(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080503
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】装着可能な多機能生体情報検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20220523BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20220523BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20220523BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20220523BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20220523BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20220523BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
A61B5/00 A
A61B5/02 G
A61B5/02 310A
A61B5/022 400F
A61B5/02 310V
A61B5/04 310H
A61B5/107 300
A61B5/08
A61B5/16 130
A61B5/16 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191620
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】514298575
【氏名又は名称】飛岡 健
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】飛岡 健
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C117
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C017AA12
4C017AA14
4C017AA16
4C017AA19
4C017AC26
4C017BC11
4C017CC08
4C017FF05
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4C038PP05
4C038PS00
4C038SS08
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4C038VC20
4C117XA05
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4C117XJ48
4C127AA02
4C127BB03
4C127CC06
4C127GG05
4C127GG11
4C127KK03
4C127KK05
(57)【要約】
【課題】体温、姿勢、心電信号、酸素飽和度の他に心拍数、血圧、血管年齢等の検出や、睡眠解析、メタボ解析、ストレス解析等を行うことが可能で、人の胸部に容易に装着可能で超小型の多機能生体情報検出装置を提供する。
【解決手段】表示部を備えた装置本体が被験者に装着可能な構造であり、装置本体が、気温及び表皮温度を計測する温度センサと、心電計と、気圧及び気圧変化を検出する気圧検出部と、2つの異なった波長域の発受光部と、加速度センサ、ジャイロ及び方位計で成る9軸センサとを具備し、温度センサからの温度データ、心電計からの心電データ、気圧検出部からの気圧データ、発受光部からの容積脈波、加速度センサからの加速度データ、ジャイロからの回転角速度データ及び方位計からの方位データを演算処理し、被験者に関する生体情報を表示部に表示して出力する演算処理部が設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を備えた装置本体が被験者に装着可能な構造であり、
前記装置本体が、気温及び表皮温度を計測する温度センサと、心電計と、気圧及び気圧変化を検出する気圧検出部と、2つの異なった波長域の発受光部と、加速度センサ、ジャイロ及び方位計で成る9軸センサとを具備し、
前記温度センサからの温度データ、前記心電計からの心電データ、前記気圧検出部からの気圧データ、前記発受光部からの容積脈波、前記加速度センサからの加速度データ、前記ジャイロからの回転角速度データ及び前記方位計からの方位データを演算処理し、前記被験者に関する生体情報を前記表示部に表示して出力する演算処理部が設けられていることを特徴とする装着可能な多機能生体情報検出装置。
【請求項2】
前記演算処理部が前記装置本体の外部に設けられており、前記温度データ、前記心電データ、前記気圧データ、前記容積脈波、前記加速度データ、前記回転角速度データ及び前記方位データをデータ処理して後に、前記演算処理部に有線若しくは無線で送信するようになっている請求項1に記載の装着可能な多機能生体情報検出装置。
【請求項3】
前記演算処理部が前記装置本体の内部に設けられている請求項1に記載の装着可能な多機能生体情報検出装置。
【請求項4】
前記演算処理部が睡眠解析部を備えていると共に、メタボリック症候群の解析、ストレスの解析を行い得るようになっている請求項2又は3に記載の装着可能な多機能生体情報検出装置。
【請求項5】
前記演算処理部の外部に睡眠解析部、ストレス解析部、メタボ解析部が設けられている請求項2又は3に記載の装着可能な多機能生体情報検出装置。
【請求項6】
前記表示部は、モードスイッチの切り換えによって複数の計測データ、判定結果などを表示できるようになっている請求項1乃至5のいずれかに記載の装着可能な多機能生体情報検出装置。
【請求項7】
前記演算処理部が、
前記温度データに基づいてセンサ類が所定動作しているかをチェックする動作チェック部と、
前記温度データに基づいて前記被験者の行動パターンを把握する行動把握部と、
前記温度データ及び前記気圧データに基づいて高度を演算する高度演算部と、
前記心電データのピーク間隔に基づいてCVRRを検出するCVRR検出部と、
前記ピーク間隔に基づいて心拍数を検出する心拍数検出部と、
前記容積脈波及び前記心電データに基づいてパルストランジットタイムを演算するパルストランジットタイム演算部と、
前記パルストランジットタイムに基づいて血圧を演算する血圧演算部と、
前記容積脈波から求められた加速度脈波に基づいて血管年齢を推定する血管年齢推定部と、
波長領域が異なる2つの容積脈波から酸素飽和度を演算する酸素飽和度演算部と、
前記加速度データに基づいて呼吸数を検出する呼吸数検出部と、
前記加速度データ、前記加速度データを積分した速度データ、前記速度データを積分した位置データ、前記回転加速度データ、前記方位データに基づいて前記被験者の姿勢、運動方向を検知する姿勢検知部と、
で構成されている請求項1乃至6のいずれかに記載の装着可能な多機能生体情報検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超小型化されたマイクロセンサ類を高密度化、超小型化した軽薄短小なセンサ類の集合体であり、人(被験者)の健康状態、運動状態等を示す多くの生体情報を簡潔に検出することができると共に、併せて睡眠解析、メタボリック症候群解析、ストレス解析などもでき、人の胸部に容易に装着することが可能で超小型の多機能生体情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の健康状態や身体の異常を把握するために、体温や脈拍等の生体情報が利用されている。被検者の生体情報の検出は、通常、被検者自身や看護師等の第三者が、体温計等のセンサ(生体情報センサ)を被検者の身体に一定時間接触させて行っている。この生体情報センサを身体に接触させる時間は通常数分程度であるため、一時的な生体情報しか検出できず、頻出しない現象は検出されなくて、被検者の健康状態や身体の異常を十分に把握できないことがある。例えば、不整脈や心拍異常等は常に現れるとは限らないので、生体情報センサの短時間の接触では把握できない可能性がある。この場合、生体情報センサが長時間に亘り生体情報を検出できれば、この可能性を小さくすることができる。
【0003】
また、予防医療やスポーツ医学等において、正確な判断をするためには、長時間に亘る生体情報の収集が非常に有効であり、それを実現可能とする生体情報センサが求められている。
【0004】
そこで、長時間での生体情報の検出を可能とするために、被検者に小型軽量の生体情報センサを装着し、そのセンサが検出したデータを無線で送信する方法が提案されている。
【0005】
例えば、特開平10-155749号公報(特許文献1)では、人体に装着可能なライフセンサで人体の脈拍、動き、音、体温等の生体情報を測定し、測定した情報を構内に設置されたライフコントローラに送信している。ライフコントローラは、ライフセンサから受信した情報に基づき、介護者に通報する。また、必要に応じて、記憶手段に蓄えた被検者の過去の生体情報を通報することも可能となっている。
【0006】
また、特開2001-353130号公報(特許文献2)では、身体情報を取得するセンサが、耳掛け式や外耳道への挿入が可能な形態或いはペンダント状に形成された収納ケースに配設されている。そして、センサが検出したデータを無線で送信している。
【0007】
特許文献1及び特許文献2では、生体情報センサを被検者の身体に接触する箇所は1箇所だが、特許第3843118号公報(特許文献3)及び特許第4589341号公報(特許文献4)では、生体情報センサを複数の箇所に接触させることにより、より多くの身体の異常を発見できるようにしている。
【0008】
特許文献3では、身体の右半身と左半身に生体情報センサを装着させ、生体情報センサから無線通信される生体情報を基に身体の異常判定を行っている。また、生体情報センサに実装される集積回路はメモリを含んでおり、このメモリに生体情報センサが検出したデータ等を記憶することができる。
【0009】
特許文献4では、身体の上半身と下半身、上肢と下肢、腹面と背面或いは体の相対的に上方と下方或いは体の一部の前面と後面の少なくとも1組の複数箇所に生体情報センサを装着させ、生体情報センサから無線通信される生体情報を基に身体の異常判定を行っている。また、複数の生体情報センサのうち少なくとも1つはメモリを備え、検出した生体情報を蓄積することができる。
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2では、生体情報センサは小型軽量となり、生体情報の長時間の検出が可能となっているが、生体情報センサからのデータの出力は無線通信により行われているので、水中等の無線通信が困難な環境や、満員電車内等の無線通信を受信する機器の設置が困難な環境では、生体情報を取得できない虞がある。
【0011】
特許文献3及び4では、生体情報センサが検出した生体情報を、無線通信での外部への送信の他に、生体情報センサに装備したメモリに記憶させることができるので、上記のような環境でも、メモリに記憶させたデータから生体情報を取得することができる。しかし、この場合、メモリに記憶されたデータを取り出す作業が別途必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10-155749号公報
【特許文献2】特開2001-353130号公報
【特許文献3】特許第38431188号公報
【特許文献4】特許第4589341号公報
【特許文献5】特許第6429149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のような課題を解決した生体情報検出装置が特許第6429149号公報で提案されているが、生体情報は体温、姿勢、心電信号及び血液中の酸素飽和度の4つであり、健康管理、診断、体調計測などの生体情報として十分なものではない。従来のこうしたセンサ類は大きさが大きく、体への長時間の密着は、動きを伴うときなどは計測が難しかった。
【0014】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、過去にない軽薄短小のセンサであり、マイクロセンサ類を高密度化して超小型とし、体温、姿勢、心電信号、酸素飽和度の他に心拍数、血圧、血管年齢等の検出や、睡眠解析、メタボ(メタボリックシンドローム)解析、ストレス解析等を行うことが可能で、人(被験者)の胸部に容易に装着可能で超小型の多機能生体情報検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は装着可能な多機能生体情報検出装置に関し、本発明の上記目的は、表示部を備えた装置本体が被験者に装着可能な構造であり、前記装置本体が、気温及び表皮温度を計測する温度センサと、心電計と、気圧及び気圧変化を検出する気圧検出部と、2つの異なった波長域の発受光部と、加速度センサ、ジャイロ及び方位計で成る9軸センサとを具備し、前記温度センサからの温度データ、前記心電計からの心電データ、前記気圧検出部からの気圧データ、前記発受光部からの容積脈波、前記加速度センサからの加速度データ、前記ジャイロからの回転角速度データ及び前記方位計からの方位データを演算処理し、前記被験者に関する生体情報を前記表示部に表示して出力する演算処理部が設けられていることにより達成される。
【0016】
何よりも多くのセンサ類を1つの基板にコンパクトに搭載する基板搭載技術が開発され、軽薄短小になっている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多機能生体情報検出装置によれば、被験者の胸部に容易に安定的に装着できると共に、軽薄短小なセンサ類により高密度化して超小型であり、健康や運動等に対する多数の生体情報を検出することができる。また、併せて睡眠解析、メタボリック症候群(メタボ)解析、ストレス解析なども容易に行い得る特長を有している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の多機能生体情報検出装置本体の外観例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の多機能生体情報検出装置本体の底面図である。
【
図3】電極片の構造例を示す側面図及び平面図である。
【
図6】多機能生体情報検出装置本体の装着及び座標(xyz)例を説明するための模式図である。
【
図7】本発明の多機能生体情報検出装置本体の構成例を示すブロック図である。
【
図8】多機能生体情報検出装置本体とパソコン(PC)との接続関係を示す図である。
【
図9】本発明の多機能生体情報検出装置本体の他の構成例を示すブロック図である。
【
図11】気圧検出部の構成例を示すブロック図である。
【
図12】発受光部の構成例を示すブロック図である。
【
図13】9軸センサの構成例を示すブロック図である。
【
図14】制御演算部の構成例を示すブロック図である。
【
図16】心電データ波形の正常例と異常例を示す波形図である。
【
図17】容積脈波、速度脈波、加速度脈波の波形例を示す波形図である。
【
図18】年齢に対応する加速度脈波の波形例を示す波形図である。
【
図19】赤外光と可視光のヘモグロビンに対する吸収率の相違例を示す特性図である。
【
図20】パルストランジットタイムの演算の様子を示す波形図である。
【
図21】呼吸検出部の構成例を示すブロック図である。
【
図22】睡眠解析部の構成例を示すブロック図である。
【
図23】METsと運動加速度の関係を示す特性図である。
【
図24】睡眠解析を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、超小型化されたマイクロセンサ類を高密度化、超小型化した軽薄短小なセンサ類の集合体であり、体温、姿勢、心電信号、酸素飽和度の他に心拍数、血圧、血管年齢等の検出や、睡眠解析、メタボリック症候群(通称メタボ)解析、ストレス解析などを行うことが可能で、人の胸部に容易に装着できる超小型の多機能生体情報検出装置である。
【0020】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る装着可能で超小型な多機能生体情報検出装置本体100の外観例を示しており、多機能生体情報検出装置本体100は平板状の矩形体であり、上面に、検出されたセンサのデータや報知情報、時間等を表示する表示部110と、電源をON/OFFするボタンスイッチ101と、表示部110での表示モードを変更して切り替えるためのモードスイッチ103A及び103Bと、内蔵バッテリの充電及び動作中を示す充電ランプ104と、電池容量が所定値以下となったときに点灯して報知する容量ランプ105とが設けられている。2つのモードスイッチ103A及び103Bが設けられているのは、ON/OFFの組み合わせによって多くの計測モードを表示するためである。また、上面の端部に凹部が設けられていると共に、被検査体となる人の指を凹部にかざして、血管年齢や酸素飽和度を計測するための発受光部150が設けられている。側面には、内蔵バッテリ106を充電したり、検知されたデータや情報をリード線などで送信するためのUSB端子102が設けられている。
【0022】
図2は多機能生体情報検出装置本体100の底面を示しており、気温と被験者の表皮温度を検出する温度センサ107が設けられていると共に、2つの円形の導電材108A及び108Bが本体底面の両側に埋設されており、導電材108A及び108Bの中央部には、後述する電極片200A及び200Bを着脱するための、窪みである凹部109A及び109Bが設けられている。
【0023】
また、電極片200A及び200Bは同一構成であり、電極片200Aの構成例を
図3に示す。
図3(A)は側面図であり、
図3(B)は平面図である。電極片200Aは可撓性ある長形状の合成樹脂等で成っており、一表面の一端部には、導電材108Aと接触して係合する円盤状で導電性の係合部材201Aが設けられており、係合部材201Aの上面には導電材108Aの凹部109Aに嵌合する円柱状の凸部202Aが設けられている。凹部109Aと凸部202Aとは、容易に着脱可能である。電極片200Aの他の表面の他端部には、被験者の皮膚に接触ないしは皮膚を押圧する円盤状の電極材203Aが設けられており、係合部材201Aと電極材203Aとが導電性のリード線204Aで電気的に接続されており、電極材203Aで測定された電位は、リード線204A→係合部材201A(凸部202A)→導電材108A(凹部109A)を経て多機能生体情報検出装置本体100内のデータ処理部170に入力され、その後、後述するCPU(Central Processing Unit)等で成る演算処理部300に入力される。
【0024】
電極片200Bについても同様であり、電極材203A及び203Bの周辺は公知の吸盤構造などであり、被験者の皮膚(胸部)に容易に装着可能となっている。また、電極片200A及び200Bの形状も種々変更可能であり、矩形状である必要はない。
【0025】
このような構成の2つの電極片200A及び200Bを、導電材108A及び108Bの各凹部109A及び109Bと、係合部材201A及び201Bの各凸部202A及び202Bとをそれぞれ嵌合することにより、多機能生体情報検出装置本体100に装着することができ、電極片200A及び200Bの装着状態では
図4の底面図及び
図5の斜視図のような構造になる。
【0026】
この状態で、電極片200A及び200Bの両端部の吸盤部を被験者の胸部に当て、多機能生体情報検出装置本体100を
図6に示すように被験者の胸部に装着する。その際、図では立位状態において、上下方向がy軸、左右方向がx軸、前後方向がz軸となっているが、任意な方向にxyz軸を設定可能である。
【0027】
図4に示されるように、生体情報検出装置本体100の底面は、心電計130を形成する2個の電極材203A及び203Bが配設された構造となり、電極片200A及び200Bを介して多機能生体情報検出装置本体100を胸部に装着した際、電極材203A及び203Bが胸部の皮膚に接触若しくは押圧状態となるようになっている。吸盤部を被験者の胸部に当てるだけで、若しくは軽く押す(押圧)だけで装着できるので、子供や乳幼児等に対しても容易である。
【0028】
なお、電極材203A及び203Bは心電計の電極であり、本例では被験者の2か所の電位を測定するようになっているので、その間隔dは80[mm]以上となっていることが望ましい。また、装着部材も吸盤構造に限られるものではなく、公知の他の手段を用いることができる。更に、導電材108A及び108Bの凹部109A及び109Bと、電極片200A及び200Bの凸部202A及び202Bとの凹凸関係は、それぞれ逆であっても良い。
【0029】
図7は多機能生体情報検出装置本体100の内部構成例を示しており、多機能生体情報検出装置本体100は生体情報検出のために、以下のような軽薄短小な多機能センサ類を有し、多機能センサ類からのデータや情報のノイズ処理やタイミング等を処理するデータ処理部170を有している。データ処理部170で処理されたデータや情報は直接USB端子102を経て、若しくはメモリ180に格納された後、USB端子102を経て演算処理部300に送信されて演算処理され、演算処理された健康や運動等に関する生体情報が出力部300Aを経て出力される。
【0030】
演算処理部300及び出力部300Aはパソコン(PC)400で構成することでき、
図8は多機能生体情報検出装置本体100とパソコン400との接続関係を示している。本例では、多機能生体情報検出装置本体100とパソコン400とは有線のリード線402で接続され、リード線402に付けられているUSB端子401を多機能生体情報検出装置本体100のUSB端子102に挿入して接続する。
【0031】
なお、多機能生体情報検出装置本体100が演算処理部300を備えることも可能であり、この場合の構成例は
図9である。即ち、データ処理部170で、ノイズ処理等の処理をされたデータや情報は内蔵の演算処理部300に入力され、演算処理部300で演算処理されたデータや情報はメモリ180に格納されると共に、送信部102Aを経て外部に有線若しくは無線で出力される。
【0032】
演算処理装置300が多機能生体情報検出装置本体100の外部にある場合、多機能生体情報検出装置本体100が演算処理装置300を内蔵する場合のいずれにおいても、多機能生体情報検出装置本体100は、多機能センサ類として、気温、被験者の皮膚(表皮)温度を検出して温度データThを出力する温度センサ107と、被験者の皮膚と接触する2個の電極材203A及び203Bに基づいて心電データECを出力する心電計130と、気圧(PR)及びその変化率(PRR)を検出する気圧検出部140と、被験者の指(血管)に対する発光と受光を異なる波長(例えば赤外光と可視光)で行い、受光量(吸収率)に相当する容積脈波(photoplethysmogram)RCA及びRCBを出力する発受光部150と、被験者の行動や運動等に伴う動き(運動)の加速度(αx、αy、αz)、回転角速度(θrx、θry、θrz)及び地磁気を検出して絶対方向の方位(DRx、DRy、DRz)を測定する9軸センサ160とを備えている。上記いずれのセンサも超小型であり、高密度化が可能である。
【0033】
温度センサ106は気温を測定すると共に、被検者の皮膚温度(表皮温度)を測定し、測定された温度データThはデータ処理部170に入力される。
【0034】
心電計130は
図10に示すような構成であり、2個の電極材203A及び203Bにより電位を測定し、電位差から演算された被験者の心電データECをデータ処理部170に入力する。また、心電計130は、
図10に示すように電極材203Aの電位e1及び電極材203Bの電位e2の差を下記数1により求めて、心電データECを出力する電位差算出部131で成っており、算出された心電データECはデータ処理部170に入力入される。
(数1)
EC=e1-e2
なお、精度を上げるために電極数が3個の場合(3個目の電極電位をe3とする)には、電位差算出部131は、下記数2又は数3に従って電位差を算出し、電位差に基づいて演算された心電データECを出力する。この場合には、電極片を3枚とする。
(数2)
EC={(e1-e2)+(e1-e3)}/2
(数3)
EC=e1-(e2+e3)/2
気圧検出部140の構成例は
図11であり、現在位置の気圧を計測する気圧計141と、気圧の変化率を演算する変化率演算部142とで構成されている。気圧計141は気圧PRを検出して出力し、変化率演算部142は気圧PRに基づいて気圧変化率PRRを演算して出力する。気圧PRは高度の計測にも利用され、気圧変化率PRRは運動時の坂道などの状況把握などに利用される。
【0035】
発受光部150の構成例は
図12であり、バッテリ106に1対の発受光素子151A及び151Bが接続され、発受光素子151A及び151Bは同一の素子構成であるが、使用する波長領域が相違している。即ち、発受光素子151Aは赤外光の領域であり、発受光素子151Bは可視光の領域である。構成としては、発受光素子151A及び151Bはそれぞれ、LED等の発光素子LED1A及びLED1Bと、フォトダイオード等の受光素子PD1A及びPD1Bとで構成され、受光素子PD1A及びPD1Bにはそれぞれ電流センサ152A及び152Bが接続されている。発光素子LED1Aは赤外光領域の光を発光して指等の被検査体を照射し、発光素子LED1Bは可視光領域の光を発光して指等の被検査体を照射する(例えば1分間)。
【0036】
このような構成において、発受光素子151A及び151Bから発光された赤外光及び可視光はそれぞれ被検査体となる指に照射され、血中のヘモグロビン量(酸化ヘモグロビン(HbO2)、還元ヘモグロビン(Hb)に応じて、指からの反射光が受光素子PD1A及びPD1Bに入射されて電気信号に変換され、それぞれ反射光量に応じた電流が出力される。酸化ヘモグロビンは赤外線付近の光を良く吸収し、還元ヘモグロビンは赤色光付近の光を良く吸収する。電流は電流センサ152A及び152Bで検出され、検出電流である容積脈波RCA及びRCBがデータ処理部170に入力される。吸収率に応じた光量信号である容積脈波RCA及びRCBは、血管年齢、酸素飽和度等の演算に供される。
【0037】
ここでは、吸収率に応じた反射光量を電流で求めているが、電流が流れる箇所に抵抗を介挿し、抵抗両端の電圧値で反射光量(容積脈波)を計測するようにしても良い。
【0038】
9軸センサ160は
図13に示す構成であり、xyz軸方向の加速度を検出して加速度データαx、αy、αzを出力する加速度センサ161と、xyz軸方向の回転角速度を検出して回転角速度データθrx、θry、θrzを出力するジャイロ162と、地磁気を検出して絶対方向を検出して方位データDRx、DRy、DRzを出力する方位計(電子コンパス)163とで構成されている。加速度センサ161は人の動きの大きさを検出し、ジャイロ162は回転動作を検出し、方位計163は動きの方向(絶対方向)を検出する。加速度センサ161及びジャイロ162で姿勢等の推定は可能であるが、オイラー角で言うヨー方向の誤差を補正できない。姿勢等を推定する指標になる重力加速度がz軸=ヨー軸を貫いているため、方位計163を加えることで、ヨー方向の誤差も補正できる。
【0039】
次に、多機能生体情報検出装置本体100が内蔵する演算処理部300、若しくはPC(パソコン)等の外部機器が有する演算処理部300の構成例を、
図14に示して説明する。
【0040】
温度センサ106からの温度データThは直接外部に出力されると共に、動作チェック部310及び行動把握部302に入力される。動作チェック部301は、センサ類が所定動作しているか否かをチェックして作動信号ACcを出力し、行動把握部302は、シャワーや運動といった被験者の行動パターンを把握して行動信号DAcを出力する。
【0041】
気圧検出部140からの気圧データである気圧PRは直接外部に出力されると共に、高度演算部303に入力される。高度演算部303には温度データThも入力されており、例えば下記数4に従って高度hが演算される。なお、数4のP0は海面気圧であり、P0=1013.25[hPa]として良い。
【0042】
【数4】
心電計130からの心電データECはピーク検出部320に入力され、ピーク検出部320において心電データECのピークRが検出され、検出されたピークRを示すピーク信号PSはピーク間隔検出部321に入力される。ピーク間隔検出部321はピーク信号PSに基づいて各データのピーク間隔RRIを検出し、ピーク間隔RRIを示すピーク間隔信号IPSは、心拍数検出部323及びCVRR(Coefficient of Variation of RR Interval)検出部322に入力される。ピーク間隔信号IPSは心電データECに基づいており、心臓の脈動が心拍数と関連しているので、容易に心拍数HNを検出することができる。
【0043】
図15は心電データECの波形例を示しており、ピーク検出部320は心電データECのピークR1,R2,・・・Rnを検出し、ピークR1,R2,・・・Rnを示すピーク信号PSはピーク間隔検出部321に入力される。ピーク間隔検出部321ではピークRの間隔、つまりピークR1とピークR2のピーク間隔RRI1、ピークR2とピークR3のピーク間隔RRI2、ピークR3とピークR4のピーク間隔RRI3、・・・が順次検出され、これらピーク間隔RRIを示すピーク間隔信号IPSが心拍数検出部323及びCVRR検出部322に入力される。心電データECのピーク信号PS及びピーク間隔信号IPSに基づいてピーク間隔の変化率RRIVを求め、変化率RRIVからCVRR(Coefficient of Variation of RR Interval)と称される自律神経の活動を正規化した係数CVRRを演算する。係数CVRRの演算方法は公知であるが、ピーク間隔RRIの分散値をσとし、ピーク間隔RRIの平均値をMとすると、下記数5で表わされる。係数CVRRは、自律神経の活動の判定に利用される。更に、交感神経と協働して、自律神経のストレス度を計測(ストレス解析)することができる。
【0044】
【数5】
係数CVRRとストレス状況の関係は表1であり、係数CVRRが7%以上ではストレスは感じられず、健康的に極めて良好であり、5%~7%未満においても正常(良好)と判断される。また、4%~5%未満は健康的にグレーゾーンであり、混合領域となる。しかし、係数CVRRが2%~4%未満になると、何らかのストレス症状が現われ、更に2%未満では健康的に最悪の状況と判断される。このようなストレスの解析は、ストレス解析部(図示せず)において行う。
【0045】
【表1】
発受光部150の電流計152A及び152Bからの容積脈波RCA及びRCBは、いずれも
図17(A)に示すような変曲点を有する波形であり、容積脈波RCA及びRCBは酸素飽和度演算部360に入力され、容積脈波RCAは微分部330A及びパルストランジットタイム演算部324に入力される。容積脈波RCAは微分部330に入力されて微分され(1回目微分)、
図17(B)に示すような速度脈波RPWとなる。速度脈波RPWは更に微分部331に入力されて微分され(2回目微分)、
図17(C)に示すような加速度脈波(second derivative of photoplethysmogram)APWとなる。加速度脈波は容積脈波の変曲点をより明瞭にする波形であり、加速度脈波は年代(年齢)によって変化することが知られている。
図18は年代別の波形例を示しており、加齢に伴ってa波に対してb波が浅くなり、d波が深くなるといった変化が現れる。
【0046】
加速度脈波APWは血管年齢推定部350に入力される。先ず、
図17(C)に示す加速度脈波の波高値a,b,c,d,eに基づいて、下記数6に従って指数SDPTGAIを演算する。
(数6)
SDPTGAI=(b-c-d-e)/a
上記数6で求められた指数SDPTGAIを用いて、下記数7によって男女別の血管年齢を推定する。
(数7)
男性「血管推定年齢」=43.47×SDPTGAI+65.86
女性「血管推定年齢」=41.67×SDPTGAI+61.75
上記数7より、実際の年齢より10歳以上血管推定年齢が高く出ると要注意であり、20歳以上血管推定年齢が高く出ると動脈硬化性疾患である高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、脳血管疾患を積極的に疑う必要がある。
【0047】
なお、上述では容積脈波RCAを用いて血管年齢を推定しているが、容積脈波RCBを2回微分した加速度脈波に基づいて血管年齢を推定するようにしても良い。
【0048】
血管年齢推定値に併せて、以下に説明するような血管老化偏差値を求めても良い。この場合も、容積脈波RCA又はRCBのいずれかを用いることが可能であり、加速度脈波から先ず下記数8に基づいて、波形指数wiを算出する。
(数8)
wi=d/a - b/a
そして、統計的に波形指数wiの年齢階層平均値wiaと、年齢階層標準偏差wirとを求めておき、下記数9に従って血管老化偏差値を演算する。
(数9)
血管老化偏差値=|wia|-|wi/wir|×10+50
血管老化偏差値が60以上の場合には、高血圧があったり、眼底動脈硬化が発現している場合が多く、血管老化偏差値が40以上、60未満であれば年齢相応、標準的な波形となる。加速度脈波が老化波形を示して血管老化偏差値が高い場合には、血管老化が進展していると考えられ、例えば血圧、喫煙、高中性脂肪、肥満などに原因があるか否かを検討する。また、原因がはっきり認められない場合でも、生活習慣の中に原因が存在するのかどうか、検討する機会を与えることが可能である。
【0049】
一方、酸素飽和度(SpO2)は、酸素と結合したヘモグロビンの濃度を(HbO2)とし、酸素と結合していないヘモグロビンの濃度を(Hb)とすると、下記数10で表される。
(数10)
(SpO2)=100×HbO2)/(Hb+HbO2)
即ち、実際にヘモグロビンと結合していた酸素量を、ヘモグロビンと結合し得る最大の酸素量で割った値を百分率にするために、”100”を乗算した値である。このことから明らかなように、酸素飽和度が”100”を超えることはあり得ない。人において酸素分圧100(mmHg)でのSpO2は約98%弱、酸素分圧80(mmHg)でのSpO2は約95 %、酸素分圧60(mmHg)でのSpO2は約90%弱、酸素分圧40(mmHg)でのSpO2は約75%、酸素分圧30(mmHg)でのSpO2は約60%、酸素分圧20(mmHg)でのSpO2は約30%であることが知られている。つまり、酸素分圧と酸素飽和度との関係は、非線形であることが判る。また、酸素分圧と酸素飽和度の関係は、血液のpHや温度(体温)の影響を受けるために必ずしも上記のようになるとは限らない。
【0050】
発受光部150からの容積脈波RCA及びRCBは酸素飽和度演算部360に入力され、酸素飽和度ST(SpO
2)が演算される。
図19に示されるように、赤外光と赤色光(可視光)の吸収率は、指の血管中のヘモグロビン(酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン)に対して吸収率が相違するので、指の同一場所に発受光素子151A及び151Bで波長の相違する光を照射することにより、その吸収率の差に基づいて、酸素飽和度演算部360は酸素飽和度STを演算する。
【0051】
また、容積脈波RCAは、心電データECと共にパルストランジットタイム演算部324に入力され、
図20に示されるように、容積脈波RCAのピークRCAPと心電データECのピークECPとの時間差によりパルストランジットタイムPTTを演算する。パルストランジットタイムPTTは血圧演算部340に入力され、血圧演算部340で下記数11に従って、血圧BP(収縮期血圧、拡張期血圧)が演算される。なお、ここでは、容積脈波RCA及び心電データECに基づいてパルストランジットタイムPTTを演算しているが、容積脈波RCB及び心電データECに基づいてパルストランジットタイムPTTを演算するようにしても良い。
(数11)
収縮期血圧(最高血圧)=α
1・PTT+β
1
拡張期血圧(最低血圧)=α
2・PTT+β
2
ここで、α
1、α
2、β
1、β
2は定数である。
加速度センサ61からの加速度データα
x、α
y、α
zは呼吸検出部310、姿勢検知部370及び積分部304に入力される。加速度データα
x、α
y、α
zは、積分部304に入力されて積分されることにより速度データSPx、SPy、SPzとなり、速度データSPx、SPy、SPzは姿勢検知部370に入力されると共に、積分部305に入力される。速度データSPx、SPy、SPzは、積分部305に入力されて積分されることにより位置データPSx、PSy、PSzとなり、位置データPSx、PSy、PSzは姿勢検知部370に入力される。姿勢検知部370には、回転角速度θrx、θry、θrzも入力されている。
【0052】
姿勢検知部370は、加速度データαx、αy、αz、速度データSPx、SPy、SPz、位置データPSx、PSy、PSz及び回転角速度θrx、θry、θrzに基づいて被験者の姿勢を示す姿勢信号PTSを出力する。また、方位データDRx、DRy、DRzは方位演算部380に入力され、3次元の方位信号DRSを出力する。姿勢信号PTS及び方位信号DRSにより、被験者の運動や行動等の姿勢、方向を知ることができる。
【0053】
加速度データα
x、α
y、α
zは呼吸検出部310に入力され、呼吸数BRが検出される。呼吸検出部310の構成例を
図21に示して説明する。加速度センサ161から加速度データα
x、α
y、α
zが選択部311に入力され、大きい方の2つの加速度データα
y、α
z、α
xが選択されて高速サンプリング部312に入力される。高速サンプリング部312では、0.01[G]以下の微小体動加速度データα
sを取得するために、一般的な呼吸周波数よりも高い高速サンプリングを行い、高速サンプリングされた加速度データα
y1、α
z1、α
x1をBPF(バンドパスフィルタ)313に入力する。BPF313は、通常人の1分間の呼吸数10~40回に対応する周波数0.17~0.67[Hz]の周波数バンド幅を通過させ、BPF313でバンドパス濾過処理された加速度データα
y2、α
z2、α
x2をLPF314に入力する。LPF314は重力の大きさが0.01[G]以下を通過させ、ローパス濾過処理された加速度データα
y3、α
z3、α
x3を高速フーリエ変換部(FTT)315に入力する。FTT315はノイズ成分を除去して周波数信号α
ys、α
zs、α
xsを出力し、周波数信号α
ys、α
zs、α
zsは比較部316に入力される。比較部316で大きい方の周波数信号が自動選択され、呼吸演算部317に入力される。呼吸演算部317で周波数信号から演算された呼吸数BRが出力される。
【0054】
なお、上述ではフーリエ変換等を用いて呼吸数BRを演算しているが、本例のように3次元の加速度センサ161を搭載している場合には、呼吸に関連して加速度が発生するので、加速度データαx、αy、αzに基づいて下記数12又は数13に従って呼吸数BRsを演算することも可能である。
【0055】
【数12】
(数13)
BRs=|α
x|+|α
y|+|α
z|
上述した演算処理部300で得られた各データや情報は、表示部110に表示されても良く、媒体を通じて或いは通信手段を介して被験者に報知する。更に、以下に述べる睡眠解析を付加しても良い。この場合、睡眠解析部500は演算処理部300が内蔵しても良く、外部に設置するようにしても良い。
【0056】
睡眠解析部500の構成例は
図22であり、温度データThの変化(上昇、低下)を検出して検出結果DT1を出力する温度変化検出部501と、心拍数HNの変化(上昇、低下)を検出して検出結果DT2を出力する心拍数変化検出部502と、呼吸数BRの変化(上昇、低下)を検出して検出結果DT3を出力する呼吸数変化検出部503と、交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSを入力し、両者の相関関係に基づいて睡眠度を判定して判定結果DT4を出力する睡眠度判定部504と、交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSの交叉の変化(上昇、低下)を判定して判定結果DT5を出力する交叉判定部505と、姿勢信号PTSに基づいて被験者の姿勢(立位、仰臥位、側臥位など)を判定して判定結果DT6を出力する姿勢判定部510と、消費エネルギーENの変化(上昇、低下)を検出して検出結果DT7を出力する消費エネルギー変化検出部511と、検出結果DT1~DT3及びDT7、判定結果DT4~DT6を入力して睡眠解析情報SYAを出力する睡眠判定部520とで構成されている。
【0057】
なお、消費エネルギーENは加速度データに基づいて検出される。運動強度(運動の強さ)は、体重1kg当たりに身体に取り込まれる酸素の量が指標とされるが、酸素の量は分かり難いため、単位METs(Metabolic Equivalent)が使用される。単位METsは、安静時の酸素摂取量3.5ml/Kg/分を“1”としたときに、その運動で何倍のエネルギーを消費できるかで運動強度を示す単位である。酸素消費量と消費エネルギーENの関係は下記数14となっている。
【0058】
【数14】
そして、運動加速度α
mと単位METsとの関係は
図23に示すようになっており、運動加速度α
mを検出することによって、相当するMETsを求めることができる。検出された運動加速度α
mから単位METsの値を求め、下記数15に従って消費エネルギーENが算出される。
(数15)
EN=METs×時間(H)×体重(Kg)×1.05
ここで、消費エネルギーENを活動時の運動エネルギーとすると、数15から単位METsは、下記数16によって求められる。
(数16)
METs=運動エネルギー/(運動時間×体重×1.05)
上記数16において、1Kg毎にすると、1時間当たりの単位METsは下記数17となる。よって、運動エネルギーはメタボリック症候群(メタボ)の指標となっており、単位METsを求めることにより、メタボの解析を行うことができる。このようなメタボの解析は、メタボ解析部(図示せず)において行う。
(数17)
METs=運動エネルギー/(1H×1Kg×1.05)≒運動エネルギー
図24(A)は被験者が睡眠のために入床した時点t1、睡眠に入った入眠の時点t2、睡眠から覚めた脱眠の時点t3、起床の時点t4を時間軸で示している。
【0059】
温度データThが温度変化検出部501に入力され、温度データThの変化(上昇、低下)が閾値に基づいて検出され、心拍数検出部323で検出された心拍数HNが心拍数変化検出部502に入力され、心拍数HNの変化(上昇、低下)が閾値に基づいて検出される。温度データThは
図24(C)に示されるように入眠時及び脱眠時に変化し、心拍数HNは、入床する前(時点t1以前)と入眠する前(時点t2以前)は、
図24(C)に示されるように一定の心拍数を維持しているが、入眠状態(時点t2以降)になると徐々に低下し、睡眠から覚めると(時点t3以降)徐々に上昇して一定の心拍数HNに戻る。従って、温度変化検出部501が温度データThの変化を検出し、心拍数変化検出部502が心拍数HNの変化を監視し、検出結果DT1及びDT2を睡眠判定部520に入力することによって、入眠と脱眠を2つ目の要因として検出することができる。
【0060】
呼吸数BRは呼吸数数変化検出部503に入力され、呼吸数BRの変化(上昇、低下)が閾値に基づいて検出される。呼吸数BRは、入床する前(時点t1以前)と入眠する前(時点t2以前)は、
図24(E)に示されるように一定の呼吸数を維持しているが、入眠状態(時点t2以降)になると徐々に低下し、睡眠から覚めると(時点t3以降)徐々に上昇して一定の呼吸数に戻る。従って、呼吸数変化検出部503が呼吸数BRの変化を監視し、検出結果DT3を睡眠判定部328に入力することによって、入眠と脱眠を3つ目の要因として検出することができる。
【0061】
交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSは睡眠度判定部504及び交叉判定部505に入力されており、睡眠度判定部504は交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSの相関関係に基づいて深睡眠であるか若しくは浅睡眠であるかを判定し、判定結果DT4を睡眠判定部520に入力する。また、
図24(G)に示すように、入眠前は交感神経指標SNSが高く、副交感神経指標PSNSが低くなっているが、入眠に入ると逆に交感神経指標PSNSが徐々に低くなり、副交感神経指標PSNSが徐々に高くなって交叉するので、この交叉を検出することにより入眠を検出することができる。同様に、脱眠すると交感神経指標SNSは徐々に高くなり、副交感神経指標PSNSは徐々に低くなって交叉するので、この交叉若しくは変化を検出することにより脱眠を検出することができる。従って、交叉判定部505が交感神経指標SNS及び副交感神経指標PSNSの交叉若しくは変化を監視し、判定結果DT5を睡眠判定部520に入力することによって、入眠と脱眠を4つ目の要因として検出することができる。
【0062】
図24(B)に示すように入床する前(時点t1以前)は立位状態であり、
図24(F)に示すように加速度データαは、重力に対しての加速度α
yが1[G]となっているが、入床すると姿勢が仰臥位になるので(時点t1以降)加速度α
yは“0”となる。そして、起床すると(時点t4以降)再び重力に対しての加速度α
yが1[G]となる。入床前(時点t1以前)は立位であるので重力に平行な加速度α
zは“0”となっているが、入床して仰臥位状態になると(時点t2以降)加速度α
zが重力方向に作用するので加速度α
zは1[G]となり、起床すると(時点t4以降)再び重力に対しての加速度α
zは“0”となる。このような被験者の姿勢は、姿勢検知部370及び姿勢判定部510によって判定され、睡眠解析の重要な要素となる。xyz軸の加速度α
x、α
y、α
zから被験者の姿勢を判定でき、側臥位も判定できるので、睡眠中の寝返り回数も検出可能である。
【0063】
消費エネルギーENは、消費エネルギー変化検出部511に入力され、消費エネルギーENの変化が閾値に基づいて検出される。消費エネルギーENは、入床する前(時点t1以前)と入眠する前(時点t2以前)は、
図24(F)に示されるように一定の大きさを維持しているが、入眠状態(時点t2以降)になると低下し、睡眠から覚めると(時点t3以降)上昇して一定の大きさに戻る。従って、消費エネルギー変化検出部511が消費エネルギーENの変化を監視し、検出結果DT7を睡眠判定部520に入力することによって、入眠と脱眠を5つ目の要因として検出することができる。睡眠判定部520は上記検出結果や判定結果に基づく睡眠解析情報SYAを出力する。
【符号の説明】
【0064】
100 生体情報検出装置本体
101 ボタンスイッチ
102 USB端子
102A 送信部
103A、103B モードスイッチ
104 充電ランプ
105 容量ランプ
106 バッテリ
107 温度センサ
108A、108B 導電材
109A、109B 凹部
110 表示部
130 心電計
131 電位差算出部
140 気圧検出部
141 気圧計
142 変化率演算部
150 発受光部
151A、151B 発受光素子
152A、152B 電流センサ
160 9軸センサ
161 加速度センサ
162 ジャイロ
163 方位計(電子コンパス)
170 データ処理部
180 メモリ
200A、200B 電極片
201A、201B 係合部材
202A、202B 凸部
203A、203B 電極材
204A、204B リード線
300 演算処理部
300A 出力部
301 動作チェック部
302 行動把握部
303 高度演算部
304、305 積分部
310 呼吸検出部
320 ピーク検出部
321 ピーク間隔検出部
322 CVRR検出部
323 心拍数検出部
324 パルストランジットタイム(PTT)演算部
331、332 微分部
340 血圧演算部
350 血管年齢推定部
360 酸素飽和度演算部
370 姿勢検知部
380 方位演算部
311 選択部
312 高速サンプリング部
313 BPF
314 LPF
315 高速フーリエ変換部(FFT)
316 比較部
317 呼吸演算部
400 パソコン
401 USB端子
402 リード線
500 睡眠解析部
501 温度変化検出部
502 心拍数変化検出部
503 呼吸数変化検出部
504 睡眠度判定部
505 交叉判定部
510 姿勢判定部
511 消費エネルギー変化検出部
520 睡眠判定部