何れかの前記ポリアミド化合物と、
から選ばれる少なくとも何れかを含有しているというものである。
【0043】
例えば、前記ポリアミド成分中、(I)の単一種又は複数種のポリアミド化合物の比率としては好ましくは化学式(1)のポリアミド化合物が70%~85%で、化学式(2)のポリアミド化合物が10%~20%で、化学式(3)のポリアミド化合物が5%~10%で、化学式(4)のポリアミド化合物が0%~15%である混合物であるというものであり、(II)の単一種又は複数種のポリアミド化合物の比率としては好ましくは化学式(4)のポリアミド化合物で示される少なくとも何れかの混合物であるというものであり、(III)の単一種又は複数種のポリアミド化合物の比率としては好ましくは化学式(2)のポリアミド化合物であるというものである。
【0044】
前記ポリアミド成分は、その融点が100℃~250℃、好ましくは120~200℃である。そのポリアミド成分は、複数の分子種のポリアミド化合物の混合物であることによって、複数の軟化点を持つものであってもよい。
【0045】
前記ポリアミド成分のように、複数の融点を持つ材料を取り扱う際はしばしば軟化点を測定し、実作業に用いられることが多い。
【0046】
前記ポリアミド成分は、その軟化点が180℃~194℃、好ましくは190~192℃であるというものである。この軟化点は、自動滴点・軟化点測定装置(メトラー・トレド株式会社製)を用いて測定を行った。
【0047】
前記ポリアミド成分の特長を持つ粘性調整剤は、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材に添加した際、ポリアミド組成が活性化しネットワークを形成し増粘したり或いは熱溶融してから固化させることで増粘したりするという特性に軟化点が大きく影響する。
【0048】
本発明は、軟化点が180℃~194℃、好ましくは190~192℃であることを特徴としている。50℃~200℃の高温条件で製造及び/又は使用される塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材で特に高温条件で製造及び/又は200℃付近で使用される分野では、熱溶融してから固化させることで増粘したりするという特性・効果を本発明品が発揮する。反対に軟化点が195℃以上になると、熱溶解時に部分的な溶け残りが発生し、十分な活性化が行えず粘性調整剤として(即ち、チクソ剤、揺変剤、増粘剤、垂れ止め防止剤、及び/又はフィラー成分の沈降防止剤として)、それらの優れた効果を付与することができなくなる。
【0049】
この粘性調整剤は、ポリアミド成分の主成分であるポリアミド化合物、例えば前記化学式(1)で表されるM-D-A-D-Mが、フェドアーズ法で求めた溶解性パラメータ値を9.0~10.2とするものである。溶解性パラメータ値は、類似或いは異なる素材が交わる際の相性、溶けやすさ、馴染みやすさ或いは濡れやすさの指標として用いられる。お互いの数値が近似するほど馴染みやすいということになる。ポリアミド成分の溶解性パラメータ値がこの範囲内であれば、エポキシ樹脂、ロジン樹脂(溶解性パラメータ値が10.3~10.4)などの共存させる樹脂とポリアミド成分との溶解性パラメータが同程度となり相溶性に優れたものとなるが、この範囲から外れると共存させる樹脂とポリアミド成分との溶解性パラメータ値が大きく異なる所為で相溶性が悪くなってしまう。
【0050】
溶解性パラメータ値(SP値)の推算方法としては、蒸発潜熱から求める方法や溶解度から求める方法のような物性値から推算する方法と、Fedors法やHansen法やHoy法などのような分子構造から推算する方法とがあるが、本発明においては、比較的簡便に求められるフェドアーズ法(Fedors法)で十分に差別化できることから、フェドアーズ法を採用している。フェドアーズ法の理論溶解性パラメーター値は、以下の数式(1)から求めることができる。
【数1】
(数式(1)中Δe
i、Δv
iは、それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー(凝集エネルギー)及びモル体積(モル分子容)を表す。)
このような蒸発エネルギー(凝集エネルギー)及びモル体積(モル分子容)は、例えば、Polym. Eng. Sci., 14(2), p.147-154 (1974)、塗料の研究,No.152, Oct, p.41-46 (2010)等に例示されている。
【0051】
この粘性調整剤は、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材に添加した際、不相溶な材料の構造粘性を利用する。仮に、溶解性パラメータ値が媒質と同じであるような馴染みやすい材料を使うと増粘ではなく、粘度を下げ滑剤として機能する。実施例に示すような使い方をする場合には、溶解性パラメータ値を適度に乖離させることで、優れた増粘性、垂れ止め性、フィラーの沈降防止剤としての効果を発揮する。なお、実施例に用いたエポキシ樹脂とロジン樹脂のそれぞれのフェドアーズ法で求めた溶解性パラメータ値は10.3~10.4となる。
【0052】
このような粘性調整剤は、ポリアミド成分のみからなっていてもよく、その他に、消泡剤、防錆剤、界面活性剤、熱硬化剤、つや消し剤、レベリング剤、潤滑剤、湿潤剤、分散剤のような添加物を、粘性調整剤全量に対して0.1~100重量%含有していてもよい。
【0053】
このような粘性調整剤の粉末は、原料成分を混合して、アミド縮合反応してから冷却し、粒子径100μm以下、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは30μmに粉砕し微粒化した微粉砕粉末であることが望ましい。
【0054】
この粘性調整剤の微粉砕粉末と、被膜形成成分と、必要に応じてアルコール成分のような溶剤とを混合することにより、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかである被膜形成剤を調製することができる。
【0055】
このような被膜形成剤は、粘性調整剤のポリアミド成分が被膜形成成分に分散しているときに一部相溶して活性化しネットワークを形成し増粘したり、ポリアミド成分が熱溶融してから固化した時に増粘したりするというものである。
【0056】
この粘性調整剤の微粉砕粉末は、ディスパーなどの機械分散や、ガラスビーズ等のメディア方式の湿式分散機等を用いて非水系コーティング材へ分散することができる。また、非水系塗料へ分散することができる。このような塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材を調製する際、微粉砕粉末は、塗料等の全配合量中の1~10質量%、好ましくは1~5質量%となるように配合する。
【0057】
この粘性調整剤は、特に高温条件(50℃~200℃)で製造・使用される塗料、コーティング剤、塗工剤、フラックス及び接着材で、優れた増粘効果及び/又は垂れ止め効果を付与できるものである。
【実施例0058】
以下、本発明を適用する粘性調整剤と本発明を適用外の粘度調整剤とを調製し、それらを用いて被膜形成剤を製造し、夫々について物性評価した例を、以下に示す。
【0059】
(調製実施例1)ポリアミド化合物への縮合反応によるポリアミド成分の調製
撹拌器、温度計、分水器及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mLの反応容器に、前記化学式(1)のポリアミド化合物になる当量となるように、脂肪族モノカルボン酸類として12-ヒドロキシステアリン酸の338.9質量部(2モル比)、脂肪族ジカルボン酸類としてヘキサンデカン二酸の161.5質量部(1モル比)を仕込んだ。その後、脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類として1,4-アミノブタン99.5質量部(2モル比)を加え、170℃、窒素雰囲気下で2~5時間、脱水しながら縮合反応しアミド化させ、酸価8.2、アミン価8.8のポリアミド化合物を得た。得られた合成物を平均粒子径15μmまで粉砕し、前記化学式(1)のポリアミド化合物を主成分とするポリアミド成分からなる粘性調整剤として微粉末状の添加剤を得た。
【0060】
(調製実施例2~8と調製比較例1~8)ポリアミド化合物への縮合反応によるポリアミド成分の調製
調製実施例1と同様の手順で、脂肪族モノカルボン酸類及び/又は脂肪族ジカルボン酸類と脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とを表1-1及び表1-2のモル比で用いて、酸価10以下、アミン価10以下の夫々ポリアミド化合物を含有するポリアミド成分を得た。
【0061】
なお、調製実施例1~8と調製比較例1~8とのポリアミド化合物を含有するポリアミド成分は、脂肪族モノカルボン酸類及び/又は脂肪族ジカルボン酸類と脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とを表1-1及び表1-2のモル比にして脱水縮合反応することにより、理論量としてそれらが表に記載のモル比で丁度、前記化学式(1)、(2)又は(4)へと反応して生成するようにしたもので、現実的には、原料成分に違いがあっても、前記化学式(1)のポリアミド化合物が70%~85%で、前記化学式(2)のポリアミド化合物が10%~20%で、前記化学式(3)のポリアミド化合物が5%~10%で、前記化学式(4)のポリアミド化合物が0%~15%含有されているというものであった。
【0062】
更に、調製実施例1~8及び調製比較例1~8で得られたポリアミド化合物に関し、主成分である前記化学式(1)のポリアミド化合物についてフェドアーズ法で求めた溶解性パラメータ値と、酸価、アミン価の値を表1-1及び表1-2に合わせて記載する。
【0063】
【0064】
【0065】
調製実施例1~8と調製比較例1~8とで得られたポリアミド成分の軟化点を表2に示す。
【0066】
【0067】
(使用実施例I)
(評価用塗料サンプル及びブランク塗料サンプルの調製:条件A)
エポキシ樹脂のjER828(三菱ケミカル株式会社の製品名)の135質量部、酸化チタンのタイペークCR-95(石原産業株式会社の製品名)の15質量部、タルクを60質量部、沈降性硫酸バリウム60質量部とシンナー(キシレン/ノルマルブタノール=8/2質量比)を30質量部の順番に計量した。次いで、調製実施例1~8及び比較混合例1~8で得られた粉末状揺変性付与剤5.0質量部をそれぞれ添加し、ラボディスパー3000rpmで10分間分散した分散液を得た。その後、60℃の水浴中にてラボディスパー3000rpmで30分間分散した塗料サンプルを得た。なお、粉体粘性調整剤を添加していない塗料をブランクの塗料サンプルとした。
【0068】
(評価用塗料サンプル及びブランク塗料サンプルの調製:条件B)
エポキシ樹脂のjER828(三菱ケミカル株式会社の製品名)の135質量部、酸化チタンのタイペークCR-95(石原産業株式会社の製品名)の15質量部、タルクを60質量部、沈降性硫酸バリウム60質量部とシンナー(キシレン/ノルマルブタノール=8/2質量比)を30質量部の順番に計量した。次いで、実施例1~4及び比較混合例1~4で得られた粉末状揺変性付与剤5.0質量部をそれぞれ添加し、ラボディスパー3000rpmで10分間分散した分散液を得た。その後、80℃の水浴中にてラボディスパー3000rpmで30分間分散した塗料サンプルを得た。なお、粉体粘性調整剤を添加していない塗料をブランクの塗料サンプルとした。
【0069】
(評価用塗料サンプル及びブランク塗料サンプルの粘度測定)
調整条件A及びBで得られた各塗料サンプル及びブランク塗料サンプルの80.0質量部にアミン樹脂のST12(三菱ケミカル株式会社の製品名)18.0質量部を加え、スパチュラで3分間手撹拌にて混合した。各塗液サンプルを25℃に揃えた後、B型粘度計で6rpm及び60rpmの粘度(mPa・s)を測定した。6rpmにおける粘度を、60rpmにおける粘度で除し、TI値(チクソトロピックインデックス:Thixotropic Index)を算出した。TI値は高いほど揺変性が優れていることを示す指標である。その結果を表3に示す。
【0070】
(評価用塗料サンプル及びブランク塗料サンプルの溶剤希釈後の粘度測定)
各塗料サンプル及びブランク塗料とアミン樹脂を混合した塗液サンプルに、更に希釈溶剤としてシンナー(キシレン/ノルマルブタノール=8/2質量比)を6.0質量部加えて、スパチュラで2分間手撹拌にて混合した。溶剤希釈した各塗液サンプルを25℃に揃えた後、B型粘度計で6rpm及び60rpmの粘度(mPa・s)を測定した。その結果を表3に示す。
【0071】
【0072】
(評価用塗料サンプル及びブランク塗料サンプルの溶剤希釈後の垂れ止め評価)
調整条件A及びBで得られた各塗料サンプル及びブランク塗料サンプルを、サグテスターを使用してガラス板に塗装し、直ちに垂直に塗板を立て、1日間室温で乾燥後、塗膜状態を目視で観察した。塗膜の垂れが発生する直前の膜厚を限界膜厚として評価した。その結果を表4に示す。
【0073】
【0074】
評価結果を表3及び表4から確認できる通り、本発明の粉体粘性調整剤はブランク塗料よりも優れた増粘効果(6rpmと60rpmの粘度値)と垂れ止め効果(TI値、垂れ止め限界膜厚)を示している。更に、比較例1~8よりも優れた増粘効果(6rpmと60rpmの粘度値)と垂れ止め効果(TI値、垂れ止め限界膜厚)を示している。
【0075】
(使用実施例II)
(ロジン樹脂を用いた試験)
撹拌器、温度計、分水器及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mLの反応容器に、ロジン樹脂を150質量部とヘキシジグリコールを150質量部計量した。低速で撹拌しながら200℃まで加熱した。次いで、実施例1~8及び比較例1~8で得られた粉末状揺変性付与剤9.0質量部をそれぞれ添加し溶解した。目視にて、粉末状揺変性付与剤が溶解したことを確認した後、直ちに30℃以下まで冷却し樹脂プレゲルを得た。
【0076】
(評価用樹脂プレゲル及びブランク樹脂プレゲルの粘度測定)
準備した評価用樹脂プレゲル及びブランク樹脂プレゲルを25℃に揃えた後、B型粘度計で6rpm及び60rpmの粘度(mPa・s)を測定した。6rpmにおける粘度を、60rpmにおける粘度で除し、TI値(チクソトロピックインデックス:Thixotropic Index)を算出した。その結果を表5に示す。
【0077】
(評価用樹脂プレゲル及びブランク樹脂プレゲルの垂れ止め評価)
準備した評価用樹脂プレゲル及びブランク樹脂プレゲルを、サグテスターを使用してガラス板に塗装し、直ちに塗板を垂直に立て1日間室温で乾燥後、塗膜状態を目視で観察した。塗膜の垂れが発生する直前の膜厚を限界膜厚として評価した。その結果を表5に示す。
【0078】
【0079】
評価結果を表5から確認できる通り、本発明の粉体粘性調整剤はブランク塗料よりも優れた増粘効果(6rpmと60rpmの粘度値)と垂れ止め効果(TI値)を示している。また、比較例1~8よりも優れた増粘効果と垂れ止め効果を示している。この結果から明らかなように、本発明は高温下での製造作業を必要とするハンダ及び接着材塗料に適した粉体粘性調整剤と言える。
本発明の粘性調整剤は、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材又はシーリング材に添加して用いられ、増粘効果及び/又は垂れ止め効果を付与することができるものである。その製造方法は、簡便に粘性調整剤を大量に製造するのに用いられる。
前記ポリアミド成分が、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とそれのアミノ基に対して当量の前記多塩基酸類である脂肪族ジカルボン酸類との前記ポリアミド化合物と、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類とそれのアミノ基に対して当量の前記多塩基酸類である脂肪族ジカルボン酸類及び前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類との別な前記ポリアミド化合物との少なくとも何れかを、含有していることを特徴とする請求項1に記載の粘性調整剤。
前記ポリアミド成分が、前記無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類をモル比で合計aモル(0≦a≦2)と、前記脂肪族及び/又は芳香族プライマリージアミン類をモル比で合計bモル(2≦b≦6)と、前記多塩基酸類をモル比で合計cモル(0≦c≦5)とから構成されるポリアミド(但し、a+c>0)のうちの少なくとも何れかの前記ポリアミド化合物を含有していることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の粘性調整剤。
塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかの用途に添加剤として用いられるものであることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載の粘性調整剤。
50℃~200℃の高温条件で製造及び/又は使用される塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかの用途に添加剤として用いられるものであって、増粘性及び/又は垂れ止め性の付与剤として用いられるものであることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の粘性調整剤。
請求項1~12の何れかに記載の粘性調整剤と、被膜形成成分とを含有しており、塗料、コーティング材、塗工材、フラックス、粘着材及びシーリング材から選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする被膜形成剤。
前記の目的を達成するためになされた本発明の粘性調整剤の製造方法は、炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類と、炭素数12~36で直鎖状の多塩基酸類及び炭素数12~30で直鎖状かつ飽和の無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とをポリアミド化合物へと脱水させる反応により、前記ポリアミド化合物を含有するもので融点が120℃~250℃で軟化点が180℃~194℃のポリアミド成分を調製する工程、前記ポリアミド成分を粉砕することにより、前記ポリアミド成分を含んでいる粘性調整剤を調製する工程を有するというものである。