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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080684
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220523BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20220523BHJP
   H01M 50/183 20210101ALI20220523BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20220523BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20220523BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20220523BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20220523BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M2/08 A
H01G11/10
H01G11/80
H01G11/26
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191890
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】岡本 夕紀
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA06
5E078AB02
5E078BA07
5E078EA06
5E078JA02
5E078JA04
5E078JA06
5H011AA03
5H011GG02
5H011GG05
5H028AA08
5H028BB01
5H028CC07
5H028CC19
5H028EE10
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM16
5H029BJ17
5H029DJ03
5H029DJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】電池性能の低下を抑制しつつ集電体間の絶縁性を向上可能な蓄電モジュールを提供する。
【解決手段】蓄電モジュール1は、積層体5と、積層体5に拘束荷重を付加するための拘束部材と、積層体5の一端及び他端のそれぞれに設けられた集電板30,40と、を備える。積層体5の複数の電極のそれぞれは、第1面20aと第1面20aの反対側の第2面21aとを含む電極板と、第1面20a及び第2面21aのそれぞれに設けられた活物質層と、を含み、活物質層が重複するように互いに積層されており、複数のスペーサ14のそれぞれは、活物質層を囲うように電極板に設けられ、隣り合う電極板の間の活物質層が配置された空間S側に臨む内側面14aと、空間Sとは反対側に臨む外側面14bと、を含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された複数の電極、及び、隣り合う前記電極の間に介在するように設けられた複数のスペーサを含む積層体と、
前記第1方向に沿って前記積層体に拘束荷重を付加するための拘束部材と、
前記第1方向における前記積層体の一端及び他端のそれぞれに設けられた集電板と、
を備え、
前記複数の電極のそれぞれは、第1面と前記第1面の反対側の第2面とを含む電極板と、前記第1面及び前記第2面のそれぞれに設けられた活物質層と、を含み、前記第1方向からみてそれぞれの前記活物質層が重複するように互いに積層されており、
前記複数のスペーサのそれぞれは、前記第1方向からみて前記活物質層を囲うように前記電極板に設けられ、隣り合う前記電極板の間の前記活物質層が配置された空間側に臨む内側面と、前記空間とは反対側に臨む外側面と、を含み、
前記複数のスペーサの前記外側面は、前記第1方向に配列されることにより前記積層体の外側面である積層体側面を構成しており、
前記積層体側面には、少なくとも1つの前記スペーサの前記外側面が別の前記スペーサの前記外側面よりも前記積層体の外側に突出することにより突出部が形成されており、
前記複数の電極の前記活物質層は、前記第1方向からみて、前記積層体側面において最も前記積層体の中心側に位置する前記外側面よりも前記中心側に位置する、
蓄電モジュール。
【請求項2】
前記積層体側面の形状に倣いつつ前記積層体側面を覆うように前記積層体側面に設けられ、前記積層体を封止するためのシール部材をさらに備え、
前記複数の電極のそれぞれは、
前記第1面と前記第1面の反対側の第3面とを含む第1電極板、及び、前記第1面に設けられた前記活物質層としての第1活物質層を含む第1電極と、
前記第2面と前記第2面の反対側の第4面とを含む第2電極板、及び、前記第2面に設けられた前記活物質層としての第2活物質層を含む第2電極と、を有し、
前記第3面と前記第4面とが対向するように前記第1電極と前記第2電極とが重ね合されることにより構成されている、
請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記積層体は、前記第1活物質層及び前記第2活物質層が互いに対向するように配置された第1電極及び前記第2電極と、当該第1電極と当該第2電極との間に介在する前記スペーサと、を含む蓄電セルが、前記第1方向に沿って複数積層されて構成されており、
前記突出部は、少なくとも1つの前記蓄電セルの前記スペーサの前記外側面が別の前記蓄電セルの前記スペーサの前記外側面と一致しないように前記少なくとも1つの前記蓄電セルが前記別の前記蓄電セルに対してずれて配置されることにより形成される、
請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記第1方向からみときの前記スペーサの外形は、それぞれ、複数の辺部分を含む多角形状であり、
前記突出部は、前記第1方向からみて前記少なくとも1つの前記蓄電セルの前記スペーサの前記複数の辺部分のそれぞれが前記別の前記蓄電セルの前記スペーサの前記複数の辺部分のそれぞれに対してずれることにより形成される、
請求項3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記突出部は、少なくとも1つの前記スペーサの前記第1方向に交差する第2方向についての大きさが別の前記スペーサよりも大きいことにより、前記少なくとも1つの前記スペーサの前記外側面が突出されて形成される、
請求項1又は2に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記積層体側面には、前記第1方向に連続する2つ以上の前記スペーサの前記外側面が別の前記スペーサの前記外側面よりも前記積層体の外側に突出することにより前記突出部が形成されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記積層体は、複数の前記積層体側面を有し、
前記突出部は、全ての前記積層体側面に形成されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バイポーラ電池が記載されている。このバイポーラ電池では、隣接する正極活物質層、セパレータ層、及び、負極活物質層が1つの単電池層を形成している。そして、単電池層の周囲を取り囲むように、隣り合う集電体の間に絶縁シール部材が形成されている。絶縁シール部材は、連通路となる部分を除いて相互に熱融着された一対のラミネートフィルムからなる。また、このバイポーラ電池では、各層の絶縁シール部材及び集電体の側面の位置が、下層の絶縁シール部材及び集電体に対応する側面の位置に対して一定方向に所定の長さ分ずれている。これは、例えば各層の絶縁シール部材及び集電体自体をずらしながら積層することによって実現され得る。各層の連通路は、それぞれ絶縁シール部材及び集電体の側面に一端部がつながるように形成される。この連通路は、電解質の材料の注入及び/又はガス排気後に、樹脂封止材によって封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-310588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したバイポーラ電池では、絶縁シール部材の連通路の形成部分が、階段状に位置がずれて設置されることにより、複数層の単電池層分の連通路を同時に封止することを図っている。
【0005】
上述したバイポーラ電池では、各層を構成する単電池層、集電体、及び絶縁シール部材が、一体的に、例えば下層に向かうにつれて一方向にずらされることにより、バイポーラ電池の外側面が階段状に形成されている。
【0006】
上記のバイポーラ電池では、各層が階段状にずらされる結果、例えば下層の単電池層の正極活物質層及び負極活物質層といった活物質層の端部が、上層の単電池層における絶縁シール部材の外縁を越えて外側に張り出している。このような状態で、バイポーラ電池の積層方向両端に配置した拘束部材によってバイポーラ電池を拘束した場合、上層の単電池層の絶縁シール部材の外縁を越えて外側に張り出す下層の単電池層の端部には拘束荷重が十分に付与されず、下層の単電池層において活物質層に付与される拘束荷重がバラつくこととなる。単電池層の面内方向における拘束荷重のバラつきは電池反応のバラつきを発生させるため好ましくない。すなわち、特許文献1の構成では、バイポーラ電池への均一な拘束荷重の付与ができず、かえって電池性能を落としてしまうこととなる。
【0007】
一方で、バイポーラ電池の各層をずらさず、バイポーラ電池の外側面が揃うように積層される場合には上記の電池性能が落ちることを抑制できるものの、例えば、バイポーラ電池の両端に集電体を設けた場合、集電体間の沿面距離が短くなり、絶縁性が落ちる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、電池性能の低下を抑制しつつ集電体間の絶縁性を向上可能な蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る蓄電モジュールは、第1方向に積層された複数の電極、及び、隣り合う電極の間に介在するように設けられた複数のスペーサを含む積層体と、第1方向に沿って積層体に拘束荷重を付加するための拘束部材と、第1方向における積層体の一端及び他端のそれぞれに設けられた集電板と、を備え、複数の電極のそれぞれは、第1面と第1面の反対側の第2面とを含む電極板と、第1面及び第2面のそれぞれに設けられた活物質層と、を含み、第1方向からみてそれぞれの活物質層が重複するように互いに積層されており、複数のスペーサのそれぞれは、第1方向からみて活物質層を囲うように電極板に設けられ、隣り合う電極板の間の活物質層が配置された空間側に臨む内側面と、空間とは反対側に臨む外側面と、を含み、複数のスペーサの外側面は、第1方向に配列されることにより積層体の外側面である積層体側面を構成しており、積層体側面には、少なくとも1つのスペーサの外側面が別のスペーサの外側面よりも積層体の外側に突出することにより突出部が形成されており、複数の電極の活物質層は、第1方向からみて、積層体側面において最も積層体の中心側に位置する外側面よりも中心側に位置する。
【0010】
この蓄電モジュールでは、活物質層を含む複数の電極とスペーサとを含む積層体の両端に集電体が設けられている。そして、積層体の外側面である積層体側面には、少なくとも1つのスペーサの外側面が別のスペーサの外側面よりも積層体の外側に突出することにより突出部が形成されている。このため、例えば、積層体側面が全体的に平坦な場合と比較して、集電体間における積層体側面の沿面距離が延長される結果、集電体間の絶縁性が向上される。また、この蓄電モジュールでは、それぞれの電極の活物質層が、積層方向(第1方向)からみたとき、積層体側面において最も積層体の中心側に位置するスペーサの外側面よりも中心側に位置する。換言すれば、どの活物質層に着目しても、スペーサよりも外側に突出した部分が生じない、このため、全ての活物質層に対して適切に拘束荷重を付加することができ、電池性能の低下が抑制される。つまり、この蓄電モジュールによれば、電池性能の低下を抑制しつつ集電体間の絶縁性を向上可能である。
【0011】
本発明に係る蓄電モジュールは、積層体側面の形状に倣いつつ積層体側面を覆うように積層体側面に設けられ、積層体を封止するためのシール部材をさらに備え、複数の電極のそれぞれは、第1面と第1面の反対側の第3面とを含む第1電極板、及び、第1面に設けられた活物質層としての第1活物質層を含む第1電極と、第2面と第2面の反対側の第4面とを含む第2電極板、及び、第2面に設けられた活物質層としての第2活物質層を含む第2電極と、を有し、第3面と第4面とが対向するように第1電極と第2電極とが重ね合されることにより構成されていてもよい。この場合、積層体を封止するためのシール部材が設けられることによって、1つの電極が第1電極と第2電極とを重ね合わせて構成される場合であっても、それぞれの電極間をシールしつつ、集電体間の沿面距離を延長して絶縁性を向上できる。
【0012】
本発明に係る蓄電モジュールでは、積層体は、第1活物質層及び第2活物質層が互いに対向するように配置された第1電極及び第2電極と、当該第1電極と当該第2電極との間に介在するスペーサと、を含む蓄電セルが、第1方向に沿って複数積層されて構成されており、突出部は、少なくとも1つの蓄電セルのスペーサの外側面が別の蓄電セルのスペーサの外側面と一致しないように少なくとも1つの蓄電セルが別の蓄電セルに対してずれて配置されることにより形成されてもよい。このように、スペーサを含む蓄電セルをずらすことにより突出部を形成すれば、突出部の形成に際してサイズの異なる複数種類のスペーサを用意する必要が無く、生産性が向上されると共にコストが削減される。
【0013】
本発明に係る蓄電モジュールでは、第1方向からみときのスペーサの外形は、それぞれ、複数の辺部分を含む多角形状であり、突出部は、第1方向からみて少なくとも1つの蓄電セルのスペーサの複数の辺部分のそれぞれが別の蓄電セルのスペーサの複数の辺部分のそれぞれに対してずれることにより形成されていてもよい。この場合、少なくとも1つの蓄電セルをずらすことにより、積層体側面の複数の面に対して突出部を形成して集電体間の延面距離を延長できる。
【0014】
本発明に係る蓄電モジュールでは、突出部は、少なくとも1つのスペーサの第1方向に交差する第2方向についての大きさが別のスペーサよりも大きいことにより、少なくとも1つのスペーサの外側面が突出されて形成されてもよい。このように、スペーサのサイズを異ならせることで突出部を形成すれば、例えば電極及びスペーサ(すなわち蓄電セル)をずらすことにより突出部を形成する場合と比較して、積層方向に拘束荷重を付加可能な領域が広く確保されやすくなる。
【0015】
本発明に係る蓄電モジュールでは、積層体側面には、第1方向に連続する2つ以上のスペーサの外側面が別のスペーサの外側面よりも積層体の外側に突出することにより突出部が形成されていてもよい。この場合、1つのスペーサが薄化された場合であっても、突出部の第1方向への寸法を大きくすることができる。このため、例えば水滴等が突出部において液切れしやすくなるため、集電体間の液絡が抑制される。
【0016】
本発明に係る蓄電モジュールでは、積層体は、複数の積層体側面を有し、突出部は、全ての積層体側面に形成されていてもよい。この場合、複数の積層体側面の全てにおいて、集電体間の沿面距離を延長して絶縁性を向上可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池性能の低下を抑制しつつ集電体間の絶縁性を向上可能な蓄電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールを示す概略的な断面図である。
図2図2は、図1に示された蓄電モジュールの一部の拡大図である。
図3図3は、図1に示された蓄電モジュールの模式的な平面図である。
図4図4は、変形例に係る蓄電モジュールを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態について説明を行う。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、各図には、X軸、Y軸、及び、Z軸からなる直交座標系を示す場合がある。
【0020】
図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールを示す概略的な断面図である。図1に示される蓄電モジュール1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられ得る。蓄電モジュール1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電モジュール1は、電気二重層キャパシタであってもよいし、全固体電池であってもよい。本実施形態では、蓄電モジュール1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0021】
蓄電モジュール1は、一方向に複数の蓄電セル2が積層されて構成された積層体5と、積層体5の積層方向(第1方向)の一端及び他端のそれぞれに設けられた集電板(集電体)30,40と、シール部材50と、を備えている。ここでは、蓄電セル2の積層方向をZ軸方向とする。蓄電セル2は、それぞれ、正極(第1電極)11と、負極(第2電極)12と、セパレータ13と、スペーサ14とを備える。正極11は、第1面20aを含む第1集電体(第1電極板)20と、第1集電体20の第1面20aに設けられた正極活物質層(第1活物質層)22と、を備える。正極11は、例えば矩形状の電極である。
【0022】
負極12は、第2面21aを含む第2集電体(第2電極板)21と、第2集電体21の第2面21aに設けられた負極活物質層(第1活物質層と異なる極性の第2活物質層)23とを備える。負極12は、例えば矩形状の電極である。負極12は、負極活物質層23が正極活物質層22と対向するように正極11に積層されている。本実施形態では、正極11及び負極12の積層方向は、蓄電セル2の積層方向と一致している(Z軸方向である)。以下、蓄電セル2の積層方向と正極11及び負極12の積層方向を単に「積層方向」と称する場合がある。本実施形態では、正極活物質層22及び負極活物質層23は、いずれも矩形状に形成されている。負極活物質層23は、正極活物質層22よりも一回り大きく形成されており、平面視において(積層方向からみたとき)、正極活物質層22の形成領域の全体が負極活物質層23の形成領域内に位置している。
【0023】
第1集電体20は、第1面20aの反対側の第3面20bを含む。第3面20bには、正極活物質層22が形成されていない。第2集電体21は、第2面の反対側の第4面21bを含む。第2集電体21の第4面21bには、負極活物質層23が形成されていない。積層体5は、一の蓄電セル2の第1集電体20の第3面20bと、一の蓄電セル2と積層方向に隣り合う別の蓄電セル2の第2集電体21の第4面21bとが互いに対向するように(ここでは接するように)、複数の蓄電セル2を積層することにより構成されている。
【0024】
これにより、積層体5において、複数の蓄電セル2が電気的に直列に接続される。積層体5では、積層方向に隣り合う蓄電セル2により、互いに接する第1集電体20及び第2集電体21を電極体とするバイポーラ電極10(複数の電極)が疑似的に形成される。すなわち、1つのバイポーラ電極10は、第1集電体20、第2集電体21、正極活物質層22及び負極活物質層23を含む。これにより、複数のバイポーラ電極10のそれぞれは、第1面20aと第1面20aの反対側の第2面21aとを含む電極板(第1集電体20及び第2集電体21)と、第1面20a及び第2面21aのそれぞれに設けられた活物質層(正極活物質層22及び負極活物質層23)と、を含み、積層方向からみてそれぞれの活物質層が重複するように互いに積層されることとなる。
【0025】
積層体5の積層方向の一端には、終端電極として第1集電体20(正極11)が配置される。積層方向の他端には、終端電極として第2集電体21(負極12)が配置される。なお、ここでは、第1面20a、第3面20b、第2面21a、及び第4面21bに沿う方向をX軸方向及びY軸方向とする。
【0026】
第1集電体20及び第2集電体21のそれぞれ(以下、単に「集電体」という場合がある)は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層22及び負極活物質層23に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。集電体は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。集電体の表面は、公知の保護層により被覆されてもよい。集電体の表面は、メッキ処理等の公知の方法により処理されてもよい。
【0027】
集電体は、例えば箔、シート、フィルム、線、棒、メッシュ又はクラッド材等の形態を有してもよい。集電体は、アルミニウム箔、銅箔以外に、例えば、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等の金属箔であってもよい。機械的強度を確保する観点から、集電体は、ステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301等)であってもよい。集電体は、上記金属の合金箔であってもよい。本実施形態において、第1集電体20はアルミニウム箔であり、第2集電体21は銅箔である。第1集電体20は、アルミニウム膜によって被覆された基材を含む箔であってもよい。第2集電体21は、銅膜によって被覆された基材を含む箔であってもよい。箔状の集電体の場合、集電体の厚みは1μm~100μmの範囲内であってもよい。
【0028】
正極活物質層22は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態において、正極活物質層22は複合酸化物としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)を含む。
【0029】
負極活物質層23は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はなく使用可能である。例えば、負極活物質としてLiや、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)やソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)を挙げることができる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態において、負極活物質層23は炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0030】
正極活物質層22及び負極活物質層23のそれぞれ(以下、単に「活物質層」という場合がある)は、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。活物質層に含まれる成分又は当該成分の配合比及び活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照され得る。活物質層の厚みは、例えば2~150μmである。集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法等の従来から公知の方法を用いてもよい。正極11又は負極12の熱安定性を向上させるために、集電体の表面(片面又は両面)又は活物質層の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば、無機粒子と結着剤とを含み、その他に増粘剤等の添加剤を含んでもよい。
【0031】
導電助剤は、正極11又は負極12の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、正極11又は負極12の導電性が不足する場合に任意に加えられてもよく、正極11又は負極12の導電性が十分に優れている場合には加えられなくてもよい。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。
【0032】
結着剤は、活物質又は導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たす。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒には、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が用いられる。
【0033】
セパレータ13は、正極11と負極12とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる。セパレータ13は、正極11と負極12との間に配置されている。セパレータ13は、蓄電セル2をスタックした際に隣り合うバイポーラ電極10,10間の短絡を防止する。
【0034】
セパレータ13は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布である。セパレータ13を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)からなる多孔質フィルムが用いられる。セパレータ13を構成する材料は、ポリプロピレン或いはメチルセルロース等からなる織布又は不織布等であってもよい。セパレータ13は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。セパレータ13には、電解質が含浸されてもよい。セパレータ13自体を全固体電解質(高分子固体電解質、無機固体型電解質)等の電解質で構成してもよい。
【0035】
セパレータ13に含浸される電解質としては、具体的には、従来公知の材料として、液体電解質(電解液)、高分子ゲル電解質を用いることができる。電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質とを含む。高分子ゲル電解質は、ポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む。
【0036】
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。非水溶媒としては、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。また、これらの材料を単独、または二種以上組合せて用いてもよい。電解質としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO等の公知のリチウム塩を使用できる。
【0037】
スペーサ14は、少なくとも、第1集電体20と第2集電体21との間に形成され、第1集電体20及び第2集電体21の少なくとも一方(例えば第1集電体20及び第2集電体21の両方、又は第1集電体20及び第2集電体21のいずれか一方のみ)に接合又は固定される。スペーサ14は、絶縁材料を含み、第1集電体20と第2集電体21との間の距離を保持し、絶縁することによって短絡を防止する。したがって、積層体5は、複数の(疑似的な)バイポーラ電極10、及び、隣り合うバイポーラ電極10の間に介在するように設けられた複数のスペーサ14を含むこととなる。
【0038】
一方、1つの蓄電セル2に着目すると、蓄電セル2は、それぞれ、正極活物質層22及び負極活物質層23が互いに対向するように配置された正極(第1電極)11及び負極(第2電極)12と、当該正極11と当該負極12第2電極との間に介在するスペーサ14と、正極活物質層22と負極活物質層23との間に介在されたセパレータ13と、を含むこととなる。
【0039】
スペーサ14は、積層方向からみて正極活物質層22及び負極活物質層23を囲うように集電体に設けられ、隣り合う集電体間の活物質層が配置された空間S側に臨む内側面14aと、空間Sとは反対側に臨む外側面14bと、を含む。スペーサ14は、積層方向からみて矩形枠状に形成されている。スペーサ14は、積層方向に交差する方向(第2方向)における集電体の縁部から集電体の外側に突出しており、積層体5の外側面(積層体側面)5sを形成している。
【0040】
すなわち、積層方向に沿って配列された複数のスペーサ14の外側面14bは、積層体5の外側面5sを構成している。したがって、積層体5は、積層方向からみて矩形状である。なお、積層方向に沿って隣り合うスペーサ14は互いに離間しており、当該離間した部分から集電体の側端面が外側に向けて露出されている。したがって、この集電体の側端面も積層体5の外側面5sの一部を構成する。
【0041】
スペーサ14は、正極11及び負極12との間の空間Sを封止することで、電解質の漏れを防止し得る。また、スペーサ14は、正極11及び負極12との間の空間Sを封止することで、蓄電モジュール1の外部から空間S内への水分の侵入を防止し得る。さらに、スペーサ14は、例えば充放電反応等により正極11又は負極12から発生したガスが蓄電モジュール1の外部に漏れることを防止し得る。なお、セパレータ13は、スペーサ14に埋設されることで位置決めされている。
【0042】
本実施形態において、スペーサ14は、絶縁材料として樹脂であるポリエチレン(PE)を含む。スペーサ14を構成する樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)の他に、ポリスチレン、ABS樹脂、変性ポリプロピレン(変性PP)、及びアクリロニトリルスチレン(AS)樹脂が挙げられる。
【0043】
集電板30は、積層体5の積層方向の一端に設けられている。より具体的には、集電板30は、終端電極として積層体5の一端に配置された第1集電体20(正極11)の外側に配置され、当該第1集電体20に電気的に接続されている。一例として、集電板30は、その表面30aが当該第1集電体20の第3面20bに接触されて配置されている。集電板40は、積層体5の積層方向の他端に設けられている。より具体的には、集電板40は、終端電極として積層体5の他端に配置された第2集電体21(負極12)の外側に配置され、当該第2集電体21に電気的に接続されている。一例として、集電板40は、その表面40aが当該第2集電体21の第4面21bに接触されて配置されている。
【0044】
集電板30,40は、積層方向からみて積層体5(蓄電セル2)よりも大きく形成されている。これにより、集電板30,40は、積層方向からみて、積層体5の外縁(ここではスペーサ14の外側面14b)よりも外側に突出している。ただし、集電板30,40は、積層体5のサイズと同等以下に構成されていてもよい。この場合、積層方向からみて、集電板30,40の外縁がスペーサ14の外側面14bと一致するか、或いは、外側面14bよりも内側に位置することとなる。集電板30,40は、蓄電モジュール1の充放電や、蓄電モジュール1同時の電気的な接続に用いられ得る。
【0045】
集電板30,40は、積層方向に沿って積層体5に拘束荷重を付加するための拘束部材としても機能し得る。より具体的には、積層体5に対して積層方向に沿って拘束荷重を付加する場合、一例として、集電板30,40のさらに外側に、積層体5及び集電板30,40を積層方向に沿って挟むように一対の板部材を配置すると共に、当該一対の板部材を例えばボルトといった締結部材によって互いに締結することにより積層体5に対して拘束荷重を付加する構成が考えられる。この場合、拘束荷重は、集電板30,40を介して積層体5に付加される。したがって、集電板30,40は、少なくとも、積層体5に拘束荷重を伝達する。この場合、積層体5のうちの集電板30,40に重なる部分に対して拘束荷重が入力される。したがって、集電板30,40は、積層体5の拘束荷重を付加する範囲を規定する部材でもある。
【0046】
ここで、図2は、図1に示された蓄電モジュールの一部の拡大図である。図2の(a)は図1の領域Aの拡大図であり、図2の(b)は図2の領域Bの拡大図である。図2では、シール部材50の図示が省略されている。図1,2に示されるように、蓄電モジュール1では、積層体5の外側面5sに複数の突出部Pが設けられている。この点について、より具体的に説明する。
【0047】
蓄電モジュール1では、複数の蓄電セル2は、積層方向に交差する方向(第2方向)について、位置が違えられている。図示の例では、積層方向における積層体5の両端側に位置する2つの蓄電セル2Bと、積層方向における積層体5の中央に位置する1つの蓄電セル2Bに対して、それらの蓄電セル2Bの間に位置する2つの蓄電セル2Aが、積層方向に交差する方向(図示の例ではX軸方向)に沿ってずらされている。すなわち、ここでは、複数の蓄電セル2が積層方向に沿って交互に、積層方向に交差する方向へずらされている。これにより、例えば、図2の(a)に示されるように、積層体5の外側面5sのうちのX軸方向正側に臨む一方の面に着目すると、外側面5sには、蓄電セル2Aのスペーサ14の外側面14bが、蓄電セル2Bのスペーサ14の外側面14bよりも積層体5の外側に向けて突出している。これにより、少なくとも積層体5の外側面5sの当該一方の面には、蓄電セル2Aの数に対応する数(ここでは2つ)の突出部Pが形成される。
【0048】
一方で、例えば、図2の(b)に示されるように、積層体5の外側面5sのうちのX軸方向負側に臨む他方の面に着目すると、外側面5sには、蓄電セル2Bのスペーサ14の外側面14bが、蓄電セル2Aのスペーサ14の外側面14bよりも積層体5の外側に突出することとなる。これにより、少なくとも積層体5の外側面5sの当該他方の面には、蓄電セル2Bの数に対応する数(ここでは3つ)の突出部Pが形成されることとなる。すなわち、ここでは、複数の蓄電セル2のうちの一部の蓄電セル2(例えば蓄電セル2A)のスペーサ14の外側面14bが残部の蓄電セル2(例えば蓄電セル2B)のスペーサ14の外側面14bと一致しないように、当該一部の蓄電セル2が残部の蓄電セル2に対してずれて配置されているため、そのずれの方向の両側に相補的に突出部Pが形成される。
【0049】
ここでは、蓄電セル2A同士、及び、蓄電セル2B同士は、積層方向に交差する方向における位置が互いに同一とされている(揃えられている)。つまり、ここでは、複数の突出部Pのそれぞれの突出量は、互いに同一である。ただし、複数の突出部Pのそれぞれの突出量を違えてもよい。ここでは、上記のとおり、一部の蓄電セル2を残部に対してずらすことにより突出部Pを形成している。したがって、この例では、突出部Pの突出量の分だけ、蓄電セル2Aの各部と蓄電セル2Bの各部との相対位置も変化することとなる。
【0050】
しかしながら、正極活物質層22及び負極活物質層23に適切に拘束荷重を付加するためには、各層において、少なくとも正極活物質層22及び負極活物質層23とスペーサ14とが、適切な位置関係に維持される必要がある。したがって、本実施形態の蓄電モジュール1では、積層方向からみたとき、全ての正極活物質層22及び負極活物質層23が、積層体5の外側面5sにおいて最も積層体5の中心側に位置する外側面14bよりもさらに中心側に位置するようにされている。
【0051】
具体的には、図2の(a)に示されるように、積層体5のX軸方向正側に着目すると、蓄電セル2Bのスペーサ14の外側面14bが、最も中心側に位置する外側面14sであり、且つ、より中心から離れて外側に位置する蓄電セル2Aの正極活物質層22の側端面22s及び負極活物質層23の側端面23sの両方が、当該外側面14sよりも中心側に位置している。すなわち、蓄電セル2Aの正極活物質層22及び負極活物質層23が、蓄電セル2Bのスペーサ14を越えて外側に延在していない。
【0052】
また、図2の(b)に示されるように、積層体5のX軸方向負側に着目すると、蓄電セル2Aのスペーサ14の外側面14bが、最も中心側に位置する外側面14sであり、より中心から離れて外側に位置する蓄電セル2Bの正極活物質層22の側端面22s及び負極活物質層23の側端面23sの両方が、当該外側面14sよりも中心側に位置している。すなわち、ここでも、蓄電セル2Bの正極活物質層22及び負極活物質層23が、蓄電セル2Aのスペーサ14を越えて外側に延在していない。
【0053】
なお、積層体5の中心とは、例えば、積層方向に交差する方向における蓄電セル2Aの中心、又は、同方向における蓄電セル2Bの中心であってもよい。或いは、積層体5の中心とは、積層方向に交差する方向における蓄電セル2Aの中心と、同方向における蓄電セル2Bの中心との間であってもよい。すなわち、積層体5の中心とは、積層方向に交差する方向についての位置が違えられつつ積層された複数の蓄電セル2に対して、それぞれの中心であってもよいし、それぞれの中心の平均であってもよい。
【0054】
以上のように、各層において、正極活物質層22及び負極活物質層23とスペーサ14とが適切な位置関係に維持されていれば、相対的に突出した蓄電セル2の正極活物質層22及び負極活物質層23の直下に他の蓄電セル2の少なくともスペーサ14が存在することとなる。このため、例えば積層体5の全体にわたって積層方向に沿った拘束荷重を付加したときに、相対的に突出した蓄電セル2の正極活物質層22及び負極活物質層23が他の蓄電セル2の少なくともスペーサ14に支持されることとなり、当該正極活物質層22及び負極活物質層23にも適切に拘束荷重が付加され得る。一方で、仮に、相対的に突出した蓄電セル2の正極活物質層22及び負極活物質層23が、他の蓄電セル2のスペーサ14の外側面14bよりも外側に張り出した部分を有していると、当該部分が支持されずに適切な拘束荷重が付加され難くなる。
【0055】
なお、図3に示されるように、スペーサ14(外側面5s,14b)の外形は、複数の辺部分を含む多角形状である(ここでは、4つの辺部分を含む矩形状である)。そして、突出部Pは、一部の蓄電セル2(例えば蓄電セル2A)のスペーサ14の複数の辺部分のそれぞれが別の蓄電セル2(例えば蓄電セル2B)のスペーサ14の複数の辺部分のそれぞれに対してずらされることにより、スペーサ14の外側面14bが突出されて形成されている。具体的には、積層方向からみて一部の蓄電セル2(例えば蓄電セル2A)が別の蓄電セル2(例えば蓄電セル2B)に対して、複数の辺部分が延びるそれぞれの方向(例えばX軸方向とY軸方向)と交差する方向にずらされている。このため、積層方向からみたときの複数の辺部分に対応する積層体5の外側面5sの全ての面に対して、突出部Pが形成されることとなる。
【0056】
再び図1を参照する。上述したように、集電板30,40は、積層体5における拘束荷重が付加される範囲を規定する。本実施形態では、集電板30,40は、積層方向からみて積層体5よりも大きく形成されている。すなわち、集電板30,40は、積層方向からみて積層体5の全体を覆っている。したがって、ここでは、積層体5の全体に対して集電板30,40から拘束荷重が印加される。ただし、上記のとおり、集電板30,40は、積層体5のサイズと同等以下に構成されていてもよい。
【0057】
正極活物質層22及び負極活物質層23に適切に拘束荷重を付加する観点からは、集電板30,40は、少なくとも、積層方向からみて互いにずらされた蓄電セル2A,2Bのそれぞれの正極活物質層22及び負極活物質層23を覆う程度のサイズに形成されていればよい。正極活物質層22及び負極活物質層23は、最も積層体5の中心側に位置する外側面14sよりも中心側に位置している。したがって、集電板30,40の外縁は、積層方向からみて、最も中心側に位置する外側面14sよりもさらに中心側に位置し得る。
【0058】
シール部材50は、積層方向からみて積層体5を取り囲むように設けられている。また、シール部材50は、積層方向に交差する方向からみて、集電板30から集電板40にわたって延在し、集電板30,40に接触している。シール部材50は、外側面5sの形状に倣いつつ外側面5sを覆っている。これにより、シール部材50は、積層体5の全体を封止している。シール部材50の材料は、絶縁性を有する材料が好ましく、例えば、シリコンゴム、ポリオレフィン、又はウレタンゴムである。
【0059】
シール部材50は、ここでは、スペーサ14の外側面14sに接触(密着)すると共に、隣り合うスペーサ14の間にも導入され、スペーサ14の間から露出する集電体の側端面にも接触(密着)している。これにより、シール部材50は、互いに隣り合う集電体の側端面(接触界面)をさらに封止している。また、シール部材50は、第1集電体20の第3面20bのうち、第2集電体21の第4面21bと対向せず積層体5の外側に露出する部分を覆っている。同様に、シール部材50は、第2集電体21の第4面21bのうち、第1集電体20の第3面20bと対向せず積層体5の外側に露出する部分を覆っている。なお、外側面5sに交差する方向におけるシール部材50の厚さは、内側面14aと外側面14bとの間のスペーサ14の厚さよりも薄くされており、隣り合う突出部Pの間の空間を充填していない。これにより、シール部材50の外表面に対して、突出部Pの形状が維持されている。このようなシール部材50は、一例として、未硬化の上記の材料を積層体5の外側面5sに塗布した後に硬化させることにより形成され得る。
【0060】
以上説明したように、蓄電モジュール1では、積層体5の両端に集電板30,40が設けられている。そして、積層体5の外側面5sには、少なくとも1つのスペーサ14の外側面14bが別のスペーサ14の外側面14bよりも積層体5の外側に突出することにより突出部Pが形成されている。このため、例えば、積層体5の外側面5sが全体的に平坦な場合と比較して、集電板30,40間における外側面5sの沿面距離が延長される結果、集電板30,40間の絶縁性が向上される。
【0061】
また、蓄電モジュール1では、それぞれの活物質層(正極活物質層22及び負極活物質層23)が、積層方向からみたとき、積層体5において最も積層体5の中心側に位置するスペーサ14の外側面14sよりも中心側に位置する。換言すれば、どの活物質層に着目しても、スペーサ14よりも外側に突出した部分が生じない、このため、全ての活物質層に対して適切に拘束荷重を付加することができ、電池性能の低下が抑制される。つまり、蓄電モジュール1によれば、電池性能の低下を抑制しつつ集電板30,40間の絶縁性を向上可能である。
【0062】
また、蓄電モジュール1は、積層体5の外側面5sの形状に倣いつつ積層体5の外側面5sを覆うように外側面5sに設けられ、積層体5を封止するためのシール部材50をさらに備えている。また、複数のバイポーラ電極10のそれぞれは、第1面20aと第1面20aの反対側の第3面20bとを含む第1集電体20、及び、第1面20aに設けられた正極活物質層22を含む正極11と、第2面21aと第2面21aの反対側の第4面21bとを含む第2集電体21、及び、第2面21aに設けられた負極活物質層23を含む負極12と、を有し、第3面20bと第4面21bとが対向するように正極11と負極12とが重ね合されることにより構成されている。
【0063】
このため、積層体5を封止するためのシール部材50が設けられることによって、1つのバイポーラ電極10が正極11と負極12とを重ね合わせて構成される場合であっても、正極11及び負極12の間をシールしつつ、集電板30,40間の沿面距離を延長して絶縁性を向上できる。
【0064】
また、蓄電モジュール1では、積層体5は、正極活物質層22及び負極活物質層23が互いに対向するように配置された正極11及び負極12と、当該正極11と当該負極12との間に介在するスペーサ14と、を含む蓄電セル2が、積層方向に沿って複数積層されて構成されている。そして、突出部Pは、少なくとも1つの蓄電セル2のスペーサ14の外側面14bが別の蓄電セル2のスペーサ14の外側面14bと一致しないように、少なくとも1つの蓄電セル2が別の蓄電セル2に対してずれて配置されることにより形成されている。このように、スペーサ14を含む蓄電セル2をずらすことにより突出部Pを形成すれば、突出部Pの形成に際してサイズの異なる複数種類のスペーサを用意する必要が無く、生産性が向上されると共にコストが削減される。
【0065】
また、蓄電モジュール1では、積層方向からみときのスペーサ14の外形は、それぞれ、複数の辺部分を含む多角形状であり、突出部Pは、積層方向からみて、少なくとも1つの蓄電セル2のスペーサ14の複数の辺部分のそれぞれが別の蓄電セル2のスペーサ14の複数の辺部分のそれぞれに対してずれることにより形成されている。換言すれば、積層体5は、複数の外側面5sを有し、突出部Pは、全ての外側面5sに形成されている。このため、少なくとも1つの蓄電セル2をずらすことにより、複数の外側面5sの複数の面の全てに対して突出部Pを形成して集電板30,40間の延面距離を延長できる。
【0066】
以上の実施形態は、本発明の一態様を説明したものである。したがって、本発明は、上記態様に限定されることなく、任意に変形され得る。引き続いて、変形例について説明する。
【0067】
図4は、変形例に係る蓄電モジュールを示す概略的な断面図である。図4に示される蓄電モジュール1Aは、上記実施形態に係る蓄電モジュール1と比較して、一部の蓄電セル2(蓄電セル2C)がスペーサ14に代えてスペーサ14Aを有する点、及び、蓄電セル2の積層の態様において、蓄電モジュール1と相違している。
【0068】
より具体的には、蓄電モジュール1Aでは、複数の蓄電セル2のうち、積層方向に連続する(隣り合う)2つの蓄電セル2Cがスペーサ14Aを有している。スペーサ14Aは、他の蓄電セル2Bのスペーサ14と比較して、積層方向に交差する方向について大きく形成されている。ここでは、スペーサ14Aの内側面14aと外側面14bとの間の距離(厚さ)が、スペーサ14の内側面14aと外側面14bbとの間の距離(厚さ)よりも大きくされている。そして、蓄電モジュール1Aでは、複数の蓄電セル2,2Cが、積層方向に交差する方向についてスペーサ14,14Aの内側面14aが互いに同位置となるように、互いに揃えられて積層されている。つまり、ここでは、複数の蓄電セル2,2Cのそれぞれの中心は互いに一致している。
【0069】
これにより、蓄電モジュール1Aでは、スペーサ14Aの外側面14bがスペーサ14の外側面14bよりも外側に突出することにより、突出部Pが形成される。すなわち、蓄電モジュール1Aでも、積層体5の外側面5sには、少なくとも1つ(ここでは2つ)のスペーサ14Aの外側面14bが別のスペーサ14の外側面14bよりも積層体5の外側に突出することにより突出部Pが形成されている。ここでは、積層方向に連続する2つのスペーサ14Aにより突出部Pが形成されている。ただし、ここでは、複数のスペーサのうちの積層体5の積層方向の最も一端側に位置するスペーサ、及び、複数のスペーサのうちの積層体5の積層方向の最も他端側に位置するスペーサは、突出部Pを形成しない(相対的に突出していない)別のスペーサ14である。
【0070】
したがって、スペーサ14の外側面14bは、スペーサ14Aの外側面14bと比較して積層体5の中心側に位置している。すなわち、スペーサ14の外側面14bは、積層体5の外側面5sにおいて最も積層体5の中心側に位置する外側面14sである。そして、全ての蓄電セル2の正極活物質層22及び負極活物質層23が、当該外側面14sよりも中心側に位置している。
【0071】
このような蓄電モジュール1Aによっても、上述した蓄電モジュール1と同様に、電池性能の低下を抑制しつつ集電板30,40間の絶縁性を向上可能である。また、蓄電モジュール1Aによれば、突出部Pが、スペーサ14Aの積層方向に交差する方向についての大きさが別のスペーサ14よりも大きいことにより、スペーサ14Aの外側面14bが突出されて形成されている。このように、スペーサ14Aのサイズを異ならせることで突出部Pを形成すれば、例えば蓄電セル2をずらすことにより突出部Pを形成する場合と比較して、積層方向に拘束荷重を付加可能な領域が広く確保されやすくなる。
【0072】
また、蓄電モジュール1Aでは、積層体5の外側面5sには、積層方向に沿って連続する2つのスペーサ14の外側面14bが突出部Pを形成している。このため、1つのスペーサが薄化された場合であっても、突出部Pの積層方向への寸法を大きくすることができる。このため、例えば水滴等が突出部において液切れしやすくなるため、集電板30,40間の液絡が抑制される。
【0073】
なお、上記実施形態に係る蓄電モジュール1及び変形例に係る蓄電モジュール1Aは、さらに任意に変形され得る。例えば、蓄電モジュール1と蓄電モジュール1Aとの各要素を互いに組み合わせ適用することが可能である。
【0074】
より具体的には、蓄電モジュール1において、積層方向に交差する方向における大きさの異なる複数種類のスペーサを利用してもよいし、蓄電モジュール1Aにおいて少なくとも1つの蓄電セル2を別の蓄電セル2に対してずらしてもよい。また、蓄電モジュール1Aでも、突出部Pが連続して形成されないように、複数の蓄電セル2Cを互いに離間して配置してもよい。さらに、蓄電モジュール1にあっても、互いに隣り合う2つ以上の蓄電セル2を一括して他の蓄電セル2に対してずらすことにより、積層方向に連続する2つ以上のスペーサ14の外側面14bによって突出部Pを形成してもよい。
【0075】
また、蓄電モジュール1Aにおいて、積層体5に含まれるバイポーラ電極10は互いに接する第1集電体20及び第2集電体21を電極体として擬似的に形成されなくてもよい。すなわち、1枚の集電体を電極板とし、当該電極板の一方の面に正極活物質層を設け、他方の面に負極活物質層を設けてバイポーラ電極10が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…蓄電モジュール、2,2A,2B,2C…蓄電セル、5…積層体、5s…外側面(積層体側面)、11…正極(第1電極)、12…負極(第2電極)、14…スペーサ、14a…内側面、14b,14s…外側面、20…第1集電体(電極板、第1電極板)、20a…第1面、20b…第3面、21…第2集電体(電極板、第2電極板)、21a…第2面、21b…第4面、22…正極活物質層(第1活物質層)、23…負極活物質層(第2活物質層)、30,40…集電板(拘束部材)、50…シール部材、S…空間。
図1
図2
図3
図4