(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080531
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/30 20060101AFI20220523BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F28F1/30 E
F28D1/053 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191658
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】細井 勉
(72)【発明者】
【氏名】北川 新也
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 幸克
(72)【発明者】
【氏名】羽柴 隆志
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA22
3L103BB38
3L103CC23
3L103DD34
(57)【要約】
【課題】凝縮水の排出を適切に行うことのできる熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器10は、内部を熱媒体が通る管状の部材であって、上下方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブ130と、チューブ130のうち最も下方側に配置されたもの、の更に下方側となる位置に配置された板状の部材である補強プレート400と、を備える。補強プレート400には、凝縮水を下方側に向けて排出するための排出穴440が、少なくとも一つ以上形成されている。補強プレート400の下方側となる位置には、排出穴440から排出された凝縮水を所定位置に導いてから排出するための排水ガイド500が設けられている。排水ガイド500には、排出穴440から排出された凝縮水を受ける受入部510と、凝縮水を、受入部510から所定位置まで導く案内部520と、が設けられている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器(10)であって、
内部を熱媒体が通る管状の部材であって、上下方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブ(130,230)と、
前記チューブのうち最も下方側に配置されたもの、の更に下方側となる位置に配置された板状の部材である補強プレート(400)と、を備え、
前記補強プレートには、上方側から到達した凝縮水を下方側に向けて排出するための排出穴(440)が、少なくとも一つ以上形成されており、
前記補強プレートの下方側となる位置には、前記排出穴から排出された凝縮水を所定位置に導いてから排出するための排水ガイド(500)が設けられており、
前記排水ガイドには、
前記排出穴から排出された凝縮水を受ける受入部(510)と、
凝縮水を、前記受入部から前記所定位置まで導く案内部(520)と、が設けられている熱交換器。
【請求項2】
前記受入部に形成された凝縮水の流路の勾配は、少なくとも一部において、前記案内部に形成された凝縮水の流路の勾配よりも大きい、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記案内部に形成された凝縮水の流路のうち下流側の端部近傍においては、当該端部に近づくほど流路の勾配が大きくなるように湾曲部が形成されている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記受入部に形成された凝縮水の流路の勾配は、少なくとも一部において、前記案内部に形成された凝縮水の流路のうち、前記湾曲部を除く部分の勾配よりも大きい、請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記排水ガイドは樹脂により形成されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記排水ガイドと前記補強プレートとの間は密閉されており、
前記排水ガイドにおける凝縮水の流路となっている空間は、前記排出穴と、前記案内部の下流側端部の開口(524)と、においてのみ外部空間と連通されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記排水ガイドにおける凝縮水の温度に基づいて、前記チューブを通る熱媒体の温度を調整する制御装置(700)を更に備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記制御装置は、前記排水ガイドにおける凝縮水の温度が低くなるほど、前記チューブを通る熱媒体の温度が高くなるように調整する、請求項7に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記制御装置は、前記排水ガイドにおける凝縮水の温度が所定の目標温度以上となるように、前記チューブを通る熱媒体の温度を調整する、請求項7又は8に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばヒートポンプシステムに設けられる蒸発器のように、冷媒等の熱媒体との熱交換によって空気から熱を回収する熱交換器では、チューブの内側を通る低温の熱媒体と、チューブの外側を通る空気との間で熱交換が行われる。
【0003】
熱交換器を通過する空気には水蒸気が含まれている。このため、当該空気がチューブの外側を通る際に冷却されると、空気に含まれる水蒸気が凝縮水となってチューブやフィンの表面に付着する。また、凝縮水が霜となってチューブやフィンの表面に付着することもある。
【0004】
上記のような凝縮水や、霜が融解して生じた水のことを、以下ではまとめて「凝縮水」と称する。凝縮水は、チューブやフィンの表面に沿って、重力により下方側へと移動して行く。
【0005】
熱交換器には、複数のチューブ及びフィンを間に挟んで保護するために、板状の部材である補強プレートが設けられることが多い。複数のチューブが水平方向に沿って伸びており、且つ、これらが上下方向に沿って並ぶように配置された構成の熱交換器においては、補強プレートは上下に配置される。具体的には、最も上方側に配置されたチューブの更に上方側、及び、最も下方側に配置されたチューブの更に下方側、のそれぞれに、補強プレートが配置される。
【0006】
このような構成の熱交換器においては、重力により下方側へと移動した凝縮水が、下方側に配置された補強プレートの上面に滞留してしまうことが懸念される。そこで、下記特許文献1に記載の熱交換器では、下方側の補強プレート(サイドプレート)に、凝縮水を下方側に排出するための排出穴を形成することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱交換器の補強プレートに到達した凝縮水は、補強プレートの排出穴を通って更に下方側へと排出される。このとき、排出穴の位置によっては、排出された凝縮水がその付近で滞留してしまう等の問題が生じることがある。例えば、熱交換器が車両に搭載された場合には、補強プレートの排出穴から排出された凝縮水が、車両のアンダーカバー上に滞留し、当該位置においてそのまま凍結してしまうようなことが生じ得る。
【0009】
本開示は、凝縮水の排出を適切に行うことのできる熱交換器、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る熱交換器は、熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器(10)である。この熱交換器は、内部を熱媒体が通る管状の部材であって、上下方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブ(130,230)と、チューブのうち最も下方側に配置されたもの、の更に下方側となる位置に配置された板状の部材である補強プレート(400)と、を備える。補強プレートには、上方側から到達した凝縮水を下方側に向けて排出するための排出穴(440)が、少なくとも一つ以上形成されている。補強プレートの下方側となる位置には、排出穴から排出された凝縮水を所定位置に導いてから排出するための排水ガイド(500)が設けられている。排水ガイドには、排出穴から排出された凝縮水を受ける受入部(510)と、凝縮水を、受入部から所定位置まで導く案内部(520)と、が設けられている。
【0011】
このような構成の熱交換器では、排出穴から排出された凝縮水は、排水ガイドの受入部によって受け入れられた後、案内部によって所定位置まで導かれる。このため、上記の「所定位置」を、例えば車両のアンダーカバーに設けられた排水穴の直上位置としておけば、凝縮水をアンダーカバー上に滞留させることなく、車両の外部へと適切に排出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、凝縮水の排出を適切に行うことのできる熱交換器、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る熱交換器の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、熱交換器が備えるフィン、及びその上下に配置されたチューブを示す図である。
【
図4】
図4は、熱交換器が備える補強プレートの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、熱交換器にワイヤーが取り付けられた状態を示す図である。
【
図8】
図8は、熱交換器の全体構成を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、熱交換器が備える排水ガイドの構成を示す図である。
【
図10】
図10は、熱交換器が備える排水ガイドの構成を示す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る熱交換器の構成を示す図である。
【
図14】
図14は、入口水温と出口水温との関係を示す図である。
【
図15】
図15は、入口水温と残水量との関係を示す図である。
【
図16】
図16は、第3実施形態に係る熱交換器が備える、排水ガイドの構成を示す図である。
【
図17】
図17は、第3実施形態に係る熱交換器が備える、排水ガイドの構成を示す図である。
【
図20】
図20は、第3実施形態に係る熱交換器の全体構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
第1実施形態に係る熱交換器10の構成について説明する。熱交換器10は、不図示の車両に搭載される熱交換器である。
図1に示されるように、熱交換器10は、ラジエータ100と蒸発器200とを組み合わせて一体化した複合型の熱交換器として構成されている。
【0016】
ラジエータ100は、不図示の発熱体を通り高温となった冷却水を、空気との熱交換によって冷却するための熱交換器である。ここでいう「発熱体」とは、上記車両に搭載され冷却を必要とする機器のことであって、例えば内燃機関、インタークーラ、モーター、インバーター、バッテリ等のことである。蒸発器200は、車両に搭載される不図示の空調装置の一部であって、空気との熱交換によって液相の冷媒を蒸発させるための熱交換器である。このように、熱交換器10は、熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器として構成されている。ラジエータ100においては冷却水が上記の「熱媒体」に該当し、蒸発器200においては冷媒が上記の「熱媒体」に該当する。
【0017】
先ず、ラジエータ100の構成について説明する。ラジエータ100は、一対のタンク110、120と、チューブ130と、フィン140と、を備えている。尚、
図1においてはフィン140の図示が省略されている。
【0018】
タンク110、120はいずれも、熱媒体である冷却水を一時的に貯えるための容器である。これらは略円柱形状の細長い容器として形成されており、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で配置されている。タンク110、120は、水平方向に沿って互いに離間した位置に配置されており、両者の間には後述のチューブ130及びフィン140が配置されている。
【0019】
尚、タンク110は、蒸発器200が有するタンク210と一体化されている。同様に、タンク120は、蒸発器200が有するタンク220と一体化されている。
図1においては、タンク110及びタンク210の内部の構成を示すため、タンク110及びタンク210を熱交換器10から取り外した状態が示されている。
【0020】
タンク110には、受入部111、112が形成されている。これらはいずれも、上記の発熱体を通った後の冷却水を受け入れるための部分として設けられている。受入部111は、タンク110のうち上方側となる位置に設けられている。受入部112は、タンク110のうち下方側となる位置に設けられている。
【0021】
図1に示されるように、タンク110の内部空間は、セパレータS3によって上下2つに分けられている。受入部111から共有された冷却水は、タンク110の内部空間のうちセパレータS3よりも上方側の部分に流入する。受入部112から共有された冷却水は、タンク110の内部空間のうちセパレータS3よりも下方側の部分に流入する。
【0022】
タンク120には、排出部121、122が形成されている。これらはいずれも、熱交換に供された後の冷却水を外部へと排出するための部分として設けられている。排出部121は、タンク120のうち上方側となる位置に設けられている。排出部122は、タンク120のうち下方側となる位置に設けられている。
【0023】
タンク120の内部には、セパレータS3と同じ高さとなる位置に、セパレータS3と同様のセパレータが配置されている。タンク120の内部空間は、当該セパレータによって上下2つに分けられている。タンク120のうち当該セパレータよりも上方側の内部空間に流入した冷却水は、排出部121から外部へと排出される。タンク120のうち当該セパレータよりも下方側の内部空間に流入した冷却水は、排出部122から外部へと排出される。
【0024】
チューブ130は、内部を冷却水が通る管状の部材であって、ラジエータ100に複数本備えられている。それぞれのチューブ130は細長い直線状の管となっており、水平方向に沿って伸びるように配置されている。チューブ130は、その一端がタンク110に接続されており、その他端がタンク120に接続されている。これにより、タンク110の内部空間は、それぞれのチューブ130を介して、タンク120の内部空間と連通されている。
【0025】
それぞれのチューブ130は、上下方向、つまりタンク110等の長手方向に沿って並ぶように配置されている。尚、上下方向に沿って互いに隣り合うチューブ130の間にはフィン140が配置されているのであるが、先に述べたように、
図1においてはフィン140の図示が省略されている。
【0026】
外部からタンク110に供給された冷却水は、それぞれのチューブ130の内側を通ってタンク120へと流入する。冷却水は、チューブ130の内側を通る際において、チューブ130の外側を通過する空気によって冷却されその温度を低下させる。尚、当該空気が通過する方向は、タンク110の長手方向及びチューブ130の長手方向のいずれに対しても垂直な方向であって、ラジエータ100から蒸発器200へと向かう方向となっている。熱交換器10の近傍には、上記の方向に空気を送り出すための不図示のファンが設けられている。
【0027】
フィン140は、金属板を波状に折り曲げることによって形成されたコルゲートフィンである。上記のように、フィン140は、上下方向において互いに隣り合うチューブ130の間となる位置に配置されている。つまり、ラジエータ100では、フィン140とチューブ130とが、上下方向に沿って交互に並ぶように積層されている。
図2は、
図1のA部の構成を拡大して示す図である。
図2に示されるように、波状に形成されたフィン140のそれぞれの頂部は、上下方向において隣り合うチューブ130の表面に当接しており、且つろう接されている。
【0028】
チューブ130の内側を冷却水が通っているときにおいては、冷却水の熱がチューブ130を介して空気に伝達されるほか、チューブ130及びフィン140を介しても空気に伝達される。つまり、空気との接触面積がフィン140によって大きくなっており、これにより空気と冷却水との熱交換が効率的に行われる。
【0029】
再び
図1を参照しながら、蒸発器200の構成について説明する。蒸発器200は、一対のタンク210、220と、チューブ230と、フィン140と、を備えている。
【0030】
タンク210、220はいずれも、熱媒体である冷媒を一時的に貯えるための容器である。これらは略円柱形状の細長い容器として形成されており、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で配置されている。タンク210、220は、水平方向に沿って互いに離間した位置に配置されており、両者の間にはチューブ230及びフィン140が配置されている。
【0031】
先に述べたように、タンク210は、ラジエータ100が有するタンク110と一体化されている。同様に、タンク220は、ラジエータ100が有するタンク120と一体化されている。
【0032】
タンク210には、受入部211と排出部212とが形成されている。受入部211は、空調装置を循環する冷媒を受け入れるための部分である。受入部211には、空調装置が備える不図示の膨張弁を通過した後の、低温の液相冷媒が供給される。受入部211は、タンク210のうち上方側の端部近傍となる位置に設けられている。排出部212は、熱交換に供された後の冷媒を外部へと排出するための部分である。蒸発器200における熱交換によって蒸発した気相の冷媒は、排出部212から外部へと排出された後、空調装置が備える不図示の圧縮機へと供給される。
【0033】
図1に示されるように、タンク210の内部空間は、セパレータS1、S2によって上下3つに分けられている。受入部211は、上方側のセパレータS1よりも更に上方側となる位置に設けられている。排出部212は、下方側のセパレータS2よりも更に下方側となる位置に設けられている。
【0034】
タンク220の内部空間は、不図示のセパレータによって上下2つに分けられている。当該セパレータが設けられている位置は、セパレータS1よりも低く、且つセパレータS2よりも高い位置となっている。
【0035】
チューブ230は、内部を冷媒が通る管状の部材であって、蒸発器200に複数本備えられている。それぞれのチューブ230は細長い直線状の管となっており、水平方向に沿って伸びるように配置されている。チューブ230は、その一端がタンク210に接続されており、その他端がタンク220に接続されている。これにより、タンク210の内部空間は、それぞれのチューブ230を介して、タンク220の内部空間と連通されている。
【0036】
それぞれのチューブ230は、上下方向、つまりタンク210等の長手方向に沿って並ぶように配置されている。本実施形態では、それぞれのチューブ230が、空気の流れる方向に沿ってチューブ130と隣り合う位置に配置されている。つまり、チューブ230は、チューブ130と同じ数だけ設けられており、それぞれのチューブ130と同じ高さとなる位置に配置されている。
【0037】
外部から受入部211へと共有された冷媒は、タンク210の内部空間のうちセパレータS1よりも上方側の部分に流入する。当該冷媒は、セパレータS1よりも上方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク220の内部空間のうち不図示のセパレータよりも上方側の部分に流入する。その後、冷媒は、当該セパレータよりも上方側であり且つセパレータS1よりも下方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク210の内部空間のうちセパレータS1とセパレータS2との間の部分に流入する。
【0038】
更にその後、冷媒は、セパレータS2よりも上方側であり且つタンク220内のセパレータよりも下方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク220の内部空間のうちセパレータよりも下方側の部分に流入する。当該冷媒は、セパレータS2よりも下方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク210の内部空間のうちセパレータS2よりも下方側の部分に流入した後、排出部212から外部へと排出される。
【0039】
冷媒は、上記のように各チューブ230の内側を通る際において、チューブ230の外側を通過する空気によって加熱されて蒸発し、液相から気相へと変化する。当該空気は、ラジエータ100を通過して温度が上昇した後の空気である。空気は、チューブ230の外側を通過する際において熱を奪われるため、その温度を低下させる。
【0040】
上下方向に沿って互いに隣り合うチューブ230の間には、
図1においては不図示のフィン140が配置されている。このフィン140は、先に述べたラジエータ100が備えるフィン140である。
図3に示されるように、それぞれのフィン140は、ラジエータ100が備えるチューブ130の間から、蒸発器200が備えるチューブ230の間まで伸びるように配置されている。つまり、ラジエータ100と蒸発器200との間では、それぞれのフィン140が共有されている。
【0041】
このため、蒸発器200では、
図2を参照しながら説明したラジエータ100と同様に、フィン140とチューブ230とが、上下方向に沿って交互に並ぶように積層されている。波状に形成されたフィン140のそれぞれの頂部は、上下方向において隣り合うチューブ230の表面に当接しており、且つろう接されている。
【0042】
チューブ230の内側を冷媒が通っているときにおいては、空気の熱がチューブ230を介して冷媒に伝達されるほか、チューブ230及びフィン140を介しても冷媒に伝達される。つまり、空気との接触面積がフィン140によって大きくなっており、これにより空気と冷媒との熱交換が効率的に行われる。
【0043】
本実施形態では更に、チューブ130の内側を通る冷却水の熱が、フィン140を介した熱伝導によっても、チューブ230の内側を通る冷媒へと伝えられる。蒸発器200では、空気からの熱に加えて冷却水からの熱も回収されるので、空調装置の動作効率が更に高くなっている。
【0044】
図1に示されるように、最も上方側に配置されたチューブ130、230の更に上方側となる位置には、板状の部材である補強プレート300が配置されている。また、最も下方側に配置されたチューブ130、230の更に下方側となる位置には、板状の部材である補強プレート400が配置されている。補強プレート300、400は、チューブ130等を補強してその変形を防止するために設けられた金属板である。
図2に示されるように、最も下方側に配置されたチューブ130、230と、補強プレート400との間にも、フィン140が配置されている。
【0045】
図1においては、ラジエータ100から蒸発器200へと向かう方向、すなわち、これらを通るように空気が流れる方向がx方向となっており、同方向に沿ってx軸が設定されている。また、x方向に対して垂直な方向であって、タンク120からタンク110に向かう方向、すなわちチューブ130等の長手方向がy方向となっており、同方向に沿ってy軸が設定されている。更に、x方向及びy方向のいずれに対しても垂直な方向であって、下方側から上方側に向かう方向、すなわちタンク110等の長手方向がz方向となっており、同方向に沿ってz軸が設定されている。以降においては、上記のように定義されたx方向、y方向、及びz方向を用いて説明を行う。
【0046】
図3には、一つのフィン140と、その上下両側に配置されたチューブ130、230の断面とが示されている。同図に示されるように、チューブ130、230は、いずれもx方向に沿って伸びるような扁平形状の断面を有している。チューブ130の内部には冷却水の通る流路FP1が形成されている。流路FP1にはインナーフィンIF1が配置されている。同様に、チューブ230の内部には冷媒の通る流路FP2が形成されている。流路FP2にはインナーフィンIF2が配置されている。同じ高さとなる位置に配置されたチューブ130とチューブ230との間には、隙間GPが形成されている。
【0047】
図3に示されるように、フィン140には複数のルーバー141が形成されている。ルーバー141は、フィン140の一部を切り起こすことによって形成されたものである。具体的には、フィン140のうち平板状の部分に対し、z方向に沿って伸びる直線状の切り込みを、x方向に沿って並ぶように複数形成した上で、互いに隣り合う切り込みの間の部分を捩じることによってルーバー141が形成されている。ルーバー141の近傍に形成された隙間を空気が通過することで、空気との間における熱交換が更に効率的に行われる。尚、このようなルーバー141の形状としては、従来のフィンに形成されるルーバーと同様の形状を採用することができる。
【0048】
補強プレート400の具体的な構成について説明する。先に述べたように、補強プレート400は、最も下方側に配置されたチューブ130、230の更に下方側となる位置に配置される板状の部材である。補強プレート400は、細長い板状の部材として形成されており、その長手方向を、チューブ130、230の長手方向に沿わせた状態で配置されている。
図4及び
図5に示されるように、補強プレート400には、平板部410と、折り返し部420と、屈曲部430と、が形成されている。
【0049】
平板部410は平板状に形成された部分であって、補強プレート400の大部分を占めている。平板部410の法線方向は、z軸に沿う方向となっている。
【0050】
折り返し部420は、平板部410のうち-x方向側の端部、及び、平板部410のうちx方向側の端部のそれぞれから、-z方向側に向かって伸びるように形成された概ね平板状の部分である。
【0051】
屈曲部430は、平板部410のうちx方向における中央となる部分を、下方側、すなわち-z方向側に向けて突出するよう屈曲させることにより形成された部分である。屈曲部430は、補強プレート400やチューブ130等の長手方向、すなわちy方向に沿って直線状に伸びるように形成されている。
【0052】
補強プレート300にも、屈曲部430と同様の屈曲部(不図示)が形成されている。このような屈曲部が形成されていることにより、補強プレート300、400の剛性が高められている。
【0053】
熱交換器10の製造時においては、各部のろう付けが行われる直前において、
図6に示されるように、熱交換器10に複数のワイヤーWRが巻き付けられた状態とされる。ワイヤーWRにより、ろう付け前における熱交換器10の形状が維持される。熱交換器10は、ワイヤーWRによって形状が維持された状態のまま炉に投入され、ろう材を含む全体が加熱される。これにより、熱交換器10の各部のろう付けが行われる。
【0054】
図6の状態において、熱交換器10はワイヤーWRにより比較的強く締め付けられる。このため、補強プレート300、400の剛性が充分でない場合には、ワイヤーWRからの締め付け力によって補強プレート300、400が変形し、これに応じてチューブ130やフィン140等も変形してしまうこととなる。このような変形を防止するために、本実施形態では、補強プレート300、400に屈曲部430を形成し、その剛性を高めることとしている。
【0055】
尚、ろう付けが完了した後においても、屈曲部430により、補強プレート300、400の剛性は高く維持される。これにより、熱交換器10の耐振性等が向上する。
【0056】
ところで、熱交換器10をx方向に通過する空気には水蒸気が含まれている。このため、当該空気がチューブ230の外側を通る際に冷却されると、空気に含まれる水蒸気が凝縮水となってチューブ230やフィン140の表面に付着する。また、凝縮水が霜となってチューブ230やフィン140の表面に付着することもある。
【0057】
上記のような凝縮水や、霜が融解して生じた水のことを、以下ではまとめて「凝縮水」と称する。凝縮水は、チューブ230やフィン140の表面に沿って、重力により下方側へと移動して行く。最終的には、下方側にある補強プレート400の上面に到達し、屈曲部430の内側へと流入することとなる。
【0058】
図4及び
図7に示されるように、屈曲部430には複数の排出穴440が形成されている。排出穴440は、補強プレート400を貫くように形成された貫通穴である。屈曲部430に上方側から流入した凝縮水は、いずれかの排出穴440を通って外部へと排出される。つまり、排出穴440は、上方側から到達した凝縮水を下方側に向けて排出するための穴である。排出穴440は、本実施形態のように複数形成されていてもよいのであるが、屈曲部430において一つのみ形成されていてもよい。屈曲部430や排出穴440が形成されている位置は、互いに隣り合うチューブ130とチューブ230との間の隙間GPの直下となる位置である。熱交換器10は、このような構成により、凝縮水の排出をスムーズに行うことが可能となっている。
【0059】
図8は、本実施形態に係る熱交換器10を、x方向側から見て模式的に描いたものである。同図においては、タンク210、220等の構成が簡略化されている。
図8に示されるように、本実施形態に係る熱交換器10には排水ガイド500が設けられている。排水ガイド500は、補強プレート400の下方側となる位置において、補強プレート400の下面に対し密着するように設けられている。排水ガイド500は、補強プレート400の各排出穴440から排出された凝縮水を受け入れて、これを車両内における所定位置に導いてから排出するため部材である。「所定位置」とは、車両のアンダーカバー600(
図11を参照)に形成された排水穴610の直上となる位置である。
【0060】
図9乃至
図12を参照しながら、排水ガイド500の構成について説明する。
図9は排水ガイド500の斜視図である。
図10は、排水ガイド500をz方向側から見て描いた図である。
図11は、
図10のXI-XI断面を示すであり、
図12は、
図10のXII-XII断面を示す図である。尚、
図11には、車両に設けられたアンダーカバー600の断面形状が参考のために描かれている。
【0061】
図9等に示されるように、排水ガイド500には、受入部510と案内部520とが設けられている。
【0062】
受入部510は、上方の各排出穴440から排出された凝縮水を受ける部分である。受入部510は、概ね直方体の箱状の容器として形成されており、その上方側部分が補強プレート400に向けて開放されている。z軸に沿って見た場合における受入部510の外形は、同方向に沿って見た場合における補強プレート400の外形と概ね同じである。
【0063】
受入部510は、底板511と、側板512、513と、を有している。底板511は、受入部510に形成された凝縮水の流路の底面を構成している。底板511は、各排出穴440から排出された凝縮水が、排水ガイド500において最初に到達する部分となっている。
【0064】
側板512は、底板511のうち-x方向側の端部から、上方に向かって伸びるように設けられた板状の壁である。側板513は、底板511のうちx方向側の端部から、上方に向かって伸びるように設けられた壁である。
図8に示されるように、側板512の上端面、及び側板513はの上端面は、いずれも、その全体が上方の補強プレート400の下面に密着した状態となっている。排水ガイド500は、例えば補強プレート400の一部を加締めることにより、補強プレート400に対して固定されている。
【0065】
底板511、側板512、側板513、及び補強プレート400によって囲まれた空間が、受入部510において凝縮水の流れる流路となっている。
【0066】
底板511は水平面に対して傾斜している。具体的には、
図12に示されるように、y軸に沿った中央部分に向かって下るように傾斜している。このため、補強プレート400から受入部510に到達した凝縮水は、底板511の上面を、重力により上記中央部分に向かって流れることとなる。
【0067】
案内部520は、受入部510からの凝縮水を受け入れて、先に述べた所定位置、すなわち、排水穴610の直上となる位置へと導く部分である。案内部520は概ね直方体の箱状の容器として形成されており、受入部510のうちy軸に沿った中央部分から、x方向側に向かって突出するように形成されている。
【0068】
案内部520は、底板521と、側板525、526と、天板523と、を有している。底板521は、案内部520に形成された凝縮水の流路の底面を構成しており、受入部510の底板511と接続されている。
【0069】
側板525は、底板521を、y軸に沿って両側から挟み込むように設けられた一対の板状の壁である。一方の側板525は、底板521のうちy方向側の端部から、上下方向に向かって伸びるように設けられている。他方の側板525は、底板521のうち-y方向側の端部から、上下方向に向かって伸びるように設けられている。それぞれの側板525のうち-x方向側の端部は、受入部510の側板513に繋がっている。
【0070】
側板526は、一方の側板525のx方向側の端部と、他方の側板525のx方向側の端部と、の間を繋ぐように設けられた板状の壁である。
図11に示されるように、側板526の下端部と、底板521のうちx方向側の端部と、の間は離間しており、両者の間に開口524が形成されている。開口524は、案内部520に形成された流路を通る凝縮水の出口となっている。開口524の直下となる位置には、先に述べた排水穴610が形成されている。
【0071】
天板523は、それぞれの側板525のz方向側の端部、及び、側板526のz方向側の端部を繋ぐように設けられた板状の壁である。底板521、側板525、526、及び天板523によって囲まれた空間が、案内部520において凝縮水の流れる流路となっている。
【0072】
底板521は水平面に対して傾斜している。具体的には、
図11に示されるように、x方向側の開口524に向かって下るように傾斜している。このため、受入部510から案内部520に到達した凝縮水は、底板521の上面を、重力により開口524に向かって流れることとなる。
【0073】
底板521は、その大部分が平坦な面となっているので、水平面に対する勾配の大きさは概ね一定となっている。ただし、底板521のうち下流側の端部近傍、即ち、開口524の近傍においては、当該端部に近づくほど流路の勾配が大きくなるように湾曲部522が形成されている。
【0074】
図10において符号「511A」が付されている部分は、底板511のうちy軸に沿った中央部分、具体的には、案内部520の底板521に繋がっている部分である。当該部分のことを、以下では「底板511A」とも称する。この底板511Aにおいては、底板511は、x方向側に向かって下るように傾斜している。
図11に示されるように、底板511Aは、底板521のうち湾曲部522を除く部分と同じ平面に沿うように形成されており、当該部分と滑らかに繋がっている。
【0075】
以上のような構成の排水ガイド500が設けられていることの効果について説明する。本実施形態においては、補強プレート400の各排出穴440から下方へと排出された凝縮水は、その全てが受入部510の底板511上に到達する。凝縮水は、底板511の勾配に沿って流れながら底板511Aの部分に到達し、底板511A及び底板521の勾配に沿って流れながら、すなわち、案内部520の流路によって案内されながら、開口524へと到達する。凝縮水は、開口524から下方に向かって排出された後、その直下にある排水穴610を通って車両の外へと排出される。
【0076】
仮に、熱交換器10に排水ガイド500が設けられていない場合には、補強プレート400の各排出穴440から下方へと排出された凝縮水は、車両のアンダーカバー600の上面に落下し、当該上面に沿って流れながら排水穴610へと向かうこととなる。従って、アンダーカバー600の上面には、一定量の凝縮水が滞留した状態となりやすくなる。
【0077】
しかしながら、例えば冬季においてアンダーカバー600の温度が低くなっているときには、アンダーカバー600上で滞留していた凝縮水の一部又は全部が凍結し、その後における凝縮水の排出を妨げてしまう可能性がある。その結果、アンダーカバー600では、凍結し氷となったものも含めて、多量の凝縮水が滞留してしまう可能性が高くなる。また、発生した氷の量によっては、熱交換器の変形が生じてしまう可能性がある。
【0078】
これに対し、本実施形態に係る熱交換器10では、上記のように排水ガイド500が設けられているので、補強プレート400の各排出穴440から下方へと排出された凝縮水の全てを、排水穴610の直上となる位置まで案内してから、排水穴610を直接通るように排出することが可能となる。この場合、凝縮水の大部分は、アンダーカバー600に触れることなく、排水穴610を直接通って車両の外へと排出されるので、アンダーカバー600上における凝縮水の滞留を確実に防止することができる。その結果、熱交換器10からの凝縮水の排出を適切に且つ十分に行うことが可能となる。また、氷の発生による熱交換器10の変形も防止することができる。
【0079】
本実施形態の排水ガイド500では、底板511のうち底板511Aを除く部分の勾配が、底板521のうち湾曲部522を除く部分の勾配よりも大きくなっている。つまり、受入部510に形成された凝縮水の流路の一部における勾配が、案内部520に形成された凝縮水の流路のうち、湾曲部522を除く部分の勾配よりも大きくなっている。
【0080】
このため、補強プレート400の各排出穴440から下方へと排出された凝縮水は、排水ガイド500の底板511に到達した後、大きな水滴に成長する前に、比較的大きな勾配に沿って流れ始めることとなる。これにより、排水ガイド500に滞留する凝縮水の量が低減されるので、排水ガイド500において凝縮水の凍結が生じたとしても、氷の発生量を少なく抑えることができる。
【0081】
尚、底板511の一部ではなく全体の勾配が、底板521のうち湾曲部522を除く部分の勾配よりも大きくなっている構成としてもよい。つまり、受入部510に形成された凝縮水の流路の勾配は、少なくとも一部において、案内部520に形成された凝縮水の流路のうち、湾曲部522を除く部分の勾配よりも大きくなっていればよい。
【0082】
図11を参照しながら説明したように、案内部520に形成された凝縮水の流路のうち下流側の端部近傍においては、当該端部に近づくほど流路の勾配が大きくなるように湾曲部522が形成されている。
【0083】
このような構成においては、流路の端部における排水が更に促進されるので、排水ガイド500に滞留する凝縮水の量を更に低減することができる。
【0084】
湾曲部522を通過する前の凝縮水は、x方向に向かう速度成分をもって流れている。仮に、湾曲部522が形成されていない場合には、凝縮水は、x方向に向かう速度成分をもったまま開口524から排出されるので、その直下にある610を通らず、その一部または全部がアンダーカバー600の上面に到達してしまう可能性がある。
【0085】
これに対し、本実施形態では湾曲部522が形成されているので、凝縮水は、湾曲部522に沿ってその流れ方向を下方側に向かうように変化させてから、開口524から排出される。凝縮水は、x方向に向かう速度成分をほとんど持たない状態で開口524から排出されるので、その直下にある610を直接通って外部へと排出されやすくなる。これにより、アンダーカバー600上で滞留する凝縮水の量を低減することができる。
【0086】
尚、底板521に湾曲部522が設けられていない場合には、受入部510に形成された凝縮水の流路の勾配を、少なくとも一部において、案内部520に形成された凝縮水の流路の勾配(つまり底板521の勾配)よりも大きくすればよい。
【0087】
ところで、排水ガイド500の熱容量が大きい場合には、例えば冬季において低温となった排水ガイド500が、凝縮水から大きな熱を奪いやすくなるので、排水ガイド500内の流路において凝縮水が凍結しやすくなってしまう。このような現象を防止するためには、排水ガイド500の全体を樹脂により形成し、その熱容量を小さくしておけばよい。このような樹脂としては、例えばポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0088】
本実施形態では、排水ガイド500の上面の全体を補強プレート400の下面に密着させた状態で、排水ガイド500が補強プレート400に対して固定されている。このため、排水ガイド500と補強プレート400との間は密閉されており、排水ガイド500における凝縮水の流路となっている空間は、それぞれの排出穴440と、案内部520の下流側端部の開口524と、においてのみ外部空間と連通された状態となっている。
【0089】
このような密閉構造としたことの利点について説明する。先に述べたように、熱交換器10には、車両に設けられた不図示のファンからx方向に向かって空気が供給されている。当該空気の一部は、排出穴440を通って受入部510の内部空間へと流入する。
図11では、このような空気の流れが矢印AR21で示されている。受入部510に流入した空気は、受入部510の内部空間を、中央の底板511A側に向かって流れる。
図10では、このような空気の流れが矢印AR22で示されている。
【0090】
底板511A側に向かって流れた空気は、案内部520の内部空間に流入した後、下流側の開口524に向かって流れる。
図11では、このような空気の流れが矢印AR23で示されている。当該空気は、最終的には開口524から下方に向けて噴き出される。
図11では、このような空気の流れが矢印AR24で示されている。
【0091】
このように、排水ガイド500の内部では、流路を凝縮水が流れる方向に沿って、空気の流れが生じることとなる。排水ガイド500の内側にある凝縮水が、空気から受ける動圧によって下流側に押し流されるので、排水ガイド500からの凝縮水の排出を更に促進することができる。
【0092】
尚、熱交換器を車両の内部において固定しておくためには、熱交換器の下部等と車両との間を繋ぐ固定具が用いられるのが一般的である。本実施形態に係る排水ガイド500は、従来の固定具の形状を変更することにより形成されている。換言すれば、排水ガイド500は、凝縮水を所定位置まで導いて排出する機能に加えて、車両において熱交換器10を固定しておくための固定具、としての機能をも有している。このため、排水ガイド500を熱交換器10に設けた構成であっても、従来に比べて部品点数は増加していない。
【0093】
第2実施形態について説明する。以下では、上記の第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0094】
図13には、本実施形態に係る熱交換器10の構成が模式的に示されている。本実施形態でも上記の第1実施形態と同様に、熱交換器10の下方側部分には排水ガイド500が設けられている。尚、
図13には、熱交換器10に冷却水を供給するための配管810と、熱交換器10から冷却水を排出するための配管820と、のそれぞれが図示されている。配管810は、不図示の発熱体と、
図1の受入部111、112との間を繋ぐ配管である。配管820は、上記発熱体と、
図1の排出部121、122との間を繋ぐ配管である。
【0095】
配管810の途中となる位置には、ヒーター730が設けられている。ヒーター730は、配管810を加熱することにより、その内部を流れる冷却水の温度を上昇させるための電気ヒーターである。ヒーター730によって配管810が加熱されると、熱交換器10に供給される冷却水の温度が上昇するので、チューブ130を流れる冷却水の温度も上昇する。
【0096】
排水ガイド500の内部には、温度センサ740が設けられている。温度センサ740は、排水ガイド500における凝縮水の温度、具体的には受入部510の内部にある凝縮水の温度を測定するための温度センサであって、例えばサーミスタである。
【0097】
本実施形態に係る熱交換器10には、温調装置710と、制御装置700と、が設けられている。温調装置710は、制御装置700からの制御信号に基づいて、ヒーター730の出力を調整するための装置である。尚、このような温調装置710は、制御装置700に内蔵されていてもよい。
【0098】
制御装置700は、温度センサ740で測定された凝縮水の温度に基づいて、温調装置710を介してヒーター730の動作を制御するための装置である。制御装置700は、温度センサ740で測定された凝縮水の温度が低くなるほど、ヒーター730の発熱量を増加させ、これにより冷却水の温度を高くする処理を行う。
【0099】
ヒーター730の発熱量が増加すると、チューブ130を流れる冷却水の温度が上昇する。それに伴って、排水ガイド500に到達する凝縮水の温度、すなわち、温度センサ740で測定される凝縮水の温度も高くなる。
【0100】
制御装置700は、温度センサ740で測定された凝縮水の温度が低くなるほど、ヒーター730の発熱量を増加させる処理を行う。これにより、制御装置700は、温度センサ740で測定された凝縮水の温度を所定の目標温度T1以上に維持する。つまり、制御装置700は、排水ガイド500における凝縮水の温度が所定の目標温度T1以上となるように、チューブ130を通る熱媒体の温度を調整する。
【0101】
尚、制御装置700は、本実施形態のように温度センサ740からの信号に基づいて凝縮水の温度を取得してもよいのであるが、例えば、車両の運転状態等に基づいた推測を行うこと等により、排水ガイド500における凝縮水の温度を取得することとしてもよい。
【0102】
図14に示されるグラフの横軸である「入口水温」とは、補強プレート400から排水ガイド500に到達した直後における凝縮水の温度、すなわち、温度センサ740で測定される凝縮水の温度のことである。上記グラフの縦軸である「出口水温」とは、排水ガイド500の開口524を通り排出される時点における冷却水の温度のことである。
図14に示されるように、入口水温が高くなるほど、出口水温も高くなる。
【0103】
上記の目標温度T1は、出口水温が0℃となるような入口温度の値として設定される。本実施形態では、制御装置700が上記の制御を行うことで、入口水温が目標温度T1以上の状態に保たれるので、出口水温は常に0℃以上に保たれることになる。このため、少なくとも排水ガイド500の内部においては、凝縮水の凍結が確実に防止されるので、凝縮水をスムーズに外部に排出することができる。
【0104】
図15に示されるグラフの横軸は、
図14に示されるグラフの横軸と同じ入口水温である。
図15に示されるグラフの縦軸である「残水量」とは、排水ガイド500の内部に滞留する凝縮水(氷となったものも含む)の量のことである。
【0105】
入口水温が目標温度T1を下回ると、出口水温が0℃を下回るため、排水ガイド500の内部に存在する凝縮水の一部が凍結し始める。このため、
図15に示されるように、入口水温が目標温度T1よりも引くなるほど、残水量は多くなってしまう。しかしながら、本実施形態では上記のように、制御装置700が行う制御によって、入口水温は目標温度T1以上に保たれる。これにより、残水量が増加してしまうことはなく、凝縮水はスムーズに外部へと排出される。
【0106】
尚、制御装置700は、上記のように、チューブ130を通る冷却水の温度を調整する処理を行うのであるが、チューブ230を通る冷媒の温度を調整するように構成されていてもよい。冷媒の温度は、本実施形態と同様にヒーターによる加熱で上昇させてもよいのであるが、例えば、冷媒を圧縮する圧縮機の動作出力を上げることによって上昇させてもよい。いずれの構成においても、制御装置700は、排水ガイド500における凝縮水の温度に基づいて、チューブを通る熱媒体の温度を調整する処理を行うこととなる。また、制御装置700は、排水ガイド500における凝縮水の温度が低くなるほど、チューブを通る熱媒体の温度が高くなるように調整し、入口水温を目標温度T1以上に維持する。これにより、排水ガイド500における凝縮水の凍結を確実に防止することができる。
【0107】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0108】
本実施形態に係る熱交換器10は、排水ガイド500の形状においてのみ第1実施形態と異なっている。
図16乃至
図20を参照しながら、本実施形態に係る排水ガイド500の構成について説明する。
図16は排水ガイド500の斜視図である。
図17は、排水ガイド500をz方向側から見て描いた図である。
図18は、
図17のXVIII-XVIII断面を示す図であり、
図19は、
図17のXIX-XIX断面を示す図である。
図20は、本実施形態に係る熱交換器10を、x方向側から見て模式的に描いた図である。
【0109】
図16や
図19に示されるように、本実施形態においては、受入部510に設けられた側板512、513のそれぞれの上端面が、y軸に沿った中央部分に向かって下るように傾斜している。このため、
図20に示されるように、本実施形態では、補強プレート400と排水ガイド500との間が密閉されておらず、y軸に沿った中央部分においては、補強プレート400と排水ガイド500との間に隙間SPが形成されている。
【0110】
図16や
図18に示されるように、本実施形態においては、案内部520に天板523及び側板526が設けられておらず、案内部520における凝縮水の流路が外部へと開放されている。また、底板521には湾曲部522が形成されておらず、底板521の全体が平坦な面に沿うように形成されている。図示は省略するが、本実施形態では、底板521の下方側であって、底板521の下流側端部よりも僅かにx方向側となる位置に、アンダーカバー600の排水穴610が形成されている。
【0111】
空気の流れによって凝縮水を押し流す効果の必要性が小さく、また、湾曲部522の形成により凝縮水の排出を促進する効果の必要性が小さい場合には、本実施形態のような構成としてもよい。本実施形態のように、補強プレート400と排水ガイド500との間が密閉されていない構成においても、第1実施形態と同様の湾曲部522を設けることとしてもよい。また、第2実施形態で説明した制御装置700を、本実施形態の構成に組み合わせてもよい。
【0112】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0113】
本開示に記載の制御装置及び制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置及び制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置及び制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0114】
10:熱交換器
130,230:チューブ
400:補強プレート
440:排出穴
500:排水ガイド
510:受入部
520:案内部