(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080510
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】部品実装システム及び部品の実装状態判定方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20220523BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
H05K13/08 D
H05K13/04 B
H05K13/08 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191628
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】青山 英樹
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353AA02
5E353BB01
5E353BB02
5E353BB04
5E353CC01
5E353CC04
5E353CC13
5E353CC14
5E353EE25
5E353EE43
5E353EE63
5E353EE83
5E353GG01
5E353HH11
5E353HH51
5E353JJ21
5E353JJ42
5E353JJ48
5E353KK02
5E353KK03
5E353KK13
5E353KK21
5E353LL01
5E353MM04
5E353MM08
5E353QQ11
5E353QQ12
(57)【要約】
【課題】部品実装基板における部品の実装状態の判定精度向上に寄与する技術を提供する。
【解決手段】部品実装システム1は部品実装装置3と検査装置5とを含む。部品実装装置3は、ヘッド17の吸着部品を側方から撮像する第1部品認識カメラ32を備える。検査装置5は、実装部品の高さを検出するレーザ変位計44と、検出された部品の高さとその閾値Taとの比較に基づき部品の実装状態を判定する主制御部501とを含む。主制御部501は、第1部品認識カメラ32が取得した画像に基づき計測された部品の実際の厚みとその部品との対応関係を示す部品厚み情報リストJを取得し、判定対象となる実装部品(判定対象部品)の厚みに基づき前記閾値Taを設定し、当該閾値Taに基づき実装状態の判定を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装する機能と前記部品の厚みを検出可能な機能とを備える部品実装装置と、
前記部品実装装置において基板に実装された実装部品の基板表面から部品上面までの高さを検出し、その結果と閾値との比較に基づき実装部品の実装状態を判定する基板検査装置と、を含む部品実装システムであって、
前記部品実装装置において検出された部品の厚みとその部品との対応関係を示す部品厚み情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した前記部品厚み情報であって判定対象となる対象実装部品の厚み情報に基づき、当該対象実装部品の実装状態の判定に用いる前記閾値を設定する閾値設定部と、を含み、
前記基板検査装置は、前記閾値設定部が設定した対象実装部品の前記閾値に基づき、当該対象実装部品の実装状態を判定する、部品実装システム。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装システムにおいて、
前記閾値は、前記情報取得部が取得した部品の厚みに、各々既定値であるハンダ厚み及びマージンを加えた値である、部品実装システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の部品実装システムにおいて、
前記部品実装装置は、基板への部品の実装に先立ち当該部品の厚みを検出する、部品実装システム。
【請求項4】
請求項3に記載の部品実装システムにおいて、
前記部品実装装置は、部品を保持して基板上に搬送する部品保持部と、前記部品保持部に保持された部品を少なくとも側方を含む一乃至複数の方向から撮像可能な撮像部と、当該撮像部が撮像した画像に基づき部品の厚みを検出する厚み検出部と、を含む、部品実装システム。
【請求項5】
請求項4に記載の部品実装システムにおいて、
前記部品実装装置は、複数の前記部品保持部を備えた部品実装用のヘッドユニットを備え、
前記撮像部は、前記複数の部品保持部に対してそれらの配列方向に相対的に移動可能に設けられている、部品実装システム。
【請求項6】
請求項2に記載の部品実装システムにおいて、
前記部品は、パッケージの底面に複数の球状ハンダかなる端子部を備えたパッケージ部品であって、
前記部品の厚みは、前記パッケージの厚みであり、前記ハンダ厚みは、前記端子部が溶融して基板に接合された状態の既定の厚みである、ことを特徴とする部品実装システム。
【請求項7】
基板に部品を実装する機能と前記部品の厚みを検出可能な機能とを備える部品実装装置と、
前記部品実装装置において基板に実装された実装部品における基板表面から部品上面までの高さを検出し、その結果と閾値との比較に基づき実装部品の実装状態を判定する基板検査装置と、を含む部品実装システムにおける、前記基板検査装置の前記実装状態の判定の方法であって、
前記部品実装装置において検出された部品の厚みとその部品との対応関係を示す部品厚み情報を取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程で取得した前記部品厚み情報であって判定対象となる対象実装部品の厚み情報に基づき、当該対象実装部品の実装状態の判定に用いる前記閾値を設定する閾値設定工程と、
前記閾値設定工程で設定した対象実装部品の前記閾値に基づき、当該対象実装部品の実装状態を判定する検査工程と、を含む、部品の実装状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に部品を実装する部品実装装置と、部品が実装された部品実装基板における部品の実装状態を検査する検査装置とを含む部品実装システム、及びこの部品実装システムに適した部品の実装状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板等の基板上にSMD(Surface Mount Device)が実装された部品実装基板の製造プロセスでは、ハンダに生じる張力等の種々の要因により、SMD(以下、単に「部品」と称す)が基板から浮き上がった状態で実装される、いわゆる「部品浮き」と称する現象が発生することが知られており、特に、チップ状の部品に生じ易い傾向がある。「部品浮き」が生じた実装部品は、基板の回路と電気的に接合されていない、若しくは接合状態が不安定になっている可能が高く、手直しが必要となる場合がある。
【0003】
そこで従来は、例えば特許文献1に開示されるように、部品実装基板の検査工程で、実装部品の高さをレーザ変位計で計測し、「部品浮き」の有無を検査することが行われている。なお、レーザ変位計の代わりに、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いて実装部品の三次元画像を取得し、当該画像から実装部品の高さを計測することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
部品の厚みはその設計値に対してばらつきがあり、製造メーカや製造ロット毎にその傾向が異なる。そこで従来は、
図15(a)に示すように、部品Cの厚みt1として設計値を用い、この厚みt1に各々既定値であるクリームハンダSpの厚みt2とマージン(測定ばらつきの余裕分)t3を加えた閾値Taを設定し、レーザ変位計の計測値H(基板Pの表面(上面)Puから部品Cの上面までの距離)と閾値Taとを比較することにより「部品浮き」の判定を行っている。つまり、
図15(b)に示すように、計測値H>閾値Taの場合に「部品浮き」と判定する。
【0006】
しかし、部品の厚みt1のばらつきを考慮した適切なマージンt3の設定は難しく、[発明を実施するための形態]で詳細に説明するように、良好な実装部品が「部品浮き」と判定される場合や、逆に、「部品浮き」が生じた実装部品が見逃される場合が考えられる。
【0007】
また、BGA(Ball Grid Array)パッケージを備えたパッケージ部品の実装状態の良否判定についても、従来は、上記「部品浮き」に類似した方法が採用されており、従って、当該判定についても同様の課題が考えられる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、部品実装基板における「部品浮き」等の部品の実装状態の判定精度向上に寄与する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一局面に係る部品実装システムは、基板に部品を実装する機能と前記部品の厚みを検出可能な機能とを備える部品実装装置と、前記部品実装装置において基板に実装された実装部品の基板表面から部品上面までの高さを検出し、その結果と閾値との比較に基づき実装部品の実装状態を判定する基板検査装置と、を含む部品実装システムであって、前記部品実装装置において検出された部品の厚みとその部品との対応関係を示す部品厚み情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した前記部品厚み情報であって判定対象となる対象実装部品の厚み情報に基づき、当該対象実装部品の実装状態の判定に用いる前記閾値を設定する閾値設定部と、を含み、前記基板検査装置は、前記閾値設定部が設定した対象実装部品の前記閾値に基づき、当該対象実装部品の実装状態を判定するものである。
【0010】
この部品実装システムでは、部品実装装置において個々の部品の実際の厚みが検出される。そして、基板検査装置での実装状態の判定に先立ち、個々の部品とその厚みとの対応関係(部品厚み情報)に基づき実装部品毎の閾値が設定され、当該閾値に基づき実装部品(対象実装部品)の実装状態が判定される。つまり、実装部品の実装状態の判定は、当該実装部品の実際の厚みに基づいて設定された閾値に基づいて実行される。この場合、前記閾値は、例えば、情報取得部が取得した部品の厚みに、各々既定値であるハンダ厚み及びマージンを加えた値である。
【0011】
この部品実装システムの構成によれば、設計値ではなく実際の部品の厚みを基準として設定された閾値に基づき実装部品の実装状態が判定されるため、実装部品の厚みのばらつきに左右されることなく、実装部品の実装状態を判定することが可能となる。従って、実装部品の「部品浮き」などの実装状態の判定をより精度良く行うことが可能となる。
【0012】
上記部品実装システムにおいて、前記部品実装装置は、基板への部品の実装に先立ち当該部品の厚みを検出するのが好適である。
【0013】
この構成によれば、実装前の部品単体の状態厚みを検出可能なため、部品の厚みを検出し易くなる。そのため、部品の厚みをより正確に検出することが可能となり、前記閾値の信頼性が向上する。
【0014】
その場合の具体的な構成としては、例えば、前記部品実装装置は、部品を保持して基板上に搬送する部品保持部と、前記部品保持部に保持された部品を少なくとも側方を含む一乃至複数の方向から撮像可能な撮像部と、当該撮像部が撮像した画像に基づき部品の厚みを検出する厚み検出部と、を含むのが好適である。
【0015】
部品実装装置では、通常、部品保持部に保持された部品が撮像され、部品保持部による部品の保持状態が画像認識されることで、その認識結果が基板への部品の実装動作に反映される。従って、部品保持部に保持された部品を少なくとも側方を含む一乃至複数の方向から撮像し、その画像に基づき部品の厚みを検出する上記構成によれば、部品保持部に保持された部品を画像認識するための構成を利用しながら部品の厚みを検出することが可能となり、合理的な構成が達成される。
【0016】
この場合、前記部品実装装置が、複数の前記部品保持部を備えた部品実装用のヘッドユニットを備える場合には、前記撮像部は、前記複数の部品保持部に対してそれらの配列方向に相対的に移動可能に設けられているのが好適である。
【0017】
この構成によれば、複数の部品保持部に対して撮像部が相対的に移動しながら、各部品保持部に各々保持された部品の厚みを効率良く検出することが可能となる。
【0018】
なお、上記部品実装システムにおいて、前記部品が、パッケージの底面に複数の球状ハンダからなる端子部を備えたパッケージ部品である場合には、前記部品の厚みは、前記パッケージの厚みであり、前記ハンダ厚みは、前記端子部が溶融して基板に接合された状態の既定の厚みである。
【0019】
この構成によれば、パッケージ部品の実装状態の判定を精度良く行うことが可能となる。
【0020】
一方、本発明の一の局面に係る部品の実装状態判定方法は、基板に部品を実装する機能と前記部品の厚みを検出可能な機能とを備える部品実装装置と、前記部品実装装置において基板に実装された実装部品における基板表面から部品上面までの高さを検出し、その結果と閾値との比較に基づき実装部品の実装状態を判定する基板検査装置と、を含む部品実装システムにおける、前記基板検査装置の前記実装状態の判定の方法であって、前記部品実装装置において検出された部品の厚みとその部品との対応関係を示す部品厚み情報を取得する情報取得工程と、前記情報取得工程で取得した前記部品厚み情報であって判定対象となる対象実装部品の厚み情報に基づき、当該対象実装部品の実装状態の判定に用いる前記閾値を設定する閾値設定工程と、前記閾値設定工程で設定した対象実装部品の前記閾値に基づき、当該対象実装部品の実装状態を判定する検査工程と、を含む。
【0021】
この方法は、上述した部品実装装置により具現化されるものである。従って、この方法によれば、既述の通り、実装部品の「部品浮き」などの実装状態の判定をより精度良く行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した本発明の部品実装システム及び部品の実装状態判定方法によれば、「部品浮き」等の部品の実装状態の判定精度向上に寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る部品実装システムを示すブロック図である。
【
図2】部品実装装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】上記部品実装装置のヘッドユニットの側面図(一部断面図)である。
【
図4】上記部品実装システム(部品実装装置及び検査装置)の制御系統を示すブロック図である。
【
図5】上記部品実装装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】上記検査装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】従来装置(従来の実装状態判定方法)の課題を説明するための部品実装基板の断面模式図である。
【
図9】従来装置(従来の実装状態判定方法)の課題を説明するための部品実装基板の断面模式図である。
【
図10】実施形態の部品実装システム(実装状態判定方法)の利点を説明するための部品実装基板の断面模式図である。
【
図11】パッケージ部品における従来の実装状態判定方法の課題を説明するための部品実装基板の断面模式図である。
【
図12】実施形態の部品実装システム(実装状態判定方法)の利点を説明するための部品実装基板の断面模式図である。
【
図13】上記部品実装装置に適用されるヘッドユニットの変形例を示す平面図である。
【
図15】従来の実装状態判定方法を説明するための部品実装基板の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
[部品実装システムの全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る部品実装システム(本発明の部品の実装状態判定方法が実施される部品実装システム)を示すブロック図である。この部品実装システム1は、プリント基板板などの基板Pを搬送しながら、当該基板Pに部品(SMD)が実装(搭載)された基板P(以下、部品実装基板Pと称する場合がある)を製造するシステムである。部品には、LSIなどの大型の部品(パッケージ部品とも称する)の他、IC、トランジスタ、コンデンサ及び抵抗器などの小片状の部品(チップ部品とも称する)が含まれる。
【0026】
部品実装システム1は、
図1に示すように、製造ラインに沿って並ぶ印刷装置2、部品実装装置3、リフロー装置4及び検査装置5と、管理装置6とを含む。印刷装置2、部品実装装置3、リフロー装置4及び検査装置5は、製造ラインの上流側からこの順番で配列されている。部品実装装置3は複数台設けられており、当例では、2台の部品実装装置3(3A、3B)が連続して印刷装置2とリフロー装置4との間に設けられている。
【0027】
印刷装置2は、スクリーン印刷により、基板Pの実装ポイントにクリームハンダを塗布する作業を実行し、部品実装装置3は、クリームハンダが塗布された実装ポイントに部品を実装する作業を実行し、リフロー装置4は、クリームハンダを溶かして部品の電極を基板Pの回路に接合する作業を実行し、検査装置5は、基板Pの各実装ポイントに実装された部品の実装状態の検査を実行する。
【0028】
管理装置6は、例えば製造ラインから離れた場所に設けられており、印刷装置2、部品実装装置3、リフロー装置4及び検査装置5の各動作を統括的に管理する。印刷装置2、部品実装装置3(3A、3B)、リフロー装置4及び検査装置5と管理装置6とは、通信回線7を介して接続されており、これにより、印刷装置2、部品実装装置3(3A、3B)、リフロー装置4及び検査装置5と管理装置6との間で各種情報の送受信が可能に構成されている。
【0029】
[部品実装装置3の構成]
次に、部品実装装置3(3A、3B)の具体的な構成について説明する。部品実装装置3A、3Bの構成は基本的には同じである。従って、以下の説明では、特に必要な場合を除き、個々の部品実装装置3A、3Bを区別することなく「部品実装装置3」と称してその構成について説明する。
【0030】
図2は、部品実装装置3の全体構成を示す平面図であり、
図3は、部品実装装置3の後記ヘッドユニット16の側面図(一部断面図)である。なお、図面中には、方向関係の明確化のために、XYZ直角座標軸を示している。X方向は水平面と平行な製造ラインに沿った方向であり、Y方向は水平面上でX方向と直交する方向であり、Z方向はX、Y両方向に直交する方向、すなわち上下方向である。
【0031】
部品実装装置3は、金属製の構造体からなる平面視矩形の基台10と、基台10上で、基板Pを搬送する基板搬送機構12と、部品供給部14と、基台10に沿ってその上方を移動するヘッドユニット16と、第1、第2の部品認識カメラ32、36とを備える。
【0032】
基板搬送機構12は、各々ベルトコンベアからなる一対のコンベア12aを有する。基板搬送機構12は、
図2の左側(X1側)から基板Pを受け入れて作業位置(同図に示す基板Pの位置)に搬送し、実装作業終了後、基板Pを作業位置から同図の右側(X2側)に搬出する。
【0033】
部品供給部14は、基板搬送機構12の両側(Y1側及びY2側)に各々設けられている。部品供給部14には、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の部品(チップ部品)を各々供給する、複数のテープフィーダ14aが配置されている。なお、部品供給部14には、テープフィーダ14aに代えて、例えばLSI等の大型の部品(パッケージ部品)をトレイ上に載置した状態で供給するトレイフィーダなどの他の部品供給デバイスも配置され得る。
【0034】
ヘッドユニット16は、部品供給部14から部品を取り出して、基板Pの定められた実装ポイントに実装するものである。ヘッドユニット16は、ヘッドユニット駆動機構20によりX方向及びY方向に移動可能に設けられている。
【0035】
ヘッドユニット駆動機構20は、いわゆるX-Yロボットで構成されている。具体的には、ヘッドユニット駆動機構20は、基台10の高架フレームに各々固定されたY方向に延在する一対の固定レール22と、これら固定レール22に移動自在に支持されたX方向に延在するビーム21と、このビーム21に螺合されて、Y軸サーボモータ26により回転駆動されるボールねじ軸24と含む。また、ヘッドユニット駆動機構20は、ビーム21に固定されて、ヘッドユニット16をX方向に移動自在に支持する固定レール28と、ヘッドユニット16に螺合されて、X軸サーボモータ29により回転駆動されるボールねじ30とを含む。つまり、ヘッドユニット駆動機構20は、X軸サーボモータ29によりボールねじ軸30を介してヘッドユニット16をX方向に移動させ、また、Y軸サーボモータ26によりボールねじ軸24を介してビーム21をY方向に移動させる。この構成により、ヘッドユニット駆動機構20は、基台10の上方の一定範囲内で、ヘッドユニット16をX方向及びY方向に移動させる。
【0036】
ヘッドユニット16には、Z方向(上下方向)に延びる複数の軸状のヘッド17(本発明の「部品保持部」に相当する)と、これらヘッド17を駆動するヘッド駆動機構とが備えられている。当例では、X方向に一定間隔で配列された6本のヘッド17がヘッドユニット16に備えられている。
【0037】
ヘッド駆動機構は、各ヘッド17を個別に昇降(Z方向に移動)させる昇降駆動機構と、各ヘッド17を各々中心軸回り(R方向)に回転させる回転駆動機構とを含む。各ヘッド17の先端には、部品吸着用のノズル17aが備えられている。各ノズル17aは、切替弁を介して負圧発生装置に連通しており、当該負圧発生装置から負圧の供給を受けることによって部品を吸着、保持する。
【0038】
ヘッドユニット16には、基板認識カメラ18が備えられている。基板認識カメラ18は、CCDやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備えたカメラ本体と、LED照明等の照明デバイスとを一体に備えた照明一体形カメラであり、ヘッドユニット16と一体に移動して、基板Pの上面に記された各種マーク等の対象物を撮像する。
【0039】
第1部品認識カメラ32(本発明の「撮像部」に相当する)は、CCDやCMOS等の撮像素子を備えたカメラであり、ヘッド17に保持された部品を側方(Y1側)から撮像するものである。
【0040】
図3に示すように、第1部品認識カメラ32は、ビーム21の下面の所定位置(当例ではX方向中央部)にハンガー部材33を介して固定的に配置されている。一方、ヘッドユニット16のうち、各ヘッド17の反ビーム21側(Y2側)の位置には、ビーム21の側(Y1方向)に向かって照明光を照射するLED照明34がフレーム35を介して固定されている。LED照明34は、第1部品認識カメラ32に対向し得る位置に設けられている。つまり、第1部品認識カメラ32は、LED照明34による照明の元でヘッド17に保持された部品(
図3中に符号Cで示す)の側方からの投影像を撮像する。この場合、各ヘッド17に保持された部品が所定の撮像高さ位置(
図3に示す位置)に配置され、この状態で、ヘッドユニット16が第1部品認識カメラ32に対して間歇的にX方向に移動することにより、各ヘッド17に保持された部品の投影像が第1部品認識カメラ32により順次撮像される。
【0041】
第2部品認識カメラ36は、各ヘッド17に保持された部品を下方(Z2側)から撮像するものである。第2部品認識カメラ36は、基板認識カメラ18と同様、CCDやCMOS等の撮像素子を備えたカメラ本体と、LED照明等の照明デバイスとを一体に備えた照明一体形カメラである。第2部品認識カメラ36は、基板搬送機構12と各部品供給部14との間の位置であってX方向における部品供給部14の中央部分に各々上向きに配置されている。
【0042】
この部品実装装置3では、基板搬送機構12に沿って作業位置に基板Pが搬入されると、ヘッドユニット16が部品供給部14と基板Pとの間を往復し、部品供給部14(テープフィーダ14a)から部品を取り出して、当該部品を基板Pの所定の実装ポイントに実装する。この際、部品供給部14から部品が取り出されると、第1、第2の部品認識カメラ32、36に対してヘッドユニット16がX方向に相対的に移動し、これにより、各ヘッド17に保持された部品の側方からの投影像及び部品の下面像(底面像)が撮像される。これらの画像に基づき、各ヘッド17による部品の保持状態が認識され、各実装ポイントへの部品の実装時には、その認識結果が反映されるようにヘッドユニット16が制御される。
【0043】
図4は、部品実装システム1(部品実装装置3及び検査装置5)の制御系統を示すブロック図である。
【0044】
部品実装装置3は、同図に示すような制御装置300を備えている。制御装置300は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び周辺回路等を備えて構成されており、その機能構成として、主制御部301、データ記憶部302、駆動制御部303、画像処理部304および通信制御部305等を含む。
【0045】
主制御部301は、予め記憶されているプログラムおよび各種データに基づき駆動制御部303を介して基板搬送機構12、ヘッドユニット駆動機構20、ヘッドユニット16及びヘッド17等の駆動を制御することにより、部品実装装置3の一連の実装動作を統括的に制御する。
【0046】
画像処理部304は、基板認識カメラ18及び第1、第2の部品認識カメラ32、36により撮像された画像に所定の画像処理を施すものである。主制御部301は、その画像処理後の画像データに基づき撮像対象物を認識するとともに、その認識結果に基づき各種演算処理を実行する。この撮像対象物の認識及び各種演算処理には、ヘッド17による部品の保持状態の認識、およびその認識結果に基づく部品寸法の計測や位置補正量の演算などの処理が含まれる。位置補正量とは、例えば、ヘッド17(ノズル17a)に対して部品の位置がずれていた場合に、実装時にそのずれを是正するためのヘッドユニット16の移動量である。
【0047】
なお、部品寸法の計測処理には、第1部品認識カメラ32が撮像した部品の投影画像に基づき、その部品の実際の厚みt1(
図3参照)を計測する処理が含まれる。厚みt1は、検査装置5による部品実装基板Pの検査で使用される情報であり、主制御部301は、さらに基板P毎に部品Cとその厚みt1とを紐付けした部品厚み情報リストJを作成し、当該リストデータをデータ記憶部302に格納する処理を実行する。この点については、後に詳述する。なお、当例では、この主制御部301が本発明の「厚み検出部」に相当し、部品厚み情報リストJが本発明の「部品厚み情報」に相当する。
【0048】
通信制御部305は、通信回線7に接続された通信用インターフェースであり、管理装置6との間で、又は管理装置6を通じて検査装置5等との間で各種情報の送受信を行う。
【0049】
[検査装置5の構成]
検査装置5は、部品実装装置3に類似した構成を有する。すなわち、図示を省略するが、検査装置5は、金属製の構造体からなる基台と、基台上で、基板Pを搬送する基板搬送機構と、基台に沿ってその上方を移動する検査ヘッド40(
図4に示す)とを備える。検査ヘッド40を移動させるための機構は、部品実装装置3のヘッドユニット駆動機構20と同様に、いわゆるX-Yロボットで構成されており、基台の上方の一定範囲内で、検査ヘッド40をX方向及びY方向に移動させる。
【0050】
検査ヘッド40には、基板認識カメラ42およびレーザ変位計44が備えられている。基板認識カメラ42は、部品実装装置3の前記基板認識カメラ18と同様に、CCDやCMOS等の撮像素子を備えたカメラ本体と、LED照明等の照明デバイスとを一体に備えた照明一体形カメラであり、部品実装基板Pの上面に記された各種マークおよび各実装ポイントの実装部品を撮像するものである。
【0051】
レーザ変位計44は、部品実装基板Pの各実装ポイントに実装された部品の高さ、すなわち、
図15に示したように、基板Pの表面(上面)Puから部品Cの上面までの距離H(以下、計測値Hとも言う)を計測するものである。なお、検査ヘッド40は、レーザ変位計44の代わりに、非接触式の三次元計測器を備えた構成であってもよい。この場合には、例えばプロジェクタとデジタルカメラとを備え、位相シフト法に基づき部品の高さ計測等を行う計測器を適用することができる。
【0052】
この検査装置5では、基板搬送機構に沿って基板Pが作業位置に搬入されると、検査ヘッド40が予め設定された経路に沿って実装ポイントを移動しながら、各実装ポイントの実装部品を基板認識カメラ42で撮像するとともに、レーザ変位計44により当該実装部品の高さを計測する。そして、取得された部品画像(平面画像)及び実装部品の高さ(計測値H)に基づき、実装部品の実装状態の判定処理が実行される。
【0053】
検査装置5は、
図4に示すような制御装置500を備えている。制御装置500は、CPU、ROM、RAM及び周辺回路等を備えて構成されており、その機能構成として、主制御部501、データ記憶部502、駆動制御部503、画像処理部504および通信制御部505等を含む。
【0054】
主制御部501は、予め記憶されているプログラムおよび各種データに基づき駆動制御部503を介して基板搬送機構及び検査ヘッド40等を制御することにより、検査装置5の一連の検査動作を統括的に制御する。
【0055】
画像処理部504は、基板認識カメラ42により撮像された画像に所定の画像処理を施すものである。主制御部501は、その画像処理後の画像データに基づき撮像対象物を認識するとともに、その認識結果に基づき各種演算処理を実行する。この撮像対象物の認識及び各種演算処理には、実装ポイントに対する実装部品の位置ずれ量(X-Y方向の位置ずれ量)の演算が含まれる。
【0056】
なお、主制御部501は、レーザ変位計44の計測値H(実装部品の高さ)に基づき「部品浮き」の有無を判定し、その結果を加味して実装状態の良否判定を行う。つまり、主制御部501は、実装ポイントに対する実装部品の前記位置ずれ量が公差外である場合、又は実装部品に「部品浮き」が生じている場合に、当該実装部品の実装状態が不良であると判定する。
【0057】
データ記憶部502は、部品実装基板Pの検査に必要な各種データを記憶するものである。各種データには、部品実装装置3において作成された部品厚み情報リストJのデータが含まれる。すなわち、部品実装装置3で作成された部品厚み情報リストJのデータは、検査対象の基板Pが検査装置5に搬入される前に、部品実装装置3から検査装置5に送信されて当該データ記憶部502に記憶される。なお、主制御部501は、「部品浮き」の有無の判定に際して、部品実装装置3から取得した部品厚み情報リストJに基づき、各実装ポイントの実装部品毎に閾値Taを設定し、当該閾値Taに基づき「部品浮き」の有無を判定する。この点については、後に詳述する。なお、当例では、この主制御部501が本発明の「情報取得部」及び「閾値設定部」に相当する。
【0058】
通信制御部505は、通信回線7に接続された通信用インターフェースであり、管理装置6との間で、又は管理装置6を通じて部品実装装置3等との間で各種情報の送受信を行う。
【0059】
[部品実装システム1の動作]
次に、部品実装システム1の動作(主に部品実装装置3及び検査装置5の動作)について説明する。
図5は、部品実装装置3の動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、作業位置への基板Pの搬入が完了するとスタートする。
【0060】
作業位置に基板Pが搬入されて位置決めされると、主制御部301はヘッドユニット16を制御し、部品供給部14からの部品の取り出し(部品吸着)を開始する(ステップS1)。予め設定された最初のヘッド17による部品吸着が完了すると、主制御部301は、ヘッドユニット16の全ヘッド17の部品吸着が完了したか否かを判断する(ステップS3)。ここでNoの場合には、主制御部301は、処理をステップS1にリターンして、次のヘッド17の部品吸着を実行する。
【0061】
全ヘッド17の部品吸着が完了すると(ステップS3でYes)、主制御部301は、第1部品認識カメラ32及び第2部品認識カメラ36により各ヘッド17の吸着部品を撮像する処理を実行する(ステップS5)。具体的には、主制御部301は、第2部品認識カメラ36に対してヘッドユニット16をX方向に移動させることにより、当該第2部品認識カメラ36により各吸着部品の下面画像を取得する。また、これと同時に又は異なるタイミングで、第1部品認識カメラ32に対してヘッドユニット16をX方向に移動させることにより、当該第1部品認識カメラ32により各吸着部品の側方からの投影画像を取得する。
【0062】
次に、主制御部301は、第1部品認識カメラ32及び第2部品認識カメラ36が取得した画像データに基づき、各ヘッド17の吸着部品の吸着状態(保持状態)を認識する(ステップS7)。また、主制御部301は、第1部品認識カメラ32が取得した画像データに基づき、各吸着部品の厚みt1(
図3参照)を計測し、その結果を部品厚み情報リストJに登録する(ステップS9)。ここで、部品の厚みt1とは、部品がIC、トランジスタ等のチップ部品である場合には部品全体の厚みであり、部品がLSI等、パッケージの底面に複数の球状ハンダからなる端子部を備えたBGA(Ball Grid Array)パッケージ(以下、BGAと称す)を備えるパッケージ部品である場合には、パッケージ(モールド部とも称す)、すなわち端子部を除く部品本体部分の厚みである(
図11(a)参照)。
【0063】
図6は、部品厚み情報リストJの一例である。部品厚み情報リストJは、同図に示すように、「基板ID」と、当該「基板ID」の基板Pに実装される部品の「部品番号」と、各部品番号に該当する部品の「部品厚み」とを含む。ここで、「部品番号」は「実装ポイント」と同義である。つまり、例えば部品番号「C01」は、実装ポイント「C01」に実際に実装される部品を特定する情報である。主制御部301は、計測された吸着部品の厚みを、当該部品の「部品番号」の「部品厚み」として部品厚み情報リストJに登録する。
【0064】
主制御部301は、部品厚み情報リストJへの吸着部品の厚みの登録が完了するタイミングで、ヘッドユニット16を基板Pの上方に移動させ、部品の実装を開始する(ステップS11)。最初のヘッド17の吸着部品の実装が完了すると、主制御部301は、ヘッドユニット16の全ヘッド17の吸着部品の実装が完了したか否かを判断する(ステップS13)。ここでNoの場合には、主制御部301は、処理をステップS11にリターンして、次のヘッド17の吸着部品の実装を実行する。
【0065】
全ヘッド17の吸着部品の実装が完了すると(ステップS13でYes)、主制御部301は、基板Pに対する全部品の実装が完了したか否かを判断し(ステップS15)、ここでNoの場合には、処理をステップS1にリターンし、既述のステップS1~ステップS15の処理を繰り返す。基板Pに対する全部品の実装が完了すると(ステップS15でYes)、主制御部301は、基板搬送機構12を制御して基板Pを作業位置から搬出するとともに、当該基板Pの部品厚み情報リストJのデータを、部品実装装置3(3A、3B)から管理装置6を介して検査装置5に送信する(ステップS17)。これにより、部品実装装置3による基板Pの一連の実装動作が終了する。なお、検査装置5に送信された部品厚み情報リストJのデータは、制御装置500のデータ記憶部502に保存される。
【0066】
次に、検査装置5の動作について説明する。なお、ここでは、実装部品の「部品浮き」の判定にのみ着目した検査装置5の動作について説明する。
【0067】
図7は、検査装置5の動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、作業位置への部品実装基板Pの搬入が完了するとスタートする。作業位置に基板Pが搬入されて位置決めされると、主制御部501は、データ記憶部502に記憶されている当該基板Pの部品厚み情報リストJから、予め設定された最初の部品番号に対応する部品厚みデータを読み出し、当該部品番号に対応する実装部品の「部品浮き」の判定に用いる閾値Taを演算する(ステップS21、S23)。
【0068】
具体的には、従来(
図15)と同様に、部品の厚みt1に、各々既定値であるハンダ厚みt2及びマージンt3を加えた閾値Taを演算する。ここで、従来の閾値Taは、部品の厚みt1として当該部品の設計値を用いて設定されていたが、当例の閾値Taは、部品の厚みt1として
図5のステップS7、S9の処理で実際に計測された値が用いられており、この点で相違する。
【0069】
最初の部品番号に対応する実装部品の閾値Taの演算が完了すると、主制御部501は、当該基板Pの全部品番号に対応する実装部品の閾値Taの演算が完了したか否かを判断し(ステップS25)、ここでNoの場合にはステップS21に処理をリターンし、次の部品番号に対応する実装部品の閾値Taを演算する。
【0070】
全部品番号に対応する実装部品の閾値Taの演算が完了すると、主制御部501は、検査ヘッド40を制御し、最初の部品番号に対応する実装部品の高さ計測を実行し(ステップS27、S29)、さらにその結果に基づき当該実装部品の「部品浮き」の判定を行う(ステップS31)。具体的には、検査ヘッド40を移動させながら、基板Pの上面に沿った一乃至複数の方向にレーザ変位計44で実装部品を含む一定範囲を走査し、基板Pの上面から当該実装部品の上面までの高さを計測する。この場合、最も大きい値を計測値Hとする。そして、計測値Hと閾値Taとを比較し、計測値H>閾値Taの場合には、当該実装部品に「部品浮き」が生じていると判定する。
【0071】
最初の部品番号に対応する実装部品の判定が終了すると、主制御部501は、全部品番号に対応する実装部品について「部品浮き」の判定が終了したか否かを判断し(ステップS33)、ここでNoの場合には、ステップS27に処理をリターンし、次の部品番号に対応する実装部品について、既述のステップS27~ステップS33の処理を実行する。
【0072】
基板Pの全実装部品について「部品浮き」の判定が終了すると(ステップS33でYes)、検査装置5による当該基板Pの一例の検査動作が終了する。なお、基板Pの何れかの実装部品について「部品浮き」と判定した場合には、主制御部501は、例えば、図外のモニターの画面に、該当する実装部品の部品番号を特定し得る状態で部品厚み情報リストJを表示する。
【0073】
なお、当例では、
図7のステップS21の処理が本発明の「情報取得工程」に相当し、ステップS23の処理が本発明の「閾値設定」工程に相当し、ステップS31の処理が本発明の「検査工程」に相当する。
【0074】
[作用効果等]
以上の部品実装システム1では、既述の通り、基板Pへの部品の実装に先立ち、部品実装装置3において個々の部品の厚みt1が計測される。そして、検査装置5では、「部品浮き」の判定に先立ち、実装部品とその厚みt1との対応関係(部品厚み情報リストJ)に基づき実装部品毎の閾値Taが設定され、当該閾値Taに基づき実装部品の「部品浮き」が判定される。つまり、実装部品の「部品浮き」の判定は、当該実装部品の実際の厚みt1に基づいて設定された閾値Taに基づいて実行される。そのため、実装部品の厚みt1のばらつきに左右されることなく「部品浮き」を判定することが可能であり、実装部品の「部品浮き」の判定を、従来に比べて精度良く行うことが可能となる。以下、この点について
図8~
図9を用いて具体的に説明する。なお、
図8~
図9は、
図15に対応しており、各部材や寸法表示は
図15中で用いたものと共通している。
【0075】
既述の通り、部品の厚みにはその設計値に対してばらつきがあり(チップ部品の場合には0.06mm程度)、部品の種類やサイズによってその傾向が異なる。また、製造メーカや製造ロット毎によっても傾向が異なる。従来の「部品浮き」の判定では、部品の厚みt1として設計値を用い、これに各々既定値であるハンダ厚みt2及びマージンt3を加えた値が閾値Taとして設定されている。つまり、部品の厚みt1のばらつきをマージンt3で吸収するという考え方である。しかし、この場合には次のような課題がある。
【0076】
例えば、
図8(a)に示すように、部品の厚みt1に対してマージンt3が狭いと、
図8(c)に示すように、小さい部品浮きでも直ちに計測値H>閾値Taとなる。この場合、「部品浮き」をシビアに検知できるものの、部品の厚みt1のばらつきが大きい側に偏っている場合には、
図8(b)に示すように、計測値H>閾値Taとなり易くなり、実装状態が適切であるにも拘わらず、「部品浮き」が誤検知される場合がある。
【0077】
一方、
図9(a)に示すように、部品の厚みt1に対してマージンt3が広いと、
図9(b)に示すように、計測値H<閾値Taとなり易くなり、部品の厚みt1のばらつきが大きい側に偏っている場合の「部品浮き」の誤検知は回避され得る。しかし、
図9(c)に示すように、小さい部品浮きの場合には、計測値H<閾値Taとなって「部品浮き」が見逃される恐れがある。
【0078】
つまり、従来の判定方法では、部品の厚みt1のばらつきに起因して、「部品浮き」の誤検知や、「部品浮き」の見逃しが発生する可能性がある。
【0079】
これに対して、上記部品実装システム1によれば、実装部品の実際の厚みt1に基づいて閾値Taが設定されるため、
図10(a)、(b)に示すように、部品の厚みt1のばらつきに対応した適切な位置、つまり、実装部品の上面から常に一定高さの位置に閾値Taが設定される。そのため、部品の実装状態が適正であれば、部品の厚みt1のばらつきが大きい側に偏っているような場合でも、「部品浮き」と誤検知されることが無い(
図10(b))。また、部品に一定値以上の浮きが生じている場合には、部品の厚みt1の大小に拘わらず常に計測値H>閾値Taとなるため(
図10(c))、「部品浮き」の見逃しも生じ難くなる。従って、上記部品実装システム1(部品実装システム1で実施される部品の実装状態判定方法)は、部品実装基板Pにおける「部品浮き」の有無判定の精度向上に寄与するものと言える。
【0080】
また、上記部品実装システム1では、ヘッド17の部品吸着状態を認識するために部品実装装置3に備えられた第1部品認識カメラ32が撮像する画像(投影像)を用いて部品の厚みt1が計測される。つまり、部品tの厚みを計測するための設備として第1部品認識カメラ32が兼用されている。従って、上記部品実装システム1によれば、部品の厚みを計測するためのハード的な専用の設備を設けることなく、既存の設備(第1部品認識カメラ32)を利用して部品の厚みt1を取得することができる。従って、合理的な構成が達成されるという利点もある。
【0081】
なお、ここでは、主に実装部品としてチップ部品の「部品浮き」の判定に着目した場合の部品実装システム1の利点について説明した。しかし、上記部品実装システム1(部品実装システム1で実施される部品の実装状態判定方法)は、LSI等、BGAを備えたパッケージ部品の実装状態の判定精度向上にも寄与する。以下、この点について説明する。
【0082】
基板Pに実装される部品がBGAを備えたパッケージ部品の場合には、既述の通り、
図5のステップS9の処理では、主制御部301は、第1部品認識カメラ32が取得した画像データに基づき、パッケージの厚み、すなわち端子部を除く部品本体部分の厚みを計測し、その結果を部品の厚みとして部品厚み情報リストJに登録する。
【0083】
そして、
図7のステップS21の処理では、主制御部501は、データ記憶部502に記憶されている部品厚み情報リストJに基づき、BGAを備えたパッケージ部品(以下、単にパッケージ部品と略す)の実装状態の判定に用いる閾値Taを演算する。この場合、
図11(a)に示すように、主制御部501は、パッケージ部品C1の実際の厚み、すなわち部品厚み情報リストJに登録されている当該パッケージ部品C1のパッケージ厚みt1に、各々既定値であるハンダ厚み(端子部が適切に溶融、硬化した場合の設計値)t2とマージンt3を加えた値を閾値Taとして求める。
【0084】
また、
図7のステップS31の処理では、主制御部501は、基板Pの表面(上面)Puからパッケージ部品C1の上面までの高さを計測し、その計測値Hと閾値Taとを比較する。そして、計測値H>閾値Taの場合には、端子部の溶融状態が不十分であると推測されることから、主制御部501は、当該パッケージ部品C1の実装状態は不良であると判定する。
【0085】
なお、パッケージ部品C1の実装状態の判定方法についても、従来は、パッケージ厚みt1として設計値が用いられ、これに各々既定値であるハンダ厚みt2及びマージンt3を加えた値が閾値Taとして設定されていた。そのため、例えば、パッケージ厚みt1のばらつきが小さい側に偏っているような場合、実際には、
図11(b)に示すように、端子部の溶融状態が不十分である場合であっても、計測値H<閾値Taとなって、実装状態が良好と判定されてしまうことが考えられた。
【0086】
しかし、上記部品実装システム1によれば、パッケージ部品C1の実際のパッケージ厚みt1に基づき閾値Taが設定されるため、パッケージ厚みt1のばらつきが小さい側に偏っている場合には、
図12に示すように、その厚みt1に対応した高さ位置に閾値Taが設定される。これにより、
図11(b)に示したような実装不良が看過されることが抑制される。従って、上記部品実装システム1によれば、LSI等、BGAを備えたパッケージ部品の実装状態の判定精度の向上にも寄与すると言える。
【0087】
[変形例]
以上説明した部品実装システム1は、本発明に係る部品実装システム(発明の部品の実装状態判定方法が実施される部品実装システム)の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成や具体的な実装状態判定方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成等を適用することも可能である。
【0088】
(1)実施形態の部品実装装置3は、複数のヘッド17がX方向に一列に配列されたヘッドユニット16を備えており、このヘッドユニット16が、ビーム21に固定され第1部品認識カメラ32に対して相対的に移動することで、各ヘッド17の吸着部品を撮像する。しかし、ヘッドユニット16に、X方向に移動可能な部品認識カメラが搭載され、この部品認識カメラが各ヘッド17に対してX方向に移動することにより、各ヘッド17の吸着部品を側方から撮像する構成であってもよい。
【0089】
(2)実施形態における部品実装装置3のヘッドユニット16は、複数のヘッド17がX方向に一列に配列されたインライン型の構成であるが、ヘッドユニット16は、
図13及び
図14に示すようなロータリ型の構成であってもよい。すなわち、
図13及び
図14に示すヘッドユニット16は、複数のヘッド17が円周上に等間隔で配列された回転体160を備えており、この回転体160が回転しながら、周方向の特定位置に配置されたヘッド17によって、部品供給部14からの部品の吸着および基板Pに対する部品の実装が行われる。なお、この場合には、各ヘッド17の吸着部品を撮像するために、
図14に示すような撮像ユニット50がヘッドユニット16に設けられていてもよい。この撮像ユニット50は、CCD等お撮像素子を各々備えた複数のカメラ52と、LED照明等の複数の照明装置54とを備えており、吸着部品を複数方向から撮像可能に構成されている。つまり、回転体160の回転に伴い、撮像ユニット50に対して各ヘッド17が相対的に移動する間に、各ヘッド17の吸着部品を複数方向から撮像することにより、吸着部品の立体画像(3D画像)を取得し得るように構成されている。このような部品実装装置3の構成の場合も、撮像ユニット50が撮像した3D画像の画像データに基づいて部品の厚みt1を計測することが可能となる。
【0090】
(3)実施形態では、部品実装装置3において基板Pの一連の実装動作が終了すると、部品厚み情報リストJが部品実装装置3(3A、3B)から管理装置6を介して検査装置5に送信される(
図5のステップS17)。しかし、部品厚み情報リストJは、部品実装装置3(3A、3B)や管理装置6に保存しておき、検査装置5からの要求に応じて部品実装装置3(3A、3B)や管理装置6から検査装置5に送信されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 部品実装システム
2 印刷装置
3、3A、3B 部品実装装置
4 リフロー装置
5 検査装置(基板検査装置)
6 管理装置
7 通信回線
16 ヘッドユニット
17 ヘッド(部品保持部)
32 第1部品認識カメラ(撮像部)
300 制御装置
301 主制御部(厚み検出部)
500 制御装置
501 主制御部(情報取得部/閾値設定部)
C、C1 部品