(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080570
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】ガス炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20220523BHJP
F23N 5/02 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
A47J27/00 103M
F23N5/02 330Z
A47J27/00 103H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191711
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】畑岡 完
【テーマコード(参考)】
3K005
4B055
【Fターム(参考)】
3K005AA04
3K005AB11
3K005AC05
3K005BA05
3K005DA08
3K005EA01
3K005EB02
4B055AA04
4B055BA02
4B055CA16
4B055CA64
4B055CC33
4B055CC38
4B055CD03
4B055CD55
(57)【要約】
【課題】安全装置の動作に異常が生じても、ガスバーナによる加熱を確実に停止可能なガス炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯釜の底部に当接させた中空の当接体を付勢バネで上方に付勢し、当接体の頂面あるいは頂面の裏面側には、所定のキュリー温度を超えると透磁率が低下する感熱材料で形成された感熱部を設けると共に、当接体の内部には、上下方向に移動可能に永久磁石を収容する。このため、感熱部のキュリー温度を適切な温度に設定しておけば、炊飯釜の炊飯が完了するまでの間は永久磁石が感熱部に磁着しているが、炊飯が完了して感熱部の温度が上昇すると、感熱部に磁着していた永久磁石が落下して安全装置を作動させて、ガスバーナの加熱を停止することができる。更に、炊飯釜の底部には、当接体が当接する当接位置を囲んだ状態で、底部の厚さが薄くなった薄肉部が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯釜と、該炊飯釜の底部を下方から加熱するガスバーナとを有するガス炊飯器において、
前記炊飯釜の底部に下方から当接する中空形状の当接体と、
前記当接体を前記炊飯釜の底部に向けて付勢する付勢バネと、
前記当接体の内部で上下方向に移動可能に設けられた永久磁石と、
前記当接体の頂面または該頂面の裏面側に設けられて、所定のキュリー温度を超えると透磁率が低下する感熱材料で形成された感熱部と
を備え、
前記炊飯釜の底部には、前記当接体が当接する当接位置を囲んだ状態で、前記底部の厚さが薄くなった薄肉部が形成されている
ことを特徴とするガス炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載のガス炊飯器において、
前記炊飯釜の底部の前記薄肉部は、前記炊飯釜の底部に下方から穿設された溝である
ことを特徴とするガス炊飯器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス炊飯器において、
前記ガスバーナは、円環形状に形成されており、
前記当接体は、前記ガスバーナの内径よりも内側の位置に立設されており、
前記炊飯釜の底部の前記薄肉部は、前記ガスバーナの外径よりは内側となる位置に形成されている
ことを特徴とするガス炊飯器。
【請求項4】
請求項3に記載のガス炊飯器において、
前記炊飯釜の底部の前記薄肉部は、前記ガスバーナの内径よりも内側となる位置に形成されている
ことを特徴とするガス炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯釜と、炊飯釜の底部を下方から加熱するガスバーナとを有するガス炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバーナで燃料ガスを燃焼させることによって炊飯するガス炊飯器が知られている。このガス炊飯器は、円環形状のガスバーナの上に炊飯釜を載置して、下方から炊飯釜を加熱することによって炊飯するようになっている。また、ガスバーナの中央には、安全装置の一部を形成する当接体が突設されている。この当接体は、頂面を有する円筒形状に形成されており、バネによって上方に付勢されている。そして、ガスバーナの上に炊飯釜を載置すると、当接体の頂面がバネの力によって炊飯釜の底面に当接するようになっている。
【0003】
また、当接体の頂面には、頂面の裏面側に接触させた状態で感熱フェライト製の感熱部が搭載されている。ここで、感熱フェライトは、常温では磁石が磁着する強磁性体であるが、キュリー温度と呼ばれる所定温度以上になると透磁率が急減して、磁石が磁着しない常磁性体に変化する性質を有している。また、当接体の内部には、上下方向に移動可能に永久磁石が搭載されている。
【0004】
ガス炊飯器の安全装置は次のように作動する。先ず、ユーザがガスバーナの上に炊飯釜を載置すると、バネによって上方に付勢されている当接体の頂面が、炊飯釜の底部に当接する。但し、この状態では、当接体の内部の永久磁石は、感熱部から離間した下方の位置にある。その状態から、ユーザが炊飯ボタンを押し下げると、ガス炊飯器に内蔵されたガス弁が開いてガスバーナで燃料ガスの燃焼が開始される。また、炊飯ボタンを押し下げる動きが安全レバーを介して当接体の内部の永久磁石に伝わって、当接体の内部で永久磁石を押し上げる結果、当接体の頂面の裏面側に搭載された感熱部に、永久磁石が磁着する。
【0005】
こうして炊飯が開始された後も、炊飯の継続中は炊飯釜の中の水分が沸騰するので釜底の温度が所定のキュリー温度を超えて上昇することはないが、炊飯が完了すると沸騰する水分が無くなるため釜底の温度が上昇して、キュリー温度を超えるようになる。すると、当接体の感熱部の透磁率が減少して、永久磁石が感熱部に磁着できなくなり、永久磁石の重量が安全レバーに掛かるようになる。その結果、永久磁石の重量によって安全レバーが押し下げられて、炊飯ボタンが炊飯前の位置に復帰し、この動きに伴ってガス弁が閉弁してガスバーナでの燃料ガスの燃焼が停止するようになっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来のガス炊飯器では、感熱部に磁着していた永久磁石が当接体の内部で引っ掛かるなどして安全装置の動作に異常が生じると、永久磁石の重量が安全レバーに加わらなくなるため、ガスバーナでの燃料ガスの燃焼を停止させることができなくなるという問題があった。
【0008】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するために成されたものであり、安全装置の動作に異常が生じた場合でも、ガスバーナでの燃料ガスの燃焼を停止させることが可能なガス炊飯器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明のガス炊飯器は次の構成を採用した。すなわち、
炊飯釜と、該炊飯釜の底部を下方から加熱するガスバーナとを有するガス炊飯器において、
前記炊飯釜の底部に下方から当接する中空形状の当接体と、
前記当接体を前記炊飯釜の底部に向けて付勢する付勢バネと、
前記当接体の内部で上下方向に移動可能に設けられた永久磁石と、
前記当接体の頂面または該頂面の裏面側に設けられて、所定のキュリー温度を超えると透磁率が低下する感熱材料で形成された感熱部と
を備え、
前記炊飯釜の底部には、前記当接体が当接する当接位置を囲んだ状態で、前記底部の厚さが薄くなった薄肉部が形成されている
ことを特徴とする。
【0010】
かかる本発明のガス炊飯器においては、炊飯釜の底部に下方から当接体が当接しており、当接体は付勢バネによって上方に付勢されている。当接体は中空形状となっており、当接体の頂面あるいは頂面の裏面側には、所定のキュリー温度を超えると透磁率が低下する感熱材料で形成された感熱部が設けられると共に、当接体の内部には、上下方向に移動可能に永久磁石が収容されている。このため、感熱部のキュリー温度を適切な温度に設定しておけば、炊飯釜の炊飯が完了するまでの間は永久磁石が感熱部に磁着しているが、炊飯が完了して感熱部の温度が上昇すると、感熱部に磁着していた永久磁石が落下して安全装置を動作させ、ガスバーナによる加熱を停止させることができる。ここで、本発明のガス炊飯器の炊飯釜の底部には、当接体が当接する当接位置を囲んだ状態で、底部の厚さが薄くなった薄肉部が形成されている。
【0011】
こうすれば、感熱部に磁着しなくなった永久磁石が当接体の内部で引っ掛かるなどして落下しなくなり、安全装置を動作させることができなくなった場合でも、以下のようにして安全装置を動作させて加熱を停止させることが可能となる。すなわち、炊飯完了後もガスバーナが炊飯釜の加熱を継続していると、炊飯釜の温度が上昇していく。また、炊飯釜の底部に下方から当接する当接体は付勢バネによって上方に付勢されているので、炊飯釜の底部は当接体の当接位置が押し上げられた状態となっている。そして、炊飯釜の底部には、当接位置を囲んだ状態で、底部の厚さが薄くなった薄肉部が形成されている。このため、炊飯釜の温度が上昇していくと、やがては薄肉部で炊飯釜の底部が破断して、底部の一部(薄肉部で囲まれていた部分)が当接体と一緒に、付勢バネの力で押し上げられる。その当接体の動きによって、当接体の内部での永久磁石の引っ掛かりが解消されて、永久磁石が落下する結果、安全装置を作動させてガスバーナによる加熱を停止させることが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明のガス炊飯器においては、炊飯釜の底部に下方から溝を穿設することによって、底部の薄肉部を形成してもよい。
【0013】
こうすれば、底部に溝を穿設することによって、簡単に薄肉部を形成することができる。また、底部の下方から溝を穿設しておけば、炊飯釜の内面側は平坦なままとしておくことができるので、炊飯したご飯が溝の中に入り込んで取りにくくなる事態も生じない。
【0014】
また、上述した本発明のガス炊飯器においては、炊飯釜の底部の薄肉部を、次のような位置に形成しても良い。先ず、ガスバーナを円環形状に形成し、ガスバーナの内径よりも内側の位置に当接体を立設させて、当接体の頂面を炊飯釜の底部に当接させる。そして、炊飯釜の底部の薄肉部は、ガスバーナの外径よりは内側となる位置に形成するようにしてもよい。
【0015】
炊飯釜には、底部の周縁から上方に向かって周壁が延設されていることが通常である。この炊飯釜の周壁は、炊飯完了後もガスバーナによる加熱が継続されて炊飯釜の底部の温度が高温になった状態では、底部の周縁から上方に延設された炊飯釜の周壁が放熱板の機能を果たすようになる。このため、炊飯釜の底部の中で周壁に近い部分は温度が上昇しにくくなる。従って、炊飯釜の底部の薄肉部を、ガスバーナの外径よりは内側となる位置に形成しておけば、周壁での放熱の影響が小さくなるため、薄肉部の温度を上昇させることができ、薄肉部で底部を確実に破断させることが可能となる。
【0016】
また、上述した本発明のガス炊飯器においては、炊飯釜の底部の薄肉部を、ガスバーナの内径よりも内側となる位置に形成するようにしてもよい。
【0017】
炊飯釜の底部の薄肉部は、当接体が当接する当接位置を取り囲んで形成されている。このため、薄肉部の全長が長くなると、当接部が底部を押し上げる力が分散されてしまい、底部の温度が上昇しても薄肉部で底部を破断させることが困難になる。このことから、炊飯釜の底部の薄肉部を、ガスバーナの内径よりも内側となる位置に形成しておけば、薄肉部の全長を抑制することができるので、薄肉部で底部を確実に破断させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施例のガス炊飯器1の大まかな構造を示す説明図である。
【
図2】本実施例のガス炊飯器1の詳細な内部構造を示す断面図である。
【
図3】ガス炊飯器1に搭載されている安全装置30の内部構造を示す断面図である。
【
図4】炊飯時の炊飯ボタン6および安全レバー36の位置を示す説明図である。
【
図5】炊飯時の安全装置30の内部の状態を示す断面図である。
【
図6】本実施例の炊飯釜10の下面の形状を示した斜視図である。
【
図7】本実施例のガス炊飯器1では安全装置30に異常が生じても燃料ガスの燃焼を確実に停止させることが可能な理由を示す説明図である。
【
図8】本実施例のガス炊飯器1では安全装置30に異常が生じても燃料ガスの燃焼を確実に停止させることが可能な理由を示す説明図である。
【
図9】変形例の炊飯釜10についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施例のガス炊飯器1の大まかな構造を示す説明図である。本実施例のガス炊飯器1は、円筒形状の下枠部2の上に、円筒形状の上枠部3が載置され、上枠部3の中に上方から炊飯釜10を収容する構造となっている。炊飯釜10は、軽量で熱伝導性の高い金属材料(例えばアルミニウム)を用いて鋳造あるいは鍛造によって形成されている。
【0020】
下枠部2は、板金をプレス加工することによって有底の円筒形状に形成された部材であり、下枠部2の内部にはガスバーナ20が収容されている。また、下枠部2の上面には円環形状の汁受皿4が嵌め込まれており、汁受皿4の中央の穴部4aからは、ガスバーナ20の上部のバーナヘッド21が突出した状態となっている。バーナヘッド21は円環形状の部材であり、外周側面には複数の炎口が形成されていると共に、中央の貫通孔21aからは、当接体31が突出している。後述するように、当接体31は、ガス炊飯器1に搭載された安全装置の一部を形成している。
【0021】
また、下枠部2の側面には、ガス接続部5や炊飯ボタン6が取り付けられている。ガス接続部5に図示しないガスホースを接続することで、ガスバーナ20に燃料ガスを供給することが可能となり、炊飯ボタン6を押し下げると、ガスバーナ20で燃料ガスの燃焼が開始されるようになっている。
【0022】
図2は、本実施例のガス炊飯器1の詳細な内部構造を示す断面図である。炊飯釜10は、円筒形状の周壁10aと、周壁10aの一端側を閉鎖する円板形状の底部10bとを備えており、周壁10aは上端部分が拡径することによってフランジ部10cが形成されている。また、底部10bの下面の外縁付近には複数本の脚部11が下方に向けて突設されており、底部10bの下面の中央には、円柱形状の凸部12が下方に向けて突設されている。更に、底部10bの下面には、凸部12を囲むようにして円形の溝部13が穿設されている。尚、溝部13が穿設されている箇所では底部10bの厚さが薄くなっていることから、本実施例の溝部13は本発明における「薄肉部」の一態様となっている。また、炊飯釜10を収容する上枠部3は、上端部分が内側に折り曲げられることによって円環形状の載置面3aが形成されている。炊飯釜10は、フランジ部10cを上枠部3の載置面3aに載置することによって、上枠部3内に収容される。
【0023】
下枠部2の内部には、ガスバーナ20の一部を形成するバーナボディ22や、ガスバーナ20に燃料ガスを供給するガス供給弁7や、後述する安全装置30などが収容されている。バーナボディ22は、板金部材を組み合わせて形成された円環形状の部材であり、中央には中央通路22aが上下方向に貫通して形成されている。更に、バーナボディ22は二重構造となっており、中央通路22aを形成する板金部材と、その外側の板金部材との間の空間には、中央通路22aを取り巻くように円環形状の混合室22bが形成されている。
【0024】
下枠部2の上端には円環形状の汁受皿4が載置されており、汁受皿4の中央に開口する穴部4aからは、バーナボディ22の上部が突出した状態となっている。そして、バーナボディ22の上部には、ガスバーナ20の一部を形成するバーナヘッド21が載置されている。バーナヘッド21は円環形状に形成されており、バーナヘッド21をバーナボディ22の上に載置すると、バーナヘッド21の中央に形成された貫通孔21aは、バーナボディ22の中央通路22aと連続した状態となる。更に、バーナヘッド21の外周側面には複数の炎口21bが開口しており、バーナボディ22の内部に形成された混合室22bは炎口21bを介して外部と連通した状態となる。尚、炊飯釜10の下面に形成された溝部13は、上枠部3に炊飯釜10を収容した時に、バーナヘッド21の貫通孔21aよりも内側となる位置に形成されている。この理由については後述する。
【0025】
また、ガス供給弁7は、図示しないガス配管によってガス接続部5(
図1参照)に接続されている。更にガス供給弁7は、図示しない噴射ノズルに接続されており、噴射ノズルからバーナボディ22の混合管(図示は省略)に向かって燃料ガスを噴射可能となっている。このため、ガス供給弁7を開弁させると、ガスホースから供給された燃料ガスが、ガス接続部5およびガス供給弁7を介して噴射ノズルから混合管に向かって噴射され、空気と一緒に燃料ガスが混合管に流入して、混合管の内部で空気と混合する。こうして混合管の内部で空気と混合した燃料ガスは、バーナボディ22の混合室22bに流入した後、炎口21bから流出する。こうして炎口21bから流出した燃料ガスに点火することによって、燃料ガスの燃焼を開始することが可能となる。
【0026】
ガス炊飯器1の安全装置30は、バーナボディ22の中央通路22a内に搭載されている。安全装置30は、中央通路22a内に搭載された当接体31と、当接体31を上方に向けて付勢する付勢バネ32と、付勢バネ32を下方から支えるバネ支持台33と、バネ支持台33が取り付けられる基台34とを備えている。当接体31は、上枠部3内に炊飯釜10を収容していない状態では、付勢バネ32によって上方に付勢されているが、上枠部3内に炊飯釜10を収容すると、
図2に示されるように、炊飯釜10の凸部12によって押し下げられた状態となる。
【0027】
また、後述するように当接体31は内部が空洞となっており、この内部の空間には、後述する永久磁石が上下方向に移動可能に収容されている。安全装置30は、永久磁石を上下方向に移動させるためのロッド35や、L字形状に形成されて先端にロッド35が取り付けられた安全レバー36も備えている。安全レバー36は、ロッド35が取り付けられている側と反対側が支持軸36aによって軸支されており、炊飯前の状態では、
図2に示したように、ロッド35が下がった状態となっているが、炊飯ボタン6を押し下げると、安全レバー36が支持軸36aを中心として回動することによって、ロッド35を上方に押し上げるようになっている。この点については後ほど詳しく説明する。
【0028】
図3は、安全装置30の内部構造を示す断面図である。尚、
図3では、安全装置30以外の部品については細い破線で表示されている。図示したように、安全装置30の当接体31は、有底の円筒形状となっており、上端には、円板形状の蓋部31aが取り付けられている。蓋部31aの外径は、当接体31の外径よりも大きく形成されており、付勢バネ32は、当接体31の外周側面から張り出した蓋部31aの下面に当接することで、当接体31を上方に付勢するようになっている。また、当接体31の内部には、蓋部31aの下面の中央の位置に、感熱フェライト製の感熱部31bが取り付けられている。更に、当接体31の内部で感熱部31bの両側の位置には、蓋部31aの下面から垂下させた状態で一対のガイド軸31cが取り付けられている。
【0029】
また、当接体31の内部には、ガイド軸31cに対して摺動可能に磁石ホルダ38が取り付けられており、磁石ホルダ38には永久磁石37が取り付けられている。
図3に示されるように磁石ホルダ38の両側にはフランジ部38aが突設されており、それぞれのフランジ部38aには図示しない貫通穴が形成されている。そして、それぞれのフランジ部38aの貫通穴には、ガイド軸31cが挿通されている。貫通穴の内径はガイド軸31cの軸径よりも大きく形成されているので、磁石ホルダ38および永久磁石37は、ガイド軸31cにガイドされながら、当接体31の内部で上下方向に移動することができる。更に、磁石ホルダ38はロッド35の先端に取り付けられており、ロッド35は安全レバー36の先端に取り付けられている。
【0030】
ユーザが炊飯を開始する前は、
図2に示したように、炊飯ボタン6が上がった位置にある。この状態では、安全レバー36は支持軸36aを中心として、ロッド35が下がる方向(図上では時計回り方向)に回動した状態となっている。そのため、
図3に示したように、当接体31の内部では、磁石ホルダ38および永久磁石37が下方向に移動した状態となっている。その後、ガス炊飯器1のユーザが炊飯を開始する際には、炊飯ボタン6を押し下げる。すると、その動きがガス供給弁7に伝わってガス供給弁7が開弁状態となり、燃料ガスがガスバーナ20に供給されて、炊飯が開始される。また、炊飯ボタン6が押し下げられると、その動きが安全レバー36に伝わって安全レバー36を回動させる。
【0031】
図4は、炊飯時に炊飯ボタン6が押し下げられたことによって、安全レバー36が回動した状態を示した説明図である。図示されるように、炊飯ボタン6が押し下げられることによって、安全レバー36が支持軸36aを中心に回動する結果、安全レバー36の先端に取り付けられたロッド35(
図3参照)が当接体31の内部に押し上げられる。尚、炊飯ボタン6が押し下げられたことによって、バーナヘッド21の炎口21bには燃料ガスの燃焼による炎が形成されている。
図4では、炎口21bに形成された炎が、一点鎖線によって表示されている。
【0032】
図5は、炊飯ボタン6が押し下げられた時(すなわち炊飯時)の安全装置30の内部の状態を示した断面図である。炊飯ボタン6が押し下げられると、図示されるように、安全レバー36によってロッド35が押し上げられるため、ロッド35の先端に取り付けられた磁石ホルダ38が、ガイド軸31cにガイドされながら当接体31の内部を上方に移動する。その結果、磁石ホルダ38に取り付けられている永久磁石37が、蓋部31aの下面に取り付けられた感熱部31bに接近して磁着する。
【0033】
ここで、感熱部31bは感熱フェライトで形成されている。周知のように感熱フェライトは、常温では磁石が磁着する強磁性体であるが、キュリー温度と呼ばれる所定温度以上になると透磁率が急減して、磁石が磁着しない常磁性体に変化する性質を有している。また、感熱部31bのキュリー温度は、水の沸点よりも高い温度に設定されている。このため、炊飯中で炊飯釜10の中の水分が沸騰している間は、感熱部31bの温度が沸点付近に保たれているので、永久磁石37が感熱部31bに磁着している。
【0034】
炊飯が完了して炊飯釜10の中に沸騰する水分がなくなると、感熱部31bの温度が沸点を超えて上昇し始め、やがては感熱部31bのキュリー温度を超えるので、永久磁石37が感熱部31bに磁着しなくなる。すると、永久磁石37および磁石ホルダ38の重みがロッド35および安全レバー36に掛かるようになり、ロッド35が下がる方向(
図4および
図5では時計回り方向)に安全レバー36が回動する。そして、このような安全レバー36の動きによって、炊飯ボタン6が元の位置まで押し上げられると共に、開弁していたガス供給弁7が閉弁して、ガスバーナ20への燃料ガスの供給が停止される結果、燃料ガスの燃焼が停止する。また、このような安全レバー36の動きに併せて、当接体31の内部では、磁石ホルダ38(および永久磁石37)ガイド軸31cにガイドされながら下方に移動して行き、
図3に示した炊飯開始前の状態に復帰する。
【0035】
しかし、磁石ホルダ38がガイド軸31cにガイドされて移動する途中で、磁石ホルダ38が当接体31の内部(例えば、当接体31の内側面やガイド軸31cなど)で引っ掛かるなどすると、安全レバー36および炊飯ボタン6が元の位置まで戻らなくなる。その結果、ガス供給弁7を閉弁させることができなくなり、ガスバーナ20での燃料ガスの燃焼を停止させることができなくなってしまう。そこで、本実施例のガス炊飯器1では、当接体31の内部で磁石ホルダ38が引っ掛かるなどした場合でも、ガスバーナ20での燃料ガスの燃焼を停止させることが可能となるように、炊飯釜10の底部10bの下面に溝部13が形成されている。
【0036】
図6は、炊飯釜10の底部10bの下面に形成された溝部13の形状を示した斜視図である。
図6では、炊飯釜10が逆さまにした状態で表示されている。図示されるように、炊飯釜10の底部10bの中央には、円柱形状の凸部12が突設されている。そして、凸部12の周囲には、凸部12を取り囲む形状(
図6では円形)の溝部13が穿設されている。このように凸部12の周囲に溝部13を形成しておけば、たとえ当接体31の内部で磁石ホルダ38が引っ掛かるなどした場合でも、以下のようにして、ガスバーナ20での燃料ガスの燃焼を停止させることが可能となる。
【0037】
図7は、当接体31の内部で磁石ホルダ38が引っ掛かるなどした場合でも、ガスバーナ20での燃料ガスの燃焼を停止させることが可能な理由を示す説明図である。
図7では、当接体31の内部で磁石ホルダ38が引っ掛かったため、安全レバー36の回動が途中で止まった状態を表している。安全レバー36および炊飯ボタン6が元の位置まで戻っていないので、ガス供給弁7を閉弁させることができず、ガスバーナ20では燃料ガスの燃焼が継続されたままとなっている。このため炊飯釜10の底部10bの温度は次第に上昇していく。そして、
図6に示したように、炊飯釜10の底部10bには凸部12の周囲に溝部13が穿設されているため、溝部13の部分で底部10bが薄くなっており、加えて凸部12が付勢バネ32の力で押し上げられている。このため、底部10bの温度が上昇していくと、やがては溝部13の部分で底部10bが破断して、凸部12が付勢バネ32の力で上方に移動する。
図7には、凸部12が付勢バネ32によって上方に移動した状態が示されている。
【0038】
また、このように、炊飯釜10の底部10bを溝部13の部分で破断させるためには、底部10bに溝部13を形成する位置は、バーナヘッド21の外径よりは内側の位置であることが望ましい。より望ましくは、本実施例の炊飯釜10のように(
図2を参照)、バーナヘッド21の内径よりも内側(すなわち、貫通孔21aの内側)の位置に、溝部13を形成することが望ましい。この理由は次のようなものである。
【0039】
図7には、燃料ガスの燃焼による炎が一点鎖線で表示されている。図示されるように、炎が炊飯釜10の底部10bを炙る位置は、バーナヘッド21の外径よりも外側の位置となる。従って、一見した限りでは、炎で炙られる位置が底部10bの温度が最も高くなるので、この位置(すなわち、バーナヘッド21の外径よりも外側の位置)が、溝部13を形成する位置として最適であるように思われる。しかし、炊飯釜10の外周には周壁10aが存在しており、底部10bが溝部13の部分で破断するほどに高温となっている状況では、周壁10aは強力な放熱板として機能する。このため、周壁10aによる放熱の影響を考慮すると、溝部13を形成する位置は、バーナヘッド21の外径よりも外側よりも、バーナヘッド21の外径よりも内側の方が望ましい。
【0040】
加えて、底部10bが溝部13の部分で破断するほどに高温となっている状況では、通常の状態(すなわち、炊飯中の状態)と比べると、炎の位置が、バーナヘッド21の内径側に向かって広がるようになる。この理由は、底部10bが高温になると燃料ガスの燃焼速度が高くなるため、炎が二次空気の流れを遡るようになるためである。その結果、炎がバーナヘッド21の外径よりも内側に入り込むため、バーナヘッド21の外径よりも内側に溝部13を形成しておいても、溝部13の温度が十分に高くなり、溝部13で底部10bを破断させることが可能となる。
【0041】
また、底部10bの溝部13を破断させる力は、付勢バネ32が凸部12を押し上げる力であり、付勢バネ32の力はそれほど大きな力ではない。従って、溝部13の周長が長くなると付勢バネ32の力が分散されてしまうため、溝部13の部分で底部10bを破断させることが困難になる。このため、底部10bに形成する溝部13の位置は、凸部12よりは外側であるが、バーナヘッド21の内径よりも内側の位置(すなわち、貫通孔21aの内側)としておけば、更に望ましい。
【0042】
以上のようにして、底部10bが溝部13の部分で破断すると、付勢バネ32の力で凸部12が上方に移動する。それに伴って、凸部12によって押し下げられていた当接体31も上方に移動する(
図7参照)。すると、当接体31の内部での磁石ホルダ38の引っ掛かりが解消されて、磁石ホルダ38(
図5参照)が落下できるようになる。その結果、
図8に示したように、ロッド35に押し下げられて安全レバー36が炊飯前の状態に復帰し、それに伴って炊飯ボタン6も炊飯前の位置に戻ると共にガス供給弁7が閉弁して、燃料ガスの燃焼を停止することが可能となる。このように、本実施例のガス炊飯器1では、炊飯完了後に当接体31の内部で磁石ホルダ38が引っ掛かるなどした場合でも、炊飯釜10の底部10bを溝部13の位置で破断させて当接体31を上方に移動させることによって、引っ掛かりを解消することができる。その結果、安全レバー36を元の位置まで戻すことが可能となり、燃料ガスの燃焼を確実に停止させることが可能となる。また、溝部13は底部10bの下面に穿設されているので、底部10bの上面側は平坦となっている。このため、炊飯したご飯が溝部13に入り込んでしまう事態が生じることもない。
【0043】
尚、上述した本実施例のガス炊飯器1では、炊飯釜10の底部10bに溝部13が形成されているものとして説明した。しかし、底部10bの厚さが薄くなった部分が、凸部12を取り囲んだ状態で形成されていれば十分であり、必ずしも溝部13を形成する必要はない。例えば、
図9に例示したように、底部10bの厚さが薄くなった薄肉部14を、凸部12の周囲に形成するようにしても良い。このようにしても、底部10bの温度が異常に上昇した場合には、薄肉部14の部分で底部10bが破断して凸部12が上に押し上げられるので、上述した本実施例と同様に、燃料ガスの燃焼を確実に停止させることが可能となる。
【0044】
以上、本実施例および変形例のガス炊飯器1について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0045】
例えば、上述した実施例および変形例では、当接体31の蓋部31aの下面に、感熱フェライト製の感熱部31bが取り付けられているものとして説明したが、蓋部31aを感熱フェライトによって形成してもよい。この場合は、蓋部31aが感熱部31bを兼ねることになる。
【符号の説明】
【0046】
1…ガス炊飯器、 2…下枠部、 3…上枠部、 3a…載置面、
4…汁受皿、 4a…穴部、 5…ガス接続部、 6…炊飯ボタン、
7…ガス供給弁、 10…炊飯釜、 10a…周壁、 10b…底部、
10c…フランジ部、 11…脚部、 12…凸部、 13…溝部、
14…薄肉部、 20…ガスバーナ、 21…バーナヘッド、
21a…貫通孔、 21b…炎口、 22…バーナボディ、
22a…中央通路、 22b…混合室、 30…安全装置、
31…当接体、 31a…蓋部、 31b…感熱部、
31c…ガイド軸、 32…付勢バネ、 33…バネ支持台、
34…基台、 35…ロッド、 36…安全レバー、
36a…支持軸、 37…永久磁石、 38…磁石ホルダ、
38a…フランジ部。