(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080623
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/12 20060101AFI20220523BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20220523BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F04B39/12 101E
F04B39/00 C
F16J15/06 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191802
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】大塚 友裕
(72)【発明者】
【氏名】兼井 直史
【テーマコード(参考)】
3H003
3J040
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC04
3H003BC04
3H003CD06
3J040AA01
3J040BA02
3J040CA01
3J040EA22
3J040EA25
3J040HA16
(57)【要約】
【課題】可燃性のガスを圧縮する往復動式の圧縮機において、圧縮室を構成している部材間を通じて漏れ出るガスを、圧縮機の外部の意図しないところに漏れ出すことを抑制する。
【解決手段】圧縮機10は、シリンダ本体20と、バルブブロック21と、シリンダヘッド22と、複数のシール部から構成された第1シール群31と、複数のシール部から構成された第2シール群32とを備える。バルブブロック21は、第1シール群31の複数のシール部の間と第2シール群32の複数シール部の間とに開口する導出流路40を備える。導出流路40は、圧縮室12Sから漏れ出たガスを所定の場所に導く外部配管47に繋がっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性のガスを圧縮する往復動式の圧縮機であって、
ピストンと、
前記ピストンが挿入されるシリンダ本体と、
前記ピストンの先端側において前記シリンダ本体に固定され、貫通孔が形成されたバルブブロックと、
前記バルブブロックの前記シリンダ本体とは反対側に固定され、前記貫通孔に挿入される挿入部を有するシリンダヘッドと、
前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間に配置される複数のシール部から構成された第1シール群と、
前記バルブブロックと前記シリンダヘッドの前記挿入部との間に配置される複数のシール部から構成された第2シール群と、を備えるとともに、
前記ピストンと前記シリンダ本体と前記挿入部と前記バルブブロックとにより圧縮室が形成されており、
前記バルブブロックは、前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間の前記第1シール群を構成する複数のシール部の間と、前記バルブブロックと前記挿入部との間の前記第2シール群を構成する複数のシール部の間と、に開口している導出流路を備えており、
前記導出流路は、漏れ出たガスを所定の場所に導く配管につながっている、圧縮機。
【請求項2】
前記導出流路は、前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間から一方向に延びる第1流路と、前記バルブブロックと前記シリンダヘッドの前記挿入部との間から前記一方向に延びる第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路に接続されるとともに前記配管につながっている接続流路と、を備えている、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記接続流路における、前記第1流路からの漏出ガスと前記第2流路からの漏出ガスとが合流して流れる流路の内径は、前記第1流路及び前記第2流路の内径よりも大きい、請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間には、周方向に延びるとともに、前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間の間隔を広げる第1拡幅部が形成されており、
前記導出流路は、前記第1拡幅部に開口している、請求項1から3の何れか1項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記バルブブロックと前記シリンダヘッドの前記挿入部との間には、周方向に延びるとともに、前記バルブブロックと前記挿入部との間の間隔を広げる第2拡幅部が形成されており、
前記導出流路は、前記第2拡幅部に開口している、請求項1から4の何れか1項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記第1シール群を構成する複数のシール部のうち前記導出流路が開口する位置よりも前記圧縮室側に配置されているシール部と、前記第2シール群を構成する複数のシール部のうち前記導出流路が開口する位置よりも前記圧縮室側に配置されているシール部との少なくとも一方のシール部は、シール部材と、前記シール部材に隣接して配置されたバックアップリングとによって構成されている、請求項1から5の何れか1項に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを圧縮する圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダ内でピストンを往復動させて、シリンダ内に形成された圧縮室に導入されたガスを圧縮する往復動式の圧縮機が知られている。
図7に示すように、特許文献1の往復動式の圧縮機100では、駆動部101の上部に配置された筒状のシールホルダー102と、内部にピストン105が配置されるとともに吸入口106を有しておりシールホルダー102の上側に結合された筒状のシリンダブロック103と、吐出口107を有しておりシリンダブロック103の上側に結合されたシリンダヘッド104とを備えている。シールホルダー102とシリンダブロック103との間及びシリンダブロック103とシリンダヘッド104との間には、シール部108が設けられており、圧縮室109から外部へのガスの漏出を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1のように、圧縮室を109構成している部材間をシール部108によってシールすることが行われているが、より高圧の可燃性ガスを提供する圧縮機では、シール部を設けていても、圧縮室で高圧に圧縮された可燃性ガスが、圧縮機の外部の意図しないところに漏れ出す虞がある。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮室を構成している部材間を通じて漏れ出すガスを、圧縮機の外部の意図しないところに漏れ出すことを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧縮機は、可燃性のガスを圧縮する往復動式の圧縮機であって、ピストンと、前記ピストンが挿入されるシリンダ本体と、前記ピストンの先端側において前記シリンダ本体に固定され、貫通孔が形成されたバルブブロックと、前記バルブブロックの前記シリンダ本体とは反対側に固定され、前記貫通孔に挿入される挿入部を有するシリンダヘッドと、前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間に配置される複数のシール部から構成された第1シール群と、前記バルブブロックと前記シリンダヘッドの前記挿入部との間に配置される複数のシール部から構成された第2シール群とを備えており、前記ピストンと前記シリンダ本体と前記挿入部と前記バルブブロックとにより圧縮室が形成されている。前記バルブブロックは、前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間の前記第1シール群を構成する複数のシール部の間と、前記バルブブロックと前記挿入部との間の前記第2シール群を構成する複数のシール部の間と、に開口している導出流路を備えている。前記導出流路は、漏れ出たガスを所定の場所に導く配管につながっている。
【0007】
本発明では、バルブブロックとシリンダ本体との間は、複数のシール部から構成された第1シール群によってシールされている。バルブブロックとシリンダヘッドの挿入部との間は、複数のシール部から構成された第2シール群によってシールされている。万一、ガスが第1シール群又は第2シール群の複数のシール部の間に漏出した場合には、圧縮室から遠い位置に配置されたシール部によって、圧縮機の外部へのガスの漏出は抑止される。さらに、第1シール群と第2シール群の複数のシール部間に開口する導出流路によって、漏出ガスは、漏出ガスを所定の場所に導く配管に導出される。したがって、第1シール群又は第2シール群を通じたガスの意図しない場所への漏出は抑制される。前記所定の場所とは、例えば、圧縮機を収納する筐体に設けられた防爆換気扇の近傍、圧縮機の外部に繋がる漏出ガス排気用の配管、圧縮室にガスを導入する吸入配管等が該当する。
【0008】
前記導出流路は、前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間から一方向に延びる第1流路と、前記バルブブロックと前記挿入部との間から前記一方向に延びる第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路に接続されるとともに前記配管につながっている接続流路とを備えていてもよい。
【0009】
この様態では、導出流路は、第1シール群から漏れ出たガスを流通させる第1流路と、第2シール群から漏れ出たガスとを流通させる第2流路と、第1流路と第2流路とを接続する接続流路とを備えている。すなわち、第1流路と第2流路とは接続流路によって、途中で合流して1つの流路を形成している。このため、漏れ出たガスは1つの流路からバルブブロックの外部へ導出され、バルブブロックに接続する必要がある配管の数を減らすことができる。これにより、バルブブロックに接続する配管によって生じるガスの漏出リスクを低減できる。
【0010】
前記接続流路における、前記第1流路からの漏出ガスと前記第2流路からの漏出ガスとが合流して流れる流路の内径は、前記第1流路及び前記第2流路の内径よりも大きくてもよい。
【0011】
この様態では、接続流路における前記第1流路から漏出ガスと前記第2流路から漏出ガスとが合流して流れる流路の内径が、第1流路の内径及び第2流路の内径よりも大きいため、接続流路によって漏出したガスを効率よく外部に導出できる。
【0012】
前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間には、周方向に延びるとともに、前記バルブブロックと前記シリンダ本体との間の間隔を広げる第1拡幅部が形成されていてもよい。この場合、前記導出流路は、前記第1拡幅部に開口していてもよい。
【0013】
この様態では、周方向に延びる第1拡幅部を設けることにより、導出流路とは周方向における異なる位置で漏出ガスが生じても、第1拡幅部を介して導出流路に回り込ませることができる。その結果、漏出ガスを導出流路に効率よく導くことができる。
【0014】
前記バルブブロックと前記シリンダヘッドの前記挿入部との間には、周方向に延びるとともに、前記バルブブロックと前記挿入部との間の間隔を広げる第2拡幅部が形成されていてもよい。この場合、前記導出流路は、前記第2拡幅部に開口していてもよい。
【0015】
この様態では、周方向に延びる第2拡幅部を設けることにより、導出流路とは周方向における異なる位置で漏出ガスが生じても、第2拡幅部を介して導出流路に回り込ませることができる。その結果、漏出ガスを導出流路に効率よく導くことができる。
【0016】
前記第1シール群を構成する複数のシール部のうち前記導出流路が開口する位置よりも前記圧縮室側に配置されているシール部と、前記第2シール群を構成する複数のシール部のうち前記導出流路が開口する位置よりも前記圧縮室側に配置されているシール部との少なくとも一方のシール部は、シール部材と、前記シール部材に隣接して配置されたバックアップリングとによって構成されていてもよい。
【0017】
この様態では、導出流路が開口する位置よりも圧縮室側に配置されているシール部は、シール部材と、シール部材に隣接するバックアップリングとから構成されている。これにより、当該シール部のシール性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、圧縮室を構成している部材間を通じて漏れ出すガスを、圧縮機の外部の意図しないところに漏れ出すことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に示す水素ステーションの構成を概略的に示す図である。
【
図2】実施形態に示す圧縮機の一部の構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図2におけるA部を拡大して示した図である。
【
図4】(a)(b)はそれぞれ、実施形態に示す圧縮機の導出流路の変形例を示す図である。
【
図5】(a)(b)はそれぞれ、実施形態に示す圧縮機の第1拡幅部の変形例を示す図である。
【
図6】(a)(b)はそれぞれ、実施形態に示す圧縮機の第2拡幅部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。文中で「上」、「下」及び「右」といった方向指標が用いられるが、これらの方向指標は説明の明瞭化のみを目的としており、限定的に解釈されるべきでない。
【0021】
図1に示すように、本実施形態による圧縮機10は、水素ステーション1に設けられている。水素ステーション1は、圧縮機ユニット2と、蓄圧器3と、ディスペンサー4とを備え、可燃性ガスの一例である水素ガスを超高圧に圧縮して燃料電池車5等に供給する設備である。圧縮機ユニット2は、水素ガスを高圧に圧縮する圧縮機10と、圧縮機10を収納する筐体9とを備える。筐体9の内部には、圧縮機10から漏出した水素ガスを筐体9の外部に放散する防爆換気扇11が設けられている。蓄圧器3は、圧縮機ユニット2から供給される高圧の水素ガスを、高圧の状態で蓄えておく容器である。ディスペンサー4は、蓄圧器3から供給される高圧の水素ガスを、圧力と流量を調整して燃料電池車5等に供給する装置である。
【0022】
図2に示すように、圧縮機10は、シリンダ12と、ピストン13と、図略のピストンロッドとを備えた往復動式の圧縮機である。シリンダ12は、ピストン13を駆動するための駆動機構の上側に配置されているとともに、内部に円柱状の空間が形成されている。ピストン13は、シリンダ12の内部の前記空間に上下方向に摺動可能に配置されており、前記ピストンロッドを介して前記駆動機構に連結されている。
【0023】
シリンダ12は、前記駆動機構の上側に配置されたシリンダ本体20と、シリンダ本体20の上側に配置されたバルブブロック21と、バルブブロック21の上側に配置されたシリンダヘッド22と、を備えている。
【0024】
シリンダ本体20は、一方向(図例では上下方向)に長い円柱状であり、内部中央には前記一方向に延びる円柱状の本体内空間20aが形成されている。本体内空間20aはシリンダ本体20を上下に貫通しており、シリンダ本体20の上端面20bに開口している。
【0025】
バルブブロック21は、シリンダ本体20の上側に配置されており、内部中央には前記一方向に延びる円柱状のブロック内空間21aが形成されている。ブロック内空間21aは、上面視で本体内空間20aと同径の円形であり、バルブブロック21を上下に貫通しており、バルブブロック21の上面と下面とに開口している。ブロック内空間21aは、本体内空間20aに連通しているとともに、上下方向に延びる環状の円周面である中央内周面21dにより区画される。
【0026】
シリンダヘッド22はバルブブロック21の上側に配置されており、ヘッド本体22aと、ヘッド本体22aの下面から下方向に突出して形成されている挿入部22bと、を備えている。
【0027】
バルブブロック21の下面には、シリンダ本体20の上端部が嵌め込まれる下面視で円形断面の下面凹部21bが形成されている。下面凹部21bは、上下方向に延びる環状の円周面である下部内周面21eと、下部内周面21eの上端と本体内空間20aを区画する中央内周面21dの下端とを繋ぐ下向き面21fと、により区画されている。
【0028】
バルブブロック21の上面には、挿入部22bが嵌め込まれる上面視で円形断面の上面凹部21cが形成されている。上面凹部21cは、上下方向に延びる環状の円周面である上部内周面21gと、本体内空間20aを区画する中央内周面21dの上端と上部内周面21gの下端とを繋ぐ上向き面21hと、により区画されている。
【0029】
バルブブロック21は、下向き面21fがシリンダ本体20の上端面20bに当接するとともに、下部内周面21eがシリンダ本体20の外周面20cに当接した状態で、シリンダ本体20に結合されている。すなわち、バルブブロック21の下向き面21fとシリンダ本体20の上端面20bとは、互いに接触しており、下部内周面21eとシリンダ本体20の外周面20cとは、互いに接触している。
【0030】
バルブブロック21とシリンダ本体20とが接触する接触部C1には、複数のシール部から構成された第1シール群31が設けれている。第1シール群31の複数のシール部はそれぞれ、接触部C1をシールするように、上端面20b及び外周面20cに設けられた環状の溝に嵌め込まれている。
【0031】
シリンダ本体20の上端面20bと外周面20cとが成す角部20eには、シリンダ本体20とバルブブロック21との間を広げる第1拡幅部35が形成されている。第1拡幅部35は、角部20eに面取り加工を施すことによりシリンダ本体20の周方向に延びて形成される環状の空間であり、第1シール群31の複数のシール部の間に対応する位置に配置されている。
【0032】
バルブブロック21は、上部内周面21gの上端とバルブブロック21の外周面21kの上端とを繋ぐ上向きの天面21iと、下部内周面21eの下端とバルブブロック21の外周面21kの下端とを繋ぐ下向きの底面21jと、を有している。
【0033】
バルブブロック21は、上向き面21hが挿入部22bにおける下向きの先端面22cに当接するとともに、上部内周面21gが挿入部22bにおける外周面22dに当接した状態で、シリンダヘッド22に結合されている。すなわち、バルブブロック21の上向き面21hと先端面22cとは、互いに接触しており、上部内周面21gと挿入部22bの外周面22dとは、互いに接触している。
【0034】
バルブブロック21とシリンダヘッド22とが接触する接触部C2には、複数のシール部から構成された第2シール群32が設けれている。第2シール群32の複数のシール部はそれぞれ、接触部C2をシールするように、挿入部22bの外周面22dに設けられた環状の溝に嵌め込まれている。
【0035】
バルブブロック21の上部内周面21gには、バルブブロック21とシリンダヘッド22との間を広げる第2拡幅部36が形成されている。第2拡幅部36は、上部内周面21gに溝加工を施すことにより上部内周面21gの周方向に延びて形成される環状の空間であり、第2シール群32の複数のシール部の間に対応する位置に配置されている。
【0036】
第1シール群31と第2シール群32の複数のシール部はそれぞれ、Oリング33と、バックアップリング34と、により構成されている(
図3参照)。Oリング33は、接触部C1、C2からガスが漏れ出るのを阻止するよう構成された環状の部材である。バックアップリング34は、大きな圧力差が負荷されるOリング33の変形を抑制するよう構成されるとともにOリング33に隣接して配置された環状の部材である。
【0037】
シリンダ12の内部には、本体内空間20aを区画するシリンダ本体20の内周面20dと、バルブブロック21の中央内周面21dと、シリンダヘッド22の先端面22cと、ピストン13の先端面13aとによって、圧縮室12Sが形成されている。バルブブロック21には、外部から圧縮室12Sに水素ガスを吸入する図略の吸入弁と、圧縮室12Sから外部に水素ガスを吐出する図略の吐出弁とが保持されている。
【0038】
尚、シリンダヘッド22の挿入部22bには、挿入部22bの先端から圧縮室12Sへと柱状に延出して形成されている図略のアダプタ部材が取り付けられてもよい。アダプタ部材を着脱することにより、圧縮室12Sの容積を変更でき、これにより圧縮機10の圧縮率を調整することが可能となる。
【0039】
バルブブロック21は、圧縮室12Sから漏出した水素ガスをバルブブロック21の外部に導くための導出流路40を備えている。導出流路40は、第1流路41と、第2流路42と、接続流路43とを含んでいる。
【0040】
第1流路41は、内端が第1拡幅部35に開口しており、接触部C1から一方向(
図2における右方向)に延びるように形成されている。
【0041】
第2流路42は、内端が第2拡幅部36に開口しており、接触部C2から前記一方向に延びるように形成されている。
【0042】
接続流路43は、第1流路41と第2流路42とを接続する流路であり、中間流路44と合流流路45とを含んでいる。
【0043】
中間流路44は、前記一方向に対して直交方向(
図2における上方向)に延びており、第1流路41の外端と第2流路42の外端とを繋ぐように形成されている。中間流路44の内径は、第1流路41の内径及び第2流路42の内径よりも大きく形成されているが、同じ内径でもよい。中間流路44は、バルブブロック21の底面21jから第2流路42の外端に向けて延びる通路を形成した後に、底面21jから第1流路41の外端までを閉塞部材49により塞ぐことにより形成されている。
【0044】
合流流路45は、内端が第2流路42と中間流路44との合流点C3に接続されるとともに、中間流路44の端部から中間流路44に対して直交する方向(
図2における右方向)に延びて形成されている。したがって、合流流路45は、中間流路44を通じて流れ出る第1流路41からの漏出ガスと、第2流路42からの漏出ガスとが、合流して流れる流路である。合流流路45の外端は、バルブブロック21の外周面21kにおいて、外部配管47の上流側の端部に接続されている。合流流路45の内径は、第1流路41の内径及び第2流路42の内径よりも大きく形成されている。
【0045】
外部配管47の下流側の端部は、圧縮機ユニット2の筐体9に設けられた防爆換気扇11近傍に繋がっている。防爆換気扇11は、水素ガスを筐体9の外部の大気中に放散させるように構成されている。
【0046】
圧縮機10の運転時には、ピストン13の摺動運動により圧縮室12Sは圧縮と膨張を繰り返し、圧縮室12Sから高圧に圧縮された水素ガスが吐出される。圧縮室12Sから圧縮機10の外部への水素ガスの漏出を抑止するために、接触部C1及び接触部C2は、第1シール群31の複数のシール部と第2シール群32の複数のシール部によってシールされている。しかし、圧縮機10の運転時には、高圧に圧縮された水素ガスのごく一部が、接触部C1と接触部C2とに漏出することがある。
【0047】
水素ガスが接触部C1と接触部C2とに漏れ出た場合には、まず、圧縮室12Sに近い位置のシール部によって、水素ガスの漏出が抑止される。万一、圧縮室12Sに近い位置のシール部を通じて水素ガスが漏出した場合には、圧縮室12Sから遠い位置のシール部によって漏出が抑止される。このとき、第1シール群31又は第2シール群32の複数のシール部の間に漏れ出た水素ガスは、第1拡幅部35又は第2拡幅部36を通じて、導出流路40の第1流路41又は第2流路42に導出される。
【0048】
第1拡幅部35はと第2拡幅部36とはそれぞれ、シリンダ本体20及びバルブブロック21の上部内周面21gの周方向に延びて形成された環状の空間である。このため、水素ガスが導出流路40が開口する位置とは周方向における異なる位置で漏出した場合でも、第1拡幅部35及び第2拡幅部36を介して導出流路40に回り込ませることができる。その結果、漏出ガスを導出流路40に効率よく導くことができる。
【0049】
第1流路41及び第2流路42内の水素ガスは、接続流路43で合流した上で外部配管47を通じて防爆換気扇11近傍(所定の場所)へ導出され、圧縮機ユニット2外部の大気中に放散される。これにより、シリンダ本体20とバルブブロック21の接触部C1及びバルブブロック21とシリンダヘッド22の接触部C2から、圧縮機10外部への、意図しないところへのガスの漏出は抑制される。
【0050】
接続流路43を設けることによって、第1流路41と第2流路42とは途中で合流して、水素ガスは1つの流路から外部配管47へ導出される。このため、バルブブロック21に繋がっている外部配管47の配管に関連して生じるガスの漏出リスクを低減できる。
【0051】
合流流路45の内径は、第1流路41の内径及び第2流路42の内径よりも大きく形成されているが、同じ内径でもよい。合流流路45の内径の方が細い場合には、第1流路41のガスと第2流路42のガスとの合流により合流流路45において圧損が発生し、第1流路41及び第2流路42の上流側で圧力が大きくなる虞がある。これに鑑みて、合流流路45の内径を大きくすることで、合流流路45における圧損の発生を抑制し、漏出ガスを効率よく外部配管47に導出できる。
【0052】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。したがって、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0053】
上記の実施形態では、外部配管47は防爆換気扇11近傍に繋がっているが、これに限られるものではない。例えば、外部配管47は、圧縮機10の外部に繋がる漏出ガス排気用の配管に繋がっていてもよく、あるいは、圧縮室12Sにガスを導入する吸入配管に繋がっていてもよい。
【0054】
上記の実施形態では、シリンダ12のシリンダ本体20には第1拡幅部35が形成されているが、シリンダ12には第1拡幅部35が形成されていなくてもよい。その場合、第1流路41は、バルブブロック21の下部内周面21eに開口する。
【0055】
上記の実施形態では、シリンダ12のバルブブロック21には第2拡幅部36が形成されているが、シリンダ12には第2拡幅部36が形成されていなくてもよい。その場合、第2流路42はバルブブロック21の上部内周面21gに開口する。
【0056】
上記の実施形態では、第1シール群31と第2シール群32の複数のシール部はそれぞれ、Oリング33とバックアップリング34とにより構成されているが、これに限らず、例えば、前記複数のシール部はOリング33のみにより構成されていてもよい。
【0057】
上記の実施形態では、接続流路43の合流流路45は、第2流路42からまっすぐに延びているが、これに限らない。例えば、合流流路45は、第1流路41からまっすぐに延びていてもよいし、
図4(a)に示すように、第1流路41と第2流路42に対してずれた位置から延びていてもよい。この場合、合流流路45は、第1流路41の外端と第2流路42の外端の間において中間流路44に接続される。
【0058】
上記の実施形態では、導出流路40は接続流路43を含んでいるが、導出流路40は接続流路43を含んでいなくてもよい。この場合、
図4(b)に示すように、導出流路40は、それぞれ別個に設けられた第1流路41と第2流路42から構成され、第1流路41と第2流路42とは合流せずに、バルブブロック21の外周面21kにおいて、それぞれ別個に外部配管47に接続される。
【0059】
上記の実施形態では、第1拡幅部35は、シリンダ本体20の角部20e上に面取り加工を施すことにより形成されているが、これに限らない。例えば、
図5(a)に示すように、第1拡幅部35は、バルブブロック21の中央内周面21dに形成された環状の溝によって構成されていてもよいし、
図5(b)に示すように、シリンダ本体20の外周面20cに形成された環状の溝によって構成されていてもよい。第1拡幅部35は必ずしも周方向における全周に設けられる必要はない。第2拡幅部36についても同様である。
【0060】
上記の実施形態では、第2拡幅部36は、バルブブロック21の上部内周面21gに形成された環状の溝によって構成されているが、これに限らない。例えば、
図6(a)に示すように、第2拡幅部36は、シリンダヘッド22の挿入部22bの先端面22c外周の角部に面取り加工を施すことにより形成される環状の空間でもよいし、
図6(b)に示すように、シリンダヘッド22の挿入部22bの外周面22dに形成された環状の溝によって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 圧縮機
12 シリンダ
12S 圧縮室
13 ピストン
20 シリンダ本体
21 バルブブロック
22 シリンダヘッド
31 第1シール群
32 第2シール群
40 導出流路
41 第1流路
42 第2流路
43 接続流路
51 第1拡幅部
52 第2拡幅部