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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080587
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】吸着パッド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
B25J15/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191732
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】315008902
【氏名又は名称】有限会社サワ
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】澤村 捷郎
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS06
3C707DS01
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT04
3C707MT10
3C707NS24
(57)【要約】
【課題】ねじ保持機が様々な頭部形状を持つねじ部材を吸着することを可能とする吸着パッドを提供する。
【解決手段】弾性素材からなり、真空吸引源に連通するねじ保持機20に取り付けられる取付部2と、取付部2と一体に設けられ、ねじ部材Sを真空吸着する吸着部3と、を備えた中空筒状の吸着パッド1であり、吸着部3の開口先端5に縁部6を備え、吸着部3の内周面にねじ部材Sを係止する1つ以上の係止構造4を備え、ねじ保持機20に取り付けられた際に、縁部6によって形成される仮想面6sと、係止構造4によって形成される係止面4sとが、ねじ保持機20に挿通されるドライバビット30の回転軸30aに対して垂直である、吸着パッド1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性素材からなり、
真空吸引源に連通するねじ保持機に取り付けられる取付部と、
前記取付部と一体に設けられ、ねじ部材を真空吸着する吸着部と、
を備えた中空筒状の吸着パッドであり、
前記吸着部の開口先端に縁部を備え、
前記吸着部の内周面にねじ部材を係止する1つ以上の係止構造を備え、
前記ねじ保持機に取り付けられた際に、前記縁部によって形成される仮想面と、前記係止構造によって形成される係止面とが、前記ねじ保持機に挿通されるドライバビットの回転軸に対して垂直である、吸着パッド。
【請求項2】
前記係止構造が、リング状に形成される、請求項1に記載の吸着パッド。
【請求項3】
前記取付部の内周面が、前記吸着部側に向かって拡径するテーパー形状を有する、請求項1又は2に記載の吸着パッド。
【請求項4】
前記取付部の端面、前記仮想面及び前記係止面が平行である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸着パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ部材を真空吸着して保持するねじ保持機の先端に装着する吸着パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の組み立てを行う自動組み立てラインにおいて、多数の同一構造のワーク部材にねじ部材を締め付けるために、ねじ締付装置が用いられる。ねじ締付装置は、通常、電動ドライバと、電動ドライバに連結されるドライバビットと、ドライバビットの先端部に取り付けられるねじ保持機とを備え、ロボットアームの先端部に取付ステーを介して設置される。
【0003】
このようなねじ締付装置では、例えば特許文献1に示したように、ねじ保持機によってねじ部材の頭部を真空吸引した状態で、ねじ部材を被締結物(ワーク部材)のねじ穴の真上に移動させ、ねじ部材をねじ穴と噛み合う程度の直上に配置し、ドライバビットを下降させながらねじ締付軸回り方向に回転させることによって、ねじ部材を締め付ける。ここで、ねじ保持機は、接続された真空ポンプにより内部圧力を低下させることにより、ねじ部材の頭部を真空吸着し保持する機能を有する。
【0004】
ねじ保持機の一端には、ねじ部材の頭部との密着性を高め、真空吸着による保持力を向上するために吸着パッドが備えられている。吸着パッドには、ねじ保持機の保持力をさらに高めるために、ねじ部材頭部への密着性が高い樹脂素材やゴム素材が用いられている。保持力が高められることにより、ねじ保持機がロボットアームに装着された際に、振り回しによる遠心力でねじ部材がねじ保持機から外れることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-111793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ねじ部材の頭部の形状や大きさは種類によって様々であり、密着性が高い素材を使用した場合であっても、ねじ部材の種類によっては吸着パッドをねじ部材の頭部へ密着させることができず、ねじ部材を真空吸着し保持することが困難であるという問題がある。この問題に対しては、吸着するねじ部材の頭部の形状や大きさごとに適した吸着パッドを用意し、ねじ部材の種類が変わるたびに吸着パッドを取り換えることにより対応していた。しかしながら、吸着パッドを取り換える作業は非常に煩わしく、さらに作業毎に自動組み立てラインを停止する必要があり、生産性の低下につながっていた。
【0007】
本発明は、上述のような問題を解決するために、ねじ保持機が様々な形状や大きさのねじ部材の頭部を吸着することを可能とする吸着パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、弾性素材からなり、真空吸引源に連通するねじ保持機に取り付けられる取付部と、前記取付部と一体に設けられ、ねじ部材を真空吸着する吸着部と、を備えた中空筒状の吸着パッドであり、前記吸着部の開口先端に縁部を備え、前記吸着部の内周面にねじ部材を係止する1つ以上の係止構造を備え、前記ねじ保持機に取り付けられた際に、前記縁部によって形成される仮想面と、前記係止構造によって形成される係止面とが、前記ねじ保持機に挿通されるドライバビットの回転軸に対して垂直である、吸着パッドを提供する(発明1)。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、吸着部の開口先端に設けられた縁部にてねじ部材の頭部を係止することに加えて、吸着部の内周面に備えられた係止構造によってもねじ部材の頭部を係止することが可能となるために、様々な形状や大きさのねじ部材の頭部を係止することができる。これにより、本発明の吸着パッドを取り付けたねじ保持機は様々な形状や大きさのねじ部材の頭部を吸着することが可能となり、作業中にねじ部材の形状や大きさに応じて吸着パッドを取り換える必要がなくなる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記係止構造が、リング状に形成されていてもよい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1~2)においては、前記取付部の内周面が、前記吸着部側に向かって拡径するテーパー形状を有していてもよい(発明3)。
【0012】
前述のように、多くの吸着パッドには、ねじ保持機のねじ保持力を向上させるため、頭部への密着性が高い樹脂素材やゴム素材といった素材が用いられている。このような素材から成る吸着パッドは使用により摩耗したり劣化したりするため、定期的に取り換える必要があるが、取り換え可能な吸着パッドには、ねじ保持機への装着が不十分であったり、使用中にねじ保持機から外れたりするという問題が生じるおそれがある。このような問題は、吸着パッドの取付部の形状を、ねじ保持機の被取付部の形状に合わせたものとすることで防ぐことができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る吸着パッドでは、ねじ保持機の被取付部を被取付部の先端方向に向かって拡径するテーパー形状とした場合に、取付部の内周面の形状を当該被取付部の形状に対応した形状となるように、吸着部側に向かって拡径するテーパー形状とする。これにより吸着パッドの取付部をねじ保持機の被取付部へ十分に装着することができ、さらに使用中も吸着パッドがねじ保持機から特に外れにくいものとすることができる。
【0013】
上記発明(発明1~3)においては、前記取付部の端面、前記仮想面及び前記係止面が平行であってもよい(発明4)。
【0014】
上述のような取り外し可能な吸着パッドは、吸着パッドを取り換えると、吸着パッドの取り付け具合や吸着パッドの個体差によって、吸着されるねじ部材の角度が変わってしまうという問題が生じるおそれがある。本発明に係る吸着パッドは、ねじ保持機に装着された際に、ねじ部材を係止する仮想面及び係止面が、ねじ保持機に挿通されるドライバビットの回転軸に対して垂直であるように設計されているため、このような問題は起こりにくいが、発明4のように仮想面及び係止面と、取付部の端面とが平行になるように構成することにより、当該回転軸と垂直であることが十分に担保され、上述の問題をより効果的に防ぐことができる。具体的には、ねじ保持機に挿通されるドライバビットの回転軸に対して垂直な面形状を設け、当該面形状に取付部の端面が当接するように吸着パッドをねじ保持機の被取付部に取り付けることで、取付部の端面が当該軸に対して垂直となり、端面と平行な仮想面及び係止面も軸に対してより確実に垂直となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吸着パッドによれば、吸着部の開口先端に設けられた縁部にてねじ部材の頭部を係止することに加えて、吸着部の内周面に備えられた係止構造によってもねじ部材の頭部を係止することが可能となり、様々な形状や大きさのねじ部材の頭部を係止することができるため、ねじ保持機が様々な種類のねじ部材を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る吸着パッドの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る吸着パッドの断面図と吸着部の開口先端側から見た図の対応関係を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る吸着パッドにねじ部材が係止された状態を示す断面図である。
図4】吸着パッドにおける仮想面及び係止面を説明するための断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る係止構造を2つ備えた吸着パッドの断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る係止構造を2つ備えた吸着パッドにねじ部材が係止された状態を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る吸着パッドがねじ保持機の被取付部に取り付けられた状態を示す断面図、及びねじ保持機の被取付部の断面図と先端側から示す図の対応関係を示した図である。
図8】本発明の一実施形態に係る吸着パッドの使用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る吸着パッドについて、適宜図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる吸着パッドの断面図を示す。図2は、本発明の一実施形態に係る吸着パッドの断面図と吸着部の開口先端側から見た図の対応関係を示す図である。図3は、本発明の一実施形態に係る吸着パッドにねじ部材が係止された状態を示す断面図である。図4は、吸着パッドにおける仮想面と係止面を説明するための断面図である。図5は、本発明の一実施形態に係る係止構造を2つ備えた吸着パッドの断面図を示し、図6は、当該係止構造を2つ備えた吸着パッドにねじ部材が係止された状態を示す断面図である。また、図7は、本発明の一実施形態に係る吸着パッドがねじ保持機の被取付部に取り付けられた状態を示す断面図、及びねじ保持機の被取付部の断面図と先端側から示す図の対応関係を示した図である。図8は本発明の一実施形態に係る吸着パッドの使用例を説明するための図である。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
【0018】
吸着パッド1は、図1(a)及び(b)に示されるように、中空筒状の形状を有しており、真空吸引源に連通するねじ保持機20に取り付けられる取付部2と、取付部2と一体に設けられ、ねじ部材Sを真空吸着する吸着部3とを備える。また、吸着部3は開口先端5に縁部6を備え、吸着部3の内周面には、ねじ部材Sを係止する1つ以上の係止構造4が備えられている。
【0019】
(吸着部)
ねじ部材Sを真空吸着する吸着部3は、図1(a)及び(b)に示すように、開口先端5に縁部6を備え、内周面には、ねじ部材Sを係止する1つ以上の係止構造4が備えられている。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る吸着パッド1の断面図(左図)と、吸着部3の開口先端5側から見た図(右図)との対応関係を示す。図2に示した通り、係止構造4は、吸着部3の内周面に沿って連続して形成され、吸着部3の開口先端5方向から見て吸着部3の開口面積を縮小するように、内周面の中心方向に向かって形成された段形状の構造物である。係止構造4は、開口先端5方向を向いた面(図2中の4´)にて、ねじ部材Sを係止する。
【0021】
係止構造4は、図2に示したように、吸着部3の開口先端5方向から見て吸着部3の内周面にリング状に形成されている。多くのねじ部材Sの頭部は円状や球状の形状を有していることから、係止構造4がリング状に形成されることにより、頭部への密着性をより高めることができ、ねじ保持機20におけるねじ部材Sの保持力をさらに高めることができる。
【0022】
図3は、吸着部3にねじ部材Sが真空吸着された状態の吸着パッド1の断面図である(ねじ保持機20は図示せず)。図3(a)には、ねじ部材Sの頭部が、吸着部3の開口先端5の開口面積よりも大きい場合の例を示す。この場合、吸着部3の開口先端5の縁部6にねじ部材Sの頭部が係止されることで、縁部6とねじ部材Sが密着する。縁部6と密着したねじ部材Sの頭部は、ねじ保持機20に接続された真空吸引源(真空ポンプとも言う)がねじ保持機20及び吸着パッド1の内部圧力を低下させることで、吸着パッド1へ真空吸着される。
【0023】
図3(b)及び(c)には、ねじ部材Sの頭部が吸着部3の開口先端5の開口面積よりも小さい場合の例を示す。図3(b)及び(c)に示すように、吸着部3の内周面に設けられた係止構造4にねじ部材Sの頭部が係止されることで、係止構造4とねじ部材Sが密着する。係止構造4に密着したねじ部材Sの頭部は、上述の縁部6の場合と同様に、ねじ保持機20に接続された真空吸引源がねじ保持機20及び吸着パッド1の内部圧力を低下させることで、吸着パッド1へ真空吸着される。図3(b)は、丸みを帯びた頭部形状を持つねじ部材Sを吸着した場合(例えばナベ、トラス、丸など)、図3(c)は、平らな頭部形状を持つねじ部材S(例えば、サラ、平、低頭など)を吸着した場合を示す。
【0024】
吸着パッド1が上述の係止構造4を有することにより、吸着部3の開口先端5に設けられた縁部6にてねじ部材Sの頭部を係止することに加えて、係止構造4によってもねじ部材Sの頭部を係止することが可能となり、様々な形状や大きさのねじ部材Sの頭部を係止することができる。これにより、本発明の吸着パッド1を取り付けたねじ保持機20が保持可能なねじ部材Sの種類が増え、ねじ部材Sの形状や大きさに応じて吸着パッド1を取り換える必要がなくなる。
【0025】
また、図4には、縁部6によって形成される仮想的な面である仮想面6s及び係止構造4によって形成される仮想的な面である係止面4sを示す。本発明の吸着パッド1は、ねじ保持機20に取り付けられた際に、仮想面6sと、係止面4sとが、ねじ保持機20に挿通されるドライバビット30の回転軸30aに対して垂直となる。仮想面6sと係止面4sとがドライバビット30の回転軸30aに対して垂直であることにより、縁部6によって吸着された場合であっても、係止構造4によって吸着された場合であっても、吸着されたねじ部材Sの角度が変わらず、ねじ保持機20によって適切な姿勢でねじ部材Sを吸着することができる。なお、図1~7に示すように、吸着パッド1は、ドライバビット30の回転軸30aが吸着パッド1の中心軸となるように設計されている。
【0026】
図1には、ねじ部材Sを係止する係止構造4を1つ備えた吸着パッド1を示したが、係止構造4の数は1つ以上であれば特に制限されず、例えば、2つでもよいし、3つ、4つ、又は5つ備えていてもよい。図5には、本発明の一実施形態である係止構造4を2つ備えた吸着パッド1aの断面図を示す。吸着パッド1aは、第1の係止構造4aと、第1の係止構造4aよりも取付部2側に位置する第2の係止構造4bとを有している。
【0027】
また、係止構造4が複数存在する場合は、係止構造4によって形成される開口部分の面積が、取付部2側の係止構造4ほど縮小する。具体的には、図5に示すように、第1の係止構造4aにより形成される開口部分の面積よりも、取付部2側にある第2の係止構造4bによって形成される開口部分の面積のほうが小さくなる。
【0028】
図6には、係止構造4を2つ備えた吸着パッド1aにねじ部材Sが真空吸着された状態を示す断面図である。係止構造4を2つ備えた吸着パッド1aでは、縁部6でねじ部材Sを係止すること(図示なし)に加え、2つの係止構造(図中4a及び4b)により、形状や大きさの異なるねじ部材Sの頭部を係止することが可能となる。例えば、図6(a)に示すように、頭部が比較的大きなねじ部材Sは、開口先端5側の第1の係止構造4aに係止される。また、例えば、頭部が比較的小さなねじ部材Sは、図6(b)に示すように、第1の係止構造4aよりも取付部2側に位置する第2の係止構造4bに係止される。係止構造4が複数形成されていることにより、より多様な形状のねじ部材Sを係止することが可能となる。なお、図6(a)には頭部の形状がサラであるねじ部材Sが、図6(b)には頭部の形状がナベであるねじ部材Sが、それぞれ係止されている状態を示したが、係止することが可能なねじ頭部の形状はこれらに制限されるものではない。
【0029】
(取付部)
本発明の一実施形態に係る吸着パッド1は、前述の吸着部3と一体に設けられる取付部2を有する。取付部2は、吸着パッド1において、真空吸引源に連通するねじ保持機20に取り付けられる部分である。
【0030】
ねじ保持機20に吸着パッド1を取り付ける方法は、特に制限されないが、該取付部2にねじ保持機20の一部(被取付部20a)を内挿する方法が挙げられる。当該方法で吸着パッド1が取り付けられる場合、取付部2の内周面は、ねじ保持機20の被取付部20aの形状に対応した形状をとることにより、ねじ保持機20へ十分に密着することができ、さらにねじ保持機20を使用中に吸着パッド1が外れることを防ぐことができる。
【0031】
例えば、図7に示すように、ねじ保持機20の被取付部20aが、その先端方向に向かって拡径するテーパー形状を有する場合、取付部2の内周面が吸着部3側に向かって拡径するテーパー形状を有することで、吸着パッド1をねじ保持機20へより十分に密着することができ、さらにねじ保持機20を使用中に吸着パッド1がねじ保持機20から外れることを特に防ぐことができる。
【0032】
また、ねじ保持機20の被取付部20a及び吸着パッド1の取付部2が上述のテーパー形状を有すると、吸着パッド1をねじ保持機20に取り付ける際、すなわち取付部2に被取付部20aを挿通する際に、弾性素材から成る吸着パッド1の弾性力により、取付部2が被取付部20aのテーパー形状が縮径する方向へ被取付部20aの外面に沿って滑るため、取付部2に被取付部20aを挿通しやすくなり、結果として吸着パッド1をねじ保持機20へ取り付けやすくなる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る吸着パッド1の取付部2の端面2a(図1又は図4参照)は、仮想面6s及び係止面4sと平行であることが好ましい。ねじ保持機20には、図7(b)に示すように、ねじ保持機20に挿通されるドライバビット30の回転軸30aに対して垂直な面形状20bが設けられており、図7(a)に示すように、当該面に取付部2の端面2aが当接するように吸着パッド1をねじ保持機20の被取付部20aに取り付けることで、取付部2の端面2aが当該軸に対して確実に垂直となるため、取付部2の端面2aと平行な仮想面6sと係止面4sが軸に対して垂直であることを、十分に担保することができる。また、これにより、取り換え可能な吸着パッド1において、その取り付け具合や個体差によって、吸着されるねじ部材Sの角度が変わってしまうという問題を解消することができ、ドライバビット30の回転軸30aに対してねじ部材Sの回転軸がずれることを防ぐことができる。
【0034】
また、ねじ保持機20の被取付部20a及び吸着パッド1の取付部2が上述のテーパー形状を有する場合に、吸着パッド1をねじ保持機20へ取り付けやすくなるのと同様の原理で、取付部2の端面2aをねじ保持機20の面形状20bへ容易に、且つ確実に当接させることが可能となる。この結果、取付部2の端面2aが回転軸30aに対してより確実に垂直とすることができ、さらに端面2aと平行な仮想面6sと係止面4sが軸に対して垂直であることをより十分に担保することができる。
【0035】
(弾性素材)
本発明の一実施形態に係る吸着パッド1は、弾性素材からなる。本明細書において、弾性素材とは伸縮性や弾性力を有する素材を指す。弾性素材には、例えば、合成ゴム、樹脂が含まれ、合成ゴムには、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムであり、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが含まれる。吸着パッド1に弾性素材を用いることにより、頭部への密着性を高めることができる。
【0036】
(ねじ部材)
本発明の一実施形態に係る吸着パッド1は、ねじ保持機20が様々な頭部の形状や大きさ持ったねじ部材Sを吸着し、保持することを可能等する。吸着し、保持することが可能なねじ部材Sの頭部の形状や大きさは、特に制限されないが、形状は、例えば、ナベ、サラ、トラス、バインド、ブレジャー、丸、丸サラ、丸平、六角、平、薄平、低頭、小頭、キャップ等が挙げられる。
【0037】
(ねじ保持機およびねじ締付装置)
以下、図7及び図8を用いて、吸着パッド1が取り付けられたねじ保持機20がねじ部材Sを保持し、保持されたねじ部材Sがワーク部材Wに締め付けられる過程を説明する。
【0038】
吸着パッド1は、図7及び図8に示したように、ねじ保持機20の被取付部20aを内挿することでねじ保持機20に取り付けられる。ねじ保持機20は真空ポンプ(不図示)にチューブ(不図示)を介して接続されており、真空ポンプでねじ保持機20の内部、吸着パッド1の中空筒内部7及びねじ保持機20のねじ保持機筒内部8の空気を排出する。空気を排出することで、ねじ保持機20及び吸着パッド1の内部圧力を低下し、ねじ部材Sが吸着パッド1へ保持される。
【0039】
また、ねじ保持機20は、円筒形状を有しており、ドライバビット30が挿通されている。当該ドライバビット30は、回転駆動させる電動ドライバ40と連結しており、ねじ保持機20に保持されているねじ部材Sを回転させることができる。
【0040】
これらのねじ保持機20、ドライバビット30、電動ドライバ40はねじ締付装置50を構成する。ねじ締付装置50は取付ステー60を介してロボットアーム70の先端部に設置されている。ロボットアーム70によってワーク部材Wに設けられたねじ穴の真上に、吸着パッド1を介してねじ保持機20に保持されたねじ部材Sが移動され、ドライバビット30を下降させながらねじ締付軸回り方向に回転させることによって、ねじ部材Sをワーク部材Wに締め付ける。
【0041】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記各実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0042】
1 吸着パッド
2 取付部
2a 取付部の端面
3 吸着部
4 係止構造
4a 第1の係止構造
4b 第2の係止構造
4s 係止面
5 開口先端
6 縁部
6s 仮想面
7 中空筒内部
8 ねじ保持機筒内部
20 ねじ保持機
20a ねじ保持機の被取付部
20b ドライバビットの回転軸に対して垂直な面形状
30 ドライバビット
30a ドライバビット30の回転軸(吸着パッドの中心軸)
40 電動ドライバ
50 ねじ締付装置
60 取付ステー
70 ロボットアーム
S ねじ部材
W ワーク部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8