(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080614
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20220523BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F28F3/08 301Z
F28D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191782
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古川 左帆里
(72)【発明者】
【氏名】松下 稔
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103AA11
3L103AA13
3L103AA31
3L103DD15
3L103DD57
3L103DD58
(57)【要約】
【課題】伝熱プレート間に挟み込まれて流路を形成するガスケットが劣化し難いプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、複数の伝熱プレートと伝熱プレート間に挟み込まれる複数のガスケットと、を有するプレート積層部を備え、プレート積層部は、各伝熱プレート間に流路が形成されている流路形成部と、各伝熱プレート間にガスケットが挟み込まれると共に流路形成部を囲むガスケット挟持部と、ガスケット挟持部においてガスケットを挟み込んでいる二つの伝熱プレートの対向する部位同士が当接することで形成される少なくとも一つの壁部と、を有し、少なくとも一つの壁部は、ガスケット挟持部に対して、流路形成部側及び該流路形成部側と反対側の少なくとも一方側において流路形成部を囲む、ことを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に重ね合わされた複数の伝熱プレートと、前記複数の伝熱プレートのうちの前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレート間に挟み込まれることで該伝熱プレート間に流体の流通可能な流路を形成する複数のガスケットと、を有するプレート積層部を備え、
前記プレート積層部は、
各伝熱プレート間に前記流路が形成されている流路形成部と、
前記各伝熱プレート間に前記ガスケットが挟み込まれると共に、これら伝熱プレート間に挟まれた前記ガスケットが前記所定方向に並んでいるガスケット挟持部であって、前記流路形成部を囲むガスケット挟持部と、
前記ガスケット挟持部において前記ガスケットを挟み込んでいる二つの伝熱プレートの対向する部位同士が前記所定方向に当接することで形成される少なくとも一つの壁部と、を有し、
前記少なくとも一つの壁部は、前記ガスケット挟持部に対して、流路形成部側である内側及び該流路形成部側と反対側である外側の少なくとも一方側において前記流路形成部を囲む、プレート式熱交換器。
【請求項2】
前記プレート積層部において、前記複数の伝熱プレートは、それぞれ分離可能に重ね合わされ、
前記少なくとも一つの壁部は、前記ガスケットを挟み込んでいる二つの伝熱プレートにおいて、互いに接近する方向に凸となる凸条の頂部同士が当接することによって形成され、
前記頂部同士が当接する凸条のうちの少なくとも一方の凸条の横断面において、
該凸条は、前記頂部からそれぞれ延び且つ該頂部から離れるにつれて互いの間隔が大きくなる一対の傾斜部を有し、
前記一対の傾斜部のうちの少なくとも一方の傾斜部は、該傾斜部を構成する伝熱プレートの一方の面側と他方の面側とに少なくとも一つずつ凸となるような波形状である、請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記プレート積層部は、前記所定方向における前記壁部の少なくとも一方側に配置される補助ガスケットを有し、
前記補助ガスケットは、前記壁部と、該壁部と前記所定方向に隣り合う伝熱プレートと、を互いに離間する方向に押圧する、請求項1又は2に記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記プレート積層部は、前記ガスケット挟持部において伝熱プレート間に挟み込まれる各ガスケットと対応する位置に配置される複数の壁部を該ガスケット挟持部の前記外側に有し、
各伝熱プレートは、前記ガスケット挟持部を構成する部位と、前記壁部を構成する部位との間に前記所定方向に貫通する第一孔部及び第二孔部を有し、
前記プレート積層部において、
前記複数の伝熱プレートは、第一流体が流れる第一流路と第二流体が流れる第二流路とを各伝熱プレートを介して前記所定方向に交互に形成し、
前記各伝熱プレートの前記第一孔部は、前記所定方向に連なることによって、前記第一流路を形成する二つの伝熱プレートにおける前記ガスケット挟持部の前記ガスケットと、該ガスケットの前記外側の前記壁部との間に画定される各第一漏れ空間とそれぞれ連通する第一漏れ検知流路を構成し、
前記各伝熱プレートの前記第二孔部は、前記所定方向に連なることによって、前記第二流路を形成する二つの伝熱プレートにおける前記ガスケット挟持部の前記ガスケットと、該ガスケットの前記外側の前記壁部との間に画定される各第二漏れ空間とそれぞれ連通する第二漏れ検知流路を構成する、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレート式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱プレート間にガスケットが挟み込まれたプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、
図13に示すように、所定方向に重ね合わされた複数の伝熱プレート501と、伝熱プレート501間に挟み込まれることで該伝熱プレート501間に流体の流通可能な流路Rを形成する複数のガスケット502と、を備えたプレート式熱交換器500が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
複数の伝熱プレート501のそれぞれは、金属製のプレートであり、熱伝導性を有する。また、伝熱プレート501間に挟み込まれるガスケット502のそれぞれは、樹脂製であり、弾性を有する。
【0004】
このプレート式熱交換器500では、高温の流体と低温の流体とが各伝熱プレート501を介して交互に流通することで、流体間の熱交換が伝熱プレート501を通じて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のプレート式熱交換器500では、流路Rを形成するためのガスケット502は、流路R内を流通する流体又は空気(外気)と接する。このため、ガスケット502では、酸化等による劣化が生じ易い。この劣化が進行すると、伝熱プレート501とガスケット502との間から流路Rを流通する流体が漏れ出る、即ち、プレート式熱交換器500において液漏れが生じる。
【0007】
そこで、本発明は、伝熱プレート間に挟み込まれて流路を形成するガスケットが劣化し難いプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプレート式熱交換器は、
所定方向に重ね合わされた複数の伝熱プレートと、前記複数の伝熱プレートのうちの前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレート間に挟み込まれることで該伝熱プレート間に流体の流通可能な流路を形成する複数のガスケットと、を有するプレート積層部を備え、
前記プレート積層部は、
各伝熱プレート間に前記流路が形成されている流路形成部と、
前記各伝熱プレート間に前記ガスケットが挟み込まれると共に、これら伝熱プレート間に挟まれた前記ガスケットが前記所定方向に並んでいるガスケット挟持部であって、前記流路形成部を囲むガスケット挟持部と、
前記ガスケット挟持部において前記ガスケットを挟み込んでいる二つの伝熱プレートの対向する部位同士が前記所定方向に当接することで形成される少なくとも一つの壁部と、を有し、
前記少なくとも一つの壁部は、前記ガスケット挟持部に対して、流路形成部側である内側及び該流路形成部側と反対側である外側の少なくとも一方側において前記流路形成部を囲む。
【0009】
このように、壁部がガスケット挟持部の内側及び外側の少なくとも一方で流路形成部を囲うことで、ガスケット挟持部において該壁部を構成する二つの伝熱プレートに挟み込まれたガスケット側への外部からの空気又は流路からの流体の移動が抑えられ、これにより、当該ガスケットにおける空気又は流体との接触に起因する劣化が抑えられる。
【0010】
前記プレート式熱交換器では、
前記プレート積層部において、前記複数の伝熱プレートは、それぞれ分離可能に重ね合わされ、
前記少なくとも一つの壁部は、前記ガスケットを挟み込んでいる二つの伝熱プレートにおいて、互いに接近する方向に凸となる凸条の頂部同士が当接することによって形成され、
前記頂部同士が当接する凸条のうちの少なくとも一方の凸条の横断面において、
該凸条は、前記頂部からそれぞれ延び且つ該頂部から離れるにつれて互いの間隔が大きくなる一対の傾斜部を有し、
前記一対の傾斜部のうちの少なくとも一方の傾斜部は、該傾斜部を構成する伝熱プレートの一方の面側と他方の面側とに少なくとも一つずつ凸となるような波形状であってもよい。
【0011】
このように、一対の傾斜部のうちの少なくとも一方の傾斜部の断面形状を波形状にして該傾斜部にバネ性を持たせることで、複数の伝熱プレートを所定方向に重ね合わせてプレート積層部を形成したときの壁部を構成する凸条(横断面が波形状の傾斜部を有する凸条)に加わる所定方向の力を傾斜部の弾性変形によって吸収させ、これにより、該凸条での前記所定方向の力に起因する凹み等の変形を抑えることができる。しかも、少なくとも一方の傾斜部にバネ性を持たせることで、プレート積層部を分解して各伝熱プレートを分離させたときに、前記凸条に変形が残りにくい、即ち、前記弾性変形後の形状が各伝熱プレートの分離によって元に戻るため、該伝熱プレートを再度重ね合わせてプレート積層部を形成する(再利用)ことができる。
【0012】
また、前記プレート式熱交換器では、
前記プレート積層部は、前記所定方向における前記壁部の少なくとも一方側に配置される補助ガスケットを有し、
前記補助ガスケットは、前記壁部と、該壁部と前記所定方向に隣り合う伝熱プレートと、を互いに離間する方向に押圧してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、壁部を構成する一方の伝熱プレートの部位が該壁部を構成する他方の伝熱プレートの部位に向けて補助ガスケットによって押されるため、該壁部を構成する二つの伝熱プレートの部位間を通じた空気や流体のガスケット挟持部側(ガスケット側)への移動がより確実に抑えられる。
【0014】
また、前記プレート式熱交換器において、
前記プレート積層部は、前記ガスケット挟持部において伝熱プレート間に挟み込まれる各ガスケットと対応する位置に配置される複数の壁部を該ガスケット挟持部の前記外側に有し、
各伝熱プレートは、前記ガスケット挟持部を構成する部位と、前記壁部を構成する部位との間に前記所定方向に貫通する第一孔部及び第二孔部を有し、
前記プレート積層部において、
前記複数の伝熱プレートは、第一流体が流れる第一流路と第二流体が流れる第二流路とを各伝熱プレートを介して前記所定方向に交互に形成し、
前記各伝熱プレートの前記第一孔部は、前記所定方向に連なることによって、前記第一流路を形成する二つの伝熱プレートにおける前記ガスケット挟持部の前記ガスケットと、該ガスケットの前記外側の前記壁部との間に画定される各第一漏れ空間とそれぞれ連通する第一漏れ検知流路を構成し、
前記各伝熱プレートの前記第二孔部は、前記所定方向に連なることによって、前記第二流路を形成する二つの伝熱プレートにおける前記ガスケット挟持部の前記ガスケットと、該ガスケットの前記外側の前記壁部との間に画定される各第二漏れ空間とそれぞれ連通する第二漏れ検知流路を構成してもよい。
【0015】
かかる構成によれば、プレート積層部が各第一漏れ空間と連通する第一漏れ検知流路と各第二漏れ空間と連通する第二漏れ検知流路とを有しているため、第一漏れ検知流路及び第二漏れ検知流路のいずれかの検知流路から流体が排出されることによって、ガスケット挟持部において第一流体及び第二流体のいずれの流体の液漏れが発生したかを検知することができる。
【0016】
また、ガスケット挟持部において第一流体と第二流体との両方の液漏れが発生したとしても、第一流体と第二流体とを接触させることなく別々の経路(第一漏れ検知流路と第二漏れ検知流路と)で外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上より、本発明によれば、伝熱プレート間に挟み込まれて流路を形成するガスケットが劣化し難いプレート式熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るプレート式熱交換器の斜視図である。
【
図2】
図2は、前記プレート式熱交換器の分解斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、前記プレート式熱交換器が備えるプレート積層部の正面図である。
【
図3B】
図3Bは、前記プレート積層部における流路形成部とガスケット挟持部と外側シール部との範囲を示す図である。
【
図4】
図4は、前記プレート積層部の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、前記プレート積層部を構成する第一伝熱プレートを第一面側から見た図である。
【
図6】
図6は、前記第一伝熱プレートを第二面側から見た図である。
【
図7】
図7は、
図3AのVII-VII位置における断面の一部拡大図である。
【
図8】
図8は、
図3AのVII-VII位置における断面の一部拡大図である。
【
図9】
図9は、第一漏れ空間の範囲を示す図である。
【
図12】
図12は、他実施形態のプレート積層部における断面の一部拡大図である。
【
図13】
図13は、従来のプレート式熱交換器の断面の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図11を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係るプレート式熱交換器(以下、単に「熱交換器」と称する。)は、
図1~
図4に示すように、複数の伝熱プレート3を有するプレート積層部2を備える。また、熱交換器1は、プレート積層部2を挟み込む一対のフレーム5a、5bと、プレート積層部2と一対のフレーム5a、5bとを配置位置にガイドするガイド部6と、一対のフレーム5a、5bを互いの間隔が小さくなる方向に締め付け可能な複数の締付部材7と、を備える。
【0021】
プレート積層部2は、所定方向に重ね合わされる複数の伝熱プレート3と、複数の伝熱プレート3のうちの所定方向に隣り合う二つの伝熱プレート3のプレート間(以下、単に「プレート間」とも称する。)に挟み込まれる複数のガスケット4と、を有する。
【0022】
このプレート積層部2は、流体A、Bが流通することで該流体A、Bの熱交換が行われる複数の流路Ra、Rbと、プレート積層部2の外部から各流路Ra、Rbへ流体A、Bを流入させ、又は各流路Ra、Rbからプレート積層部2の外部へ流体A、Bを流出させる複数の連通路Rc、Rdと、を備える。また、本実施形態のプレート積層部2は、各流路Ra、Rbから漏れ出た流体A、Bをプレート積層部2の外部に排出する複数の漏れ検知流路Re、Rfを備える。
【0023】
具体的に、プレート積層部2は、重ね合わされた複数の伝熱プレート3の各プレート間に流路Ra、Rbを有する。本実施形態のプレート積層部2では、二種類の矩形状(長方形状)の伝熱プレート(第一伝熱プレート3A、第二伝熱プレート3B)が交互に重ね合わされることで、各伝熱プレート3A、3Bを境に第一流体Aが流通可能な第一流路Raと第二流体Bが流通可能な第二流路Rbとが交互に形成されている。そして、プレート積層部2において、第一流路Raを流れる第一流体Aと、第二流路Rbを流れる第二流体Bとが、第一流路Raと第二流路Rbとを隔てる伝熱プレート3A、3Bを通じて熱交換する。以下では、伝熱プレート3が重ね合わされる方向(所定方向)を直交座標系のX軸方向とし、伝熱プレート3の短辺方向を直交座標系のY軸方向とし、伝熱プレート3の長辺方向を直交座標系のZ軸方向として、熱交換器1の各構成を説明する。
【0024】
また、プレート積層部2は、それぞれがX軸方向に延び且つ第一流路Raのみに連通する一対の第一連通路Rc1、Rc2と、それぞれがX軸方向に延び且つ第二流路Rbのみに連通する一対の第二連通路Rd1、Rd2と、を有する。これら一対の第一連通路Rc1、Rc2のうちの一方の第一連通路Rc1は、第一流体Aをプレート積層部2の外部から各第一流路Raに流入させ(案内し)、他方の第一連通路Rc2は、第一流体Aを各第一流路Raからプレート積層部2の外部へ流出させる(案内する)。また、一対の第二連通路Rd1、Rd2のうちの一方の第二連通路Rd1は、第二流体Bをプレート積層部2の各第二流路Rbに流入させ(案内し)、他方の第二連通路Rd2は、第二流体Bを各第二流路Rbからプレート積層部2の外部へ流出させる(案内する)。
【0025】
また、プレート積層部2は、X軸方向に延びる少なくとも一つの第一漏れ検知流路Reと、X軸方向に延びる少なくとも一つの第二漏れ検知流路Rfと、を有する。本実施形態のプレート積層部2は、二つの第一漏れ検知流路Reと、二つの第二漏れ検知流路Rfと、を有する。これら二つの第一漏れ検知流路Reのそれぞれは、所定のプレート間に形成される第一漏れ空間Rg1(
図9においてスモークで示す範囲)にのみ連通し、第一流体Aが第一流路Raから第一漏れ空間Rg1に漏れ出たときに該漏れ出た第一流体Aをプレート積層部2の外部へ排出する(案内する)。また、二つの第二漏れ検知流路Rfのそれぞれは、所定のプレート間に形成される第二漏れ空間Rg2(
図10においてスモークで示す範囲)にのみ連通し、第二流体Bが第二流路Rbから第二漏れ空間Rg2に漏れ出たときに該漏れ出た第二流体Bをプレート積層部2の外部へ排出する(案内する)。尚、これら第一漏れ空間Rg1及び第二漏れ空間Rg2の詳細については後述する。
【0026】
複数の伝熱プレート3のそれぞれは、X軸方向と直交する方向に広がる。これら複数の伝熱プレート3のそれぞれは、
図5及び
図6にも示すように、X軸方向の一方の面である第一面S1と該第一面S1の反対側の面(他方の面)である第二面S2とのそれぞれに複数の凸部3C及び複数の凹部3Rを有する。尚、
図2、
図3A、
図4~
図6、
図9、
図10において、凸部3C及び凹部3Rの構成(形状、位置、数等)は、簡略化して示している。
【0027】
これら複数の伝熱プレート3のそれぞれは、金属プレート(薄板)がプレス成型されることによって形成されている。このため、第二面S2において、第一面S1の凸部3Cと対応する位置(即ち、該凸部3Cの裏面)に凹部3Rが位置し、第一面S1の凹部3Rと対応する位置(即ち、該凹部3Rの裏面)に凸部3Cが位置している。即ち、各伝熱プレート3において、第一面S1の凸部3Cと、該凸部3Cと対応する第二面S2の凹部3Rとが表裏の関係であり、且つ、第一面S1の凹部3Rと、該凹部3Rと対応する第二面S2の凸部3Cとが表裏の関係である。
【0028】
本実施形態の複数の伝熱プレート3は、二種類の伝熱プレート(第一伝熱プレート3A、第二伝熱プレート3B)を含み、これら二種類の伝熱プレート3A、3Bでは、一部の構成(後述のガスケット配置部34)を除いて、一方の伝熱プレート(第二伝熱プレート)3Bは、反転させた状態の他方の伝熱プレート(第一伝熱プレート)3Aと同じ構成である。具体的に、第一伝熱プレート3Aの凸部3C及び凹部3Rの配置パターン(X軸方向視の形状、断面形状、凹凸方向等)は、
図5及び
図6に示す通りであり、第二伝熱プレート3Bの凸部3C及び凹部3Rの配置パターンは、ガスケット配置部34を除いて、反転させた状態の第一伝熱プレート3Aの凸部3C及び凹部3Rと同じである(
図10参照)。
【0029】
具体的に、各伝熱プレート3A、3Bは、Z軸方向の中央部に配置される主伝熱部31と、Z軸方向の端部に配置される連通部32と、主伝熱部31と連通部32との間に配置される堰部33と、を有する。本実施形態の各伝熱プレート3A、3Bは、Z軸方向の両端部に連通部32をそれぞれ有し、主伝熱部31と一方の連通部32との間、及び主伝熱部31と他方の連通部32との間のそれぞれに、堰部33を有する。即ち、各伝熱プレート3A、3Bは、一対の連通部32と一対の堰部33とを有する。
【0030】
また、各伝熱プレート3A、3Bは、
図7及び
図8にも示すように、ガスケット4が配置されるガスケット配置部34と、ガスケット配置部34の外側においてX軸方向に隣り合う伝熱プレート3B、3Aと当接することによって壁部305を構成する壁構成部30と、を有する。また、本実施形態の各伝熱プレート3A、3Bは、Z軸方向の両端に一対のガイド用切欠き35も有している。
【0031】
主伝熱部31は、伝熱プレート3A、3Bにおいて該伝熱プレート3A、3Bを境に形成される第一流路Raと第二流路Rbとを流れる流体間(第一流体Aと第二流体Bとの間)の熱交換の大部分が行われる部位である。本実施形態の主伝熱部31は、X軸方向から見て四角状の部位である。
【0032】
この主伝熱部31は、両面に、複数の凸部31C及び複数の凹部31Rをそれぞれ有する。これら複数の凸部31C及び複数の凹部31Rは、伝熱効率や熱交換を行う流体(第一流体A及び第二流体B)の種類等に応じて配置や形態が設定される。本実施形態の主伝熱部31の各面に配置される複数の凸部31C及び複数の凹部31Rは、波形状であるが、この形状(配置)に限定されない。尚、これら複数の凸部31Cは、伝熱プレート3A、3Bの複数の凸部3Cに含まれ、複数の凹部31Rは、伝熱プレート3A、3Bの複数の凹部3Rに含まれる。
【0033】
一対の連通部32のそれぞれは、X軸方向に貫通する複数の第一貫通孔321と少なくとも一つの第二貫通孔322とを有する。本実施形態の各連通部32は、二つの第一貫通孔321a、321bと、二つの第二貫通孔(第一孔部、第二孔部)322a、322bと、を有する。これら一対の連通部32のそれぞれも、両面に、複数の凸部32C及び複数の凹部32Rを有する。これら複数の凸部32C及び複数の凹部32Rは、確保したい伝熱プレート3A、3Bの強度の大きさや確保したい流体A、Bの流通空間の大きさ、熱交換を行う流体A、Bの種類等に応じて、配置や形態が設定される。尚、これら複数の凸部32Cは、伝熱プレート3A、3Bの複数の凸部3Cに含まれ、複数の凹部32Rは、伝熱プレート3A、3Bの複数の凹部3Rに含まれる。
【0034】
具体的に、各連通部32において、二つの第一貫通孔321a、321bは、Y軸方向に間隔をあけて配置されている。これにより、各伝熱プレート3A、3Bの四隅には、第一貫通孔321がそれぞれ配置されている。
【0035】
これら各第一貫通孔321は、複数の伝熱プレート3A、3Bが重ね合わされた状態で(即ち、プレート積層部2において)X軸方向に連なることで連通路Rc、Rdを形成する。本実施形態の各伝熱プレート3A、3Bでは、これら四つの第一貫通孔321のそれぞれは、円形の孔であり、各第一貫通孔321の大きさ(直径)は、同じである。
【0036】
また、各連通部32において、二つの第二貫通孔322a、322bは、対応する第一貫通孔321a、321bに対し、伝熱プレート3A、3Bの端部側、詳しくは、伝熱プレート3A、3Bの隅(隅部)により近い位置に配置されている。
【0037】
これら各第二貫通孔322は、複数の伝熱プレート3A、3Bが重ね合わされた状態で(即ち、プレート積層部2において)X軸方向に連なることで漏れ検知流路Re、Rfを形成する。この第二貫通孔322は、第一貫通孔321より小さい。本実施形態の各伝熱プレート3A、3Bでは、これら四つの第二貫通孔322のそれぞれは、円形の孔であり、各第二貫通孔322の大きさ(直径)は同じである。
【0038】
また、第一伝熱プレート3Aの各連通部32における一方側(
図5における右側/
図6における左側)の第二貫通孔322aの孔周縁部(第二貫通孔周縁部)3220は、第一面S1側から見て凸部であり、第二面S2側から見て凹部である。これに対し、各連通部32における他方側(
図5における左側/
図6における右側)の第二貫通孔322bの孔周縁部(第二貫通孔周縁部)3220は、第一面S1側から見て凹部であり、第二面S2側から見て凸部である。
【0039】
一方、第二伝熱プレート3Bの各連通部32における一方側の第二貫通孔322aの孔周縁部(第二貫通孔周縁部)3220は、第一面S1側から見て凹部であり、第二面S2側から見て凸部である。これに対し、各連通部32における他方側の第二貫通孔322bの孔周縁部(第二貫通孔周縁部)3220は、第一面S1側から見て凸部であり、第二面S2側から見て凹部である。
【0040】
これら一対の連通部32のうちの一方側(
図5の上側)の連通部32uの各構成と、一対の連通部32のうちの他方側(
図5の下側)の連通部32dの各構成とは、X軸方向から見て、横中心線CL2を対称軸にして線対称である。この横中心線CL2は、伝熱プレート3A、3BのZ軸方向の中心をY軸方向に延びる仮想線である。
【0041】
また、各連通部32u、32dの各構成は、X軸方向から見て、縦中心線CL1を対称軸にした略線対称な配置及び形状になっている。ここで、縦中心線CL1は、伝熱プレート3A、3BのY軸方向の中心をZ軸方向に延びる仮想線である。そして、各連通部32u、32dにおける縦中心線CL1の一方側(
図5においては右側/
図6においては左側)の第一領域T1における各構成と、各連通部32u、32dにおける縦中心線CL1の他方側(
図5においては左側/
図6においては右側)の第二領域T2における各構成とは、X軸方向における変位方向が逆になっている。
【0042】
例えば具体的には、第二領域T2におけるX軸方向の一方側に突出する(変位する)構成(例えば凸部32C)と対応する第一領域T1の構成は、X軸方向の他方側に凹む(変位する)構成(例えば凹部32R)であり、第二領域T2におけるX軸方向の他方側に凹む(変位する)構成(例えば凹部32R)と対応する第一領域T1の構成は、X軸方向の一方側に突出する(変位する)構成(例えば凸部32C)である。
【0043】
図5及び
図6に示すように、一対の堰部33のそれぞれは、第一面S1又は第二面S2に沿って第一貫通孔321から主伝熱部31に向かう流体A、Bの流れをY軸方向に拡散させ、又は、第一面S1又は第二面S2に沿って主伝熱部31から第一貫通孔321に向かう流体A、Bの流れをY軸方向に集束させる部位である。
【0044】
具体的に、各堰部33は、主伝熱部31との境界を底辺とし、連通部32の二つの第一貫通孔321a、321bの中間位置を頂点とする三角状の部位である。この堰部33は、両面に、複数の凸部33C及び複数の凹部33Rをそれぞれ有する。これら複数の凸部33C及び複数の凹部33Rは、主伝熱部31のY軸方向の寸法や、第一貫通孔321から主伝熱部31迄の距離、熱交換を行う流体A、Bの種類等に応じて配置や形態が設定されるものであり、
図5及び
図6に示す形状や配置に限定されない。
【0045】
これら各堰部33においても、伝熱プレート3A、3Bを境に形成される第一流路Raと第二流路Rbとを流れる流体間(第一流体Aと第二流体Bとの間)の熱交換が行われる。尚、これら複数の凸部33Cは、伝熱プレート3A、3Bの複数の凸部3Cに含まれ、複数の凹部33Rは、伝熱プレート3A、3Bの複数の凹部3Rに含まれる。
【0046】
ガスケット配置部34は、
図5~
図7に示すように、例えば、流路Ra、Rbの周囲や第一貫通孔321の周囲等のプレート間においてシールが必要な位置に設けられ、ガスケット4の形状に沿って延びる平坦部341と、平坦部341からのガスケット4の幅方向(平坦部341に沿い且つガスケット4の延びる方向と直交する方向)の移動を規制する一対の規制部342と、を有する。
【0047】
本実施形態の第一伝熱プレート3Aのガスケット配置部(第一ガスケット配置部)34Aの構成と、第二伝熱プレート3Bのガスケット配置部(第二ガスケット配置部)34Bの構成とにおいては、伝熱プレート3の他の部位(ガスケット配置部34以外の部位)のように、第二ガスケット配置部34Bが、反転させた状態の第一伝熱プレート3Aにおける第一ガスケット配置部34Aの構成(凹凸の配置パターン)と同じ構成にはなっていない。具体的には、以下の通りである。
【0048】
平坦部341は、帯状の平らな部位であり、隣り合う伝熱プレート3のガスケット配置部34(詳しくは、平坦部341)との間にガスケット4を挟み込む部位であり、第一ガスケット配置部34Aの平坦部341と、第二ガスケット配置部34Bの平坦部341とは、同じ構成である。
【0049】
一対の規制部342は、帯状の平坦部341の幅方向の両側、即ち、平坦部341に位置するガスケット4の幅方向の両側に設けられる部位である。具体的に、各規制部342は、平坦部341と隣接する領域において平坦部341の延びる方向に凸部342Cと凹部342Rとが交互に繰り返し形成された部位である。
【0050】
本実施形態の第一ガスケット配置部34Aの各規制部342と第二ガスケット配置部34Bの対応する(X軸方向に隣り合う)規制部342とは、平坦部341の延びる方向において、凸部342Cと凹部342Rとの配置が逆になっている。即ち、各伝熱プレート3A、3Bが重ね合わされた状態で第一面S1側から見たときに、第二ガスケット配置部34Bの規制部342において、第一ガスケット配置部34Aの規制部342における凸部342CとX軸方向に対向する(隣り合う)部位は、凹部342Rであり、第一ガスケット配置部34Aの規制部342における凹部342RとX軸方向に対向する(隣り合う)部位は、凸部342Cである(
図7参照)。
【0051】
これら規制部342を構成する複数の凸部342Cと複数の凹部342Rとは、規制部342としてのみの働く構成であってもよい。また、例えば、主伝熱部31の凸部31C及び凹部31R等の他の構成の凸部3Cと凹部3Rとが規制部342として働く構成、即ち、他の構成の凸部3Cと凹部3Rとの一部又は全部が、規制部342の凸部342Cと凹部342Rとを兼ねた構成であってもよい。本実施形態の伝熱プレート3A、3Bでは、例えば、主伝熱部31のY軸方向の両側に形成されたガスケット配置部34における主伝熱部31側の規制部342は、主伝熱部31の凸部31Cの端部と凹部31Rの端部とによって構成されている。尚、これら複数の凸部342Cは、伝熱プレート3A、3Bの複数の凸部3Cに含まれ、複数の凹部342Rは、伝熱プレート3A、3Bの複数の凹部3Rに含まれる。
【0052】
壁構成部30は、ガスケット配置部34に沿って該ガスケット配置部34を囲うように配置されている。本実施形態の壁構成部30は、伝熱プレート3A、3Bの周縁部に配置されている。この壁構成部30は、X軸方向に隣り合う伝熱プレート3B、3Aの壁構成部30と当接することで、プレート間においてガスケット4(ガスケット配置部34)で囲まれた領域から外側に流体A、Bが漏れ出たときに、この漏れ出た流体A、Bが該プレート間からプレート積層部2の外部に漏れ出ることを防ぐ壁部305を形成する。
【0053】
具体的に、壁構成部30は、ガスケット配置部34と間隔をあけた状態で該ガスケット配置部34を囲う内側環状部301と、内側環状部301の外側で該内側環状部301と隣接し且つガスケット配置部34を囲う外側環状部302と、を有する。
【0054】
第一伝熱プレート3Aにおいて、この内側環状部301は、第一面S1側が凹となり、第二面S2側が凸となる部位であり、外側環状部302は、第一面S1側が凸となり、第二面S2側が凹となる部位である(
図7参照)。即ち、第一伝熱プレート3Aにおいて、内側環状部301は、第二面S2側から見たときに所定の領域を囲む凸条であり、外側環状部302は、第一面S1側から見たときに所定の領域を囲む凸条である。一方、第二伝熱プレート3Bにおいて、内側環状部301は、第一面S1側が凸となり、第二面S2側が凹となる部位であり、外側環状部302は、第一面S1側が凹となり、第二面S2側が凸となる部位である。即ち、第二伝熱プレート3Bにおいて、内側環状部301は、第一面S1側から見たときに所定の領域を囲む凸条であり、外側環状部302は、第二面S2側から見たときに所定の領域を囲む凸条である。本実施形態の内側環状部301と外側環状部302とは、第一伝熱プレート3A及び第二伝熱プレート3Bのいずれにおいても、各部位の幅方向において連続して形成されている。
【0055】
この壁構成部30では、複数の伝熱プレート3A、3Bが重ね合わされてプレート積層部2が構成された状態のときに、伝熱プレート(例えば、第一伝熱プレート)3Aの壁構成部30と、該伝熱プレート3AのX軸方向の他方側で隣り合う伝熱プレート(
図7において下側の第二伝熱プレート)3B1の壁構成部30とでは、内側環状部301の頂部301T同士が当接し、且つ、外側環状部302の底部302B同士がX軸方向に離間している。また、伝熱プレート3Aの壁構成部30と、該伝熱プレート3AのX軸方向の一方側で隣り合う伝熱プレート3(
図7において上側の第二伝熱プレート)3B2の壁構成部30とでは、内側環状部301の底部301B同士がX軸方向に離間し、且つ、外側環状部302の頂部302T同士がX軸方向に当接している。
【0056】
これら内側環状部301と外側環状部302の各頂部301T、302Tの各横断面形状は、曲率の小さな円弧状又は直線状である。これにより、内側環状部301及び外側環状部302の頂部301T、302Tの位置が製造誤差等によって僅かにずれていても(詳しくは、幅方向にずれていても)、伝熱プレート3が重ね合わされたときに頂部301T、302T同士が当接できる。
【0057】
本実施形態の第一伝熱プレート3Aと第二伝熱プレート3Bとの各壁構成部30における内側環状部301と外側環状部302との各頂部301T、302TのX軸方向の位置は、プレート積層部2が一対のフレーム5a、5bによって挟み込まれていない状態では、対向する頂部301T、302T同士が当接した状態のときに他の位置で対向する凸部3C間には隙間ができているような位置にそれぞれ設定されている。これにより、各伝熱プレート3A、3Bとガスケット4との間のシール性が十分確保されるように一対のフレーム5a、5bによってプレート積層部2がX軸方向において十分な力で挟み込まれたときに、内側環状部301及び外側環状部302の各頂部301T、302T同士が十分な力で当接した状態で壁部305が構成され、これにより、該壁部305におけるシール性が十分に確保される。
【0058】
内側環状部301は、
図8にも示すように、横断面形状において底部301B(該底部301Bが形成されている面と反対の面側から見たときの頂部301T)からそれぞれ延び且つ底部301Bから離れるにつれて互いの間隔が大きくなる一対の傾斜部3011を有する。この一対の傾斜部3011のうちの少なくとも一方の傾斜部3011は、横断面において、該傾斜部3011の一方の面(第一面S1)側と他方の面(第二面S2)側とに少なくとも一つずつ凸となるような波形状である。本実施形態の内側環状部301では、前記横断面において、一対の傾斜部3011のそれぞれが前記波形状である。
【0059】
また、外側環状部302は、横断面形状において、頂部302T(該頂部302Tが形成されている面と反対の面側から見たときの底部302B)からそれぞれ延び且つ頂部302Tから離れるにつれて互いの間隔が大きくなる一対の傾斜部3021を有する。この一対の傾斜部3021のうちの少なくとも一方の傾斜部3021は、前記横断面において、該傾斜部3021の一方の面(第一面S1)側と他方の面(第二面S2)側とに少なくとも一つずつ凸となるような波形状である。本実施形態の外側環状部302では、前記横断面において、一対の傾斜部3021のそれぞれが前記波形状である。
【0060】
尚、
図8では、切断位置の関係で、左側の傾斜部3021のみが前記波形状であるが、右側の傾斜部3021は、手前から奥に向かう方向において凹凸が繰り返される形状であるため、切断位置を
図8の手前側又は奥側にずらす(詳しくは、前記凹凸のピッチの半ピッチ分ずらす)ことで、右側の傾斜部3021も前記波形状となっている。また、本実施形態の内側環状部301と外側環状部302が幅方向に隣接(連続)している。そして、内側環状部301の一対の傾斜部3011のうちの外側環状部302側の傾斜部3011と、外側環状部302の一対の傾斜部3021のうちの内側環状部301側の傾斜部3021とが、伝熱プレート3の共通の部位によって形成されている。
【0061】
図3A、
図5及び
図6に戻り、一対のガイド用切欠き35は、伝熱プレート3A、3BのZ軸方向の各端部におけるY軸方向の中央部に配置されている。本実施形態の一対のガイド用切欠き35は、横中心線CL2を対称軸にした線対称な形状である。
【0062】
複数のガスケット4のそれぞれは、
図4、
図7、
図9、及び
図10に示すように、隣り合う二つの伝熱プレート3A、3Bのプレート間において流路Ra、Rbを画定する流路画定部41と、隣り合う伝熱プレート3A、3Bの第一貫通孔321同士を連通させる環状部42と、流路画定部41と環状部42とを接続する接続部43と、を有する。本実施形態のガスケット4は、一つの流路画定部41と、二つの環状部42と、四つの接続部43と、を有する。このガスケット4において、各部位における横断面の形状は、ガスケット配置部34A、34Bの平坦部341に配置される矩形状の主シール部45と、主シール部45の幅方向の両端部におけるX軸方向の一方側(
図7における上側)の部位から幅方向外側に延び且つX軸方向の一方側に凸となっている一対のズレ止め部46と、を含む。
【0063】
主シール部45は、二つの伝熱プレート3A、3Bに挟み込まれることでガスケット4と伝熱プレート3A、3Bとの間の液密性を確保するための部位であり、一対のズレ止め部46は、二つの伝熱プレート3A、3Bに挟み込まれることで、主シール部45の幅方向のズレ(移動)を抑えるための部位である。また、各ズレ止め部46は、二つの伝熱プレート3A、3Bに挟み込まれることで、空気又は流体A、Bが主シール部45に接触するのを防ぎ、これにより、主シール部45の空気又は流体A、Bに接触することに起因する劣化を防ぐことができる。
【0064】
流路画定部41は、X軸方向から見て、主伝熱部31と、一対の堰部33と、各連通部32u、32dの対応する(本実施形態の例では、縦中心線CL1に対して同じ側に位置する)二つの第一貫通孔321と、連通部32u、32dの一部(詳しくは、前記二つの第一貫通孔321と各堰部33との間の部位)と、を囲む部位である。また、二つの環状部42のそれぞれは、X軸方向から見て、流路画定部41の外側に位置する第一貫通孔321を囲む部位である。本実施形態のガスケット4では、一つの環状部42が二つの接続部43によって流路画定部41に接続されている。
【0065】
以上のように構成される伝熱プレート3A、3B及びガスケット4を有するプレート積層部2では、
図3A~
図4、
図9、及び
図10に示すように、二種類の伝熱プレート3A、3BがX軸方向において交互に重ね合わされている。このとき、複数のガスケット4は、隣り合う二つの伝熱プレート3A、3Bのプレート間に配置されている(挟み込まれている)が、これら複数のガスケット4は、一つ置きに半回転させた状態で各プレート間に配置されている。本実施形態のプレート積層部2では、ガスケット4の反回転は、Y軸方向の中心においてZ軸方向に延びる縦中心線CL3(
図9、
図10参照)と、Z軸方向の中心においてY軸方向に延びる横中心線CL4(
図9、
図10参照)との交点を回転中心にして180°回転させている。尚、本実施形態のプレート積層部2では、複数の伝熱プレート3A、3Bがそれぞれ分離可能に重ね合わされている。
【0066】
このように各プレート間にガスケット4が挟み込まれた状態で複数の伝熱プレート3A、3BがX軸方向に重ね合わされることで、プレート積層部2(熱交換器1)が形成される。このプレート積層部2には、各プレート間に流路Ra、Rbが形成されている流路形成部21と、流路形成部21を囲むガスケット挟持部22と、ガスケット挟持部22の外側で流路形成部21を囲む外側シール部23と、が形成されている(
図3B、
図8参照)。尚、
図3Bにおいて、プレート積層部2の正面図にスモークを付すことで流路形成部21とガスケット挟持部22と外側シール部23との範囲を示す。
【0067】
流路形成部21は、プレート積層部2において、X軸方向から見て主伝熱部31と一対の堰部33と一対の連通部32の一部(第一貫通孔321と堰部33との間の部位)とに対応する部位である。この流路形成部21では、各伝熱プレート3A、3Bを境にして、第一流体AをZ軸方向に流通させる第一流路Raと、第二流体BをZ軸方向に流通させる第二流路Rbとが、交互に形成されている。即ち、X軸方向に重ね合わされる複数の伝熱プレート3A、3Bにおいて、隣り合う伝熱プレート3B、3Aの対向する第一面S1と第二面S2との間に第二流路Rbが形成されると共に、隣り合う伝熱プレート3A、3Bの対向する第一面S1と第二面S2との間に第一流路Raが形成されている。
【0068】
ガスケット挟持部22は、プレート積層部2において、各プレート間にガスケット4が挟み込まれると共に、これらプレート間に挟まれたガスケット4がX軸方向に並んでいる部位である。具体的に、ガスケット挟持部22は、プレート積層部2において、X軸方向から見てガスケット配置部34A、34Bにおける最も外側の枠状の部分(閉じた部分)に対応する部位である(
図3B参照)。
【0069】
このガスケット挟持部22では、各プレート間において、ガスケット4の主シール部45が平坦部341間に挟まれると共に各ズレ止め部46が規制部342間にそれぞれ挟み込まれた状態で、これら各プレート間に挟み込まれたガスケット4がX軸方向に真っ直ぐ並んでいる(
図8参照)。
【0070】
外側シール部23は、ガスケット挟持部22においてガスケット4を挟み込んでいる二つの伝熱プレート3A、3Bの対向する部位301、302同士がX軸方向に当接することで形成される少なくとも一つの壁部305を有する。本実施形態の外側シール部23では、X軸方向における流路形成部21の各流路Ra、Rbと対応する位置(層)に、壁部305がそれぞれ形成されている。即ち、外側シール部23は、複数の壁部305を有する。
【0071】
具体的に、外側シール部23では、
図7及び
図8に示すように、隣り合う伝熱プレート3A、3Bの対向する内側環状部(凸条)301の頂部301T同士が当接して内側壁部305Aが形成されている。また、隣り合う伝熱プレート3A、3Bの対向する外側環状部(凸条)302の頂部302T同士が当接して外側壁部305Bが形成されている。外側シール部23には、複数の内側壁部305Aと複数の外側壁部305Bとが形成されており、内側壁部305Aと外側壁部305BとはX軸方向における異なる層に形成されている。本実施形態の外側シール部23では、X軸方向において内側壁部305Aと外側壁部305Bとが交互に形成されている。
【0072】
プレート積層部2の各層におけるガスケット挟持部22と外側シール部23との間には、漏れ空間Rgがそれぞれ形成されている。この漏れ空間Rgは、X軸方向に隣り合う(対向する)二つの伝熱プレート3A、3Bにおける壁部305とガスケット挟持部22のガスケット4との間に形成されている空間である(
図9及び
図10においてスモークで示す範囲参照)。
【0073】
詳しくは、プレート積層部2の各層において、第一流路Raを形成する二つの伝熱プレート3A、3Bにおけるガスケット挟持部22のガスケット4と、該ガスケット4の外側の外側壁部305Bと、の間に画定される第一漏れ空間Rg1と、第二流路Rbを形成する二つの伝熱プレート3B、3Aにおけるガスケット挟持部22のガスケット4と、該ガスケット4の外側の内側壁部305Aと、の間に画定される第二漏れ空間Rg2と、が形成されている。本実施形態のプレート積層部2では、第一流路Raと第二流路RbとがX軸方向において交互に形成されているため、漏れ空間Rgにおいても、第一漏れ空間Rg1と第二漏れ空間Rg2とがX軸方向において交互に形成されている。これらプレート積層部2の各層の漏れ空間Rgは、ガスケット挟持部22と壁部305との間における周方向の全域に形成されている。
【0074】
また、プレート積層部2には、上述のように、一対の第一連通路Rc1、Rc2と、一対の第二連通路Rd1、Rd2と、二つの第一漏れ検知流路Reと、二つの第二漏れ検知流路Rfと、が形成されている(
図1及び
図4参照)。
【0075】
この一対の第一連通路Rc1、Rc2のそれぞれは、複数の伝熱プレート3A、3Bの対応する第一貫通孔321a同士がガスケット4の環状部42を介してX軸方向に連なることによって形成され、各第一流路Raに連通している。これにより、上述のように、これら一対の第一連通路Rc1、Rc2のうちの一方(
図4における上側)の第一連通路Rc1は、第一流体Aをプレート積層部2の外部から各第一流路Raに流入させ、他方(
図4における下側)の第一連通路Rc2は、第一流体Aを各第一流路Raからプレート積層部2の外部へ流出させる。
【0076】
また、一対の第二連通路Rd1、Rd2のそれぞれは、複数の伝熱プレート3の対応する第一貫通孔321b同士がガスケット4の環状部42を介してX軸方向に連なることによって形成され、各第二流路Rbに連通している。これにより、上述のように、これら一対の第二連通路Rd1、Rd2のうちの一方(
図4における上側)の第二連通路Rd1は、第二流体Bをプレート積層部2の外部から各第二流路Rbに流入させ、他方(
図4における下側)の第二連通路Rd2は、第二流体Bを各第二流路Rbからプレート積層部2の外部へ流出させる。
【0077】
二つの第一漏れ検知流路Reのそれぞれは、複数の伝熱プレート3A、3Bの対応する第二貫通孔322b同士がX軸方向に連なることによって形成されている。そして、プレート積層部2における第一流路Ra及び第一漏れ空間Rg1が形成されている層では、第一漏れ検知流路Reを構成する第二貫通孔322bの第二貫通孔周縁部3220同士がX軸方向に互いに離間しているため、二つの第一漏れ検知流路Reのそれぞれは、第一漏れ空間Rg1と連通する。これにより、第一流路Raから第一流体Aが第一漏れ空間Rg1に漏れ出たときには、この漏れ出た第一流体Aが第一漏れ検知流路Reを通じて外部に排出され、これにより、プレート積層部2内のいずれかの第一流路Raから液漏れが発生していることを検知することができる。
【0078】
本実施形態の二つの第一漏れ検知流路Reは、Y軸方向の他方側(
図4における左側)の端部におけるZ軸方向の両端部(上端部及び下端部)に形成されており、通常、第一流路Raから第一漏れ空間Rg1に漏れ出た流体Aは、下端部の第一漏れ検知流路Reから外部に排出される。
【0079】
一方、プレート積層部2における第二流路Rb及び第二漏れ空間Rg2が形成されている層では、第一漏れ検知流路Reを構成する第二貫通孔322bの第二貫通孔周縁部3220同士がX軸方向に互いに当接しているため、二つの第一漏れ検知流路Reのそれぞれは、第二漏れ空間Rg2とは連通しない。これにより、第二流路Rbから第二流体Bが第二漏れ空間Rg2に漏れ出たとしても、この漏れ出た第二流体Bは、第一漏れ検知流路Reには流入しない。即ち、第一漏れ検知流路Reは、各第一漏れ空間Rg1にのみ連通し、各第二漏れ空間Rg2とは連通していない。
【0080】
また、二つの第二漏れ検知流路Rfのそれぞれは、
図11にも示すように、複数の伝熱プレート3A、3Bの対応する第二貫通孔322a同士がX軸方向に連なることによって形成されている。そして、プレート積層部2における第二流路Rb及び第二漏れ空間Rg2が形成されている層では、第二漏れ検知流路Rfを構成する第二貫通孔322aの第二貫通孔周縁部3220同士がX軸方向に互いに離間しているため、二つの第二漏れ検知流路Rfのそれぞれは、第二漏れ空間Rg2と連通する。これにより、第二流路Rbから第二流体Bが第二漏れ空間Rg2に漏れ出たときには、この漏れ出た第二流体Bが第二漏れ検知流路Rfを通じて外部に排出され、これにより、プレート積層部2内のいずれかの第二流路Rbから液漏れが発生していることを検知することができる。
【0081】
本実施形態の二つの第二漏れ検知流路Rfは、Y軸方向の一方側(
図4における右側)の端部におけるZ軸方向の両端部(上端部及び下端部)に形成されており、通常、第二流路Rbから第二漏れ空間Rg2に漏れ出た流体Bは、下端部の第二漏れ検知流路Rfから外部に排出される。
【0082】
一方、プレート積層部2における第一流路Ra及び第一漏れ空間Rg1が形成されている層では、第二漏れ検知流路Rfを構成する第二貫通孔322aの第二貫通孔周縁部3220同士がX軸方向に互いに当接しているため、二つの第二漏れ検知流路Rfのそれぞれは、第一漏れ空間Rg1とは連通しない。これにより、第一流路Raから第一流体Aが第一漏れ空間Rg1に漏れ出たとしても、この漏れ出た第一流体Aは、第二漏れ検知流路Rfには流入しない。即ち、第二漏れ検知流路Rfは、各第二漏れ空間Rg2にのみ連通し、各第一漏れ空間Rg1には連通していない。
【0083】
図1、
図2、及び
図4に戻り、一対のフレーム5a、5bのそれぞれは、X軸方向から見て伝熱プレート3A、3Bと対応した形状の厚板状の部材である。
【0084】
一対のフレーム5a、5bのうちの一方のフレーム5aは、Z軸方向に長尺な矩形厚板状であり、伝熱プレート3A、3Bの各第一貫通孔321(各連通路Rc1、Rc2、Rd1、Rd2)とX軸方向から見て重なる位置において同方向に貫通する複数(本実施形態の例では、四つ)の大径貫通孔51と、伝熱プレート3A、3Bの各第二貫通孔322(各漏れ検知流路Re、Rf)とX軸方向から見て重なる位置において同方向に貫通する複数(本実施形態の例では、四つ)の小径貫通孔52と、を有する。また、一方のフレーム5aは、Y軸方向の両端に、Z軸方向に間隔をあけて並ぶ複数の切欠部53を有する。
【0085】
また、一対のフレーム5a、5bのうちの他方のフレーム5bは、Z軸方向に長尺な矩形厚板状であり、Y軸方向の両端に、Z軸方向に間隔をあけて並ぶ複数の切欠部54を有する。これら複数の切欠部54のそれぞれは、一方のフレーム5aの各切欠部53とX軸方向から見て重なる位置に配置されている。
【0086】
ガイド部6は、それぞれがX軸方向に延びる一対のガイドバー61を有する。また、本実施形態のガイド部6は、一対のガイドバー61の端部同士の間隔を維持するサポート部材62も有する。
【0087】
一対のガイドバー61は、一方のフレーム5aのZ軸方向の両端部から互いに平行に延びている。これら一対のガイドバー61は、他方のフレーム5bを一方のフレーム5aに対して平行な状態(姿勢)でX軸方向に接離可能にガイドする。また、一対のガイドバー61のそれぞれは、伝熱プレート3のZ軸方向の両端のガイド用切欠き35にそれぞれ嵌まり込むことで、各伝熱プレート3を配置位置にガイドする。
【0088】
サポート部材62は、Z軸方向に延び、一対のガイドバー61の端部(一方のフレーム5aに接続されている端部と反対側の端部)同士を接続することによって、該端部同士の間隔を維持する。
【0089】
複数の締付部材7のそれぞれは、X軸方向に延びるボルト71と、該ボルト71と螺合するナット72と、を有する。各締付部材7は、一対のフレーム5a、5bの対応する(X軸方向から見て重なる)切欠部53、54に嵌まり込んだ状態でX軸方向の間隔が小さくなる方向に一対のフレーム5a、5bを締め付ける。この複数の締付部材7による一対のフレーム5a、5bの締め付けによって、各プレート間に配置されたガスケット4が十分な力で挟み込まれ、これにより、各プレート間に形成された各流路Ra、Rbが液密な状態となる。
【0090】
以上のように構成される熱交換器1では、一方の第一連通路Rc1に第一流体Aが供給されると共に、一方の第二連通路Rd1に第二流体Bが供給されると、第一流体Aが一方の第一連通路Rc1から各第一流路Raに流入すると共に、第二流体Bが一方の第二連通路Rd1から各第二流路Rbに流入する。
【0091】
これにより、熱交換器1において、第一流体Aが第一流路RaをZ軸方向に流れ、第二流体Bが第二流路RbをZ軸方向に流れる。詳しくは、第一流体Aが、第一流路Raを画定するプレート間をZ軸方向の一端から他端側に向けて通過(流通)し、第二流体Bが、第二流路Rbを画定するプレート間をZ軸方向の一端から他端側に向けて通過(流通)する。このとき、第一流路Raと第二流路Rbとの間にある伝熱プレート3A、3B(主に主伝熱部31)を介して第一流体Aと第二流体Bとが熱交換する。
【0092】
そして、熱交換を終えた第一流体Aは、各第一流路Raから他方の第一連通路Rc2に流出し、該第一連通路Rc2を通じて外部に排出される。また、熱交換を終えた第二流体Bは、各第二流路Rbから他方の第二連通路Rd2に流出し、該第二連通路Rd2を通じて外部に排出される。
【0093】
この第一流体Aと第二流体Bとが熱交換器1を流通している状態において、第一流体Aが第一流路Ra又は第一連通路Rc1、Rc2から第一漏れ空間Rg1に漏れ出たときには、この漏れ出た第一流体Aは、第一漏れ検知流路Reを通じて外部に排出される。一方、第二流体Bが第二流路Rb又は第二連通路Rd1、Rd2から第二漏れ空間Rg2に漏れ出たときには、この漏れ出た第二流体Bは、第二漏れ検知流路Rfを通じて外部に排出される。
【0094】
以上の熱交換器1では、壁部305がガスケット挟持部22の外側で流路形成部21を囲うことで、ガスケット挟持部22において該壁部305を構成する二つの伝熱プレート3A、3Bに挟み込まれたガスケット4側への該伝熱プレート3A、3B間における外部からの空気の移動が抑えられ、即ち、前記ガスケット4における外部の空気との接触が抑えられ、これにより、当該ガスケット4における空気との接触に起因する劣化(酸化等)が抑えられる。
【0095】
また、本実施形態の熱交換器1では、プレート積層部2において、複数の伝熱プレート3A、3Bがそれぞれ分離可能に重ね合わされ、各壁部305は、ガスケット挟持部22でガスケット4を挟み込んでいる二つの伝熱プレート(伝熱プレート対)3A、3Bにおいて、互いに接近する方向に凸となる内側環状部(凸条)301又は外側環状部(凸条)302の頂部301T、302T同士が当接することによって形成されている。そして、各内側環状部301又は各外側環状部302の横断面において、該環状部301、302は、頂部301T、302Tからそれぞれ延び且つ該頂部301T、302Tから離れるにつれて互いの間隔が大きくなる一対の傾斜部3011、3021を有し、各傾斜部3011、3021は、該傾斜部3011、3021の一方の面側(例えば、第一面S1側)と他方の面側(例えば、第二面S2側)とに少なくとも一つずつ凸となるような波形状である。
【0096】
このように、各傾斜部3011、3021の断面形状を波形状とすることで該傾斜部3011、3021にバネ性を持たせることができため、複数の伝熱プレート3A、3BをX軸方向に重ね合わせてプレート積層部2を形成したときの壁部305を構成する各環状部(内側環状部301、外側環状部302)に加わるX軸方向の力を傾斜部3011、3021の弾性変形によって吸収させることができる。これにより、各環状部(内側環状部301、外側環状部302)でのX軸方向の力に起因する凹み等の変形を抑えることができる。
【0097】
しかも、各傾斜部3011、3021にバネ性を持たせることで、プレート積層部2を分解して各伝熱プレート3A、3Bを分離させたときに、各環状部(内側環状部301、外側環状部302)に変形が残らない若しくは残り難い、即ち、前記弾性変形後の形状が各伝熱プレート3A、3Bの分離によって元に(略元に)戻るため、該伝熱プレート3A、3Bを再度重ね合わせてプレート積層部2を形成する(再利用)ことができる。
【0098】
また、本実施形態の熱交換器1において、プレート積層部2は、ガスケット挟持部22においてプレート間に挟み込まれる各ガスケット4と対応する位置(同じ層)に配置される複数の壁部305を該ガスケット挟持部22の外側に有し、各伝熱プレート3A、3Bは、ガスケット挟持部22を構成する部位と、壁部305を構成する部位(内側環状部301、外側環状部302)との間に、X軸方向に貫通する第二貫通孔(第一孔部及び第二孔部)322を有している。そして、プレート積層部2において、複数の伝熱プレート3A、3Bは、第一流体Aが流れる第一流路Raと第二流体Bが流れる第二流路Rbとを各伝熱プレート3A、3Bを介してX軸方向に交互に形成している。また、各伝熱プレート3A、3Bの第二貫通孔(第一孔部)322bは、X軸方向に連なることによって、第一流路Raを形成する二つの伝熱プレート3A、3Bにおけるガスケット挟持部22のガスケット4と、該ガスケット4の外側の内側壁部305Aとの間に画定される各第一漏れ空間Rg1とそれぞれ連通する第一漏れ検知流路Reを構成している。また、各伝熱プレート3A、3Bの第二貫通孔(第二孔部)322aは、X軸方向に連なることによって、第二流路Rbを形成する二つの伝熱プレート3A、3Bにおけるガスケット挟持部22のガスケット4と、該ガスケット4の外側の外側壁部305Bとの間に画定される各第二漏れ空間Rg2とそれぞれ連通する第二漏れ検知流路Rfを構成している。
【0099】
このように、プレート積層部2が各第一漏れ空間Rg1と連通する第一漏れ検知流路Reと各第二漏れ空間Rg2と連通する第二漏れ検知流路Rfとを有しているため、第一漏れ検知流路Re及び第二漏れ検知流路Rfのいずれの検知流路から流体が排出されるかによって、ガスケット挟持部22において第一流体A及び第二流体Bのいずれの流体の液漏れが発生したかを検知することができる。また、ガスケット挟持部22において第一流体Aと第二流体Bとの両方の液漏れが発生したとしても、第一流体Aと第二流体Bとを接触させることなく別々の経路(第一漏れ検知流路Reと第二漏れ検知流路Rfと)で外部に排出することができる。
【0100】
尚、本発明のプレート式熱交換器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0101】
上記実施形態の熱交換器1では、プレート積層部2において、二種類の伝熱プレート3A、3Bが交互に重ね合わされているが、この構成に限定されない。例えば、プレート積層部2において、一種類の伝熱プレート3が一つ置きに反転した状態でX軸方向に重ね合わされる構成でもよい。
【0102】
上記実施形態の熱交換器1では、第一流体Aが一方の第一連通路Rc1からプレート積層部2内に供給され、第二流体Bが一方の第二連通路Rd1からプレート積層部2内に供給されているが、この構成に限定されない。例えば、第二流体Bが一方の第二連通路Rd1からプレート積層部2内に供給されつつ、第一流体Aが他方の第一連通路Rc2からプレート積層部2内に供給されてもよく、第一流体Aが一方の第一連通路Rc1からプレート積層部2内に供給されつつ、第二流体Bが他方の第二連通路Rd2からプレート積層部2内に供給されてもよい。また、第一流体Aが他方の第一連通路Rc2からプレート積層部2内に供給されると共に、第二流体Bが他方の第二連通路Rd2からプレート積層部2内に供給されてもよい。
【0103】
また、上記実施形態のプレート積層部2では、壁部305がガスケット挟持部22の外側(流路形成部21側と反対の側)において流路形成部21を囲むように配置されているが、この構成に限定されない。壁部305は、ガスケット挟持部22の内側(流路形成部21側)において流路形成部21を囲むように配置されてもよい。かかる構成によれば、プレート間における流路Ra、Rbからガスケット挟持部22(ガスケット4)側への流体A、Bの移動が前記壁部305によって抑えられる。これにより、ガスケット挟持部22において、流体A、Bに接することに起因するガスケット4の損傷や劣化が抑えられる。また、プレート積層部2において、壁部305は、ガスケット挟持部22の両側(内側と外側)に配置されてもよい。
【0104】
また、上記実施形態のプレート積層部2では、X軸方向の各層に壁部305が形成されているが、この構成に限定されない。壁部305は、プレート積層部2の一部の層に形成されてもよい。即ち、プレート積層部2が少なくとも一つの壁部305を有していればよい。
【0105】
また、上記実施形態のプレート積層部2では、壁部305を構成する環状部(内側環状部301、外側環状部302)の横断面形状において、該環状部301、302を構成する一対の傾斜部3011、3021の両方が波形状であるが、この構成に限定されない。前記横断面形状において、環状部301、302を構成する一対の傾斜部3011、3021のうちの少なくとも一方が波形状であればよい。かかる構成によっても、複数の伝熱プレート3をX軸方向に重ね合わせてプレート積層部2を形成したときの壁部305を構成する各環状部301、302に加わるX軸方向の力を傾斜部3011、3021の弾性変形によって吸収させ、これにより、各環状部301、302でのX軸方向の力に起因する凹み等の変形が抑えられる。また、少なくとも一方の傾斜部3011、3021にバネ性を持たせることで、プレート積層部2を分解して各伝熱プレート3を分離させたときに、各環状部301、302における断面が波形状の傾斜部3011、3021に変形が残らない又は残り難く、即ち、前記弾性変形後の形状が各伝熱プレート3の分離によって元に戻るため、該伝熱プレート3を再度重ね合わせてプレート積層部2を形成する(再利用)ことができる。尚、頂部301T、302T同士を当接させる環状部(対向する環状部)301、302において、一方の環状部301、302のみが傾斜部(横断面が波形状の傾斜部)3011、3021を有していてもよい。
【0106】
ここで、プレート積層部2から離間させた後の伝熱プレート3を、再度、重ね合わせない(即ち、再利用しない)場合には、環状部301、302を構成する一対の傾斜部3011、3021の両方の横断面形状が、波形状以外の形状(直線状等のバネ性が生じない形状)であってもよい。
【0107】
また、上記実施形態の伝熱プレート3の壁構成部30では、内側環状部301と外側環状部302とが一部(一方の傾斜部3011、3021)を共通させた状態で隣接(連続)しているが、この構成に限定されない。内側環状部301と外側環状部302とが互いに間隔をあけて配置されていてもよい。また、伝熱プレートは、内側環状部301のない構成、又は、外側環状部302のない構成であってもよい。
【0108】
また、上記実施形態のプレート積層部2では、一つの層に一つの壁部305が配置されているが、一つの層に複数の壁部305が配置されていてもよい。
【0109】
また、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3における壁部305を構成する各部位(対向する部位)の具体的な断面形状は、限定されない。例えば、一方の部位の断面が平坦な形状で、他方の部位の断面が一方の部位側に凸となる形状のように、両部位が同じ断面形状でなくてもよい。即ち、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3の対向する部位301、302同士がX軸方向に当接することで、当接部位305を挟んで内側(流路形成部21側)から外側(プレート積層部2の外側)へ、又は外側から内側への空気又は熱交換対象の流体A、Bの移動が妨げられる(阻止される)形状であればよい。
【0110】
また、上記実施形態の熱交換器1では、X軸方向における各壁部305の両側には空間(隣り合う環状部301、302の底部301B、302B同士の間隔)が形成されている(
図8参照)が、この構成に限定されない。例えば、
図12に示すように、プレート積層部2が、X軸定方向における壁部305の少なくとも一方に配置される補助ガスケット4Aを有し、補助ガスケット4Aが、壁部305と、該壁部305とX軸方向に隣り合う伝熱プレート3(例えば、
図12において壁部305の上側に配置された補助ガスケット4Aの上側の伝熱プレート3)と、を互いに離間する方向に押圧する構成であってもよい。この構成によれば、壁部305を構成する一方の伝熱プレート3Aの部位(内側環状部(凸条)301又は外側環状部(凸条)302)が該壁部305を構成する他方の伝熱プレート3Bの部位(内側環状部(凸条)301又は外側環状部(凸条)302)に向けて補助ガスケット4Aによって押されるため、該壁部305を構成する二つの伝熱プレート3A、3Bの部位(内側環状部(凸条)301又は外側環状部(凸条)302)間を通じた空気や流体のガスケット挟持部22側(ガスケット4側)への移動がより確実に抑えられる。
【0111】
この場合、ガスケット4と、プレート積層部2において該ガスケット4が配置されているプレート間に配置される補助ガスケット4Aとは、別体であってもよく、一体であってもよい。ここで、補助ガスケット4Aは、プレート積層部2において、第一流路Raを規定する全ての又は一部のプレート間のみに配置されてもよい。また、補助ガスケット4Aは、プレート積層部2において、第二流路Rbを規定する全ての又は一部のプレート間のみに配置されてもよい。また、補助ガスケット4Aは、プレート積層部2において、第一流路Raを規定する全て又は一部のプレート間、及び第二流路Rbを規定する全ての又は一部のプレート間、に配置されてもよい。
【0112】
また、上記実施形態の熱交換器1は、第一漏れ検知流路Reと第二漏れ検知流路Rfとを備えるが、この構成に限定されない。熱交換器1は、第一漏れ検知流路Reと第二漏れ検知流路Rfとのうちのいずれか一方の漏れ検知流路のみを備える構成でもよい。かかる構成によれば、配置された漏れ検知流路(第一漏れ検知流路Re又は第二漏れ検知流路Rf)と対応する流体(第一流体又は第二流体)の漏れを検知することができる。
【0113】
また、熱交換器1は、漏れ検知流路(第一漏れ検知流路Re及び第二漏れ検知流路Rf)を備えない構成であってもよい。
【0114】
また、漏れ検知流路Re又はRfは、各第一漏れ空間Rg1にのみ連通する、又は各第二漏れ空間Rg2にのみ連通する構成に限定されない。熱交換器1で熱交換が行われる第一流体Aと第二流体Bとが接触しても問題がない場合には、漏れ検知流路は、各第一漏れ空間Rg1及び各第二漏れ空間Rg2に連通する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…熱交換器、2…プレート積層部、21…流路形成部、22…ガスケット挟持部、23…外側シール部、3…伝熱プレート、3A…第一伝熱プレート(伝熱プレート)、3B、3B1、3B2…第二伝熱プレート(伝熱プレート)、30…壁構成部、301…内側環状部、302…外側環状部、301B、302B…底部、301T、302T…頂部、3011、3021…傾斜部、305…壁部、305A…内側壁部、305B…外側壁部、31…主伝熱部、32、32d、32u…連通部、321、321a、321b…第一貫通孔、322、322a、322b…第二貫通孔、3220…第二貫通孔周縁部、33…堰部、34…ガスケット配置部、34A…第一ガスケット配置部(ガスケット配置部)、34B…第二ガスケット配置部(ガスケット配置部)、341…平坦部、342…規制部、3C、31C、32C、33C、342C…凸部、3R、31R、32R、33R、342R…凹部、4…ガスケット、4A…補助ガスケット、41…流路画定部、42…環状部、43…接続部、45…主シール部、46…ズレ止め部、5a、5b…フレーム、51…大径貫通孔、52…小径貫通孔、53、54…切欠部、6…ガイド部、61…ガイドバー、62…サポート部材、7…締付部材、71…ボルト、72…ナット、500…プレート式熱交換器、501…伝熱プレート、502…ガスケット、A…第一流体(流体)、B…第二流体(流体)、CL1、CL3…縦中心線、CL2、CL4…横中心線、R…流路、Ra…第一流路(流路)、Rb…第二流路(流路)、Rc、Rc1、Rc2…第一連通路(連通路)、Rd、Rd1、Rd2…第二連通路(連通路)、Re…第一漏れ検知流路(漏れ検知流路)、Rf…第二漏れ検知流路(漏れ検知流路)、Rg…漏れ空間、Rg1…第一漏れ空間(漏れ空間)、Rg2…第二漏れ空間(漏れ空間)、S1…第一面、S2…第二面、T1…第一領域、T2…第二領域