(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008070
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】電気接点の接合構造、電気接点の接合方法及びバッテリーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/516 20210101AFI20220105BHJP
H01M 50/522 20210101ALI20220105BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220105BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20220105BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20220105BHJP
【FI】
H01M50/516
H01M50/522
B23K26/21 N
H01G11/82
H01G11/12
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078706
(22)【出願日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】109121656
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】110106196
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】511040528
【氏名又は名称】新普科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SIMPLO TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.471, Sec. 2, Bade Rd., Hukou Township, Hsinchu County 303, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】呉玉▲ウォン▼
(72)【発明者】
【氏名】呉尚賢
(72)【発明者】
【氏名】王俊堯
【テーマコード(参考)】
4E168
5E078
5H043
【Fターム(参考)】
4E168BA29
4E168BA87
4E168BA88
4E168DA28
5E078AA14
5E078AB06
5E078JA04
5E078JA05
5E078JA07
5E078JA10
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA08
5H043CA13
5H043CB05
5H043CB10
5H043DA02
5H043DA17
5H043DA20
5H043EA07
5H043EA12
5H043EA15
5H043EA18
5H043FA02
5H043HA17D
5H043HA17E
5H043HA17F
5H043JA13D
5H043JA13E
5H043JA13F
5H043KA07D
5H043KA07E
5H043KA07F
5H043KA08D
5H043KA08E
5H043KA08F
5H043LA00E
5H043LA01E
5H043LA44E
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接合構造における溶接過多現象を低減することができる電気接点の接合構造と、上記電気接点の接合構造の製造方法を提供する。
【解決手段】導電部と電極片を含み、前記電極片が導電部に溶接された電気接点の接合構造を提供する。前記電極片は、第1金属材料であり、前記導電部は第2金属材料である。前記電極片と前記導電部との界面に溶接軌跡Lfが形成され、前記溶接軌跡は前記第1金属材料と前記第2金属材料が混合されてなる。前記溶接軌跡は実質的に重ならない。更に、前記溶接軌跡は移動経路Lvと、前記移動経路の横方向に揺れ移動または振動移動を行う横方向経路Woとを有する。また、前記溶接軌跡は横断面Sa上に2つ以上の溶接領域111~114を有する。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部と、前記導電部に溶接される電極片とを含む電気接点の接合構造であって、
前記電極片は、第1金属材料であり、前記導電部は第2金属材料であり、
前記電極片と前記導電部との界面に溶接軌跡が形成され、前記溶接軌跡は前記第1金属材料と前記第2金属材料が混合されてなり、
前記溶接軌跡は実質的に重ならず、
前記溶接軌跡は、移動経路と、前記移動経路の横方向に揺れ移動または振動移動を行う横方向経路とを有し、
前記溶接軌跡は、横断面上に2つ以上の溶接領域を有することを特徴とする電気接点の結合構造。
【請求項2】
前記移動経路のパターンは、UU字型、U字型、V字型、III字型、IIII字型、M字型、W字型、VV字型、S字型又はII字型であることを特徴とする請求項1記載の電気接点の結合構造。
【請求項3】
前記溶接軌跡の軌跡長さは0.5mmより大きく、前記溶接領域は前記横断面上の幅は0.3mmより大きいことを特徴とする請求項1記載の電気接点の結合構造。
【請求項4】
前記溶接軌跡が生成する溶接部の引張強度は、1Kgfより大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の電気接点の結合構造。
【請求項5】
前記溶接軌跡は、高エネルギー線を前記電極片と前記導電部との界面に照射することにより、前記第1金属材料と前記第2金属材料を混合することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の電気接点の結合構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1に記載の電気接点の結合構造と、
前記電気接点の結合構造の前記電極片を含む少なくとも1のバッテリーデバイスと、
前記電気接点の結合構造の前記導電部を含む回路担体と、
を含むバッテリーモジュールであって、
前記電極片は、前記少なくとも1のバッテリーデバイスの本体から延伸し、
前記横断面の法線方向は、前記電極片が前記少なくとも1のバッテリーデバイスから延伸する延伸方向に垂直ではないことを特徴とするバッテリーモジュール。
【請求項7】
前記横断面の法線方向は、前記電極片が前記少なくとも1のバッテリーデバイスから延伸する前記延伸方向に平行であることが請求項6に記載のバッテリーモジュール。
【請求項8】
前記請求項1~5にいずれか1に記載の電気接点の結合構造の前記電極片は、前記少なくとも1のバッテリーデバイスから延伸する前記延伸方向が、前記移動経路のパターンの長さ方向であることを特徴とする請求項6記載のバッテリーモジュール。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1に記載の電気接点の結合構造の製造に用いる電気接点の結合構造の製造方法であって、
前記第1の金属材料と前記第2の金属材料を混合させる、高エネルギー線を前記電極片と前記導電部が積層した界面に照射する工程と、
前記高エネルギー線を前記移動経路に沿って移動させる工程と、
前記高エネルギー線を前記移動経路の横方向に揺動移動または振動移動させて前記横方向経路を形成し、前記溶接軌跡を形成する工程と、
を特徴とする電気接点の結合構造の製造方法。
【請求項10】
高エネルギー線を前記電極片と前記導電部が積層した界面に照射する工程は、
高エネルギー線生成装置によって前記高エネルギー線を生成し、
前記高エネルギー線生成装置から出力されるエネルギー範囲を70~100Wの電力とするように制御し、
前記移動経路上で前記高エネルギー線を移動させる溶接速度を70~90mm/secとする
ことを特徴とする請求項9に記載された電気接点の接合構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接点の接合構造、電気接点の接合方法及び前記電気接点の接合構造を含むバッテリーモジュールに関し、特に、2つの異なる材質の電気接点を有する接合構造に関し、前記接合構造は連続する溶接軌跡を有する。
【背景技術】
【0002】
先行技術、例えば、台湾特許第M285125号によれば、バッテリーモジュールを提案しており、該バッテリーモジュールは複数の異なる材質の金属導片を、バッテリーセル(battery cell)の間や回路基板の間に設置し、抵抗溶接(Resistance welding)方式又ははんだ加工方式(Soldering welding)により、複数のバッテリーセルを並列または直列に接合して、導通するバッテリーパックを形成する。
【0003】
抵抗溶接法(Resistance welding):異なる材料を溶接する場合、浸透させて溶接する必要があるが、不良率が高い。例えば、溶接棒の粘着、はんだ濡れ不良及び爆飛などが発生し、溶接速度が遅いと生産方式の材料に制限される。例えば、溶点の異なる材料の溶接配列を行う場合、溶接できないという問題がある。はんだ溶接法(Soldering welding):各溶接点は溶接材料として錫の糸はんだを使用する必要があり、錫資源と人的資源を消費し、環境汚染を増加させる。また、はんだ付け作業が遅いために、製造条件の不確実性、溶接方法と技術の不正確さにより、人為的なはんだ品質の問題(コールドはんだ、はんだスキップ、はんだボール、はんだドロス、はんだボールなど)を完全に解決して回避することは不可能である。しかし、上記の問題によりバッテリーパックが断線すると、ユーザーが携帯しているバッテリーモジュールは使用できなくなり、バッテリーパックがショートすると、バッテリーモジュールの安全性が大幅に低下する。
【0004】
更に、接合方法の1つは、例えば、中国特許公開第CN108140494A号によって提案されているシングルスポットレーザー溶接法である。シングルスポットレーザー溶接:非接触レーザー溶接技術を使用して、エネルギーを金属の表面に集中させ、シングルポイントレーザーを介して、2つの異なる金属を溶接することができる。しかし、溶接する2つの金属材料の特性の違いにより、溶接異常(弱溶接、金属導電片を損傷する深すぎる溶接など)が発生する。バッテリーパックがショートすると、バッテリーモジュールの安全性が大幅に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾特許第M285125
【特許文献2】中国特許公開第CN108140494A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、接合構造における溶接過多現象を低減することができる電気接点の接合構造と、上記電気接点の接合構造の製造方法を提供することを目的とする。別の実施形態の目的は、電気接点の接合構造をバッテリーデバイスと回路担体間の接合構造として含むバッテリーモジュールを提供することにあり、はんだ盛りすぎ現象を低減することができる。別の実施形態の目的は、より安定性の高い電気接点の接合構造、前述の電気接点の接合構造を製造する方法、及び前述の電気接点の接合構造を含むバッテリーモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、導電部と電極片を含み、前記電極片が導電部に溶接された電気接点の接合構造を提供する。前記電極片は、第1金属材料であり、前記導電部は第2金属材料である。前記電極片と前記導電部との界面に溶接軌跡が形成され、前記溶接軌跡は前記第1金属材料と前記第2金属材料が混合されてなる。前記溶接軌跡は実質的に重ならない。更に、前記溶接軌跡は移動経路と、前記移動経路の横方向に揺れ移動または振動移動を行う横方向経路とを有する。また、前記溶接軌跡は横断面上に2つ以上の溶接領域を有する。
【0008】
実施形態において、好ましくは、前記移動経路のパターンは、UU字型、U字型、V字型、III字型、IIII字型、M字型、W字型、VV字型、S字型又はII字型である。
【0009】
実施形態において、前記溶接軌跡の軌跡長さは0.5mmより大きく、前記溶接領域は前記横断面上の幅は0.3mmより大きい。
【0010】
実施形態において、前記溶接軌跡が生成する溶接部の引張強度は、1Kgfより大きい。
【0011】
実施形態において、前記溶接軌跡は、高エネルギー線を前記電極片と前記導電部との界面に照射することにより、前記第1金属材料と前記第2金属材料を混合する。実施形態において、前記回路担体はプリント回路基板であり、また前記導電部ははんだ層及び銅箔を含む。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前述の電気接点の接合構造と、少なくとも1のバッテリーデバイスと、回路担体とを含むバッテリーモジュールを提供する。少なくとも1のバッテリーデバイスは、前記電気接点の接合構造を含み、前記接合構造は電極片を含み、且つ前記電極片は前記少なくとも1のバッテリーデバイスの本体から延伸される。前記回路担体は、前記電気接点の接合構造を含み、前記接合構造は導電部を含む。前記横断面の法線方向は、前記電極片が前記少なくとも1のバッテリーデバイスから延伸する延伸方向に垂直ではない。実施形態において、前記横断面の法線方向は、前記電極片が前記少なくとも1のバッテリーデバイスから延伸する前記延伸方向に平行であることが好ましい。
【0013】
実施形態において、前記電極片が前記少なくとも1のバッテリーデバイスから延伸する前記延伸方向は、前記移動経路のパターンの長さ方向である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前述の電気接点の接合構造を製造するための電気接点の接合構造の製造方法が提供され、前記製造方法は、以下の工程を含む。高エネルギー線を前記電極片と前記導電部の界面に照射し、前記第1の金属材料と前記第2の金属材料を混合する。前記高エネルギー線を前記移動経路に沿って移動させる。そして、前記高エネルギー線を前記移動経路の横方向に揺動移動または振動移動させて前記横方向経路を形成し、前記溶接軌跡を形成する。
【0015】
一実施形態において、高エネルギー線生成装置によって生成された前記高エネルギー線を使用する工程は、前記高エネルギー線生成装置から出力されるエネルギー範囲を70~100Wの電力とするように制御する工程と、及び、前記移動経路上で前記高エネルギー線を移動させる溶接速度を70~90mm/secとする工程、を含む。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明の実施形態の電気接点の接合構造は、溶接軌跡を有し、前記溶接軌跡は、第1金属材料と第2金属材料とを混合してなり、溶接軌跡は実質的に重ならず、また、前記溶接軌跡は横断面において2つ以上の溶接領域を有し、回路担体の最低部が損傷されることを減少できるとともに、第1金属材料と第2金属材料との間の溶接強度を改善できる。実施形態において、電気接点の接合構造は、バッテリーデバイスと回路担体間の接合構造として機能するようにバッテリーモジュールに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態のバッテリーモジュールの分解図である。
【
図2】
図1実施形態のバッテリーモジュール内部の一部構造の平面図である。
【
図3】本発明の複数の実施形態の接合構造の俯瞰図である。
【
図4】
図3の実施形態(a)、(d)及び(c)の接合構造の各部位の寸法である。
【
図5A】
図3(a)実施形態の溶接軌跡のパターンの拡大図である。
【
図5B】本発明実施形態の溶接軌跡のパターンの拡大図である。
【
図6】本発明の実施形態の金属接合構造の断面図である。
【
図7A】横方向の揺動移動を有し且つM字型を呈する溶接軌跡の俯瞰図である。
【
図7B】6つの螺旋点のスポット溶接の溶接軌跡の俯瞰図である。
【
図7C】別の実施形態の横方向の揺動移動を有し且つM字型を呈する溶接軌跡の俯瞰図である。
【
図8A】一部重なりを有するM字型の溶接パターンの俯瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施形態のバッテリーモジュールの分解図である。
図2は、
図1の実施形態のバッテリーモジュールの内部の一部構造の平面図である。
図1,2に示すように、本発明の実施形態によれば、バッテリーモジュール200は、ケース210、接合構造300、少なくとも1のバッテリーデバイス220及び回路担体230を含む。バッテリーデバイス220は少なくとも1のバッテリーセルを含む。実施形態において、前記少なくとも1のバッテリーセルは複数であってもよく、且つバッテリーデバイス220は、前記バッテリーセルの直列及び並列接続である。ケース210は収容空間214を画定しており、バッテリーデバイス220及び回路担体230を収容する。
図2に示されるように、バッテリーデバイス220は接合構造300により回路担体230に接続される。ケース210は、上蓋211、下蓋213及びフレーム212を含み、フレーム212は上蓋211と下蓋213の間に位置し、且つ前記収容空間214を画定している。
【0019】
図2は、
図1実施形態のバッテリーモジュールの内部の一部構造の平面図である。
図2に示されるように、各バッテリーデバイス220は、負極片222と正極片221を含み、互いに分離されるようにバッテリーデバイス220の本体から延伸する。負極片222と正極片221は回路担体230の複数の導電部231に溶接され、且つ負極片222と回路担体230の導電部231との間及び正極片221と回路担体230の別の導電部231との間にそれぞれ接合構造300を形成することにより、左側及び右側のバッテリーデバイス220を電気的に接続するとともに、バッテリーデバイス220の電力を回路担体230により外部に出力する。
【0020】
本発明によれば、負極片222と正極片221の金属材料は同一であってもよく、また異なってもよい。実施形態において、バッテリーデバイス220はリチウムイオンコンデンサ、リチウムイオン二次電池であり、負極片222と正極片221が同一の金属材料である場合、電気化学的作用により一方が溶解するので、負極片222と正極片221は互いに異なる金属材料を含むことが好ましい。具体的に言えば、本実施形態において、正極片221はアルミニウムを含有し、負極片222は銅を含有する。回路担体230は回路板、金属板及び回路を含むアクリル板であってもよい。回路板はPCB板又はBMS制御ボードであってもよい。
【0021】
負極片222と回路担体230の導電部231の接合構造300において、負極片222は第1金属材料であり、回路担体230の導電部231は第2金属材料である。負極片222及び回路担体230の導電部231の界面において、溶接軌跡Lfが形成される(後述する)。また溶接軌跡Lfは前記第1金属材料と前記第2金属材料を混合してなる。本発明の実施形態によれば、接合構造300を提供し、第1金属材料および第2金属材料を含み、かつ第1金属材料と第2金属材料の界面に溶接軌跡Lfを形成する。第1金属材料と第2金属材料は、同一材料であってもよく、また異なってもよい。好ましくは、接合構造300の材質は純金属片(例えば、銅-ニッケル、ニッケル-銅、銅-銅、ニッケル-ニッケルなど)間の結合であってもよく、または化合物合金(例えば、銅ニッケルメッキ、ニッケルメッキ鉄または銅ニッケル合金などの金属合金片)とニッケル、銀メッキ、金メッキ又は無電解ニッケル浸漬銀及び無電解ニッケル浸漬金などの金属片間の溶接材料であってもよい。
【0022】
実施形態において、結合構造300は高エネルギー線生成装置(図示せず)により生成された高エネルギー線により溶接し、好ましくは、レーザー溶接を利用する。実施形態において、高エネルギー線は光ファイバレーザー装置の照射光であってもよい。高出力レーザー溶接の設計において、主に、高出力レーザーを使用して、さまざまな溶接方法で連続的に溶接する。レーザーエネルギーの強さ、移動速度及び溶接されるものの外形寸法と材質形態の違いを利用し、精密な治具の使用を合わせて、2つの独立した金属片が界面溶着状態に達成し、バッテリーデバイス220の直列又は並列に使用することができる。実施形態において、被溶接物は2つの独立金属片(銅-ニッケル、ニッケル-銅、銅-銅、ニッケル-ニッケルなど)間の結合であってもよく、または化合物合金(ニッケルメッキ銅、ニッケルメッキ鉄または銅ニッケル合金などの金属合金片)とニッケル、銀メッキ、金メッキ又は無電解ニッケル浸漬銀及び無電解ニッケル浸漬金などの金属片間の溶接であってもよい。この結合構造300は、バッテリーデバイス220及び回路基板間の接続に使用されることが好ましい。
【0023】
図2に示されるように、実施形態において、結合構造300は電気接点の結合構造であってもよく、バッテリーモジュール200に使用され、結合構造300は、導電部及び電極片を含む。本実施形態において、結合構造300の導電部は回路担体230の導電部231であってもよい。しかし、本発明はこれに制限されず、他の実施形態において、結合構造300の導電部は導電片、バスバー、導電性フレーム又は金属片などであってもよい。本実施形態において、結合構造300の電極片は、バッテリーデバイス220の正極片221であってもよく、また負極片222であってもよい。
【0024】
図3は、本発明の複数の実施形態の接合構造300の俯瞰図である。
図4は
図3の実施形態(a)、(d)及び(c)の結合構造300の各部位の寸法を示す。
図5Aは、
図3の実施形態(a)の溶接軌跡のパターンの拡大図である。
図5Bは本発明の実施形態の溶接軌跡のパターンの拡大図である。
図3は複数の実施形態(a)~(f)の溶接軌跡Lfのパターンである。
図3(a)~(f)、
図5A及び
図5Bに示されるように、これら溶接軌跡Lfは実質的に重ならず、溶接軌跡Lfは移動経路Lv、及び移動経路Lvの横方向に揺動(wobble)移動または振動移動する横方向経路Woを有する。溶接軌跡Lfの移動経路LvのパターンはそれぞれUU字型、U字型、V字型、III字型、IIII字型(M字型、VV字型又はW字型であってもよい)、S字型及びII字型である。
図3(d)のレーザー軌跡は、4本の直線からなり且つ複数の正反対方向のV、M又はW字型の経路からなり、そしてこれら4本の直線の溶接軌跡Lfは実質的に重ならない。
【0025】
図4に示されるように、
図4の実施形態(d)のパターンの線幅は0.5±0.1mmである。本発明によれば、
図3の複数の実施形態(a)~(f)の溶接有効領域は6mm×4mmの空間内であり、溶接領域のサイズは約3mm×2mmであり(必要に応じてサイズを微調整)、レーザー溶接の軌跡形態及び軌跡長さの特徴は、レーザー連続溶接軌跡が実質的に重ならない。実施形態において、レーザー連続溶接軌跡は独立し且つ単一である必要がある。実施形態において、溶接有効領域は7.8mm×4mmの電極片、又は導電部の領域であってもよく、3mm×2mmの溶接領域は溶接有効領域におけるいずれか1つの領域である。別の実施形態において、溶接有効領域は電極片及び導電部が重なる箇所であってもよく、3mm×2mmの溶接領域は溶接有効領域のいずれか1つの領域である。
【0026】
図5A及び
図5Bに示されるように、実施形態において、溶接軌跡Lfはレーザー連続溶接軌跡であってもよい。
図5Bに示されるように、レーザーが動かないとき、それが形成する溶接領域Sbはほぼ円形であり、その溶接領域Sbの幅はwbである。更に具体的には、レーザーがほぼ円形の形状を呈しており、それが金属材料の表面に照射した後、熱が拡散し、溶接領域Sbが形成される。レーザーが移動する時、例えば、レーザー中心点Aからレーザー中心点Bに移動する時、溶接軌跡Lfは連続の線を形成し、本発明において、レーザー中心点が形成される溶接軌跡Lfは重ならず、異なる時間点のレーザーの熱拡散領域は重なることが好ましい。実施形態において、溶接軌跡Lfはその軌跡長さが溶接領域Sbの幅wbより大きいことが好ましい。例えば、レーザー中心点A及びレーザー中心点Bの間の溶接軌跡Lの軌跡長さの距離Labは、溶接領域Sbの幅Wbより大きい。溶接軌跡Lfの長さが溶接領域Sbの幅wbより小さい場合、レーザーは実質的に移動していないに等しく、1つの点が形成される。このように、引張強度が1Kgfより大きい溶接部分は形成できない。実施形態において、溶接領域Sbの幅wbは0.3mmより大きい又は等しい。
【0027】
実施形態において、溶接軌跡Lfの軌跡長さは0.5mmより大きいことが好ましい。実施形態において、溶接軌跡Lfの引張テスト方向D(
図2及び
図5Aに示される)の大部分(全ての部分が最適)の横断面Saは2以上の溶接領域111-114を有し、且つ溶接領域111-114は、横断面Saにおける幅が0.3mm以上である(横断面は2より多いまたは等しい溶接領域、及び溶接領域の横断面Saにおける幅が0.3mmより大きいまたは等しい)。所謂大部分とは半分以上のことを意味し、この他、実施形態において、溶接領域111-114が横断面Saにおいてちょうど溶接領域Sbの直径上に位置する場合、溶接領域111-114は横断面Saの幅の寸法が実質的に溶接領域Saの幅wbに等しい。より好ましくは、
図3の実施形態(b)及び
図5Aに示されるように、溶接軌跡Lfは方向Dのいずれか1の横断面Saが2以上の溶接領域111-114を有していることである。
図5Aの実施形態において、溶接軌跡Lfは、方向Dのいかなる横断面Saは4つの溶接領域111-114を有する。実施形態において、好ましくは、溶接軌跡Lfが生成した溶接部の引張強度は1Kgfより大きいことが好ましい(必要に符合するように引張強度は1Kgfより大きい)。
図4(a)に示されるように、1つのU字型の幅L1は1.2±0.3mmであり、その長さL3は2±0.8mmである。2つのU字型の合計幅L2は3±0.8mmであり、2つのU字型の中心線の間の距離L4は1.9±0.3mmである。
図5Aに示されるように、横方向経路Woの2倍の振幅又は距離が最遠の2つの端点(実施形態において溶接軌跡Lfの移動経路Lvの線幅であってもよい)の距離L5は0.5±0.1mmである。
【0028】
図2及び
図5Aに示されるように、実施形態において引張テスト方向Dは負極片222又は正極片221がバッテリーモジュール200から延伸する延伸方向である。実施形態において、横断面Saの法線方向Nは引張テスト方向Dに垂直ではない。好ましくは、横断面Saの法線方向Nは引張テスト方向Dに平行である。実施形態において、引張テスト方向D(負極片222又は正極片221がバッテリーデバイス220から延伸する延伸方向)は、溶接パターン(U、I又はS字型)の長さ方向である。
図2に示されるように、テスト方向DはU字型の長さ方向である。実施形態において、テスト方向Dはバッテリーデバイスの長軸の延伸方向にほぼ平行である。実施形態において、テスト方向Dは電極片がバッテリーデバイス220を突出する延伸方向にほぼ平行である。実施形態において、溶接パターンの長さ方向は、前記パターン中の最長の長さを有する移動経路Lvの延伸方向であってもよい。
【0029】
図6は、本発明の実施形態における金属結合の断面図である。溶接材料の説明および効果は下記のとおりである。電気接点の接合構造300中の前記電極片及び前記導電部の材質は、異なる製品に応じて、同質又は異質の材質金属であってもよく、PCBA(Printed Circuit Board Assembly、プリント回路基板アセンブリ)に溶接される。
図6に示されるように、結合構造300の構造は、上から下へそれぞれ積層され、基材304、基板303、誘電体302、および担体301を含む。基材304の厚さh4は0.05~0.25mmであり、基材材料は、ニッケル、銅、ニッケルめっき銅、銅ニッケル合金、ニッケルめっき鉄、及びアルミニウムであってもよい。基板303の厚さh3は0.1~0.6mmであり、基板材料は、ニッケル、銅、ニッケルめっき銅、銅ニッケル合金、無電解ニッケル浸漬金(Electroless Nickle Immersion Gold)および無電解ニッケル浸漬銀(Electroless Nickle Immersion Silver)板であってもよい。誘電体材料ははんだであってもよく、そして誘電体302としてのはんだの厚さh2は0.05から0.15mmであってもよい。担体材料は、PCB、金属板、アクリルであってもよい。担体301の厚さh1は、0.5から1.5mmであってもよい。
【0030】
再度
図5Aを参照すると、溶接軌跡Lfは、移動経路Lv上で移動すると同時に、移動経路Lvの横方向に揺動(wobble)移動または振動移動する横方向経路Woから構成される。移動経路Lvは、溶接軌跡Lfのパターンの主要形状を決定し、横方向経路Woは溶接軌跡Lfのパターンの線の幅を決定する。本発明はパターンの主要形状を限定しないことに注意しなければならず、線形又は弧形であってもよい。線形は例えば双直線、三直線又は双直線と双斜線などであってもよい。そして弧形は、例えば2つのU、1つのU又はS線などの無端点で交差しないパターンであってもよい。具体的には、溶接軌跡Lfのパターンの主な形状は、UU字型、U字型、III字型、IIII字型(好ましくはM字型またはW字型であってもよい)、S字型及びII字型などであってもよい。実施形態において、好ましくはUU字型、U字型、M字型またはW字型、及びS字型などであり、これらパターンの移動経路Lvは平行の線だけを含むのではないので、信頼性が高い。実施形態において、好ましくは、UU字型、U字型であり、このような字形レーザーの移動は容易に操作できる。移動経路Lvの横方向の揺動(wobble)移動または振動移動により、溶接面積が増加でき、引張強度も増加できる。この他、レーザーが移動経路Lv前進行方向及び横方向移動に収束するので、熱の累積が減少し過度な溶接が回避できる。
【0031】
図7Aは、横方向揺動移動を有し、且つM字型を呈する溶接軌跡の俯瞰図である。
図7Bは、6つの螺旋点のスポット溶接の溶接軌跡の俯瞰図である。接合構造300において、溶接軌跡Lfのパターンは、過度に高い温度によるはんだ溶解現象(tin melting)が発生し、基板が脱落し不良品になることがある。熱電対温度記録計を使用して溶接軌跡Lfの溶接シームの近傍を測定すると、溶接温度が最大値である。
図7AのM字型溶接パターンの最高温度は82.9℃である。
図7Bの6つの螺旋点の溶接パターンの最高温度は247.8℃である。螺旋点の溶接パターンは、軌跡線と軌跡線の間のピッチが小さいので、温度が高くなる。螺旋点の溶接パターンは螺旋状パターンを利用して内から外へ連続して溶接し、且つ所望のスポット寸法が得られ、その軌跡線が密集するので、定点位置に熱凝集現象により温度が過度に高くなる。
図7Cは、別の実施形態の横方向揺動移動を有し且つM字型を呈する溶接軌跡の俯瞰図である。
図7Cの実施形態は、
図7Aの実施形態に類似し、両者の差異は、
図7Aの4本の溶接軌跡が不連続であり、
図7Cの4本線の溶接軌跡は連続していることである、
図7Cに示されるように、溶接軌跡Lfもまた、過溶接を引き起こす重なりが実質的に存在しない限り連続状であってもよい。
【0032】
実施形態において、銅材質は高反射材料に属するので、レーザー光の吸収率が低く、溶接において、銅と他の金属を貫通して溶接作業を行うためにより高いエネルギーが必要になる。ただし、銅の熱伝導率は良好なので、熱伝導により下層の被溶接物のはんだ層に影響を与えやすく、実施形態において、温度が230℃を超えると底部のはんだ層が溶解しはんだビーズやはんだドロスが生成され、溶接部位の安定性が損なわれ、電気的異常が発生する。
図7Bの溶接パターンの最高温度が247.8℃であるので、溶接の安定性が不良となり且つ電気的異常現象が発生する。これに対して、本発明において、異なる溶接パターンを利用して、異なる表層温度の特性が生成され、最低部のはんだ層及びPCBA銅箔が破壊されることなく、2つの金属材質溶接の溶接強度が制御できる。
【0033】
図8Aは、一部重なったM字型の溶接パターンの俯瞰図である。
図8Aにおいて円で囲まれた部分が重なった部分である。具体的には、熱拡散領域のほかに、そのレーザー線の中心点にも重なりが発生している。
図8Bは
図8Aの重なった部分の断面図である。
図8Bに示されるように、溶接軌跡Lfの経路が重なっているので、同一位置が過度に溶接されることにより温度が非常に高くなり且つ溶接が過度に深くなりメルトスルーが発生し、下層の銅箔が損傷を受け電性不良が起こる。円柱型バッテリーの正極片又は負極片に導電部を直接溶接する場合、発生したメルトスルーにより破損の危険性さえ引き起こす可能性がある。これと比較して、本発明の実施形態において、
図7A及び
図7Cに示されるように、溶接軌跡Lfは実質的に重ならず、また溶接軌跡Lfの経路は独立しており、最底部のはんだ層及びPCBA銅箔を破損せずに、2つの金属材質溶接の溶接用度を制御できる。
【0034】
結合構造300において、溶接パターンの横断面の有効溶接数及び線径の太さは溶接強度に影響するので、溶接領域の個数は2点より少ない場合、引張強度不足が容易に発生し、脱落異常及び不安定なプロセス能力などの現象が発生する。
【0035】
[引張強度テスト]
以下、銅0.15とニッケル0.4、及び銅0.1とニッケル0.4の異なる比率の金属材料について、各種異なるパターンの溶接軌跡Lfにより異なる接合構造300を形成するとともに、これら接合構造300について引張強度テストを行った。具体的には、比較例1は、
図7Bの6点パターンであり、実施例1は
図3(f)のIIパターンであり、実施例2は
図3(e)のSパターン及び実施例3は
図3(a)のUUパターンであり、且つ前述の各実施例1~3又は比較例1の金属比は銅0.15とニッケル0.4である。この他、実施例4は
図3(f)のIIパターンであり、実施例5は
図3(c)のIIIパターンであり、実施例6は
図3(d)のIIIIパターンであり、そして実施例7は
図3(a)のUUパターンである。また、前述の各実施例4~7の金属比は銅0.1とニッケル0.4である。同時にテストの結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
表1に示されるように、
図7Bに表示された6つの螺旋点の溶接パターンは、その引張強度テストの最小値は1Kgfより小さい。従って、その溶接安定性は不良である。これと比較すると、本発明の表1の各実施例の溶接パターンはその引張強度がいずれも1Kgfより大きい。この他、表1中のCPKはプロセス能力指標を意味し、数値が高いほど安定する。
【0038】
本発明の実施形態によれば、前述の接合構造300を製造する電気接点の接合構造300の製造方法を提供し、前記製造方法は、以下の工程を含む。
【0039】
工程S02:高エネルギー線を利用して電極片と導電部が積層した界面を照射し、実施形態において、負極片222と回路担体230の導電部231が積層した界面であってもよく、負極片222の第1金属材料と回路担体230の第2の金属材料を混合することにより、材料混合部を形成する。
【0040】
工程S04:前記高エネルギー線を移動経路Lvに沿って移動させる。
【0041】
工程S06:前記高エネルギー線を移動経路Lvの横方向に揺動移動または振動移動を行うことにより横方向経路Woを形成し、溶接軌跡Lfを形成する。
【0042】
実施形態において、工程S02の前記高エネルギー線生成装置が生成した高エネルギー線の工程は、以下の工程を含む。工程S20:前記高エネルギー線生成装置の出力を制御するエネルギー範囲は70~100Wの電力である。及び工程S40:移動経路Lv上で前記高エネルギー線を移動させる溶接速度は70~90mm/secである。この他、経路上の任意の単位時間での必要なエネルギーの電力は一定であり、且つ使用した電力は材料が変更されると変化するので、エネルギー範囲の電力は大きくなるほど溶接の移動速度が速くなり、エネルギー範囲の電力が小さくなるほど、溶接の移動速度は遅くなる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上より、本発明の実施形態の電気接点の接合構造によれば、溶接軌跡を有し、溶接軌跡の経路は重ならず、回路担体の最底部を損傷せずに第1金属材料と第2金属材料の溶接強度が改善できる。実施形態において、電気接点の接合構造はバッテリーモジュールに用いられ、そのバッテリーデバイスと回路担体間の接合構造とすることができる。実施形態において、溶接軌跡が横断面に2個以上の溶接領域を有し、これら溶接領域は前記横断面上の幅は0.3mmより大きいことが好ましく、これにより引張強度テストの要求に符合し、溶接の安定性の不良が減少できる。実施形態において、回路担体はPCBA銅箔であるので、回路担体の最底部のはんだ層及びPCBA銅箔を損傷せずに、2つの金属材質溶接の溶接強度が改善できる。
【符号の説明】
【0044】
111-114:溶接領域
200:電池モジュール
210:ケース
211:上蓋
212:フレーム
213:下蓋
214:収容空間
220:バッテリーデバイス
221:正極片
222:負極片
230:回路担体
300:結合構造
301:担体
302:誘電体
303:基板
304:基材
A:レーザー中心点
B:レーザー中心点
D:引張強度テスト方向
Lf:溶接軌跡
Lv:移動経路
Sa:横断面
Wo:横方向経路