(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080596
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20220523BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220523BHJP
B41J 13/02 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
B65H5/06 Z
B41J2/01 305
B41J13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191747
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
【テーマコード(参考)】
2C056
2C059
3F049
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056FA10
2C056HA29
2C059BB11
2C059BB16
2C059BB17
3F049EA17
3F049LA01
3F049LB01
(57)【要約】
【課題】駆動伝達の切替を迅速に実行可能な手段を提供する。
【解決手段】プリンタ部11は、搬送モータ102と、太陽ギヤ92と、太陽ギヤ92と噛合するギヤ90と、太陽ギヤ92と噛合する遊星ギヤ93と、クラッチ機構190と、遊星ギヤ93と噛合可能なギヤ96と、ギヤ96から駆動力が伝達される搬送ローラ64と、を具備する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
太陽ギヤと、
上記モータの駆動力を上記太陽ギヤに伝達する第1伝達ギヤを有する第1駆動伝達機構と、
上記太陽ギヤの軸周りに回転可能な支持アームに回転可能に支持されており、上記太陽ギヤと噛合する遊星ギヤと、
上記第1伝達ギヤから上記太陽ギヤへ駆動力を伝達し、且つ上記第1伝達ギヤに対して上記太陽ギヤが空転可能な範囲を有する第2駆動伝達機構と、
上記遊星ギヤと噛合可能な第2伝達ギヤを有する第3駆動伝達機構と、
上記第3駆動伝達機構から駆動力が付与されて回転することによりシートを搬送する搬送ローラと、を具備する搬送装置。
【請求項2】
上記第1駆動伝達機構は、
軸方向に沿った支軸にスライド可能に支持されており、上記モータから駆動力が伝達されて回転するスライドギヤと、
上記スライドギヤと噛合可能であって上記太陽ギヤに駆動力を伝達する第3伝達ギヤと、
上記スライドギヤをスライドするスライド機構と、を有しており、
上記スライド機構は、上記スライドギヤが上記第3伝達ギヤと噛合する第1スライド位置と、上記スライドギヤが上記第3伝達ギヤと噛合しない第2スライド位置と、に上記スライドギヤをスライドするものである請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
上記モータ及び上記スライド機構を制御する制御部を更に備え、
上記制御部は、
上記スライドギヤと上記第3伝達ギヤとが噛合している状態において、上記モータを逆回転する回転処理と、
上記回転処理の実行後に、上記スライド機構を制御して上記スライドギヤをスライドさせるスライド処理と、を実行する請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
上記搬送ローラによって搬送されるシートに向けてノズルからインクを吐出する記録ヘッドを有しており、上記記録ヘッドがシートに向けてインクを吐出可能な印刷領域、及び当該印刷領域外の基本位置に移動可能なキャリッジを更に備え、
上記スライド機構は、
上記キャリッジと、
上記キャリッジの移動領域に突出した突出部を有しており、上記キャリッジとの当接すによって上記スライドギヤを上記第1スライド位置から上記第2スライド位置へ向かって移動させるレバー部材と、
上記スライドギヤを上記第2スライド位置から上記第1スライド位置へ付勢する付勢部材と、を有する請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
上記第2駆動伝達機構は、
上記第1伝達ギヤまたは上記太陽ギヤの一方に設けられており、周方向に沿って間隔を空けて設けられた第1面及び第2面を有するキー溝と、
上記第1伝達ギヤまたは上記太陽ギヤの他方に設けられており、上記周方向において上記第1面及び上記第2面の間に位置するキーと、を有し、
上記キーの上記周方向の長さは、上記第1面及び上記第2面の間の上記周方向の長さよりも短いものである請求項1から4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
上記遊星ギヤは、上記太陽ギヤの軸周りに回転可能な支持アームに回転可能に支持されており、
上記支持アームに、上記遊星ギヤに対するカウンターウェイトが設けられている請求項1から5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
上記遊星ギヤは、上記支持アームに回転可能に支持された第1遊星ギヤであり、
上記カウンターウェイトは、上記支持アームに回転可能に支持された第2遊星ギヤである請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
上記カウンターウェイトは、上記遊星ギヤよりも重い請求項6に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シートを搬送する搬送装置が知られている。このような搬送装置を備える装置として、例えばインクジェット記録方式でシートに画像を記録するインクジェット記録装置が挙げられる。
【0003】
搬送装置やインクジェット記録装置では、1つのモータの出力を複数の駆動部へ伝達するために、特許文献1の画像記録装置に開示されるように、駆動伝達の切替が行われている。詳述すると、モータから駆動伝達される駆動ギヤと噛合しながら駆動ギヤの軸方向に沿ってスライド可能な切替ギヤが配置されている。また、切替ギヤの各スライド位置に対応して、各駆動部へ駆動伝達するための複数の受けギヤが配置されている。切替ギヤは、スライドされることによって、各受けギヤと噛合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された画像記録装置における駆動伝達の切替では、切替ギヤのスライドのために、ギヤ同士の面圧を小さくするための動作を実行する必要がある。この動作においては、切替ギヤに加わっている面圧に応じて切替ギヤを逆転するため、面圧が大きいと切替ギヤの逆転量も多く設定される。一般に、切替ギヤから駆動部までのギヤの数が多ければ、切替ギヤに加わる面圧も大きくなる。また、モータの逆転量が多くなれば、切替ギヤをスライドするために要する時間が長くなる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動伝達の切替を迅速に実行可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る搬送装置は、モータと、太陽ギヤと、上記モータの駆動力を上記太陽ギヤに伝達する第1伝達ギヤを有する第1駆動伝達機構と、上記太陽ギヤの軸周りに回転可能な支持アームに回転可能に支持されており、上記太陽ギヤと噛合する遊星ギヤと、上記第1伝達ギヤから上記太陽ギヤへ駆動力を伝達し、且つ上記第1伝達ギヤに対して上記太陽ギヤが空転可能な範囲を有する第2駆動伝達機構と、上記遊星ギヤと噛合可能な第2伝達ギヤを有する第3駆動伝達機構と、上記第3駆動伝達機構から駆動力が付与されて回転することによりシートを搬送する搬送ローラと、を具備する。
【0008】
モータの一回転方向の回転が第2駆動伝達機構、太陽ギヤ、及び遊星ギヤを介して伝達ギヤに伝達されている状態から、モータが他回転方向へ若干回転すると、第2駆動伝達機構により第1伝達ギヤに対して太陽ギヤが空転可能となり、第2伝達ギヤからの面圧によって遊星ギヤが第2伝達ギヤから離れる向きへ移動する。遊星ギヤの移動に伴って太陽ギヤが空転することによって、太陽ギヤから第1駆動伝達機構の第1伝達ギヤに付加されていた面圧が減少する。
【0009】
(2) 好ましくは、上記第1駆動伝達機構は、軸方向に沿った支軸にスライド可能に支持されており、上記モータから駆動力が伝達されて回転するスライドギヤと、上記スライドギヤと噛合可能であって上記太陽ギヤに駆動力を伝達する第3伝達ギヤと、上記スライドギヤをスライドするスライド機構と、を有しており、上記スライド機構は、上記スライドギヤが上記第3伝達ギヤと噛合する第1スライド位置と、上記スライドギヤが上記第3伝達ギヤと噛合しない第2スライド位置と、に上記スライドギヤをスライドするものである。
【0010】
スライドギヤが第1スライド位置から第2スライド位置へスライドするときには、スライドギヤと第3伝達ギヤとの面圧が小さいことが好ましい。例えば、モータが一回転方向から他回転方向へ逆転されることによって、スライドギヤと第3伝達ギヤとの面圧が小さくなる。前述したように、モータが一回転方向から他回転方向へ逆転されることによって、第2駆動伝達機構及び遊星ギヤの移動によって太陽ギヤに遊びが生じるので、スライドギヤと第3伝達ギヤとの面圧を小さくするためにモータを逆転する量が少なくなる。
【0011】
(3) 好ましくは、上記モータ及び上記スライド機構を制御する制御部を更に備え、上記制御部は、上記スライドギヤと上記第3伝達ギヤとが噛合している状態において、上記モータを逆回転する回転処理と、上記回転処理の実行後に、上記スライド機構を制御して上記スライドギヤをスライドさせるスライド処理と、を実行する。
【0012】
(4) 好ましくは、上記搬送ローラによって搬送されるシートに向けてノズルからインクを吐出する記録ヘッドを有しており、上記記録ヘッドがシートに向けてインクを吐出可能な印刷領域、及び当該印刷領域外の基本位置に移動可能なキャリッジを更に備え、上記スライド機構は、上記キャリッジと、上記キャリッジの移動領域に突出した突出部を有しており、上記キャリッジとの当接すによって上記スライドギヤを上記第1スライド位置から上記第2スライド位置へ向かって移動させるレバー部材と、上記スライドギヤを上記第2スライド位置から上記第1スライド位置へ付勢する付勢部材と、を有する。
【0013】
(5) 好ましくは、上記第2駆動伝達機構は、上記第1伝達ギヤまたは上記太陽ギヤの一方に設けられており、周方向に沿って間隔を空けて設けられた第1面及び第2面を有するキー溝と、上記第1伝達ギヤまたは上記太陽ギヤの他方に設けられており、上記周方向において上記第1面及び上記第2面の間に位置するキーと、を有し、上記キーの上記周方向の長さは、上記第1面及び上記第2面の間の上記周方向の長さよりも短いものである。
【0014】
(6) 好ましくは、上記遊星ギヤは、上記太陽ギヤの軸周りに回転可能な支持アームに回転可能に支持されており、上記支持アームに、上記遊星ギヤに対するカウンターウェイトが設けられている。
【0015】
上記構成によれば、遊星ギヤが第2伝達ギヤから離れる向きへ移動し易い。
【0016】
(7) 好ましくは、上記遊星ギヤは、上記支持アームに回転可能に支持された第1遊星ギヤであり、上記カウンターウェイトは、上記支持アームに回転可能に支持された第2遊星ギヤである。
【0017】
(8) 好ましくは、上記カウンターウェイトは、上記遊星ギヤよりも重い。
【0018】
上記構成によれば、遊星ギヤが第2伝達ギヤから離れる向きへ更に移動し易い。
【0019】
(9) 好ましくは、上記遊星ギヤは、上記太陽ギヤの軸周りに回転可能な支持アームにそれぞれ回転可能に支持された第1遊星ギヤ及び第2遊星ギヤである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、駆動伝達の切替を迅速に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、キャリッジ23及びガイドレール43、44の平面図である。
【
図4】
図4は、プリンタ部11のブロック図である。
【
図5】
図5は、メンテナンス機構110及び廃インクタンク120の構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第1伝達部181、第3伝達部183、第4伝達部184、及びスライド機構170の模式図である。
【
図7】
図7は、第2伝達部182、第6伝達部186、第7伝達部187の模式図である。
【
図8】
図8は、スライド機構170及び搬送ローラ60周辺の斜視図である。
【
図9】
図9は、スライド機構170、給送ローラ25及び搬送ローラ64周辺の斜視図である。
【
図10】
図10は、スライド機構170、第2伝達部182及び第5伝達部185周辺の斜視図である。
【
図11】
図11は、スライド機構170、第2伝達部182及び第5伝達部185周辺の右側面図である。
【
図13】
図13は、保持部173及びローラギヤ180周辺の平面図である。
【
図14】
図14(A)は、太陽ギヤ92及び遊星ギヤ93,94を示す斜視図であり、
図14(B)は、クラッチ機構190を示す分解斜視図である。
【
図15】
図15は、スライドギヤ160が左位置LPに位置するときのスライド機構170周辺の平面図である。
【
図16】
図16は、スライドギヤ160が第1中央位置MP1に位置するときのスライド機構170周辺の平面図である。
【
図17】
図17は、スライドギヤ160が第2中央位置MP2に位置するときのスライド機構170周辺の平面図である。
【
図18】
図18は、スライドギヤ160が右位置RPに位置するときのスライド機構170周辺の平面図である。
【
図19】
図19は、両面印刷処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、複合機10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。
【0023】
[複合機10の全体構成]
複合機10は、
図1に示されるように、概ね直方体に形成されている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。複合機10は、下部にインクジェット記録方式で用紙12(
図2参照)の片面に画像を記録するプリンタ部11(搬送装置の一例)を有している。なお、プリンタ部11は、用紙12の両面に画像を記録するものであってもよい。
【0024】
図2に示されるように、プリンタ部11は、用紙12を搬送するために、給送部15と、給送トレイ20と、排出トレイ21と、搬送ローラ部54と、排出ローラ部55とを備えている。また、プリンタ部11は、用紙12に画像を記録するために、記録部24と、用紙12を支持するプラテン42と、を備えている。さらに、
図4に示されるように、プリンタ部11は、給送モータ101と、搬送モータ102と、制御部130と、駆動力伝達機構70と、メンテナンス機構110とを備えている。
【0025】
[給送トレイ20、排出トレイ21]
給送トレイ20は、
図1及び
図2に示されるように、プリンタ部11の正面に形成された開口13を通じて前後方向8に挿抜される。給送トレイ20は、積層された複数の用紙12を支持する。排出トレイ21は、給送トレイ20の上側に配置されている。排出トレイ21は、開口13を通じて排出ローラ部55によって排出された用紙12を支持する。
【0026】
[給送部15]
図2に示されるように、給送部15は、給送ローラ25と、給送アーム26と、軸27とを備えている。給送ローラ25は、給送アーム26の先端側に回転可能に支持されている。給送ローラ25は、給送モータ101(
図4参照)の正回転によって、給送トレイ20に支持された用紙12を後述する搬送路65へ向けて搬送向き16に搬送する向き(すなわち、正回転)に回転する。給送アーム26は、プリンタ部11のフレームに支持された軸27に回動可能に支持されている。
【0027】
[搬送路65]
図2に示されるように、プリンタ部11の内部には、用紙12が通過する搬送路65及び反転搬送路66が形成されている。搬送路65は、プリンタ部11の内部において所定間隔を隔てて対向するガイド部材18、19によって画定される空間を指す。搬送路65内における用紙12の搬送向き16は、
図2に一点鎖線の矢印で示されている。
【0028】
搬送路65は、湾曲された湾曲搬送路と、直線的に延びる直線搬送路とで構成されている。湾曲搬送路は、プリンタ部11の後方側において下方から上方に延びつつUターンする経路である。直線搬送路は、搬送ローラ部54から記録部24、排出ローラ部55、及び反転ローラ部56を経て排出トレイ21に至る経路である。
【0029】
反転搬送路66は、搬送路65の直線搬送路における排出ローラ部55と反転ローラ部56との間の位置と、搬送路65の湾曲搬送路における搬送ローラ部54より搬送向き16の上流側の位置とを繋いでおり、上下方向7において給送部15とプラテン42との間に位置する経路である。
【0030】
[搬送ローラ部54]
図2に示されるように、搬送ローラ部54は、記録部24よりも搬送向き16の上流側に配置されている。搬送ローラ部54は、互いに対向する搬送ローラ60及びピンチローラ61を備える。搬送ローラ60は、搬送モータ102(
図4参照)によって駆動される。ピンチローラ61は、搬送ローラ60の回転に伴って連れ回る。搬送ローラ部54は、搬送モータ102の正回転力が伝達されることによって正回転する。正回転は、挟持した用紙12を搬送向き16に搬送する向きの回転である。また、搬送ローラ部54は、搬送モータ102の逆回転力が伝達されることによって、正回転と逆向きの逆回転が可能である。
【0031】
[排出ローラ部55]
図2に示されるように、排出ローラ部55は、記録部24よりも搬送向き16の下流側に配置されている。排出ローラ部55は、互いに対向する排出ローラ62(搬送ローラの一例)及び拍車63を備える。排出ローラ62は、搬送モータ102(
図4参照)によって駆動される。拍車63は、排出ローラ62の回転に伴って連れ回る。排出ローラ部55は、搬送モータ102の正回転力が伝達されることによって、挟持した用紙12を搬送向き16に搬送する正回転が可能である。また、排出ローラ部55は、搬送モータ102の逆回転力が伝達されることによって、正回転と逆向きの逆回転が可能である。
【0032】
[反転ローラ部56]
図2に示されるように、反転ローラ部56は、排出ローラ部55よりも搬送向き16の下流側に配置されている。反転ローラ部56は、互いに対向する反転ローラ68及びピンチローラ69を備える。反転ローラ68は、搬送モータ102(
図4参照)によって駆動される。ピンチローラ69は、反転ローラ68の回転に伴って連れ回る。反転ローラ部56は、搬送モータ102の正回転力が伝達されることによって、挟持した用紙12を搬送向き16に搬送する正回転が可能である。また、反転ローラ部56は、搬送モータ102の逆回転力が伝達されることによって、正回転と逆向きの逆回転が可能である。
【0033】
[搬送ローラ64]
図2に示されるように、搬送ローラ64(搬送ローラの一例)は、反転搬送路66に配置されている。搬送ローラ64は、アーム64Aに回転可能に支持されている。アーム64Aは、軸27に支持されている。つまり、軸27は、給送ローラ25及びアーム64をそれぞれ支持する。搬送ローラ64は、ピントローラ59と対向している。搬送ローラ64は、搬送モータ102(
図4参照)によって駆動される。搬送ローラ64は、搬送モータ102の正回転力及び逆回転力のいずれが伝達されても、用紙12を反転向き22に搬送する正回転が可能である。
【0034】
[フラップ67]
図2に示されるように、フラップ67は、搬送路65の直線搬送路と反転搬送路66との接続位置に位置する。フラップ67は、反転ローラ68の軸周りに回動可能なガイド板である。フラップ67は、
図2において実線で示される第1位置と破線で示される第2位置との間を回動する。第1位置のフラップ67は、搬送路65の直線搬送路を区画して、搬送向き16に搬送される用紙12を排出トレイ21へ案内する。第2位置のフラップ67は、反転搬送路66を区画して、搬送向き16と逆向きであって反転搬送路66を後方へ向かう反転向き22に搬送される用紙12を搬送ローラ64へ案内する。フラップ67は、反転ローラ68が用紙12を給送向き16へ搬送するときに第1位置となり、反転ローラ68が用紙12を反転向き22へ搬送するときに第2位置となる。
【0035】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、搬送向き16における搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の間に配置されている。記録部24は、上下方向7においてプラテン42に対向する。記録部24は、キャリッジ23と、記録ヘッド39とを備えている。
図3に示されるように、キャリッジ23からは、インクチューブ32及びフレキシブルフラットケーブル33が延出されている。インクチューブ32は、インクカートリッジのインクを記録ヘッド39に供給する。フレキシブルフラットケーブル33は、制御部130が実装された制御基板と記録ヘッド39とを電気的に接続する。
【0036】
図3に示されるように、キャリッジ23は、前後方向8に離間する位置において各々が左右方向9に延設されたガイドレール43、44に支持されている。キャリッジ23は、ガイドレール44に設けられた公知のベルト機構に連結されている。なお、このベルト機構は、キャリッジモータ103(
図4参照)によって駆動される。ベルト機構の集運動によって、キャリッジ23は、左右方向9に沿う主走査方向へ往復移動する。
【0037】
図2に示されるように、記録ヘッド39は、キャリッジ23に搭載されている。記録ヘッド39の下面には、複数のノズル40が形成されている。記録ヘッド39は、ノズル40からインクを微小なインク滴として吐出する。キャリッジ23が移動する過程において、プラテン42に支持されている用紙12に対して記録ヘッド39がインク滴を吐出する。これにより、用紙12に画像が記録される。
【0038】
キャリッジ23は、用紙12への画像記録時に、左右方向9において記録ヘッド39が用紙12へインク滴を吐出可能な範囲を往復動する。具体的には、キャリッジ23は、記録ヘッド39の少なくとも一部が搬送路65及びプラテン42の真上となる範囲を往復動する。以下、画像記録時にキャリッジ23が往復動する範囲は、印刷領域と記される。
【0039】
キャリッジ23は、印刷領域よりも右方の印刷領域外へ移動可能である。印刷領域よりも右方にキャリッジ23の基本位置が位置する。キャリッジ23は、画像記録などの動作を行わないときには、基本位置に位置するように制御される。なお、基本位置は、印刷領域よりも左方であってもよい。
【0040】
[プラテン42]
図2に示されるように、プラテン42は、搬送路65の直線搬送路において搬送ローラ部54と排出ローラ部55との間に配置されている。プラテン42は、上下方向7において記録部24に対向する。プラテン42は、用紙12を下方から支持する。
【0041】
[メンテナンス機構110及びキャップ114]
図5に示されるメンテナンス機構110は、記録ヘッド39のメンテナンスを行うものである。本実施形態において、メンテナンス機構110は、記録ヘッド39のノズル40からインクを吸引して、吸引したインクをチューブ121を通じて廃インクタンク120に送り出す。
【0042】
メンテナンス機構110は、基本位置のキャリッジ23の真下に配置されている。なお、
図5では、メンテナンス機構110と廃インクタンク120とがチューブ121によって接続されていることを示すために、廃インクタンク120を模式的に図示しているが、廃インクタンク120と他の構成要素との位置関係を示すものではない。
【0043】
メンテナンス機構110は、可動部111と、可動部111を上下方向7へ移動させるカム機構112と、インクが流れるチューブ121と、インクを吸引するポンプ113とを備えている。
【0044】
可動部111には、ゴム材料からなるキャップ114が設けられている。キャップ114は、基本位置のキャリッジ23と上下方向7に対面する位置に設けられている。カム機構112は、給送モータ101(
図4参照)により駆動され、可動部111を上下方向7へ移動させる。キャップ114は、給送モータ101から駆動力を伝達されることによって、基本位置のキャリッジ23に搭載された記録ヘッド39のノズル40から離間された離隔位置と、記録ヘッド39の下面に当接してノズル40を覆った被覆位置とに移動する。
【0045】
キャップ114には、チューブ121の一端が接続されている。チューブ121は、可撓性を有する樹脂チューブである。チューブ121の他端は、廃インクタンク120に接続されている。
【0046】
ポンプ113は、本実施形態において、ロータリー式のチューブポンプである。ポンプ113は、内壁面を備えたケーシングと、内壁面に沿って転動される転動ローラとを有する。チューブ121が転動ローラと内壁面との間に配置される。転動ローラは、搬送モータ102(
図4参照)により駆動される。転動ローラが駆動されることにより、チューブ121が扱かれ、ノズル40内のインクがチューブ121に吸引され、チューブ121内のインクが上流側(キャップ114)から下流側(廃インクタンク120)へ押し出される。
【0047】
廃インクタンク120は、内部空間を有する概ね直方体の箱状である。当該内部空間には、インク吸収体(不図示)が収容されている。廃インクタンク120は、インク吸収体がインクを吸収することによって、ノズル40から吸引されたインクを収容可能である。
【0048】
[駆動力伝達機構70]
駆動力伝達機構70は、ギヤ、プーリ、及び無端環状のベルト等の全部又は一部を組み合わせて構成される。
図6~
図11に示されるように、駆動力伝達機構70は、第1伝達部181、第2伝達部182、第3伝達部183、第4伝達部184、第5伝達部185、第6伝達部186、第7伝達部187、及びスライド機構170を備えている。なお、駆動力伝達機構70の具体的構成(例えば、ギヤの数など)は、以下に説明するものに限らない。
【0049】
第1伝達部181は、搬送モータ102の駆動力を搬送ローラ60及びスライド機構170に伝達する。第2伝達部182は、給送モータ101の駆動力を軸27に伝達する。第3伝達部183は、搬送モータ102の駆動力を搬送ローラ60から排出ローラ62及び反転ローラ68に伝達する。第4伝達部184は、搬送モータ102の駆動力をスライド機構170からポンプ113に伝達する。第5伝達部185は、搬送モータ102の駆動力をスライド機構170から軸27に伝達する。第6伝達部186は、軸27の回転を給送ローラ25に伝達する。第7伝達部187は、軸27の回転を搬送ローラ64に伝達する。スライド機構170は、搬送モータ102の駆動力の伝達先を切り替える。第1伝達部181と第4伝達部184の一部とスライド機構170とが、第1駆動伝達機構の一例である。
【0050】
[第1伝達部181]
図6及び
図8に示されるように、第1伝達部181は、搬送モータ102の軸と一体回転するプーリ71と、搬送ローラ60の軸60Aと一体回転するプーリ72と、プーリ71、72に架け渡された無端環状のベルト73とを備える。これにより、搬送ローラ60は、搬送モータ102の正回転力が伝達されて正回転し、搬送モータ102の逆回転力が伝達されて逆回転する。搬送ローラ60が回転することによって、搬送ローラ60の軸60Aと一体回転するスライド機構170のローラギヤ180が回転する。以上より、第1伝達部181は、搬送モータ102の駆動力を搬送ローラ60及びスライド機構170に伝達する。
【0051】
[第2伝達部182]
図7及び
図11に示されるように、第2伝達部182は、給送モータ101の軸と一体回転するギヤ74と、ギヤ79~81と、ギヤ81と噛合してギヤ81周りに回転する遊星ギヤ82と、遊星ギヤ82と噛合するギヤ83とを備える。第2伝達部182を構成する各ギヤの軸は、サイドフレーム176に支持されている。ギヤ83は、軸27と一体に回転するギヤ84と噛合する。これにより、給送モータ101は、軸27へ駆動力を付与する。また、遊星ギヤ82は、給送モータ101が正回転するときにギヤ83と噛合し、給送モータ101が逆回転するときにギヤ83から離れる。したがって、第2伝達部182は、給送モータ101の正回転を軸27へ伝達し、給送モータ101が逆回転すると軸27への駆動伝達を解除して、軸27を回転自在にする。
【0052】
[第3伝達部183]
図6に示されるように、第3伝達部183は、互いに噛合するギヤ75、76と、プーリ77、78と、無端環状のベルト81とを備える。また、第3駆動伝達部183は、プーリ78と一体に回転するプーリ85と、一体に回転するプーリ86,87と、無端環状のベルト88,89とを備える。
【0053】
ギヤ75は、ギヤ76と噛合し且つ搬送ローラ60の軸60Aと一体回転する。ギヤ76及びプーリ77は、同軸で一体回転する。プーリ78は、排出ローラ62の軸62Aに取り付けられている。ベルト81は、プーリ77、78に架け渡されている。プーリ87は、反転ローラ68の軸68Aに取り付けられている。ベルト88は、プーリ85,86に架け渡されている。ベルト89は、プーリ86,87に架け渡されている。これにより、排出ローラ62及び反転ローラ68は、搬送モータ102の正回転力が伝達されて正回転し、搬送モータ102の逆回転力が伝達されて逆回転する。このようにして、第3伝達部183は、搬送モータ102の駆動力を搬送ローラ60から排出ローラ62及び反転ローラ68に伝達する。
【0054】
[第4伝達部184]
図6に示されるように、第4伝達部184は、スライド機構170のスライドギヤ160と噛合可能なギヤ157と、ギヤ157と噛合しており且つポンプ113の転動ローラの軸と一体回転するギヤ158とを備えている。これにより、ポンプ113は、スライドギヤ160から駆動力が伝達されることによって駆動する。このように、第4伝達部184は、搬送モータ102の駆動力(本実施形態では逆回転力)をスライド機構170からポンプ113に伝達する。
【0055】
[第5伝達部185]
図6、
図10及び
図11に示されるように、第5伝達部185は、スライドギヤ160と噛合するギヤ90(第3伝達ギヤの一例)と、ギヤ91(第1伝達ギヤの一例)と、太陽ギヤ92と、遊星ギヤ93,94(第1遊星ギヤ、第2遊星ギヤ及びカウンターウェイトの一例)と、ギヤ95~100とを備えている。第5伝達部185を構成する各ギヤの軸は、サイドフレーム176に支持されている。詳述すると、ギヤ91は、ギヤ90と噛合する。太陽ギヤ92は、遊星ギヤ93,94とそれぞれ噛合する。遊星ギヤ93は、ギヤ96(第2伝達ギヤの一例)と噛合可能である。遊星ギヤ94は、ギヤ95と噛合可能である。ギヤ95~ギヤ100は、直列に噛合している。ギヤ100は、ギヤ83と噛合する。第5伝達部185は、第3駆動伝達機構の一例である。
【0056】
太陽ギヤ92は、ギヤ91の軸91Aに支持されている。アーム188は、ギヤ91の軸91Aに回動可能に支持されて、軸91Aから2つの方向へ延びている。アーム188が軸91Aから2つの方向へ延びる各延出端において、遊星ギヤ93,94がそれぞれ回転可能に支持されている。これにより、太陽ギヤ92が自転すると、遊星ギヤ93,94は太陽ギヤ92の周りを公転可能である。
図10,11に示されるように、遊星ギヤ94を支持するアーム188の延出端には、板バネ189(カウンターウェイトの一例)が設けられている。板バネ189は、アーム188の外側から遊星ギヤ94を挟み込んでおり、アーム188が遊星ギヤ94の側面に圧接するようにアーム188を内向きに付勢する。板バネ189の付勢によって、遊星ギヤ94が回転するときに生じるアーム188に対する摺動摩擦力は、遊星ギヤ93が回転するときにアーム188に対する摺動摩擦力よりも大きい。
【0057】
遊星ギヤ94及び板バネ189の総重量は、遊星ギヤ93の重量よりも大きい。遊星ギヤ94は、遊星ギヤ93がギヤ96と噛合している状態において、軸91Aの中心を含む上下方向7に沿った仮想線に対して、遊星ギヤ93と反対側に位置している。
図10,11においては、遊星ギヤ93は仮想線に対して前方に位置しており、遊星ギヤ94及び板バネ189は仮想線に対して後方に位置する。したがって、遊星ギヤ94及び板バネ189は、遊星ギヤ93がギヤ96と噛合している状態において、遊星ギヤ93がギヤ96から離れる向きに移動するための荷重を加えるカウンターウェイトとして機能する。
【0058】
太陽ギヤ92の回転方向によって、遊星ギヤ93がギヤ96と噛合するか、遊星ギヤ94がギヤ95と噛合する。本実施形態では、
図11において太陽ギヤ92が反時計回りに回転すると、遊星ギヤ93がギヤ96と噛合する。太陽ギヤ92が時計周りに回転すると、遊星ギヤ94がギヤ95と噛合する。ギヤ96は、太陽ギヤ92が時計回りに回転しても反時計回りに回転しても、時計回りに回転する。したがって、ギヤ96~100の回転方向は、太陽ギヤ92の回転方向に拘わらず一定である。このようにして、第5伝達部185は、搬送モータ102の駆動力をスライド機構170から軸27に伝達する。
【0059】
[第6伝達部186]
図7及び
図9に示されるように、第6伝達部186は、軸27と一体に回転する太陽ギヤ151と、太陽ギヤ151の軸周りに回動するアーム152Aに支持されて太陽ギヤ151と噛合する遊星ギヤ152と、ギヤ列153と、ギヤ154とを備えている。ギヤ列153は、給送ローラ25と一体に回転するギヤ154と噛合する。
【0060】
太陽ギヤ151の回転方向によって、遊星ギヤ152がギヤ列153と噛合するか、噛合せずに離れる。本実施形態では、
図9において太陽ギヤ151が時計回りに回転すると、遊星ギヤ152がギヤ列153と噛合する。太陽ギヤ151が反時計周りに回転すると、遊星ギヤ152がギヤ列153から離れる。給送モータ101が正回転すると、第2伝達部182を介して、軸27が時計回りに回転すると共に太陽ギヤ151も時計回りに回転する。したがって、給送モータ101が正回転すると、給送ローラ25が用紙12を給送向き16に送り出すように回転する。給送モータ101が逆回転すると、第2駆動伝達部182において駆動伝達が解除され、給送モータ101の逆回転は軸27に伝達されない。このようにして、第6伝達部186は、軸27の回転を給送ローラ25に伝達する。
【0061】
[第7伝達部187]
図7及び
図9に示されるように、第7伝達部187は、軸27と一体に回転するギヤ155と、搬送ローラ64と一体に回転するギヤ156とを備えている。ギヤ155,156は噛合している。
【0062】
スライドギヤ160がギヤ90と噛合した状態において搬送モータ102が正回転又は逆回転すると、第5伝達部185を介して、軸27が反時計回りに回転すると共にギヤ155も反時計回りに回転する。したがって、スライドギヤ160がギヤ90と噛合した状態において搬送モータ102が回転すると、搬送ローラ64が用紙12を反転向き22へ搬送するように回転する。なお、軸27が反時計回りに回転すると、第6伝達部186において遊星ギヤ152がギヤ列153から離れるので、軸27の回転は給送ローラ25に伝達されない。このようにして、第7伝達部187は、軸27の回転を搬送ローラ64に伝達する。
【0063】
[スライド機構170]
スライド機構170は、スライドギヤ160を左右方向9に移動させる機構である。スライド機構170は、キャリッジ23(
図3参照)と、レバー部材175(
図12参照)と、第1コイルバネ168(付勢部材の一例、
図12参照)と、第2コイルバネ169(
図12参照)と、保持部173(
図13参照)とを備えている。なお、
図12以外の図ににおいて、第1コイルバネ168及び第2コイルバネ169の図示は省略されている。
【0064】
図10及び
図12に示されるように、レバー部材175は、スライドギヤ160に対して右向き側に、スライドギヤ160と当接して配置されている。つまり、レバー部材175は、スライドギヤ160の右方に配置されている。
【0065】
レバー部材175は、スライドギヤ160と当接した本体部175Aと、本体部175Aから上方に突出した突出部175Bとを備えている。本体部175Aに、支軸174が挿通されている。これにより、本体部175Aは、左右方向9に移動自在且つ回転自在に支軸174に支持されている。突出部175Bは、キャリッジ23の移動領域のうち印刷領域外の移動領域にまで延びている。これにより、突出部175Bは、右向きに移動するキャリッジ23に当接されて右方へ押されることが可能である。
【0066】
図12に示されるように、第1コイルバネ168は、レバー部材175の右方に配置されている。第1コイルバネ168に、支軸174が挿通されている。第1コイルバネ168の一端は、レバー部材175に当接している。第1コイルバネ168の他端は、プリンタ部11のフレーム(不図示)などに当接している。これにより、第1コイルバネ168は、レバー部材175を左向きへ付勢可能である。
【0067】
図12に示されるように、第2コイルバネ169は、第2スライドギヤ160Bの左方に配置されている。第2コイルバネ169に、支軸174が挿通されている。第2コイルバネ169の一端は、スライドギヤ160に当接している。第2コイルバネ169の他端は、プリンタ部11のサイドフレーム176に当接している。これにより、第2コイルバネ169は、スライドギヤを右向きへ付勢可能である。
【0068】
第2コイルバネ169の付勢力は、第1コイルバネ168の付勢力よりも小さい。その結果、スライドギヤ160とレバー部材175とは、左向きへ付勢されている。
【0069】
図13に示されるように、保持部173は、レバー部材175の本体部175Aの上方に設けられている。保持部173には、開口177が形成されている。開口177には、レバー部材175の突出部175Bが下方から上方へ向けて挿通されている。開口177の縁部には、第1ストッパ178と、第1ストッパ178よりも右方に設けられた第2ストッパ179と、第2ストッパ179よりも右方に設けられた傾斜面172とが形成されている。
【0070】
図12及び
図15に示されるように、第1ストッパ178は、スライドギヤ160が左位置LPに位置している状態で突出部175Bと当接する。これにより、レバー部材175が第1コイルバネ168の付勢力によって左位置LPから左方へ移動することが規制される。一方、第1ストッパ178は、レバー部材175の右方への移動を規制しない。左位置LPにおいて、スライドギヤ160は他のギヤとは噛合しない。したがって、スライドギヤ160が左位置LPにあるとき、スライド機構170から搬送ローラ64及びポンプ113へ駆動伝達されない。
【0071】
図12及び
図16に示されるように、第2ストッパ179は、スライドギヤ160が第1中央位置MP1に位置している状態で突出部175Bと係合する。これにより、レバー部材175が第1コイルバネ168の付勢力によって第1中央位置MP1から左方へ移動することが規制される。一方、第2ストッパ179は、レバー部材175の右方への移動を規制しない。
【0072】
図12及び
図18に示されるように、スライドギヤ160が左位置LPに保持されている状態(突出部175Bが第1ストッパ178と係合している状態)で、突出部175Bが右方に移動するキャリッジ23に当接されて押されると、レバー部材175は、第1コイルバネ168の付勢力に抗って右方に移動する。このとき、第2コイルバネ169によって右向きに付勢された第2スライドギヤ160Bは、レバー部材175の移動に伴って右方に移動する。スライドギヤ160は、移動する第2スライドギヤ160Bに押されて右方に移動する。突出部175Bが第2ストッパ179と係合することで、スライドギヤ160は、第1中央位置MP1(第1スライド位置の一例)に保持される。第1中央位置MP1において、スライドギヤ160はギヤ90と噛合する。したがって、スライドギヤ160が第1中央位置MP1にあるとき、スライド機構170から搬送ローラ64へ駆動伝達される。
【0073】
スライドギヤ160が第1中央位置MP1に保持されている状態(突出部175Bが第2ストッパ179と係合している状態)で、突出部175Bが右方に移動するキャリッジ23に当接されて押されると、レバー部材175は、第1コイルバネ168の付勢力に抗って右方に移動する。このとき、第2コイルバネ169によって右向きに付勢された第2スライドギヤ160Bは、レバー部材175の移動に伴って右方に移動する。スライドギヤ160は、移動する第2スライドギヤ160Bに押されて右方に移動する。
【0074】
突出部175Bが、傾斜面172の右端まで移動すると、レバー部材175は、突出部175Bが後方へ移動するように回転する。他方、突出部175Bが傾斜面172の右端より左方に位置するとき、レバー部材175は、突出部175Bが前方へ位置する状態に保持される。
【0075】
突出部175Bが第2ストッパ179よりも右方に位置している状態では、キャリッジ23が突出部175Bとの当接を維持することによって、スライドギヤ160は、右位置RPに保持される。このときのキャリッジ23の位置は、基本位置である。つまり、スライドギヤ160は、基本位置のキャリッジ23が突出部175Bに当接することによって、第1コイルバネ168の付勢力に抗って右位置RPに保持される。
【0076】
また、突出部175Bが第2ストッパ179よりも右方であって右位置RPよりも左方に位置している状態では、キャリッジ23が突出部175Bとの当接を維持することによって、スライドギヤ160は、
図12及び
図16に示されるように、第2中央位置MP2(第2スライド位置の一例)に保持される。スライドギヤ160が第2中央位置MP2に保持されている状態で、キャリッジ23が左方に移動して突出部175Bから離間すると、レバー部材175は、第1コイルバネ168の付勢力によって左方に移動する。そして、レバー部材175の突出部175Bは、第2ストッパ179と係合する。これにより、スライドギヤ160は、第2中央位置MP2から第1中央位置MP1に移動する。第2中央位置MP2において、スライドギヤ160は他のギヤとは噛合しない。したがって、スライドギヤ160が第2中央位置MP2にあるとき、スライド機構170から搬送ローラ64及びポンプ113へ駆動伝達されない。
【0077】
スライドギヤ160が右位置RPに保持されている状態で、キャリッジ23が左方に移動して突出部175Bから離間すると、レバー部材175は、第1コイルバネ168の付勢力によって左方に移動する。このとき、上述したように、突出部175Bは、後方へ移動しているため、第2ストッパ179と係合せずに第2ストッパ179よりも左方へ移動する。その結果、レバー部材175は、突出部175Bが第1ストッパ178と当接するまで左方へ移動する。このとき、スライドギヤ160は、レバー部材175に押されて右位置RPから左位置LPへ移動する。つまり、スライドギヤ160は、突出部175Bからキャリッジ23が離間することによって第1コイルバネ168の付勢力によって左位置LPへ移動される。右位置RPにおいて、スライドギヤ160はギヤ157と噛合する。したがって、スライドギヤ160が右位置RPにあるとき、スライド機構170からポンプ113へ駆動伝達される。
【0078】
なお、突出部175Bは、レバー部材175が左方へ移動する際に、開口177の縁部における第1ストッパ178の近傍に形成された傾斜面171に沿って移動する。これにより、レバー部材175は、突出部175Bが前方へ移動するように回転する。
【0079】
[クラッチ機構190]
図14に示されるように、クラッチ機構190は、ギヤ91の軸91Aに設けられたキー191と、太陽ギヤ92の軸孔92Aに設けられたキー溝192により構成されている。クラッチ機構190は、第2駆動伝達機構の一例である。
【0080】
キー191は、軸91Aの径方向外向きの2方向へそれぞれ突出している。2つのキー191は、軸91Aの軸線105に対して180°位相が異なる。2つのキーの間の軸91Aの外周面は円周面である。2つのキー191は同形状である。
【0081】
キー溝192は、太陽ギヤ92の軸孔92Aの周方向の2カ所に位置する。2つのキー溝192は、軸孔92Aの軸線105に対して180°位相が異なる。軸孔92Aにおいてキー溝192の間の面は円周面である。2つのキー溝192は同形状である。なお、軸91Aが軸孔92Aに挿通された状態において、軸91Aの軸線と軸孔92Aの軸線とは合致するので、いずれの軸線も軸線105と称する。
【0082】
キー溝192の周方向104の一端は、側面192(第1面の一例)によって区画されている。キー溝192の周方向104の他端は、側面193(第2面の一例)によって区画されている。側面192,193間の周方向104の長さは、キー191の周方向104の長さよりも長い。
【0083】
軸91Aが軸孔92Aに挿通された状態において、2つのキー191は、2つのキー溝192にそれぞれ挿入された状態となる。キー191が側面192と当接していない状態で、搬送モータ102から正回転力を伝達された軸91Aは、
図14において反時計回りに回転する。これにより、キー191が側面192に近づく。そして、キー191が側面192に当接して側面192を押すと、太陽ギヤ92は、軸91Aと一体に反時計回りに回転する。
【0084】
他方、キー191が側面193と当接していない状態で、搬送モータ102から逆回転力を伝達された軸91Aは、
図14において時計回りに回転する。これにより、キー191が側面193に近づく。そして、キー191が側面193に当接して側面193を押すと、太陽ギヤ92は、軸91Aと一体に時計回りに回転する。
【0085】
また、搬送モータ101の駆動が正逆反転すると、側面192に当接しているキー191は、側面192から離れて側面193へ近づき、その後、側面193と当接する。また、側面193に当接しているキー191は、側面193から離れて側面192へ近づき、その後、側面192と当接する。キー191が側面192,193のいずれとも当接していない状態では、軸91Aが回転しても、太陽ギヤ92は回転しない。すなわち、軸91Aは、太陽ギヤ92に対して空転する。
【0086】
[制御部130]
制御部130は、
図4に示されるように、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、及びASIC135を備えており、これらは内部バス137によって接続されている。ROM132には、CPU131が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0087】
ASIC135には、給送モータ101、搬送モータ102、及びキャリッジモータ103などが接続されている。ASIC135は、各モータを回転させるための駆動信号を生成し、この駆動信号を元に各モータを制御する。各モータは、ASIC135からの駆動信号によって正回転又は逆回転する。例えば、制御部130は、給送モータ101の駆動を制御して、給送ローラ25を回転させる。また、制御部130は、搬送モータ102の駆動を制御して各ローラ60,62,64,68を回転させたりポンプ113を駆動させたりする。また、制御部130は、キャリッジモータ103の駆動を制御してキャリッジ23を往復移動させる。また、制御部130は、記録ヘッド39を制御してノズル40からインクを吐出させる。以上より、制御部130は、搬送モータ102及びスライド機構170を制御する。
【0088】
[両面記録処理]
以下、
図19を参照して、プリンタ部11が両面記録を行う処理が説明される。各処理は、制御部130のCPU131によって実行される。なお、以下の各処理は、ROM132に記憶されているプログラムをCPU131が読み出して実行してもよいし、制御部130に搭載されたハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0089】
プリンタ部11が動作していないときには、キャリッジ23は基本位置に位置する。したがって、キャリッジ23により、レバー部材175の突出部175Bが右位置RPに保持される。
【0090】
制御部130は、操作パネル17を通じて両面記録指示が入力されると、あるいは、外部情報機器から両面記録指示を受信すると(S10:Yes)、スライド処理(S11)を実行する。スライド処理は、キャリッジモータ103を駆動して、キャリッジ23を基本位置から左方へ移動させて印刷領域付近に位置させる処理である。スライド処理において、キャリッジ23の移動と共にレバー部材175が左方へ移動して、スライドギヤ160が、右位置RPから左位置LPへ移動する。
【0091】
制御部130は、スライド処理が完了すると、給送処理を実行する(S12)。制御部130は、給送処理において、給送モータ101を正回転させる。これにより、軸27の回転が給送ローラ25へ伝達されて給送ローラ25が回転して、給送トレイ20に積載された用紙12が搬送路65へ給送される。給送モータ101が正転すると、第2伝達部182のギヤ83が回転する。したがって、ギヤ83と噛合する第5伝達部185のギヤ100も回転するが、スライドギヤ160が左位置LPにあるので、ギヤ100の回転はスライドギヤ160へ伝達されない。したがって、給送モータ101を正転しつつ搬送モータ102を回転できる。給送処理によって、給紙トレイ20に積載された用紙12の前端が搬送ローラ部54に到達する。
【0092】
制御部130は、給送処理が終了すると、給送モータ101を若干だけ逆回転する。給送モータ101の逆回転によって、第2伝達部182の遊星ギヤ82がギヤ83から離れる。また、制御部130は、左位置LPのスライドギヤ160を第1中央位置MP1へ移動する(S13)。詳細には、制御部130は、キャリッジモータ103を駆動してキャリッジ23を右方へ移動させる。キャリッジ23に押されて、レバー部材175も右方へ移動する。また、スライドギヤ160は、第2コイルバネ169に付勢されて左位置LPから第1中央位置MP1へ移動しようとする。
【0093】
スライドギヤ160の移動において、制御部130は、搬送モータ102を微少に正回転/逆回転を数回繰り返す。このような搬送モータ102の微少回転によって、スライドギヤ160も同様に微少に正回転/逆回転を繰り返す。スライドギヤ160の微少回転によって、スライドギヤ160の歯及びギヤ90の歯の位相が合致して、スライドギヤ160がギヤ90と噛合する。
【0094】
次に、制御部130は、搬送処理を実行する(S14)。制御部130は、搬送処理において、搬送モータ102を正回転する。これにより、搬送ローラ60が正回転し、シートは搬送ローラ部54に挟持されて記録部24の直下へ向けて搬送向き16に搬送される。また、搬送モータ102の正回転によって、排出ローラ62及び反転ローラ68も正回転する。
【0095】
次に、制御部130は、第1面印刷処理を実行する(S15)。制御部130は、第1面印刷処理において、印刷領域においてキャリッジ23を往復動させつつ記録ヘッド39のノズル40からインク滴を吐出する記録動作と、搬送モータ102を所定量正回転させて、シートを改行相当分だけ搬送させる搬送動作とを交互に実行する。これにより、用紙12において記録ヘッド39と対向する第1面に画像が記録される。
【0096】
用紙12の第1面への印刷が完了した後、制御部130は、用紙12の後端が反転ローラ68の給送向き16の直ぐ上流に至るまで、搬送モータ102を正回転する(S16)。これにより、用紙12の後端が、搬送路65と反転搬送路66とが分岐する位置に到達する。
【0097】
次に、制御部130は、搬送モータ102を逆回転する(S17)。搬送モータ102が逆回転すると、反転ローラ68が逆転して用紙12が反転向き22へ搬送されて反転搬送路66へ進入する。また、搬送ローラ64が回転して、反転搬送路66において用紙12が反転向き22へ搬送される。さらに、反転搬送路66から再び搬送路65の湾曲路に進入した用紙12は、第1面印刷処理における前端と後端とが逆転した状態、すなわち第1面と第2面とが反転する。第1面と第2面とが反転した用紙12は、搬送ローラ部54へ到達する。なお、用紙12の第2面は、第1面とは反対側の面である。なお、給送処理が終了したときに、第2伝達部182において遊星ギヤ82がギヤ83から離れているので、搬送モータ102によって軸27が回転されても、軸27の回転が給送モータ101へ伝達されることはない。
【0098】
次に、制御部130は、第2面印刷処理を実行する(S18)。制御部130は、第2面印刷処理において、印刷領域においてキャリッジ23を往復動させつつ記録ヘッド39のノズル40からインク滴を吐出する記録動作と、搬送モータ102を所定量正回転させて、シートを改行相当分だけ搬送させる搬送動作とを交互に実行する。これにより、用紙12において記録ヘッド39と対向する第2面に画像が記録される。
【0099】
用紙12の第2面への印刷完了後、制御部130は、排出処理を実行する(S19)。制御部130は、排出処理において、搬送モータ102を正回転させる。これにより、排出ローラ62及び反転ローラ68が正回転して、シートは排出ローラ部55及び反転ローラ部56に挟持されて搬送向き16に搬送される。その結果、シートは、排出トレイ21に排出される。
【0100】
次に、制御部130は、次の用紙12への印刷があるか否かを判定する(S20)。次の用紙12への印刷がなければ(S20:No)、制御部130は、両面記録処理を終了する。
【0101】
次の用紙12への印刷があれば(S20:Yes)、制御部130は、第1中央位置MP1のスライドギヤ160を第2中央位置MP2へ移動する(S21)。詳細には、制御部130は、キャリッジモータ103を駆動してキャリッジ23を右方へ移動させる。キャリッジ23に押されて、レバー部材175も右方へ移動する。また、スライドギヤ160は、第2コイルバネ169に付勢されて第1中央位置MP1から第2中央位置MP2へ移動しようとする。
【0102】
スライドギヤ160の移動において、制御部130は、搬送モータ102を微少に正回転/逆回転を数回繰り返す(回転処理の一例)。このような搬送モータ102の微少回転によって、スライドギヤ160も同様に微少に正回転/逆回転を繰り返す。スライドギヤ160の微少回転は、第5伝達部185のギヤ91に伝達される。搬送モータ102の正回転によって、遊星ギヤ93がギヤ96と噛合していた状態から、搬送モータ103が逆回転すると、クラッチ機構190によって、ギヤ91の軸91Aに対して太陽ギヤ92が空転可能となる。遊星ギヤ93及びギヤ96~100及びギヤ83からの面圧を受けている遊星ギヤ93がギヤ96から離れる向きへ移動する。これにより、遊星ギヤ93及びギヤ96~100及びギヤ83からの面圧が消失する。遊星ギヤ93の移動において、遊星ギヤ94及び板バネ189は、カウンターウェイトとして機能し、遊星ギヤ93は、遊星ギヤ94及び板バネ189の重量によってもギヤ96から離れる向きへ移動する。遊星ギヤ93の移動に伴って、太陽ギヤ92は軸91Aに対して空転することによって、第1中央位置MP1においてスライドギヤ160と噛合するギヤ90の面圧が減少する。また、太陽ギヤ92の空転によって、摺動摩擦が比較的大きい遊星ギヤ94が太陽ギヤ92とともに移動するので、遊星ギヤ93は、更にギヤ96から離れる向きへ移動する。したがって、搬送モータ102を微少に逆回転させると、第1中央位置MP1のスライドギヤ160とギヤ90との間の面圧も減少する。これにより、スライドギヤ160は、第2コイルバネ169に付勢されて第1中央位置MP1から第2中央位置MP2へ円滑に移動する。
【0103】
次に、制御部130は、給送処理を実行する(S22)。制御部130は、給送処理において、給送モータ101を正回転させる。これにより、軸27の回転が給送ローラ25へ伝達されて給送ローラ25が回転して、給送トレイ20に積載された用紙12が搬送路65へ給送される。給送モータ101が正転すると、第2伝達部182のギヤ83が回転する。したがって、ギヤ83と噛合する第5伝達部185のギヤ100も回転するが、スライドギヤ160が第2中央位置MP2にあるので、ギヤ100の回転はスライドギヤ160へ伝達されない。したがって、給送モータ101を正転しつつ搬送モータ102を回転できる。給送処理によって、給紙トレイ20に積載された用紙12の前端が搬送ローラ部54に到達する。
【0104】
制御部130は、給送処理が終了すると、給送モータ101を若干だけ逆回転する。給送モータ101の逆回転によって、第2伝達部182の遊星ギヤ82がギヤ83から離れる。また、制御部130は、第2中央位置MP2のスライドギヤ160を第1中央位置MP1へ移動する(S23)。詳細には、制御部130は、キャリッジモータ103を駆動してキャリッジ23を左方へ移動させる。キャリッジ23がレバー部材175から右方へ離れると、スライドギヤ160は、第2コイルバネ169に付勢されて第2中央位置MP2から第1中央位置MP1へ移動しようとする。
【0105】
スライドギヤ160の移動において、制御部130は、搬送モータ102を微少に正回転/逆回転を数回繰り返す。このような搬送モータ102の微少回転によって、スライドギヤ160も同様に微少に正回転/逆回転を繰り返す。スライドギヤ160の微少回転によって、スライドギヤ160の歯及びギヤ90の歯の位相が合致して、スライドギヤ160がギヤ90と噛合する。
【0106】
そして、制御部130は、前述と同様に、搬送処理(S14)から排出処理(S19)までを実行する。そして、制御部130は、更に次の用紙12への印刷があれば(S20:Yes)、S21の処理を実行し、次の用紙12への印刷がなければ(S20:No)、両面記録処理を終了する。
【0107】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、搬送モータ102の正回転が太陽ギヤ92及び遊星ギヤ93を介してギヤ96に伝達されていた状態から、搬送モータ102が逆回転へ微少に回転すると、ギヤ91の軸91Aに対して太陽ギヤ92が空転可能となり、ギヤ96からの面圧によって遊星ギヤ93がギヤ96から離れる向きへ移動する。遊星ギヤ93及びギヤ96~100及びギヤ83からの面圧が消失する。また、遊星ギヤ93の移動に伴って太陽ギヤ92が空転することによって、スライドギヤ160とギヤ90との面圧が減少する。したがって、スライドギヤ160とギヤ90との面圧を減少させるために、搬送モータ102を逆転させる量が少なくなる。特に、スライドギヤ160を第1中央位置MP1から第2中央位置MP2へ移動させるために要する時間が短縮され、両面記録処理に要する時間が短縮される。
【0108】
また、遊星ギヤ94及び板バネ189がカウンターウェイトとして機能するので、遊星ギヤ93がギヤ96から離れる向きへ移動し易い。
【0109】
[変形例]
上記実施形態では、クラッチ機構190は、ギヤ91の軸91Aと太陽ギヤ92との駆動伝達を行うものであったが、クラッチ機構190は、その他の駆動伝達を行うものとして実現されてもよい。例えば、クラッチ機構190は、第2伝達部182において、ギヤ81と遊星ギヤ82との駆動伝達を行うものとして実現されてもよい。この場合、給送処理を終了した後、遊星ギヤ82がギヤ81から離れるために、給送モータ101を逆回転する量が少なくなる。
【0110】
また、上記実施形態では、クラッチ機構190は、ギヤ91の軸91Aに設けられたキー191と、太陽ギヤ92の軸孔92Aに設けられたキー溝192とを有するが、別の形態でクラッチ機構190が実現されてもよい。例えば、ギヤ91は軸91Aを有さずキー溝192を有する軸孔を有しており、太陽ギヤ92は軸孔92Aを有さずキー191を有する軸を有していてもよい。また、キー及びキー溝は、軸や軸孔に設けられなくてもよい。例えば、ギヤ91の側面と太陽ギヤ92の側面とが対向しており、各側面に設けられたキー及びキー溝によって、ギヤ91と太陽ギヤ92との間で駆動伝達が行われてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、遊星ギヤ94及び板バネ189が、遊星ギヤ93に対するカウンターウェイトとして実現されているが、遊星ギヤ94及び板バネ189に代えて、重りがカウンターウェイトとしてアーム188に設けられてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、レバー部材175は、スライドギヤ160の右方に配置されていたが、他の配置位置でもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、搬送装置は、用紙12に画像を記録するプリンタ部11に搭載されていたが、搬送装置は、プリンタ部11以外に搭載されていてもよい。例えば、搬送装置は、複合機10等に設けられており、用紙12に記載された画像を読み取るスキャナに搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0114】
11・・・プリンタ部(搬送装置)
23・・・キャリッジ
39・・・記録ヘッド
64・・・搬送ローラ
90・・・ギヤ(第3伝達ギヤ)
91・・・ギヤ(第1伝達ギヤ)
92・・・太陽ギヤ
93・・・遊星ギヤ(第1遊星ギヤ)
94・・・遊星ギヤ(第2遊星ギヤ、カウンターウェイト)
96・・・ギヤ(第2伝達ギヤ)
102・・・搬送モータ(モータ)
130・・・制御部
160・・・スライドギヤ
168・・・第1コイルバネ(付勢部材)
170・・・スライド機構(第1駆動伝達機構)
175・・・レバー部材
181・・・第1伝達部(第1駆動伝達機構)
184・・・第4伝達部(第1駆動伝達機構)
185・・・第5伝達部(第3駆動伝達機構)
189・・・板バネ(カウンターウェイト)
190・・・クラッチ機構(第2駆動伝達機構)
192・・・側面(第1面)
193・・・側面(第2面)