(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080649
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】ドライバ評価装置、ドライバ評価プログラム、運行日報生成方法及び運行日報
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20220523BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220523BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20220523BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06T7/00 660A
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191847
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑季
(72)【発明者】
【氏名】大石 啓之
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕一
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA06
5H181AA14
5H181AA16
5H181AA21
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC11
5H181EE10
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF10
5L049CC42
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA04
5L096DA02
5L096GA51
5L096HA09
(57)【要約】
【課題】ドライバの接客に対する意欲向上を図ったドライバ評価装置、ドライバ評価プログラム、運行日報生成方法及び運行日報、を提供する。
【解決手段】接客判定部104が、車両の停車中において、ドアの開閉、タクシーメータ24の操作、マイク22の使用の少なくとも1つが行われた時刻に基づいて、ドライバが接客中である接客期間を判定する。笑顔判定部102が、接客判定部104により判定された接客期間中に取得したドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、接客中のドライバの笑顔度を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバが接客中である接客期間を判定する接客判定部と、
前記接客判定部により判定された前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、前記接客中の前記ドライバの表情を判定する表情判定部と、を備えた、
ドライバ評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドライバ評価装置において、
前記接客判定部が、前記車両の停車中において、ドアの開閉、タクシーメータの操作、マイクの使用の少なくとも1つが行われた時刻に基づいて、前記接客期間を判定する、
ドライバ評価装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドライバ評価装置において、
前記表情判定部が、前記接客期間でない期間に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて判定した基準表情と、前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて判定した表情と、の比較に基づいて前記接客中の前記ドライバの表情を判定する、
ドライバ評価装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のドライバ評価装置において、
前記表情判定部は、前記ドライバの笑顔度を前記表情として判定する、
ドライバ評価装置。
【請求項5】
請求項4に記載のドライバ評価装置において、
前記接客判定部が前記接客期間の総回数に対する前記表情判定部が判定した笑顔度が閾値以上であった回数、又は、前記接客期間の総時間に対する前記表情判定部が判定した笑顔度が閾値以上であった総時間、をドライバの評価として算出するドライバ評価部と、を備えた、
ドライバ評価装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のドライバ評価装置において、
前記車両の運行情報を収集する収集部と、
前記収集部により収集された運行情報及び前記表情判定部により判定された前記接客中のドライバの表情に基づいてドライバを評価するドライバ評価部と、を備えた、
ドライバ評価装置。
【請求項7】
コンピュータに、
ドライバが接客中である接客期間を判定する接客判定部、
前記接客判定部により判定された前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、前記接客中の前記ドライバの表情を判定する表情判定部、として機能させるための
ドライバ評価プログラム。
【請求項8】
車両の運行日報を生成する運行日報生成方法であって、
ドライバが接客中である接客期間を判定する接客判定工程と、
前記接客判定工程により判定された前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、前記接客中の前記ドライバの表情を判定する表情判定工程と、
前記表情判定工程の判定結果に基づいて前記運行日報を生成する生成工程と、を備えた、
運行日報生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の運行日報生成方法で生成された、
運行日報。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ評価装置、ドライバ評価プログラム、運行日報生成方法及び運行日報、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のドライバ運転評価は、急減速急加速が発生したら評価が下がるなどといった減点方式であった。安全な運転が定着している運送会社等にとってはドライバ間の運転評価点に差がつかず、ドライバのモチベーション低下につながっていた。また、バスやタクシー事業はサービス業であり、乗客がいることが前提であるにも関わらず、ドライバ自身の乗客に対する応対の評価はほとんど行われていなかった。このため、ドライバの接客に対する意欲が下がっていた。
【0003】
また、ドライバの表情を判定する装置として、特許文献1、2の挙げたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-87303号公報
【特許文献2】特開2012-155631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドライバの接客に対する意欲向上を図ったドライバ評価装置、ドライバ評価プログラム、運行日報生成方法及び運行日報、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るドライバ評価装置、ドライバ評価プログラム、運行日報生成方法及び運行日報、は、下記[1]~[9]を特徴としている。
[1]
車両のドライバが接客中である接客期間を判定する接客判定部と、
前記接客判定部により判定された前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、前記接客中の前記ドライバの表情を判定する表情判定部と、を備えた、
ドライバ評価装置であること。
[2]
[1]に記載のドライバ評価装置において、
前記接客判定部が、前記車両の停車中において、ドアの開閉、タクシーメータの操作、マイクの使用の少なくとも1つが行われた時刻に基づいて、前記接客期間を判定する、
ドライバ評価装置であること。
[3]
[1]又は[2]に記載のドライバ評価装置において、
前記表情判定部が、前記接客期間でない期間に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて判定した基準表情と、前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて判定した表情と、の比較に基づいて前記接客中の前記ドライバの表情を判定する、
ドライバ評価装置であること。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のドライバ評価装置において、
前記表情判定部は、前記ドライバの笑顔度を前記表情として判定する、
ドライバ評価装置であること。
[5]
[4]に記載のドライバ評価装置において、
前記接客判定部が前記接客期間の総回数に対する前記表情判定部が判定した笑顔度が閾値以上であった回数、又は、前記接客期間の総時間に対する前記表情判定部が判定した笑顔度が閾値以上であった総時間、をドライバの評価として算出するドライバ評価部と、を備えた、
ドライバ評価装置であること。
[6]
[1]~[5]の何れか1項に記載のドライバ評価装置において、
前記車両の運行情報を収集する収集部と、
前記収集部により収集された運行情報及び前記表情判定部により判定された前記接客中のドライバの表情に基づいてドライバを評価するドライバ評価部と、を備えた、
ドライバ評価装置であること。
[7]
コンピュータに、
ドライバが接客中である接客期間を判定する接客判定部、
前記接客判定部により判定された前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、前記接客中の前記ドライバの表情を判定する表情判定部、として機能させるための
ドライバ評価プログラムであること。
[8]
車両の運行日報を生成する運行日報生成方法であって、
ドライバが接客中である接客期間を判定する接客判定工程と、
前記接客判定工程により判定された前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、前記接客中の前記ドライバの表情を判定する表情判定工程と、
前記表情判定工程の判定結果に基づいて前記運行日報を生成する生成工程と、を備えた、
運行日報生成方法であること。
[9]
[8]に記載の運行日報生成方法で生成された、
運行日報であること。
【0007】
上記[1]、[7]~[9]の構成のドライバ評価装置、ドライバ評価プログラム、運行日報生成方法及び運行日報によれば、表情判定部が、接客中のドライバの表情を判定する。これにより、ドライバの接客を評価することができ、ドライバの接客に対する意欲向上を図ることができる。
【0008】
上記[2]の構成のドライバ評価装置によれば、精度よく接客期間を判定することができる。
【0009】
上記[3]の構成のドライバ評価装置によれば、基準表情と接客期間中の画像データから判定した表情との比較に基づいて、接客中のドライバの表情を判定する。これにより、精度よく接客中のドライバの表情を判定することができる。
【0010】
上記[4]の構成のドライバ評価装置によれば、笑顔度によってドライバを評価するため、ドライバが笑顔を意識して接客することができる。
【0011】
上記[5]の構成のドライバ評価装置によれば、より一層適切に、ドライバの接客を評価することができる。
【0012】
上記[6]の構成のドライバ評価装置によれば、ドライバの運転と接客との総合評価を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ドライバの接客を評価することができ、ドライバの接客に対する意欲向上を図ることができるドライバ評価装置、ドライバ評価プログラム、運行日報生成方法及び運行日報を提供することができる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態におけるドライバ評価装置としてのデジタルタコグラフの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すデジタルタコグラフの処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図1に示すデジタルタコグラフの処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1に示すデジタルグラフが行う笑顔度判定について説明するための笑顔度の確率分布である。
【
図5】
図5は、
図1に示すデジタルタコグラフが行う接客期間の判定について説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すデジタルタコグラフが行う接客期間の判定について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
<実施形態の車載機の説明>
本発明の実施形態におけるドライバ評価装置としてのデジタルタコグラフ10(以下、「デジタコ10」と略記する)の構成例を
図1に示す。
図1に示したデジタコ10は、例えばタクシー、バスのような接客が行われる業務用車両に搭載した状態で使用され、ドライバの接客を評価するために利用される。
【0018】
図1に示したデジタコ10は、各種運行データを記録すると共に、接客中のドライバの笑顔(表情)を判定、評価する。
【0019】
なお、
図1に示したデジタコ10の内部の主要な構成要素の実体は、マイクロコンピュータを主体とする電気回路のハードウェアと、このマイクロコンピュータが実行するプログラムおよびデータとで構成されるソフトウェアからなる。また、必要に応じて、画像処理専用のプロセッサや、数値演算用のプロセッサなどがデジタコ10に内蔵される場合もある。
【0020】
<構成の説明>
図1に示したデジタコ10の入力には、車載カメラ21が接続されている。車載カメラ21は、例えば自動車のダッシュボードなどに固定され、ドライバを撮影できる方向に向けられている。なお、複数台の車載カメラ21を必要に応じて用いることができる。車載カメラ21の撮影内容を表す映像信号SG1がデジタコ10に入力される。
【0021】
デジタコ10の内部には、画像認識エンジン101と、表情判定部としての笑顔判定部102と、が備わっている。
【0022】
画像認識エンジン101は、入力される映像信号SG1を各フレームの画像に対して、リアルタイムで認識処理を実行し、笑顔判定に用いる特徴量を検出する。特徴量としては、例えば、特開2009-87303号公報、特開2012-155631号公報に記載されているように、画像中のドライバの目尻と口角との距離、口領域の高さ、口領域の幅、右口角位置、左口角位置などを検出することが考えられる。
【0023】
笑顔判定部102は、後述する接客判定部104によりドライバが乗客の接客中であると判定されている間に画像認識エンジン101により検出された特徴量に基づいて、接客中のドライバの笑顔度を判定する。また、笑顔判定部102は、判定した笑顔度を示す笑顔度信号SG2を後述する運行データ記録部107に入力する。
【0024】
図1に示したデジタコ10の入力には、自車両に搭載されている車速センサ(図示せず)が出力する車速パルス信号SG3が印加される。この車速パルス信号SG3は、例えば、車両のトランスミッションの出力軸が所定量回動する毎に発生するパルスを含んでいる。したがって、自車両の走行速度(km/h)や移動距離を車速パルス信号SG3に基づいて算出できる。
【0025】
また、
図1に示したデジタコ10の入力には、マイク22、カーテシスイッチ23、タクシーメータ24が出力する音声信号SG4、開閉信号SG5、操作信号SG6が印加される。マイク22は、例えばバスのドライバが乗客に対するアナウンスを行うために車両に搭載されている。マイク22は、ドライバの音声を集音して、音声信号SG4を出力する。カーテシスイッチ23は、ドアの開閉状態を検出するスイッチであって、ドアの開閉状態を示す開閉信号SG5を出力する。タクシーメータ24は、タクシーに搭載され、実車ボタン、支払いボタンなど各種ボタンの操作が行われたことを示す操作信号SG6を出力する。
【0026】
なお、
図1に示す実施形態では、図面の記載を簡素化するため、デジタコ10には、マイク22、カーテシスイッチ23、タクシーメータ24が接続されている。しかしながら、一般的にバスに搭載されたデジタコ10には、マイク22、カーテシスイッチ23が接続され、タクシーメータ24は接続されない。また、タクシーに搭載されたデジタコ10には、カーテシスイッチ23、タクシーメータ24が接続され、マイク22は接続されない。
【0027】
また、実際の車両において、映像信号SG1、車速パルス信号SG3、音声信号SG4、開閉信号SG5、操作信号SG6以外の様々な信号を外部からデジタコ10に入力することが可能であるが、ドライバの接客を評価する用途だけであれば、他の信号を入力する必要はない。
【0028】
図1に示したように、デジタコ10の内部には、車速検出機能103、接客判定部104、加速度センサ105、GPS通信部106、取集部としての運行データ記録部107、ドライバ評価部108、および広域無線通信アダプタ109がさらに備わっている。
【0029】
車速検出機能103は、外部から入力される車速パルス信号SG3に基づいて自車両の最新の走行速度(km/h)を常時算出する。この算出結果の走行速度を表す速度信号SG7が車速検出機能103から出力され運行データ記録部107に入力される。
【0030】
接客判定部104は、音声信号SG4、開閉信号SG5、操作信号SG6、速度信号SG7に基づいて車両のドライバが乗客の接客中であるか否かを判定し、判定結果を示す判定信号SG8を笑顔判定部102に入力する。
【0031】
加速度センサ105は、デジタコ10に固定されており、自動車の進行方向(前後方向)の加速度の大きさと、横方向(左右方向)の加速度の大きさとをそれぞれ検出する機能を有している。進行方向の加速度の大きさを表す加速度信号SG9と、横方向の加速度の大きさを表す加速度信号SG10とのそれぞれが加速度センサ105から出力され運行データ記録部107に入力される。
【0032】
GPS通信部106は、周知のように複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信して、現在位置を求め、現在位置を表す位置信号SG11を運行データ記録部107に出力する。
【0033】
運行データ記録部107は、定期的に車両の運行情報である速度信号SG7、加速度信号SG9、SG10、位置信号SG11と、笑顔判定部102から出力される笑顔度信号SG2と、を収集する。ドライバ評価部108は、運行情報である速度信号SG7、加速度信号SG9、SG10、位置信号SG11や、笑顔度信号SG2に基づいてドライバの評価を行う。
【0034】
広域無線通信アダプタ109は、アンテナ110を用いて、遠隔地のコンピュータとの間でデータ通信をするための無線通信機能を提供する。運行データ記録部107は、広域無線通信アダプタ109を用いて、必要に応じて収集した速度信号SG7、加速度信号SG9、SG10、位置信号SG11、笑顔度信号SG2を遠隔地のサーバや車両を管理している機関の事務所PCなどに対して送信することができる。ドライバ評価部108は、広域無線通信アダプタ109を用いて、ドライバの評価を遠隔地のサーバや車両を管理している機関の事務所PCなどに対して送信することができる。
【0035】
<動作の説明>
次に、上述した構成のデジタコ10の動作について
図2~
図3のフローチャートを参照して説明する。デジタコ10を構成するコンピュータは、
図2~
図3に示すようなドライバ評価プログラムに従って、動作する。デジタコ10は、イグニッションオンに応じて処理を開始する。まず、デジタコ10は、
図2に示すように、速度信号SG7に基づいて車速が所定速度(例えば40km/h)以上であるか否かを判定する(S1)。デジタコ10は、車速が所定速度以上になると(S1でY)、通常走行を開始したと判断して、S2に進む。
【0036】
S2において、デジタコ10は、画像認識エンジン101が検出した特徴量に基づいてドライバの通常の笑顔度(基準笑顔度)を求めるキャリブレーションを行う。具体的には、デジタコ10は、キャリブレーション期間中に画像認識エンジン101が検出した各フレームの特徴量毎に笑顔度を判定する。笑顔度の判定としては、例えば、特開2009-87303、特開2012-155631に記載された周知の技術を用いることができる。次に、デジタコ10は、
図4の点線で示すようにキャリブレーション期間中の笑顔度の確率分布を求め、確率が一番高い笑顔度を基準笑顔度とする。
【0037】
その後、デジタコ10は、速度信号SG7に基づいて車両が停車しているか否かを判定する(S3)。車両が停車していると判断すると(S3でY)、デジタコ10は、フラグAを立てる(S4)。その後、デジタコ10は、開閉信号SG5に基づいてドアの開閉が行われたか否かを判定する(S5)。ドアの開閉が行われたと判定すると(S5でY)、デジタコ10は、フラグBを立てた後(S6)、S7に進む。ドアの開閉が行われていなければ(S5でN)、デジタコ10は、直ちにS7に進む。
【0038】
S7において、デジタコ10は、操作信号SG6に基づいてタクシーメータ24の実走ボタンや支払いボタンなどの操作が行われたか否かを判定する。タクシーメータ24の操作が行われたと判定すると(S7でY)、デジタコ10は、フラグCを立てた後(S8)、S9に進む。タクシーメータ24の操作が行われていなければ(S7でN)、デジタコ10は、直ちにS9に進む。
【0039】
S9において、デジタコ10は、音声信号SG4に基づいてアナウンスが行われているか否かを判定する。音声信号SG4が入力され、アナウンスが行われていると判定すると(S9でY)、デジタコ10は、フラグDを立てた後(S10)、S11に進む。音声信号SG4が入力されておらず、アナウンスが行われていないと判定すると(S9でN)、デジタコ10は、直ちにS11に進む。
【0040】
S11において、デジタコ10は、車速が閾値以上となり通常走行を開始したか否かを判定する。車両の通常走行が開始されていなければ(S11でN)、デジタコ10はS5に戻る。一方、車両の通常走行が開始されると(S11でY)、デジタコ10は
図2のS12に進む。なお、フラグA、Cにはフラグを立てた時刻が紐づけられている。また、フラグBには、ドアが開いた時刻と、ドアが閉まった時刻と、が紐づけられている。また、フラグDには、音声信号SG4が入力された時刻と、音声信号SGの入力が停止した時刻と、が紐づけられている。
【0041】
S12において、デジタコ10は、S3~S10(車両の停車から走行)までの間に立てられたフラグA~Dに基づいて接客期間を判定する。接客期間判定の一例について
図5及び
図6を参照して説明する。
【0042】
まず、タクシーの場合について説明する。
図5に示すように、乗客がタクシーに乗る時は、ドライバが、タクシーを停車させ、その後、ドアを開閉して乗客をタクシー内に乗車させる。次に、乗客がドライバに行先を伝えると、ドライバが、タクシーメータ24の実走ボタンを操作した後、車両を走行させる。よって、デジタコ10は、車両の停車から走行までの間に、フラグA(停車)→フラグB(ドアの開閉)→フラグC(タクシーメータ24操作)の順にフラグが立てられると、タクシー乗車時と判定する。そして、デジタコ10は、フラグBに紐づけられたドアが開いた時刻からフラグCが立てられた時間(タクシーメータ24操作時)をタクシー乗車時の接客期間として判定する。
【0043】
一方、乗客がタクシーを降りるときは、タクシーが停車し、その後、ドライバがタクシーメータ24の支払いボタンを操作し、料金の支払いが行われる。料金の支払いが終わると、ドライバはドアを開閉させて、乗客を降ろし、その後、タクシーメータ24の空車ボタンを操作して、走行を開始する。よって、デジタコ10は、車両の停車から走行までの間に、フラグA(停車)→フラグC(タクシーメータ24操作)→フラグBの順にフラグが立てられると、タクシー降車時と判定する。そして、デジタコ10は、フラグCが立てられた時間からフラグBに紐づけられたドアが閉まった時刻までをタクシー降車時の接客期間として判定する。
【0044】
次に、バスの場合について説明する。
図6に示すように、乗客がバスに乗る時は、ドライバが、バスが停車させ、ドアを開閉して乗客をバス内に乗車させ後、バスを次の停留所まで走行させる。乗客がバスから降りる時は、ドライバが、バスを停車させ、ドアを開く。ドアが開いている間に、乗客は料金精算を行って順次、降車する。ドライバは、全ての乗客が降車すると、ドアを閉めて、次の停留所まで走行させる。よって、デジタコ10は、車両の停車から走行までの間に、フラグA(停車)→フラグB(開閉)の順にフラグが立てられると、バス乗車又は乗車時と判定する。そして、デジタコ10は、フラグBに紐づけられたドアが開いた時刻からドアが閉まった時刻までをバス乗車、降車時の接客期間として判定する。また、バスのドライバは、車両の停車中にアナウンスを行うことがある。デジタコ10は、車両の停車から走行までの間に、フラグA→フラグDの順にフラグが立てられると、アナウンス時と判定する。そして、デジタコ10は、フラグDに紐づけられた音声信号SG4が入力された時刻から音声信号SG4の入力が停止した時刻までをアナウンス時の接客期間として判定する。
【0045】
次に、デジタコ10は、接客期間中に画像認識エンジン101が検出した各フレームの特徴量に基づいて、笑顔度を判定する(S13)。具体的には、デジタコ10は、接客期間中に画像認識エンジン101が検出した各フレームの特徴量毎に笑顔度を判定する。笑顔度の判定としては、例えば、特開2009-87303、特開2012-155631に記載された周知の技術を用いることができる。次に、デジタコ10は、
図4の実線で示すように接客期間における笑顔度の確率分布を求め、確率が一番高い笑顔度から上記基準笑顔度を差し引いた値を笑顔度として求める。
【0046】
次に、デジタコ10は、S13で判定した笑顔度が閾値を超えたか否かを判定する(S14)。笑顔度が閾値を超えていれば(S14でY)、デジタコ10は、サービス評価点を加点し(S15)、
図2のS3に戻る。サービス評価点としては、例えば、(笑顔度が閾値を超えた回数)/(接客期間と判定された総回数)としてもよいし、(笑顔度が閾値を超えた総時間)/(接客期間と判定された総時間)としてもよい。
【0047】
デジタコ10は、フラグA~Dの順番により上述したように、接客期間が、タクシーの乗車時か、タクシーの降車時か、バスの乗車、降車時か、アナウンス時か、を識別できる。そこで、デジタコ10は、笑顔度が閾値以下であれば(S14でN)、タクシーの乗車時か、タクシーの降車時か、バスの乗車、降車時か、バスのアナウンス時かを識別できるような笑顔なしフラグを立てた後(S16)、
図2のS3に戻る。
【0048】
また、デジタコ10は、定期的に信号SG7、SG9~SG11を運行情報として記録し、これら運行情報に基づいて運転に関するドライバ評価点を算出する。これら記録された運行情報や、運転、接客に関するドライバ評価点が運行日誌となる。そして、デジタコ10は、必要に応じて遠隔地のサーバや事業者PCにこれら記録した運行情報やドライバ評価点を送信する。事業者PCでは、運行情報やドライバ評価点を表示することができる。
【0049】
上述した実施形態によれば、デジタコ10が、接客中のドライバの笑顔度(表情)を判定する。これにより、ドライバの接客を評価することができ、ドライバの接客に対する意欲向上を図ることができる。
【0050】
上述した実施形態によれば、デジタコ10が、車両の停車中において、ドアの開閉、タクシーメータ24の操作、マイク22の使用の少なくとも1つが行われた時刻に基づいて、接客期間を判定する。これにより、精度よく接客期間を判定することができる。
【0051】
上述した実施形態によれば、デジタコ10が、基準笑顔と接客期間中に取得した特徴量から判定した笑顔度との比較(差)に基づいて、接客中のドライバの笑顔度を判定する。これにより、精度よく接客中のドライバの表情を判定することができる。
【0052】
上述した実施形態によれば、デジタコ10が、笑顔度によってドライバを評価するため、ドライバが笑顔を意識して接客することができる。
【0053】
上述した実施形態によれば、デジタコ10が、(笑顔度が閾値を超えた回数)/(接客期間と判定された総回数)、又は、(笑顔度が閾値を超えた総時間)/(接客期間と判定された総時間)をドライバ評価点とする。これにより、より一層適切に、ドライバの接客を評価することができる。
【0054】
上述した実施形態によれば、デジタコ10が、収集された運行情報及び接客中のドライバの笑顔度に基づいてドライバを評価している。これにより、ドライバの運転と接客との総合評価を行うことができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0056】
上述した実施形態によれば、デジタコ10は、イグニッションオン後に設けたキャリブレーション期間中に画像認識エンジン101が得た特徴量から基準笑顔度を判定していたが、これに限ったものではない。基準笑顔度は、接客期間でない期間中に得た特徴量から判別すればよく、例えば、常時特徴量を検出するようにして、基準笑顔を定期的に更新するようにしてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態によれば、デジタコ10は、ドアの開閉、タクシーメータ24の操作、マイクの使用を行った時刻に基づいて接客期間を判定していた。これにより、タクシーに搭載された場合も、バスに搭載された場合にも接客期間を判定することができる。しかしながら、これに限ったものではなく、タクシーに搭載されるデジタコ10においては、ドアの開閉、タクシーメータの操作を行った時刻に基づいて接客時期を判定し、バスに搭載されるデジタコにおいては、ドアの開閉、マイクの使用を行った時刻に基づいて接客期間を判定するようにしてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態によれば、デジタコ10が、ドライバの笑顔度を判定し、ドライバの接客期間を判定し、ドライバ評価点を算出していたが、これに限ったものではない。例えば、デジタコ10が、画像認識エンジン101が検出した特徴量をサーバや事業者PCに送信し、サーバや事業者PCがドライバの笑顔度の判定、ドライバの接客時期の判定、ドライバ評価点の算出などを行うようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態によれば、デジタコ10は、
図5に示すように、ドアが開いた時刻からタクシーメータ24の操作が行われた時刻までをタクシー乗車時の接客期間として判定していたが、これに限ったものではない。乗客が乗り込む前に窓越しにドライバが乗客に対して笑顔を向けて接客を行う場合もある。そこで、デジタコ10は、ドアが開いた時刻よりも少し前の時刻からタクシーメータ24の操作が行われた時刻までを接客期間として判定するようにしてもよい。
【0060】
ここで、上述した本発明に係るドライバ評価装置、ドライバ評価プログラム、運行日報生成方法及び運行日報の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[9]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
車両のドライバが接客中である接客期間を判定する接客判定部(104)と、
前記接客判定部(104)により判定された前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、前記接客中の前記ドライバの表情を判定する表情判定部(102)と、を備えた、
ドライバ評価装置(10)。
[2]
[1]に記載のドライバ評価装置(10)において、
前記接客判定部(104)が、前記車両の停車中において、ドアの開閉、タクシーメータ(24)の操作、マイク(22)の使用の少なくとも1つが行われた時刻に基づいて、前記接客期間を判定する、
ドライバ評価装置(10)。
[3]
[1]又は[2]に記載のドライバ評価装置(10)において、
前記表情判定部(102)が、前記接客期間でない期間に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて判定した基準表情と、前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて判定した表情と、の比較に基づいて前記接客中の前記ドライバの表情を判定する、
ドライバ評価装置(10)。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のドライバ評価装置(10)において、
前記表情判定部(102)は、前記ドライバの笑顔度を前記表情として判定する、
ドライバ評価装置。
[5]
[4]に記載のドライバ評価装置(10)において、
前記接客判定部(104)が前記接客期間の総回数に対する前記表情判定部が判定した笑顔度が閾値以上であった回数、又は、前記接客期間の総時間に対する前記表情判定部が判定した笑顔度が閾値以上であった総時間、をドライバの評価として算出するドライバ評価部と、を備えた、
ドライバ評価装置(10)。
[6]
[1]~[5]の何れか1項に記載のドライバ評価装置(10)において、
前記車両の運行情報を収集する収集部(107)と、
前記収集部により収集された運行情報及び前記表情判定部により判定された前記接客中のドライバの表情に基づいてドライバを評価するドライバ評価部(108)と、を備えた、
ドライバ評価装置(10)。
[7]
コンピュータに、
ドライバが接客中である接客期間を判定する接客判定部(104)、
前記接客判定部(104)により判定された前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、前記接客中の前記ドライバの表情を判定する表情判定部(102)、として機能させるための
ドライバ評価プログラム。
[8]
車両の運行日報を生成する運行日報生成方法であって、
ドライバが接客中である接客期間を判定する接客判定工程と、
前記接客判定工程により判定された前記接客期間中に取得した前記ドライバの顔を撮影した画像データに基づいて、前記接客中の前記ドライバの表情を判定する表情判定工程と、
前記表情判定工程の判定結果に基づいて前記運行日報を生成する生成工程と、を備えた、
運行日報生成方法。
[9]
[8]に記載の運行日報生成方法で生成された、
運行日報。
【符号の説明】
【0061】
10 デジタルタコグラフ(ドライバ評価装置)
22 マイク
24 タクシーメータ
102 笑顔判定部(表情判定部)
104 接客判定部
107 運行データ記録部(収集部)
108 ドライバ評価部